(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
体積補償エレメント(6)が柱体形の体積補償エレメント(6)として、前記第1の容器(1)内において前記ディスペンスプランジャ(4)とは反対側に配置されており、
柱体形の前記体積補償エレメント(6)は可動であるようにベアリングに支持されており、
前記体積補償エレメント(6)は、管(12)またはロッドに対する気密の供給貫通口を有し、前記管(12)またはロッドは、可動であるように当該供給貫通口内のベアリングに支持されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
少なくとも1つの前記体積補償エレメント(6)が前記第1の容器(1)に対して可動であるように、当該体積補償エレメント(6)を当該第1の容器(1)の内部スペース内へ押し込む弾性バネ(30)を介して、当該体積補償エレメント(6)がベアリングに支持されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載の装置。
前記第2の容器(18)を開けるため、当該第2の容器(18)を含む前記ディスペンス管(12)を、前記ディスペンスプランジャ(4)に設けられたマンドレル(24)に押しつけることにより、当該第2の容器(18)を閉じていた膜(20)またはフィルム/箔(20)に孔を開けて、当該第2の容器(18)を開ける、
請求項15または16記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
有利には体積補償エレメントは、第1の容器内にて軸方向に可動である1つまたは2つのシリンダにより実現される。それに代えて択一的に、またはそれと併用して、フレキシブルに変形可能な皮膜または膜により体積補償エレメントを形成することも可能である。
【0014】
好適には、ディスペンスプランジャが第1の容器に対して係止可能であるかまたは係止されており、有利には、当該第1の容器の、ディスペンス開口部とは反対側の端部に係止可能であるかまたは係止されているように、本発明の装置を構成することができる。
【0015】
このような係止により、第1の容器の脱ガス処理および滅菌処理が行われている間、ディスペンスプランジャを保持することができる。
【0016】
本発明の有利な実施形態では、前記ミキシング装置をロッドまたは管に結合し、当該ロッドまたは管は、当該ロッドまたは管が動くことによりミキシング装置も動いて第1の容器の内容物をミキシングするように、当該第1の容器の境界を貫通した気密の供給貫通口内にて軸方向に可動であるように配置されている。このロッドまたは管は有利には、軸回転できるようにベアリングに懸架されている。
【0017】
前記ミキシング装置は、複数のミキシングベーンにより実現することができる。また、ロッドまたは管を用いてミキシング装置を作動させることができ、さらに、当該ミキシング装置が、別体の又は組み込まれた磁気攪拌コアを含むことも可能である。
【0018】
このようにして、内容物を手動で容易にミキシングすることができる。
【0019】
さらに本発明では、ディスペンス開口部を閉鎖しておき、ミキシング後の骨セメントの適用前にはこのディスペンス開口部を開けなければならないようにした構成も可能である。その際には、ディスペンス開口部は有利にはディスペンス管であり、このディスペンス開口部は、前記ディスペンスプランジャとは反対側に配置される。
【0020】
本発明では有利には、ディスペンス管および/または当該ディスペンス管の閉鎖部を前記ミキシング装置に永続的に結合することにより、ディスペンス管および/またはその閉鎖部により第1の容器内においてミキシング装置を動かせるようにすることもできる。特に有利なのは、ミキシング装置を手動で動かすための把持部をディスペンス管および/またはその閉鎖部に配置することである。
【0021】
このことにより、空気が入り込むのを防止することができ、さらに、上述の構成によって容器の内容物を滅菌状態に保持することもできる。
【0022】
本発明では有利には、第1の容器が柱体形の内部スペースを有し、当該第1の容器の当該内部スペース内に配置される前記ディスペンスプランジャの形状が、当該内部スペースの柱体形の平面形状に合致するようにすることができる。
【0023】
