特許第5921786号(P5921786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921786
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】太陽光発電管理装置
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20160510BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20160510BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   H02S50/00
   H02J3/38 130
   H02J7/35 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-547797(P2015-547797)
(86)(22)【出願日】2014年11月14日
(86)【国際出願番号】JP2014080142
(87)【国際公開番号】WO2015072531
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2015年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-236976(P2013-236976)
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303041294
【氏名又は名称】株式会社エプセル
(73)【特許権者】
【識別番号】512255550
【氏名又は名称】株式会社エプセム
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】那須野 長三
(72)【発明者】
【氏名】東 日出市
(72)【発明者】
【氏名】藤井 学
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0084027(US,A1)
【文献】 特表2013−541930(JP,A)
【文献】 特開2013−219211(JP,A)
【文献】 特開2010−288393(JP,A)
【文献】 特開2014−089998(JP,A)
【文献】 特開2013−113739(JP,A)
【文献】 特開2012−124188(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/124973(WO,A1)
【文献】 特開2014−75878(JP,A)
【文献】 メガソーラー向けストリング監視システム,SEIテクニカルレビュー,日本,住友電気工業株式会社,2013年 7月,No.183,pp.162-163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/00 − 50/15
H02J 3/38
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のソーラーパネルを用いた太陽光発電システムを管理する太陽光発電管理装置であって、
単一の前記ソーラーパネル又は所定数のソーラーパネルからなるパネル群のいずれかを単位発電モジュールとして、複数の前記単位発電モジュールの出力電流値又は出力電圧値をそれぞれ検知する出力検知器と、
前記単位発電モジュールの出力配線を、売電側配線及び蓄電側配線のいずれかに接続するように切り替える切り替え装置と、
前記出力検知器と接続され、前記出力検知器からの検知情報を受け取って前記太陽光発電システムの稼動状況をディスプレイに表示させる計算機と、を備え、
前記計算機は、
前記出力検知器の検知情報を取得する検知情報取得手段と、
前記検知情報を利用して前記切り替え装置を制御する切り換え制御手段と、
前記ディスプレイに対して、複数の前記単位発電モジュールに対応する複数の表示枠を同時に表示させる表示管理手段と、
前記検知情報取得手段が得た前記検知情報のレベルに対応して、前記表示枠内に表示させる情報の色レベルを設定する表示色設定手段と、
を有し、
前記ディスプレイの前記複数の表示枠内の色レベルによって、複数の前記単位発電モジュールの稼動状況を視覚的に監視可能にし、
前記切り換え制御手段は、前記売電側配線の売電上限値を参照して、複数の前記単位発電モジュールの出力合計が前記売電上限値に近似するように、複数の前記単位発電モジュールの中から一部の前記単位発電モジュールを選択して前記売電側配線に接続し、一方、残部の前記単位発電モジュールを前記蓄電側配線に接続するように切り替えるよう前記切り替え装置を制御する
