(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921699
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】無電解パラジウムめっき浴組成物
(51)【国際特許分類】
C23C 18/44 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
C23C18/44
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-534973(P2014-534973)
(86)(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公表番号】特表2014-528518(P2014-528518A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2012066358
(87)【国際公開番号】WO2013053518
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年5月11日
(31)【優先権主張番号】11184919.6
(32)【優先日】2011年10月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】イザベル−ローダ ヒアゼコアン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ヴェークリヒト
(72)【発明者】
【氏名】アーント キリアン
【審査官】
菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−066439(JP,A)
【文献】
特表平10−511738(JP,A)
【文献】
特開2000−212763(JP,A)
【文献】
特表2005−538246(JP,A)
【文献】
特開2008−184679(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/105104(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム及び/又はパラジウム合金を銅又は銅合金表面上に無電解めっきするための水性めっき浴において、このめっき浴が、以下:
a.パラジウムイオン源
b.リン不含の少なくとも一つの窒化された錯化剤
c.ギ酸、ギ酸誘導体、ギ酸塩及び前述のものの混合物、次亜リン酸塩化合物、例えば次亜リン酸ナトリウム及び次亜リン酸カリウム、アミン−ボラン付加物、例えばジメチルアミンボランを含む群から選択された還元剤、及び
d.1〜5個のホスホネート基を含む少なくとも一つの有機安定剤
を含有しており、
ここで、1〜5個のホスホネート基を含む安定剤の濃度が、4及び5個のホスホネート基を含む安定剤については0.1〜100mmol/lであり、1、2及び3個のホスホネート基を含む安定剤については50〜500mmol/lであって、かつ、少なくとも一つの有機安定剤が、式(1)
【化1】
[式中、
R
1は、
【化2】
水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択されており;
R
2は、
【化3】
水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択されており;
R
3は、
【化4】
水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択されており;
R
4は、
【化5】
水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択されており;
nは、整数であり、かつ1〜6であり;
mは、整数であり、かつ1〜6であり;
oは、整数であり、かつ1〜6であり;
pは、整数であり、かつ1〜6であり、かつ
Xは、水素及び適した対イオンからなる群から選択されている]
による化合物から選択されていることを特徴とする、水性めっき浴。
【請求項2】
Xが、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムからなる群から選択されている、請求項1に記載の水性めっき浴。
【請求項3】
n、m、o及びpが、独立して、1及び2から選択されている、請求項1又は2に記載の水性めっき浴。
【請求項4】
n及びmが1であり、o及びpが2である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性めっき浴。
【請求項5】
安定剤が、式(1)[式中、R1及びR3は式(2a)から選択されており、R2は式(2c)から選択されており、かつR4は式(2d)から選択されている]による化合物から選択されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性めっき浴。
【請求項6】