本発明では柱体形の内部スペースとは、任意の平面形状の真っ直ぐな柱体形を、すなわち、非円形の平面形状や丸以外の平面形状を含めた任意の平面形状の真っ直ぐな柱体形を意味する。しかし本発明では、円形の平面形状を有する柱体形の内部スペースが有利である。その際には、前記ディスペンスプランジャも柱体形であり、シールによって、第1の容器の柱体形の内部スペースの壁に接触する。有利には、ディスペンスプランジャの、前記内部スペースを向いた側に、ワイパが設けられ、これは、ディスペンスプランジャが前進したときに、ミキシング後の骨セメントペーストが当該ディスペンスプランジャを通り過ぎて押し出されて装置の後部から出てくるのを防止する機能を有する。本発明にて好適である円柱形の幾何学的形状を有する前記ミキシング装置は複数のミキシングベーンを有し、これらのミキシングベーンのサイズは等しいか、または有利には、前記柱体形の内部スペースの内径より僅かに小さい。
【0024】
円形の底面を有する円柱形の幾何学的形状は、構造上最も簡単な形状である。特に有利なのは、これに応じて第1の容器の外表面も柱体形であり、その壁の少なくとも90%が均等な厚さを有することである。
【0025】
本発明の有利な発展形態では前記第2の容器は、孔を開けることができる、境界を成す膜と、第1の容器内に配置されるマンドレルとを有し、当該マンドレルは、前記膜を貫通して孔を開けて第2の容器を開放することにより、当該第2の容器の内容物が第1の容器の内容物と混合させるように、当該膜に対して可動であるようにベアリングに支持される。
【0026】
この構成により、第1の容器内または当該第1の容器の端面に配置された機械的手段を用いて第2の容器を容易に開放することができ、なおかつ、こうするために外部から直接アクセスできるようにする必要はない。こうするために、この開放メカニズムは構造内部に配置される。さらに、この開放プロセス中に生じる可能性のある汚染または空気混入を防止することもできる。
【0027】
膜を設ける代わりに択一的に、本発明では、第2の容器が境界として栓を有し、この栓にスナップ係合手段を設け、当該スナップ係合手段を有する前記第2の容器を、第1の容器内に配置された被スナップ係合手段に押しつけることにより、当該スナップ係合手段が被スナップ係合手段にスナップロックするようにした構成も可能である。その後、第2の容器を引き戻すことによりこの栓を取り外すことができる。有利には、前記第2の容器をディスペンス管内に配置し、このディスペンス管が第1の容器の境界面の供給貫通口を軸方向に通ってスライド挿入可能および引き出し可能であるようにすることができる。その際には前記栓は、ディスペンス管の、第1の容器の方を向いた端部を閉鎖する。ここで、本発明は特に有利には、被スナップ係合手段をディスペンスプランジャに配置することが可能である。
【0028】
上述のような構成において、本発明はさらに、前記ディスペンス開口部をディスペンス管に配置し、前記マンドレルを前記ディスペンスプランジャに配置し、第2の容器が当該ディスペンス管の内壁の領域と、当該ディスペンス管の、開放すべき閉鎖部と、その境界を成す膜とを有する構成も可能である。その際にはディスペンス管は、前記膜を有する当該ディスペンス管がマンドレルに押しつけられるように当該第1の容器の境界を貫通する供給貫通口内にて軸方向に可動であるように、ベアリングに支持される。
【0029】
前記ディスペンス管を第2の容器として用いることは省スペースであり、また、第1の容器の内側の付加的な可動部品を削減することにもなる。この実施形態では、第1の容器に対して第2の容器を開放してミキシング装置を作動させるための供給貫通口を1つ以上設けなくてもよい。
【0030】
1つの有利な実施形態では、本発明は、軸方向に可動であるように少なくとも1つの体積補償エレメントを第1の容器内に配置することができる。その際に有利なのは、前記少なくとも1つの体積補償エレメントが、前記ミキシング装置を作動させるためにロッドまたは管を案内するための気密の供給貫通口を有する構成であり、特に有利なのは、前記ミキシング装置を作動させるために当該供給貫通口に前記ディスペンス管を案内することである。
【0031】
このような構成を実現するのは容易であるから、低コストで実現することができる。
【0032】
他の1つの簡略化態様では、本発明は体積補償エレメントをディスペンスプランジャにより実現し、第1の容器から外への当該ディスペンスプランジャの動きを制限部により制限することができる。その際に有利なのは、当該制限部が、前記ディスペンスプランジャにある被スナップ係合手段に係合するスナップ係合手段とすることである。
