特許第5921616号(P5921616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5921616延伸ロール用の材料を評価するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921616
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】延伸ロール用の材料を評価するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/00 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
   G01N3/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-159324(P2014-159324)
(22)【出願日】2014年8月5日
(62)【分割の表示】特願2009-551676(P2009-551676)の分割
【原出願日】2008年2月19日
(65)【公開番号】特開2015-7635(P2015-7635A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2014年9月4日
(31)【優先権主張番号】60/903,735
(32)【優先日】2007年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/888,185
(32)【優先日】2007年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ディーン ヴィー ニューバウアー
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−169169(JP,A)
【文献】 特開2004−299984(JP,A)
【文献】 赤瀬正純,ステンレス用NAディスクロール,ニチアス技術時報,日本,1993年,Vol.1/No.278,pp.10-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 − 3/62
G01N 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ロール用のミルボード材料の性能特性を評価する方法であって、
前記ミルボード材料からなる複数のプレートを提供し、
該複数のプレートを長軸に沿って同軸に揃えてカートリッジを形成し、
前記カートリッジの第1の端部とピストンの近接端部との間に金床を提供し、
圧縮カートリッジを形成するのに十分な圧縮力を、前記ピストンにより前記長軸に沿って加える各ステップを有してなり、
前記圧縮カートリッジが所定バルク密度を有し、前記方法はさらに、
前記ピストンにより加えられた圧縮力を定量化し、
前記ピストンによる圧縮力を加えつつ、前記圧縮カートリッジを前記長軸の周りに回転して前記圧縮カートリッジの外周表面を仕上げ、
前記延伸ロールの製造前に前記圧縮カートリッジの材料特性を測定することにより、前記性能特性を測定する各ステップを有してなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記圧縮カートリッジが圧縮長さを有し、該圧縮カートリッジの圧縮長さを決定するステップをさらに有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記所定のバルク密度が0.90g/ccから1.20g/ccであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記性能特性は、圧縮率、復元率および弾性、または硬さであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記圧縮カートリッジの外周表面を仕上げるステップは、前記ピストンを前記長軸の周りに回転させることなく、前記圧縮カートリッジを前記長軸の周りに回転するステップを有してなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ピストンを前記長軸の周りに回転させることなく、前記圧縮カートリッジを前記長軸の周りに回転することを許容するために、前記金床と前記ピストンの近接端部との間に挿入されるスラストベアリングを提供するステップをさらに有してなることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記金床は、前記カートリッジを把持するとともに滑りを防止するための1以上の円錐圧子を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2007年2月27日出願の米国仮特許出願第60/903,735号の米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、板ガラスの製造に使用される、延伸ロールの製造に使用される材料の特性を評価するための、改良された方法およびシステムに関する。圧縮率、復元率および弾性並びに硬さを、本発明の下で測定できる。