ことを特徴とする太陽光発電管理装置。
【請求項2】
前記一部の前記単位発電モジュールの出力は、前記売電側配線を介して共通のパワーコンディショナーに供給され、
前記残部の前記単位発電モジュールの出力は、前記蓄電側配線を介して共通のバッテリーに供給されることを特徴とする、
請求項1に記載の太陽光発電管理装置。
【請求項3】
前記計算機は、
前記単位発電モジュールの異常を検知するための異常条件を設定する異常条件設定手段と、
前記検知情報が前記異常条件を満たすか否か判定し、前記異常条件を満たす場合は前記表示枠内に異常情報を表示させる異常判定手段を備えることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の太陽光発電管理装置。
【請求項4】
前記計算機の前記異常条件設定手段は、
前記単位発電モジュール毎に異なる条件を設定可能とすることを特徴とする、
請求項に記載の太陽光発電管理装置。
【請求項5】
前記計算機の前記異常条件設定手段は、
特定の前記単位発電モジュールの前記異常条件として、特定の前記単位発電モジュールに隣接する前記単位発電モジュールの前記検知情報を用いることを特徴とする、
請求項又はに記載の太陽光発電管理装置。
【請求項6】
前記計算機の前記異常条件設定手段は、
特定の前記単位発電モジュールの前記異常条件として、特定の前記単位発電モジュールの過去の前記検知情報を用いることを特徴とする、
請求項乃至のいずれかに記載の太陽光発電管理装置。
【請求項7】
複数の前記単位発電モジュールの出力配線を集約する接続箱を備え、
前記接続箱内に、前記出力配線の出力電流値又は出力電圧値を検知する前記出力検知器を一緒に収容させることを特徴とする、
請求項1乃至のいずれかに記載の太陽光発電管理装置。
【請求項8】
前記計算機における前記表示管理手段は、
現地の単位発電モジュールの配置レイアウトと一致する状態で、前記ディスプレイに複数の前記表示枠を表示させることを特徴とする、
請求項1乃至のいずれかに記載の太陽光発電管理装置。
【請求項9】
前記出力検知器と前記計算機を無線通信によって接続する無線通信端末を備えることを特徴とする、
請求項1乃至のいずれかに記載の太陽光発電管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のソーラーパネルを用いた太陽光発電システムを管理する太陽光発電管理装置に関し、例えば、多数のソーラーパネルを用いるいわゆるメガソーラーに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境保全の観点から、住宅用途や産業用途として複数のソーラーパネルを用いた太陽光発電システムが利用されている。例えば住宅用途の場合は、屋根に太陽光発電システムを設置し、発電された電力を日常生活で利用し、余剰電力を電力会社に売電する。
【0003】
近年、電力供給時の環境負荷を一層軽減させるために、広大な土地に数百から数千枚のソーラーパネルを配置するメガソーラーが注目されている。このメガソーラーは、例えば、出力1メガワットを超える大規模な太陽光発電システムであり、再生可能エネルギーの基幹電源として期待される。日本国では、再生可能エネルギーの固定価格買取制度もあり、これによって、メガソーラーで発電された電力を、電力会社に一定の金額で買い取らせることができる。このメガソーラーは、遊休地の有効活用にもつながるので、自治体が民間企業と提携して事業を展開する動きもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メガソーラーでは、大量のソーラーパネルの全体として出力を管理している。例えば、1000枚のソーラーパネルを用いたメガソーラーの場合、仮に1枚のソーラーパネルの出力が定格の50%まで低下したとしても、メガソーラー全体としては0.05%程度の出力低下にとどまり、そもそも問題にならない。なぜなら、ソーラーパネルのメーカー保証は、10年間で10%未満の出力低下となっており、年間1%未満の品質劣化を許容しているからである。換言すると、1000枚のソーラーパネルを用いたメガソーラーの場合、年間10枚分相当のソーラーパネルの出力停止は、品質保証の範囲内と考えることができる。
【0005】
