(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶鋼注入段階後であって溶鋼液滴形成の前に液滴用溶鋼を臨時貯蔵し、貯蔵された溶鋼を液滴形成段階へ流動させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の高清浄溶鋼の製造方法。
前記レードルは、溶鋼供給装置から注入される溶鋼を液滴に形成するための液滴形成装置をさらに含み、前記液滴形成装置は、容器の中央部に溶鋼を液滴化するための複数個の液滴ホールを形成した液滴形成部を含むことを特徴とする請求項26に記載の高清浄溶鋼の精錬装置。
前記液滴形成装置には、溶鋼供給装置から注入される溶鋼を収容するために、前記レードルの内部あるいは外部のいずれかの領域上に溶鋼収容部が形成されており、注入される溶鋼を前記溶鋼収容部を通過させて前記液滴形成部へと流動させることを特徴とする請求項27に記載の高清浄溶鋼の精錬装置。
前記溶鋼貯蔵部に貯蔵された溶鋼の上面にはスラグが位置して、前記液滴形成部を通過して液滴化された前記溶鋼は、前記スラグを通過して精錬された状態で前記溶鋼貯蔵部に貯蔵されることを特徴とする請求項38に記載の高清浄溶鋼の精錬装置。
前記液滴形成部には、段差部が具備され、前記段差部の中で前記溶鋼収容部と隣接した一の側の段差部は、前記溶鋼収容部と遠い他の側の段差部に比べて高さが低いことを特徴とする請求項31に記載の高清浄溶鋼の精錬装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、上述した問題を解決するために案出されたもので、その目的は、製鋼工程から連鋳工程までの介在物生成を抑制するか、除去して高清浄溶鋼を製造する方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、高清浄溶鋼を製造するための精錬装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を果たすための本発明の特徴によれば、本発明は、溶鋼を供給する溶鋼供給装置及び前記溶鋼供給装置で注入される溶鋼を収容して精錬する溶鋼精錬装置を含み、高清浄溶鋼を製造する方法において、前記溶鋼供給装置から溶鋼精錬装置へ溶鋼を注入する溶鋼注入段階と、前記注入された溶鋼を溶鋼精錬装置で液滴に形成する液滴形成段階と、前記液滴化された溶鋼を落下させてスラグを通過させるスラグ通過段階と、前記スラグを通過する間前記液滴化された溶鋼の残留介在物が除去される介在物除去段階と、を含む高清浄溶鋼の製造方法に関する。
【0009】
また、前記溶鋼注入段階で、前記溶鋼をロングノズルを利用して注入することができる。
【0010】
また、前記溶鋼注入段階で、前記溶鋼を溶鋼ストリームの形態で注入することができる。
【0011】
また、前記溶鋼供給装置と溶鋼精錬装置は、それぞれ製鋼用レードルでありえる。
【0012】
また、前記溶鋼供給装置は、鋳造用レードルであり、前記溶鋼精錬装置はタンディッシュであり得る。
【0013】
また、前記溶鋼注入段階後であって溶鋼液滴形成の前に液滴用溶鋼を臨時貯蔵して貯蔵された溶鋼を液滴形成段階へ流動させる段階をさらに含むことができる。
【0014】
また、前記溶鋼液滴形成段階は、注入された溶鋼を複数の液滴ホールを具備した液滴形成部を通過して落下させることができる。
【0015】
また、前記液滴ホールは、直径6.5mm以下であり得る。
【0016】
また、前記スラグは、溶融スラグであり得る。また、前記スラグは厚さが20mm以上であり得る。
【0017】
また、重量%で、前記スラグは、(%CaO)+(%SiO
2)+(%Al
2O
3)+(%MgO)>95%で、(%CaO):30〜45%、(%SiO
2):15〜35%、(%Al
2O
3):15〜30%、(%MgO):10〜20%を含むことができる。
【0018】
また、重量%で、前記溶鋼は0.02%ないし0.1%のAlを含み、前記スラグは、CaO:34%〜49.2%、Al
2O
3:43.2%〜54.8%、MgO:7.5%〜11%を含むことができる。
【0019】
また、重量%で、前記溶鋼は、精錬する前のAl含量が10ppm以下であり、前記スラグはCaO:13.6%〜48.3%、SiO2:41.5%〜54.7%、MgO:10%〜29%を含むことができる。
【0020】
さらに、本発明の他の側面によれば、本発明は、溶鋼供給装置から注入された溶鋼を利用して精錬を実施する溶鋼精錬装置において、前記溶鋼精錬装置は、注入される溶鋼を液滴に形成するための液滴形成装置を含むことを特徴とする高清浄溶鋼の精錬装置を含むことができる。
【0021】
また、前記溶鋼精錬装置は、タンディッシュであり得る。
【0022】
また、前記タンディッシュは、タンディッシュ胴体の内部に前記液滴形成装置を具備し、前記液滴形成装置は、溶鋼が注入される下部領域に隣接して位置されることができる。
【0023】
また、前記液滴形成装置は、容器の中央部に溶鋼を液滴化するための複数個の液滴ホールを形成した液滴形成部を含むことができる。
【0024】
また、前記液滴形成部の容器の縁は、上部に延びた側壁で構成され得る。
【0025】
また、前記液滴形成装置には、溶鋼供給装置から注入される溶鋼を収容するために前記タンディッシュ胴体内部の溶鋼注入領域下部に溶鋼収容部が形成されており、注入される溶鋼を前記溶鋼収容部を通過させて前記液滴形成部へ流動させることができる。
【0026】
また、前記溶鋼収容部は、内部に溶鋼貯蔵空間を具備しており、前記溶鋼注入領域下部でタンディッシュ胴体の内側面と下側面に隣接して形成されることができる。
【0027】
また、前記液滴形成部は、複数個の液滴ホールが形成された領域の反対側に開口部を形成して前記開口部を介して前記溶鋼収容部の上端部が通過されて結合されるか、前記溶鋼収容部の溶鋼貯蔵空間の外周面上端部に装着されることができる。
【0028】
また、前記液滴形成部は、タンディッシュ胴体の内部に装着された越流せき(Weir)によって支持されることができる。
【0029】
また、前記液滴形成部の一側壁は、越流せきによって支持され、他側壁は溶鋼収容部によって支持されることができる。
【0030】
また、前記液滴形成部の一側壁は、越流せきによって支持され、他側壁はタンディッシュ胴体の内側面に結合されて支持されることができる。
【0031】
また、前記溶鋼収容部と隣接した液滴形成部の側壁は、他側壁より低く形成されることができる。
【0032】
また、前記液滴ホールは、直径6.5mm以下であり得る。
【0033】
また、前記液滴形成部の液滴ホールを通過して落下する下部領域に厚さ20mm以上の溶融スラグが形成され、重量%で、前記スラグは(%CaO)+(%SiO
2
)+(%Al
2O
3)+(%MgO)>95%で、(%CaO):30〜45%、(%SiO
2):15〜35%、(%Al
2O
3):15〜30%、(%MgO):10〜20%を含むことができる。
【0034】
また、前記液滴形成部の液滴ホールを通過して落下する下部領域には、溶融スラグが形成されて、重量%で、前記溶鋼は0.02%ないし0.1%のAlを含み、前記スラグは、CaO:34%〜49.2%、Al
2O
3:43.2%〜54.8%、MgO:7.5%〜11%を含むことができる。
【0035】
また、前記液滴形成部の液滴ホールを通過して落下する下部領域には、溶融スラグが形成されて、重量%で、前記溶鋼は精錬する前のAl含量が10ppm以下を含み、前記スラグはCaO:13.6%〜48.3%、SiO