【0033】
これに代えて択一的に、前記制限部をユニオンナットにより実現することも可能である。
【0034】
ディスペンスプランジャを体積補償エレメントとして使用することは特に簡単である。というのも、ディスペンスプランジャはいずれにしても、第1の容器内において可動とされ、および/または、より具体的には、有利には筒形であるプラスチック体の壁の内側において可動とされるからである。よって、同一のものを体積補償にも用いることができ、他に可動の体積補償エレメントを追加しなくてもよい。
【0035】
有利には本発明は、体積補償エレメントを柱体形の体積補償エレメントとして、前記第1の容器内においてディスペンスプランジャとは反対側に配置し、当該柱体形の体積補償エレメントが可動であるようにベアリングに支持することができる。その際に有利なのは、前記体積補償エレメントが管またはロッドに対する気密の供給貫通口を有し、当該管またはロッドを、可動であるように当該供給貫通口内のベアリングに支持することである。
【0036】
また、上記2つの体積補償エレメントを、ディスペンスプランジャにより構成される第1の体積補償エレメント、および、第1の容器内にて当該ディスペンスプランジャとは反対側に柱体形の体積補償エレメントとして配置される第2の体積補償エレメントの形態で、同時に配置することも可能であり、この柱体形の体積補償エレメントは、可動であるようにベアリングに支持される。さらに、理論的には、変形可能な膜を設けることも可能であり、この膜は、ミキシング装置の作動に起因する第1の容器の体積変化に対応することもできる。しかし、構造を簡素化するためには、1つの体積補償エレメントに限定するのが有利である。
【0037】
体積補償エレメントをディスペンスプランジャとは反対側に配置することにより、その可動性に完全に合致して、体積補償エレメントの要求を満たすことができるという利点を奏する。
【0038】
さらに本発明は、前記ディスペンス開口部の閉鎖部としてコアを設け、このコアが当該ディスペンス開口部内から、特にディスペンス管内から取り出し可能とすることができる。その際に有利なのは、前記コアは前記マンドレルに対する受容部を、特に有利には、当該マンドレルに嵌合する受容部を有する。
【0039】
前記コアがマンドレルに嵌合する形状であることにより、前記受容部が第2の容器の後部壁を成す場合、内容物のすべてを第2の容器から押し出すことができる。
【0040】
この実施形態において本発明は、前記コアが、前記第1の容器を向いた側においてワイパを有し、当該コアを引き出すときに、このワイパが、ディスペンス開口部の内側にある粉末またはセメント塊状物を、特にディスペンス管の内側にある粉末またはセメント塊状物を払拭除去するように構成することができる。
【0041】
このような構成により、管内に残留物が残るのを防止し、場合によってはこのような残留物がディスペンス中に分解して骨セメントの特性を損なってしまうことを防止することができる。このようにして、先にディスペンスされた骨セメントと、より後の時点でディスペンスされた骨セメントとが同じ特性を有することを保証することができる。
【0042】
さらに本発明は、少なくとも1つの体積補償エレメントが第1の容器に対して可動であるように、当該体積補償エレメントを当該第1の容器の内部スペース内へ押し込む弾性バネを介して、当該体積補償エレメントをベアリングに支持することも可能である。
【0043】
このバネは、体積補償エレメントの復帰運動を支援するものであり、これにより、骨セメント塊状物および/またはその成分による流体力学的駆動力により装置のシールと可動部品とに生じて伝達される力が低下し、この力の低下により、より薄い材料を用いて、接触圧がより低い、より低コストの構造を実現することができる。
【0044】
本発明の1つの有利な実施形態では、ディスペンス管に対する供給貫通口を有する閉鎖キャップにより、当該ディスペンス管を設けた側を閉鎖することも可能であり、これは体積補償エレメントを覆い、覆われる側の体積補償エレメントと閉鎖キャップとの間に介在するスペースと周辺との等圧化を実現するための少なくとも1つの開口を有する。その際に有利なのは、前記第1の容器の内部スペース内に体積補償エレメントを押し込むための弾性の螺旋バネを、前記閉鎖キャップと、覆われる側の体積補償エレメントとの間に配置することであり、特に有利には、当該螺旋バネは前記ディスペンス管を囲うように配置される。