【背景技術】
【0003】
近年、視聴者に対してより大きくかつより鮮明な映像を提供するテレビおよびモニタに対して重大な関心が注がれている。通常、そのようなより大型のスクリーンデバイスは、画面用に大型の板ガラス部材を使用する。そこからシートが形成されるガラスリボンを引き延ばして公称板厚を制御するために、板ガラスの製造には延伸ロールが使用される。通常、延伸ロールの製造には数時間を要する。通常、延伸ロールを製造するために、焼成され、その後シャフト状に圧縮されるディスクを製造するために穿孔される、ミルボード等のロール材料から延伸ロールが作製される。これらの延伸ロールは、続いて、特定の表面仕上げのために旋盤において切削され、その後、板ガラスの製造に使用される機械に取り付けるために成形される。延伸ロールが材料特性(例えば硬さ)のある基準を最終的に満たさない場合、ロールを分解し、作り直さなければならない。2つの延伸ロールの組を材料の1つのロットから作製しなければならないため、材料が許容できない場合、時間およびコストを大きく損失することとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、ロール材料は、広範囲に亘る材料の仕様にしたがって購入されるが、受け入れる材料が延伸ロールに製造された際に仕様を満たさないという条件の下では、受け入れる材料の試験の存在意義がない。例えば、過度の圧力が延伸ロールに作用する場合、圧縮率、復元率および弾性という材料特性は重要である。さらに、材料の硬さは、製造中に温熱条件およびガラスとの接触にどれだけそのロールが耐えることができるかという尺度として重要である。ミルボード材料のあるロットが所望の仕様を満たさないならば、延伸ロールが製造され、使用されるまで、この不具合は分からないであろう。この不具合により、時間およびコストの双方が大きく損失することとなる。
【0005】
したがって、これらの延伸ロールの製造前に、延伸ロールの製造に使用する材料の特性を評価するための方法およびシステムの技術が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、延伸ロールの製造に使用される材料の特性を評価するためのシステムおよび方法を提供する。一態様によれば、材料特性を延伸ロールの製造前に評価してもよい。一態様において、材料から試験用カートリッジを製造し、圧縮率、復元率および弾性、並びに硬さ等の特性を測定できる。
【0007】
一態様において、材料からなる複数のプレートを軸に沿って揃え、圧縮カートリッジを形成するために軸に沿って圧縮力を加える、材料の特性を評価する方法を提供する。一態様において、これらのプレートは単一の材料ロットから形成される。
【0008】
一態様において、カートリッジは、カートリッジの表面仕上げを行うために、切削面と接触される。さらなる態様において、圧縮荷重を少なくともカートリッジの一部に伝達するピストン、およびカートリッジを軸の周囲に回転させる手段を備えた、カートリッジを評価するためのシステムを提供する。一態様において、システムは、圧縮荷重を定量化する手段を備える。さらなる態様において、システムは、カートリッジの外表面を仕上げる手段を備える。
【0009】
本発明のさらなる態様は、詳細な説明およびこれに続く特許請求の範囲に一部が示され、一部が発明の詳細な説明から派生し、あるいは本発明を実施することにより知ることができる。上述した概要および後述する詳細な説明の双方が説明のためにのみ用いられ、開示されおよび/またはクレームされた発明に限定されないものであることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、詳細な説明とともに本発明の特定の態様を示し、限定することなく本発明の原理を説明するためのものである。
図1A】本発明の一実施形態によるカートリッジを形成し、試験するためのシステムの概略斜視図
図1B】本発明の一実施形態による、図1Aに示すシステムの金床部材の例を示す斜視図
図2】本発明の他の実施形態によるカートリッジを形成し、試験するためのシステムの概略正面立面図
図3A】より短い長さの延伸ロールの例における延伸ロールの寿命対焼成バルク密度の関係を示すグラフ
図3B】より長い長さの延伸ロールの例における延伸ロールの寿命対焼成バルク密度の関係を示すグラフ
図4A】より短い長さの延伸ロールの例における延伸ロールの寿命対平均デュロメータ硬さ値の関係を示すグラフ
