(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921771
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】重油高効率転化接触分解触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/80 20060101AFI20160510BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20160510BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20160510BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20160510BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20160510BHJP
B01J 37/28 20060101ALI20160510BHJP
C01B 39/24 20060101ALI20160510BHJP
C10G 11/05 20060101ALI20160510BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
B01J29/80 M
B01J37/02 101D
B01J37/06
B01J37/10
B01J37/04 102
B01J37/28
C01B39/24
C10G11/05
C10G11/18
【請求項の数】25
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-514313(P2015-514313)
(86)(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公表番号】特表2015-523907(P2015-523907A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】CN2012001008
(87)【国際公開番号】WO2013177728
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】201210179961.4
(32)【優先日】2012年6月1日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514306010
【氏名又は名称】中国石油天然気股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ションホウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ハイタオ
(72)【発明者】
【氏名】リ ディ
(72)【発明者】
【氏名】タン チェングオ
(72)【発明者】
【氏名】デュアン ホンチャン
(72)【発明者】
【氏名】リ シュエリ
(72)【発明者】
【氏名】リウ チャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン シャオリャン
(72)【発明者】
【氏名】カイ ジンジュン
(72)【発明者】
【氏名】パン チーシュアン
(72)【発明者】
【氏名】サン シュエチン
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−503065(JP,A)
【文献】
特開平08−229405(JP,A)
【文献】
特開昭63−150231(JP,A)
【文献】
特表2008−508084(JP,A)
【文献】
特開昭58−020232(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102133542(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101190416(CN,A)
【文献】
中国特許第1201864(CN,C)
【文献】
中国特許出願公開第1506161(CN,A)
【文献】
中国特許第101284243(CN,B)
【文献】
中国特許第101823726(CN,B)
【文献】
中国特許出願公開第1353086(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102806096(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の組成において、リン含有超安定化希土類Y型分子篩を2〜50重量%、一種又は複数種の他の分子篩を0.5〜30重量%、クレーを0.5〜70重量%、耐高温無機酸化物を1.0〜65重量%、及び希土類酸化物を0.01〜12.5重量%含む重油接触分解触媒であって、
リン含有超安定化希土類Y型分子篩は、希土類酸化物1〜20重量%、酸化ナトリウム1.2重量%以下、リン(Pで計算する)0.1〜5重量%を含有し、結晶化度が51〜69%であり、格子定数が2.449nm〜2.469nmであり、
当該リン含有超安定化希土類Y型分子篩の製造工程において、希土類交換、分散予備交換が含まれており、希土類交換と分散予備交換の前後順序が限られておらず、希土類交換と分散予備交換がその間に焙焼過程がなく連続して行われ、
分散予備交換は、分子篩スラリーの濃度を固形分80〜400g/Lに調整して、分散剤を0.2重量%〜7重量%加えて分散予備交換を行い、交換温度が0〜100℃、交換時間が0.1〜1.5時間であり;
分散予備交換の過程において、上記の分散剤は、セスバニア粉、ホウ酸、尿素、エタノール、ポリアクリルアミド、酢酸、シュウ酸、アジピン酸、ギ酸、塩酸、硝酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、安息香酸、デンプンから選ばれるいずれか一種又は複数種であり;
希土類交換、分散予備交換においてアンモニウム塩が使用されない、ことを特徴とする重油接触分解触媒。
【請求項2】
