(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921717
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】ワイパー制御
(51)【国際特許分類】
B60S 1/08 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
B60S1/08 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-551542(P2014-551542)
(86)(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公表番号】特表2015-506866(P2015-506866A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2012073045
(87)【国際公開番号】WO2013104456
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2014年8月7日
(31)【優先権主張番号】12150726.3
(32)【優先日】2012年1月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マーティン メルヒャー
【審査官】
柳元 八大
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−278567(JP,A)
【文献】
特開平06−286584(JP,A)
【文献】
特開平03−139460(JP,A)
【文献】
特開平06−262943(JP,A)
【文献】
特開2010−254734(JP,A)
【文献】
特開昭58−174046(JP,A)
【文献】
特開2003−246259(JP,A)
【文献】
特開2006−176118(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0130877(US,A1)
【文献】
特開平09−249096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留水分を払拭するために、疎水性コーティング(3)を備えた透明なガラス(2)を洗浄及び乾燥させるための方法であって、
車両エンジン(7)を停止した後で、前記ガラス(2)の外面(I)上の水分量を測定し、一定の水分量又は除去すべき水分量が存在する場合に、少なくとも1分の待機時間(W)の経過後に、少なくとも1回の払拭過程を実施するようにし、
前記水分量を、レインセンサ(5)によって測定し、前記待機時間(W)を、タイマーによって計測し、
ステップA)前記タイマーをリセットし、
ステップB)ワイパースイッチ(4)を検査し、ここで、
前記ワイパースイッチ(4)がスイッチオンされている場合には、前記ステップA)を実施し、又は、
前記ワイパースイッチ(4)がスイッチオフされている場合には、以下のステップC)を実施し、
ステップC)前記レインセンサ(5)を検査し、ここで、
前記ガラス(2)が乾燥している場合には、前記ステップA)を実施し、
又は
前記ガラス(2)が濡れている場合には、以下のステップD)を実施し、
ステップD)前記レインセンサ(5)を検査し、ここで、
新たな雨滴が検出される場合には、前記ステップA)を実施し、
又は
新たな雨滴が検出されない場合には、以下のステップE)を実施し、
ステップE)前記タイマーを検査し、ここで、
前記タイマーが、前記待機時間(W)よりも短い持続時間を設定している場合には、前記ステップB)を実施し、
又は
前記タイマーが、前記待機時間(W)よりも長いか等しい持続時間を設定している場合には、以下のステップF)を実施し、
ステップF)少なくとも1回の払拭過程を実施し、さらに前記ステップA)を繰り返すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記払拭過程を、ワイパー制御部(6)によって制御する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1回から10回の払拭過程を実施する、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記払拭過程を、1分から30分の待機時間(W)の経過後に実施する、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記払拭過程の前又は前記払拭過程中に、前記ガラス(2)に洗浄液を噴霧するためのウインドウォッシャーシステム(8)をスイッチオンする、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記車両エンジン(7)が停止してからの持続時間又はイグニッション電子スイッチがスイッチオフされてからの持続時間が、最大で120分の場合にのみ、前記払拭過程が実施される、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