【0045】
このような構成により、外部の影響(たとえば、体積補償エレメントの加圧またはブロック等)により可動性が損なわれるのを防止することができる。
【0046】
本発明の基礎となる課題はさらに、上述の構成の装置を用いたポリメチルメタクリレート骨セメントの製造方法によっても解決され、この製造方法は以下のステップを特徴とする:
A)前記第1の容器に前記PMMA骨セメントの第1のペースト成分が充填され、かつ、前記第2の容器に当該PMMA骨セメントの第2の成分が充填された前記装置を設けるステップ。前記第2の成分は有利には液体である。
B)前記第2の容器を開けるステップ。
C)前記ミキシング装置に接続されたロッドまたは管が前記第1の容器内に繰り返し押し込められて引き出されることを伴う、当該ミキシング装置の動きにより、前記2つの成分をミキシングし、前記少なくとも1つの体積補償エレメントが動くことにより、前記スライド挿入と引き出しとに起因する当該第1の容器の内容物の体積変化が補償されるようにするステップ。
D)前記ディスペンスプランジャを前記第1の容器内に進入させることにより、ミキシングされた前記骨セメントを被着させるステップ。
【0047】
ここで本発明は、当初は前記ディスペンス開口部をコアにより閉鎖しておき、前記ステップC)の後にこのコアを除去することができる。
【0048】
このコアは、装置を外部から封止する。
【0049】
さらに本発明は、第2の容器を開けるため、当該第2の容器を含むディスペンス管を有し、このディスペンス管が、ディスペンスプランジャに設けられたマンドレルに押しつけられることにより、当該第2の容器を閉鎖する膜またはフィルム/箔に孔を開け、これにより第2の容器を開けるようにすることができる。このことにより、上述の利点が奏される。
【0050】
さらに本発明は、前記ミキシング装置をディスペンス管に結合し、第1の容器内へ当該ディスペンス管を入れたり当該第1の容器外へ出したりすることにより、第1の容器内において当該ミキシング装置を動かして当該第1の容器内の内容物をミキシングすることも可能である。その際に有利なのは、さらに、第1の容器内においてディスペンス管を回転させることによりミキシング装置を回転させることである。
【0051】
このようにして、正常動作している現場の外部環境が不都合な条件であっても、成分を容易にミキシングすることができる。
【0052】
さらに本発明は、前記ステップA)の前に前記第1の容器に骨セメントの成分を充填しておき、まず先に、第1の容器の内部を脱ガス処理および滅菌処理をすることができる。その際に有利なのは、こうするためにディスペンスプランジャを定位置にロックすることである。
【0053】
このことにより、内容物を確実に滅菌状態にしておくことができる。このように確実に滅菌状態にすることにより、患者の感染を防止することができる。
【0054】
本発明は、少なくとも1つの可動の体積補償エレメントを使用することにより、ミキシング工程中に生じる体積変化に起因して骨セメントがミキシング用の装置から出ることがない、PMMA骨セメントのミキシングを行うための気密封止装置を実現できるという驚くべき認識に基づいている。このことにより、周辺に骨セメントによるコンタミネーションが生じるおそれがなく、かつ、ミキシング工程中に骨セメントに、硬化後の骨セメントを脆化させる原因となる空気やガスが混入するおそれもない、骨セメントミキシングを行うための非常に簡単かつ低コストの構造を実現することができる。
【0055】
ミキシング装置を動かす装置としてディスペンス管を使用し、かつ、骨セメントの第2の成分の容器として当該ディスペンス管を用いることにより、追加部品を省略することができる。このことにより、コストをさらに低減させることができる。
【0056】
本発明で重要なのは、第1の容器が第1の成分としてペーストを収容していることである。さらに、このペーストは空気やガスを閉じ込めていてはならず、また、第1の容器内には上澄みの気相もあってはならない。気体混入があると必ず、製造後の骨セメントの品質が低下する原因となる。ペーストは非圧縮性であり、かつ、圧縮可能な気体体積も無いので、第1の容器の内容物は完全に非圧縮性となる。ミキシング装置が取り付けられたロッドまたは管をスライド挿入して引き出すことによりミキシングすることは、本発明では体積補償エレメントを用いるだけで実施することができる。第1の容器の壁は剛性であるから、他の手段では、ロッドまたは管をスライド挿入したり引き出したりすることはできない。