一方、投資費用の回収効率を高めたいメガソーラーの運営者は、メーカー保証の許容範囲内であってもソーラーパネルのメンテナンスを丁寧に行い、発電量を常に高く維持することを望む。しかしながら、従来のメガソーラーでは、どのソーラーパネルに異常が生じているかを簡単に判断することができない。だからといって、数百から数千枚のソーラーパネルを現地でチェックすることは、作業負担が膨大となり現実的ではない。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、太陽光発電システムのソーラーパネルのメンテナンスを容易化する太陽光発電管理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明は、複数のソーラーパネルを用いた太陽光発電システムを管理する太陽光発電管理装置であって、単一の前記ソーラーパネル又は所定数のソーラーパネルからなるパネル群のいずれかを単位発電モジュールとして、複数の前記単位発電モジュールの出力電流値又は出力電圧値をそれぞれ検知する出力検知器と、前記出力検知器と接続され、前記出力検知器からの検知情報を受け取って前記太陽光発電システムの稼動状況をディスプレイに表示させる計算機と、を備え、前記計算機は、前記出力検知器の検知情報を取得する検知情報取得手段と、前記ディスプレイに対して、複数の前記単位発電モジュールに対応する複数の表示枠を同時に表示させる表示管理手段と、前記検知情報取得手段が得た前記検知情報のレベルに対応して、前記表示枠内に表示させる情報の色レベルを設定する表示色設定手段と、を有し、前記ディスプレイの前記複数の表示枠内の色レベルによって、複数の前記単位発電モジュールの稼動状況を視覚的に監視可能にすることを特徴とする、太陽光発電管理装置である。
【0008】
上記太陽光発電管理装置に関連して、前記計算機は、前記単位発電モジュールの異常を検知するための異常条件を設定する異常条件設定手段と、前記検知情報が前記異常条件を満たすか否か判定し、前記異常条件を満たす場合は前記表示枠内に異常情報を表示させる異常判定手段を備えることを特徴とする。
【0009】
上記太陽光発電管理装置に関連して、前記計算機の前記異常条件設定手段は、前記単位発電モジュール毎に異なる条件を設定可能とすることを特徴とする。
【0010】
上記太陽光発電管理装置に関連して、前記計算機の前記異常条件設定手段は、特定の前記単位発電モジュールの前記異常条件として、特定の前記単位発電モジュールに隣接する前記単位発電モジュールの前記検知情報を用いることを特徴とする。
【0011】
上記太陽光発電管理装置に関連して、前記計算機の前記異常条件設定手段は、特定の前記単位発電モジュールの前記異常条件として、特定の前記単位発電モジュールの過去の前記検知情報を用いることを特徴とする。
【0012】
上記太陽光発電管理装置に関連して、複数の前記単位発電モジュールの出力配線を集約する接続箱を備え、前記接続箱内に、前記出力配線の出力電流値又は出力電圧値を検知する前記出力検知器を一緒に収容させることを特徴とする。
【0013】
上記太陽光発電管理装置に関連して、前記単位発電モジュールの出力配線を、売電側配線及び蓄電側配線のいずれかに接続するように切り替える切り替え装置を備え、前記計算機は更に、前記検知情報を利用して前記切り替え装置を制御する切り換え制御手段を有することを特徴とする。
【0014】
上記太陽光発電管理装置に関連して、前記計算機の前記切り替え制御手段は、前記売電側配線の売電上限値を参照して、複数の前記単位発電モジュールの出力合計が前記売電上限値に近似するように、前記切り替え装置を制御することを特徴とする。
【0015】
上記太陽光発電管理装置に関連して、前記計算機における前記表示管理手段は、現地の単位発電モジュールの配置レイアウトと一致する状態で、前記ディスプレイに複数の前記表示枠を表示させることを特徴とする。
【0016】
上記太陽光発電管理装置に関連して、前記出力検知器と前記計算機を無線通信によって接続する無線通信端末を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、太陽光発電システムのソーラーパネルの稼動状況を適切に把握することができ、計画的にメンテナンスを行うことが出来るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る太陽光発電管理装置を示す図である。
図2】同太陽光発電管理装置の接続箱の内部構成を示す図である。
図3】(A)は同太陽光発電管理装置の計算機の内部構成を示すブロック図であり、(B)は同計算機の機能構成を示すブロック図である。
図4】同太陽光発電管理装置のディスプレイの表示状態を示す図である。