図4B】より長い長さの延伸ロールの例における延伸ロールの寿命対平均デュロメータ硬さ値の関係を示すグラフ
図5A】より短い長さの延伸ロールの例における平均ショアDデュロメータ硬さ値対焼成バルク密度の関係を示すグラフ
図5B】より長い長さの延伸ロールの例における平均ショアDデュロメータ硬さ値対焼成バルク密度の関係を示すグラフ
図5C】より短い長さおよびより長い長さの延伸ロールの例における平均ショアDデュロメータ硬さ値対焼成バルク密度の関係を示すグラフ
図6】本発明の一実施形態による、カートリッジの圧縮率、復元率および弾性の算出に使用する寸法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の本発明の説明が、現在知られている実施形態のうちの最良の可能な教示として提供される。このために、当業者であれば、本発明の有利な効果を得つつも、本明細書に記載された各種実施形態に多くの変更を加えることができることを認識し、理解するであろう。他の特徴を用いることなく、本発明の特徴のいくつかを選択することにより、本発明の所望とする効果のいくつかを得ることができることも明らかであろう。したがって、当業者は本発明に対して多くの変更および改良が可能であり、特定の状況においては望ましく、本発明の一部であることが理解されよう。よって、以下の説明は本発明の原理を説明するために使用され、これに限定されるものではない。
【0012】
本明細書において使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈が別の方法で明らかに指示しない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば「プレート」の参照は、その文脈が別の方法で明らかに指示しない限り、2以上のそのような「プレート」を含む。
【0013】
本明細書においては、範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」他の特定の値まで、のように表現することができる。範囲がそのように表現される場合、他の実施形態は、ある特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞の「約」を使用することにより値が近似値として表現される場合、特定の値が他の実施形態を構成することが理解されよう。さらに、各範囲の端点が、他の端点に関連して、および他の端点とは無関係に重要であることが理解されよう。
【0014】
上記に簡単に説明したように、本発明は、延伸ロールの製造前に、延伸ロールの製造に使用される材料の特性を評価するシステムおよび方法を提供する。
【0015】
一実施形態において、本発明は、ミルボード材料のプレートからなる圧縮カートリッジを形成し、そのカートリッジの材料特性を評価するシステムを提供する。例えば図1Aに示すように、システム100の一実施形態は、カートリッジを圧縮するためのピストン132、およびモータ102等のカートリッジを回転させる手段を備える。ピストンがほぼ直線状の経路に沿って移動可能に構成されることが理解されよう。例えば、ピストンは、圧縮荷重がカートリッジへ伝達されない第1の位置、および圧縮荷重がカートリッジの少なくとも一部に伝達される第2の位置の間を移動することができる。他の実施形態において、システムは、ハウジング110、真空掃除システム、少なくとも1つの金床、および/またはスラストベアリング146を備えることもできる。
【0016】
一実施形態において、モータシャフト104はモータ102から長軸に沿って延び、この軸の周囲に回転する。モータシャフト104の遠位末端部は、カートリッジの一端部と接触してもよく、これによりカートリッジを回転させてもよい。一実施形態において、モータシャフト104の遠位末端部にモータシャフトアダプタ106を配置してもよい。モータシャフトアダプタは、モータシャフトが金床表面と異なるサイズ(すなわち、小さいかまたは大きい直径を有する)である場合に必要となる可能性がある。
【0017】
システムの別の実施形態において、油圧シリンダ130が、選択的にカートリッジを圧縮するために構成される。他の実施形態において、油圧シリンダ130は選択的に移動可能であり、ピストンの第1の端部においてピストン132と連結される。作動時において、ピストンの第2の端部を、カートリッジの一端部と接触するように構成できる。他の実施形態において、ピストン132の第2の端部をスラストベアリング146と接続させてもよく、これによりモータの回転によってカートリッジを回転できるが、結果としてピストン132および油圧シリンダ130の回転を阻止する。ある実施形態において、スラストベアリングは油圧シリンダと接続されている。一実施形態において、油圧シリンダは、カートリッジ上で圧縮荷重を定量化するためのフォースゲージ134を備える。他の実施形態において、カートリッジ上において荷重を測定または定量化するゲージまたはデバイスが提供される。
