特許第5921725号(P5921725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5921725微粒子を含む太陽光電池用EVAシート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921725
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】微粒子を含む太陽光電池用EVAシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20160510BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20160510BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
   C08L23/08
   C08J5/18
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-558661(P2014-558661)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-513217(P2015-513217A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】KR2012011225
(87)【国際公開番号】WO2013125779
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2014年8月21日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0019113
(32)【優先日】2012年2月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー・チョンフン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ・チュルジョン
【審査官】 清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−023415(JP,A)
【文献】 特開2002−363507(JP,A)
【文献】 特開2011−216829(JP,A)
【文献】 特開平02−219842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−50/15、99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンビニルアセテート樹脂を主成分とする微粒子を含むとともに、前記微粒子の平均粒子径が200μm〜400μmで、安息角が40゜以下であるとともに、その厚さが250μm〜400μmとしたことを特徴とする太陽光モジュール用EVAシート。
【請求項2】
前記微粒子が互いに融着された状態で存在することを特徴とする、請求項1に記載の太陽光モジュール用EVAシート。
【請求項3】
前記微粒子は、前記エチレンビニルアセテート樹脂100重量部に対して、架橋剤0.1重量部〜5重量部、架橋助剤0.1重量部〜3重量部、紫外線遮断剤0.1重量部〜3重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽光モジュール用EVAシート。
【請求項4】
(a)エチレンビニルアセテート樹脂を主成分とし、前記微粒子の平均粒子径が200μm〜400μmで安息角が40゜以下である微粒子を製造するステップ;
(b)前記微粒子を750μm〜1200μmの厚さに散布するステップ;
及び
(c)前記の散布された微粒子を焼結し、厚さが250μm〜400μmとするステップ;
を含むことを特徴とする太陽光モジュール用EVAシートの製造方法。
【請求項5】
前記(a)ステップにおいて、
前記微粒子は冷凍・粉砕によって製造されることを特徴とする、請求項4に記載の太陽光モジュール用EVAシートの製造方法。
【請求項6】
前記冷凍粉砕は、−150℃〜−100℃の温度で行うことを特徴とする、請求項5に記載の太陽光モジュール用EVAシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光電池用EVAシート及びその製造方法に関し、より詳細には、微粒子焼結工法でEVAシート内の微粒子のサイズを最適化し、一定の厚さを有するEVAシートを提供する。
【背景技術】
【0002】
既存の太陽光電池用EVAシートは、押出またはカレンダリング工法で製造されている。しかし、これら工法によると、シートの厚さを調節することが難しく、EVAシート内に熱履歴(Thermal History)を残すので、その後の太陽電池のモジュール化過程でMD(Machine Direction)方向への熱収縮を誘発する。また、緻密な構造によって気泡の除去が難しくなり、モジュール化工程時間が長くなるという問題があった。
【0003】