図5】同太陽光発電管理装置のディスプレイの表示状態を示す図である。
図6】同太陽光発電管理装置のディスプレイの表示状態を示す図である。
図7】同太陽光発電管理装置の接続箱の内部構成の他の例を示す図である。
図8】同太陽光発電管理装置のディスプレイの表示状態の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1には、本発明の実施の形態に係る太陽光発電管理装置1の全体構成が示されている。なお、この太陽光発電管理装置1は、複数のソーラーパネルPを用いた太陽光発電システムSの稼動状況を管理する。
【0021】
太陽光発電システムSは、一例として、1000枚のソーラーパネルPを備えている。ソーラーパネルPは、4枚のパネル群を一つのセットとして、単位発電モジュールMとして管理される構造となっている。即ち、4枚のソーラーパネルPは、互いに直列接続されて単位発電モジュールとしてまとめて電力を出力する。従って、太陽光発電システムSは、合計250個の単位発電モジュールMを備えることになる。なお、ここでは4枚のソーラーパネルPをモジュール化する場合を例示するが、例えば10枚〜20枚程度のソーラーパネルPを単位発電モジュールMとしてもよく、1枚のソーラーパネルPを単位発電モジュールMとしても良い。
【0022】
太陽光発電管理装置1は、単位発電モジュールMの出力配線Hが接続される接続箱10と、接続箱10で一つに集約された売電側出力配線12が接続される売電側集電箱20と、接続箱10で一つに集約された蓄電側出力配線14が接続される蓄電側集電箱60と、蓄電側集電箱で統合された出力配線62が接続されるバッテリー70と、売電側集電箱20で集約された出力配線22及びバッテリー70の出力配線72が接続されるパワーコンディショナー30と、接続箱10内の出力検出器(後述)及び切り替え装置(後述)に有線又は無線通信回線18を介して接続される計算機40と、計算機に接続されるディスプレイ50を備える。なお、ここでは特に図示しないが、バッテリー70による出力配線72側への出力電流値は、特に図示しない制御装置によって随時制御される。
【0023】
接続箱10には、各々10個の単位発電モジュールMの出力配線Hが接続される。従って、接続箱10は25個用意される。売電側集電箱20には、各々5個の接続箱10の売電側出力配線12が接続される。蓄電側集電箱60にも、各々5個の接続箱10の蓄電側出力配線14が接続される。バッテリー70は、蓄電側集電箱60のそれぞれに対応させて設けられており、パワーコンディショナー70も売電側集電箱20のそれぞれに対応させて配置される。計算機40は、全ての接続箱10に接続されている。このようにして、1000枚のソーラーパネルPの出力は、250個の単位発電モジュールM、25個の接続箱10、5個の売電側集電箱20を経て5系統に集約され、パワーコンディショナー30で交流に変換されて売電端子99に供給される。
【0024】
図2には、接続箱10の構成が拡大して示されている。接続箱10は、筐体100と、筐体100内の単位発電モジュールMの各出力配線Hに設置されるブレーカ102と、筐体100内に配置される出力検出器110と、売電側出力配線12及び蓄電側出力配線14の間で出力配線Hの接続先を切り替える切り替え装置120とを備える。
【0025】
出力検出器110は、各出力配線Hに設置されるホール素子タイプのクランプ電流センサ112と、クランプ電流センサ112のホール電圧を利用して各出力配線Hの電流値を検知する電流計114を有する。この出力検出器110によって、単位発電モジュールMのそれぞれの出力電流値を検知できることになる。出力検出器110による出力電流値情報は、計算機40に送信される。
【0026】
切り替え装置120は、計算機40と通信回線18で接続されており、計算機40からの指示情報に基づいて出力配線Hの接続先を切り替える。具体的には、単位発電モジュールM毎に独立して、その出力配線Hを売電側出力配線12及び蓄電側出力配線14のいずれかに接続するかを選択する。結果、接続箱10に接続されるすべての単位発電モジュールMの出力は、単一の売電側出力配線12、又は単一の蓄電側出力配線14のいずれかに集約されることになるが、その分配比率が柔軟に変更される。従って、特に売電側出力配線12から供給される電力に上限が設定される場合は、その上限ギリギリとなるように切り替え装置120を制御し、余剰電力をバッテリー70側に供給する。
【0027】
