特許第5921694号(P5921694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許5921694多色化層および基板の製造方法ならびに多色化層を備えた発光ダイオード
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921694
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】多色化層および基板の製造方法ならびに多色化層を備えた発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20160510BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20160510BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160510BHJP
【FI】
   H01L33/00 410
   F21V19/00 150
   F21V19/00 170
   F21Y101:02
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-531112(P2014-531112)
(86)(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公表番号】特表2014-528174(P2014-528174A)
(43)【公表日】2014年10月23日
(86)【国際出願番号】EP2011066439
(87)【国際公開番号】WO2013041136
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ウーアマン
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト クラインドル
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−262993(JP,A)
【文献】 特表2010−505264(JP,A)
【文献】 特表2011−519162(JP,A)
【文献】 特表2010−527508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(6)の付与された層(4)をマイクロコンタクトプリンティング法により半導体基板(2)に被着する方法であって、
前記半導体基板(2)は、光の放出に適した部分層を含む、たとえば単色光または複数の放出特性曲線を有する多重スペクトルの放出に適した部分層を含む方法において、
前記層(4)は、
a)多色化層であり、
b)少なくとも1つのルミネセンス材料を含み、
前記マイクロコンタクトプリンティング法により、前記多色化層(4)を形成する液体を前記半導体基板(2)に被着する、
ことを特徴とする、
構造(6)の付与された層(4)をマイクロコンタクトプリンティング法により半導体基板に被着する方法。
【請求項2】
前記液体として、溶液、分散液、エナメルのグループから成る液体を前記半導体基板(2)に印刷する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記多色化層をプリンティングスタンプ(5)により被着し、該プリンティングスタンプ(5)はたとえばプリンティングマスタ(7o)を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
構造が付与されて被着された前記多色化層(4)は、個別の層要素(4′,4o′)を有し、該個別の層要素(4′,4o′)は、矩形、正方形、円形、三角形、中実の多角形、または同等の層要素(4′,4o′)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記層要素(4′,4o′)の構造幅(B)は1mmよりも狭く、たとえば100μmよりも狭く、たとえば10μmよりも狭く、たとえば1μmよりも狭い、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記多色化層(4)を前記基板(2)の面全体に被着する、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記多色化層(4)の層厚(H)は100μmよりも狭く、たとえば10μmよりも狭く、たとえば1μmよりも狭い、請求項1から6の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板(2)としてのウェハ(1)に印刷する、請求項1から7の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
