(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5921789
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】光反射体材料、光反射体、及び照明器具
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20160510BHJP
F21V 3/04 20060101ALI20160510BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20160510BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20160510BHJP
【FI】
G02B5/08 A
G02B5/08 C
F21V3/04 110
F21V3/04 131
F21V3/04 300
F21S2/00 100
F21Y101:02
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-553706(P2015-553706)
(86)(22)【出願日】2015年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2015052717
【審査請求日】2015年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2014-139006(P2014-139006)
(32)【優先日】2014年7月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236609
【氏名又は名称】フドー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
(72)【発明者】
【氏名】高田 貴文
(72)【発明者】
【氏名】水口 礼子
【審査官】
池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−55785(JP,A)
【文献】
特開2015−19011(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0041929(KR,A)
【文献】
国際公開第2013/108814(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/095414(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08
F21K 9/00
F21S 2/00
F21V 3/04
F21Y 115/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射体材料であって、
前記材料は、少なくとも、
熱硬化性樹脂と、
白色系顔料
とを含み、
前記熱硬化性樹脂は、少なくとも、
イソフタル酸ジアリルと、
不飽和ポリエステル樹脂
とが用いられて構成されてなり、
(前記イソフタル酸ジアリル)/(前記不飽和ポリエステル樹脂)が40/60〜80/20(質量比)であり、
前記白色系顔料の表面には無機粉末が存在してなる
ことを特徴とする光反射体材料。
【請求項2】
(前記イソフタル酸ジアリル)/(前記不飽和ポリエステル樹脂)が40/60〜70/30(質量比)である
ことを特徴とする請求項1の光反射体材料。
【請求項3】
前記不飽和ポリエステル樹脂がイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の光反射体材料。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂は更に重合開始剤が用いられて構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの光反射体材料。
【請求項5】
前記重合開始剤は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、1〜5質量部である
ことを特徴とする請求項4の光反射体材料。
【請求項6】
前記白色系顔料は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、80〜500質量部である
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかの光反射体材料。
【請求項7】
前記白色系顔料は酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウムの群の中から選ばれる少なくとも一種である
ことを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかの光反射体材料。
【請求項8】
前記白色系顔料は酸化チタンである
ことを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかの光反射体材料。
【請求項9】
前記無機粉末はシリカ、アルミナ、及びジルコニアの群の中から選ばれる一種または二種以上である
ことを特徴とする請求項1〜請求項8いずれかの光反射体材料。
【請求項10】
前記白色系顔料の表面には有機物が存在してなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項9いずれかの光反射体材料。
【請求項11】
前記材料は離型剤を含み、
前記離型剤は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.25〜3.75質量部である
ことを特徴とする請求項1〜請求項10いずれかの光反射体材料。
【請求項12】
前記材料は補強材を含み、
前記補強材は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、75質量部以下である
ことを特徴とする請求項1〜請求項11いずれかの光反射体材料。
【請求項13】
前記材料はシランカップリング剤を含み、