【0018】
一実施形態において、カートリッジが圧縮および回転されるときにカートリッジを把持するために、少なくとも1つの金床が使用される。例えば、図1Aに示すように、第1の金床140を、ピストン132の端部およびカートリッジの第1の端部の間に挿入してもよい。カートリッジを把持するとともに滑りを防止するために、第1の金床140は、図1Bに示すように、1以上の円錐圧子144を有していてもよい。第2の金床142を、カートリッジの第2の端部およびモータシャフトアダプタ106の間に挿入してもよい。第2の金床142も、上述した1以上の円錐圧子144を有していてもよい。ある実施形態においては、第1および第2の金床の双方を有していてもよい。他の実施形態において、システムは第1または第2の金床のいずれかを有していてもよく、そのいずれも有していなくてもよいことが理解されよう。
【0019】
第1の金床140が回転力をピストンに伝達せずにカートリッジとともに回転するように、上記と同様に、ピストン132の第2の端部および第1の金床140の間にスラストベアリング146を挿入してもよい。したがって、ある実施形態においては、カートリッジの一端部が、モータシャフト104の遠位末端部と接触しつつ、カートリッジの他端部がピストンの第2の端部と接触する。他の実施形態において、上述した金床を、カートリッジと、モータシャフトおよびピストンのいずれかまたは両方との間に配置してもよい。さらに上述したように、スラストベアリングを、カートリッジおよびピストンの間に単独で、あるいは金床とともに配置してもよいことが理解されよう。
【0020】
ある実施形態において、システムはハウジング110を備える。一実施形態において、ハウジング110は細長く、蓋112およびトレイ114を備える。ハウジングの少なくとも一部(例えばハウジング蓋112)が、カートリッジに近接して位置する第1のハウジング位置と、ハウジングの少なくとも一部(例えばハウジング蓋112)がカートリッジから離れる第2のハウジング位置との間をハウジングが移動できるようにするために、蓋およびベースをヒンジ116により接続してもよい。ある実施形態において、ハウジングは、カートリッジ(あるいは複数のプレート)を保持するトレイを備えていてもよい。トレイは、ソレノイド150等により上下できる。例えば、プレートをハウジングに挿入する際、トレイは、「上」位置にあり、その後プレートがカートリッジに圧縮される際に、下げられるものであってもよい。ハウジング110内においてカートリッジの長さを測定するために、ハウジングは定規152または他の測定器をも備えるものであってもよい。他の実施形態において、定規をハウジングから分離させて配置してもよい。またシステムは、真空掃除システム(さらに後述する)とともに使用するために、ハウジング110と連通する1以上の真空ポートを有していてもよい。例えば、図1Aに示すように、2つの真空ポート120を、ハウジング110の蓋112に沿って配置してもよい。
【0021】
他の実施形態において、システムは、カートリッジの外表面を仕上げる手段を備える。例えば、ハウジング110は、切削面118を備えていてもよい。砂、バフ、切削あるいはそれ以外の表面を仕上げるデバイス等の、他の表面仕上げを用いてもよい。典型的な実施形態において、切削面118は、蓋112と接続され、ハウジング110の長軸にほぼ平行な方向に蓋112に沿って延びる刃を有するものとすることができる。この実施形態において、切削面118は、カートリッジがハウジング110内にある場合に、カートリッジの長軸にほぼ平行な方向に延びる。
【0022】
上述したように、ハウジングはカートリッジの周囲に配置可能に構成される。その結果、切削面118は、切削面118がカートリッジの外周面から離れる第1の非接触位置と、切削面118の少なくとも一部がカートリッジの外周面と接触する第2の接触位置との間に配置可能である。一実施形態において、切削面118は、切削面がカートリッジの外周面の少なくとも一部と接触する第3の接触位置に配置可能である。一実施形態において、第3の位置は、所定半径を有するカートリッジを形成するように構成される。他の実施形態において、切削面を、ハウジングの一部としてではなく、システムにおける他の場所に配置してもよい。例えば、一実施形態において、システムはハウジングを備えていなくてもよく、カートリッジの表面を仕上げるために、切削面を他の手段によりカートリッジの近傍に配置してもよい。典型的な実施形態において、切削面がカートリッジに押しつけられ、引っかかってしまうことを防止するように、ヒンジ116を、ヒンジが下げられるにつれてよりゆっくりとカートリッジに近づくように構成された、テンションヒンジからなるものとすることができる。
