(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921706
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】特に自動車の燃料電池のための給気装置
(51)【国際特許分類】
F01D 5/14 20060101AFI20160510BHJP
F01D 3/02 20060101ALI20160510BHJP
F01D 3/04 20060101ALI20160510BHJP
F04D 25/04 20060101ALI20160510BHJP
F04D 29/051 20060101ALI20160510BHJP
F04D 29/30 20060101ALI20160510BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20160510BHJP
【FI】
F01D5/14
F01D3/02
F01D3/04
F04D25/04
F04D29/051
F04D29/30 C
F04D29/30 E
H01M8/04 N
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-543788(P2014-543788)
(86)(22)【出願日】2012年11月10日
(65)【公表番号】特表2015-505927(P2015-505927A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】EP2012004675
(87)【国際公開番号】WO2013079155
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2014年7月28日
(31)【優先権主張番号】102011119881.8
(32)【優先日】2011年12月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】ジークフリート・ズムザー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・クノープ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・レフラー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス‐ヨルク・シャーベル
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・シュタインハウザー
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/113465(WO,A1)
【文献】
特表2000−514896(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0190389(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0252791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 3/00 , 5/04
F02B 37/00
F04D 29/051
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池(10)のための給気装置(34)であって、前記燃料電池は電気によって自動車を駆動するために電気を提供するものであり、格納スペースをもつケーシング部(86)を有するラジアルタービン(52)を備え、前記格納スペース内には前記ラジアルタービン(52)のタービンホイール(50)が回転軸のまわりに前記ケーシング部(86)に対して回転可能に格納されており、前記タービンホイール(50)はインペラブレード(90)を有し、該インペラブレードを介して、前記燃料電池(10)の気体状の排ガスが入口領域において前記タービンホイール(50)に対して流れることができる給気装置において、
前記タービンホイール(50)の前記インペラブレード(90)は、前記入口領域において前方に湾曲して、したがって前記タービンホイール(50)の回転方向の方向に湾曲して形成されていることを特徴とする、給気装置(34)。
【請求項2】
軸方向の力を少なくとも部分的に補償するために前記タービンホイール(50)と結合された補償エレメント(72)と、前記回転軸のまわりに回転可能であり前記燃料電池(10)に供給される空気が圧縮されることができるコンプレッサホイール(38)とが設けられており、前記補償エレメント(72)は、圧縮される前記空気の通流方向で前記コンプレッサホイール(38)の下流における出口圧(P2t)により、少なくとも1つのチャネル(79)を介して、少なくとも部分的に作用を受けることができることを特徴とする、請求項1に記載の給気装置(34)。
【請求項3】
前記補償エレメント(72)は、前記入口領域における入口圧(P3t)により少なくとも部分的に作用を受けることができることを特徴とする、請求項2に記載の給気装置(34)。
【請求項4】
前記補償エレメント(72)が、前記入口領域の入口直径(D3)とは異なる直径(DS)を有することを特徴とする、請求項2または3に記載の給気装置(34)。
【請求項5】
前記補償エレメント(72)の前記直径(DS)が、前記入口領域の前記入口直径(D3)よりも大きいことを特徴とする、請求項4に記載の給気装置(34)。