残留水分を払拭するために、疎水性コーティング(3)を備えた透明なガラス(2)を洗浄及び乾燥させるための装置であって、
少なくとも、
前記ガラス(2)の外面上に設けられたワイパー(12)と、ワイパーモーター(11)とを備えた、払拭過程を実施するためのワイパー装置(9)と、
前記ガラス(2)の外面上の水分量を測定するためのレインセンサ(5)と、
前記ワイパー装置(9)及び前記レインセンサ(5)に接続されたワイパー制御部(6)と、
待機時間(W)を計測するタイマーと、を含んでいる装置において、
前記ワイパー制御部(6)が、車両エンジン(7)の停止後で、少なくとも1分の前記待機時間(W)の経過後に、一定の水分量又は除去すべき水分量が存在している場合に、少なくとも1回の払拭過程を実施するように構成されており、
ステップA)前記タイマーがリセットされ、
ステップB)ワイパースイッチ(4)が検査され、ここで、
前記ワイパースイッチ(4)がスイッチオンされている場合には、前記ステップA)が実施され、又は、
前記ワイパースイッチ(4)がスイッチオフされている場合には、以下のステップC)が実施され、
ステップC)前記レインセンサ(5)が検査され、ここで、
前記ガラス(2)が乾燥している場合には、前記ステップA)が実施され、
又は
前記ガラス(2)が濡れている場合には、以下のステップD)が実施され、
ステップD)前記レインセンサ(5)が検査され、ここで、
新たな雨滴が検出される場合には、前記ステップA)が実施され、
又は
新たな雨滴が検出されない場合には、以下のステップE)が実施され、
ステップE)前記タイマーが検査され、ここで、
前記タイマーが、前記待機時間(W)よりも短い持続時間を設定している場合には、前記ステップB)が実施され、
又は
前記タイマーが、前記待機時間(W)よりも長いか等しい持続時間を設定している場合には、以下のステップF)が実施され、
ステップF)少なくとも1回の払拭過程が実施され、さらに前記ステップA)を繰り返されることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記疎水性コーティング(3)は、フッ素化アルキルシランコーティングを含む、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記疎水性コーティング(3)は、二酸化シリコンSiO2と、Al,B,C及びZrのグループからの任意の1つ以上の元素を含んでいる、請求項8記載の装置。
【請求項10】
地上、空中、又は、水中及び/又は水上を推進移動するための推進移動手段のフロントガラスに、請求項1から6いずれか1項記載の方法又は請求項7から9いずれか1項記載の装置を使用することを特徴とする使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留水分を払拭するための疎水性コーティングを備えた透明なガラスの洗浄及び乾燥のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウィンドウやリアウィンドウには、通常はウインドシールドワイパーやワイパーシステムが装備されており、これらの装置が雨天や濃霧などのときの水滴をウインドウガラスから除去している。さらに中級クラスから上級クラスの車両では、このワイパーシステムは、払拭過程を自動的に制御して払拭間隔をそのときの雨量に合わせることのできるマイクロプロセッサとレインセンサとを通常装備している。そのようなシステムは、例えば独国特許出願公開DE102 38 168号公報及び欧州特許出願公開EP 1 614 594 号公報から公知である。
【0003】
またワイパーシステムを支援するために、前記ガラス外面に例えば撥水性コーティングや疎水性コーティングが使用されている。この疎水性コーティングは、例えばシュナイダー等による公知文献“FATモノグラフシリーズ(Research Association for Automotive Technology Monograph Series)、第167号,ISSN 0933−050X”に記載されているように、真珠のような輝き効果と小粒の水滴の形成をもたらす。そのような小さな水滴は、走行中の風圧によって視界から払拭される。これによりワイパーの使用頻度が大幅に低減され、視認性の向上に役立つ。さらに、特に暗闇や対向車のライトのもとでの視認性の悪化や反射の発生も抑えられる。疎水性コーティングは、例えばシリコンオキシカーバイド層のプラズマ活性化によって達成される。これについては、例えば欧州特許出願EP 1 720 808 A1明細書又は国際公開WO2010/079299号明細書に開示がある。
