特許第5921709号(P5921709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5921709引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニット及び引き戸の振れ止め案内装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921709
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニット及び引き戸の振れ止め案内装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 7/04 20060101AFI20160510BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20160510BHJP
   E05D 13/00 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   E05F7/04
   E05D15/06 101A
   E05D13/00 K
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-545016(P2014-545016)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(86)【国際出願番号】JP2014061271
(87)【国際公開番号】WO2014175258
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2014年9月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-93522(P2013-93522)
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 玄一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓太
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−002262(JP,A)
【文献】 特開2010−174476(JP,A)
【文献】 特開2007−120045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 7/04
E05D 13/00
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き戸の下端面の案内レールの案内溝に係入して引き戸を振れ止めする案内部材を含む床側案内ユニットに対向して前記引き戸の下端で前記案内レールの端部に並んで配置される引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニットであって、
前記引き戸の下端面で前記案内レールの端部に並んで配置されるフレームと、
前記フレームに枢支され前記床側案内ユニットの案内部材を磁気的に吸引して前記フレーム内に誘導するように磁気的に吸引する磁気的吸引部材と、
前記磁気的吸引部材前記床側案内ユニットから離れるように床面の突出物で押し上げることによって上向きに枢動することができるが、下向きには枢動することができないように、前記磁気的吸引部材前記フレームに支持する一方向可動機構と、
前記一方向可動機構を解放する解放手段と
を備えたこと
を特徴とする引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニットであって、
前記一方向可動機構は、前記磁気的吸引部材の自由端に設けられたラチェット歯と、前記フレームに設けられて前記ラチェット歯に噛み合うラチェット爪とを含むラチェット機構であること
を特徴とする引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニットであって、
前記ラチェット爪は、前記ラチェット歯に噛み合う方向にばね付勢され、前記引き戸の組み付け時に前記ラチェット歯から手動で外すことができるように前記フレームに枢支されていること
を特徴とする引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニットであって、
前記フレームは、前記案内レールに整列し、前記フレームから前記案内レールの案内溝に前記案内部材を誘導する誘導レール部分を有し、
前記誘導レール部分は、前記案内部材が誘導される部分にテーパ溝を有すること
を特徴とする引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニット。