【請求項6】
前記コンプレッサホイール(38)が、前記空気を圧縮するためにコンプレッサブレードを有し、該コンプレッサブレードは前方に湾曲していることを特徴とする、請求項2〜5のうちのいずれか一項に記載の給気装置(34)。
【請求項7】
前記補償エレメント(72)は、前記コンプレッサホイール(38)の下流における出口圧(P2t)により、前記補償エレメント(72)の領域において作用を受けることができ、前記領域、前記ケーシング部(86)、および、前記給気装置(34)の少なくとも2つのシールエレメント(82、83)、によってチャンバ(80)が画定されていることを特徴とする、請求項2〜6のうちのいずれか一項に記載の給気装置(34)。
【請求項8】
前記シールエレメント(82、83)は、それぞれ一方では前記ケーシング部(86)に、他方では前記補償エレメント(72)または前記タービンホイール(50)またはシャフトに支持されており、該シャフトには前記タービンホイール(50)および/または前記補償エレメント(72)が回動不能に結合されていることを特徴とする、請求項7に記載の給気装置(34)。
【請求項9】
前記シールエレメント(82、83)の少なくとも1つは、往復ピストン機関のピストン用のピストンリングとして、またはラビリンスシールとして形成されていることを特徴とする、請求項7または8に記載の給気装置(34)。
【請求項10】
前記インペラブレード(90)の少なくとも1つのブレード入口角(β1S)は、100°よりも大きく150°よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の給気装置(34)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1による、特に自動車の燃料電池のための給気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料電池のための給気装置を開示し、この燃料電池は自動車を電気によって駆動するために電気を提供する。この給気装置はラジアルタービンを備え、このラジアルタービンは格納スペースをもつケーシング部を有しており、この格納スペースには、タービンのタービンホイールが回転軸を中心にケーシング部に対して回転可能に格納されている。このタービンホイールはインペラブレードを備え、これらのインペラブレードを介して、媒体、特に燃料電池のガス状の排ガスが入口領域においてタービンホイールに対して流れることができる。
特許文献2は、燃料電池のための給気装置を開示し、この給気装置は格納スペースをもつケーシング部を有する軸流タービンを備え、格納スペース内にはタービンのタービンホイールが回転軸のまわりにケーシング部に対して回転可能に格納されており、タービンホイールはインペラブレードを有し、これらのインペラブレードを介して、媒体、特に100Wまでのパワー・レンジ内で燃料電池の気体状の排ガスが入口領域においてタービンホイールに対して流れることができ、これらのインペラブレードは、前方に完全に湾曲するように形成されている。
特許文献3は、内燃機関のための給気装置を開示し、この給気装置は格納スペースをもつケーシング部を有するラジアルタービンを備え、格納スペース内にはタービンのタービンホイールが回転軸のまわりにケーシング部に対して回転可能に格納されており、タービンホイールはインペラブレードを有し、これらのインペラブレードを介して、媒体、特に内燃機関の気体状の排ガスがタービンホイールに対して流れることができ、これらのインペラブレードは出口領域において前方に湾曲するように形成されている。
さらに、特許文献
4は、多数のロータブレードが接続されているハブを備えるウェルズタービンを開示する。ロータブレードは、翼の先端から開始して水滴形に形成された、左右対称の形状を有する。ロータブレードはスレッドラインも有しており、ウェルズタービンの回転面におけるスレッドラインの経過は、それぞれのロータブレードに割り当てられた半径方向のラインと比較して、ロータブレードの半径方向の延びの少なくとも一部において異なっている。
【0003】
給気装置のロータ、例えば内燃機関用の排ガスターボチャージャのロータのベアリングにおいては、例えば流体力学的スラストベアリングによって受け止められる軸方向の力が発生する。ロータを取り付け、軸方向力を受け止めるためにローラベアリング、特にボールベアリングを使用することも公知である。この種のボールベアリングは、とりわけロータが高速に回転する場合、および軸方向力とその変動が大きい場合には、該当する対抗措置を講じないと、十分な寿命を有することができない。
【0004】
さらに一般的従来技術から、少なくとも1つの燃料電池ないし燃料電池装置を自動車に装備することが公知である。燃料電池装置は、電気を提供するために用いられ、これにより自動車を電気によって駆動する。
【0005】
このような燃料電池ないし燃料電池装置のための給気装置は、圧縮された媒体、特に圧縮空気を燃料電池に供給することができ、それにより燃料電池ないし燃料電池装置の特に効率的な作動が結果的に生じる。ここでは給気装置の特に効率的な作動も有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE102010026909A1
【特許文献2】WO98/02643A1
【特許文献3】DE2920479A1