印刷プロセスにただ1つの印刷ステップしか含まれないよう、前記基板(2)の直径に少なくとも十分に相応する長さ(L)のプリンティングスタンプ(5)を、1回の印刷ステップにおいて使用する、請求項1から8の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項10】
前記多色化層(4)が複数の印刷ステップにより被着されるよう、前記基板(2)の直径よりも短い長さ(L)のプリンティングスタンプ(5)を、1回の印刷ステップにおいて使用する、請求項1から8の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのルミネセンス材料を以下のグループから選択する、すなわち、
白色の燐光体、
燐光を発生する純粋な成分つまり原子または分子、
燐光を発生する液体たとえばエナメル、
格子構造の妨害により燐光を発生可能なあらゆる種類の結晶、たとえば重金属塩と混合されたアルカリ土類金属および亜鉛の硫化物、
ルミネセンスにより発せられた放射に対し透過性でありマトリックス中で溶解可能なすべての種類のルミネセンス材料、
から選択する、
請求項1から10の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロコンタクトプリンティング法により、前記多色化層(4)を形成する液体および印刷可能な質量体を前記半導体基板(2)に被着する、請求項1から11の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項13】
前記液体および印刷可能な質量体として、溶液、分散液、エナメルのグループから成る液体および印刷可能な質量体を前記半導体基板(2)に印刷する、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に多色化層を被着する方法、半導体基板、ならびにこの半導体基板を備えた発光ダイオードに関する。
【0002】
発光ダイオードあるいは略してLED(light-emitting diode)とも呼ばれるオプトエレクトロニクス素子には通常、発光に適した部分層を含むエピタキシャル成長させた積層体と、光変換材料を含む変換層が設けられている。
【0003】
発光ダイオードの動作中、エピタキシャル成長させた積層体における部分層の半導体は、そのバンド構造に基づき制限されたスペクトル範囲内の光を放出する。この場合、光は少なくともほぼ単色であり、あるいは著しく狭い波長範囲を有する。
【0004】
光変換材料の役割は、部分層から放出された光の波長を変換することである。この光は光変換材料に当射し、光変換材料は元の光の波長を別の波長に変換する。波長変換が厳密にどのようなメカニズムに基づくものであるのかに部分的に依存して、光変換材料は、ルミネセンス材料、ホトルミネセンス材料、蛍光体、あるいは単に発光体と呼ばれる。以下では個々のメカニズムを区別せず、ルミネセンス材料に対する上述の名称を並存させて使用する。ただし特定の名称を使用したからといって、開示範囲を狭めるものではない。とはいえ基本的に発光体は、高い周波数の第1の光を、常にそれよりも低い周波数の第2の光にしか変換できない。このような周波数シフトの効果は、ストークスシフトという名前で知られている。
【0005】
発光体は単色光により励起されて、一般的に発光ダイオードチップ自体よりも幅の広いスペクトル領域を放出する。この場合、幅の広いスペクトル領域の代わりに、複数の狭帯域のスペクトル領域を発生させることもできる。これはたとえば、複数の異なる光変換材料を使用することによって達成される。最終的に発光ダイオードは、第1の波長の光と第2の1つまたは複数の波長の光の組み合わせを放出する。したがって光を放出する部分層の半導体材料とルミネセンス材料を適切に選択することによって、発光ダイオードの所期の放射スペクトルを実現することができる。たとえば青色発光ダイオードチップを、ルミネセンス材料としてCerドーピングされたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)と組み合わせることができ、この材料によって青色光が部分的に黄色に変換される。その結果、これらの光が合わさって白色光が発生する。発光体は、単色光をそれよりも幅の広い放射スペクトルあるいは少なくともそれよりも幅の広い放射スペクトルに変換するので、このことを多色化とも称する。
【0006】