前記シランカップリング剤は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.25〜12.5質量部である
ことを特徴とする請求項1〜請求項12いずれかの光反射体材料。
【請求項14】
前記材料の組成物は、30℃以下の温度において、固体である
ことを特徴とする請求項1〜請求項13いずれかの光反射体材料。
【請求項15】
無機充填材が、実質上、含まれない
ことを特徴とする請求項1〜請求項14いずれかの光反射体材料。
【請求項16】
請求項1〜請求項15いずれかの光反射体材料で構成されてなる
ことを特徴とする光反射体。
【請求項17】
請求項1〜請求項15いずれかの光反射体材料で構成されてなる光反射体を具備する
ことを特徴とする照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光反射体材料、光反射体、及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
LED照明器具の普及は目覚ましい。しかし、前記照明器具にも問題が有った。それは、初期の輝度を長く保つことが出来ていないことである。輝度低下の原因として、LEDリフレクター(光反射体)の変色による反射率の低下が挙げられる。従って、長寿命化の為には、LEDリフレクターを変色が起こり難い素材で構成することである。
【0003】
セラミックス製のLEDリフレクターが提案(特許文献1)された。
【0004】
ナイロン(ポリアミド樹脂)製のリフレクターが提案(特許文献2,3,4)された。
【0005】
ジアリルフタレート樹脂製のリフレクターが提案(特許文献5)された。
特許文献5は、「ジアリルフタレートプレポリマー、重合開始剤、酸化チタン及び光安定剤を含有し、酸化チタンが、二酸化チタン含有量として80〜97重量%に調整された酸化チタン粉末であり、かつ、その組成物中の含有量がジアリルフタレートプレポリマー100重量部に対して5〜120重量部であることを特徴とするジアリルフタレート樹脂組成物」を提案している。
【0006】
不飽和ポリエステル樹脂製のリフレクターが提案(特許文献6,7)された。
例えば、特許文献6は、「不飽和ポリエステル樹脂、重合開始剤、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材を少なくとも含む乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、前記組成物全体量に対して14〜40質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計が、前記組成物全体量に対して44〜74質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計に占める前記白色顔料の割合が30質量%以上であり、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものであることを特徴とするLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物」「前記補強材がガラス繊維であり、前記補強材の配合量が前記不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して10〜100質量部である前記LEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物」「前記LEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形してなることを特徴とするLEDリフレクター」「前記LEDリフレクターが装着されていることを特徴とするLED照明器具」を提案している。
【0007】
特許文献7は、「発光素子と、この発光素子を載置するための第1のリードと前記発光素子と電気的に接続される第2のリードとに一体化され、凹部を有する乾式不飽和ポリエステル樹脂成形体からなる第1の樹脂体と、この第1の樹脂体の前記凹部に載置された前記発光素子を被覆する第2の樹脂体とを備え、前記凹部の底面部には、前記発光素子を載置した第1のリードが露出され、かつ前記第1のリードと前記第2のリードとを絶縁する樹脂絶縁部が設けられ、前記乾式不飽和ポリエステル樹脂成形体は、不飽和ポリエステル樹脂、重合開始剤、無機充填剤、白色顔料、離型剤、および補強材を少なくとも含む乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、前記組成物全体量に対して14〜40質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計が、前記組成物全体量に対して44〜74質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計に占める前記白色顔料の割合が30質量%以上であり、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものである乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形したものであることを特徴とする表面実装型発光装置」「前記補強材がガラス繊維であり、前記補強材の配合量が前記不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して10〜100質量部であることを特徴とする前記表面実装型発光装置」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/013899号公報
【特許文献2】特開平6−200153号公報
【特許文献3】特開2002−374007号公報
【特許文献4】特開2010−100682号公報
【特許文献5】特開2008−255338号公報
【特許文献6】特許4844699号公報
【特許文献7】特許4893874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のLEDリフレクターには次の問題点が認められた。セラミックスは加工性が悪い。この為、価格が高い。従って、汎用のLEDリフレクターとしては適してない。