パラジウムイオン源が、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、過塩素酸パラジウム、及び、少なくとも一つのパラジウムイオンとリン不含の少なくとも一つの窒化された錯化剤とを含有する錯化合物を含む群から選択されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性めっき浴。
【請求項7】
パラジウムイオンの濃度が0.5〜500mmol/lである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性めっき浴。
【請求項8】
リン不含の窒化された錯化剤が、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンを含む群から選択されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性めっき浴。
【請求項9】
リン不含の窒化された錯化剤対パラジウムイオンのモル比が2:1〜50:1である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性めっき浴。
【請求項10】
還元剤の濃度が10〜1000mmol/lである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の水性めっき浴。
【請求項11】
4〜7の範囲内のpH値を有している、請求項1から10までのいずれか1項に記載の水性めっき浴。
【請求項12】
銅又は銅合金表面上へのパラジウム又はパラジウム合金の無電解めっき法において、この方法が、以下の工程:
a.銅又は銅合金表面を有する基板を準備する工程;
b.パラジウムイオン源と、ギ酸、ギ酸誘導体、ギ酸塩及び前述のものの混合物、次亜リン酸塩化合物、例えば次亜リン酸ナトリウム及び次亜リン酸カリウム、アミン−ボラン付加物、例えばジメチルアミンボランを含む群から選択された還元剤と、リン不含の窒化された錯化剤と、1〜5個のホスホネート基を含む少なくとも一つの有機安定剤とを含有する、水性パラジウム又はパラジウム合金めっき浴組成物を準備する工程であって、
ここで、1〜5個のホスホネート基を含む安定剤の濃度が、4及び5個のホスホネート基を含む安定剤については0.1〜100mmol/lであり、1、2及び3個のホスホネート基を含む安定剤については50〜500mmol/lであるものとする;
及び
c.工程bからのパラジウム又はパラジウム合金めっき浴から、基板の銅又は銅合金表面上に、パラジウム又はパラジウム合金の層を堆積させる工程;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
さらに、工程cの前に、金属表面上に浸漬型のめっきによりパラジウムを堆積させる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき浴組成物、及び、プリント回路基板、IC基板及び半導体デバイスの製造におけるパラジウム及びパラジウム合金の無電解めっき法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板、IC基板等の製造、並びに半導体ウェハーのメタライゼーションにおけるパラジウム及びパラジウム合金の無電解めっきは、確立された技術である。パラジウム又はパラジウム合金層は、バリア層として、かつ/又はワイヤーボンディング可能でかつはんだ付け可能な仕上げとして用いられている。
【0003】
無電解めっきにより得られるパラジウム堆積物の種類(純パラジウム又はパラジウム合金)は、使用される還元剤に依存する。
【0004】
ギ酸、その誘導体及びその塩の場合には、純パラジウム堆積物が生じる。リン含有還元剤、例えば次亜リン酸ナトリウムの場合には、パラジウム−リン合金が生じる。還元剤としてボラン誘導体を使用した場合には、パラジウム−ホウ素合金堆積物が生じる。
【0005】
パラジウムイオン源と、窒化された錯化剤と、ギ酸及びその誘導体から選択された還元剤とを含有している無電解パラジウムめっき浴組成物が、US5,882,736に開示されている。そのような無電解パラジウムめっき浴組成物は、純パラジウムの堆積に適している。
【0006】
パラジウムイオン源と、ホスホネート基を含む錯化剤と、ホルムアルデヒド、リン酸イオン発生体、ホウ素−窒素化合物、ホウ化水素又はアルキルアミンボランから選択された還元剤とを含有している無電解パラジウムめっき浴組成物が、GB2034756Aに開示されている。そのような無電解パラジウムめっき浴組成物は、純パラジウムか、もしくはホウ素及び/又はリンを含むパラジウム合金の堆積に適している。
【0007】
ジアミノジクロロパラジウム錯体と、伝導性塩としてのニトリル塩と、1−ヒドロキシ−エタン−1,1−ジホスホン酸とを含有しているパラジウム及びパラジウム合金の電気めっき用のめっき浴組成物が、EP0757121A1に開示されている。
【0008】
塩化パラドサミンとしてのパラジウムとアルキレンジアミンホスホネートとを含有しているパラジウム及びパラジウム合金の電気めっき用のめっき浴組成物が、US4,066,517に開示されている。
【0009】