一般に発光体は、スピンコーティングまたはスピンコーティング法によって、半導体ウェハの面全体に塗布される。これによって、1つのウェハ全体に広がった光変換層が形成される。これら両方の方法には一連の欠点がある。他の慣用の全面コーティング法の場合と同様、スピンコーディングの際にスピンによって大量のルミネセンス材料が失われる。さらにこの方法によれば、もっぱら全面コーティングだけしか形成されない。また、形成された光変換層の層厚は不均一である。局所的な厚さの変動に加え、さらにウェハ表面全体に沿って誤差が発生する。層厚がこのように不均一であると、LEDどうしで色のばらつきが生じてしまう。これは「ビニング」という用語で知られている。たとえばLEDの白色の色合いないしは色調は、コンスタントに等しいものではない。
【0007】
本発明の課題は、これまで述べてきた従来技術の欠点を解消する方法を提供し、それによってたとえば、変換層の厚さが等しく保たれたLEDひいてはカラースペクトルが等しく保たれたLEDを製造できるようにすることである。
【0008】
この課題は、請求項1、15、16の特徴によって解決される。従属請求項には有利な実施形態が記載されている。明細書、特許請求の範囲および/または図面に記載された少なくとも2つの特徴から成るどのような組み合わせであっても、本発明の範囲に含まれる。また、記載された数値範囲において、そこに挙げた限界の中にある値も限界値として開示されたものとみなすべきであって、それらの値を任意の組み合わせで請求できるものである。
【0009】
少なくとも1つのルミネセンス材料を含む多色化層を、単色光の放出に適した部分層を含む基板に被着するための、本発明による方法によれば、多色化層が印刷プロセスによって被着される。
【0010】
その際、ルミネセンス手段をもたない発光ダイオードにおいて一般的であるように、本発明によれば単色光を、もっぱら単一の波長を有するものとみなすべきではなく、単に狭いスペクトル領域を有するものとみなすべきである。
【0011】
また、本発明で意味するところの多色化層とは、単色光の放出に適した部分層から放出されるような1つの波長またはスペクトル領域の光を、少なくとも部分的に少なくとも1つまたは複数の第2の波長に変換する層のことである。ただし、どのようなメカニズムによってこのような変換が行われるのかは、本発明にとって重要ではない。この第2の波長の光は、単色光の放出に適した部分層からの単色光と混合されて、異なる複数の波長を有する光を発生し、このことを多色化と称する。この多色化という用語を、必ず異なる多数の波長が生成される、という意味で狭く捉えるべきではない。単一波長の光が多色化層により他の単一波長の光に変換されるケースでも、2つの波長の光によって発生した組み合わせを、本発明では多色化と称する。
【0012】
以下では、単色光の放出に適した部分層を含む基板を略して単に基板と称する。
【0013】
本発明による方法によれば、従来のコーティング法とは異なり多色化層の層厚を、1つの多色化層についても、たとえば大量生産のウェハのような1つのバッチにおける複数の多色化層相互間についても、きわめて小さい許容範囲を維持することができる。このようにして、放出スペクトルが常に等しい、または少なくともほぼ等しい複数の発光ダイオードを製造することができる。つまりこのことが特に意味するのは、強度−波長スペクトルにおいて、波長に対する強度最大値のずれないしは強度の変化が、本発明による種々のLEDチップに関してごく僅かである、ということである。有利には、それぞれ異なるサンプルの強度最大値の位置に関する標準偏差は、10nmよりも小さく、有利には7nmよりも小さく、いっそう有利には5nmよりも小さく、著しく有利には2nmよりも小さく、最も有利には1nmよりも小さい。有利には、それぞれ異なるサンプルの強度最大値の標準偏差は5%よりも小さく、有利には1%よりも小さく、いっそう有利には0.1%よりも小さく、著しく有利には0.01%よりも小さく、最も有利には10-5%よりも小さい。したがって本発明による方法に従って製造された発光ダイオードの場合、有利にはビニングを発生しない。
【0014】
有利には、単一の多色化層内の種々のポジションにおける層厚の偏差は、平均層厚に対し10%よりも小さく、殊に5%よりも小さく、有利には1%よりも小さく、さらに有利には0.1%よりも小さく、著しく有利には0.01%よりも小さく、最も有利には0.001%よりも小さい。
【0015】
本発明による方法において有利に使用されるプリンティングスタンプは、基板に印刷される量のルミネセンス材料しか実質的に収容しないので、従来のコーティング法とは異なり、ルミネセンス材料の損失が発生せず、あるいは少なくともほとんど発生しない。
【0016】
有利にはプリンティングスタンプは、印刷すべきルミネセンス材料を収容して印刷ステップ実行時にそれを基板に送出するのに適したプリンティングマスタを有することができる。