【0004】
フロントガラスの疎水性コーティングの場合、通常は、例えば英国特許出願GB 2357541 A明細書や国際公開第2010/079299号パンフレットにも開示があるように、ワイパーの機械的な作用がコーティングを傷つけてしまうことが前提とされる。また、頻繁なウインドウの清掃も、それに伴う機械的作用と化学的な作用によってコーティングを傷つけてしまうことが前提とされる。
【0005】
それに対して、本発明の目的は、疎水性コーティングの寿命を、さらに有利な方法で延ばすための方法および装置を開発することにある。この目的並びにこれに伴うさらなる目的は、本発明の独立請求項の特徴部分によって提案された方法、装置および使用方法によって達成される。本発明の別の有利な実施形態は、従属請求項の特徴によって示される。
【0006】
本発明者による鋭意な研究で示されたように、疎水性コーティングの効果と耐久性は、コーティング上の水分の乾燥によって著しく劣化する。なぜなら乾燥すると、カルキ成分や汚れの粒子がコーティング上に残り、それらがコーティングの疎水性効果を減少させるからである。
【0007】
本発明は、残留水分を払拭するための疎水性コーティングを備えた透明ガラスを洗浄及び乾燥させるための方法を含み、ここでは、車両エンジンを停止した後で、前記透明ガラスの外面上の水分量を測定し、一定の水分量又は払拭すべき水分量が存在する場合に、少なくとも1分の待機時間の経過後に、少なくとも1回の払拭過程が実施される。
【0008】
前記水分量とは、好ましくはレインセンサによって測定することができる最少量の水分であり、好ましくはレインセンサのセンサ領域内の少なくとも1つの水滴か又はレインセンサのセンサ領域に亘って拡がる相応の水の膜である。この水膜は、例えば、任意に駐車した車両の早朝のフロントガラス上に凝縮した結露であってもよい。
【0009】
本発明による方法は、有利にはワイパー制御によって、例えばマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラで制御されるワイパー制御部によって制御される。このワイパー制御部は、プログラミング技法によって以下で説明するようなガラスを洗浄及び乾燥させるための方法を実施することができるように構成されている。このワイパー制御部は、既存のワイパー制御部に統合させてもよいし、あるいは、外部コンポーネントとして実現されてもよい。ワイパー制御部は、さらに別の機能、例えば、ワイパーの速度の選択や雨量に依存した間欠切り替え機能などを有していてもよい。待機時間は、有利にはタイマーによって決定される。このタイマーは、例えばワイパー制御部に統合されているか又は代替的に外部の電子部品であってもよい。水分量は、有利には、レインセンサによって測定される。
【0010】
本発明による方法は、手動または自動で活動化されるプロセスに基づいて実施される。自動化されたプロセスは、例えば、車両のエンジンを停止するか、点火装置をオフにすることによって開始される。プロセスの開始後、ステップAにおいてタイマーはリセットされる。ステップBでは、ワイパースイッチの切替状態がチェックされる。ワイパースイッチを介して、ワイパーモーターとワイパーからなるワイパー装置は手動で制御することができる。ワイパースイッチは、一般に、ワイパーの速度を制御するためにも使用される。ワイパースイッチがオンであれば、ワイパーは既に払拭過程中にあり、本発明による洗浄及び乾燥は不要である。このようなケースでは、ステップAは、ワイパースイッチがオフになるまで繰り返される。ワイパースイッチがオフにされると、ステップCが実施される。
【0011】
ステップCでは、ガラス上の水分量が検査される。この目的のために、レインセンサのデータ信号が評価される。レインセンサが乾燥したガラスの信号を供給すると、ステップAが実施される。このことは、雨が降っていないか、又はガラスが乾燥している状態、例えばガレージに置かれている状態を意味する。両者のケースにおいて、ガラスの乾燥は不要であり、払拭過程は、寿命の増加や疎水性コーティングの効果の向上には結びつかない。レインセンサがガラスが濡れた状態の信号を供給すると、ステップDが行われる。
【0012】
ステップDにおいては、レインセンサが改めて検査される。レインセンサの信号が新たに付加された雨滴に相応すると、ステップAが実施される。継続的な降雨のケースでは、本発明によるガラスの洗浄及び乾燥は不可能であり、その際の払拭過程はあまり意味をなさない。レインセンサが新たな雨滴を検出しない場合には、ステップEが行われる。