【特許文献4】DE102008007616A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、特に効率的に作動する特に自動車の燃料電池のための給気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を備える燃料電池のための給気装置によって解決される。本発明の適切かつ重要な発展形態を備える有利な実施形態は、その他の請求項に記載されている。
特に自動車の燃料電池のためのそのような給気装置は、ケーシング部を具備している。このケーシング部は格納スペースを有しており、この格納スペースには給気装置のタービンのタービンホイールが、回転軸のまわりにケーシング部に対して回転可能に、少なくとも部分的に格納されている。
【0009】
タービンホイールはインペラブレードを有しており、これらのインペラブレードを介して、入口領域においてタービンホイールに対して媒体が流れることができ、タービンホイールを駆動することができる。媒体は好ましくは燃料電池の気体状の排ガスである。
【0010】
この場合、インペラブレードは、少なくとも入口領域において前方に湾曲して形成されている。インペラブレードの前方湾曲部によってタービンホイールの入口領域を、空気力学的に特に大きく構成することができる。したがって発生する軸方向の力へのタービンホイールの寄与、とりわけ給気装置のコンプレッサによって生じる軸方向の力を補償するタービンホイールの寄与を非常に大きくすることができる。言い替えると、タービンホイールのインペラブレードの前方湾曲部によって給気装置の軸方向の力を少なくとも部分的に補償することができ、これにより回転軸のまわりにタービンホイールを回転可能に取り付けるベアリングの負荷が小さな範囲に維持される。
【0011】
その結果、ベアリングを小さな負荷にだけ対応して設計することができ、これにより本発明のベアリング装置のベアリング損失が小さく維持される。これは給気装置の効率的な作動につながり、このことは燃料電池の効率的な作動に有益である。
【0012】
とりわけタービンホイールを取り付けるためにローラベアリング、特にボールベアリングを使用することができ、これにより、タービンホイール、このタービンホイールに回動不能に結合されたシャフト、およびこのシャフトに回動不能に結合されたコンプレッサホイールを具備する給気装置のタービンホイールないしロータを低損失で取り付けることができる。
【0013】
したがってローラベアリングの使用も有利である。なぜなら給気装置では、タービン入口温度が約80℃から120℃の範囲で低温の場合、ベアリングないしローラベアリングの自立的な少量潤滑を実現することができるからである。このことは、潤滑剤が別の媒体、特に給気装置によって燃料電池に供給される空気に入り込むことを少なくともほぼ完全に排除することをも可能にし、エネルギー的に非常に有利なベアリングの機械的効率を実現することができる。本発明の給気装置では、ベアリングおよび給気装置全体の長寿命を同時に実現することができる。なぜなら、インペラブレードの前方湾曲部による軸方向の力の少なくとも部分的な補償によって、ベアリングの負荷を小さく維持することができるからである。
【0014】
タービンホイールないしロータを空気軸受によって取り付けることは、それによりボールベアリングとは異なって、潤滑剤が必要ない点で有利である。この場合、少なくとも部分的に補償された軸方向の力は、とりわけ空気軸受に有益である。なぜなら空気軸受は小さな軸方向力しか支持できないからである。
【0015】
本発明の給気装置は、その点でも燃料電池の効率的な作動を実現する。なぜなら、給気装置のタービンによってエネルギー回収を実行することができるからである。タービンは、燃料電池から放出された排ガスを利用することができる。排ガスはタービンホイールを駆動し、タービンホイールはさらにシャフトを介してコンプレッサホイールを駆動し、これにより圧縮された別の媒体、特に空気が燃料電池に供給される。
【0016】
有利には、給気装置が、案内グリッド、特に可変調整可能な案内グリッドを有する。この案内グリッドは、媒体、特に排ガスの通流方向でタービンホイールの上流に、特にケーシング部内に配置されている。案内グリッドによって、タービンホイールへの通流条件、およびとくにタービンホイールへの吹付け条件を制御することができる。これにより背圧弁を省略することができ、これによって給気装置の部品数およびコストを低く維持することができる。そのような案内グリッドおよび/またはそのような背圧弁は、タービンの調整可能かつ効率的な非常に狭い通流断面の実現を保証する。これにより給気装置は、燃料電池の種々異なる動作点に適合することができる。例えば、給気装置のコンプレッサの特性マップにおいて、圧力および空気質量流量が合わない場合に、動作点がコンプレッサのポンプ限界の方向に移動するのを回避することができる。
【0017】
この場合、給気装置のコンプレッサおよび/またはタービンは、有利にはラジアルコンプレッサないしラジアルタービンとして構成されており、これらによって燃料電池に供給される、少なくとも実質的に気体状の別の媒体、特に空気を効率的かつ僅かなスペース要求だけで圧縮することができる。
【0018】
本発明の有利な一実施形態では、タービンホイールと結合された補償エレメントが、軸方向力を少なくとも部分的に補償するために設けられており、さらに回転軸のまわりに回転可能なコンプレッサホイールが設けられている。このコンプレッサホイールによって、燃料電池に供給する別の媒体を圧縮することができる。