2:41.5%〜54.7%、MgO:10%〜29%を含むことができる。
【0036】
また、前記溶鋼精錬装置は、製鋼用レードルであり得る。
【0037】
また、前記レードルは、溶鋼供給装置から注入される溶鋼を液滴に形成するための液滴形成装置をさらに含み、前記液滴形成装置は、容器の中央部に溶鋼を液滴化するための複数個の液滴ホールを形成した液滴形成部を含むことができる。
【0038】
また、前記液滴形成部の容器の周囲は、上部に延びた側壁で構成され、前記レードルの内側壁に支持されることができる。
【0039】
また、前記液滴形成装置には、溶鋼供給装置から注入される溶鋼を収容するために、前記レードルの内部あるいは外部のいずれかの領域上に溶鋼収容部が形成されており、注入される溶鋼を前記溶鋼収容部を通過させて前記液滴形成部へと流動させることができる。
【0040】
また、前記液滴ホールは、直径6.5mm以下であり得る。
【0041】
また、前記液滴形成部の液滴ホールを通過して落下する下部領域に厚さ20mm以上の溶融スラグが形成されて、重量%で、前記スラグは、(%CaO)+(%SiO
2)+(%Al
2O
3)+(%MgO)>95%で、(%CaO):30〜45%、(%SiO
2):15〜35%、(%Al
2O
3):15〜30%、(%MgO):10〜20%を含むことができる。
【0042】
また、前記液滴形成部の液滴ホールを通過して落下する下部領域には、溶融スラグが形成されて、重量%で、前記溶鋼は、0.02%ないし0.1%のAlを含み、前記スラグは、CaO:34%〜49.2%、Al
2O
3:43.2%〜54.8%、MgO:7.5%〜11%を含むことができる。
【0043】
また、前記液滴形成部の液滴ホールを通過して落下する下部領域には、溶融スラグが形成されて、重量%で、前記溶鋼は精錬する前のAl含量が10ppm以下であり、前記スラグはCaO:13.6%〜48.3%、SiO
2:41.5%〜54.7%、MgO:10%〜29%を含むことができる。
【0044】
さらに、本発明のまた別の側面によれば、本発明はタンディッシュ胴体、及び前記タンディッシュ胴体の一側をカバーするタンディッシュカバーを含むタンディッシュと、前記タンディッシュ胴体内部を第1越流せきで塞いで形成される溶鋼収容部と、前記タンディッシュ胴体内部に前記溶鋼収容部に隣接するように位置されて、前記溶鋼収容部から送られる溶鋼を液滴化する液滴形成部を含んだ液滴形成装置と、を含む高清浄溶鋼の精錬装置を含む。
【0045】
また、前記溶鋼収容部は、前記第1越流せきと前記タンディッシュ胴体との間の内側壁間の空間であり得る。
【0046】
また、前記液滴形成部は、前記第1越流せきを基準として前記溶鋼収容部の反対側に位置されることを特徴とする高清浄溶鋼の精錬装置。
【0047】
また、前記タンディッシュ胴体の内側壁に支持され、前記液滴形成部を支持する第2越流せきをさらに含むことができる。
【0048】
また、前記液滴形成部は、前記第1越流せきと前記第2越流せきとの間の空間であり、前記第1越流せき及び前記第2越流せきによって支持されることができる。
【0049】
また、前記第2越流せきの下部は開放されうる。
【0050】
また、前記溶鋼は、前記溶鋼収容部からあふれて前記液滴形成部へ送られることができる。
【0051】
また、前記液滴形成部を経って液滴化された前記溶鋼は、前記タンディッシュ胴体の中で前記溶鋼収容部の反対側に形成された溶鋼貯蔵部に貯蔵されることができる。
【0052】
また、前記溶鋼貯蔵部に貯蔵された溶鋼の上面にはスラグが位置して、前記液滴形成部を経って液滴化された前記溶鋼は、前記スラグを経って精錬された状態で前記溶鋼貯蔵部に貯蔵されることができる。
【0053】
また、前記液滴形成部の液滴ホールを通過して落下する下部領域に厚さ20mm以上の溶融スラグが形成されて、重量%で、前記スラグは、(%CaO)+(%SiO
2)+(%Al
2O
3)+(%MgO)>95%で、(%CaO):30〜45%、(%SiO
2):15〜35%、(%Al
2O
3):15〜30%、(%MgO):10〜20%を含むことができる。
【0054】
また、前記液滴形成部の液滴ホールを通過して落下する下部領域には、溶融スラグが形成されて、重量%で、前記溶鋼は0.02%ないし0.1%のAlを含み、前記スラグは、CaO:34%〜49.2%、Al
2O
3:43.2%〜54.8%、MgO:7.5%〜11%を含むことができる。
【0055】
また、前記液滴形成部の液滴ホールを通過して落下する下部領域には、溶融スラグが形成されて、重量%で、前記溶鋼は精錬する前のAl含量が10ppm以下を含み、前記スラグは、CaO:13.6%〜48.3%、SiO
2:41.5%〜54.7%、MgO:10%〜29%を含むことができる。
【0056】
また、前記液滴形成部には、前記溶鋼収容部から送られた前記溶鋼が液滴化されることができるように複数の液滴ホールが形成されることができる。
【0057】
また、前記液滴形成部には、段差部が具備され、前記段差部の中で前記溶鋼収容部と隣接した一の側の段差部は、前記溶鋼収容部と遠い他の側の段差部に比べて高さが低いことがあり得る。
【0058】
また、前記溶鋼収容部は、ロングノズルを介してレードルから前記溶鋼を供給されることができる。
【発明の効果】
【0059】
以上のように、本発明によれば、製鋼工程から連鋳工程までの介在物生成を最小化して清浄度の優秀な溶鋼を製造することができる。
【0060】
また、本発明によれば、清浄度の優秀な溶鋼を製造するための精錬装置を提供して、最終製品での品質の優秀な高清浄溶鋼を経済的に製造することができる。
【0061】
また、本発明による高清浄溶鋼の精錬装置は、介在物の生成量及び全酸素量を下げて高清浄溶鋼を製造することができる。
【0062】
また、本発明によれば、第1越流せきでタンディッシュ胴体を塞いで溶鋼収容部を形成するため、溶鋼収容部と液滴形成部との間の空間を別途の考慮なしに最小化することができ、これによって施工時間を短くして構造を簡単にすることができる。
【0063】
また、本発明によれば、溶鋼収容部の内部の大きさ及び液滴形成部の面積を相対的に大きくすることができ、所望の鋳造速度を容易に充足させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
その他の実施例の具体的な事項は詳細な説明及び図面に含まれている。以下、本発明を図面を参照してより詳しく説明し、本発明の利点及び特徴、そしてそれらを果たす方法は、添付図面と共に詳細に後述されている実施例等を参照すれば明確になるであろう。しかし本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実施されることができ、以下の説明である部分が他の部分と連結されているとした時、これは直接的に連結されている場合のみならず、その中間に他の素子を置いて電気的に連結されている場合をも含む。また、図面において本発明と関係ない部分は、本発明の説明を明確にするために略しており、明細書全体を通じて類似した部分については同一の図面符号を付けた。
【0066】
溶鋼の凝固が完了する前の工程である製鋼工程から連鋳工程まで介在物の生成を抑制するか、除去して高清浄溶鋼を製造するための方法として様々な技術が知られている。
【0067】