分散予備交換を行なう際に、分散剤の添加量は0.2〜5重量%であり、交換温度は60〜95℃であり、交換時間は0.1〜1.5時間であることを特徴とする請求項1に記載の重油接触分解触媒。
【請求項3】
他の分子篩は、Y型ゼオライト、Lゼオライト、ZSM-5ゼオライト、βゼオライト、リン酸アルミニウムゼオライト、Ωゼオライト、又は変性された上記のゼオライトから選ばれる一種又は複数種のものであることを特徴とする請求項1に記載の重油接触分解触媒。
【請求項4】
他の分子篩は、HY、USY、REY、REHY、REUSY、H-ZSM-5から選ばれる一種又は複数種のものであることを特徴とする請求項1に記載の重油接触分解触媒。
【請求項5】
クレーは、カオリン、ハロイサイト、モンモリロナイト、セピオライト、パーライトから選ばれる一種又は複数種のものであることを特徴とする請求項1に記載の重油接触分解触媒。
【請求項6】
耐高温無機酸化物は、Al2O3、SiO2、SiO2-Al2O3、AlPO4から選ばれる一種又は複数種のものであることを特徴とする請求項1に記載の重油接触分解触媒。
【請求項7】
請求項1に記載の重油接触分解触媒の製造方法であって、主に
(1)NaY分子篩を原料として、希土類交換、分散予備交換を経て、さらに分子篩スラリーについてろ過、水洗及び一回目の焙焼を行なって、「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩が得られ、中でも希土類交換、分散予備交換の前後順序が限られておらず、さらに「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩に対してアンモニウム塩交換、リン変性及び二回目の焙焼を行って、リン含有超安定化希土類Y型分子篩が得られ、その中に、アンモニウム塩交換、リン変性の前後順序が限られておらず、アンモニウム塩交換及びリン変性過程が連続して行うもの又は連続せず行なうものであってもよく、二回目の焙焼がアンモニウム塩交換によるナトリウム低下の後に行われ、リン変性は二回目の焙焼の前に行なってもよいし、二回目の焙焼の後に行なっても良い、リン含有超安定化希土類Y型分子篩の製造工程と、
(2)リン含有超安定化希土類Y型である上記の分子篩成分と、クレー、耐高温無機酸化物の前駆体および他の原料を均一に混合させ、噴霧成形、焙焼及び水洗によって、触媒完成品が得られる重油接触分解触媒の製造工程と
を含むことを特徴とする重油接触分解触媒の製造方法。
【請求項8】
希土類交換の際に、そのRE2O3/Yゼオライト質量比は0.005〜0.25であり、交換温度は0〜100℃であり、交換pH値は2.5〜6.0であり、交換時間は0.1〜2時間であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
希土類交換の際に、そのRE2O3/Yゼオライト質量比は0.01〜0.20であり、交換温度は60〜95℃であり、交換pH値は3.5〜5.5であり、交換時間は0.3〜1.5時間であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
リン変性は、分子篩スラリーの濃度を固形分80〜400g/Lに調整して、単体Pで計算すると、0.1重量%〜5重量%のリン含有化合物を加えて交換し、交換温度が0〜100℃であり、交換時間が0.1〜1.5時間であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
リン含有化合物はリン酸、亜リン酸、無水リン酸、リン酸水素ジアンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、亜リン酸アンモニウム、亜リン酸二水素アンモニウム、リン酸アルミニウムから選ばれるいずれか一種又は複数種であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
希土類交換と分散予備交換との間に、分子篩スラリーは洗浄、ろ過しなくてもよいし、洗浄、ろ過してもよいことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項13】
希土類交換や分散予備交換の交換過程にポット式交換、ベルト式交換及び/又はろ過ケーキ交換を採用することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項14】
希土類交換を行う際に、希土類化合物溶液を複数部に分けて、ポット式交換、ベルト式交換及び/又はろ過ケーキ交換を行い、即ち複数回の交換を行うことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項15】
分散予備交換過程において、分散剤を複数部に分けて、ポット式交換、ベルト式交換及び/又はろ過ケーキ交換を行い、即ち複数回の交換を行うことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項16】
希土類交換及び分散予備交換が複数回の交換である場合に、二種類の交換は交互に行うことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項17】
一回目の焙焼の焙焼条件は、350℃〜700℃、0〜100%水蒸気で0.3〜3.5時間焙焼することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項18】
工程(1)において、「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩が得られた後、まず「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩のスラリーをリン変性交換して、反応終了後、ろ過、洗浄してろ過ケーキが得られ、ろ過ケーキとアンモニウム塩溶液とを均一に混合させ、ろ過ケーキ交換を行い、反応終了後ろ過ケーキをフラッシュ蒸発乾燥した後、焙焼することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項19】