次亜リン酸、亜リン酸、ギ酸、酢酸、ヒドラジン、水素化ホウ素化合物、アミンボラン化合物及びその塩のうち少なくとも一つを還元剤として含有している無電解パラジウムめっき浴組成物が、US2009/0081369A1に開示されている。
【0010】
US5,882,736によるめっき浴組成物からのパラジウムの堆積は、このめっき浴中に銅イオンが存在している場合には不可能である(比較例1)。
【0011】
パラジウム及びパラジウム合金は、少なくとも一部に金属表面を有する基板上に堆積する。典型的な金属表面には、銅、銅合金、ニッケル及びニッケル合金が含まれる。
【0012】
プリント回路基板やIC基板等、並びに半導体ウェハーの場合、無電解めっき浴に銅イオンが含まれていると、パラジウム及びパラジウム合金の堆積が妨害されてしまう。無電解めっき浴中に存在する銅イオンが5ppmであるか又はそれを下回っていても、パラジウム及びパラジウム合金の堆積のめっき率が著しく低下してしまう。無電解めっき浴からパラジウムを堆積させる前に行われる金属表面の活性化方法としてしばしば用いられる浸漬型のパラジウムめっき浴中への基板の浸漬の際に、基板から銅イオンが溶出し得る。活性化工程においてパラジウム層での銅表面の被覆が不完全であると、次工程で基板の銅表面とパラジウム及び/又はパラジウム合金の堆積用の無電解めっき浴とが接触した際に銅イオンが生じる。そうすると、例えばプリント回路基板やIC基板といった電子部品の製造や半導体ウェハーのメタライゼーションの間に、銅イオンが無電解パラジウム及び/又はパラジウム合金めっき浴中で富化され、パラジウム及び/又はパラジウム合金の堆積が初めはゆっくりになり、その後完全に停止してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の課題は、無電解めっき浴中での銅イオンの存在下に、十分なめっき率でパラジウム及び/又はパラジウム合金を堆積させることのできる、水性無電解めっき浴及びめっき法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題は、パラジウム及び/又はパラジウム合金を金属表面上に無電解めっきするための水性めっき浴において、このめっき浴が、以下:
a.パラジウムイオン源
b.リン不含の少なくとも一つの窒化された錯化剤
c.還元剤、及び
d.1〜5個のホスホネート基を含む少なくとも一つの有機安定剤
を含有しており、
ここで、1〜5個のホスホネート基を含む安定剤の濃度が、4及び5個のホスホネート基を含む安定剤については0.1〜100mmol/lであり、1、2及び3個のホスホネート基を含む安定剤については50〜500mmol/lであることを特徴とする水性めっき浴により解決される。
【0015】
本発明による金属表面上へのパラジウム及びパラジウム合金の堆積法は、以下の工程:
a.金属表面を有する基板を準備する工程;
b.パラジウムイオン源と、還元剤と、リン不含の窒化された錯化剤と、1〜5個のホスホネート基を含む少なくとも一つの有機安定剤とを含有する、水性パラジウム又はパラジウム合金めっき浴を準備する工程であって、
ここで、1〜5個のホスホネート基を含む安定剤の濃度が、4及び5個のホスホネート基を含む安定剤については0.1〜100mmol/lであり、1、2及び3個のホスホネート基を含む安定剤については50〜500mmol/lであるものとする;
及び
c.基板の金属表面上にパラジウム及び/又はパラジウム合金の層を堆積させる工程;
を含む。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明による水性無電解パラジウム及び/又はパラジウム合金めっき浴は、パラジウムイオン源を含有しており、これは、水溶性パラジウム化合物、例えば塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム及び過塩素酸パラジウムである。任意に、パラジウム塩とリン不含の窒化された錯化剤とをめっき浴に別個の成分として添加することでめっき浴中にパラジウムイオンとこのリン不含の窒化された錯化剤とを含有する錯化合物を生じさせるのではなく、その代わりにこのような錯化合物をめっき浴に添加することもできる。パラジウムイオンを、0.5〜500mmol/l、好ましくは1〜100mmol/lの濃度で添加する。
【0017】
無電解パラジウム及び/又はパラジウム合金めっき浴は、さらに、リン不含の窒化された錯化剤を含有する。この窒化された錯化剤は、リン不含の、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンを含む群から選択されたものである。適したアミンは、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタン、2−ジエチルアミノエチルアミン、ジエチレントリアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトロ酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、エチレンジアミン−N,N−二酢酸、2−(ジメチルアミノ)エチルアミン、1,2−ジアミノプロピルアミン、1,3−ジアミノプロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ビス−(3−アミノプロピル)アミン、1,2−ビス−(3−アミノプロピル)アルキルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びその混合物である。