【0010】
特許文献2,3,4のLEDリフレクターは、熱による変色が大きかった。従って、LED照明器具の寿命が短い。
【0011】
特許文献5のLEDリフレクターは、耐熱性に劣っていた。従って、LED照明器具の寿命が短い。
【0012】
特許文献6,7のLEDリフレクターは、耐熱性に劣っていた。従って、LED照明器具の寿命が短い。
【0013】
熱硬化性エポキシ樹脂は耐熱性が良い(熱による変色が少ない)。従って、熱硬化性エポキシ樹脂製のLEDリフレクターが考えられた。エポキシ樹脂はリードフレームとの密着性が良好である。すなわち、成形時に発生するバリのフレームに対する密着性が大きい。このことは、逆に、バリの除去が困難なことを意味する。エポキシ樹脂材料の保管は低温で行う必要が有る。この為、取り扱いが厄介である。エポキシ樹脂は比較的高価である。エポキシ樹脂は射出成形が容易でない。この為、エポキシ樹脂はLEDリフレクター構成材料に適していない。
【0014】
従って、本発明が解決しようとする課題は、前記問題点を解決することである。すなわち、耐熱性・耐光性に優れ(熱・光による変色が小さい)、加工性に優れた光反射体材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決する為の研究が、鋭意、推し進められた。その結果、熱硬化性樹脂(イソフタル酸ジアリル(モノマー、又はオリゴマー)と、不飽和ポリエステル樹脂とが少なくとも用いられて構成された熱硬化性樹脂)は、耐熱性および耐光性に優れていることが判って来た。前記熱硬化性樹脂が用いられて構成されたLEDリフレクターは耐久性に優れていることが判って来た。
【0016】
前記知見に基づいて本発明が達成された。
【0017】
本発明は、
光反射体材料であって、
前記材料は、少なくとも、
熱硬化性樹脂と、
白色系顔料
とを含み、
前記熱硬化性樹脂は、少なくとも、
イソフタル酸ジアリルと、
不飽和ポリエステル樹脂
とが用いられて構成されてなり、
(前記イソフタル酸ジアリル)/(前記不飽和ポリエステル樹脂)が40/60〜80/20(質量比)である
ことを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0018】
本発明は、前記光反射体材料であって、(前記イソフタル酸ジアリル)/(前記不飽和ポリエステル樹脂)が、好ましくは、40/60〜70/30(質量比)であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0019】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、好ましくは、イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0020】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記熱硬化性樹脂は更に重合開始剤が用いられて構成されてなることを特徴とする光反射体材料を提案する。
本発明は、前記光反射体材料であって、前記重合開始剤は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、1〜5質量部であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0021】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記白色系顔料は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、80〜500質量部であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0022】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記白色系顔料は、好ましくは、酸化チタン系粉末であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
本発明は、前記光反射体材料であって、前記白色系顔料は、好ましくは、無機粉末で処理されてなることを特徴とする光反射体材料を提案する。
本発明は、前記光反射体材料であって、前記無機粉末は、好ましくは、シリカ、アルミナ、及びジルコニアの群の中から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
本発明は、前記光反射体材料であって、前記白色系顔料は、好ましくは、有機物で処理されてなることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0023】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記材料は、好ましくは、離型剤を含むことを特徴とする光反射体材料を提案する。
本発明は、前記光反射体材料であって、前記離型剤は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、0.25〜3.75質量部であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0024】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記材料は、好ましくは、補強材を含むことを特徴とする光反射体材料を提案する。
本発明は、前記光反射体材料であって、前記補強材は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、75質量部以下であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0025】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記材料は、好ましくは、シランカップリング剤を含むことを特徴とする光反射体材料を提案する。