工程(1)において、「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩が得られた後、まず「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩のスラリーをリン変性交換して、その後アンモニウム塩溶液と均一に混合し交換を行い、反応終了後、ろ過、洗浄してろ過ケーキが得られ、ろ過ケーキをフラッシュ蒸発乾燥した後、焙焼することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項20】
工程(1)において、「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩が得られた後、まず「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩のスラリーをアンモニウム塩交換して、反応終了後、ろ過、洗浄してろ過ケーキが得られ、ろ過ケーキとリン変性溶液とを十分且つ均一に混合しろ過ケーキ交換を行い、反応終了後、ろ過ケーキをフラッシュ蒸発乾燥した後、焙焼することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項21】
工程(1)において、「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩が得られた後、まず「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩のスラリーをアンモニウム塩交換して、反応終了後、ろ過ケーキとリン変性溶液とを十分かつ均一に混合し交換を行い、その後ろ過、洗浄してろ過ケーキが得られ、最後にろ過ケーキをフラッシュ蒸発乾燥した後、焙焼することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項22】
工程(1)において、「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩が得られた後、まず「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩のスラリーをアンモニウム塩交換して、反応終了後、ろ過ケーキをフラッシュ蒸発乾燥して、焙焼した後、ろ過ケーキを再スラリー化してリン変性溶液と十分かつ均一に混合し交換を行い、その後ろ過、洗浄してろ過ケーキが得られ、最後にろ過ケーキをフラッシュ蒸発乾燥した後、焙焼することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項23】
工程(2)において、焙焼条件は、噴霧微小球を200℃〜700℃で焙焼させ、時間が0.05〜4時間であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項24】
工程(2)において、耐高温無機酸化物の前駆体は、シリカアルミナゲル、シリカゾル、アルミナゾル、シリカアルミナ複合ゾル、擬ベーマイトから選ばれる一種又は複数種であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項25】
工程(2)において、水洗条件としては、水/触媒重量が0.5〜35、水洗温度が20℃〜100℃、時間が0.1〜0.3時間であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い重油転化能を示す重油接触分解触媒およびその製造方法に関し、より詳細には、混練残渣油に適用される接触分解触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接触分解装置は、原油の重要な二次加工手段であり、それによる総合的な製品の分布が製油所の経済性を決定する。近年、原料油の重質化、劣質化の傾向が進行するに伴って、FCC触媒により強い重油転化能及び高価値製品の選択性が求められる。Y型分子篩は、重油分解触媒の分解活性の主提供者として、その活性安定性の優さ及び分解活性の高さがFCC触媒の重油転化能を決定する要因となる。
【0003】
そこで、如何にY型分子篩の分解活性及び活性安定性を向上するかに関して、国内外における関連研究機構で盛んに検討している。現在、確認される観点としては、分子篩の希土類による変性過程において多くの希土類イオンをソーダライトケージにできるだけ定位させることにより、水蒸気劣化の過程において分子篩骨格からの脱アルミニウムが抑制され、分子篩骨格の構造安定性及び活性安定性が向上されると考えられている。中国特許ZL200410058089.3には、希土類変性Y型分子篩の製造方法が公開され、当該方法は、希土類交換反応の終了後、アルカリ液を用いて系内をpH8〜11に調整した後、通常の後続処理工程を行い、当該方法で製造した分子篩希土類イオンは全てケージ(ソーダライトケージ)に定位される。中国特許ZL200410058090.6には、中国特許ZL200410058089.3における分子篩の反応性能が公開され、当該特許において、触媒反応結果によれば、希土類イオンがソーダライトケージに定位され、分子篩の構造安定性及び活性安定性が向上され、触媒の重油転化能が明らかに改良されるが、当該触媒によるコークス選択性が悪いことが明らかになる。
【0004】