【0018】
本発明による無電解めっき浴における、リン不含の錯化剤対パラジウムイオンのモル比は、2:1〜50:1である。
【0019】
本発明による無電解めっき浴は、さらに還元剤を含有しており、この還元剤によってめっき浴は自触媒型、即ち無電解めっき浴となる。パラジウムイオンは、この還元剤の存在下に還元されて金属パラジウムとなる。
【0020】
無電解めっき浴は、ギ酸、その誘導体又はその塩の存在下での純パラジウム層の堆積に特に適している。適したギ酸誘導体は、例えばギ酸のエステル、例えばギ酸メチルエステル、ギ酸エチルエステル及びギ酸プロピルエステルである。他の適したギ酸誘導体は、例えば置換及び非置換アミド、例えばホルムアミド及びN,N−ジメチルホルムアミドである。ギ酸塩に適した対イオンは、例えば水素、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムから選択されたものである。
【0021】
パラジウム合金の堆積に適した還元剤は、例えば次亜リン酸化合物、例えば次亜リン酸ナトリウム及び次亜リン酸カリウム(これによりパラジウムリン合金が生じる)及びアミン−ボラン付加物、例えばジメチルアミンボラン(これによりパラジウムホウ素合金が生じる)である。無電解パラジウムめっき浴中でのこのような還元剤の濃度範囲は、ギ酸、その誘導体及びその塩の場合と同じである。
【0022】
還元剤を、10〜1000mmol/lの濃度で無電解めっき浴中に添加する。
【0023】
本発明による純パラジウム層は、99.0質量%を上回る、好ましくは99.5質量%を上回る、さらに好ましくは99.9質量%を上回る、さらに好ましくは99.99質量%を上回るパラジウム含分を含む層である。
【0024】
本発明の他の実施態様において、パラジウムめっき層は、パラジウム90〜99.9質量%及びリン又はホウ素0.1〜10.0質量%、さらに好ましくは、パラジウム93〜99.5質量%及びリン又はホウ素0.5〜7質量%を含む合金層である。
【0025】
本発明によるめっき浴組成物はさらに、1〜5個のホスホネート基を含む少なくとも一つの有機安定剤を含有する。
【0026】
好ましくは、1〜5個のホスホネート基を含む少なくとも一つの有機安定剤は、式(1)
【化1】
[式中、
R
1は、
【化2】
水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択されており;
R
2は、
【化3】
水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択されており;
R
3は、
【化4】
水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択されており;
R
4は、
【化5】
水素、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択されており;
nは、整数であり、かつ1〜6であり;
mは、整数であり、かつ1〜6であり;
oは、整数であり、かつ1〜6であり;
pは、整数であり、かつ1〜6であり、かつ
Xは、水素及び適した対イオンからなる群から選択されている]
による化合物から選択されたものである。
【0027】
さらに好ましくは、R
1及びR
3は、
【化6】
であり、
R
2は、
【化7】
であり、かつ
R
4は、
【化8】
である。
【0028】
好ましくは、n、m、o及びpは、独立して、1及び2から選択されている。さらに好ましくは、n、mは1であり、o及びpは2である。
【0029】
1〜5個のホスホネート基を含む少なくとも一つの有機安定剤の濃度は、この有機安定剤中のホスホネート基の数に依存する。
【0030】
少なくとも一つの有機安定剤の濃度は、4及び5個のホスホネート基を含む安定剤については0.1〜100mmol/lであり、1、2及び3個のホスホネート基を含む安定剤については50〜500mmol/lである。
【0031】
無電解めっき浴のpH値は4〜7であり、それというのも、めっき浴はpH値が4未満であると不安定なためである。好ましくは、めっき浴のpH値は5〜6である。
【0032】
1〜5個のホスホネート基を含む有機安定剤を含有していない無電解パラジウムめっき浴の堆積率は、銅イオン5ppmの存在下で0に達する(比較例1)。そのようなめっき浴組成物はUS5,882,736に開示されている。
【0033】
1〜5個のホスホネート基を含む有機安定剤を過剰に多量に含有しており、かつリン不含の窒化された錯化剤を含有していない無電解パラジウムめっき浴の堆積率は、銅イオンの不純物を添加していなくても、銅イオン5ppmが存在していても、0である(比較例2)。
【0034】
1〜5個のホスホネート基を含む有機安定剤を過剰に多量に含有しており、かつリン不含の窒化された錯化剤を含有している無電解パラジウムめっき浴の堆積率は、銅イオンが存在していなくてもすでに0である(比較例3及び4)。