【0019】
ここで補償エレメントは、圧縮される別の媒体の通流方向でコンプレッサホイールの下流における出口圧により、少なくとも1つのチャネルを介して、少なくとも部分的に作用を受けることができる。
【0020】
出口圧により補償エレメントに作用することにより、軸方向の力を少なくとも部分的に補償することができ、とりわけ小さく維持することができ、このことは、給気装置の効率的な作動と、従って燃料電池の効率的な作動とに特に有益である。とりわけこれによってベアリング損失、重量、並びにベアリングの外側寸法を小さくすることができる。
【0021】
インペラブレードは少なくとも入口領域においては、給気装置の作動時にタービンホイールが回転する回転方向の方向に湾曲しており、翼列の前方湾曲部は、オイラーによる固有のタービン出力が、特に高い周速度をもつ定格点において達成されるという点においても、タービンホイールの空気力学的大きさに影響を与える。
【0022】
これにより、半径方向にだけ向けられた、半径方向にだけ延びるインペラブレードと比較して、出口通流条件が少なくとも実質的に同じ場合、媒体(排ガス)の流れの偏向が効率的に有利に低減され、並びに所定の回転数であっても周速度が比較的高いことにより、要求されるタービン出力を達成することができる。この場合、少なくとも実質的に最適な反動度を0.5の値より上に調整することができる。
【0023】
有利な実施形態では、補償エレメントにも、入口領域における入口圧を少なくとも部分的に印加することができる。これにより軸方向の力を特に小さく維持することができる。
【0024】
好ましくは、補償エレメントが、タービンホールのホイール出口領域とは反対側である、タービンホイールのホイール裏側に配置されている。補償エレメントは、その圧力印加により、例えばガス力によって発生する軸方向の力を少なくとも部分的に補償することを可能にする。
【0025】
本発明のさらなる有利な一実施形態では、補償エレメントが、入口領域の入口直径とは異なる直径を有する。これにより軸方向の力を特に小さく維持するために、補償エレメントへの入口圧および/または出口圧の印加を必要に応じて調整することができる。
【0026】
好ましくは、補償エレメントの直径は、入口領域の入口直径よりも大きい。これにより特に大きな軸方向の力を少なくとも部分的に補償することができる。
【0027】
本発明のさらなる有利な一実施形態では、コンプレッサホイールが、別の媒体、特に空気を圧縮するためにコンプレッサブレードを有し、このコンプレッサブレードは前方に湾曲して形成されている。これは、コンプレッサブレードも、給気装置の作動時にコンプレッサホイールが回転する回転方向の方向に湾曲されていることを意味する。これによって、別の媒体を効率的に圧縮することができる。
【0028】
さらなる有利な実施形態では、補償エレメントは、コンプレッサホイールの下流における出口圧により、補償エレメントの領域において作用を受けることができ、この領域によって、ケーシング部によって、および給気装置の少なくとも2つのシールエレメントによってチャンバが画定されている。これにより、補償エレメントへの入口圧の印加と出口圧の印加とは相互に影響を及ぼさないため、軸方向の力を特に小さく維持することができる。これは給気装置の効率的な運転に有益である。
【0029】
この場合、シールエレメントは、それぞれ一方ではケーシング部に、他方では補償エレメントまたはタービンホイールまたはロータのシャフトに支持されており、このシャフトにはタービンホイールおよび/または補償エレメントが回動不能に結合されている。これにより、給気装置の取付けスペース要求および重量を小さく維持することができ、結果的に特に効率的な作動が得られる。
【0030】
シールエレメントの少なくとも1つは、往復ピストン機関のピストン用のピストンリングとして形成されている。これは給気装置のコストを下げることに有利に働く。シールエレメントの少なくとも1つは、無接触シール、特にラビリンスシールとして形成することもできる。これにより本発明の給気装置の取付けスペース要求が小さくなり、重量も小さくなる。
【0031】
給気装置の特に効率的な作動を実現するために、インペラブレードのブレード入口角は、好ましくは100°よりも大きく150°よりも小さい。これにより、タービンホイールの入口領域におけるタービンホイールの特に大きな空気力学的形態と組み合せて、排ガスにとって有利な通流条件が生じる。
【0032】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施例並びに図面に基づく以下の説明から得られる。明細書に述べる前記特徴およびそれら特徴の組合せ、並びに以下の図面の説明で述べる特徴および/または図面に示された全ての特徴およびそれら特徴の組合せは、本発明の範囲を逸脱することなく、それぞれ記載された組合せだけでなく、他の組合せでも、または単独でも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】タービンとコンプレッサとを備える給気装置の概略的縦断面図であり、シャフトを備えるロータのベアリング、タービンのタービンホイールおよびコンプレッサのコンプレッサホイールに作用する軸方向の力を説明するためのものである。
【
図2】先端速度比が0.7、反動度が0.5の場合で、効率、対応するタービン入口温度における最適の周速度、およびタービン圧力比の間における関係を、示す線図である。
【
図3】