【請求項5】
引き戸の下端面の案内レールの案内溝に係入して前記引き戸を振れ止めする案内部材を含む床側案内ユニットと、前記床側案内ユニットに対向して前記引き戸の下端で前記案内レールの端部に並んで配置される戸側誘導ユニットとの組み合わせから成り、
前記戸側誘導ユニットは、
前記引き戸の下端面で前記案内レールの端部に並んで配置されるフレームと、
前記床側案内ユニットの案内部材を磁気的に吸引して前記フレーム内に誘導するように磁気的に吸引する磁気的吸引部材と、
前記磁気的吸引部材前記床側案内ユニットから離れるように床面の突出物で押し上げることによって上向きに枢動することができるが、下向きには枢動することができないように、前記磁気的吸引部材前記フレームに支持する一方向可動機構と、
前記一方向可動機構を解放する解放手段と
を備えていること
を特徴とする引き戸の振れ止め案内装置。
【請求項6】
請求項5に記載の引き戸の振れ止め案内装置であって、
前記一方向可動機構は、前記磁気的吸引部材の自由端に設けられたラチェット歯と、前記フレームに設けられて前記ラチェット歯に噛み合うラチェット爪とを含むラチェット機構であること
を特徴とする引き戸の振れ止め案内装置。
【請求項7】
請求項6に記載の引き戸の振れ止め案内装置であって、
前記ラチェット爪は、前記ラチェット歯に噛み合う方向にばね付勢され、前記引き戸の組み付け時に前記ラチェット歯から手動で外すことができるように前記フレームに枢支されていること
を特徴とする引き戸の振れ止め案内装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の引き戸の振れ止め案内装置であって、
前記フレームは、前記案内レールに整列し、前記フレームから前記案内レールの案内溝に前記案内部材を誘導する誘導レール部分を有し、
前記誘導レール部分は、前記案内部材が誘導される部分にテーパ溝を有すること
を特徴とする引き戸の振れ止め案内装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載の引き戸の振れ止め案内装置であって、
前記磁気的吸引部材を押上げるものは、前記床側案内ユニットの案内部材であること
を特徴とする引き戸の振れ止め案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸を開閉する際に振れ止めしながら戸本体を案内する引き戸の振れ止め案内装置の案内部材を作動状態に誘導するのに用いられる戸側誘導ユニット及びこの誘導ユニットを用いた引き戸の振れ止め案内装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術による1つの形態の引き戸の振れ止め案内装置が特許文献1に開示されており、この文献に開示された振れ止め案内装置は、天井等に取り付けられた複数の平行な走行レールに走行自在に吊り下げられた戸本体(特許文献1で符号3によって示されたもの)の下端面に走行方向に延びる案内溝付き案内レール25を有し、このレール25の案内溝の拡大端部で戸本体の下面に取り付けられた磁気的吸引部材41を含む戸側誘導ユニット20と、この磁気的吸引部材41によって吸引されて戸本体3の案内レール25の案内溝の拡大端部を通して案内溝内に係入するように誘導される案内部材11を含む床側案内ユニット10とから成っている。引き戸の戸本体3が開状態から閉状態の方向又はその逆の方向に移動する際に、戸側誘導ユニット20の磁気的吸引部材41が床側案内ユニット10の案内部材11を磁気的に吸引してこの案内部材11をレール案内溝の拡大端部を通して案内溝内に係入するように誘導し、戸本体3の移動につれて案内部材11がレール25の狭い案内溝内を相対的に走行して引き戸の横振れを防止している。
【0003】
この種の振れ止め案内装置を有する引き戸を建物に取り付けるために、引き戸の戸本体3を走行レールに懸吊して建物に設置するが、この際、床側案内ユニット10の案内部材11に磁気的に有効に吸引することができるように戸側誘導ユニットの磁気的吸引部材41を所定位置になるように設定する必要がある。特許文献1に示す引き戸の振れ止め案内装置においては、この磁気的吸引部材41は、戸本体3の下端凹壁に枢支ピン45で枢支され、ばね42によって押圧されて位置設定ねじ48に係合されるアーム41Bを備えている。磁気的吸引部材41は、位置設定ねじ48を進退することによってばね42に抗して又はばね42に付勢されて所定位置に設定される。
【0004】