なお、ここでは、電流計114及び切り替え装置120が、有線の通信回線18によって計算機40と接続される場合を例示しているが、本発明はこれに限定されず、無線通信によって行うことができる。例えば、図7に示すように、接続箱10の内部又は周囲に、無線通信端末140を設置し、この無線通信端末140に、電流計114と切り替え装置120の通信回線を接続する。一方、計算機40側にも無線通信端末150を接続する。電流計114及び切り替え装置120の信号と、計算機114の信号のやり取りは、この無線通信端末140、150によって無線で行うことが好ましい。メガソーラーに対して事後的に太陽光発電管理装置1を設置する場合、接続箱10の数が増大すると共に、通信配線の距離も膨大となるが、このように無線通信回線を利用すれば、現場での施工負担を大幅に軽減することが可能となる。なお、この無線通信端末140、150は、いわゆる携帯電話会社(キャリア)が提供する無線通信回線を利用しても良いことは言うまでもない。
【0028】
また、本実施形態のように、一つの接続箱10の中に出力検出器10を一緒に収容する結果、単位発電モジュールM毎の出力電流の検知が可能となり、また、ブレーカの前後近辺を利用した電流値測定が可能となり、接続箱10のメンテナンス性が飛躍的に向上する。
【0029】
図3(A)には、計算機40のハードウエア構成が示されている。計算機40は、各種プログラムが実行されるCPU(中央演算装置)45、CPU5で必要とする情報を一時的に展開するメモリ46、プログラムや各種データが保存される情報記憶媒体47、LAN回線等が接続されて外部(出力検知器110や切り替え装置120)との通信を行う通信インターフェース48等を備えて構成され、出力検知器110からの検知情報を受け取って、太陽光発電システムSの稼動状況をディスプレイ50に表示させたり、切り替え装置120を制御したりする。なお、情報記憶媒体47は、ハードディスクや書き換え可能な不揮発性メモリ、DATやDVD等の大容量記憶メディア等で構成される。
【0030】
図3(B)は、計算機40において、情報記憶媒体47に格納される制御プログラム等がCPU45で実行されることで実現される機能ブロックが示されている。これらの各機能ブロックの詳細を、図4以降のディスプレイ50に表示されるユーザインターフェースを利用しながら説明する。
【0031】
計算機40は、検知情報取得手段200、表示管理手段210、表示色設定手段220、異常条件設定手段230、異常判定手段240、切り替え制御手段250を備える。
【0032】
検知情報取得手段200は、通信インターフェース48を介して、出力検知器110の検知情報(出力電流値の情報)を取得して、履歴を含めて情報記憶媒体47に保存する。
【0033】
表示管理手段210は、図4(A)に示されるように、ディスプレイ50に対して、複数の単位発電モジュールMに対応する複数の表示枠212を同時に表示させる。具体的にこの表示枠212の配置は、現場の単位発電モジュールMの配置構成と略同一となるように表示される。これにより、ディスプレイ50における視覚的判断と、現場でのメンテナンス行動の関連性をイメージできる。
【0034】
具体例として、例えば図8に示すように、現場の単位発電モジュールMの配置構成に加えて、道路Rや森林F、建物T、池Iなどのイメージ画像も同時に表示しておくことも好ましい。大規模な太陽光発電システムSの場合、異常が発生した単位発電モジュールMの場所を特定するまでに時間がかかるが、本実施例のように、ディスプレイ50の表示枠212のレイアウトを、現場のレイアウトと一致させておくことにより、ディスプレイ50のみで視覚的に単位発電モジュールMの場所を特定することができ、素早く目的の場所に到達できる。また、ディスプレイ50の表示枠212のレイアウトを、現場のレイアウトと一致させておくことにより、ディスプレイ50の表示枠212に示される各種情報と、現場の地理的環境を、頭の中で関連させながら分析することができる。例えば、特定のエリアの発電効率が悪い場合に、周囲の森Fの日陰が原因なのか、その他の要因なのか等について素早く分析することができる。
【0035】
表示色設定手段220は、検知情報取得手段200が得た検知情報のレベル(出力電流値)に対応して、表示枠212内に表示させる情報の色レベルを設定する。具体的に本実施形態では、四角の表示枠212内の全体を着色するように表示し、出力電流値に対応させて、色の明度、彩度、色彩の少なくともいずれかを変化させて段階的に表示する。この色段階は、出力電流値の増減を視覚的に認識できるものが良く、例えば、発電量が少ない場合は暗い色(例えば黒)、発電量が大きいときは明るい色(例えば赤)を表示すると分かり易い。同様に発電量が少ない場合は白(無彩色)、発電量が大きいときは赤(有彩色)に変化させることもできる。また、色相環を参考に色彩を変動させることも可能である。更には、表示枠内に文字(例えば出力電流値)を表示させると共に、その文字色を変化させるようにすることもできる。なお、色を表示する範囲(面積)を段階的に変化させることも、本発明の色レベルの定義に含まれる。