【0017】
本発明による方法の1つの有利な実施形態によれば、印刷プロセスにはマイクロコンタクトプリンティング法が含まれる。殊に印刷プロセスは、マイクロコンタクトプリンティング法である。
【0018】
マイクロコンタクトプリンティング法によって、きわめて精密に基板に印刷を行うことができる。したがって多色化層の層厚をきわめて簡単に厳密に設定することができる。その結果、著しく高度な層厚均一性が得られ、ひいては印刷された基板を備えた発光ダイオードのカラースペクトルの著しく高度な均一性が得られる。マイクロコンタクトプリンティング法は他の分野自体では知られているものであるため、ここでは手短にしか説明しない。転写すべき面または構造にたとえばシリコーンゴムのマスタが設けられたプリンティングスタンプに、印刷すべき物質が付けられ、被印刷面ここでは基板の主表面に塗布される。その際、スタンプ上の液体が基板と接触し、それによって基板に転写されるまで、プリンティングスタンプが基板に近づけられる。ルミネセンス材料をどのような形態で印刷に用いるのかは、個々のルミネセンス材料、プリンティングスタンプのマスタ材料、ならびに印刷プロセスのさらに別のパラメータに依存し、たとえば所期の層厚または温度などに依存し、この点については、発明性を求められることなく、要求や必要性に応じて、当業者が適宜選択するものである。
【0019】
これまで、単色光の放出に適した部分層を含む基板に多色化層を被着するために、マイクロコンタクトプリンティング法が適用されることはなかった。驚くべきことに、基板表面専用に開発されたものではなく、殊に基板表面にルミネセンス材料を印刷するために特別に開発されたわけではない印刷プロセスを、基板に適用することができるのである。これが殊に驚くべきことである理由は、マイクロコンタクトプリンティング法はこれまで第一に、きわめて薄い有利には単層の材料を、殊に均質な材料を、目標表面に転写する際に適用されてきたからである。そして従来、そのような目標表面は、平坦性、表面粗面性ならびに欠陥に関して、著しく高い品質をもつ表面であることが多かったし、特別な状態としては、たとえば金でコーティングされた表面であった。本発明に従って印刷される基板の特性は、それらの品質基準に関してはきわめて多様である。つまりそれらの表面は、層構造のエピタキシャル成長に起因する隆起したピーク("growth spikes")などの欠陥を有することが多い。
【0020】
たとえばかなり粗い構造の場合には、マイクロコンタクトプリンティング法ではなく、別の適切な印刷プロセスを用いてもよい。
【0021】
本発明による方法の格別有利な実施形態によれば、多色化層は構造が付与されて被着される。このことは、本発明に従い印刷プロセスを使用することによってはじめて可能となる。多色化層の望まれる構造に従い、多色化層の構造に対応するプリンティングマスタの構造が、プリンティングスタンプにおいて準備される。多色化層に構造を組み込むことによって、有利な効果を生じさせることができる。つまり、多色化層からの光の出射を所期のように促進することができるし、カラースペクトルの調整を所期のように行うこともできる。
【0022】
構造が付与された印刷は、マイクロコンタクトプリンティング法を用いることによって、特に良好に実現することができる。その理由は、この手法を用いることで、複雑な構造あるいは著しく微細な構造を高い精度で印刷できるからである。
【0023】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、構造を持たせて被着された多色化層は個別要素を有しており、これらの個別要素には、矩形、正方形、円形、三角形、中実の多角形、ならびに同等の個別要素が含まれる。このことは、使用されるプリンティングスタンプのプリンティングマスタ上に、対応して凸部と凹部の構造を形成することにより実現できる。
【0024】
有利には個別要素は、100μmよりも狭い構造幅を有することができ、たとえば10μmよりも狭い構造幅、特に1μmよりも狭い構造幅を有することができる。この構造幅は、正方形であれば辺の長さであり、円であれば直径、さらに他のすべての個別要素の幾何学的形状であれば、その形状の最大全長であり、つまりたとえば三角形であれば、三角形の最大可能な高さである。このように小さい構造要素によって、個々のカラースペクトルの均一性が著しく高いものとなり、特に所期のようにカラースペクトルを設定することができる。
【0025】
さらに有利になる可能性があるのは、多色化層を100μmよりも小さい層厚(D)で印刷することであり、たとえば10μmよりも小さい層厚、特に1μmよりも小さい層厚で印刷することである。本発明による方法によれば、層厚をこのように僅かにしても、層厚の高度な均一性が達成される。