大韓民国公開公報第10―2010―0117271号には、押出された原料をベルト式カレンダーロールに塗布してシートを製造するシート製造ステップが記載されており、大韓民国公開公報第10―2010―0137634号にも、成形完了後に製造されたEVAシートをアンワインディングし、印刻されたエンボスロールで常温または加温で加圧して印刻するステップを含むことが記載されている。しかし、これらは、従来の押出及びカレンダリングEVAシートの製造方法と区別されるだけで、前記の問題を克服するための如何なる解決策も開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2010−0117271号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2010−0137634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の問題を解決するために、本発明は、モジュール化後、一定の厚さを有するEVAシートを製造するために微粒子のサイズを最適化し、均一な散布度を与える太陽光モジュール用EVAシートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するために、エチレンビニルアセテート樹脂を主成分とする微粒子を含むとともに、前記微粒子の平均粒子径が200μm〜400μmで、安息角が40゜以下であるとともに、その厚さが250μm〜400μmとしたことを特徴とする太陽光モジュール用EVAシートを提供する。
【0007】
本発明は、他の目的を達成するために、(a)エチレンビニルアセテート樹脂を主成分とし、前記微粒子の平均粒子径が200μm〜400μmで安息角が40゜以下である微粒子を製造するステップ、(b)前記微粒子を750μm〜1200μmの厚さに散布するステップ;及び(c)前記の散布された微粒子を焼結し、厚さが250μm〜400μmとするステップ、を含むことを特徴とする太陽光モジュール用EVAシートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る太陽光電池用EVAシートが含む微粒子は、微粒子焼結工法によるので、ある程度の気孔の存在によって気泡除去時間を短縮させることができ、その結果、モジュール化工程時間を短縮させ、EVAシートの厚さ調節が容易になるという長所を有する。
【0009】
また、微粒子を用いた太陽光電池用EVAシートの製造方法によると、モジュール化後の厚さまたはラミネーション工程後の厚さよりもモジュール化前の初期厚さが2倍ほど厚いので、押出及びカレンダリング工法による製造方法に比べてモジュール化工程での太陽電池セルの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】冷凍・粉砕後の粒子サイズによる微粒子の分布及び安息角を示したグラフである。
図2】(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は比較例1、(d)は比較例2、(e)は比較例3におけるEVAシートの熱収縮率に対する実験結果を写真で撮影して示したものである。
図3】粒子サイズが385.547μmである微粒子を含む厚さが250μmのEVAシートの(a)断面、(b)表面、及び(c)ラミネーションされたEVAシートの断面をSEMで撮影して示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、後述する各実施例を参照すれば明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示する各実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現可能である。但し、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明の請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。明細書全体にわたって同一の参照符号は、同一の構成要素を示す。
【0012】
以下では、本発明について詳細に説明する。
【0013】
[太陽光モジュール用EVAシート]
【0014】
本発明は、エチレンビニルアセテート(Ethylene Vinyl Acetate、以下では、“EVA”と称する)樹脂を主成分とする微粒子を含む太陽光モジュール用EVAシートを提供する。
【0015】
前記EVA樹脂は、エチレンビニルアセテート樹脂であって、その物性は重合度とビニルアセテートの含量によって決定される。すなわち、分子量が大きいほど、強靭性、可塑性、耐ストレスクラッキング性、耐衝撃性が向上し、成形性や表面光沢は低下する。その一方、ビニルアセテートの含量が増加すると、密度、ゴム弾性、柔軟性が異なるポリマーや可塑剤との相溶性が向上し、軟化温度は低下する。
【0016】
本発明の微粒子の主成分となるEVA樹脂は、ビニルアセテートの含量が25重量%〜35重量%である。本発明に使用されるEVA樹脂のビニルアセテートの含量が25重量%未満である場合は、透明性及び太陽光透過率が低下し、接着力が低下するので好ましくなく、35重量%を超える場合は、粘性及びEVAシート製造時の接着性が増加し、加工性が低下するので好ましくない。
【0017】
また、本発明のエチレンビニルアセテート樹脂を主成分とする微粒子は、互いに融着された状態で存在し得る。本発明のEVAシート製造工程においては、焼結するステップを含むことによって微粒子の一部が融着され得る。より具体的には、微粒子の形態で存在したり、一つ以上の複数の微粒子が互いに融着された状態で存在したり、微粒子及び前記微粒子が互いに融着された形態が混在して存在し得る。