【0023】
一実施形態において、システム100は真空掃除システムも備える。切削面118がカートリッジを切削あるいは成形するため、切削片の屑がでることが多い。真空掃除システムを、カートリッジの周囲の領域(例えばハウジング内の領域)からこれらの切削片を除去するために使用してもよい。一実施形態において、真空掃除システムは、1以上の真空ポート(例えばハウジング110の蓋112内に配置された真空ポート120)、1以上の真空ポートに接続された1以上の送気管、空気源、空気レギュレータ、閉止弁、および送気管の他端部に接続された切削片廃棄用の真空システム(例えば工場の掃除機またはゴミ収集機)を備える。他の実施形態において、真空システムは、カートリッジ表面の仕上げまたは切削中に、屑あるいは他の切削片を収集する、ハウジング外部の1以上のホースを備える。
【0024】
一実施形態において、本発明は、延伸ロールの製造に使用される材料の特性を評価する方法を提供する。一実施形態において、本発明の方法は、試験される材料(例えばミルボード材料)から形成される複数のプレートを提供する。一実施形態において、複数のプレートは、各ロール用のロット材料のサンプリングを受け入れるための、十分な数の試験サンプルを含む。例えば、当業者であれば理解できるように、Mil−Std−414またはANSI/ASQC Z1.9の下では、ロットサイズ、すなわちロールを作製するのに必要とされるディスクの数が、800〜1300ディスクの範囲にあれば、標準指示基準の下で単一のサンプリングのために必要とされるサンプルサイズは、30〜35ディスクであろう。他の実施形態において、プレートは、カートリッジを形成するために共通の長軸に沿って同軸に揃えられ、圧縮されたカートリッジを形成するために、長軸に沿って作用する力により圧縮される。一実施形態において、プレートは、ハウジング110のトレイ114内において揃えられる。この実施形態において、ベースは、複数のプレートを受け入れるよう、すなわち統計的に基づくプレートのサンプルサイズに構成される。
【0025】
揃えられたプレートは、その後油圧シリンダ130およびピストン132の力により、モータシャフトアダプタ106の抵抗に対して圧縮される。一実施形態において、油圧シリンダおよびピストンを、約50〜約15,000psi(344800〜103400000Pa)、あるいは約100〜約12,500psi(689500〜86190000Pa)、より好ましくは約100〜約10,000psi(689500〜68950000Pa)の圧縮力を加えるように構成する。別の実施形態において、圧力計を、少なくとも圧縮の範囲に亘って加えられた圧力を測定するよう構成する。この実施形態において、加えられる圧力が所定の安全圧力を超える場合、圧力計を特定された警告ゾーンを有するものとすることもできる。上述したように、カートリッジの端部においてプレートを把持するよう構成された金床を、滑りを防止するために、ピストンとプレートとの間、およびモータシャフトアダプタとプレートとの間に挿入してもよい。
【0026】
さらなる実施形態において、カートリッジに加えられる圧縮力を、あらかじめ定められたものとすることができる。例えば、圧縮力は、延伸ロール製造工程において延伸ロールに加えられる力と類似するものとする必要があるかもしれない。カートリッジに対して類似の圧力を使用することは、カートリッジが製品延伸ロールと同様の方法により作製されることを実質的に保証する。したがって、カートリッジの材料特性は、同じ材料で作製された製品延伸ロールの材料特性と実質的に同一となるであろう。一実施形態において、カートリッジは、所定の圧縮力下における圧縮長さまで圧縮される。定規152は、圧縮前後のカートリッジの長さを測定するために使用される。カートリッジを形成する際に、所定数のプレートが使用できることが理解されよう。別の実施形態によれば、カートリッジは所定のバルク密度まで圧縮され、そのバルク密度を達成するために必要とされる圧縮力を、その後定量化できる。ある実施形態において、所望とされる所定バルク密度は、所定バルク密度を達成するために必要な所定圧縮長さを計算することにより達成できる(下記の実施例6を参照)。他の実施形態において、所望のバルク密度は、約0.95g/cc〜約1.05g/cc(例えば、1.00g/cc)である。他の実施形態において、所望のバルク密度は、約0.9g/cc〜約1.20g/ccである。
【0027】