中国特許ZL97122039.5には超安定化Yゼオライトの製造方法が公開され、当該方法において、Y型ゼオライトを、一種の酸溶液及び一種のアンモニウムイオン含有溶液と接触させて、高温水蒸気処理を行い、上記の酸の使用量は骨格アルミニウム1モル当たり1.5〜6モル水素イオンであり、酸溶液の濃度が0.1〜5当量/リットルであり、Y型ゼオライトと酸溶液との接触温度が5〜100℃、接触時間が0.5〜72時間であり、Y型ゼオライトとアンモニウムイオンとの重量比が2〜20である。当該特許に係る変性方法においてアンモニウムイオン含有溶液を加えることが必要であり、その目的として、分子篩における酸化ナトリウムの含有量を低下させたり、焙焼過程における分子篩構造に対して酸性ガスの破壊を低減するためであり、当該分子篩を採用して製造されたFCC触媒は、重油転化能が強く、軽質油の収率が高いという特徴を有するが、当該分子篩変性技術は以下の技術欠陥即ち、1)製造過程においてアンモニウムイオンが多く添加され、アンモニウムイオンは最終的に大気又は排水に導入されて、アンモニア窒素汚染及びその処理コストが増加すること;2)当該特許方法によって分子篩粒子凝集の問題を効果的に解決することができず、粒子凝集によって分子篩の比表面および空孔容積が低下し、分子篩交換過程における孔通路の抵抗が増加して、変性元素を分子篩ケージ内に正確に定位、定量させることが難しくになること;3)それとともに、当該特許はさらにY型ゼオライトをアンモニウムイオン含有溶液と接触させると同時に、又はその後、イオン交換で希土類イオンを導入してもよいと言及しており、当該交換過程において、アンモニウムイオンと希土類イオンとの間に競合反応が存在し、アンモニウムイオンは希土類イオンのサイトを優先的に占有して、希土類イオンが分子篩ケージ内に交換進入する抵抗を増やすとともに、希土類イオンの利用効率が低下すること、存在する。
【0005】
中国特許ZL02103909.7には、希土類含有超安定化Y型分子篩の製造方法が公開され、当該方法は、NaY分子篩に1回交換及び1回焙焼を経由させて上述のY型分子篩が得られた方法であって、NaY分子篩をアンモニウムイオン溶液に入れ、25〜100℃で化学脱アルミニウム処理(化学脱アルミニウム錯化剤にシュウ酸及び/又はシュウ酸塩が含まれ、処理時間が0.5〜5時間)を行い、その後、希土類溶液を入れて、攪拌して、シュウ酸希土類を含む希土類沈殿物を生成させ、ろ過、水洗してろ過ケーキが得られ、さらに水熱処理を行って分子篩製品を作製することを特徴とする。当該方法で製造された分子篩はある程度の耐バナジウム汚染能を有するが、その活性安定性及び分解活性が低く、原料油の重質化、劣質化する動向に満たさない。これは、主に分子篩の変性過程において希土類イオンの、分子篩スーパーケージ及びソーダライトケージにおける位置分布に関わる。当該方法によって明らかにするように、希土類イオンは二種類の形態で分子篩系に存在し、つまり、一部の希土類はイオン形態でソーダライトケージに進入し、他の一部希土類イオンは希土類酸化物(その前駆体としてはシュウ酸希土類であり、後の焙焼によって希土類酸化物に転化される)で分子篩の表面に独立で分散し、これによって、分子篩構造における希土類イオンの安定支持作用を低減するとともに、当該方法においてアンモニア窒素汚染の問題が多く存在し、加えられるシュウ酸及び/又はシュウ酸塩は、環境や人体に対して毒性が大きい。
【0006】
CN200410029875.0には希土類超安定化Y型ゼオライトの製造方法が公開され、当該方法は希土類塩とクエン酸からなる混合溶液、または無機アンモニウム塩と、希土類塩及びクエン酸からなる混合溶液を用いてゼオライトを処理する工程を含むことを特徴とする。当該方法によって、プロセスの簡略化ができ、製造されたゼオライトが分解触媒の活性構成要素となり、ガソリンが接触分解された生成物であるオレフィン含有量が低減し、及び軽質油が接触分解された生成物の収率が明らかに増加するという利点があるが、当該方法は分子篩における希土類イオンの定位について説明していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、重油転化能が強く、コークス選択性が適度で、目的とする製品の収率が高いであることを特徴とする新規な重油高効率転化接触分解触媒およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、触媒の組成において、リン含有超安定化希土類Y型分子篩を2〜50重量%、一種又は複種のほかの分子篩を0.5〜30重量%、クレーを0.5〜70重量%、耐高温無機酸化物を1.0〜65重量%、及び希土類酸化物を0.01〜12.5重量%含む重油高効率転化接触分解触媒であって、
リン含有超安定化希土類Y型分子篩は、希土類酸化物1〜20重量%、酸化ナトリウム1.2重量%以下、リン(Pで計算する)0.1〜5重量%を含有し、結晶化度が51〜69%であり、格子定数が2.449nm〜2.469nmであり、当該リン含有超安定化希土類Y型分子篩の製造工程において、希土類交換、分散予備交換が含まれており、希土類交換と分散予備交換の前後順序が限られておらず、希土類交換と分散予備交換がその間に焙焼過程がなく連続して行われ、
分散予備交換は、分子篩スラリーの濃度を固形分80〜400g/Lに調整して、分散剤を0.2重量%〜7重量%加えて分散予備交換を行い、交換温度が0〜100℃、交換時間が0.1〜1.5時間であり;
分散予備交換において、上記の分散剤は、セスバニア粉、ホウ酸、尿素、エタノール、ポリアクリルアミド、酢酸、シュウ酸、アジピン酸、ギ酸、塩酸、硝酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、安息香酸、デンプンから選ばれるいずれか一種又は複数種であり;
希土類交換、分散予備交換においてアンモニウム塩が使用されない、ことを特徴とする新規な重油高効率転化接触分解触媒を提供する。
【0009】
本発明において、希土類交換の方法、条件について特に限定されておらず、通常の方法及び条件を採用してもよい。
【0010】
さらに、本発明は、
(1)NaY分子篩(好ましくは、ケイバン比が4.0より大きく、結晶化度が70%より大きい)を原料として、希土類交換、分散予備交換を経て、さらに分子篩スラリーにろ過、水洗及び一回目の焙焼を行なって、「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩が得られ、中でも希土類交換、分散予備交換の前後順序が限られておらず、さらに「一交・一焙」希土類ナトリウムY分子篩に対してアンモニウム塩交換、リン変性及び二回目の焙焼を行って、リン含有超安定化希土類Y型分子篩が得られ、その中に、アンモニウム塩交換、リン変性の前後順序が限られておらず、アンモニウム塩交換及びリン変性過程が連続して行うもの又は連続せず行なうものであり、二回目の焙焼がアンモニウム塩交換によるナトリウム低下の後に行われ、リン変性が二回目の焙焼の前に行なってもよいし、二回目の焙焼の後に行なっても良いであるリン含有超安定化希土類Y型分子篩の製造工程と、