【0018】
前記EVA樹脂を主成分とする微粒子を含むので、EVA樹脂に架橋剤、架橋助剤、紫外線遮断剤などをさらに含むことができる。EVA樹脂に添加剤を添加することによって、EVAシートの変色、紫外線及びモジュール化による変形を最小化することができる。
【0019】
前記添加剤は、架橋剤または紫外線遮断剤などを含むが、必要に応じてその他各種の添加剤をさらに含むことができる。具体的に、前記添加剤としては、シランカップリング剤、活剤、酸化防止剤、難燃剤、変色防止剤などを例示することができる。
【0020】
本発明において、架橋剤として使用されるパーオキシケタールの例としては、1,1―ジ(tert―アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1―ジ(tert―ブチルパーオキシ)―3,3,5―トリメチルシクロヘキサン、1,1―ジ(tert―ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを挙げることができ、パーオキシカーボネートの例としては、2,5―ジメチル―2,5―ジ―(2―エチルヘキサノニルパーオキシ)へキサン、tert―アミルパーオキシ―2―エチルヘキサノエート、tert―ブチルパーオキシ―2―エチルヘキサノエート、tert―アミル(2―エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート、tert―ブチルイソプロピルモノパーオキシカーボネート、2,5―ジメチル―2,5―ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、tert―ブチル―(2―エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート、tert―アミルパーオキシベンゾエート、tert―ブチルパーオキシアセテート、tert―ブチルパーオキシ―3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert―ブチルパーオキシベンゾエートを挙げることができる。
【0021】
前記架橋剤の使用量は、EVA樹脂100重量部当たり0.1重量部〜5重量部であることが好ましく、前記架橋剤を0.1未満で含む場合は、EVAシートの形成時に目標とするゲル化度に到逹しにくく、時間が多くかかるという問題があり、5重量部を超える場合は、架橋剤によるラジカルによってUV遮断剤を多量消耗させることによって、UVによる黄変現象が発生するおそれがある。
【0022】
併せて、前記架橋剤と共に、架橋助剤を使用することもできるが、前記架橋助剤は、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリールイソシアヌレートを含むことができる。前記架橋助剤の使用量は、EVA樹脂100重量部当たり0.1重量部〜3重量部であることが好ましい。前記架橋助剤を0.1未満で含む場合は、架橋速度及び架橋密度の低下を誘発し、結果的に耐久性及び耐熱性を低下させるおそれがあり、3重量部を超える場合は、柔軟性が低下するという問題がある。
【0023】
前記紫外線遮断剤は、紫外線吸収剤及び紫外線安定剤を含むことができる。前記紫外線吸収剤としては、2―ヒドロキシ―4―メトキシベンゾフェノン、2―ヒドロキシ―4―メトキシ―2'―カルボキシベンゾフェノン、2―ヒドロキシ―4―オクトキシベンゾフェノン、2―ヒドロキシ―4―n―ドデシルオキシベンゾフェノン、2―ヒドロキシ―4―n―オクタデシルオキシベンゾフェノン、2―ヒドロキシ―4―ベンジルオキシベンゾフェノン、2―ヒドロキシ―4―メトキシ―5―スルホベンゾフェノン、2―ヒドロキシ―5―クロロベンゾフェノン、2,4―ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'―ジヒドロキシ―4―メトキシベンゾフェノン、2,2'―ジヒドロキシ―4,4'―ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'―テトラヒドロキシベンゾフェノンから選ばれる1種以上を使用することができ、前記紫外線安定剤としては、4―メトキシフェニル―メチレン―ビス―1,2,2,6,6―ペンタメチル―4―ピペリジニルセバケート、ビス―2,2,6,6―テトラメチル―4―ピペリジニルセバケート、ビス―1―メチル―2,2,6,6―テトラメチル―4―ピペリジニルセバケート、2―(2'―ヒドロキシ―3',5'―ジターシャリーブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2―(2―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―アミルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾール、ポリメチルプロピル―3―ヨウ素―(4(2,2,6,6―テトラメチル―4―ピペリジニル)シロキサンから選ばれる1種以上を使用することができる。
【0024】
前記紫外線遮断剤の使用量は、各領域でEVA樹脂100重量部当たり0.1重量部〜3重量部であることが好ましい。前記紫外線遮断剤を0.1重量部未満で添加する場合は、紫外線によるEVAシートの黄変が誘発され、長期耐候性を確保しにくい。
【0025】