【0013】
ステップEでは、タイマーがチェックされる。タイマーが所定の待機時間W未満の持続時間を示した場合、ステップBが実施される。このことは、雨が終了し、かつ、所定の待機時間Wが経過した後で初めて、本発明によるガラスの洗浄と乾燥が行われることを意味する。
【0014】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、1分から30分の待機時間W、好ましくは2分から10分の待機時間Wの経過後に少なくとも1回の払拭動作が実施される。この待機時間Wは、2つの対向するプロセスの最適化として得られる。すなわち、一方では、待機時間Wは十分な長さに選択されなければならない。これは、例えば、にわか雨が過ぎ去って、それ以上の雨滴がガラスに付着しないことを保証するためである。同時に、本発明によるガラスの洗浄効果と乾燥効果を得るために、ガラス上の水分の過度に長い乾燥は許容されない。
【0015】
ステップFでは、少なくとも1回の払拭過程が行われる。このことは、ワイパー制御部からワイパー装置に制御信号を送出することによって行われる。続いて、本発明による方法がステップAにて新たに開始されるか、又は当該過程が終了する。
【0016】
本発明による方法の別の有利な実施形態によれば、1回から10回の払拭過程、好ましくは1回から3回の払拭過程、より好ましくは1回の払拭過程が実施される。平均的に湿っているガラスの乾燥に必要とされる払拭過程の数は、ワイパー装置の大きさとモデル並びにガラスに依存し、簡単な実験の枠内で求められる。
【0017】
本方法による方法のさらに別の有利な実施形態によれば、払拭過程前に、又は、払拭過程中に、ガラス洗浄システムがスイッチオンされる。その際に、ユーザーは、ガラス上の疎水性コーティングに対して洗浄液を噴霧し得る。このことは、埃、油および昆虫などの汚れを良好に除去すべくガラスを再び完全に湿らせることにつながる。このことは、ガラスの特に良好な洗浄と乾燥とを可能にする。
【0018】
本発明による方法は、車両のエンジン停止状態において中断されることなく実施され、特に、車両上方を覆う屋根のない空き地に比較的長い間車両を停めている状態の場合には特に有利である。本発明の方法によれば、付着した雨水が降雨の治まった時に除去され、ガラスが乾燥される。このことは、疎水性コーティングの撥水作用を長時間維持させる。
【0019】
本発明による方法のさらに別の実施形態によれば、ステップFにおいて、まず、車両エンジンがまだ動作中であるか、または、所定の遮断時間Zに未たないうちにエンジン停止がなされたかどうかがチェックされる。車両がエンジン停止してからの持続時間又はイグニッション電子スイッチがスイッチオフされてからの持続時間が、遮断時間Zよりも短いならば、払拭過程が実施される。この遮断時間Zは、有利には10分間から60分間の間であり、特に有利には20分間から40分間の間である。遮断時間Zを上回った場合には、ステップAが実施されるか又は当該過程が終了される。このことは、車両が駐車状態、イグニッションスイッチオフ状態において、降雨の後で、自然発生的な開始ではない、ガラスの払拭動作を実施し得る利点となる。但しこのことは、車両が長期間駐車されている状況のときには、車両バッテリの放電を誘発させる可能性もある。また、ドライバーのいない駐車車両のワイパーがいきなりスイッチオンした場合には、偶然通り合わせた人や他の道路利用者を驚かせる可能性もあり得る。
【0020】
本発明はさらに、残留水分を払拭するための疎水性コーティングを備えた透明ガラスを洗浄及び乾燥させるための装置にも関している。この装置は少なくとも、
前記透明ガラスの外面上のワイパーと、払拭過程を実施するためのワイパーモーターとを備えたワイパー装置と、
前記透明ガラスの外面上の水分量を測定するためのレインセンサと、
前記ワイパー装置と前記レインセンサに接続されたワイパー制御部とを含んでおり、
ここでは、車両エンジンを停止した後で、一定の水分量又は払拭すべき水分量が存在する場合に、前記ワイパー制御部により、少なくとも1分の待機時間(W)の後で、少なくとも1回の払拭過程が実施される。
【0021】
本発明によるガラスには、一枚のガラスからなる単一ガラスか、又は、複数の単一ガラスが中間膜によって相互に接着された合わせガラスや、気体の封入された絶縁領域を含んだ中空絶縁層ガラスからなる複層ガラスなども含まれる。前記合わせガラス又は前記単一ガラスのガラスとしては、基本的には、本発明によるガラスの製造条件と使用条件の下で、熱的および化学的に安定し、かつ、寸法的に安定し、かつ、疎水性表面を備えるか又は疎水性被膜でコーティングすることのできる、全ての透明な基板が基本的に適している。