【0057】
したがって本発明の基本的思想は、ペースト状の2成分のポリメチルメタクリレート骨セメントで通常使用されるスタティックミキサを用いて、押出工程とミキシング工程とを同時に行うのではなく、押出工程とミキシング工程とを時間的にも空間的にも分離することに基づいている。具体的には、最初に両ペースト状成分を相互にミキシングし、その後にのみ、形成されたセメント塊状物を押し出すようにする。このようなミキシングはここでは、手動で作動するミキサにより実現される。このようにして、ディスペンスに必要な押出力は小さくなり、セメント塊状物を押し出すために、手動で作動される低コストのセメント注入ガンを用いることができる。さらにこのことによって、ペーストの体積比が1:10ないし1:30であっても、ペーストの均質なミキシングを実現することも可能になる。本発明で重要なのは、セメント塊状物が出てくることなく、また、セメント塊状物に空気が混入することもなく、ミキシング工程中に生じる体積変動を補償するのに使用できる可動の体積補償エレメントを配置することである。
【0058】
本発明の1つの特に有利な実施例の、ポリメチルメタクリレート骨セメントの貯蔵、ミキシングおよび適用するための装置は、以下の構成要素により構成される:
a)ペースト状の成分Aのための第1のスペース(容器)を有する筒形の貯蔵容器;
b)前記筒形の貯蔵容器の一端に定位置にロックすることができるスライド可能なディスペンスプランジャ;
c)前記ディスペンスプランジャの内側に配置されたマンドレル
d)ディスペンス管;
e)ディスペンス管に対する、軸方向にスライド可能な供給貫通口を有し、かつ、前記貯蔵容器内にて軸方向に可動である体積補償エレメント;
f)前記貯蔵容器の、前記ディスペンスプランジャとは反対側の端部に配置された、当該貯蔵容器の第1の閉鎖部;
g)前記貯蔵容器に対して軸方向にスライド可能な、ディスペンス管のための前記第1の閉鎖部の供給貫通口;
h)前記ディスペンス管の端部に取り付けられており、かつ、前記体積補償エレメントと前記ディスペンスプランジャとの間のスペース内に配置されたミキシング装置;
i)前記ディスペンス管の、前記ミキサが配置された一端に配置され、かつ、前記マンドレルにより開けられるようにされた、前記ディスペンス管の第2の閉鎖部;
j)前記ディスペンス管内にて軸方向に可動であるように配置されたコア;
k)前記ディスペンス管と当該ディスペンス管の閉鎖部と、可動な前記コアの、内側の方を向いた一端とにより形成された、成分Bのための第2のスペース(容器)。
【0059】
有利には、前記装置は基本的に、医療用に通常用いられるプラスチック材料から、たとえばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、または、医療用に適した他のプラスチック材料から成る。
【0060】
ミキサが取り付けられ、かつ前記コアを有する前記ディスペンス管は、EP 2 072 114 B1 に記載の、Heraeus Medical GmbH 社(ドイツ、Wehrheim)により Palamix との名称で製造販売されているセメント注入システムをベースとする。
【0061】
ディスペンス管の第2の閉鎖部は、有利には膜として形成されている。有利には、この膜と前記ディスペンス管と前記ミキサとは、プラスチックから射出成形により単一部品として同時に形成されたものである。このようにして、第2のスペースを第1のスペースに対して確実に閉鎖することができ、また、第1のスペース内に収容されたペーストAおよびメチルメタクリレートモノマーが、第2のスペース内に侵入して成分Bに達することがないようにすることもできる。特に有利には、前記膜の厚さは10μmないし500μmである。
【0062】
前記マンドレルは有利には星形または角柱形である。このことにより、前記膜を中心から放射状に容易かつ適切に切開することができ、これにより、まず第1に成分Bを第1のスペース内に押し込んで成分Aに到達させることができ、第2に、膜の破片がディスペンス管の片側に結合したまま残って、ペーストAと成分Bとのミキシング後に当該ディスペンス管によるディスペンスを行う間にセメント塊状物中に混入することがないようにできる。
【0063】