製鋼工程では、レードル精錬の際、溶鋼の撹拌時間及び撹拌強度を制御して介在物の浮上分離をはかるような方法が知られている(日本公開特許2007−231410号、日本公開特許2008−240126号)。
【0068】
また、電磁気震動による介在物の凝集合体をはかって浮上分離機能を向上させる方法が開示されている(韓国公開特許2003−52424号)。一方、前述したような撹拌、微細気泡、電磁気震動などを利用して鋼中に存在する介在物を溶鋼上部に存在するスラグに浮上分離させて介在物を除去する方法は、与えられた時間内に介在物を上部に存在するスラグに移動させなければならないという限界がある。
【0069】
一方、連鋳工程ではレードルからタンディッシュへ供給される溶鋼通路であるノズルへの不活性ガスの吹き込みによって介在物を除去する方法が知られている(日本登録特許2001−3216384号)。
【0070】
また、タンディッシュ内の衝撃パッド設置による溶鋼類制御で介在物の浮上を極大化する方法が開示されている(米国登録特許US5551672号、韓国公開特許2004−55392号)。
【0071】
しかし、連鋳工程で内への不活性ガスの吹き込みを行う方法は、微細気泡が残留する場合、鋼板表面にピンホール(pin−hole)性スライバ欠陷を引き起こすことがあり、衝撃パッドの設置による溶鋼類の制御方法もまたすべての溶鋼類を上昇させることができず、介在物の除去効率が高くないという問題がある。
【0072】
本発明は、高清浄溶鋼の製造において、既存に広く知られた前記技術等とその接近方法において全く異なっているものであり、特に製鋼工程から連鋳工程までの全ての工程で本発明を適用することができる。
【0073】
本発明の一実施例は、レードルからタンディッシュへ供給された溶鋼を製造する方法と、その精錬装置を中心とし、また別の実施例は、製鋼工程で高清浄溶鋼を製造するための方法と、その精錬装置からなる。以下では、本発明において製鋼工程と連鋳工程の全工程に適用することができる基本的な技術思想で、高清浄溶鋼の製造プロセスを中心に説明し、引き継いでこれを各工程に適用することができる精錬装置を説明する。
【0074】
1.高清浄溶鋼の製造方法
本発明の一実施例で、高清浄溶鋼を製造する工程を説明する。本発明は、鉄鋼製造用溶鋼を供給する溶鋼供給装置から注入された溶鋼を収容して精錬する溶鋼精錬装置で、溶鋼を注入する段階より始められる。その後、前記注入された溶鋼を溶鋼精錬装置内で液滴(Droplets)へと形成する液滴形成段階が実施される。
【0075】
その後、前記液滴化された溶鋼を落下させてスラグを通過させるスラグの通過段階と、前記スラグを通過する間に前記液滴化された溶鋼の残留介在物がスラグによって除去される介在物の除去段階を含んで高清浄溶鋼を製造することができる。この時、前記溶鋼供給装置と溶鋼精錬装置は、それぞれ製鋼工程で使用するレードルを利用するか、それとも前記溶鋼精錬装置は、鋳造段階のタンディッシュを利用することができる。
【0076】
本発明で前記溶鋼供給装置から溶鋼精錬装置へ溶鋼を注入する時には、前記溶鋼を溶鋼ストリームの形態で注入するか、またはロングノズルを利用して注入することも可能である。
【0077】
前記溶鋼供給装置で溶鋼精錬装置へ注入される溶鋼は、溶鋼精錬装置内に具備された液滴形成部をすぐに通過して液滴化過程に付され、次いで液滴化された溶鋼は落下してスラグを通過することができる。
【0078】
しかし、この場合、溶鋼の落下時の衝撃や飛散の問題等が発生することがあり、これを考慮して追加の溶鋼収容部が前記溶鋼精錬装置内に具備されることができる。したがって、前記溶鋼注入の段階後であって溶鋼液滴形成の前に液滴用溶鋼を臨時に貯蔵する段階を追加することができる。
【0079】
前記溶鋼液滴形成段階では、注入された溶鋼が決められた一定の大きさの微細な液滴に形成されてスラグを通過するようになるが、これは前記溶鋼が複数の液滴ホールを具備した容器形態の液滴形成部を通過して落下されるからである。また、前記液滴化した溶鋼がスラグを通過して介在物が除去されることができるが、前記スラグとしては、一定の厚さ以上の溶融スラグを利用することができる。前記スラグは、予め前記液滴形成部の下部に具備されるようにすることができる。
【0080】
本発明の一実施例として、前記溶鋼供給装置は、鋳造用レードルであり、前記溶鋼精錬装置は、タンディッシュである場合を一例として説明する。すなわち、本発明を鋳造段階で適用する場合、レードルからタンディッシュへ溶鋼を供給する工程であることができる。この時、溶鋼供給装置であるレードルから供給される溶鋼を溶鋼精錬装置がタンディッシュへ供給する時、前記タンディッシュの内部に装着された直径6.5mm以下の大きさの孔を有する耐火物容器である液滴形成部を通過させて溶鋼液滴を形成させ、液滴化された溶鋼を厚さ20mm以上の適正な組成を有するスラグ層に落下させて溶鋼液滴中の介在物をスラグ層で除去することができる。
【0081】
図1は、本発明の一実施例である溶鋼精錬装置に具備された液滴形成装置によって溶鋼が液滴化して精錬が遂行されるプロセスを概略的に示したもので、製鋼工程と連鋳工程を含むすべての工程で適用可能な本発明の技術的思想を説明するためのものである。
【0082】
図1を参照すれば、前記溶鋼精錬装置内に具備された溶鋼液滴形成装置は、溶鋼供給装置から供給された溶鋼を一定の大きさの微細液滴aへと形成する。その後、一定の大きさを有する溶鋼液滴aが落下して本発明の実施例に関する組成からなるスラグbの表面に衝突する。そして、前記溶鋼液滴がスラグbを衝突しながら通過する間に、溶鋼内の介在物がスラグに吸収され、比重の差によって落下した溶鋼液滴が下部溶鋼層cに吸収される。この場合、スラグbを通過した溶鋼は、介在物がスラグbによって除去されるので、下部には清浄度の優れた溶鋼が形成されるのである。
【0083】
本発明は、このように溶鋼精錬装置内の液滴形成装置を通じて溶鋼を液滴化し、これを一定の厚さのスラグを通過させる過程で溶鋼液滴界面等の介在物をスラグに吸収されるようにし、精錬過程がなされることを特徴とする。
【0084】
図2A及び2Bは、溶鋼液滴がスラグを通過する時、スラグの厚さと溶鋼中の全酸素含量の関係を示したグラフである。特に、
図2A及び2Bではそれぞれ互いに異なる組成を有するスラグを利用して全酸素含量の関係を示した。
【0085】
本発明の一実施例で溶鋼中の全酸素含量は、スラグを通過した溶鋼をサンプリングして得られた試片を分析した。鋼中の全酸素含量と介在物酸素含量は、下記の式1により得ることができる。
【0086】
[式1]
全酸素=溶存酸素(Soluble oxygen)+介在物酸素(Insoluble oxygen)
【0087】
一般に、溶存酸素は、温度及び溶鋼成分によって決定されるので、温度と溶鋼成分が一定である場合、溶存酸素は一定の値を有する。したがって、温度と溶鋼成分が一定である場合、全酸素の相対的な差は介在物の含量差を示すので、全酸素含量の推移を通じて介在物除去の効率を確認することができる。
【0088】
上記の
図2A及び2Bから分かるように、スラグの厚さが0mmである、すなわち、スラグを全く使用しなかった場合の全酸素含量に比べて、スラグを使用した場合、介在物の除去効率は、スラグの厚さの増加にしたがって漸進的に増加する。しかし、前記介在物の除去効率は、スラグの一定の臨界厚さ以上では、ほとんど一定であることが分かる。そして、
図2A及び2Bから、それぞれ異なる種類のスラグを利用した場合にも同じく一定の厚さの臨界値以上では介在物の除去効率が一定になることが分かる。
【0089】