【0022】
前記ガラスは、好ましくは一般ガラス、より好ましくは板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス又は透明なプラスチック、有利には剛性のある透明プラスチック、とりわけ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル及び/又はそれらの混合物が含まれる。適切なこれらのガラス群は、例えば欧州特許第0847965号明細書から公知である。
【0023】
前記ガラスの厚さは、幅広く変更が可能なので、個々のケースの要求に基づいて適合化することができる。好ましくは前記ガラスには、1mm乃至25mmの標準的な厚さ、車両用ガラスとして有利には1.4mm乃至2.5mmの標準的な厚さ、家具、家電及び建物の特に電気加熱体用として有利には4mm乃至25mmの標準的な厚さを有するものが使用可能である。ガラスのサイズも大幅に変更可能であり、本発明の用途に合った大きさに合わせることが可能である。このガラスは、任意の三次元形状を有していてもよい。好ましくは、このガラスは、平面状か又は僅かに若しくは大幅に1つの空間方向に湾曲していてもよいし、複数の空間方向に湾曲していてもよい。また特定の平坦な基板が用いられてもよい。さらに前記ガラスは無色かまたは着色されていてもよい。
【0024】
有利な実施形態によれば、本発明による合わせガラスが少なくとも1つの中間層で相互に接着された少なくとも2つのガラスを含んでいる。この中間層は、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性樹脂を含有し、またはそれらの複数の層からなり、有利には0.3mmから0.9mmの厚さを有している。
【0025】
疎水性コーティングとしては、冒頭に述べたような単一ガラス又は合わせガラス上に被着可能であって、適用箇所に応じた使用条件、例えば車両のフロントガラスとして十分に長い間、疎水性効果を維持することができる全てのコーティングが適している。
【0026】
例えば特に有利な疎水性コーティングの一例として、欧州特許出願EP 1720808 A1明細書、国際公開第2010/0729299号パンフレットおよび国際公開第2011/070293号パンフレットに記載がある。この種の疎水性コーティングは、好ましくはアルキルシラン、特にフッ素化アルキルシランを含んでいる。疎水性コーティングは、二酸化シリコンSiO
2からなるベース層を含んでいてもよく、これは場合により基のAl、B、C、およびZrのグループからの1つ若しくは複数の元素を含有し、より好ましくは、シリコンカーバイドSiO
xC
yを含有する。ベース層は、好ましくは、ガラスとアルキルシラン層の間に配置されている。ベース層は好ましくはアルゴン、ヘリウム、窒素、酸素、水蒸気、またはそれらの混合物からなるプラズマ中で活性化される。そのようなコーティングは、特に車両用ガラスに適しており、耐候性及び機械的な摩耗に対して大幅な安定性を有している。
【0027】
前記装置はさらに、レインセンサを含んでおり、このレインセンサは、ガラスの外面上の水分や雨滴を検出するように構成されている。このレインセンサはその他に、新たな雨滴、すなわち、ガラス上の雨滴の変化も検出することができなければならない。適切なレインセンサは例えば、独国特許出願公開第 102 61 244号明細書、独国特許出願公開第10 2007 037 548号明細書、及び欧州特許EP 1 971 509 B1明細書から公知であり、それらは雨量を容量的手法若しくは光学的手法を用いて測定する。
【0028】
さらに、本発明は、本発明による方法または装置を、地上、空気中又は水中
および/または水上を推進移動する推進移動手段、特に自動車におけるとりわけフロントガラスやリアウィンドウなどへの使用のほか、機能的および/または装飾的な個別部材としての使用並びに家具、家電製品や建物の組み込み部材としての使用にも関している。
【0029】
それらは個別に若しくは任意の組み合わせによって様々な実施形態で実現可能であることを理解されたい。特に、上記してきた特徴並びに以下で説明する特徴は、前記した組み合わせにおいてのみ使用されるのではなく、その他の組み合わせはもちろん、本発明の枠内から逸脱しない限り、単独での使用も可能である。
【0030】
以下では、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。これらの図面は概略的な描写であり、必ずしも縮尺通りのものではない。またこれらの図面が本発明の権利範囲を限定する趣旨のものではないことを述べておく。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に従って形成されたガラス装置を概略的に示した図