図1のタービンの一実施形態の概略的横断面図である。
【
図4】
図3のタービンの概略的断面図を部分的に示す図である。
【
図5】
図1の給気装置のさらなる一実施形態の概略的縦断面図である。
【
図6】給気装置のコンプレッサホイールにおける力を説明するための原理図である。
【
図7】給気装置のタービンホイールにおける力を説明するための原理図である。
【
図8】
図1と3のタービンのさらなる一実施形態の概略的縦断面図を部分的に示す図である。
【
図9】給気装置によって圧縮空気を供給することのできる燃料電池の原理図である。
【
図10】半径方向の翼列を備えるタービンホイールの速度三角形を示す図である。
【
図11】前方に湾曲された翼列を備えるタービンホイールの速度三角形を示す図である。
【
図12】タービンホイールの前方湾曲翼列の概略的斜視図を部分的に示す図である。
【
図13】翼列が前方に湾曲している場合のタービンの効率特性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図9は燃料電池10を示し、この燃料電池により、連続的に供給される燃料と酸化剤との反応エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。燃料は水素の形で存在し、水素はタンク12に貯蔵されており、燃料電池10に燃料弁14を介して供給される。このとき、燃料弁14は制御装置16によって制御される。燃料電池10は、環境からの空気、ないしは燃料電池に供給される空気の構成成分としての酸素を、酸化剤として利用する。
【0035】
燃料電池10は、配線22を介してバッテリー25と接続しており、このバッテリーには生成された電気エネルギー(以下、電流と称する)を蓄電することができる。バッテリー25はさらに配線24を介して電気モータ26と接続されており、この電気モータはバッテリー25に蓄電された電流によって駆動することができる。電気モータ26は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、これをトルクの形で、回転可能なシャフト30を介して送り出す。したがって燃料電池10は電気モータ26の駆動に用いられ、電気モータは例えば自動車、特に乗用車で使用することができる。
【0036】
電気モータ26により提供される、例えば乗用車の運転者から要求されるトルクを調整するために、アクセルペダル32が設けられている。アクセルペダル32の操作によって運転者は要するトルクを調整することができ、乗用車を動かすことができる。ここでアクセルペダル32は、制御装置16とも電気モータ26とも接続されており、これにより、燃料電池10による電流の生成をトルク要求に適合させる。
【0037】
燃料電池10の特に効率的な作動を実現するために、給気装置34が設けられており、この給気装置はコンプレッサホイール38を備えるコンプレッサ36を具備している。コンプレッサホイール38は給気装置34のシャフト40と回動不能に結合されており、シャフト40は給気装置34のベアリングケーシング内に回転可能に取り付けられている。これにより、コンプレッサホイール38も回転可能であり、吸入された空気を、空気の通流方向を向いてコンプレッサホイール38の上流で支配的な、環境圧に相当する、コンプレッサ入口圧P1と称される圧力レベルから、これと比べて高い、コンプレッサホイール38の下流で支配的な、コンプレッサ出口圧P2tと称される圧力レベルにまで圧縮することができる。
【0038】
コンプレッサホイール38による空気の圧縮によって空気が加熱される。空気を冷却するために、空気は冷却装置46へ流れ、この冷却装置により空気は冷却され、引き続き燃料電池10に供給される。
【0039】
とりわけ効率的な燃料電池10の作動を実現するために、燃料電池10の排ガスが、タービンホイール50を具備する、給気装置34のタービン52に送られる。タービンホイール50もシャフト40と回動不能に結合しており、したがって回転可能に取り付けられ、燃料電池10の排ガスによって駆動可能である。タービン52は膨張タービンであり、それは、燃料電池10の排ガスが、その通流方向を向いてタービンホイール50の上流では、タービンホイール50の下流よりも高い圧力レベルを有するからであり、この高い圧力レベルはタービン入口圧P3tと称される。言い替えると、燃料電池10の排ガスはタービン52によって膨張し、その際にタービン52ないしタービンホイール50は、排ガスに蓄積されたエネルギーをコンプレッサホイール38の駆動に利用する。タービン52の下流の排ガスの圧力は、タービン出口圧P4と称される。
【0040】
タービンホイール50から流出した後、排ガスは排ガス後処理装置56に流れ、この排ガス後処理装置は排ガスから有害物質を除去する。排ガス後処理装置56の下流で排ガスは環境に流れる。
【0041】
タービン52を、電気モータ26および燃料電池10の種々異なる動作点に適合するために、タービン52は、いわゆるバリオタービンとして形成されている。このことは、タービンホイール50の上流には可変調整可能なガイドグリッド60が配置されており、このガイドグリッドによって、タービンホイール50に対して排ガスの流入の通流条件が調整可能であり、燃料電池10の種々の動作点、コンプレッサ36の圧力比および/または同様のものに適合可能であることを意味する。この場合、ガイドグリッド60も同様に制御装置16により制御可能である。
【0042】