本発明は、前記光反射体材料であって、前記シランカップリング剤は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、0.25〜12.5質量部であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0026】
本発明は、前記光反射体材料で構成されてなることを特徴とする光反射体を提案する。
【0027】
本発明は、前記光反射体材料で構成されてなる光反射体を具備することを特徴とする照明器具を提案する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の光反射体材料(樹脂組成物)は、熱や光による劣化(変色)が少ない。本発明の光反射体材料(樹脂組成物)は、保存性、ハンドリング性が良い。本発明の光反射体材料(樹脂組成物)は、トランスファー成形性や射出成形性に優れている。
本発明の光反射体は、耐熱性・耐光性に優れている。耐久性に富む。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態が説明される。
第1の本発明は光反射体材料である。前記反射体には反射板も含まれる。前記光反射体材料は、例えばLEDリフレクター構成材料である。前記材料は、少なくとも、熱硬化性樹脂と、白色系顔料とを含む。前記材料は、場合によっては、離型剤を含む。前記材料は、場合によっては、補強材を含む。前記熱硬化性樹脂は、少なくとも、不飽和ポリエステル樹脂と、イソフタル酸ジアリル[C
6H
4(COOCH
2CHCH
2)
2:1,3−ベンゼンジカルボン酸ジアリル]とが用いられて構成されたものである。本発明におけるイソフタル酸ジアリルには、モノマータイプ、オリゴマータイプ、モノマーとオリゴマーとの混合物タイプのものが有る。オリゴマーは二種以上の混合物のタイプであっても良い。本発明では何れのタイプのものが用いられても良い。前記オリゴマーは、モノマーの自己重合による二量化、三量化、…した化合物を意味する。オリゴマーには、ダイマー(dimer)、トライマー(trimer)、テトラマー(tetramer)…等が含まれる。(前記イソフタル酸ジアリル(イソフタル酸ジアリルのモノマー及びオリゴマーの群の中から選ばれる一種または二種以上))/(前記不飽和ポリエステル樹脂)は40/60〜80/20(質量比)であった。好ましくは、40/60〜70/30であった。前記不飽和ポリエステル樹脂には格別な制約は無い。多くの種類の不飽和ポリエステル樹脂が用いられる。しかし、特に好ましい不飽和ポリエステル樹脂は、イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂であった。前記イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂は加水分解が起き難かったからである。すなわち、前記イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂が用いられて構成された光反射体は、耐久性に富んでいた。前記熱硬化性樹脂は、前記不飽和ポリエステル樹脂および前記イソフタル酸ジアリルの他にも、好ましくは、重合開始剤が用いられて構成されたものである。前記重合開始剤の量は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、1〜5質量部であった。更に好ましくは、1.5質量部以上であった。更に好ましくは、3.5質量部以下であった。前記白色系顔料の量は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、80〜500質量部であった。更に好ましくは、100質量部以上であった。更に好ましくは、450質量部以下であった。白色系顔料の配合量が前記の如くであった場合、前記光反射体は、特に、耐熱性に優れ、光反射率が高かった。前記白色系顔料は、好ましくは、平均粒径が2μm以下であった。より好ましくは、平均粒径が0.1〜1μmであった。更に好ましくは、平均粒径が0.2〜0.6μmであった。前記白色系顔料は、好ましくは、酸化チタン系粉末であった。前記粉末は、好ましくは、シリカ、アルミナ、ジルコニア、シランカップリング剤及び有機物の群の中から選ばれる少なくとも一種で表面処理されたものであった。前記離型剤の量は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、0.25〜3.75質量部であった。更に好ましくは、0.75質量部以上であった。更に好ましくは、2.5質量部以下であった。前記補強材の量は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、75質量部以下であった。更に好ましくは、37.5質量部以下であった。もっと好ましくは20質量部以下であった。前記補強材の量は0であっても良い。前記補強材の量の下限値を強いて言うならば、10質量部であった。前記材料は、場合によっては、シランカップリング剤を含む。前記シランカップリング剤の量は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、0.25〜12.5質量部であった。更に好ましくは、1.25質量部以上であった。更に好ましくは、7.5質量部以下であった。
【0031】
前記特許文献6,7には、ジアリルフタレート(架橋剤)の記載が有る。しかし、ジアリルイソフタレートの記載は無い。示唆も無い。更には、ジアリルフタレートとジアリルイソフタレートとの相違についても触れられていない。本発明者の検討によれば、ジアリルフタレート(架橋剤)が用いられた光反射体は、耐熱性や耐光性が不十分であった。すなわち、変色が起き易かった。これに対して、ジアリルイソフタレートが用いられた光反射体は、耐熱性や耐光性に優れていた。すなわち、変色が起き難いものであった。
【0032】
第2の本発明は光反射体である。前記反射体には反射板も含まれる。前記光反射体は、例えばLEDリフレクターである。前記光反射体は前記光反射体材料で構成されたものである。例えば、射出成形により成形されたものである。或いは、トランスファー成形により成形されたものである。又は、圧縮成形により成形されたものである。その他の成形方法が用いられても良い。
【0033】
第3の本発明は照明器具である。前記照明器具は前記光反射体を具備する。