本発明では、前記コアが前記第2の閉鎖部を向いた端部にて、前記マンドレルを受容できる中空スペースを有することができる。具体的には、前記コアと、前記ディスペンス管および当該ディスペンス管に配置されたミキサとが同一平面上に来るようにし、これにより、ペーストAと成分Bとをミキシングしている間にミキサがディスペンスプランジャの内側において容易に掻き取ることができる。このようにして、セメント塊状物が不均質になるのを防止することができる。
【0064】
ペースト状成分Aは、空気が入らないように貯蔵容器内に貯蔵しなければならない。このことは、ペースト状成分Aの上方に気相が存在してはいけないという意味も含む。このようにすれば、成分Bを導入してミキシング工程の実施中にミキサを入れたり引き出したりすることにより生じる体積の増減を補償できる圧縮可能な媒質は存在しなくなる。ミキシング工程中にペーストが出てくること、および/または、空気がペースト中に混入することは、絶対に阻止しなければならない。
【0065】
したがって本発明では、体積補償エレメントを設けるのが重要である。この体積補償エレメントは有利には、貯蔵容器内にて軸方向に可動であるプランジャにより形成され、当該プランジャは、前記ディスペンス管の供給貫通口に対応する孔を有する。可動のプランジャとして構成された体積補償エレメントは、前記閉鎖部の方向に軸方向に動くことにより、成分BがペーストAに混入することによりディスペンスプランジャと体積補償エレメントとの間に生じる体積増加を補償することができ、また、ディスペンス管がディスペンスプランジャの方向に動くことにより増加した体積を補償することもできる。ディスペンス管が閉鎖部の方向に動いたときは、体積補償エレメントがディスペンスプランジャの方向に動くことにより、当該ディスペンスプランジャと補償エレメントとの間の体積の減少が補償される。このようにして、体積増加時に空気が入り込むことなく、また、このときの圧力増加に起因して一時的に生じる体積増加時にセメントペーストが出てくることなく、ミキシングを実現することができる。
【0066】
本発明は固定具を用いて、貯蔵容器が充填中であるときに体積補償エレメントを固定して移動を防止することができる。この固定具は、この充填工程の後に、または、ペースト状成分Aと成分Bとをミキシングする前に取り外すことができる。
【0067】
本発明の他の1つの実施形態では、軸方向に変形可能でありかつディスペンス管の貫通供給口に対応する孔を有する膜により、前記体積補償エレメントを構成することができる。
【0068】
この体積補償エレメントの機能に重要なのは、当該体積補償エレメントが、第1の閉鎖部に配置されたバネにより当該第1の閉鎖部から距離を置いて配置されていることである。こうするためには、ディスペンス管を囲うように巻かれた螺旋バネが有利である。このバネは、体積が一時的に増加してその後に閉鎖部の方向に体積補償エレメントが動いた後、当該体積補償エレメントを初期位置に戻すためのものである。つまり、体積補償エレメントが初期位置に復帰できるようにするために、前記第1のスペース内に負圧をかける必要はない。
【0069】
装置の機能の点で好適には、本発明では前記コアが、前記第2の閉鎖部の方を向いた側に、ディスペンス管の内側にある成分Bの粉末固体やペースト状物質を払拭除去するワイパを有することができる。
【0070】
本発明はまた、本発明の装置を用いてポリメチルメタクリレート骨セメントをミキシングする方法も対象とする。本発明の装置において、セメントペーストAは第1のスペース内に配置され、成分Bは膜によって分離されてスペースB内に配置されている。
【0071】
前記ミキシング方法は、たとえば、
a)前記ディスペンス管を前記ディスペンスプランジャの方向に動かすことにより、前記第2の閉鎖部を前記マンドレルに当て、当該マンドレルの作用により、成分Bを貯蔵する第2のスペースが開けられるようにするステップと、
b)次に前記コアを軸方向に、前記ディスペンス管の第2の閉鎖部の方向に動かすことにより、前記第2のスペース内から、第1のスペースの境界を成す前記貯蔵容器と前記第1の閉鎖部と前記体積補償エレメントとを有する前記第1のスペース内に配置された成分A内へ、成分Bを押し出すステップと、
c)次に、セメント塊状物Cを得るために、前記ミキサを含めて前記ディスペンス管を軸方向および接線方向に動かすことにより成分BとペーストAとのミキシングを行うステップと、
d)前記ミキシングが完了した後、前記ミキサが前記体積補償エレメントの内側に接触するように、前記ディスペンス管を前記閉鎖部の方向に動かしてミキシングを完了させるステップと、