(2)リン含有超安定化希土類Y型である上記の分子篩成分と、クレー、耐高温無機酸化物の前駆体および他の原料を均一に混合させ、噴霧成形、焙焼及び水洗によって、触媒完成品が得られる重油接触分解触媒の製造工程と、
を含む当該重油接触分解触媒の製造方法を提供する。
【0011】
当該発明に記載する重油接触分解触媒の製造過程における工程(1)に、即ちリン含有超安定化希土類Y型分子篩が得られる場合、NaY分子篩希土類交換と分散予備交換との間に、分子篩スラリーは洗浄、ろ過しなくてもよいし、洗浄、ろ過してもよい。希土類交換の時に、そのRE
2O
3/Yゼオライト(質量)は0.005〜0.25であるのが好ましく、0.01〜0.20が最も好ましく、交換温度は0〜100℃であり、60〜95℃が最も好ましく、交換pH値は2.5〜6.0であり、3.5〜5.5が最も好ましく、交換時間は0.1〜2時間であり、0.3〜1.5時間が最も好ましい。分散予備交換の時に、分散剤の添加量は0.2重量%〜7重量%であり、0.2重量%〜5重量%が最も好ましく、交換温度は0〜100℃であり、60〜95℃が最も好ましく、交換時間は0.1〜1.5時間である。変性された分子篩スラリーはろ過、水洗を経てろ過ケーキが得られ、得たれたろ過ケーキを、その水分含有量が30%〜50%となるようにフラッシュ乾燥して、最後焙焼を行い、一回目の焙焼条件は通常の条件を適用してもよく、例えば、350℃〜700℃、0〜100%水蒸気で0.3〜3.5時間焙焼し、好ましくは450℃〜650℃、15〜100%水蒸気で0.5〜2.5時間焙焼することにより、「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムY分子篩が得られる。
【0012】
本発明の分子篩の製造工程において、アンモニウム塩交換、リン変性をさらに含み、中でもアンモニウム塩交換、リン変性の前後順序が限られておらず、アンモニウム塩交換及びリン変性過程が連続して行うもの又は連続せず行なうものであり、その間に焙焼過程が存在するか、又は存在しない。本発明において、希土類交換、アンモニウム塩交換、リン変性、焙焼(一回目の焙焼、二回目の焙焼)はいずれも当分野でよく知られている交換変性、超安定化過程に利用する条件を採用してもよく、本発明ではそれについて限定していない。
【0013】
好ましくは、リン変性の条件として、分子篩スラリーの濃度を固形分80〜400g/Lに調整して、0.1重量%〜5重量%(単体Pで計算する)のリン含有化合物を加えて交換し、交換温度が0〜100℃であり、交換時間が0.1〜1.5時間である。交換工程において、前記リン含有化合物はリン酸、亜リン酸、無水リン酸、リン酸水素ジアンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、亜リン酸アンモニウム、亜リン酸二水素アンモニウム、リン酸アルミニウムから選ばれるいずれか一種又は複数種である。
【0014】
本発明におけるリン含有超安定化希土類Y型分子篩の製造工程において、「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムY分子篩が得られた後、さらにアンモニウム塩交換、リン変性を行う必要があり、アンモニウム塩交換その条件は共通な通常方法を用いてもよく、薦められた方法は以下のとおりである。「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムY分子篩に脱イオン水を加え、固形分を100〜400g/Lに調整して、NH
4+/Yゼオライト(質量)が0.02〜0.40であり、最も好ましくは0.02〜0.30であり、pH値が2.5〜5.0であり、最も好ましくは3.0〜4.5であり、60℃〜95℃で0.3〜1.5時間反応させる。リン変性においては、リン含有化合物の添加量が0.1〜5重量%(単体Pで計算する)であり、最も好ましくは0.2重量%〜4重量%(単体Pで計算する)であり、交換温度が0〜100℃であり、最も好ましくは20〜80℃であり、交換時間が0.1〜1.5時間である。反応終了した後、分子篩スラリーをろ過、水洗浄して、得られたろ過ケーキを450℃〜700℃、0〜100%水蒸気の条件で0.3〜3.5時間、最も好ましくは0.5〜2.5時間焙焼して、最後に本発明で提供する高活性超安定化希土類Y型分子篩が得られる。
【0015】
本発明に記載する超安定化希土類Y型分子篩の「一交・一焙」過程において、希土類交換及び分散予備交換の交換過程にポット式交換、ベルト式交換及び/又はろ過ケーキ交換を採用してもよい。希土類交換を行う時に、以下のように行ってもよい。即ち、希土類の合計量が変化しないことを前提として、希土類化合物溶液を複数部に分けて、ポット式交換、ベルト式交換及び/又はろ過ケーキ交換、即ち複数回の交換を行ってもよい。同様に、分散予備交換過程において、分散剤の合計量が変化しないことを前提として、分散剤を複数部に分けて、ポット式交換、ベルト式交換及び/又はろ過ケーキ交換を行ってもよい。希土類交換及び分散予備交換は複数回の交換である場合に、二種類の交換は交互に行うことができる。
【0016】
本発明に記載の希土類化合物は、塩化希土類や硝酸希土類や硫酸希土類であり、塩化希土類や硝酸希土類が好ましい。
【0017】
本発明に記載の希土類は、ランタンリッチ希土類やセリウムリッチ希土類でもよく、純ランタンや純セリウムでもよい。
【0018】
本発明に記載の分散予備交換過程において、上記の分散剤は、セスバニア粉、ホウ酸、尿素、エタノール、ポリアクリルアミド、酢酸、シュウ酸、アジピン酸、ギ酸、塩酸、硝酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、安息香酸、デンプンから選ばれる一種又は一種以上のものであり、二種又は二種以上が好ましい。
【0019】