しかし、ねじ48による磁気的吸引部材41の位置設定は、作業者が床にかがんでねじ48をドライバで回して行うので、作業し難い上に、ねじ48の回動で調節される位置を安定して精度よく設定することが難しい欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-174476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする1つの課題は、磁気的吸引部材の位置設定を自動的に行うことができる引き戸の案内装置用戸側誘導ユニットを提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとする他の課題は、磁気的吸引部材の位置設定を自動的に行うことができる引き戸の振れ止め案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の課題解決手段は、引き戸の下端面の案内レールの案内溝に係入して引き戸を振れ止めする案内部材を含む床側案内ユニットに対向して前記引き戸の下端で前記案内レールの端部に並んで配置される引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニットであって、前記引き戸の下端面で前記案内レールの端部に並んで配置されるフレームと、前記フレームに枢支され前記床側案内ユニットの案内部材を磁気的に吸引して前記フレーム内に誘導するように磁気的に吸引する磁気的吸引部材と、前記磁気的吸引部材を前記床側案内ユニットから離れるように押し上げられることによって上向きに枢動することができるが、下向きには枢動することができないように前記フレームに支持する一方向可動機構と、前記一方向可動機構を解放する解放手段とを備えたことを特徴とする引き戸の振れ止め案内装置用戸側誘導ユニットを提供することにある。
【0009】
本発明の第1の課題解決手段において、一方向可動機構は、磁気的吸引部材の自由端に設けられたラチェット歯と、フレームに設けられてラチェット歯に噛み合うラチェット爪とを含むラチェット機構の形態とすることができる。
【0010】
この場合、ラチェット爪は、ラチェット歯に噛み合う方向にばね付勢され、引き戸の組み付け時にラチェット歯から手動で外すことができるようにフレームに枢支されている形態とすることができる。
【0011】
また、本発明の第1の課題解決手段において、フレームは、案内レールに整列する誘導レール部分を有するのが好ましく、この場合、誘導レール部分は、案内部材が誘導される部分にテーパ溝を有すると一層望ましい。
【0012】
本発明の第2の課題解決手段は、引き戸の下端面の案内レールの案内溝に係入して前記引き戸を振れ止めする案内部材を含む床側案内ユニットと、前記床側案内ユニットに対向して前記引き戸の下端で前記案内レールの端部に並んで配置される戸側誘導ユニットとの組み合わせから成り、前記戸側誘導ユニットは、前記引き戸の下端面で前記案内レールの端部に並んで配置されるフレームと、前記床側案内ユニットの案内部材を磁気的に吸引して前記フレーム内に誘導するように磁気的に吸引する磁気的吸引部材と、前記磁気的吸引部材を前記床側案内ユニットから離れるように押し上げられることによって上向きには枢動することができるが、下向きには枢動することができないように前記フレームに支持する一方向可動機構と、前記一方向可動機構を解放する解放手段とを備えていることを特徴とする引き戸の振れ止め案内装置を提供することにある。
【0013】
本発明の第2の課題解決手段において、一方向可動機構は、磁気的吸引部材の自由端に設けられたラチェット歯と、フレームに設けられてラチェット歯に噛み合うラチェット爪とを含むラチェット機構の形態とすることができる。
【0014】
この場合、ラチェット爪は、ラチェット歯に噛み合う方向にばね付勢され、引き戸の組み付け時にラチェット歯から手動で外すことができるようにフレームに枢支されている形態とすることができる。
【0015】
また、本発明の第2の課題解決手段において、フレームは、案内レールに整列する誘導レール部分を有するのが好ましく、この場合、誘導レール部分は、案内部材が誘導される部分にテーパ溝を有すると一層望ましい。
【0016】
第2の課題解決手段において、床側案内ユニットの案内部材の頭部が床面から突出していると、床面に接触するように落下させた磁気的吸引部材は、この案内部材の頭部によって浮き上がるので、作業者は、磁気的吸引部材の浮き上がり高さを設定するような突出物を置く必要がなく、設定作業が一層容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、引き戸の振れ止め案内装置の戸側誘導ユニットは、引き戸の下端面の案内レールの案内溝に整列するフレームに取り付けられて床側案内ユニットの案内部材を磁気的に吸引して誘導する磁気的吸引部材と、この磁気的吸引部材を床側案内ユニットから離れるように押し上げられることによって上向きに枢動することができるが、下向きには枢動することができないようにフレームに支持する一方向可動機構と、この一方向可動機構を解放する解放手段とを備えているので、引き戸を建物に設置する際に、ラチェット解放手段で磁気的吸引部材の自由端が床に接するまで落下し、引き戸の開閉方向への移動によって床との間隔を設定する突出物によって持ち上げるだけで磁気的吸引部材の自由端を一方向可動機構によって所定の高さ位置まで上昇して磁気的吸引部材を床面に対して所定高さ位置に設定することができ、戸側誘導ユニットの位置設定を自動的に行うことができ、従って従来技術のように、作業者がかがんで床に接近する低い姿勢を維持しながらドライバでねじを回して磁気的吸引部材を位置調節するような面倒な作業を必要とすることがなく、引き戸の案内装置の設定を自動的に容易に行うことができる。