結局、本発明に係る事実施例で溶鋼の液滴化により介在物を除去する場合に、一定の厚さのスラグを通過するようにするが、前記スラグの厚さは、一定の臨界値を超過する場合、効果が一定になることが分かる。
図2A及び2Bで本発明の一実施例に係るスラグの厚さは、少なくとも20mmを確保しなければならないことが分かる。
【0090】
図3は、本発明の一実施例で液滴化した溶鋼がスラグ表面で反応する現象を連続的に示した写真図である。図面から分かるように、液滴に形成された溶鋼は、スラグ表面に衝突して通過する時、介在物が除去されることができる。まず、溶鋼液滴がスラグ表面に落下する時、時間による液滴の形状変化(t0〜t8)を調べてみる。
【0091】
前記連続写真図を見ると、まず、溶鋼液滴がスラグの表面と接触する(t0)。その後、前記スラグ表面に衝突した溶鋼液滴は、時間の経過に応じてスラグ表面でスラグと50%以上接触して薄く広がる現象(Spreading、t1〜t8)を示し、これによって液滴内部の介在物の移動距離が減少して移動速度も増加するようになり、介在物除去が容易に起きるようになる。
【0092】
一方、前記
図2A及び2Bから分かるように、臨界スラグの厚さ以上での介在物除去効率の差が少ないという結果から大部分の介在物除去は、溶鋼液滴がスラグ表面に衝突する時点で大部分起きることを確認することができる。
【0093】
一方、スラグの厚さが臨界厚さ以下では、除去効率が格段に減少するか、むしろ増加する現象も発生しえるが、これは、スラグの厚さが臨界厚さ以下の場合には溶鋼液滴がスラグに衝突する時、介在物除去とともに、スラグが下部溶鋼中に懸濁されて混入され、鋼中の酸素含量を増加させるからである。したがって、本発明ではスラグの厚さを少なくとも20mm以上確保することが重要である。
【0094】
図4A、4B及び4Cには、溶鋼の液滴化精錬後、凝固試片に残留する介在物をスラグの厚さに応じて示したグラフ図である。図面から分かるように、介在物の大きさ(2.5μm以上、5μm以上、10μm以上)によって区分して示した時、スラグの厚さが増加するほど残留介在物の密度が減少する。しかし、臨界厚さ以下のスラグ層を通過した液滴精錬では介在物除去の効果が充分でないことが分かる。そして、
図2A及び2Bと、
図4A、4B及び4Cの結果から溶鋼の液滴化精錬の時液滴が衝突するスラグの厚さは、介在物除去の効果を極大化し、スラグの流入などの副作用を最小化するための臨界的厚さがあるということが分かる。特に、本発明の実施例では前記スラグ層の厚さを少なくとも20mm以上確保することが好ましい。
【0095】
以下では、多様な種類の溶鋼に対して液滴化された溶鋼の精錬効率を向上させるためにスラグの組成を確認した。
【0096】
[300係ステンレス鋼の精錬]
一方、溶鋼液滴がスラグに落下する時、介在物の除去効率に及ぼすスラグの組成の影響を表1に示した。ここで、溶鋼は、300係ステンレス鋼の代表的な鋼で、18%Cr−8%Ni−0.35%Si−1.1%Mn−0.05%C−0.0015%Al、残りは、Fe及び不可避な不純物からなる、例えば、STS304鋼を使用した。
【0097】
表1から分かるように、A1及びA2組成は、液滴精錬後の全酸素の減少量が30〜33ppmで介在物の除去効率が優秀であることが示されたが、除去されることができずに残留する介在物の中でAl
2O
3含量がそれぞれ15〜23%程度に増加することが示された。したがって、この結果から見る時、A1及びA2組成は、介在物の精錬効率は高くても、残留介在物の中でAl
2O
3含量の増加による介在物内の高融点状物の形成で品質に悪影響を及ぼす可能性が非常に高く、適切でない。
【0098】
一方、B1〜B3の組成は、液滴精錬後残留介在物の中で Al
2O
3含量が減少することによる低融点化は可能であるが、全酸素減少量が12〜24ppmであり、介在物の除去効率が低くて適切でない。しかし、C1〜C3の組成で液滴精錬後の全酸素減少量は、32〜39ppmで介在物の除去効率が非常に優秀であり、残留介在物の中の Al
2O
3含量変化の側面からも−3%〜+2%水準で良好であり、液滴精錬スラグの組成で効果が高いことを確認することができる。したがって、本発明の一実施例では、液滴精錬の時溶鋼液滴が落下する下部のスラグの組成は、CaO:30〜45%、SiO
2:15〜35%、 Al
2O
3:15〜30%、MgO:10〜20%の組成を有することが好ましいということが分かる。
【0100】
[アルミニウム含量0.02〜0.1%を含む溶鋼の精錬]
重量%で、Al:0.02〜0.1%、C:0.08%、Si:0.01%、Mn:0.3%、残りのFeと不可避な不純物からなるアルミニウム脱酸鋼の溶鋼を利用して、前述した高清浄溶鋼の精錬装置を利用して前記溶鋼を精錬した。溶鋼は、まず、液滴形成部を通過させて液滴化させ、液滴化された溶鋼はスラグを通過した。前記液滴化された溶鋼がスラグを通過する前後のスラグの組成変化を表2に示した。また、表6には、表2による比較例及び実施例の結果で、スラグの中で固相率(%)及び溶鋼の全酸素ppm変化とAl変化を示した。
【0103】
表2及び表3を参照すれば、SiO
2を含むスラグを利用して前記アルミニウム脱酸鋼の溶鋼を液滴化させて精錬する場合には、スラグの前後の組成変化が大きくなることを確認することができた。
【0104】
比較例1では、溶鋼が通過する前のAl
2O
3の含量が0.2wt%で、微かに含有されたCaO−SiO
2−MgOの3元係スラグである反面、溶鋼が通過した後には、Al
2O
3が33.8wt%に大きく増加することを確認することができた。また、MgOの飽和濃度も26.6wt%から10.4wt%に減少しており、したがって、減少したMgOは析出されて固相を形成し、スラグの中で固相率が約15.0%であることが示された。また、溶鋼の中でAlが180ppmが減少しており、前記減少したAlは、スラグを還元させるのに消耗された。また、SiO
2が還元されてSi約136ppmが溶鋼に流入されて溶鋼の組成を変化させた。
【0105】
比較例2では、溶鋼が通過する前のスラグは、SiO
2を26wt%含有しており、溶鋼が通過した後スラグの固相率は変化しなかったが、SiO
2及びAl
2O
3の含量変化が大きく現れた。これは、比較例1と同様に溶鋼の中でAlがSiO
2に還元されて消耗されたからである。すなわち、溶鋼の中でAlの含量が150ppm減少しながらSiが107ppm増加しており、したがって、最終的に所望の品質を示すことができなかった。
【0106】
前述した比較例1及び2のように、アルミニウム脱酸鋼の場合には、スラグの中でのSiO
2の含量が大きい場合、スラグの固相率を増加させるか、または溶鋼の中でAlの減少及びSiの増加を誘発して最終的に所望の品質を示すことができない場合がある。また、比較例1の場合には、全酸素変化が0ppmで介在物の除去効率がなく、比較例2の場合には、全酸素変化が−2ppmで介在物の除去効率が低いことを確認することができた。
【0107】
実施例1ないし5では、全酸素変化は約−4ppmないし約−5ppmで、比較例1に比べて4倍ないし5倍、比較例2に比べて2倍ないし2.5倍を示している。また、溶鋼が通過する前後でスラグの組成変化がほとんどなく、溶鋼の中でAl変化及びスラグの中で固相が無いか、有っても少ないことを確認することができた。また、実施例2、3では、それぞれスラグの中で固相率が0.8%、0.5%でわずかに生成されたが、固相率が0%である実施例1、4、5と比較した時、全酸素変化が類似したことから、固相率が0.8%、0.5%で形成されることは、溶鋼の精錬に大きな影響を与えないことを確認することができた。