また、前記紫外線遮断剤が3重量部を超えて含まれる場合は、EVA樹脂の変色が発生し得る。太陽電池は、約20年の長時間にわたってその効率を維持しなければならないが、EVAシートに黄変が発生すると、太陽光の透過度を低下させ、太陽電池セルに入射される太陽光を遮断し、太陽電池の効率を減少させ得る。
【0026】
シランカップリング剤、活剤、酸化防止剤、難燃剤、変色防止剤などをその他各種添加剤として含むことができ、前記シランカップリング剤は、製造されたEVAシートとガラスまたはセルとの接着性を増進させるために使用することができる。具体的には、 前記シランカップリング剤として、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N―(β―アミノエチル)―γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、N―(β―アミノエチル)―γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランから選ばれた1種以上を使用することができ、その使用量は、各領域でEVA樹脂100重量部当たり0.01重量部〜0.5重量部であることが好ましい。
【0027】
前記微粒子は、200μm〜400μmの平均粒子径を有することを特徴とする。微粒子焼結工法によるEVAシートの製造方法において、一定の厚さで微粒子を散布するためには、微粒子上に他の微粒子が少なくとも2個以上積層されると安定的な構造になる。そのため、微粒子のサイズの限定は、微粒子焼結工法において重要な要素である。
【0028】
前記微粒子の平均粒子径が200μm未満である場合は、その後の焼結工程後のEVAシートの緻密さが増加し、気孔の減少によってモジュール化工程時間が長くなるおそれがあり、400μmを超える場合は、最終的なEVAシートの厚さに影響を及ぼし得る。
【0029】
特に、EVA樹脂は、水分を吸収する性質を有しており、各微粒子同士が固まり易いので、微粒子の粒子サイズの調節がさらに重要である。そのため、微粒子の平均粒子径が100μm未満である場合は、その流れ性が著しく低下し得るので、少なくとも200μm〜300μmの平均粒子径を維持することが最も好ましい。
【0030】
併せて、本発明の製造方法が含む微粒子焼結工法には、適正なサイズの微粒子が要求されるが、これは、微粒子によってEVAシート内にある程度の気孔が存在するようになり、押出やカレンダリングなどの工法による緻密な構造のEVAシート構造に比べて太陽電池モジュール化工程での気泡除去時間を短縮させ得るためである。
【0031】
また、前記微粒子は、安息角が40゜以下であることを特徴とする。本発明の安息角は、粒子を水平板上に積み上げたとき、その傾斜を維持する最大傾斜角を意味し、すなわち、分子粒子を積んだ場合、その斜面及び水平面からなる角を称する。安息角の測定法としては、排出法、落下法、注入法、傾斜法などがある。安息角の測定は、化学分析や粒度分析で確認されていない粉体の特性を把握するために行い、微粒子の粒子径が小さいほど、また、より角ばったものであるほど安息角は大きくなり得る。
【0032】
安息角によって微粒子の流れ性が予測可能であるが、EVA樹脂は、水分を吸収する性質を有しており、各微粒子同士が固まり易いので、微粒子の粒子サイズが安息角の調節において重要な要素になり得る。安息角は、微粒子のサイズに応じて大きく変わり、微粒子が過度に小さくなると、EVA樹脂の水分吸収性質によってスムーズに流れることができず、各粒子同士がくっ付くおそれがある。
【0033】
そのため、前記微粒子の限定された平均粒子径による安息角を40゜以下にすることによって適切な流れ性を確保することができ、その後、均一な散布度を有する焼結されたEVAシートを製造することができる。
【0034】
本発明の太陽光モジュール用EVAシートは、250μm〜400μmの厚さを有することを特徴とする。従来のEVAシートの場合、圧縮やカレンダリング方法によって製造され、450μm以上の厚さを有するEVAシートしか製造されない一方、エチレンビニルアセテート樹脂を主成分とする微粒子を含む本発明のEVAシートの場合、初期厚さは微粒子の散布によって厚く維持し、太陽電池セルの破損などをさらに効率的に防止することができ、モジュール化工程後には、最終厚さがより薄いにもかかわらず、熱収縮に優れる効果を示すことができる。
【0035】
[太陽光モジュール用EVAシートの製造方法]
【0036】
本発明は、(a)エチレンビニルアセテート樹脂を主成分とする微粒子を製造するステップ;(b)前記微粒子を散布するステップ;及び(c)前記の散布された微粒子を焼結するステップ;を含むことを特徴とする太陽光モジュール用EVAシートの製造方法を含む。
【0037】
本発明のEVAシートの製造方法は、既存の押出やカレンダリング工法とは差別化された工法でEVA樹脂と添加剤の混合物を冷凍・粉砕して微粒子を製造し、これを散布及び焼結する方法を含んでいる。このとき、均一な散布度を有する特定厚さのシートを作るためには、前記微粒子のサイズを決定することが重要である。
【0038】
前記微粒子は、冷凍粉砕によって製造されることを特徴とし、このとき、前記エチレンビニルアセテート樹脂100重量部に対して、架橋剤0.1重量部〜5重量部、架橋助剤0.1重量部〜3重量部、紫外線遮断剤0.1重量部〜3重量部をさらに含んで冷凍・粉砕することができる。