【
図3】本発明による方法のさらに別の実施例のフローチャート
【実施例】
【0032】
図1には、参照番号1の付された本発明に従って形成されたガラス装置が概略的に示されている。このガラス装置1は、自動車の透明なフロントガラスを例にして示されており、ここでは例えば合わせガラスとして形成されたガラス2を含んでいる。このガラス2は、剛性的な外面と剛性的な内面とを備えており、これら双方は、単一ガラスとして形成され、熱可塑性接着剤層を介して互いに接着されている。この2枚の単一ガラスは、ほぼ同じ大きさであり、略台形状の湾曲した輪郭を持っている。但し本発明は、これらの形態に限定されるものではなく、前記ガラス2は、実際の使用に適したその他のあらゆる形態を有していてもよい。前記2枚の単一ガラスは、フロートガラス、鋳造ガラス、又はセラミックガラスなどのガラス材料から製造されるか、又は、例えばプラスチック、特にポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMA)、又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの非ガラス材料から製造される。2枚の単一ガラスの接着のための接着剤層としては、例えば、次のようなプラスチック、特にポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)およびポリウレタン(PU)をベースにした接着剤層を使用することができる。前記ガラス2は、前記2枚の単一ガラスの上に若しくはこれらのガラスの間に、さらなる機能層、例えば加熱可能な層や熱放射を反射する層を含んでいてもよい。
【0033】
前記ガラス2の外面は、疎水性コーティングを有する。前記ガラス2の外面とは、本願発明の趣旨において、車両室内空間とは反対側のガラス面2を意味している。また前記疎水性コーティングは、例えばシリコンオキシカーバイドからなるベース層と、フッ素化アルキルシランからなる外側の疎水性コーティングとを含む。このようなコーティングは、例えば、国際公開第2010/0729299号パンフレット、または、国際公開第2011/070293号パンフレットから公知であり、これらの文献内で詳細に説明されている。
【0034】
ガラス装置1は、さらに、例えばガラス2の内側に配置されるレインセンサ5を有している。このレインセンサは、例えば、光学的レインセンサであって、このセンサは赤外線LEDを有しており、赤外光の反射を介して、ガラス2の外面上の水分量を検出している。
【0035】
前記レインセンサ5は、マイクロプロセッサをベースにしたワイパー制御部6と、データ線路を介してデータ処理できるように接続されている。このワイパー制御部6は、プログラミング技術によって、ガラス2を洗浄及び乾燥するための本発明による方法が実施できるように構成されている。前記ワイパー制御部6は、さらに、データ線路を介してワイパースイッチ4にも接続されている。このワイパー制御部6は、前記レインセンサ5とワイパースイッチ4の入力データを処理し、本発明による方法に対応する制御信号を出力している。ワイパー装置9は、1つのワイパーモーター11と1つのワイパー12有していてもよい。また前記ワイパー装置は、複数のワイパーモーター11、及び/又は、複数のワイパー12を有していてもよい。ワイパー制御部6の制御信号により、1回の払拭過程が実施され、前記ワイパー12が前記ガラス2の払拭領域10上を移動する。ガラス装置1は、ウインドウォッシャーシステム8を含んでいてもよい。このウインドウォッシャーシステム8も前記ワイパー制御部6によって制御線路を介してスイッチオン/オフされる。
【0036】
前記ワイパー制御部6は、さらに、データ線路を介して車両エンジン7と、又は、電子点火装置と、接続可能であってもよい。このようにして前記ワイパー制御部6にはエンジン状態に関する複数の情報が供給され、これらの情報に基づいて、例えば本発明による方法を自動的に開始するようにしてもよい。
【0037】
図2は、本発明の例示的な方法を示す線図ないしフローチャートを示す。ガラス2の洗浄及び乾燥のための具体的な過程は、ここでは車両エンジンの停止後に自動的に開始される。なお、ここでは車両の操作コンソール内のスイッチング素子(図示せず)を手動操作することによって当該過程を活性化ないし開始することも考えられる。
【0038】