【0018】
特に、磁気的吸引部材の自由端を持ち上げる突出物が床側案内ユニットの案内部材の頭部であると、この案内部材の頭部が、戸側誘導ユニットの磁気的吸引部材の端部を持ち上げる作用を有するので、案内部材に対して適正な位置に磁気的吸引部材を持ち上げることができ、案内装置の設置を一層容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の振れ止め案内装置を備えた引き戸の正面図である。
図2図1の引き戸の案内レールとその両端の戸側誘導ユニットを分解して示す斜視図である。
図3】本発明の振れ止め案内装置に用いられる床側案内ユニットを示し、同図(A)乃至(G)は、それぞれ、この案内ユニットの分解斜視図、非案内位置にある案内ユニットの斜視図及び垂直断面図、案内位置にある案内ユニットの斜視図、側面図、正面図及び(E)のG−G線断面図である。
図4】本発明の案内装置に用いられる戸側誘導ユニットの分解斜視図である。
図5図4の戸側誘導ユニットの設置前の状態を示し、同図(A)乃至(E)は、それぞれ、このユニットの上側から俯瞰した斜視図、下側から俯瞰した斜視図、正面図、下面図及び垂直断面図である。
図6図4の戸側誘導ユニットの設置の際の異なる状態を示し、同図(A)(B)は、それぞれ、解放状態の垂直断面図及び位置設定状態の垂直断面図である。
図7】本発明の案内装置の戸側誘導ユニットの設置時の動きを順次示す垂直断面図である。
図8図7とほぼ同じであるが、図1乃至図7のものとは異なる床側案内ユニットを用いた案内装置の戸側誘導ユニットの動きを順次示す垂直断面図である。
図9図8の実施の形態の案内装置に用いられている床側案内ユニットを示し、同図(A)乃至(D)は、それぞれ、この案内ユニットの非案内状態の斜視図、案内状態の斜視図、非案内状態の垂直断面図及び分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施の形態による振れ止め案内装置20を備えた引き戸10が図1及び図2に示されており、図面では、引き戸10は、1つの戸本体12のみが設置されているのが示されているが、実際には多数の引き戸が同じ列又は異なる列に設置される。この戸本体12は、天井等の上壁14に支持された走行レール16に複数の吊りローラ18を介して走行自在に吊り下げて支持されている。
【0021】
振れ止め案内装置20は、図2に示すように、戸本体12の下端面に取り付けられ戸本体12の下面に沿って走行方向に延びる案内溝32を有する案内レール30と、後に述べる戸側誘導ユニットによって案内レール30に誘導されて戸本体12を振れ止めしつつ案内するように床に対して昇降する案内部材42(図3参照)を含んで床側に取り付けられる床側案内ユニット40と、案内レール30の両端で戸本体12の下端面12Lに取り付けられ床側案内ユニット40の案内部材42を磁気的に吸引する磁気吸引部材52(図5参照)を含んで案内部材42を案内レール30の案内溝32に係入するように誘導する戸側誘導ユニット50とから成っている。
【0022】
床側案内ユニット40は、図3に示すように、床Gの穴GG内に埋め込まれた鍔付基体44と、この基体44の相対する案内スロット44S内を昇降する保持ピン46Pによって保持されつつ基体44内に摺動自在に設けられた中間保持部材46と、この中間保持部材46の相対する案内スロット46S内を昇降する脚状突部48Lを有する上部保持部材48とから成っている。案内部材42は、両端が半円形である略矩形状の案内板42Pの形態を有し、この案内板42Pは、その中心に設けられた二又部42Tを保持ピン42TPによって上部保持部材48の薄肉頭部48Hに取り付けて上部保持部材48に枢支されている。なお、図3(C)(G)に示された符号44Bは、基体44の鍔44Fを床Gに止めるねじである。
【0023】
案内板42Pは、図3(C)(G)に示すように、外周に丸みを有して立ち上がる外周縁42PEを有し、案内板42Pが図3(C)の非案内状態にあるとき、この案内板42Pは、基体44の鍔44Fを覆うようになっている。後に述べる戸側誘導ユニット50の磁気的吸引部材52が案内板42Pを磁気的に吸引するために、案内板42Pは、磁性材料から作られている。