【0039】
このとき、前記冷凍粉砕は、−150℃〜−100℃の温度で行うことを特徴とする。冷凍粉砕温度に応じて微粒子のサイズを調節することができ、−150℃未満で冷凍・粉砕する場合は、粉砕された微粒子のサイズが小さくなり、焼結工程後のEVAシートの緻密さが増加するので、モジュール化工程時の気泡除去が難しくなり、−100℃を超えて冷凍・粉砕する場合は、微粒子のサイズが大きくなり、微粒子を再び粉砕しなければならなくなるおそれがある。
【0040】
本発明の太陽光モジュール用EVAシートの製造方法は、前記冷凍粉砕ステップを通じて製造された微粒子を散布するステップを含む。このとき、前記微粒子を750μm〜1200μmの厚さに散布することを特徴とする。これは、一定の厚さを有するEVAシートを製造するための工程条件の一つであって、前記微粒子を750μm未満の厚さに散布する場合は、モジュール化工程時にセルを衝撃から保護可能なEVAシートの最小厚さを確保することができなく、1200μmを超える厚さに散布する場合は、モジュール化工程での圧縮によってセルに微細な亀裂が生じるおそれがある。
【0041】
微粒子焼結工法で製造されたEVAシートは、初期の気孔の多い構造から最終的には気泡のない緻密なシートに製造されるので、EVAシート製造の初期ステップで微粒子を均一に散布する必要がある。これは、微粒子の不均一な散布によって最終状態で緻密な構造にならないとき、水分透過防止などの遮断特性が低下し、結果的に太陽電池の効率が低下するためである。したがって、より具体的には、垂直方向に少なくとも2個以上の微粒子が均一に配列されていなければならない。
【0042】
併せて、微粒子の均一な散布度を維持することによって、モジュール化前の厚さがラミネーション工程後の厚さより厚いので、モジュール化工程での太陽電池セルの破損を防止することができる。
【0043】
結果的に、微粒子焼結工法は、冷凍粉砕によって製造された微粒子を均一に散布する方式で既存の押出またはカレンダリング工法では試みにくい薄いEVAシートの製造を可能にする。より具体的に、既存の押出またはカレンダリング工法は、熱を加えると、シートを引っ張ってロールに巻く工程を含むが、EVAシートにMD方向に張力がかかり、シートが熱を受けた場合に元の状態に復帰しようとする性質によってラミネーション工程時に収縮が発生する。これによって、太陽電池セルの配列がねじられ、効率が低下するおそれがある。 しかし、これに比べて、本発明の微粒子焼結工法によるEVAシートの場合は、延伸過程を含まないので、工程時に収縮が発生しない。
【0044】
以下では、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。但し、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであって、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈することはできない。ここに記載されていない内容は、この技術分野で熟練した者であれば十分に技術的に類推可能なものであるので、それについての説明は省略する。
【0045】
<実験例1>冷凍粉砕/粒子サイズの最適化
【0046】
1kgのEVA樹脂(Photovoltaic PV1300Z/DuPont)及び前記EVA樹脂100重量部に対して、架橋剤(t―ブチル1―(2―エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート、t―Butyl 1―(2―ethylhexyl)Monoperoxycarbonate、TBEC)2重量部、架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート、TriallylIsocyanurate、TAIC)2重量部、シランカップリング剤(3―(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3―(Methacryloxypropyl)trimethoxysilane、KBM 503)0.3重量部、活剤(グリセリントリ―18―ヒドロキシステアレート、glycerin tri―18―hydroxystearate、TG―12)0.2重量部、UV安定剤(4―メトキシフェニル―メチレン―ビス―1,2,2,6,6―ペンタメチル―4―ピペリジニルセバケート、4―methoxyphenyl―methylene―bis―1,2,2,6,6―pentamethyl―4―piperidinylsebacate、PR31)0.25重量部、UV吸収剤(2―ヒドロキシ―4―オクトキシベンゾフェノン、2―Hydroxy―4―octoxybenzophenone、UV531)0.25重量部で構成される添加剤を5kgの液体窒素の消耗によって−120℃の温度に冷凍・粉砕し、50μm〜450μmの粒子径を有する微粒子を製造した。
【0047】
図1を参考にすると、前記冷凍粉砕を通じて得られた微粒子は、50μm〜450μmの粒子径の分布を示しているが、200μm〜400μmの粒子径を有する微粒子が最も多く分布されているので、微粒子の平均粒子径が200μm〜400μmであることが分かった。より具体的には、105μm以下の粒子径を有する微粒子が製造される場合、これを再びコンパウンディングしなければならなく、105μm〜199μmの粒子径を有する微粒子が製造される場合、シリカ処理が別途に必要であると同時に、粒子径が400μmを超える微粒子が製造される場合、そのサイズが過度に大きいので、前記微粒子を再び粉砕しなければならない。そのため、平均粒子径200μm〜400μmが微粒子の最適な粒子サイズであると見なすことが妥当である。