【0026】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、基板としてウェハに印刷が行われる。つまり本発明による多色化層の被着を、たとえば他の慣用の発光ダイオード製造方法のステップが実施されるウェハプロセスに、問題なく組み込むことができる。
【0027】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、基板のサイズに少なくとも十分に相応するサイズのプリンティングスタンプが、1回の印刷ステップにおいて用いられ、したがってこの場合、印刷プロセスには、ただ1回の印刷ステップだけしか含まれない。基板としてウェハに印刷を行う場合、プリンティングスタンプのサイズは、基板のサイズに少なくとも十分に対応する。
【0028】
本発明の1つの実施形態によれば、プリンティングスタンプのサイズは基板のサイズよりも小さく、その場合、多色化層は複数の印刷ステップによって被着される。1つの部分構造をこのようにしてステップごとにコピーしていく手法は、「ステップ&リピート方式」という用語でも知られている。この方式は、これまで半導体テクノロジーの別の分野で使用されていたものであり、したがってここでは手短に本発明による方法に関連させて説明する。この場合、印刷すべき液体もしくは質量体がプリンティングスタンプに付与され、それによって基板上のスタートポイントにおいて部分領域層が基板に印刷される。たとえば行列形式に従い、この最初の部分領域層に加えてさらにいくつもの部分領域層が印刷されていき、それらによってたとえば基板全体を覆う1つの層が形成される。プリンティングスタンプが、構造の付与された部分領域層を基板に生じさせる凸部と凹部をもつプリンティングマスタを有している場合に有利であるのは、ただ1つの大きなプリンティングスタンプの構造と同一であり1回の印刷ステップで被着される1つの全体構造が生じるよう、それらの部分領域層が並んで印刷されるようにすることである。
【0029】
別の選択肢として、補足されても1つの全体構造にはならない部分領域層を並べて印刷することもできる。このケースでは以降のプロセスステップにおいて、形成される発光ダイオードがそれぞれ1つの部分領域層を有するよう、個々の部分領域層の間で基板が分離される。
【0030】
複数の手法によって、プリンティングスタンプの凸部に刻印材料を付与することができる。たとえばプリンティングスタンプの凸部を、コントロールしながら刻印材料液に浸すことができる。この場合、刻印材料は、粘着力によって凸部に付着することになる。その後、プリンティングスタンプはそのまま刻印材料液体から引き抜かれ、ウェハに向かって動かされる。
【0031】
別の実施形態によれば、ウェハに液滴を堆積させることによって、厳密に位置決めされた少量の刻印材料が被着される。この実施形態の場合、液滴の位置は、スタンプの凸部の位置と合同でなければならない。
【0032】
別の実施形態によれば、凸部が重力に逆らい上方を指すよう、プリンティングスタンプを逆さにすることができる。次に、プリンティングスタンプを噴霧法により刻印材料でコーティングする。この場合、凸部の表面には刻印材料の液滴が残されたままとなる。刻印スタンプとウェハとの相対運動によって、それら双方を定位置におくことができる。その後、刻印スタンプとウェハとを相互に動かすことによって、一種の「オーバヘッドスタンピング」が行われる。刻印材料液体をスタンプ凸部に付与するやり方は、この分野の当業者に自明であり、本発明の実施形態にとって決定的に重要なことではない。
【0033】
有利であるのは、刻印プロセス中、プリンティングスタンプとウェハの間隔を測定することであり、および/または能動的にコントロールすることであり、このようにすることで層要素の層厚をコントロールしながら調整できるようになる。
【0034】
刻印スタンプが、凸部よりも突出した厚い弾性の層を有することもできる。この厚い弾性の層は、ウェハの非平坦性を補償するために用いられる。これによって、印刷特性を向上させ均一にすることができる。殊に極端に剛性のスタンプであると、平坦でないウェハへ複数の層要素を刻印するのは非常に難しく、あるいはそれどころか刻印するのが不可能になる。このため多層のスタンプも開示されており、つまりそのようなスタンプはそれぞれ異なる複数の材料層から成り、それらの層は刻印方向に対し垂直に連続した複合体として順次配列されている。
【0035】
さらに別の実施形態によれば、硬いが伸長可能な膜にスタンプ要素が取り付けられる。この膜を凸状に成形することができ、有利には、チャンバ内で形成可能であり膜後方に加わる過剰圧力によって成形することができる。このようなタイプのスタンプは膜を動作させるために用いられ、つまり均衡補償(ガス)圧力を有するスタンプである。