【0024】
図3の形態の床側案内ユニット40は、中間保持部材46と上部保持部材48とが入れ子式に組み合わせられているので、非案内状態で短い高さで畳まれ、穴GGは、浅くて済み、取り付け作業が容易となる。
【0025】
戸側誘導ユニット50は、図4に示すように、引き戸10の案内レール30の案内溝32に整列するテーパ溝52Gを含むフレーム52と、床側案内ユニット40の案内部材42を磁気的に吸引してフレーム52のテーパ溝52G(図5(B)参照)内に誘導するように磁気的に吸引する磁気的吸引部材54と、この磁気的吸引部材54を床面の突出物によって床側案内ユニット40から離れるように上向きには枢動することができるが、下向きには枢動することができないようにフレーム52に支持する一方向可動機構56と、この一方向可動機構56を解放する解放手段58とを備えている(図5(E)及び図6参照)。
【0026】
フレーム52は、図4乃至図6に示すように、案内レール30とほぼ同じ外形で下面が開口する断面略四角の形態を有し、テーパ溝52Gは、案内レール30の案内溝32に向けて幅が狭くなるように案内レール30側の端部下壁の誘導レール部分52Lに形成されている(図5(B)参照)。このテーパ溝52Gは、後に述べるように、磁気的吸引部材54によって吸引されて上昇する床側の案内部材42を戸本体12の走行につれて相対的に案内レール30の案内溝に誘導するためのものである。なお、フレーム52は、案内レール30とは反対側の端部に立ち上がり部52Rを有し、この立ち上がり部52Rは、戸本体12の端部の取り付け溝12G(図2参照)内に係入して保持されている。
【0027】
磁気的吸引部材54は、フレーム52内で案内レール30側の端部に枢支ピン54PPで枢動自在に支持され(図4参照)、その自由端は、その上方に取り付けられた案内ピン54GPをフレーム52の弧状溝52Sに係入して保持されている。従って、磁気的吸引部材54は、枢支ピン54PPを支点として案内ピン54GPをフレーム52の弧状溝52Sに沿って摺動しながら上下に円弧運動しながら昇降することができる。
【0028】
図示の形態では、磁気的吸引部材54は、図4に示すように、上面が開いて両側壁54SWを有する帯板54Sから成っており、この帯板54Sの上面には2つの矩形状のへこみ54SUを有し、これらのへこみ54SUにそれぞれマグネット54Mが取り付けられている。従って、床側案内ユニット40と戸側誘導ユニット50において、磁気的吸引部材54のマグネットが磁性体である案内部材42を磁気的に吸引して案内部材42を持ち上げて浮き上がらせるが、磁気的吸引部材54が磁性体から成っていて案内部材42がマグネットを搭載していてもよいし、磁気的吸引部材54と案内部材42との両方が互いに引き合うマグネットであってもよい。
【0029】
一方向可動機構56は、図5(E),図6(A)(B)に示すように、磁気的吸引部材54の自由端側の立ち上がり部54Rの前面に設けられた複数のラチェット歯56Tとフレーム52の外端壁に設けられたラチェット爪56Pとを含むラチェット機構から成っている。後に詳細に述べるように、磁気的吸引部材54が床Gに接するまで下降した状態で磁気的吸引部材54が何らかの手段によって押し上げられることによって持ち上げられ(又は浮き上がらせられると)、磁気的吸引部材54は、ラチェット歯56Tがラチェット爪56Pを乗り越えて上昇することができるが、磁気的吸引部材54から持ち上げる力が解放されても、ラチェット爪56Pがラチェット歯56Tに食い込んで磁気的吸引部材54を下降することがない。
【0030】
解放手段58は、フレーム52の外端部に枢支ピン58Pによって枢支されラチェット爪56Pを有するラチェット解放部材58Mから成っており、このラチェット解放部材58Mは、ラチェット爪56Pを有する側とは反対側の部分でばね58Sによって押圧してラチェット爪56Pを磁気的吸引部材54側のラチェット歯56Tに押し付けるように付勢されている。この解放手段58は、ばね58Sに抗してラチェット解放部材58Pを押圧することによって爪56Pを磁気的吸引部材54のラチェット歯56Tから解放して磁気的吸引部材54を自重で下降することができる。
【0031】
次に、本発明の引き戸の振れ止め案内装置20を有する引き戸10を建物に設置する場合の作業工程を図7を参照して以下に述べる。
【0032】
本発明の振れ止め案内装置20を有する引き戸10を建物に設置する場合、引き戸の走行レール16に合わせて床Gに間隔をあけて複数の床側案内ユニット40を取り付ける。引き戸10の戸本体の下面には、案内レール30の両端に戸側誘導ユニット50が取り付けられる(図1図7参照)。この状態では、戸側誘導ユニット50の磁気的吸引部材54は、フレーム52から突出することなく、フレーム52内に納まっている(図7(A)参照)。