e)次に、前記ディスペンス管内からコアを引き出し、その後にディスペンスプランジャを前記第1の閉鎖部の方向に動かすことにより、前記ステップa)ないしc)において前記体積補償エレメントの軸方向の動きにより当該第1のスペースの体積変化が補償された状態で、当該ディスペンス管によって前記第1のスペース内からセメント塊状物Cを周辺へ押し出すステップ
とにより実現することができる。
【実施例】
【0072】
以下、2つの概略図を参照して本発明の詳細な実施例を説明するが、これは、本発明の範囲を限定するものではない。
【0073】
簡略化のため、各図中の同一または同様の構成要素には同一の符号を付している。斜線は、表面が分割されていることを示している。
【0074】
図1は、本発明の装置の概略的な断面図である。当該装置は、柱体状の内部スペースを有する第1の容器1を有し、この内部スペースに、PMMA骨セメントの第1の成分が充填されているか、または充填することができる。第1の容器1は、前記第1の成分としてメチルメタクリレートモノマーを含むペースト状材料を収容している。第1の容器1は側面に、当該第1の容器1の境界を成すプラスチックの筒形体の壁2を有する。第1の容器1は自身の最後尾(
図1中では底部)に、当該第1の容器1の境界面を成す柱体形のディスペンスプランジャ4を有し、最前部(
図1中では頂部)に、当該第1の容器1の境界面を成す体積補償エレメント6を有し、これは柱体形のプランジャの形状になっている。ディスペンスプランジャ4および体積補償エレメント6は、柱体軸の方向(
図1中では頂部から底部に向かう方向)に可動であるように壁2の内側に配置されており、かつ、シール8として機能するOリングを用いて、壁2に気密封止されている。
【0075】
前記体積補償エレメント6は、ガイドスリーブ10を有する供給貫通口を備えており、このガイドスリーブ10内には、ディスペンス開口部を有する筒形のディスペンス管12が通されて延在している。前記ディスペンス管12は、体積補償エレメント6および/またはガイドスリーブ10内にて前記柱体軸を中心として回転可能であるように、かつ、前記柱体軸の方向に可動であるように配置されている。前記ディスペンス管12の内部は、取り外し可能なコア14によって閉じられている。このコア14は、ディスペンス管およびディスペンス開口部を貫通する棒を介して、グリップ部品16に接続されている。グリップ部品16を用いて、ガイドスリーブ10内にてディスペンス管12を動かすことができ、これにより、第1の容器1内にてディスペンス管12を介して動かすことができる。
【0076】
ディスペンス管12内においてコア14より下方に第2の容器18が配置されており、この第2の容器18の下側(
図1中では底部)はフィルム/箔20または膜20により閉じられている。骨セメントの第2の成分はこの第2の容器18内に収容されているか、または充填することができる。第2の成分はたとえば、第1の成分(メチルメタクリレート塊状物)と混合したときに骨セメントのラジカル硬化を引き起こす液体である。これら2つの成分は、当初は、膜20および/またはフィルム/箔20とディスペンス管12とにより相互に分離されている。
【0077】
ディスペンス管12の外部に3つのミキシングベーン22が配置されており、これらのミキシングベーン22は、ガイドスリーブ10内にてディスペンス管12を動かすことにより第1の容器1の内容物をミキシングするために用いられる。したがって、これらのミキシングベーン22が、第1の容器1の内容物をミキシングするためのミキシング装置22を成す。ここでは、ミキシングベーン22はプロペラのように相互に斜めになっている。
【0078】
ディスペンスプランジャ4の内側カバー表面はマンドレル24を有し、前記膜20および/またはフィルム/箔20はこのマンドレル24に突き刺される。膜20および/またはフィルム/箔20がこのマンドレル24に押しつけられて、マンドレル24が当該膜20および/またはフィルム/箔20を切開するまで、ディスペンス管12を第1の容器1内に押し込めることにより、第2の容器18を開放することができる。膜20および/またはフィルム/箔20を確実に切開し、または、特に良好に孔を確実に開けるように刺すため、マンドレル24は、円錐体または角錐体とするか、もしくは、各辺を成す複数の稜を有する複数叉の星形とすることができる。
【0079】