本発明に記載の触媒組成において、ほかの分子篩は、Y型ゼオライト、Lゼオライト、ZSM-5ゼオライト、βゼオライト、リン酸アルミニウムゼオライト、Ωゼオライトから選ばれる一種又は一種以上ものであり、好ましいのはY型ゼオライト、ZSM-5ゼオライト、βゼオライト、或はHY、USY、REY、REHY、REUSY、H-ZSM-5、Hβを含む上記のゼオライトの通常の物理又は化学変性されたものである。
【0020】
本発明に記載のクレーは、カオリン、ハロイサイト、モンモリロナイト、セピオライト、パーライトなどから選ばれる一種又は一種以上のものであり、上記の耐高温無機酸化物は、Al
2O
3、SiO
2、SiO
2-Al
2O
3、AlPO
4から選ばれる一種又は一種以上のものであり、その前駆体は、シリカアルミナゲル、シリカゾル、アルミナゾル、シリカアルミナ複合ゾル、擬ベーマイトから選ばれる一種又は複数種であってもよい。
【0021】
本発明に記載の噴霧条件は通常分解触媒を製造する操作条件であり、本発明では、何ら制限がなく、後処理過程は従来技術と同じであり、触媒焙焼、水洗、乾燥などを含み、中でも焙焼について、噴霧微小球サンプルを200℃〜700℃、より好ましく300℃〜650℃で、0.05〜4時間、好ましく0.1〜3.5時間で焙焼させることが好ましく、水洗条件は、水/触媒重量が0.5〜35、水洗温度が20℃〜100℃、時間が0.1〜0.3時間であることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の実施例により本発明の特徴をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限られていない。
【0023】
(一)実施例に用いられる分析及び評価方法について
【0024】
1. 格子定数(a
0):X線回折法。
2. 結晶化度(C/C
0):X線回折法。
3. ケイバン比:X線回折法。
4. Na
2O含有量:炎光光度法。
5. RE
2O
3含有量:比色法。
6. P含有量:分光光度法
7. マイクロ反応活性(Micro Activity):サンプルを予め800℃、100%水蒸気条件で4時間処理させる。反応原料は大港軽質ディーゼルであり、反応温度が460℃、反応時間が70秒、触媒充填量が5.0g、触媒/オイル重量比が3.2、合計転化率をマイクロ反応活性とする。
8. ACE重油マイクロリアクター:反応温度が530℃、触媒/オイル比が5、原料油は新疆油を30%混練する減圧残渣油である。
【0025】
(二)実施例に用いられる原料の仕様について
【0026】
1. NaY分子篩:NaY-1(ケイバン比4.8、結晶化度92%)、NaY-2(ケイバン比4.1、結晶化度83%)、蘭州石化社触媒工場製。
2. 超安定化一交・一焙分子篩サンプル:結晶化度60%、酸化ナトリウム4.3m%、蘭州石化社触媒工場製。
3. 希土類溶液:塩化希土類(希土類酸化物
277.5g/l)、硝酸希土類(希土類酸化物
252g/l)、いずれも工業製品であり、蘭州石化社触媒工場から得られるもの。
4. セスバニア粉、ホウ酸、尿素、エタノール、ポリアクリルアミド、シュウ酸、アジピン酸、酢酸、ギ酸、塩酸、硝酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、デンプンはいずれも化学純であり、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、リン酸、亜リン酸、無水リン酸、リン酸水素ジアンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、亜リン酸アンモニウム、亜リン酸二水素アンモニウム、リン酸アルミニウムはいずれも工業製品である。
5. 擬ベーマイト(熱灼減量36.2%)、カオリン(熱灼減量16.4%)、ハロイサイト(熱灼減量21.4%)、モンモリロナイト(熱灼減量15.8%)、パーライト(熱灼減量17.6%)は、固体であり;アルミニウムゾルは酸化アルミニウムを23.0重量%含み;シリカゾルはシリカを24.5重量%含み、いずれも工業合格品である。
6. REY、REHY、USY、REUSY分子篩は、いずれも合格工業品であり、蘭州石化社触媒工場製;βゼオライトは、工業合格品、撫順石化社製;H-ZSM-5は、工業合格品、上海復旦大学製。
【実施例】
【0027】
[実施例 1]
【0028】
加熱ジャケット付の反応槽に、NaY-1分子篩3000g(無水ベース)及び一定量の脱イオン水を順に添加して固形分220g/Lのスラリーを調製し、ホウ酸82g及びセスバニア粉105gを入れた後、85℃に昇温し、攪拌下で0.5時間交換反応させた後、ろ過、洗浄して、得られたろ過ケーキを反応槽に置き、その後塩化希土類1.67リットルを入れ、系内pH=4.0に調節して、80℃に昇温し、0.3時間交換反応させて、得られたろ過ケーキを、その水分含有量が30%〜50%となるようにフラッシュ乾燥して、最後に70%水蒸気、670℃で1.0時間焙焼して、「一交・一焙」希土類ナトリウムYが得られた。加熱ジャケット付の反応槽に、「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムY分子篩500g(無水ベース)及び一定量の脱イオン水を添加して固形分120g/Lのスラリーを調製し、硫酸アンモニウム120gを入れて系内pH=4.2に調節して、90℃に昇温し、0.8時間交換させた後、ろ過、洗浄して、ろ過ケーキをスラリー化してリン酸水素ジアンモニウム115gを入れて、均一に混合した後80%水蒸気、560℃で2.5時間焙焼して、本発明に記載のリン含有希土類超安定化Y分子篩活性成分が作製され、変性分子篩A-1と表記する。
【0029】
加熱水浴付の反応槽に、水4.381リットル、カオリン1062g、酸化アルミニウム986g及び塩酸63.5mlを添加して均一に混合させ、1時間攪拌した後、変性分子篩A-1 448g、H-ZSM-5 63g、REUSY 755gを順に添加し、均一に混合された後アルミニウムゾル1500gを徐々に加えてゲル化し、噴霧成形を経て、得られた微小球を400℃で0.5時間焙焼させた。焙焼された微小球2kgを取り、脱イオン水15kgを入れて60℃で15分間洗浄し、ろ過乾燥して本発明で製造される分解触媒が得られ、Aと表記する。
【0030】