【0108】
溶鋼を精錬する場合、スラグは溶鋼中の介在物を吸収して組成が変わることができる。特に、溶鋼の中には主にCaO、SiO
2、及びAl
2O
3からなるため、溶鋼を精錬する過程で前記介在物は、スラグの組成に影響を与える。アルミニウム脱炭鋼の溶鋼を液滴化して精錬する場合には、SiO
2は、Alを酸化させることができるので、不適切な成分や前記表4及び表5のようにSiO
2がスラグの中に微量含有された場合には大きい影響を与えないということを確認することができた。すなわち、介在物に含まれたSiO
2は、1wt%ないし2wt%であり、介在物の吸収によるスラグ中でのSiO
2の増加量は、微量なので、介在物によるSiO
2の増加は、本実施例では大きい影響を与えないということを確認することができた。
【0109】
一方、Al
2O
3の場合には、主な成分の中で一つであり、1wt%ないし2wt%の変化でもスラグ中のMgOの飽和度に大きい影響を与えることを確認することができた。CaO− Al
2O
3−MgO係のスラグに対する状態図によれば、1550℃の液状領域でAl
2O
3含量が54.8%を超過する場合、スラグの中でMgOの飽和濃度が急激に減少する。すなわち、表4の実施例1の場合では、Al
2O
3含量が65wt%なので、精錬を持続的に行う場合、Al
2O
3の含量が増加されてスラグの中でMgOの飽和濃度が低くなり、したがって、スラグの固相率を増加させることができる。
【0110】
また、実施例5の場合には、Al
2O
3が44.4wt%から43.8wt%へと、微量変化し、MgOの飽和線に沿ってMgOの溶解度が急激に増加する。したがって、スラグの固相率は増加されないこともあるが、その反面、MgOを含む耐火物からなるタンディッシュの溶損が懸念される。したがって、溶鋼が重量%で、0.02%ないし0.1%のAlを含むアルミニウム脱酸鋼(Al−killed)の場合、スラグはCaO−Al
2O
3−MgOであり得、前記スラグはCaO:30.5〜52.4%、Al
2O
3:43.2〜65%、MgO:3〜11%を含むことが好ましい。
【0111】
[アルミニウム含量0.001%未満を含む溶鋼の精錬]
Al含量が10ppm以下の溶鋼(例えば、Al:0.0001%〜0.001%、C:0.75%、Si:0.3%、Mn:0.4%)を含むタイヤコード鋼を利用して溶鋼を液滴化して精錬した。この時、使用されるスラグは、表4のように組成及び含量を変えて各実施例及び比較例での溶鋼がスラグを通過する前のスラグの組成と溶鋼が通過した後のスラグの組成変化を確認した。また、表5は、表4における比較例及び実施例の結果であり、スラグ中での固相率(%)及び溶鋼の全酸素ppm変化とAl変化を示した。表6は、実施例6ないし11で、各実施例による塩基度(CaO/SiO
2)及び粘度を示した結果である。
【0115】
表4ないし表6を参照すれば、Al
2O
3が過量に含有されたスラグを利用して溶鋼を液滴化して精錬した比較例3及び4を見ると、固相率はいずれも0%で、溶鋼の全酸素変化も全て−7ppm、−6ppmであることを確認することができた。スラグで固相率が高い場合、相対的に溶鋼と接触して溶鋼中の介在物を吸収することができる機能が低下されるので、スラグの固相率は低いほど良い。また、前述したように、全酸素の減少は介在物酸素の減少を意味し、これは、介在物の減少を意味するので、比較例3及び4は、いずれも固相率及び全酸素変化では優れた効果を有することを確認することができた。
【0116】
一方、溶鋼が通過した後、スラグの中でAl
2O
3の含量がそれぞれ43.2wt%→22.1wt%、及び20wt%→15.8wt%に減少し、これは、溶鋼中に取り込まれて比較例3及び4の溶鋼の中でAl含量はそれぞれ12ppm、5ppmが増加することを確認することができた。すなわち、比較例3及び4では溶鋼がスラグを通過しながら、スラグの中でAlを吸収し、むしろ最初よりAl含量が増加した。溶鋼中の介在物は、主にCaO、SiO
2、Al
2O
3からなるが、溶鋼がスラグを通過しながら前記スラグの中でAl
2O
3は、溶鋼中に取り込まれて、したがって溶鋼中のAl含量を徐々に増加させることになる。したがって、タイヤコード鋼のようにAl含量が極めて微量である鋼種では適切でないことを確認することができた。
【0117】
実施例6ないし11を参照すれば、液滴化された溶鋼がスラグを通過する前後のスラグの組成変化がほとんど発生しないことを確認することができた。また、固相率も1%未満で、溶鋼中のAl含量変化及び全酸素変化がすべて減少することを確認することができた。したがって、最終製品がタイヤコード鋼のようにAl含量が極めて微量である製品に適用が可能であることを確認することができた。
【0118】
実施例6ないし8の場合には、実施例9ないし11の場合とは違って、SiO
2及びMgOの含量変化が発生し、固相率がそれぞれ0.9%、0.3%、0.3%を示した。
【0119】
固相の主成分は、フォルステライト(forsterite;Mg
2SiO
4)からなるが、これは実施例1ないし3でスラグの組成の中で変化したSiO
2及びMgOが、固相の中でフォルステライトを構成したからである。
【0120】
また、実施例6ないし8は、Al含量変化は同一であるが、全酸素変化は多少差を見せている。これは、実施例6ないし8の塩基度の差に起因したものと判断される。実施例6は、全酸素変化が−2ppmで、他の実施例に比べて相対的に劣位である理由は、表6に示したように、実施例6の粘度が相対的に高いからである。
【0121】
CaO−SiO
2−MgOを含むスラグの場合、粘性は塩基度に影響を受ける。すなわち、スラグの塩基度が低いほど高い粘性を有する。実施例6の場合には、スラグの粘性が11poiseで、他の実施例の約2倍〜6倍高く示されており、実施例7は粘性が4.2poiseで、実施例8ないし11に比べて粘性は約1.5倍〜2.5倍ぐらい高い。したがって、粘性が高いほど溶鋼がスラグを通過し難く、さらに溶鋼中の介在物をスラグが吸収し難いので、実施例6及び7は、それぞれ全酸素変化量が−2ppm、−4ppmで、相対的に精錬効率が低いことを確認することができた。
【0122】
実施例8ないし11の場合、全酸素変化量が約−5ppm〜−6ppmで、優秀な効果を示しており、粘性も1.6poise〜2.5poiseと低く、スラグの効率が相対的に高いことを確認することができた。一方、1500℃でのCaO−SiO
2−MgO係状態図を参照すれば、実施例6の場合には、SiO
2の含量が1%未満に増加しても、MgOの飽和濃度が2倍〜3倍増加する。したがって、実施例11のようなスラグを利用して溶鋼を連続鋳造する場合、長期間であればあるほどスラグの中には溶鋼から吸収した介在物であるSiO
2の含量が増加する。これは、耐火物からなるタンディッシュの溶損を誘発しえるので、実施例6の場合には、長期間使用を避けることが好ましい。
【0123】
精錬する前のAl含量が10ppm以下である溶鋼に対して上記の方法を適用する場合、スラグは重量%で、CaO:13.6%〜48.3%、SiO
2:41.5%〜54.7%、MgO:10%〜29%を含むことが好ましい。
【0124】