【0036】
構造が付与された層として設ける代わりに、本発明による方法の別の選択肢によれば、多色化層が基板の面全体に被着される。構造を付与して多色化層を被着しなくても、本発明による方法は従来技術に対し利点を有している。なぜならば本発明による方法に従って面全体に被着された多色化層は、印刷された1枚の基板の層においても、大量生産ウェハなどの1つのロッドにおいても、著しく均一になった層厚を有するからである。
【0037】
基板の面全体に被着しても著しく経済的に利用できるというさらに別の利点が得られる理由は、従来技術に対し材料効率が著しく高まることによる。スピンコーティング法において一般的であるのは、本来使用される材料の50%よりも多くの材料が、スピンプロセス中にスピンオフして飛ばされてしまうことである。そのような材料は、汚染のリスクがあるため再利用することはできず、廃棄物となる。これに対しマイクロコンタクトプリンティング法によれば材料損失を15%よりも少なくすることができ、多くのケースでは10%より少なくなることもあるし、それどころか最適化されたプロセスでは5%よりも少なくなる。その際、個々の印刷ステップごとに、スタンプに付着したルミネセンス材料が基板に常に完全に転写されるよう、方法が設定されているか否かは重要ではない。なぜならば、完全に転写されなかったときにスタンプに付着したままになっている残留材料は、失われてしまうわけではなく、次の印刷ステップで再び使用されるからである。
【0038】
本発明による方法を、あらゆる半導体材料のコーティングに使用することができ、たとえばSi,GaAs,GaN等から成る半導体基板に使用することができる。選択された半導体材料に応じて、動作中、それぞれ特徴的なカラースペクトルが基板から放出される。多色化層の少なくとも1つのルミネセンス材料は、このカラースペクトルと、製造される発光ダイオードが最終的にどのカラースペクトルを放出すべきであるのかということと、もしくは本来放出される光をどの波長に変換すべきであるのかということとに依存して、選択される。当業者であれば、発明性を求められることなく、望ましい波長スペクトルを達成する目的で、半導体材料とルミネセンス材料との適切な組み合わせを適宜、定義することができる。ルミネセンス材料はマトリックス材料によって取り囲まれる。ルミネセンス材料として、有利には燐光体が用いられる。さらに開示しておくと、蛍光および/または燐光を発するあらゆる材料が用いられる。他を排除するものではないが、マトリックス材料として以下の材料が適用される:
・シリコーン、
・ポリマー、
・ポリイミド、
・ガラス、
・全般的にいえば、ルミネセンス材料を溶解可能であり、ルミネセンスにより放出される電磁放射に対し透過性であるすべての材料。
【0039】
これに応じて当業者は少なくとも1つのルミネセンス材料を選択し、その材料に基づき印刷可能な液体または質量体を製造もしくは準備し、これを多層化層として印刷することができる。これをたとえば溶液または分散液とすることができる。分散液としてたとえば、ウェハのスピンコーティングにも利用される慣用のエナメルが用いられる。多色化層の層厚がたとえ僅かであっても、高い均一性を達成するために有利であるのは、分散されたルミネセンス材料を用い、その粒子サイズをたとえば50μmよりも小さくし、有利には10μmよりも小さくし、さらに有利には100nmよりも小さくし、著しく有利には10nmよりも小さくし、最も有利には1nmよりも小さくして、基板に印刷するために使用することである。ルミネセンス層を基板に被着する方法に加えて、ルミネセンス材料自体も常に変更を加えることができる。本発明による方法は、適用された粒子サイズに関して高い許容範囲を有している。したがって上述の粒子サイズは例示であるとみなすべきであり、本発明による方法に対する限定とみなすべきではない。
【0040】
他を排除するものではないが、以下のグループから、少なくとも1つのルミネセンス材料を選択することができる:
・白色の燐光体、
・燐光を発生する純粋な成分つまり原子または分子、
・燐光を発生する液体たとえばエナメル、
・格子構造の妨害により燐光を発生可能なあらゆる種類の結晶、たとえば重金属塩と混合されたアルカリ土類金属および亜鉛の硫化物、
・ルミネセンスにより発せられた放射に対し透過性でありマトリックス中で溶解可能なあらゆる種類のルミネセンス材料。
【0041】
基板の半導体によりどのような波長が発せられ、その光がどのような波長に変換されるのかは、基板と多色化層の材料に左右される。基板材料と多色化層の材料については当業者に知られており、望まれるLEDのための要求あるいは必要性に応じて、それらの材料を使用し、組み合わせることができる。本発明による方法は、特定の基板材料あるいは多色化層に限定されるものではない。