当業者であれば理解するように、ミルボード材料のディスクが延伸ロールの製造に使用される。典型的に、ディスクは、ディスクをシャフトに取り付けるために除去される中央部分を有する。本発明の他の実施形態において、圧縮カートリッジを形成するために使用されるプレートは、製品延伸ロールの形成のために使用されるディスクの孔空けされた部分、すなわち中央部分を有する。したがって、ある実施形態において、プレートは、同一あるいは実質的に類似の寸法を有する。ある実施形態において、プレートは円形であり、圧縮カートリッジは実質的に円筒形である。ある実施形態において、単一ロットのミルボード材料(あるいは延伸ロールの製造に使用される他の材料)から複数のプレートが提供される。使用に際し、延伸ロールはペアで使用され、双方のロールは単一ロットのミルボード材料から製造されなければならない。複数のプレートが単一ロットのミルボード材料から選択される場合、圧縮カートリッジの評価された材料特性は、同一のロット材料から形成された製品延伸ロールの材料特性と類似するであろう。他の実施形態において、ミルボード材料から形成されたプレートは、圧縮カートリッジを形成する前に焼成される。他の実施形態において、ミルボード材料から形成されたプレートは焼成されない。他の実施形態によれば、圧縮カートリッジは、その長軸の周囲に回転される。一実施形態において、カートリッジは、少なくとも最小の圧縮力の下にあるときに回転される。上述した切削面118により例示される切削面は、カートリッジの外周面の少なくとも一部と接触するように構成される。一実施形態において、カートリッジの外周面の少なくとも一部を、所望の仕上げ面が得られるように、切削または成形することができる。他の実施形態において、カートリッジの外周面の少なくとも一部を、例えば限定されない所望とする直径となる所望寸法に切削または成形することができる。
【0028】
一実施形態において、切削面は、所望とする表面仕上げが得られるように、カートリッジに対して、例えばカートリッジの接面とほぼ平行な約0度から、カートリッジの接面とほぼ垂直な約90度の間の角度がつけられてもよい。例えば限定されないが、切削面をカートリッジに対して約30度の角度としてもよい。
【0029】
ある実施形態において、正確な硬さ試験のための適切な表面仕上げがなされるように、カートリッジを特定の回転速度で回転してもよい。一実施形態において、回転速度は約500〜約1500rpmであり、約600〜約1000rpmであってもよく、より好ましくは約700〜約900rpm(例えば800rpm)である。ある実施形態において、例えば限定されることを意味するものではないが、約25度から約35度の間の切削面角度と約700〜約900rpmのカートリッジの回転速度との組み合わせ等の、切削面角度と特定の回転速度との組み合わせを、適切なカートリッジ表面を得るために使用できる。所望の表面が得られた後、カートリッジの外表面の少なくとも一部のデュロメータ硬さ値を決定できる。ある実施形態において、カートリッジの少なくとも一部の硬さは、ショアD硬さ試験にしたがって測定される。他の実施形態において、ショアA硬さ試験、ロックウェル硬さ試験、または他の硬さ試験を使用してもよい。上述したように、工程中に出る切削ゴミを除去するために、カートリッジの切削中または切削後に、真空掃除システムを使用できる。
【0030】
最後に、本発明を特定の図面および特定の実施形態に関して説明したが、本発明がそれに限定されるべきものではなく、後述する特許請求の範囲に規定された本発明の精神およびその範囲から逸脱することなく、種々の変形が可能であることが理解されよう。
【実施例】
【0031】
本発明の原理をさらに明確なものとするために、本願にクレームするセラミック製品および方法がいかにして作製されかつ評価されるかについての完全な開示および説明を当業者に提供すべく、下記に実施例を示す。これらは、単に発明の具体例を意図するものであり、発明者が発明と見なす範囲を制限することを意図するものではない。数(例えば、量、温度等)に関して、正確さを保証するために努力がなされた。しかしながら、いくらかの誤差および偏差が存在した可能性がある。別の方法で示されない限り、パーツは、重量パーツであり、温度は摂氏または大気温度であり、圧力は大気圧または大気圧に近い圧力である。
実施例1:延伸ロールの寿命対焼成バルク密度
どのレベルの焼成バルク密度が最良の延伸ロール寿命密度と相互に関連するかを決定するために、長さが異なる(図3Aに示す短い長さ、および図3Bに示す長い長さ)多数の延伸ロールに対して試験を行った(数日に亘って測定した)。図3Aに示すように、短い長さの延伸ロールについては、バルク密度が約0.95g/cc〜約1.05g/ccの場合に最良のロール寿命を得ることができる。図3Bに示すように、長い長さの延伸ロールについては、バルク密度が約1.00〜約1.05g/ccの場合に最良のロール寿命を得ることができる。
【0032】
これらのバルク密度値を、試験用カートリッジを用意する際に使用できる。例えば、試験用カートリッジを、短い長さの延伸ロールをシミュレートするために用意することができる。ミルボード材料の特性を測定するために、カートリッジを、約0.95g/cc〜約1.05g/ccのバルク密度となるように圧縮してもよい。カートリッジを圧縮した後に測定した材料特性は、短い長さの延伸ロールの製品に使用される場合、同じ材料の特性と実質的に類似するであろう。