この過程の開始後は、ワイパー制御部6内に集積されているタイマーがリセットされる(ステップA)。それに続いて、ステップBではワイパースイッチ4のスイッチング状態が検査される。ワイパースイッチ4がスイッチオンされている場合には、ワイパーはまだ払拭過程にあり、ここではステップAが繰り返される。ワイパースイッチ4がスイッチオフされている場合には、ステップCが実施される。
【0039】
ステップCでは、レインセンサ5のデータ信号が検査される。ガラス2が乾燥している場合には、新たにステップAが実施される。ガラス2が濡れている場合には、ステップDが実施される。
【0040】
ステップDでは、レインセンサが新たに検査される。レインセンサ5の信号が、新たに付着した雨滴に相応する場合には、新たにステップAが実施される。レインセンサ5が新たな雨滴を検出しない場合には、次のステップEが実施される。
【0041】
このステップEでは、前記タイマーが検査される。このタイマーが、例えば3分未満の持続時間を設定する場合には、ステップBが実施される。このタイマーが、3分以上の持続時間を設定する場合には、例えば1回の払拭過程が実施される。そして引き続き本発明による方法が、ステップAにおいて新たに開始されるか、又は、当該過程が終了する。
【0042】
図3には、
図2に示されている本発明による方法のさらに別の実施形態がフローチャートないし線図で示されている。ここでは払拭過程の実施前に、車両のエンジンを停止させるための持続時間が決定され、車両エンジンが停止されてからの経過時間が例えば30分未満の場合にのみ、払拭過程が実施される。オフになっている。さらに、当該払拭過程の前若しくは払拭過程中に、ウインドウォッシャーシステム8がスイッチオンされ、ガラス2が、洗浄液を噴霧される。
【0043】
以下の表1においては、本発明による方法で払拭された疎水性コーティング3を有するガラス2を例にした接触角の測定結果が示されている。なおここでは比較例として、従来技術によって払拭された疎水性コーティング3を有するガラス2を例にした接触角の測定結果が示されている。この表では、未使用のコーティングでの接触角と、14日間の試験実施後のコーティングでの接触角が実施されている。この接触角とは次のような角度を表す。すなわち、固体表面上の液体滴が当該表面に対して形成する角度である。90°よりも大きな接触角を有する表面は、疎水性と呼ばれる。この接触角が大きければ大きいほど、より疎水性の表面であり、コーティングの撥水効果が向上する。
【0044】
【表1】
【0045】
製造直後の新しい未使用のコーティング3上の水の接触角は、上記表1の例では118°であり、それに対する比較例では120°になっている。試験実施後では、本発明の方法による払拭を伴った例での接触角は108°になり、8%の低下が見られる。つまり本発明の方法によれば、接触角は90°よりも大きく、このような接触角は、例えば自動車のフロントガラスとして望ましい運転のための十分な撥水効果を有する。
【0046】
比較例のコーティング3では、試験実施期間中、汎用モデルの自動車において通例であるような従来技法による払拭過程が実施される。このことは、ガラスが降雨期間中に手動で、若しくはレインセンサを介して払拭されることを意味する。降雨の後の本発明によるガラス2の払拭は行われていない。この比較例による、試験実施後のコーティング3の接触角は、80°となり、33%の低下が見られる。80°の接触角しか有さない疎水性コーティング3は、例えば自動車のフロントガラスとして望ましい運転のための十分な撥水効果を有していない。
【0047】
本願の発明者の研究で明らかとなったように、濡れたガラスの洗浄と乾燥によって、ガラス2のコーティング3の疎水効果が維持され、コーティング3の寿命が飛躍的に延ばされた。この場合、エンジン停止された状態の車両において、特に上方を覆う屋根のない空き地に長期間停められている車両において、本発明による方法が中断なく実施されると特に有利である。本発明による方法は、開いている地形の特に比較的長く停止することなく、車両のオフ状態で連続的に実施される場合に特に有利である。本発明の方法によれば、ガラス2の疎水性コーティング3が迅速に乾燥され、水分が拭き取られる。ほこりや衝突した虫の残骸のような汚れは、乾燥して固着してしまう前に除去される。乾燥による水分の石灰化は確実に回避される。この手段により、疎水性コーティング3の撥水効果は、例えば、自動車業界で求められる100000kmを超える運転距離に対して得られた。
【0048】
この結果は当業者にとって予想外で驚くべきことであった。
【符号の説明】
【0049】
1 ガラス装置
2 ガラス
3 疎水性コーティング
4 ワイパースイッチ
5 レインセンサ
6 ワイパー制御部
7 車両エンジン
8 ウインドウォッシャーシステム
9 ワイパー装置
10 ワイパーゾーン
11 ワイパーモーター
12 ウインドシールドワイパー
W 待機時間
Z 遮断時間