他の1つの択一的な実施形態では、膜20に代えて、スナップ係合手段を有する栓(図示されていない)がディスペンス管12に備えつけられている場合、ディスペンスプランジャ4にはマンドレル24に代えて、被スナップ係合手段が設けられ、前記栓のスナップ係合手段と係合することによりディスペンス管12内から引き抜かれ、これにより第2の容器18を開放することができる。
【0080】
前記2つの成分は、空気の混入がないように2つの容器1,18内に収容されており、および/または、いかなる空気や気体の混入もないように当該2つの成分は2つの容器1,18内に導入される。さらに、前記2つの容器1,18の内部は充填前に脱ガス処理および滅菌処理されている。第1の容器1の内側には空気が存在しないので、第1の容器1の内容物を圧縮させることはできない。よって、ディスペンス管12を押し込んだり引き出したりすると、第1の容器1の体積は変化する。この体積補償は、体積補償プランジャ6の軸方向移動により、および/または、前記ディスペンスプランジャ4の軸方向移動により実現することができる。このようにして、第1の容器1の内容物が出ることなく、また、当該第1の容器1内に空気を引き込むことなく、第1の容器1の内容物をミキシングすることができる。
【0081】
前部(
図1中では頂部)において、外部のプラスチック筒形体2が蓋部26により閉鎖されている。この蓋部26と体積補償プランジャ6との間に介在するスペースから空気を逃がせるようにするため、当該蓋部26に開口部28が設けられている。この介在スペースが気体ばねとして作用するように、前記開口部28を無くすことも可能であるが、前記蓋部26と体積補償プランジャ6との間に鋼ばね30を設け、これが復元部材として機能するようにするのが有利である。ディスペンス管12が第1の容器1内にスライド挿入されることに起因して体積補償プランジャ6が蓋部26の方向に押しやられると、ディスペンス管12を再び第1の容器1内から外に引き戻すときに、前記鋼ばね30が体積補償プランジャ6をディスペンスプランジャ4の方向に押し返すのを補助する。
【0082】
コア14は第2の容器18の方向に、マンドレル24を反転した像である凹部を有する。この構成により、コアをディスペンス管12内にスライド挿入させると、マンドレル24を上方向に前記凹部内に差し込むことができる。こうするためには、コア14を把持部16に接続する前記ロッドを十分に長くしなければならない(つまり、
図1の概略図に示した長さよりも長くしなければならない)。このようにすると、第2の容器18の内容物全てが第1の容器内に移されることを保証することができる。コア14の下側端面にワイパリップ(図示されていない)を設けると、残留物を全く残すことなく、ディスペンス管12から第2の容器18の内容物を全て除去できることを保証することができる。
【0083】
プラスチック体2の下側は、当該プラスチック体2表面に配置されたスナップ係合部32を備えている。このスナップ係合部32は、ディスペンスプランジャ4が下方に押されてプラスチック体2から出ないことを保証するために使用できるものである。ディスペンスプランジャ4がスライド挿入されると、このスナップ係合部32は僅かに壁の中に沈みこむ。壁2の下側には、ディスペンスプランジャ4のシール8をより大きく圧縮させる小さい突起も設けられている。
【0084】
図2は、本発明の異なる構成の装置の概略的な断面図であり、この装置では、体積補償エレメントとして機能するものとして設けられているのはディスペンスプランジャ4だけである。この装置の構成は、幾つかの細部を除いて
図1の構成と同じである。
【0085】
図2の装置は体積補償プランジャおよび蓋部を有しておらず、プラスチック体2の前部(
図2中では頂部)は単に閉じられており、プラスチック体2が、この場所におけるカバー壁3を成している。この実施例では、ディスペンス管12のスライド挿入および引き出しによる体積補償はもっぱら、ディスペンスプランジャ4の軸方向の移動によってのみ行われる。この実施形態では、復元部材として機能するばね要素は存在しない。
【0086】
ここではディスペンスプランジャ4は、壁2に対して2つのシール8により気密封止されている。他の符号についてはすべて、
図1の説明を参照されたい。
【0087】
図1および
図2に示した構成は、射出成形技術によりプラスチック材料から容易かつ低コストで製造することができる。
【0088】
明細書の上記部分と特許請求の範囲とにおいて開示した本発明の各特徴、ならびに各実施例は、それぞれ単独でも、また任意の組合せでも、本発明の種々の実施形態を実施するのに重要な要素となり得る。