[実施例 2]
【0031】
加熱ジャケット付の反応槽に、NaY-1分子篩3000g(無水ベース)及び一定量の脱イオン水を順に添加して固形分360g/Lのスラリーを調製し、硝酸希土類0.82リットルを入れ、系内pH=3.3に調節して、80℃に昇温し、1.5時間交換反応させた後、ろ過、洗浄して、得られたろ過ケーキを反応槽に入れ、さらにポリアクリルアミド202g及びサリチル酸30gを入れた後、78℃に昇温して分散交換を行い、攪拌下で0.5時間交換反応させて、得られたろ過ケーキを、その水分含有量が30%〜50%になるようにラッシュ乾燥して、最後に30%水蒸気、630℃で1.8時間焙焼して、「一交・一焙」希土類ナトリウムYが作製された。加熱ジャケット付の反応槽に、「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムY分子篩500g(無水ベース)及び脱イオン水を入れて、固形分370g/Lのスラリーを調整し、硫酸アンモニウム200gを入れて系内pH=3.6に調節して、90℃に昇温し、1.2時間交換させた後、リン酸水素ジアンモニウム64gを入れ、系内pH=3.6に調節して、90℃までに昇温し、1.2時間交換反応させた後、ろ過、洗浄して、ろ過ケーキを20%水蒸気、600℃で0.5時間焙焼して、その後、ろ過、洗浄して、ろ過ケーキを20%水蒸気、600℃で0.5時間焙焼して、本発明に記載のリン含有希土類超安定化Y分子篩活性成分が作製され、変性分子篩B-1と表記する。
【0032】
加熱水浴付の反応槽に、水4.620リットル、カオリン1024g、擬ベーマイト971g及び塩酸90.8mlを添加して均一に混合させ、1時間攪拌した後、変性分子篩B-1 338g、βゼオライト129g、REHY 806gを順に添加し、均一に混合された後アルミニウムゾル1304gを徐々に加えてゲル化し、噴霧成形を経て、得られた微小球を400℃で1.0時間焙焼させた。焙焼された微小球2kgを取り、脱イオン水20kgを入れて35℃で40分間洗浄し、ろ過乾燥して本発明で製造される分解触媒が得られ、Bと表記する。
【0033】
[実施例 3]
【0034】
加熱ジャケット付の反応槽に、NaY-1分子篩3000g(無水ベース)及び脱イオン水を順に添加して固形分150g/Lのスラリーを調製し、塩酸43gを入れて、85℃で1時間反応させた後、さらに塩化希土類1.68リットルを添加して系内pH=3.7に調節して、90℃に昇温し、1時間交換反応させた後、分子篩スラリーをろ過し、分散剤ベルト式交換を行い、ベルト式交換の条件としては:35gシュウ酸を、pH値=3.4の溶液になるように調製するとともに、85℃に昇温し、ベルト式ろ過機の真空度を0.04とし、その後得られたろ過ケーキを、その水分含有量が30%〜50%となるようにフラッシュ乾燥して、最後に10%水蒸気、510℃で2.0時間焙焼して、「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムYが作製された。加熱ジャケット付の反応槽に、「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムY分子篩500g(無水ベース)及び脱イオン水を入れて固形分145g/Lのスラリーを調製し、硫酸アンモニウム80gを入れて系内pH=3.5に調節して、90℃に昇温し、1.2時間交換させた後、ろ過、洗浄して、ろ過ケーキを50%水蒸気、650℃で2時間焙焼した後、再スラリー化してリン酸二水素アンモニウム110gを入れて、均一に混合させ、1時間交換させた後ろ過、洗浄、乾燥して、本発明に記載のリン含有希土類超安定化Y分子篩活性成分が作製され、変性分子篩C-1と表記する。
【0035】
加熱水浴付の反応槽に、水4.854リットル、ハロイサイト1125g、擬ベーマイト825g及び塩酸51.4mlを添加して均一に混合させ、1時間攪拌した後、変性分子篩C-1 406g及びUSY 903gを順に添加し、均一に混合された後シリカゾル1224gを徐々に加えてゲル化し、噴霧成形を経て、得られた微小球を600℃で0.3時間焙焼させた。焙焼された微小球2kgを取り、脱イオン水15kgを入れて80℃で30分間洗浄し、ろ過乾燥して本発明で製造される分解触媒が得られ、Cと表記する。
【0036】
[実施例 4]
【0037】
加熱ジャケット付の反応槽に、NaY-1分子篩3000g(無水ベース)及び一定量の脱イオン水を順に添加して固形分320g/Lのスラリーを調製し、硝酸30gを入れて、85℃に昇温し、攪拌下で0.8時間反応させた後、さらに硝酸希土類0.95リットルを添加して系内pH=3.3に調節して、80℃に昇温し、1.8時間交換反応させた後、最後にデンプン62gを入れて80℃で0.5時間反応させて、反応した後ろ過、洗浄して、得られたろ過ケーキを、その水分含有量が30%〜50%となるようにフラッシュ乾燥して、最後に60%水蒸気、560℃で2時間焙焼して、「一交・一焙」希土類ナトリウムYが作製された。加熱ジャケット付の反応槽に、「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムY分子篩500g(無水ベース)及び脱イオン水を添加して固形分280g/Lのスラリーを調製し、硫酸アンモニウム130gを入れて系内pH=4.0に調節して、90℃に昇温し、0.5時間交換させた後、ろ過、洗浄して、リン酸水素ジアンモニウムを55g入れて、2時間反応させた後、ろ過、洗浄して、ろ過ケーキを50%水蒸気、650℃で2時間焙焼して、本発明に記載のリン含有希土類超安定化Y分子篩活性成分が作製され、変性分子篩D-1と表記する。
【0038】
加熱水浴付の反応槽に、水4.577リットル、カオリン1055g、酸化アルミニウム983g及び塩酸63.5mlを添加して均一に混合させ、1時間攪拌した後、変性分子篩D-1 892g、ZSM-5ゼオライト63g、USY 118g及びREY 188gを順に添加し、均一に混合された後アルミニウムゾル1500gを徐々に加えてゲル化し、噴霧成形を経て、得られた微小球を400℃で0.5時間焙焼させた。焙焼された微小球2kgを取り、脱イオン水10kgを入れて40℃で20分間洗浄し、ろ過乾燥して本発明で製造される分解触媒が得られ、Dと表記する。