【0042】
本発明の1つの実施形態によれば、多色化層を形成する液体および/または印刷可能な質量体を、印刷プロセスによって被着させることができる。液体として溶液を用いる場合には、溶液の溶剤を乾燥させて多色化層を形成する必要がある。溶融された質量体を用いる場合には、それを硬化させて多色化層を形成する必要がある。どのような手法を採用するかは、主としてルミネセンス材料の種類に依存する。
【0043】
有利であるのは、液体および/または印刷可能な質量体として、溶液、分散液、エナメルのグループから成る液体または印刷可能な質量体を印刷することである。
【0044】
印刷後、印刷された質量体は、この分野の当業者に知られた方法によって処理される。この処理には、熱硬化法および/または光硬化法および/または電気的硬化法および/または化学的硬化法を含めることができ、これらは質量体を硬化させるために用いられ、したがって形状を安定して保持するために用いられる。この目的で有利であるのは、質量体の下に位置するLEDを用いることであり、これによれば印刷プロセス後にLEDを起動することによって、熱および/または光によるプロセスによる硬化を実現できるようになる。
【0045】
本発明の改良に関するさらに別の形態については、以下で図面を参照した本発明の有利な実施例の説明とともに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1a】印刷すべきウェハを示す平面図
図1b】ウェハ支持体上に配置された図1aによるウェハを示す側面図
図2a】本発明に従って印刷されたウェハを示す平面図
図2b図2aによるウェハを示す側面図
図3a】本発明による方法のためのプリンティングスタンプを示す側面図
図3b】印刷すべきウェハ上方で分散液により湿らされたプリンティングスタンプを示す側面図
図3c】ウェハと接触した状態で図3bによるプリンティングスタンプを示す側面図
図3d】印刷ステップ後のウェハとプリンティングスタンプを示す側面図
図4a】1つのプリンティングマスタにおける正方形の凸部を示す平面図
図4b】1つのプリンティングマスタにおける円形の凸部を示す平面図
図4c】印刷された正方形の1つの層要素を切り欠きおよびコンタクトとともに示す平面図
【0047】
本発明による方法によれば、支持体3により支持された基板2を有するウェハ1に対して印刷が行われる(図1aおよび図1b参照)。基板2は、ガリウム砒素をベースとし単色光を放出する部分層を有している(図示せず)。以下では、単色光を放出するガリウム砒素部分層を有する基板のことを、手短にGaAs基板2と称する。GaAs基板は、支持体3とは反対側の第1主面2aと支持体3と向き合った側の第2主面2bとを有している。GaAs基板2は、支持体3上にエピタキシャル成長されている。
【0048】
図3a〜図3dに示されているように、プリンティングスタンプ5によってGaAs基板2上に多色化層4が形成される。プリンティングスタンプ5は、プリンティングマスタ7oとして設けられ凸部7と凹部7′とを有する構造6を有している。
【0049】
スタンプ5は、Cerドーピングされたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から成る粒子が分散された分散液によって、凸部7がこの分散液から成る膜8によって湿らされた状態となるように設けられる。個々の凸部7は、1つの膜要素8′によってそれぞれ湿らされる。プリンティングスタンプ5を基板2に向けて下げることにより(図3bおよび図3c)、膜8が基板2と接触して膜8が基板2に転写されるまで、膜8が基板2に接近する。プリンティングスタンプ5を取り除くと、膜8は層4として基板2上に取り残される(図3d)。これにより層4は、複数の個別の層要素4′を有することになり、それらの層要素4′のジオメトリおよび有利には厚さに関して、少なくとも広範囲にわたり個々の膜要素8′のジオメトリおよび厚さに相応する。
【0050】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、膜要素8′はその厚さに関しては部分的にしか基板2に転写されないようにすることも考えられる。つまりこの場合には、プリンティングスタンプ5を取り除いた後、膜8の一部分だけが層4として基板2上に取り残される。基板に転写されなかった膜8の部分はプリンティングスタンプ5に残され、次の基板2を印刷するときに、その部分を用いることができる。本発明によればその際に有利であるのは、膜8の厚さを再び補充して、次の印刷プロセスのときに前回の印刷プロセスと同じ初期状態にしておくことである。このようにすることで、本発明による方法の良好な反復性を達成できる。基板2に転写される層4の厚さと、スタンプに留まる膜8の残留物の厚さとの比は、スタンプ材料、スタンプ材料とルミネセンス材料との相互作用、ルミネセンス材料と基板2の基板表面との相互作用、ルミネセンス材料の粘度等に依存する。多くの事例では、膜8の層厚の50%を超える膜が基板2に転写される。有利であるのは、この値が70%を超えることであり、最適な方法によれば80%よりも大きく、なおいっそう有利であるのは90%を超えることである。