【0035】
前記熱硬化性樹脂を得る為、前記不飽和ポリエステル樹脂などの他にも、好ましくは、重合開始剤が用いられた。前記重合開始剤としては、好ましくは、加熱分解型の有機過酸化物が挙げられる。例えば、ジクミルパーオキサイドが挙げられる。又は、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、10時間半減期温度が95℃以上の有機過酸化物が好ましい。例えば、ジクミルパーオキサイドが挙げられる。前記重合開始剤は一種(単独)でも、二種以上が併用されても良い。前記成分を含む組成物が用いられて重合処理が行われる。これによって、前記熱硬化性樹脂が得られた。
【0036】
前記白色系顔料としては、例えば酸化チタンが挙げられる。その他にも、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの物質の中から、一種または二種以上が適宜用いられる。前記の中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムは好ましかった。二酸化チタン(TiO
2)は、特に、好ましかった。酸化チタンとしては、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルサイト型酸化チタンが挙げられる。これらの中でも熱安定性に優れたルチル型酸化チタンは特に好ましかった。白色系顔料は、好ましくは、平均粒径が2μm以下であった。より好ましくは、平均粒径が0.1〜1μmであった。更に好ましくは、平均粒径が0.2〜0.6μmであった。前記平均粒径はレーザー回折散乱法により測定された値である。前記酸化チタンの粉末は、好ましくは、シリカ、アルミナ、及びジルコニアの群の中から選ばれる少なくとも一種で表面処理されたものであった。酸化チタンは光触媒機能を有している。光反射体中に酸化チタンが含まれていると、酸化チタンの光触媒作用によって、光反射体が損傷する恐れが考えられた。ところが、前記酸化チタン粉末の表面にシリカ等が存在(付着)していた場合、光反射体中に酸化チタンが含まれていても、光反射体が損傷し難かった。その理由は、表面にシリカ等が存在していた為、酸化チタンの光触媒作用が弱くなったからであろうと想像された。前記シリカ等は、前記白色系顔料(酸化チタン)の表面に付着するものである。従って、前記シリカ等の大きさは、好ましくは、前記白色系顔料(酸化チタン)の大きさより小さい。前記シリカ等の大きさは、例えば1μm以下である。酸化チタンが脂肪酸やシランカップリング剤などで表面処理されていた場合、酸化チタンが微粒子であっても、酸化チタンは凝集が起き難かった。このようなことから、脂肪酸やシランカップリング剤などで表面処理された白色系顔料(酸化チタン)は好ましかった。
【0037】
前記特許文献6,7は、LEDリフレクター用樹脂組成物の必須成分として無機充填剤(平均粒径が10〜100μm)を挙げている。例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の粉末が必須成分であった。前記特許文献6,7は、前記平均粒径の無機充填剤を用いることによって、良好な成形性と、耐熱変色性及び耐湿性に優れたLEDリフレクターが得られたと謳っている。特許文献6,7は、無機充填剤が含まれなかった組成物(比較例1)は、成形性が悪く、総合評価では不可と謳っている。
【0038】
本発明においては、前記特許文献6,7の場合とは異なり、無機充填剤が用いられなくても、驚くべきことに、前記問題は認められなかった。この相違点は前記熱硬化性樹脂の構造の相違に起因しているのであろうと想像された。
【0039】
前記補強材としては、例えばガラス繊維が挙げられる。又は、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ワラストナイト等が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維は好ましかった。ガラス繊維としては、例えば珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラスを原料とするEガラス(電気用無アルカリガラス)、Cガラス(化学用含アルカリガラス)、Aガラス(耐酸用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)等のガラス繊維が挙げられる。これらを長繊維(ロービング)、短繊維(チョップドストランド)としたものが適宜用いられる。これらのガラス繊維に対して表面処理が施されていても良い。特に、繊維径10〜15μmのEガラス繊維をシランカップリング剤にて表面処理し、表面処理したモノフィラメントを200本、400本、又は800本を酢酸ビニル等の収束剤にて収束させる方法などが採用される。補強材が多くなった場合、反射率が低下した。従って、光反射体としての強度が確保できたならば、補強材は少ない方が好ましかった。すなわち、前記補強材の量は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、75質量部以下であった。更に好ましくは、37.5質量部以下であった。もっと好ましくは20質量部以下であった。
【0040】
前記離型剤としては、熱硬化性樹脂に用いられるワックス(例えば、脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、鉱物系などのワックス類)が挙げられる。脂肪酸系や脂肪酸金属塩系のワックスは、耐熱性に優れたLEDリフレクターが得られたことから、好ましかった。具体的には、ステアリン酸、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等)が挙げられる。離型剤は、単独で用いても良く、二種以上が併用されても良い。前記離型剤の量は、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは、0.25〜3.75質量部であった。更に好ましくは、0.75質量部以上であった。更に好ましくは、2.5質量部以下であった。離型剤の配合量を前記の如くにした場合、離型性と外観性とが共に良く、光反射率に優れた光反射体が得られた。