さらに給気装置34は別の電気モータ62を有し、この別の電気モータによってシャフト40およびコンプレッサホイール38並びにタービンホイール50を駆動することができる。電気モータ62が必要であるのは、タービン52により提供される出力が、コンプレッサ34を単独で駆動するには十分ではないからである。これにより、燃料電池10の非常に効率的な作動が得られる。
【0043】
空気を圧縮することにより、コンプレッサホイール38およびタービンホイール50並びにシャフト40、さらにベアリングケーシング内のシャフト40のベアリングに比較的大きな軸方向の力が作用し、対抗する措置を講じない場合には、この軸方向の力がベアリングに強い応力を加え、ベアリングの寿命を短くするおそれがある。ベアリングのこの負荷および応力を低減または完全に回避するために、給気装置34は、
図9に概略的に示した軸方向スラスト補償部64を具備し、この軸方向スラスト補償部によって軸方向の力を補償ないし低減することができる。この軸方向スラスト補償部64について、以下に他の図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
図5は、コンプレッサ36と、別の電気モータ62と、バリオタービンの形で膨張タービンとして形成されたタービン52とを備える給気装置34の可能な一実施形態を示す。燃料電池10に圧縮空気を供給する際には、空気の圧縮により比較的大きな軸方向の力が発生し、この軸方向の力はコンプレッサホイール38に由来する。例えば100,000回転/分の範囲にある、別の電気モータ62の所定の回転数限界を超えないようにするため、コンプレッサホイール38の第1の直径D2は特に大きく設計されており、これは、コンプレッサ36の圧力比(圧縮すべき空気の通流方向を向いてコンプレッサホイール38の上流と下流)に関して該当する要求を満たすためである。
【0045】
給気装置34にはタービン52が設けられているため、軸方向の力の荷重軽減が小さいことがあり、この軸方向の力はコンプレッサ入口66の方向に作用し、コンプレッサホイール38とタービンホイール50ないしシャフト40のベアリングによって受け止めなければならない。タービン52ないしタービンホイール50は、定格点における最適効率、すなわち別の電気モータ62の最大出力における最適効率に基づいて設計されており、コンプレッサ36への剛性結合を介して、別の電気モータ62によりシャフト40ないしコンプレッサホイール38に加えられるのと同じ回転数を受け取る。タービンホイール50とコンプレッサホイール38との通常の一体化は、タービン52の最適の先端速度比u/coによって行われ、この最適の先端速度比は定格点において約0.7の値に達する、ないし達するべきである。
【0046】
燃料電池10の排ガスの温度は約100℃であり比較的低いことから、タービン52の最適な効率は、ホイール入口領域の小さな第2の直径D3において生じ、このホイール入口領域を介して燃料電池10の排ガスがタービンホイール50に対して流れることができ、タービンホイールを駆動することができる。ベアリングに作用する大きな軸方向の力の問題は、直径D2、D3の差が比較的大きいことから生じ、これは、コンプレッサホイール38に由来する軸方向の力に対向するタービンホイール50の力成分が僅かしかないからである。
【0047】
コンプレッサホイール38の第1の直径D2を第2の直径D3よりほぼ係数2だけ大きくすることができる。これによりコンプレッサホイール38の第1のホイール裏側68に第1の面A2が生じ、この第1の面はタービンホイール50の第2のホイール裏側70の第2の面A3より係数4だけ大きい。
【0048】
このことから結果的に、燃料電池10を従来の乗用車に使用する場合、数100ニュートン、場合により300から400ニュートンの軸方向の力が発生することがあり、この軸方向の力をベアリングが受け止めなければならない。例えばベアリングには6000時間の寿命が望ましい。同時に、シャフト40ないしコンプレッサホイール38とタービンホイール50のベアリングは損失が少なく、したがって可及的に低摩擦で行うべきである。このことは、例えば少なくともローラベアリング、とりわけボールベアリングを用いた取り付けによって実現可能である。しかしながらそのようなボールベアリングは、前記の高い軸方向の力を条件付きでしか受け止めることができない。このことから、軸方向の力を低減ないし補償する必要性が生じる。これは、
図9と共に示した軸方向スラスト補償部64によって可能であり、
図8を参照してさらに説明する。
【0049】
図8から分かるように、軸方向スラスト補償部64は、タービンホイール50と一体形成された補償ディスク72を有する。これにより、コンプレッサ36からベアリングに作用する軸方向の力の軸方向力補償が、タービンホイール50の第2のホイール裏側70によって達成される。この場合、補償ディスク72は、外側に第3の直径D
Sを有し、この直径は、タービンホイール50の翼列のホイール入口直径とも称される空気力学的な第2の直径D3に対して大きさに関係なく決定され、本例では第2の直径D3より大きく形成されている。好ましくは第3の直径D
Sは、軸方向の力の関数であり、第2の直径D3より大きい。
【0050】
タービン52では、タービン52のノズル74を介して燃料電池10の排ガスがタービンホイール50に対して流れることができ、このノズルの出口におけるノズル圧P3Dが、タービンホイール50の裏側76ないし補償ディスク72に対する圧力プロファイルを実質的に決定し、この補償ディスク72は第3の面Asを有し、この面は第3の直径D