実施例2:延伸ロールの寿命対平均ショアDデュロメータ硬さ
延伸ロールの硬さおよび延伸ロールの寿命(数日に亘って測定される)の間の相関を決定するために、異なる長さの多数の延伸ロールに対して試験を行った。これらの試験のために、ショアDデュロメータ硬さ計を用いて硬さを測定した。図4Aに示すように、短い長さの延伸ロールについては、ロールの硬さが約40〜約45の場合に、最良のロール寿命となる。図4Bに示すように、長い長さの延伸ロールについては、ロールの硬さが約40〜約50の場合に、最良のロール寿命となる。
【0033】
一例において、仕上げられたロール用の最良のデュロメータレベルに関する知識は、ミルボード材料のロットおよび延伸ロールを生産するためのそれらの適合性を評価するための測定基準を提供できる。例えば、ミルボード材料のあるロットのプレートからなる試験用カートリッジを、上述したようにカートリッジに圧縮でき、表面を仕上げることができる。カートリッジの部分のショアDデュロメータ硬さを測定でき、例えば図4Aおよび4Bに示す最良のデュロメータレベルと比較することができる。
実施例3:ショアDデュロメータ硬さと延伸ロールの焼成バルク密度との相関
図5A、5Bおよび5Cは、焼成バルク密度と平均デュロメータ硬さとの相関を示す図である。これらの図に示すように、変数の間には正相関がある。しかしながら、試験実施時のわずかな測定誤差(デュロメータ硬さの測定誤差、および程度は小さいがプレート重量の測定誤差等)により、図はデータ点が大きくばらつき、相関係数を悪化させていることを示している。しかしながら、基本的には、延伸ロール(したがって試験用カートリッジ)の密度が高いほど、デュロメータ硬さ値は大きくなる。図5Cは、図5Aおよび図5Bにおける平均デュロメータ読み値の範囲がオーバーラップしていることから、図5Aおよび図5Bに示すデータを組み合わせたものであり、デュロメータ硬さと焼成バルク密度とのより明確な相関を示している。
実施例4:テスト用カートリッジと製品延伸ロールとのショアDデュロメータ硬さの比較
同一のミルボード材料から作製された試験用カートリッジおよび製品延伸ロールを測定するための試験を行った。表1に示すように、試験用カートリッジを用いた測定値は、延伸ロールを用いた測定値と実質的に類似するものとなった。この試験を行う際、シャフトの各端部(すなわち駆動端およびアイドル端)に材料を有し、その間には材料を有さない延伸ロールを使用した。シャフトの各端部の「A」および「B」欄は、シートガラスの製造時にペアとして利用される延伸ロールのそれぞれを表す。上述したように、延伸ロールはペアで使用され、双方のロールは同一ロットの材料からなる。「全体平均」欄は、製品延伸ロールにおける材料の平均ショアDデュロメータ測定値を提供する。一方「試験用平均」欄は、同一材料ロットから作製した試験用カートリッジの平均ショアDデュロメータ測定値を提供する。この特定の試験から分かるように、製品延伸ロールの平均ショアDデュロメータ測定値は42であり、試験用カートリッジの平均ショアDデュロメータ測定値は41であった。
表1 あるミルボードロットから完成された延伸ロールと、同一ロットからのプレートを用いた試験用カートリッジとの比較
【0034】
【表1】
【0035】
実施例5:試験用カートリッジの過度の圧縮の効果およびショアD硬さに及ぼす影響
1.025g/ccの目標バルク密度を達成するために、計算するのではなく、試験用カートリッジの圧縮長さを固定して試験を行った。表2に示すように、固定圧縮長さは、1.025g/ccの所望とする目標密度を達成するために必要とされるものよりも短かった(すなわちカートリッジは過度に圧縮された)。過度に圧縮されたカートリッジのその結果生じるバルク密度は、「実際の圧縮長さに基づく推測されるバルク密度」の欄に示すように、目標バルク密度よりも高かった。1〜6欄は、カートリッジの軸に沿った3つの位置(すなわち左、中央および右)における測定値、およびカートリッジを180度回転させた後の同一の3つの位置における測定値を示す。「平均デュロメータ」欄から分かるように、カートリッジを過度に圧縮することにより、デュロメータ硬さ値は増加した(35〜50の仕様許容差を超えるものもあった)。さらに、その値は同一ロットから得た製品ロールの平均ショアDデュロメータ硬さよりも高かった。硬すぎる(すなわち、仕様許容差よりも高い)製品ロールを使用することの1つの欠点は、ロールが製造中のガラスに割れまたは他の不良を引き起こすことである。
表2 デュロメータ硬さにおける過度に圧縮したカートリッジの効果