【0039】
[実施例 5]
【0040】
加熱ジャケット付の反応槽に、NaY-1分子篩3000g(無水ベース)及び一定量の脱イオン水を順に添加して固形分350g/Lのスラリーを調製し、クエン酸42g及びセスバニア粉28gを入れた後、82℃に昇温し、攪拌下で1.3時間交換反応させた後、硝酸希土類0.56リットルを添加して、85℃で0.8時間交換反応させた後、分子篩スラリーをろ過し、ベルト式交換を行い、ベルト式交換の条件としては:硝酸希土類溶液を88℃に昇温し、交換pH値が4.7となり、硝酸希土類の添加量はRE
2O
3/Yゼオライト(質量)が0.04であり、ベルト式ろ過機の真空度が0.03であり、その後得られたろ過ケーキを、その水分含有量が30%〜50%となるようにフラッシュ乾燥して、最後に80%水蒸気、530℃で1.5時間焙焼して、「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムYが作製される。加熱ジャケット付の反応槽に、「一交・一焙」超安定化希土類ナトリウムY分子篩500g(無水ベース)及び脱イオン水を添加して固形分150g/Lのスラリーを調製し、硫酸アンモニウム100gを添加し、系内pH=4.0に調節して、90℃に昇温し、1時間交換させた後、ろ過、洗浄して、ろ過ケーキを60%水蒸気、620℃で2時間焙焼した後、ろ過ケーキを再スラリー化してリン酸水素ジアンモニウムを55g入れて均一に混合させ、90℃の温度で1.5時間反応させた後、100%水蒸気、620℃で2時間焙焼して、本発明に記載のリン含有希土類超安定化Y分子篩活性成分が作製され、変性分子篩E-1と表記する。
【0041】
加熱水浴付の反応槽に、水6.5リットル、カオリン995g、酸化アルミニウム676g及び塩酸130mlを添加して均一に混合させ、1時間攪拌した後、変性分子篩E-1 558g、H-ZSM-5 19g、REUSY 830gを順に添加し、均一に混合された後アルミニウムゾル1359gを徐々に加えてゲル化し、噴霧成形を経て、得られた微小球を500℃で0.6時間焙焼させた。焙焼された微小球2kgを取り、脱イオン水19kgを入れて80℃で10分間洗浄し、ろ過乾燥して本発明で製造される分解触媒が得られ、Eと表記する。
【0042】
[比較例1]
【0043】
REUSY分子篩の製造方法は、実施例3に示す方法と類似し、塩酸及びシュウ酸を加えない以外に、実施例3と同一であり、得られた超安定化希土類Y型分子篩の番号がF-1であり、得られた触媒の番号がFである。
【0044】
[比較例2]
【0045】
本比較例はCN200510114495.1に記載する分子篩の製造方法を用いて、当該分子篩の反応性能を考察し、触媒の製造工程は実施例5と同一である。
【0046】
蘭州石化社触媒工場で水熱法によって生産された超安定化一交・一焙分子篩サンプル(Na
2O含有量1.4重量%、RE
2O
3含有量8.6重量%、格子2.468nm、相対結晶化度62%)を3000g(無水ベース)取り、3リットルの2Nシュウ酸水溶液に入れて均一に混合攪拌し、90〜100℃に昇温して1時間反応させた後、ろ過水洗して、得られたろ過ケーキを脱イオン水6リットルに置き、硝酸希土類溶液1.46リットルを入れて、90〜95℃に昇温し1時間反応させた後、ろ過水洗して、ろ過ケーキを120℃で乾燥して、当該比較例分子篩サンプルが得られ、H-1と表記する。
【0047】
加熱水浴付の反応槽に、水6.5リットル、カオリン995g、酸化アルミニウム676g及び塩酸130mlを添加して均一に混合させ、1時間攪拌した後、変性分子篩H-1 558g、H-ZSM-5 19g、REUSY 830gを順に添加し、均一に混合された後アルミニウムゾル1359gを徐々に加えてゲル化し、噴霧成形を経て、得られた微小球を500℃で0.6時間焙焼させた。焙焼された微小球2kgを取り、脱イオン水19kgを入れて80℃で10分間洗浄し、ろ過乾燥して比較例の分解触媒が得られ、Hと表記する。
【0048】
[比較例3]
【0049】
REUSY分子篩の製造方法は、実施例5に示す方法と類似し、クエン酸及びセスバニア粉を加えない以外に、実施例5と同一であり、得られた超安定化希土類Y型分子篩の番号がG-1であり、得られた触媒の番号がGである。
【0050】
表1に本発明実施例及び比較例で得られる超安定化希土類Y型分子篩の理化学的性質を示す。分析の結果により、新規な分子篩は、比較例と比べて、構造安定性が良く、粒子粒度が小さいという特徴を具備する。
【0051】
【表1】
【0052】
表2に実施例1〜5及び比較例で製造された触媒の反応性能の評価結果を示す。
【0053】
【表2】
【0054】
ACE重油のマイクロ反応活性評価結果から、本発明方法で製造される触媒を使用する場合、比較触媒と比べて、優れた重油転化能及びコークス選択性を有し、液体合計収率及び軽質油収率が比較触媒より明らかに高いであることを分かる。表4は触媒Bライザー評価結果であり、本発明触媒は、比較触媒Gと比べて、液体合計収率が0.97%向上し、軽質油収率が0.77%増加し、ガソリン性質がほぼ一致する。
【0055】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に記載する新規な重油触媒の主活性成分の一つとしては、高分解活性の安定性りん含有希土類超安定化Y型分子篩であり、希土類変性製造過程において当該分子篩は分散剤を用いてNaY分子篩を予備分散させて、分子篩粒子の間の凝集度を低減し、より多くの分子篩表面に希土類イオンとを接触させ、交換過程において希土類イオンの抵抗を低減し、より多い希土類イオンを分子篩ケージ内に交換進入させ、後続の水蒸気焙焼過程においてソーダライトケージに遷移して、分子篩の構造安定性及び活性安定性を高める。希土類イオンはソーダライトケージに定位し、スーパーケージ及び分子篩表面に希土類イオンがなく、これによって、当該箇所の酸性強度と密度を低下し、当該活性サイトにおけるコークス生成確率を低減し、触媒の重油転化能とコークス選択性との矛盾をうまく解決した。