【0048】
また、前記微粒子の粒子径による安息角を測定したが、前記安息角の測定は、完全平面である基準板上の一定の高さに固定された特殊な漏斗を通じてEVAシートを構成する微粒子の一定体積を通過させて得られた円錐による。円錐状に前記微粒子が積もって流れ出たら微粒子の供給を停止し、デジタル角度計(ARU 200、Angelo)を使用して円錐の角度を測定し、3個のそれぞれ異なる地点を測定して安息角の平均値を得た。
【0049】
このとき、図1は、微粒子の粒子径による微粒子の安息角を示したものであって、粒子径が105μm以下である各微粒子の安息角は46゜、粒子径が105μm〜199μmである各微粒子の安息角は42゜であった。これと異なって、粒子径が200μm〜260μm、270μm〜330μm、340μm〜400μmである各微粒子の安息角は順次40゜、38゜、40゜であったので、冷凍粉砕で得られた200μm〜400μmの粒子径を有する微粒子の安息角は40゜以下であることを確認することができた。このように、微粒子が一定の安息角を有することによって、その後の微粒子を散布するステップにおいて最適の流れ性を有することができる。
【0050】
<実験例2>EVAシートの厚さの最適化
【0051】
前記実験例1の冷凍・粉砕された微粒子を1200μmの厚さに散布し、前記の散布された微粒子を100℃で1分間焼結した。前記の焼結された微粒子を下記の表1の実施例1〜4の温度でラミネーションし、一定の厚さを有するEVAシートを製造した。
【0052】
このとき、比較例1はハンファEVAシート(1628―EVA)、比較例2はSK EVAシート(EF2N)、比較例3はB/S EVAシート(EVASKY)であって、押出及びカレンダリング方法によって製造されたEVAシートである。
【0053】
本実験例では、前記EVAシートの透湿度を測定し、本発明の製造方法によって製造されたEVAシートの透湿程度を確認するが、このときの透湿度は、38℃、RH90%の条件で24時間透過される水分の質量を用いて測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
透湿度は、EVAシートの内側に蒸気形態の水分を物理的に放出する性質を数値化したものであって、前記表1によると、実施例1〜4及び比較例1〜3において類似する透湿度が測定された。しかし、押出やカレンダリング工法によって製造された比較例1〜3のEVAシートの最終厚さは、実施例1〜4に比べて厚いことが分かった。
【0056】
微粒子を用いて製造されたEVAシートの場合にも透湿がある程度効率的に行われ、微粒子によってある程度の気孔が存在するので、緻密な構造に比べて気孔除去工程時間をさらに短縮できることを確認することができた。また、押出やカレンダリング工法ではなく、微粒子焼結工法を通じて薄いEVAシートの厚さを調節しながらEVAシートを製造できることを確認した。
【0057】
<実験例3>EVAシートの熱収縮率測定
【0058】
前記実験例2の実施例1〜4、及び比較例1〜3のEVAシートを20cm×20cm(横×縦)に製作し、78℃の湯に3分間放置した後でサイズを測定し、熱収縮率を測定した。このとき、熱収縮率の測定結果は下記の表2に示した。
【0059】
【表2】
【0060】
その結果、前記実施例1〜4の収縮率がほぼ0%に近かったので、本発明の太陽光モジュール用EVAシートは、熱などに露出しても熱によって影響を受けず、良い耐久性を有していることを確認することができた。しかし、これに比べて、比較例1〜3のEVAシートの熱収縮率は、実施例1〜4に比べて高かったので、熱による変化があることが分かった。
【0061】
前記比較例1〜3の場合、微粒子焼結工法ではなく、一般的な押出及びカレンダリング工法によって製造されたので、製造工程で延伸過程を含み、元のシートの形状に復帰しようとする収縮現象が発生していた。しかし、前記実施例1〜4の場合、製造過程で延伸過程を含まない無延伸シートであって、収縮が発生しないという点において差がある。
【0062】
図2を参考にすると、図2(a)は実施例1、図2(b)は実施例2、図2(c)は比較例1、図2(d)は比較例2、図2(e)は比較例3のEVAシートの熱収縮に対する実験結果を写真で撮影して示したものである。実施例1及び実施例2のEVAシートには、熱による如何なる変化もないことが分かるが、その一方、比較例1〜3の場合は、熱によってEVAシートにしわが生じ、初期のEVAシートの形状をそのまま維持できないことを確認することができた。特に、製造工程時、延伸が発生する工程が進行する機械方向(MD方向)への収縮が多いことが分かった。
【0063】
図3は、粒子サイズが385.547μmである微粒子を含み、厚さが250μmであるEVAシートの(a)断面、(b)表面及び(c)ラミネーションされたEVAシートの断面をSEMで撮影して示したものである。前記の微粒子を用いてEVAシートを製造するので、(a)、(b)に示したように、気孔がある程度存在するが、ラミネーション後には均一な形態のEVAシートを確認することができた。
図1
図2
図3