図5は、溶鋼精錬装置で液滴形成部によって形成された液滴の大きさと全酸素含量との関係を調べるために溶鋼精錬装置の中、特に、レードルとタンディッシュとの間の微細液滴ホールを有する耐火物において、前記液滴ホールの大きさによる介在物の精錬効果(全酸素含量変化)を示したグラフ図である。
【0125】
本発明の一実施例で液滴化した溶鋼は、液滴形成装置の液滴形成ホールを介して形成されるので、前記液滴ホールの大きさは、本発明の溶鋼液滴の好ましい大きさを見積ることができるようにする。本発明の一実施例のうち、特に、レードルからタンディッシュへの溶鋼の供給やレードルからレードルへの溶鋼の供給時、溶鋼を液滴化するために溶鋼が注入される溶鋼精錬装置の下部領域の上側に微細な液滴ホールを具備した耐火物容器を位置させ、この容器に溶鋼を供給する場合、溶鋼は、耐火物の微細な液滴ホールを介して溶鋼液滴を形成するようになる。
【0126】
図5から分かるように、本発明の一実施例では耐火物容器の液滴ホールの大きさが減少することで、全酸素含量は減少することが分かる。また、耐火物容器の液滴ホールの大きさが増加することによって全酸素含量の平均値及び偏差も同様に増加することが分かる。これは、耐火物容器である液滴形成部の液滴ホールの大きさ増加による溶鋼液滴の大きさが増加し、これによる単位体積当りの面積比減少による介在物の除去効率減少に起因する。
【0127】
一方、液滴ホールの大きさが6.5mm以上では、液滴精錬を実施しない場合と大きい差がなく、液滴精錬効果がほとんど示されないことが分かる。したがって、
図5の結果から溶鋼精錬装置で微細な液滴ホールを有する液滴形成装置の設置による溶鋼の液滴形成の時、介在物の精錬効率を確保するためには耐火物の孔の大きさを6.5mm以下に確保することが好ましいということが分かる。
【0128】
2.高清浄溶鋼の精錬装置
次に、本発明の溶鋼精錬装置を連鋳工程に適用した場合を説明する。本発明の溶鋼精錬装置は、製鋼工程で溶鋼の供給を受けるレードル、連鋳過程で溶鋼の供給を受けるタンディッシュなど、多様な種類の溶鋼貯蔵槽にすべて適用が可能である。以下では、まず、連鋳工程で適用されうる多様な高清浄溶鋼の精錬装置の実施例について説明し、ついでに製鋼工程での高清浄溶鋼の精錬装置について説明する。
【0129】
[高清浄溶鋼の精錬装置の第1実施例]
図6Aは、本発明の一実施例による液滴形成のためのレードルとタンディッシュの構造を示した概略断面図で、特に、本発明の液滴形成装置を含むタンディッシュと前記タンディッシュに溶鋼を供給するレードルを図示する。以下では、タンディッシュはタンディッシュ胴体とタンディッシュカバーからなる。したがって、以下で言及されるタンディッシュ胴体は、タンディッシュとして理解しても構わない。
【0130】
図6Aに図示されたように、本発明に係る溶鋼液滴化による精錬工程では、まず、レードル5からタンディッシュ胴体14へ溶鋼6を供給する。この時、前記レードル5に貯蔵された溶鋼6は、レードル5下部の開閉部7(またはコレクターノズル)によって注入ボックス8(pouring box)を介して溶鋼ストリーム11の形態でタンディッシュ胴体14の開口された領域に供給される。
【0131】
前記溶鋼ストリーム11の形態でタンディッシュ胴体14へ供給された溶鋼6は、まず、タンディッシュ胴体14の一側部に形成された液滴形成装置によって液滴化過程が遂行され、引き続き液滴化された溶鋼は、落下してスラグ15を通過して精錬がなされる。参照番号1は、液滴化された溶鋼が落下する様子を示す。その後スラグ15を通過して介在物が除去された溶鋼は、越流せき16の下部に流動してタンディッシュ胴体14内に貯蔵される。
【0132】
前記液滴形成装置を中心により詳しく説明する。本発明の一実施例に係る液滴形成装置は、レードル5から供給される溶鋼6を臨時に貯蔵する溶鋼収容部13と、前記溶鋼収容部13から貯蔵された溶鋼の流入を受けて液滴化するための液滴形成部12と、を含む。好ましくは、前記液滴形成装置は、レードル5から溶鋼6の注入を受けるタンディッシュ胴体14の開口部に隣接して装着される。特に、前記溶鋼収容部13は、レードル5下部の注入ボックス8を介してタンディッシュ胴体14へ溶鋼が供給される領域下部に隣接して装着されたもので、内部に溶鋼を収容することができる収容空間を具備し、耐火物からなる一種の溶鋼臨時貯蔵所の役目をする。そして、前記溶鋼収容部13は、タンディッシュ胴体14の内部一側部に別に装着される。
【0133】
そして、前記溶鋼収容部13によって、レードル5から供給される溶鋼の、落下する衝撃を一定の部分吸収した後、隣接した液滴形成部12へ溶鋼を供給するように構成される。一方、前記溶鋼収容部13を介して流入された溶鋼を液滴化するための液滴形成部12は、好ましくは、通常的な鋳造速度に対応できるように、ホールの大きさ及び個数を設定した耐火物容器の形態を有する。そして、前記耐火物容器は、中央部に複数の液滴ホール25が形成される。そして、液滴形成部12の周囲から延びた側壁は、前記タンディッシュ14内部で支持されうるようにする。これをより詳しく検討すると、前記液滴形成部12は、前記溶鋼収容部13の上端部外周面にわたって支持されうるように形成するが、前記溶鋼収容部13上端の溶鋼の注入を受ける開口領域を覆わないようにする。
【0134】
また、前記液滴形成部12の一側壁は、前記タンディッシュ胴体14の内側面に支持されるように装着し、他の側壁はタンディッシュ胴体14の内部に少なくとも一つ以上の越流せき16を設置して前記越流せき16によって支持されるように装着する。この時、前記液滴形成部12は、タンディッシュ側面が傾いている場合、液滴形成部12の外郭形状を傾斜するように設計して、タンディッシュ胴体14の内側面によって支持されるようにし、傾斜のないタンディッシュ胴体14には液滴形成部12の側壁が支持されることができるように突起部などを設置して支持されるようにすることができるのは勿論である。
【0135】
すなわち、前記液滴形成部12がタンディッシュ胴体14の内部で装着される方法として、多様な方法を応用することができ、これもまた本発明の範疇を脱しない。一方、前記タンディッシュ胴体14は、タンディッシュカバー10によって覆われ、液滴化過程を通じて精錬がなされた溶鋼は、タンディッシュ胴体14の内部でタンディッシュフラックス17の下部に位置されて連鋳過程を通過して排出される。
【0136】
一方、
図6Bは、本発明に係るレードル及びタンディッシュのまた別の構造を示した図面である。
図6Bでは、
図6Aのような注入ボックス8が具備されておらず、レードル5下部の開閉部7にロングノズル9を具備するようにして、溶鋼6がすぐ溶鋼収容部13へ注入されうるようにする。このようなロングノズル9を介してレードル5から溶鋼6を注入する時、溶鋼6が溶鋼収容部13へ落下する時の落下衝撃が低下されるため、溶鋼の飛散などを防止することができる。
【0137】
さらに、
図6Cは、本発明に係るタンディッシュのまた別の構造を図示している。
図6Cでは、レードルなど、溶鋼貯蔵部から注入される溶鋼が臨時に貯蔵される別途の溶鋼収容部を具備せず、溶鋼が直接液滴形成部12を通過するようにして精錬工程を遂行するのである。すなわち、
図6Cでは、本発明の液滴形成装置が別途の溶鋼収容部を具備せずに液滴形成部のみによって構成されうることを示す。
【0138】
図7A、7B及び7Cは、
図6A、6B及び6Cにて開示された液滴形成部12の詳細構造を図示している。まず、