【0035】
1〜5個のホスホネート基を含む有機安定剤の含有量が少なすぎ、かつリン不含の窒化された錯化剤を含有している無電解パラジウムめっき浴の堆積率は、銅イオン5ppmの存在下で0となる(比較例5)。
【0036】
本発明による無電解パラジウムめっき浴は、このめっき浴中での5ppm以上の銅イオン存在下に十分なめっき率を保持している(実施例6〜10)。
【0037】
パラジウムの堆積を、好ましくは、本発明による無電解めっき浴中で金属表面を有する基板と接触させることによって行う。パラジウム又はパラジウム合金で被覆すべき金属表面は、銅、銅合
金から選択されたものである。被覆すべき金属表面は、例えばプリント回路基板、IC基板又は半導体ウェハーの一部である。
【0038】
基板と無電解めっき浴との接触に適した方法は、浸漬(垂直装置)又は噴霧(水平装置)である。
【0039】
パラジウム又はパラジウム合金めっき処理を約35〜95℃で1〜60分間行うことによって、厚さ0.01〜5.0μm、さらに好ましくは0.02〜1.0μm、さらに好ましくは0.05〜0.5μmのパラジウム又はパラジウム合金のめっき層が生じる。
【0040】
本発明の一実施態様において、浸漬型のめっき法により金属表面上にまず最初にパラジウムの薄い活性化層を堆積させ(交換反応)、次いで本発明による無電解めっき浴からパラジウム又はパラジウム合金を堆積させる。
【0041】
パラジウム又はパラジウム合金の無電解めっきの前に行う金属表面の活性化方法は、当業者に公知であり、また本発明の実施にも適用可能である。適した水性活性化浴は、パラジウム塩、例えば酢酸パラジウム、硫酸パラジウム及び硝酸パラジウムと、錯化剤、例えば第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン及びエタノールアミンと、酸、例えば硝酸、硫酸及びメタンスルホン酸とを含有することができる。任意に、そのような活性化浴はさらに、酸化剤、例えば硝酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、過ホウ酸イオン、過ヨウ素酸イオン、ペルオキソ二硫酸イオン及び過酸化物イオンを含有する。
【0042】
水性活性化浴中のパラジウム塩の濃度は、0.005〜20g/l、好ましくは0.05〜2.0g/lである。錯化剤の濃度は、0.01〜80g/l、好ましくは0.1〜8g/lである。
【0043】
水性活性化浴のpH値は、0〜5、好ましくは1〜4である。
【0044】
典型的には、基板を水性活性化浴中に25〜30℃で1〜4分間浸漬する。基板を水性活性化浴中に浸漬する前に、基板の金属表面を洗浄する。このために、通常は、酸化性の酸性溶液、例えば硫酸及び過酸化水素の水溶液中でエッチング洗浄を行う。好ましくは、これに引き続き、酸性溶液、例えば硫酸溶液中でさらなる洗浄を行う。
【0045】
本発明を以下の実施例により詳説するが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
一般的な手順:
銅表面(50×50mm)を含むクーポンを全ての実施例を通じて基板として使用した。このクーポンを、酢酸パラジウムと硫酸と錯化剤との水溶液(pH値 2.5)中でのパラジウムの浸漬型のめっきにより活性化させ、次いで水ですすいだ。
【0047】
全ての実施例において、無電解パラジウムめっき浴組成物中で、パラジウムイオン10mmol/lを使用し、さらに還元剤としてギ酸ナトリウム500mmol/lを使用した。リン不含の窒化された錯化剤は、全ての場合においてエチレンジアミンである。めっき浴のpH値を、全ての実験において5.5となるように調節した。
【0048】
試験した種々の無電解パラジウムめっき浴組成物中に5分間浸漬した後のパラジウム層の厚さを、蛍光X線分析法(XRF; Fischer, Fischerscope
(R) X-Ray XDV
(R)-μ)により測定した。パラジウムが堆積している間の無電解めっき浴の温度を、全ての実施例において52℃に保持した。
【0049】
5ppmの量の銅イオンを無電解パラジウムめっき浴組成物に硫酸銅の形で添加し、それによって、例えばプリント回路基板やIC基板といった電子部品の製造に使用している間のパラジウム電解質をシミュレートした。試験した種々の無電解パラジウムめっき浴組成物中に5分間浸漬した後のパラジウム層の厚さを、蛍光X線分析法により再度測定した。
【0050】
無電解めっき浴組成物と、銅イオン5ppmが存在する場合と存在しない場合の5分後のめっき結果とを第1表にまとめた。
【0051】
銅イオン5ppmをめっき浴に添加した後、比較例1によるめっき浴からはパラジウムは堆積しない。
【0052】
銅イオンが存在しない場合であっても、比較例2〜4によるめっき浴組成物からはパラジウムは堆積しない。
【0053】
銅イオン5ppmの存在下に、比較例5によるめっき浴組成物からはパラジウムは堆積しない。
【0054】
本発明による実施例6〜10の場合、銅イオン5ppmの存在下に、めっき率が保持されている。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】