【0036】
このようにすることで、全ての単位発電モジュールMの稼動状況を、個別具体的かつ視覚的に監視可能となる。例えば、図4(A)では、発電量(電流値)が小さい単位発電モジュールMの表示枠212を灰色、発電量(電流値)が大きい単位発電モジュールMの表示枠212を白として表示している。この表示では、ディスプレイ50の左下の単位発電モジュールMの出力電流値が小さいことが分かる。このような事象としては、周囲の木々や建物の影になっている場合の他、ソーラーパネルPの上に落ち葉等の異物が覆いかぶさっている場合、ソーラーパネルP自体が故障している場合、配線やコネクタが断線している場合など、様々な可能性を予め想定できる。
【0037】
また、このように視覚的に表示することによって、単位発電モジュールMの異常の有無を極めて簡単に認識できる。例えば、特定の1つの単位発電モジュールMに対応する表示枠212の色が、隣接する周囲の表示枠212の色と極端に異なる場合は、その単位発電モジュールMに何らかの電気的又は機械的トラブルが生じていると運用者が推測できる。また例えば、複数の隣接する単位発電モジュールMから構成される特定エリア(複数の複数の表示枠212)の色が、その周囲の表示枠212の色と異なる場合は、個々の単位発電モジュールMのトラブルではなく、その特定エリア全体の太陽光の照射環境が悪化していると判断できる。例えば、落ち葉やシートが覆いかぶさっていたり、隣接する建物の影になっていたりすることが想定できる。
【0038】
なお、単位発電モジュールMに含まれるソーラーパネルPの数が、部分的に異なる場合は、単位発電モジュールMの出力電流値(発電量)をパネル数で除した単位パネルの出力値(平均値)を、単位発電モジュールの出力電流値に置きかえることができる。この単位パネル平均値で単位発電モジュールMに対応する表示訳212の色レベルを設定すれば良い。
【0039】
なお参考であるが、夜中で殆ど発電されない時のディスプレイ50の状態を図6(A)に、午後2時頃で最も発電量が大きい時のディスプレイ50の状態を図6(B)に示しておく。
【0040】
異常条件設定手段230は、単位発電モジュールM毎に、その異常を検知するための異常条件を設定する。そして、異常判定手段240は、検知情報が異常条件を満たすか否か判定し、異常条件を満たす場合は表示枠212内に異常情報を表示させる。異常情報としては、表示枠212内を特殊色で表示したり、色はそのままで絵柄を表示したり、警告文字を表示したり、点滅させたり等、様々な手法が考え得る。
【0041】
例えば図4(B)には、特定の単位発電モジュールMが異常条件を満たす結果となり、それに対応するディスプレイ50の特定の表示枠212Aの異常情報が表示されている場合が示されている。このように、ディスプレイ50において、異常が発生している場所を視覚的に強調表示させているので、運用者が素早く異常に気づき、即座に現地の単位発電モジュールMをメンテナンスすることができる。この際、背景の色レベルはそのまま見えるようにしておくことが、原因を推定できる点で好ましい。
【0042】
具体的に、この異常条件設定手段230は、単位発電モジュールM毎に異なる条件を設定可能となっている。異常条件の一つの例として「正午の出力電流値が所定閾値を下回る場合」という事例が挙げられる。即ち、時間軸と電流値を組み合わせた異常条件となる。この際、ある特定の単位発電モジュールMに関しては、正午になると周囲の建造物の影に入り込んでしまい、出力電流値が必ず小さくなる場合もある。このような特定の単位発電モジュールMについては、所定閾値を個別に小さく設定しておき、無駄に異常表示を行うことを回避する。また例えば特定の単位発電モジュールMについて異常が生じていることを把握しつつも、メンテナンスを行わないと判断した場合は、その異常表示を個別に解除できる。なお、このような個々の異常条件は、キーボード等の情報入力装置やディスプレイ50のタッチセンサを利用して運用者によって設定される。
【0043】