【0033】
図1の左側の1つの戸側誘導ユニット50の磁気的吸引部材54の高さ位置の設定作業を説明すると、床側案内ユニット40に対して戸本体12の走行方向(左方向)の後方に戸側誘導ユニット50がある図7(A)の状態において、戸側誘導ユニット50の解放手段58のラチェット解放部材58Mの上方を押し込むと、ばね58Sに抗してラチェット解放部材58Mが図7(B)に示すように時計方向に搖動し、ラチェット爪56Pをラチェット歯56Tから解放するので、磁気的吸引部材54は、枢支ピン54PPを支点に自重で下方に枢動し、その前端が床Gに接触する。
【0034】
この状態において、図7では図示していない戸本体12を図7の左方向に走行すると、その下側の前端に取り付けられている戸側誘導ユニット50が同じ方向に移動するため、床Gに接触している磁気的吸引部材54が床側案内ユニット40の案内部材42によって持ち上げられる(図7(C)参照)。一方向可動機構56であるラチェット機構は、磁気的吸引部材54の持ち上げによってラチェット歯56Tは、ラチェット爪56Pを滑って上昇するのを許す。
【0035】
戸本体12が更に左方向に移動するにつれて、戸側誘導ユニット50は、図7(C)の状態から図7(D)(E)(F)を経て図7(G)の状態まで移動する。図7(D)の状態では、磁気的吸引部材54が床側案内ユニット40の案内部材42をマグネット54Mによって磁気的に吸引し、案内部材42である案内板42Pが磁気的吸引部材54の帯板54Sの下面に吸着される。案内板42Pは、保持ピン42TPによって上部保持部材48に枢支されているので、この保持ピン42TPを支点にして首振りし磁気的吸引部材54の帯板54Sの下面に全面的に吸着される。
【0036】
戸本体12が更に左方向に走行して図7(E)の状態になると、案内部材42(案内板42P)が戸側誘導ユニット50のフレーム52のテーパ溝52Gを有する誘導レール部分52Lの上方に達するので、戸本体12の更なる走行によって案内部材42は、磁気的吸引部材54から磁気に抗して離反しつつ誘導レール部分52Lから案内レール30に相対的に誘導される(図7(F)参照)。従って、その後、戸本体12は、案内部材42が案内レール30に沿って案内されるので、横振れすることなく、走行する。
【0037】
一方、磁気的吸引部材54は、図7(C)の状態で一方向可動機構(ラチェット機構)によってその下端が案内部材42によって持ち上げられた位置に保持されて床Gから浮き上がったままであり、その後の戸本体の走行でも床Gから案内部材42が突出する高さを維持しながら磁気的吸引部材54が戸本体12と共に移行する(図7(G)参照)。
【0038】
図示の形態では、床側案内ユニット40の案内部材42が床Gから突出していてこの案内部材42の突出部を利用して戸側誘導ユニット50の磁気的吸引部材54を床Gから浮き上がらせているが、床側案内ユニット40の案内部材42は、必ずしも、床Gから突出させる必要はなく、床Gと上面と同じ面又は床Gの上面から僅かに引っ込んだ状態で床G内に埋め込んでもよい。この場合、戸側誘導ユニット50の磁気的吸引部材54の浮き上がりは、例えば、戸本体12が図7(B)の位置にあるとき、床側案内ユニット40の案内部材42よりも戸本体12に寄った位置で磁気的吸引部材54を持ち上げるような補助板片を作業者が床Gに置いて戸本体12をこの補助板片に向けて走行するか、図7(B)の位置で同様の補助板片を作業者が磁気的吸引部材54の下面に差し込んで、磁気的吸引部材54を押し上げることによって浮き上がらせ、その後戸側誘導ユニット50が床側案内ユニット40の上を通過するように戸本体12を走行させてもよい。なお、短い補助板片ではなく、例えば、作業者がストリップ状の押し上げ部材を床上に斜めに沿わせて戸本体12の走行によって磁気的吸引部材54を押し上げてもよい。
【0039】
図8及び図9は、図1乃至図7の実施の形態の振れ止め案内装置20に用いられた床側案内ユニット40を変形した形態であって符号140で示された床側案内ユニットを示す。この形態では、床側案内ユニット140の案内部材142は、垂直杆部142Rとその上端に一体に設けられた板状の頭部142Hとから成っていて垂直断面がT字形の形態である。この案内部材142は、図9(B)(D)に示すように、頭部142Hが露呈するように抜け止め状態で筒状保持部材146内に保持されている。案内部材142の抜け止めは、垂直杆部142Rの下端に設けられた外鍔142RFと筒状保持部材146の上端内鍔146UFとで行われる。
【0040】
床Gの穴GGに埋め込まれる基体144は、ほぼ円形の水平断面を有し、穴GGの内壁面に圧入によって取り付けられている。この基体144は、上端に小さな外鍔144Fを有し、この外鍔144Fが床Gの上面に載るように取り付けられる。