Sに対応する。
【0051】
したがって、補償ディスク72を備えるタービンホイール50の合力はコンプレッサホイール38の合力に対抗する。コンプレッサホイール38の合力の主成分は、コンプレッサホイール38の直後にある静的コンプレッサ出口圧P2tにより決定され、この静的コンプレッサ出口圧はコンプレッサホイールディスク78の代表的平均圧P2sに関連する。これと同じようにタービンホイールディスク81が設けられており、このタービンホイールディスク81の代表的平均圧p3sはタービン入口圧p3tに関連する。
【0052】
タービン入口圧P3tは、配管での圧力損失、熱交換、燃料電池スタックおよび/または同様のものによって、コンプレッサ出口圧P2tに対してすでに著しく低下していることから(30%にまで)、軸方向の力を顕著に低減させるためには、ノズル圧P3Dが比較的小さいことに基づき、タービンホイール50にある補償ディスク72は大きな寸法を必要とする。
【0053】
第3の直径Dsを小さく維持するために、有利には、コンプレッサ出口圧P2tが、軸方向スラスト補償部64によって、コンプレッサ出口または場合によりコンプレッサ集合スパイラルの領域、すなわちコンプレッサホイール38の下流、またはコンプレッサディフューザの領域にあるチャネル79を介して取り出され、圧力チャンバ80の中へタービンホイール50の側にある補償ディスク72に印加される。この場合、コンプレッサ出口圧P2tは、コンプレッサホイールディスク78の平均圧P2sより明らかに大きな圧力値になる。
【0054】
この明らかに大きなコンプレッサ出口圧P2tを補償ディスク72に作用させ、圧力スペースとも称される圧力チャンバ80を形成するために、密閉箇所82、83が設けられており、これらによって圧力チャンバ80が密閉されている。内側の密閉箇所83は従来の単純なピストンリングシールとして形成することができるが、第3の直径D
S上にある外側の密閉箇所82は、好ましくは、例えばラビリンスシールの形で無接触シールとして形成されている。外側の密閉箇所82に生じるおそれのある漏れは、タービンホイール50の翼列を介して流出する。したがって圧力チャンバ80は、一方では補償ディスク72の領域、密閉箇所82、83、タービン52のタービンケーシングのケーシング部86、並びにタービンホイール50のハブ体の一部分によって画定されている。
【0055】
次式
【数1】
により生じるリング面84はタービンホイール50の翼列側にあり、このリング面上には、できるだけ低減されたノズル圧P3Dが印加されるべきであり、それによって、静的補償圧と称される明らかに大きなコンプレッサ出口圧P2tの作用が圧力チャンバ80内で完全に発揮される。
【0056】
タービン52が存在しない場合、軸方向力の補償は、
図5および8と同様に純粋な補償ディスク72によって行われると考えられ、次に、ノズル圧P3Dは、環境圧の領域ないしそれよりやや上の領域で、タービン出口圧P4と共に補償ディスク72の補償面の出口側に作用するであろう。
【0057】
コンプレッサ入口66の方向に作用する軸方向の力は、
図1および5に力矢印Fによって示されている。この場合、とりわけ
図1、6および7は、軸方向の力の計算ないし予測を説明するために用いるものである。軸方向の力は、とりわけガス力から発生し、タービンホイール50、コンプレッサホイール38およびシャフト40を具備するロータに作用する軸方向スラストを生じさせる。軸方向スラストは、とりわけタービン出口の方向へコンプレッサホイール輪郭およびコンプレッサホイール入口に作用する軸方向の力から、並びにコンプレッサパルスから発生する。さらにコンプレッサホイール38には、軸方向の力がコンプレッサ入口の方向に作用する。これに対応してタービン52の側では、軸方向の力がコンプレッサ入口66の方向へタービンホイール輪郭およびタービンホール出口に作用する。さらに軸方向の力は、タービンパルスの結果として作用する。タービンホイール50にも、タービン出口の方向へ同様に軸方向の力が作用する。力矢印Fにより示すように、コンプレッサホール側での軸方向スラストは、タービンホイール側の軸方向スラストより格段に大きい。このことが当てはまるのは、相応の対抗措置を講じられない場合、ガス圧並びにコンプレッサホイール38のホイール裏面が、タービンホイール50の側よりも大きいからである。したがって軸方向スラストないし軸方向の力を全体で小さく維持するためには、少なくともほぼ最適にタービンホイール50を空気力学的に適合するのが有利である。
【0058】
このような空気力学的適合により、タービンホイール直径を比較的小さくすることができる。
図2は、線
図88に基づき、該当するタービン入口温度T3tの下で効率を最適化した周速度U_optと、先端速度比が0.7、反動度が0.5の値の下でのタービン圧力比との関係を示す。ここで効率を最適化した周速度U_optは、先端速度比が0.7のときに得られる。この線
図88では、タービン入口温度がT3tにより示されている。圧力比は、P3t/P4により示されている。この場合、P3tはタービン入口圧を、P4はタービン出口圧を表す。先端速度比はu/c
0から得られ、ここでuは周速度、c
0は排ガスの絶対速度を表す。燃料電池10の空気供給のためにコンプレッサ回転数を最適化することにより、100℃の範囲にある比較的低い膨張温度に最適な周速度U_optが割り当てられているという条件の下で、タービン52のホイール入口直径(第2の直径D3)が小さな値に設定される。