図7Aを見ると、本発明に係る液滴形成部12は、タンディッシュの内部に装着が容易になるようにタンディッシュの内側面と対応する形態を有する容器の形態を有する。このような液滴形成部12には、液滴形成部12が溶鋼収容部13に装着されうるように前記溶鋼収容部13の開口領域に対応する形態の開かれた開口部26が具備される。そして、前記開口部26の側面には、複数の液滴ホール25が形成されている。
【0139】
前記液滴ホール25は、前記溶鋼収容部13を介して注入される溶鋼を液滴の形態に形成して下部のスラグを通過できるようにしたもので、鋳造速度、精錬工程の効率性を考慮して一定の大きさと個数で形成することができる。一方、本図面には図示されていないが、前記溶鋼収容部13が柱状の耐火物からなり、上端部が前記開口部26を介して延びた状態で連結されるか、別個の部材が前記開口部26を介して延びてレードルの開閉部7または注入ボックス8と連通されることも想定することができる。そして、前記液滴形成部12の外側壁12’は、タンディッシュ胴体14の内側面とタンディッシュ胴体14に形成された越流せき16に支持されることができる。そして、前記開口部26の外周面26’は、前記溶鋼収容部13の上端部に装着されるか、前記開口部26の中を柱状の溶鋼収容部13が通過して互いに装着できるようにする。
【0140】
一方、
図7Bは、特に
図6Cに係る本発明の液滴形成部のまた別の形態を示した平面図であり、
図7Cは、
図7Bの正断面図である。図面に示されたような液滴形成部12Aは、概ねタンディッシュ胴体14の一側部形態に対応するように概ね長方形の容器形態を有する。そして、前記液滴形成部12の外側壁12a’は、タンディッシュ胴体14の内側面と越流せき16に装着されることができ、溶鋼をレードルなどの溶鋼貯蔵槽から注入を受けて液滴を形成するための複数の液滴ホール25が形成されている。
【0141】
このようにレードルなど、溶鋼を貯蔵している溶鋼供給装置から供給された溶鋼は、溶鋼収容部を満たした後に液滴形成部へと流入されながら液滴化過程に付される。そして、液滴化された溶鋼は、スラグを通過する間に介在物が除去されて、高清浄溶鋼が製造される。しかし、前記溶鋼収容部が必ずしも必要なものではなく、
図6Cに示されたように溶鋼を貯蔵する貯蔵槽から直接溶鋼が液滴形成部へ流入されて液滴化過程を遂行することも可能である。そして、液滴形成部の下部には、予め溶融されたスラグを投入するか、固相スラグを投入させて一定の厚さ以上の溶融スラグを形成するようにして液滴化された溶鋼が通過して精錬過程に付されるようにする。
【0142】
[高清浄溶鋼の精錬装置の第2実施例]
図8は、連鋳工程に適用することができる本発明のその他の実施例による高清浄溶鋼の精錬装置100の断面図、
図9は、
図8に示した高清浄溶鋼の精錬装置100に溶鋼200が満たされた様子を示した断面図である。以下、これを参照して本実施例による高清浄溶鋼の精錬装置100について説明する。
【0143】
図8及び
図9に示したように、本実施例に係る高清浄溶鋼の精錬装置100は、タンディッシュ110、及びタンディッシュ110内に設置されるが、溶鋼200を液滴化する液滴形成装置120を含むことができる。
【0144】
タンディッシュ110は、レードル130から溶鋼200の供給を受けてこれを貯蔵する部材で、タンディッシュ胴体111とタンディッシュカバー112とを含むことができる。ここで、タンディッシュ胴体111は、レードル130から供給された溶鋼200を収容することができ、液滴形成装置120によって液滴化された溶鋼200aを貯蔵し、例えば、鋳型などへ送ることができる。また、タンディッシュカバー112は、タンディッシュ胴体111の開口された一の側をカバーし、タンディッシュ胴体111内に貯蔵された溶鋼200bに不純物が浸透しないようにすることができる。この時、タンディッシュカバー112には、タンディッシュ胴体111内にスラグ202またはタンディッシュフラックス203などを挿入するための投入ホール115、及び溶鋼200を注入できるように開放された開口部114を形成することができる。
【0145】
また、タンディッシュ胴体111内には、液滴化された溶鋼200aをガイドできるようにダム118を具備することができ、タンディッシュ胴体111の内側壁の一の側には、溶鋼収容部121からオーバーフロー(over flow)される溶鋼200を外部へ排出するオーバーフローホール117が形成されることができる。また、タンディッシュ胴体111には、貯蔵された溶鋼200bを例えば、鋳型などへ排出する溶鋼出口116が形成されることができる。
【0146】
一方、タンディッシュカバー112に形成された開口部114を介してロングノズル150が挿入されることができ、これによってロングノズル150は、タンディッシュカバー112を貫通してタンディッシュ胴体111内に到逹することができ、ロングノズル150を通して溶鋼200を溶鋼収容部121内に供給することができる。この時、ロングノズル150を通して溶鋼200を供給する場合、溶鋼200が溶鋼収容部121に落下する時、落下衝撃が低下されることができ、溶鋼200の飛散などを防止することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、ロングノズル150なしに溶鋼ストリームの形態で溶鋼収容部121内に溶鋼200を供給することも可能である。また、レードル130に貯蔵された溶鋼200は、例えば、コレクターノズルのような開閉部131の開閉によって、ロングノズル150を介して溶鋼収容部121に供給されることができる。
【0147】
液滴形成装置120は、タンディッシュ110内に設置され、溶鋼200を液滴化する装置であり、溶鋼収容部121及び液滴形成部122を含むことができる。ここで、溶鋼収容部121は、タンディッシュ胴体111の内部を第1越流せき123で塞いで形成されることができる。この時、第1越流せき123の幅は、タンディッシュ胴体111の幅と同一であり、第1越流せき123でタンディッシュ胴体111を二分することができ、二分されたタンディッシュ胴体111の中でタンディッシュカバー112の開口部114に隣接した領域が溶鋼収容部121になりうる。
【0148】
したがって、溶鋼収容部121は、タンディッシュ胴体111の内側壁及び第1越流せき123によって上部を除いて密閉されることができ、開放された上部を通してロングノズル150が挿入されて溶鋼200の供給を受けることができる。一方、溶鋼収容部121は、レードル130から落下する溶鋼200の落下衝撃を一定の部分吸収した後、収容された溶鋼200中であふれる部分を液滴形成部122へ送るため、液滴形成部122は、溶鋼収容部121の存在によって相対的に大きい力を受けず、衝撃によって損傷される可能性が減少されることが可能となる。また、溶鋼収容部121は、一定の速度及び量で溶鋼200を液滴形成部122へ送ることができ、工程の効率が向上されうる。
【0149】
一方、液滴形成部122は、溶鋼収容部121から送られる溶鋼200を液滴化する部材で、溶鋼収容部121に隣接するように位置されることができる。より具体的には、液滴形成部122は、第1越流せき123を基準として溶鋼収容部121の反対側に位置することができる。この時、
図2に示したように、溶鋼収容部121に溶鋼200が引き続き供給されて溶鋼収容部121から溶鋼200があふれる場合、あふれた溶鋼200は隣接した液滴形成部122へ送られることができ、液滴形成部122へ送られた溶鋼200は、液滴化されて第1越流せき123によって二分されたタンディッシュ胴体111の中で溶鋼収容部121の反対側に位置した溶鋼貯蔵部113へ落下することができる。