【0041】
この基体144は、その中心から偏心した保持孔144Hを有し、筒状保持部材146とその中に保持される案内部材142とは、この偏心保持孔144H内に抜け止め状態で保持されている。筒状保持部材146は、その下端外鍔146LFと偏心保持孔144Hの上端内鍔144UFとで抜け止めされる(図9(C)参照)。案内部材142の頭部142Hは、基体144の上面から露出している。
【0042】
基体144は、その上面に露出する案内部材142の頭部142Hを囲むようにして基体144の上面に取り付けられるC字形の上添板144Tを有する。図9から解るように、案内部材142と上添え板144Tとは、戸側誘導ユニット50の磁気的吸引部材54の浮き上がりを容易にするため、丸みを有して立ち上がる周縁を有する。なお、図9(B)(D)において、符号144LCは、基体144の偏心保持孔144Hを閉じる下蓋である。
【0043】
上添え板144TがC字形であると、側方で開く凹部があるので、図9(B)に示すように、案内部材142を持ち上げて案内部材142と基体144との間にたまるゴミを刷毛等によって容易に取り除くことができるので有利である。
【0044】
この変形された実施の形態でも、図8(A)乃至(G)に示すように、図8(A)の磁気的吸引部材54がフレーム52に引き込まれた上昇位置から解放手段58によって床Gに接触するように下降し(図8(B)参照)、その後、この磁気的吸引部材54は、戸本体12の走行につれて床側の案内部材142又は上添え板144Tによって浮き上がり、一方向可動(ラチェット)機構56によってこの浮き上がり状態に維持されたまま(図8(C)参照)、案内部材142を吸着し、誘導レール部分52Lを介して案内レール30に誘導する(図8(D)(E)(F)参照)。この変形された実施の形態では、案内部材142の頭部142Hは、前の実施の形態のように、首振りしないので、案内部材142の頭部142Hは、磁気的吸引部材54に部分的に吸着されることになる(図8(D)乃至(F)参照)。この案内ユニット140は、案内部材142が円形の基体144に対して偏心しているので、穴GGに対して基体144を適宜の角度位置で圧入することによって案内部材142の戸本体12に対する位置の設定を容易に行うことができる。
【0045】
図示の形態では、フレーム52の誘導レール部分52Lは、テーパ溝52Gを有するが、案内部材42又は142が入り込む部分があれば、テーパ溝でなくてもよいし、またフレーム52の長さが小さく、フレーム52内に入り込んだ案内部材42又は142が吸引された後、フレーム52から直ちに案内レール30に誘導することができれば、誘導レール部分52Lがなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、上記のように、床側案内ユニットの案内部材を吸引して案内レールに誘導する戸側誘導ユニットの磁気的吸引部材を案内部材に磁気的に有効に作用する高さの範囲で床面から浮き上がらせる作業を簡単に行うことができるので、産業上の有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
G 床
GG 穴
10 引き戸
12 戸本体
12G 取付け溝
14 天井等の上壁
16 走行レール
18 吊りローラ
20 振れ止め案内装置
30 案内レール
32 案内溝
40、140 床側案内ユニット
42、142 案内部材
42P 案内板
42PE 立ち上がり外周縁
42T 二又部
42TP 保持ピン
44 鍔付基体
44B ねじ
44F 鍔
44S 案内スロット
46 中間保持部材
46P 保持ピン
48 上部保持部材
48H 薄肉頭部
48L 脚状突部
50 戸側誘導ユニット
52 フレーム
52G テーパ溝
52L 誘導レール部分
52S 弧状スロット
52R 立ち上がり部
54 磁気的吸引部材
54PP 枢支ピン
54GP 案内ピン
54S 帯板(ストリップ)
54SW 両側壁
54SU 矩形状へこみ
54M マグネット
54R 前部立ち上がり部
56 一方向可動機構(ラチェット機構)
56T ラチェット歯
56P ラチェット爪
58 方向性解放手段(ラチェット解放手段)
58M ラチェット解放部材
58P 枢支ピン
58S ばね
140 床側案内ユニット
142 案内部材
142R 垂直杆部
142RF 外鍔
142H 板状の頭部
144 基体
144F 外鍔
144H 偏心保持孔
144UF 上端内鍔
144T 上添え板
144LC 下蓋
146 筒状保持部材
146UF 上端内鍔
146LF 下端外鍔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9