更にこの異常条件設定手段230は、特定の単位発電モジュールMの異常条件として、この単位発電モジュールMに隣接する単位発電モジュールMの検知情報(出力電流値情報)を参照している。具体的に例えば、図5(A)に示されるように、特定の単位発電モジュールMに対応する表示枠212Aの異常条件を「表示枠212Aの電流値と、それに隣接する合計8つの表示枠212Gとの出力電流値平均の差が、所定閾値を上回る場合」と設定する事例が挙げられる。このような異常条件によれば、急激な悪天候によって特定の単位発電モジュールMの出力電流値が極端に低下しても、周囲の単位発電モジュールMの出力電流値との差が小さければ、表示枠212Aの異常表示を回避できる。
【0044】
また更に、この異常条件設定手段230は、所定期間(例えば5分毎のデータ取得で過去1年間分)の出力電流値の履歴(ログ)を記憶するようにし、特定の単位発電モジュールMの異常条件として、同じ単位発電モジュールMの過去の検知情報を用いることが好ましい。具体的な異常条件として、例えば「同一時刻における過去1週間分の出力電流値平均と現在の出力電流値の差が所定閾値を上回る場合」という事例が挙げられる。このように過去直近の出力電流値のデータを用いて異常条件を設定すると、季節変動(例えば真夏と真冬)による出力電流値に期間変化が生じた場合に、異常表示となることを回避できる。同様に、ソーラーパネル自体が次第に劣化するような場合も、異常表示となることを回避できる。
【0045】
切り換え制御手段250は、単位発電モジュールM毎の検知情報(出力電流値)を利用して、接続箱10内の切り替え装置120を制御する。具体的には、何らかの故障により出力電流値の変動が大きい単位発電モジュールMは、蓄電側出力配線14を介してバッテリー70に電流を供給するようにし、売電量を安定化させるように制御することができる。とりわけ、売電側配線12において、売電上限電力(それ以上売電してはならない電力)が設定される場合は、その情報を参照して、複数の単位発電モジュールMの出力合計が売電上限値にできる限り近づくように、切り替え装置を制御する。例えば、太陽光発電システムSの総出力が売電上限値を超えている場合は、出力の小さい単位発電モジュールMから順番にバッテリー70側に切り替えて電流を供給するようにし、売電側出力値が、売電上限値より小さくなるように制御する。このようにすると、売電側に効率の良い単位発電モジュールMを自動的に割り当てることが可能となる。
【0046】
以上、本実施形態の太陽光発電管理装置1によれば、単位発電モジュールMの個々の稼動状態を、ディスプレイ50の色情報として表示させるため、稼動トラブル等の事象を極めて素早く簡単に把握することが可能になる。また、現地の単位発電モジュールMの配置と、ディスプレイ50に表示される単位発電モジュールMの配置を一致させることで、現地で迷うことなく、目的の単位発電モジュールMに到達することができ、結果としてメンテナンス時間を短縮することができる。
【0047】
更に、本実施形態の太陽光発電管理装置1によれば、単位発電モジュールMの異常を高精度に判定できるので、無駄のないメンテナンス作業を実現できる。
【0048】
また更に、本実施形態の太陽光発電管理装置1によれば、出力検知結果を利用して、売電と蓄電の配線切り替えを、単位発電モジュール毎に行うことが可能となり、全体としての出力の最適化を図ることが出来る。
【0049】
なお、ここでは特に図示しないが、計算機40で実現される機能ブロックとして、メンテナンス履歴記録手段を備えることが好ましい。このメンテナンス履歴記録手段は、各単位発電モジュールMに対応して、作業者によるメンテナンス履歴を記録・保存できるようになっている。例えば、故障により、特定のソーラーパネルPを新品に交換した場合は、性能の違いによって、その出力値が旧式のソーラーパネルPと異なる場合がある。このような場合であっても、ディスプレイ50上でメンテナンス履歴を参照することで、その出力値の違いが、パネル交換に起因するものであることを、即座に把握することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態では、出力電流値を検知する場合を例示したが、出力電圧値を検知することも勿論可能である。
【0051】
また、本発明の太陽光発電管理装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 太陽光発電管理装置
10 接続箱
20 売電側集電箱
30 パワーコンディショナー
40 計算機
50 ディスプレイ
60 蓄電側集電箱
70 バッテリー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8