【0051】
この実施例によれば、プリンティングスタンプ5はマイクロコンタクトプリンティング用のスタンプであり、そのシリコーンゴムプリンティングマスタ7oには、幅Bが50μmである正方形の個別要素9を含む微細構造6が設けられている。これに応じて個々の膜要素8′ひいては層要素4′も、50μmの幅を有する。
【0052】
構造6そして特に凸部7と層要素4′は、図面には縮尺どおりには描かれていない。同様に、多色化層4における層要素4′の個数は、図示されているものよりも何倍も多い個数である。図3a〜図3dには、基板2としてのウェハ1上に、図2aおよび図2bの層が単一の印刷ステップで印刷されることが示されている。この場合、プリンティングスタンプ5の長さLは、ウェハ1の直径Dと実質的に同じ長さである。
【0053】
この実施例の1つのバリエーションによれば、図2aにハッチングで描かれているように、比較的少数の層要素4′から成る部分領域層10だけが、1回の印刷ステップにおいて被着される。このケースでは、プリンティングスタンプ5の長さLは、ウェハ1の直径Dよりもかなり短い。そしてステップ&リピート方式によって、部分領域層10に対応した構造を備えたプリンティングマスタ(図示せず)を有するプリンティングスタンプ5が、そのつど分散液によって湿らされ、ステップごとにウェハ1の上にポジショニングされてウェハ1に向けて下げられる。ただ1回の印刷ステップによりそれ相応に大きいプリンティングスタンプ5を用いて形成される構造と同じ構造6をもつ層4が、高い精度のステップ&リピートプロセスによって形成される。この実施例によれば、層厚は5μm付近である。
【0054】
印刷前に、ウェッジエラー補償が実施される。ステップ&リピートプロセスのバリエーションの場合、有利にはウェハごとに1回あるいは一連のウェハごとに1回だけ、ウェッジエラー補償を実施することができる。
【0055】
さらにこの実施例の1つのバリエーションによれば、プリンティングマスタ7oは構造パターンをもたず、面全体に形成され(図示せず)、その結果、膜8がプリンティングスタンプ5の面全体を覆い、つまりは多色化層4も基板2に面全体に印刷される。
【0056】
凸部7つまりは層要素4′の正方形の断面7o(図4a参照)のほか、この実施例のさらに別のバリエーションによれば、円形の断面7o″を有する凸部7が設けられる(図4b参照)。
【0057】
たとえばマイクロコンタクトプリンティング法などを用いて複雑な構造6も印刷できる、という本発明の利点によって、本発明のさらに別のバリエーションによれば、凸部7の正方形の断面を変形して、図4cに示されているように、切り欠き11を備えた断面4o′を有する層エレメント4′を印刷することができる。本発明のこのバリエーションによれば、発光ダイオードごとに単一の層要素4′が印刷され、接続部材12たとえばボンディングワイヤ、蒸着された導体路または他の何らかの接続部材12とLEDとのコンタクト領域として、切り欠き11が利用される。
【0058】
本発明による方法に従い多色化層4が印刷された基板2は、慣用の手法を用いて発光ダイオードが出来上がるように仕上げられ、動作状態におかれる。それらの発光ダイオードは、多色化層4の層厚に関して著しく高い均一性を有しており、したがって発光ダイオードの動作中に生じるカラースペクトルの品質も等しく保たれる。基板2の青色光は、多色化層4によって部分的に黄色光に変換され、それらの光が合成され白色光として発光ダイオードから放射される。その際、ビニングは発生せず、発光ダイオードの白色の色合いはいっそう均質なものとなり、一連のウェハにおいて同じ品質が保たれる。
【0059】
符号の説明
1 ウェハ
2 基板
2a 第1主表面
2b 第2主表面
3 支持体
4 層
4′ 層要素
4o′ 断面
5 プリンティングスタンプ
6 構造
7 凸部
7′ 凹部
7o プリンティングマスタ
7o′ 正方形の断面
7o″ 円形の断面
8 膜
8′ 膜要素
9 正方形の個別要素
10 部分領域層
11 切り欠き
12 接続部材
B 幅
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c