【0150】
一方、本実施例による高清浄溶鋼の精錬装置100は、タンディッシュ胴体111の内部に第2越流せき140をさらに含むことができる。この時、第2越流せき140は、タンディッシュ胴体111の内側壁によって支持されることができ、上部には、液滴形成部122が位置することができる。したがって、液滴形成部122は、第1越流せき123及び第2越流せき140によって支持されることができる。また、液滴形成部122は、タンディッシュ胴体111の内側壁によって幅方向に支持されることができる。
【0151】
この時、第2越流せき140の下部には、開放部141が具備されることができる。したがって、液滴形成部122を通過して液滴化された溶鋼200aは、第2越流せき140の開放部141を通って溶鋼貯蔵部113内で自由に移動可能であり、溶鋼貯蔵部113内に貯蔵された溶鋼200bは、溶鋼出口116を介して鋳型などへ排出されることができる。一方、溶鋼貯蔵部113内に貯蔵された溶鋼200bの上面には、タンディッシュフラックス203を投入して溶鋼200bを保護することができる。
【0152】
図10は、
図9に示したA部分の拡大図、
図11は
図9に示した高清浄溶鋼の精錬装置100の液滴形成部122の斜視図である。以下、これを参照して本実施例に係る液滴形成部122についてより具体的に検討する。
【0153】
図10及び
図11に示したように、液滴形成部122には複数の液滴ホール124が具備されることができる。したがって、溶鋼収容部121から送られた溶鋼200は、液滴ホール124を通過しながら小さな大きさで、すなわち、液滴化されて吐出されることができる。一方、このような液滴ホール124の大きさは、6.5mm以上の場合、液滴精錬を実施しない場合と大きい差がなく、液滴精錬効果がほとんど示されないこともあるので、液滴ホール124の大きさを6.5mm以下に確保することが好ましい。また、液滴ホール124の大きさが6.5mm以下でも小さいほど溶鋼200内の全酸素含量を下げることができるが、鋳造速度が遅くなることがあるので、通常的な鋳造速度、精錬工程の効率性を考慮して液滴ホール124の大きさ及び個数を設定することが好ましい。
【0154】
また、液滴形成部122は、概ねタンディッシュ胴体111の内側壁に対応するように長方角形の容器形態であることができ、液滴形成部122の外側壁は、第1越流せき123、第2越流せき140、及びタンディッシュ胴体111の内側壁に装着されることができる。また、溶鋼収容部121から送られた溶鋼200が液滴形成部122上であふれて液滴化されていない状態で溶鋼貯蔵部113へすぐに送られることのないように、液滴形成部122には段差部125、126が具備されることができる。この時、液滴形成部122の一の側の段差部126は、溶鋼収容部121に隣接するので、高さを相対的に低くして溶鋼200が溶鋼収容部121から液滴形成部122へ円滑に送られるようにしながら、他の側の段差部125は、溶鋼収容部121の反対側に隣接するので、高さを相対的に高くして液滴形成部122上で溶鋼200があふれないようにすることができる。
【0155】
図8に示したように、液滴形成部122の液滴ホール124を通過した溶鋼は、一定の大きさの微細液滴に形成されることができる。その後、一定の大きさを有する液滴化された溶鋼は、落下して溶鋼貯蔵部113に貯蔵された溶鋼の上面に形成されたスラグの表面に衝突し、溶鋼内の介在物は、スラグに吸収され、比重差によって落下された溶鋼は、溶鋼貯蔵部113に貯蔵された溶鋼に吸収される(
図9参照)。この場合、スラグを通過した液滴化された溶鋼は、介在物が除去されて清浄度が高くなることができる。
【0156】
さらに、液滴化された溶鋼は、スラグを通過しながら全酸素量が減少されることができる。この時、液滴化された溶鋼は、スラグに対する反応面積が従来に比べて大きくなるので、全酸素量が顕著に減少されることができる。また、液滴化された溶鋼は、スラグの表面に衝突して通過する時、介在物が除去されることができる。液滴化された溶鋼がスラグの表面と接触した後、前記スラグの表面に衝突した液滴化された溶鋼は、時間の経過に応じてスラグの表面で薄く広がる現象(Spreading、t1〜t8、
図3参照)を現わし、これによって液滴化された溶鋼の介在物の移動距離が減少し、移動速度も同様に増加するようになって、介在物の除去が容易に起きるようになる。
【0157】
上記の
図6Aないし
図11では、レードルからタンディッシュへ溶鋼が流入される場合の、タンディッシュ胴体内で溶鋼の液滴化のための装置を示した。しかし、本発明の液滴形成装置は、単に連鋳工程以外にも製鋼工程の全工程に適用が可能であることは勿論である。以下では、このような製鋼工程に適用可能な溶鋼精錬装置の例について説明する。
【0158】
[高清浄溶鋼の精錬装置の第3実施例]
図12Aは、製鋼工程で溶鋼成分及び脱酸が完了した溶鋼に対して液滴精錬を実施するためにレードルからレードルへ溶鋼を供給して液滴形成により精錬を実施することを示したものである。そして、
図12Bは、この時下部から溶鋼の注入を受けたレードルの平断面図である。
【0159】
本発明の実施例では、溶鋼供給装置から溶鋼を供給する供給用レードルと、収容部として溶鋼を収容する収容用レードルが図示される。この時、溶鋼6を供給する上部側レードル5から29を介して注入される溶鋼6の衝撃量を相殺するために下部レードル20では、下部レードル20の外周面の一の側に別個の溶鋼収容部23を形成する。そして、上部側レードル5は、レードルの開閉部またはロングノズル29などを利用して前記溶鋼収容部23へ溶鋼を供給する。同時に、前記溶鋼収容部23に貯蔵された溶鋼6は、下部レードル20の隣接した側壁21を越えて液滴形成部22へ流入される。そして、液滴形成部22から流入された溶鋼6は、複数の液滴ホール25’を介して液滴化過程に付される。
【0160】
ついでに、液滴化された溶鋼は、下部レードル20の内部に装着された一定の厚さのスラグ24を落下して通過する。前記液滴形成部22は、下部レードル20の内側面に結合されて装着されるか、側壁に装着されることができる。前記複数の液滴ホール25’を通って液滴化された溶鋼は、落下しながら下部のスラグ24を通過しつつ液滴精錬がなされる。この時、下部レードル20内にはアルゴンガスなど、不活性ガスを充填して溶鋼の再酸化を防止する。アルゴンガスなどの不活性ガスは、上部のカバー27を介して投入されるか、下部の低吹プラグを介して供給されることができる。そして、前記下部レードル20は、レードルカバー27によって覆われることができる。
【0161】
図12Cは、本実施例で液滴形成部自体の平面図を図示する。図面に図示されたように本実施例での液滴形成部22は、レードルの内周面の一側部に対応する形態の耐火物容器で構成される。そして、複数の液滴ホール25’が、容器の中央部に形成されて、さらに容器の周囲は上部へ延びた側壁22’を備え、前記側壁は、下部レードル5の内周面で支持されるように構成する。
【0162】
以上のように、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施されることができるということを理解できるだろう。よって、上記記述の実施例等は、すべての面から例示的なもので限定的ではないことを理解しなければならない。そして、本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。