【0059】
図2には、ホイール剛性限界領域Bも示されており、この領域は例えば材料インコネル713LCに関連する。さらに
図2には領域Cが描かれており、この領域は給気装置34のタービン52に関連する。
【0060】
図6は、第4の面A1並びにガス力が作用し得る第5の面A1Kを示し、そこからタービン出口の方向へロータに作用する軸方向の力が生じる。
図6は、第6の面A2Rも示し、この面はコンプレッサホイール38のホイール裏側に割り当てられており、この面にはガス力が作用し、そこからコンプレッサ入口66の方向に作用する軸方向の力が生じる。
【0061】
反動度は例えば0.6であり、一方、コンプレッサ入口圧P1は1barである。ここでコンプレッサ出口圧P2Tは3.2barである。コンプレッサホイール38の第1のホイール裏側68に作用する第1の圧力P2は、例えば2.32barである。
【0062】
これに対応して
図7は、タービンホイール50の第2のホイール裏側70の、ガス力が作用する第7の面A3Rを示す。そこからタービン出口の方向に作用する軸方向の力が生じる。
図7は、第8の面A4Kとガス力が作用する第9の面A4も示す。そこからタービン入口の方向に向けられた軸方向力が生じる。タービン入口圧P3tは例えば2.7barである。タービン出口圧は1.0barである。反動度は0.5である。タービンホイール50の第2のホイール裏側70に作用する圧力は、例えば1.85barである。ここの場合、軸方向の力は例えば335.1Nであり、コンプレッサ入口66の方向に作用する。第6の面A3Rを相応に拡大することにより、軸方向の力を補償することができる。このために補償ディスク72が用いられる。
【0063】
さらに、とりわけ
図12から分かるように、タービンホイール50のインペラブレード90は、タービンホイール50に対して排ガスが流れる少なくとも入口領域92においては前方に湾曲して形成することができる。これにより、軸方向の力を補償するタービンホイール50の貢献度がさらに強化され、これは、インペラブレード90の前方湾曲部によってタービンホイール50が、純粋に軸方向に延びる翼列に比較して拡大されるためである。
【0064】
補償ディスク72の軸方向の伸長部、すなわちその幅は、好ましくは非常に小さく、これによって通流損失を小さく維持している。その幅は、有利には完全に回避することができ、
図12に示されているように、これによって、ブレード入口角β
1Sの設計に影響を及ぼすことができる。第2の直径D3の有利かつ特に大きな形態および対応するブレード入口角β
1Sの設計は、
図11から分かるように、得ようとする周速度をu1、定格点における望ましいガス速度成分をc
u1とした場合、オイラーの式に左右される。
【0065】
図10は第1の速度三角形94を示し、この速度三角形はタービンホイール50の純粋な半径方向の翼列に関連する。これに対して、
図11は第2の速度三角形96を示し、この速度三角形はタービンホイール50の前方に湾曲された翼列に関連し、したがって、タービンホイール50が前方に湾曲されたインペラブレード90を具備し、このインペラブレードは、タービンホイール50が給気装置34の作動時に回転する回転方向の方向に湾曲されている。ブレード入口角β
1Sは、有利には100°より大きく150°より小さくなっており、このことは、前方湾曲部Δβ
1Sがほぼ60°までであることを意味する。
【0066】
図12から分かるように、ブレード入口角β
1Sは、インペラブレード90の入口接線98と周接線100との間の角を成す。前方湾曲部Δβ
1Sは、インペラブレード90がその入口接線98に関して、点線102により示された半径方向の広がりに向かって傾斜している角度に関連する。
【0067】
タービン52はいわゆる冷空気タービンであることから、タービンホイール50の該当する形態では応力が生じるが、この応力は、アルミニウム材料によってまだ抑制することができる。前方に湾曲したインペラブレード90(前方に湾曲した翼列)を備えるタービンホイール50の基本的な効率特性が、純粋に半径方向に伸張する翼列との比較で、
図13により示されている。
【0068】
図13は第2の線
図104を示し、その横軸106は先端速度比である。第2の線
図104の縦軸108は、タービン効率η
Tである。第1の経過110は純粋に半径方向に延びる翼列に関連し、第2の経過112はタービンホイール50の前方に湾曲した翼列に関連し、ブレード入口角β
1Sは90°よりも大きい。この場合、少なくとも実質的に最適な反動度が0.5よりも大きいことが観察される。最適効率は、インペラブレード90の前方湾曲部によって、より高い先端速度比の方にシフトすることができ、このことは、膨張タービンとして形成されたタービン52の定格点設計に対して有利であり得る。
【0069】
給気装置34の動作特性に対して、前方に湾曲した翼列は、軸方向の力が少なくとも部分的に補償されるという利点の他に、例えば不安定なパワーアップおよび減速段階のような多くの作動段階においても有利である。ここでは効率に基づき、比較的高い先端速度比が可能であるため、純粋に半径方向に延びる翼列と比較すると、別の電気モータ62により決定される回転数変動およびガススループット変動の際、前方に湾曲した翼列の換気傾斜はより少なくなる。このことは、関連する走行サイクルの合計において、インペラブレード90が前方に湾曲したタービンホイール50を備える給気装置34の効率上昇につながる。