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示すように、実際の圧縮長さは、そうあるべきであった長さよりも短く、よって決定されたデュロメータは高い。さらに、所望の目標バルク密度は、好ましくは約1.025g/ccであるが、他の例において、バルク密度を約1.09g/ccに変更できる。
実施例6:所定バルク密度を得るために必要な圧縮カートリッジ長さの算出
上述したように、本発明の一実施形態において、カートリッジを所定バルク密度に圧縮してもよく、そのバルク密度を得るために必要な圧縮力を定量化できる。ある実施形態において、目標バルク密度を得るために必要な圧縮カートリッジ長さを算出することにより、所定のバルク密度値を決定できる。表3は、必要とされる圧縮長さを算出するために使用できる計算を示す。
表3 試験用の圧縮長さの算出
ここで、
ρ=目標バルク密度=1.025g/cm
r=積層されたプレートの半径=3.2258cm
=圧縮された長さにおける試験用カートリッジの堆積=
W=30枚プレートが積層された試験用カートリッジの重量=
M=所望バルク密度を達成するための試験用カートリッジの圧縮長さ=
ρ=w/Vであり、Vについて解くと、V=w/ρ
また、V=πr
したがって :
w/ρ=πrMであり、Mについて解くとM=w/(ρπr
M=w/((1.025g/cm)(3.14...)(3.23cm)
M=(w/33.50800821g/cm)×(1インチ/2.54cm)
M=w(1インチ)/85.11034086g
したがって、式
M=w(1インチ)/85.11g
を圧縮長さを求めるために使用する。一例において、この方法論によって圧縮長さを算出できる。作業者は、所望とする焼成プレートの目標密度および半径を変更できることも理解されよう。
実施例7:製品延伸ロールに適用される条件をシミュレートするために必要とされるカートリッジ圧の算出
上述したように、一実施形態において、ある材料ロットが延伸ロールの製造に使用するのに適しているかどうかを決定するために、カートリッジの特性が測定される。カートリッジの特性を測定する1つの方法は、使用時に延伸ロールが受ける条件をシミュレートすることである。例えば、使用時に延伸ロールが既知の圧力を受けるならば、各種特性を測定または決定するために、試験用カートリッジに、同様の圧力を受けさせることができる。ある実施形態において、試験は、材料が焼成された試験用カートリッジのものとすることができる。試験は、材料が焼成されていない試験用カートリッジのものとすることもできる。いずれかまたは双方の場合において、材料特性の測定値(例えばこれに限定されるものではないが圧縮率、復元率および弾性)を、材料が必要な仕様を満たすか否かを決定するために、製造元が提供するデータと比較できる。以下の式は、8.625インチ(21.91cm)の直径の水圧ラムを備えたシステムにおける延伸ロールに対する、および2.5インチ(6.35cm)の直径の水圧ラム(例えばピストン)を備えたシステムにおけるカートリッジに対する200psi(1379000Pa)の圧力をシミュレートするために必要な計算を示す。
【0038】
F=PA=圧力×面積
=(200)×(8.625/2)×π
=11685lbs(5300kg)
システムが試験用カートリッジに作用するこの力に適合するようにするために、試験器における水圧ラムの直径を用いて必要な圧力を算出できる。
【0039】
11685lbs=PA=圧力×面積
=P×(2.5/2)×π
P=2380psi(16410000Pa)
必要な圧力が算出されると、下記の式に示すように、圧縮率、復元率および弾性等の各種材料特性を算出できる。ASTEM F36の手順である「ガスケット材料の圧縮率および復元率のための標準試験方法」に基づくと、圧縮率および復元率は下記の式により算出される。
【0040】
圧縮率、%=(P−M)/P×100%
復元率、%=(R−M)/(P−M)×100%
ここで、「P」は初期負荷下におけるプレート(すなわちカートリッジ)の厚さ(ミリメートルまたはインチ)であり、「M」は全負荷下における厚さ(ミリメートルまたはインチ)であり、「R」は復元した厚さ(ミリメートルまたはインチ)である。これらの値を図6に示す。弾性は下記の式を用いて同様に算出できる。
【0041】
弾性、%=(R−M)/M×100%
上述した値は例示を目的とするものであり、本発明の実施形態が上述した値に限定されることを意図するものではないことが理解されよう。
【符号の説明】
【0042】
100 システム
102 モータ
104 モータシャフト
106 モータシャフトアダプタ
110 ハウジング
112 蓋
114 トレイ
116 ヒンジ
118 切削面
120 真空ポート
130 油圧シリンダ
132 ピストン
140,142 金床
146 スラストベアリング
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6