【0041】
前記配合成分以外にも、樹脂の硬化条件を調整する為の硬化触媒、重合禁止剤、増粘剤、その他有機系添加剤や無機系添加剤などが、必要に応じて、適宜、配合される。
【0042】
前記光反射体材料(組成物)の各成分が配合され、混合機(例えば、ミキサー、ブレンダー等)で均一に混合された後、混練機(例えば、加圧ニーダー、熱ロール、エクストルーダー等)で混練され、粉砕・整粒される。
【0043】
前記配合による樹脂組成物は、例えば乾式の樹脂組成物である。前記乾式とは30℃以下の温度範囲において固体であるものを意味する。前記乾式樹脂組成物は、粉砕加工(又は、押出しペレット加工)により粒状に加工できる。前記組成物は、粘性を有する湿式不飽和ポリエステル樹脂組成物や、エポキシ樹脂組成物等とは異なり、保存性およびハンドリング性に優れていた。これに対して、前記粘性を有する湿式不飽和ポリエステル樹脂組成物は、ペレット状に出来難かった。ハンドリング性が悪かった。射出成形機で成形する場合には、ホッパーにプランジャー等の設備を設ける必要が有った。この為、製造コストが高く付いた。
【0044】
前記光反射体は、前記熱硬化性樹脂組成物が用いられて得られる。前記樹脂組成物は、乾式組成物であり、かつ、溶融時の熱安定性が良好である。従って、前記樹脂組成物の成形には、溶融加熱成形法(例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法など)を用いることが出来る。これらの中でも、射出成形機を用いた射出成形法が特に好適である。射出成形法により、成形時間を短縮でき、かつ、複雑な形状の光反射体を簡単に製造できる。得られた光反射体は、熱による変色が小さかった。この光反射体およびLEDを具備した照明器具は、その寿命が長かった。かつ、安価である。更には、成形した光反射体のフレームに発生したバリは、例えばブラスト処理(および/またはマシニングセンター処理)により、簡単に、除去できた。例えば、ショットブラスト、サンドブラスト、ガラスビーズブラスト等を用いることが出来る。
【0045】
前記照明器具は前記光反射体を具備する。
図1はLED照明器具の概略断面図である。LEDリフレクター(光反射体)3は、リードフレーム1上に実装されたLED素子2の発光を効率よく反射する為の反射板である。その形状は、実装されるLED素子2の光量や色、指向性などを考慮して、適宜、設計される。LEDリフレクター(光反射体)3は、リードフレーム1との密着性を考慮して、リードフレーム1を抱え込む構造が好ましい。金属製のリードフレーム1を用いる場合には、LEDリフレクター3との密着性を向上させる為、トリアジン系化合物等による金属表面処理を施すことも考えられる。
【0046】
以下、本発明が具体的に説明される。下記実施例は本発明の一実施例に過ぎない。本発明は下記実施例に限定されない。すなわち、本発明の特長が大きく損なわれない変形・応用例も本発明に含まれる。
【0047】
[光反射体材料]
[不飽和ポリエステル樹脂]
A1:イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ株式会社;8510)
A2:テレフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ株式会社;8524)
[ジアリルフタレート]
B1:イソフタル酸ジアリル(ダイソー株式会社;イソダップ)
B2:フタル酸ジアリル(ダイソー株式会社;ダップ‐A)
[重合開始剤]
C:ジクミルパーオキサイド(日油株式会社;パークミルD40)
[白色系顔料]
D:酸化チタン(平均粒径0.25μm;石原産業株式会社;UT−771)表面処理;Al2O3,ZrO2、有機物
[離型剤]
E:ステアリン酸カルシウム(大日化学工業株式会社 ダイワックスC)
[補強材]
F:ガラス繊維(日東紡株式会社;CS3PE−908)
【0048】
表−1
A1 A2 B1 B2 C D E F
実施例1 25 75 2.5 150 1.25
実施例2 50 50 2.5 150 1.25
実施例3 55 45 2.5 150 1.25
実施例4 50 50 2.5 137.5 1.25 12.5
比較例1 100 2.5 150 1.25
比較例2 100 2.5 150 1.25
比較例3 50 50 2.5 150 1.25
比較例4 50 50 2.5 150 1.25
【0049】
前記成分が表−1の割合(質量部)で混練された。特許文献6,7が必須成分として挙げた無機充填剤(平均粒径が10μm以上のシリカ等)は実施例では用いられなかった。
【0050】
射出成形機(松田製作所製、100トン、熱硬化性射出成型機)が用いられた。JISK6911に準拠して、円盤状の試験片が成形(金型温度160℃、硬化時間60秒)された。この試験片が目視にて評価された。外観によって成形性が評価された。成形性が良(○)や不良(×)で表示された。これ等の結果が表−2に示される。
【0051】
前記試験片による光反射体(LEDリフレクター)の特性が調べられた。
耐熱性:150℃で500時間経過後の白度。恒温恒湿器(ESPEC製 PHP−101)が使用。
耐光性:120℃で波長300nm以上の紫外線を500時間照射後の白度。耐光性試験機(三ツワフロンテック製 スーパーウィンミニ)が使用。
白度の測定には分光測色計(コニカミノルタ製 CM−5)が用いられた。得られたL
*,a
*,b
*値より、白度(白度={(100−L
*)
2+a
*2+b
*2}
1/2)が算出された。
これ等の結果が表−2に示される。
【0052】
表−2
成形性 耐熱性 耐光性
実施例1 ○ 92.8 95.0
実施例2 ○ 94.0 95.5
実施例3 ○ 93.8 95.2
実施例4 ○ 92.5 95.0
比較例1 ○ 92.6 93.0
比較例2 × 91.8 93.1
比較例3 ○ 91.8 92.7
比較例4 ○ 91.5 92.0
実施例2(イソフタル酸ジアリル及び不飽和ポリエステル樹脂が用いられて構成された熱硬化性樹脂)と、比較例3,4(フタル酸ジアリル及び不飽和ポリエステル樹脂が用いられて構成された熱硬化性樹脂)との対比から、前記熱硬化性樹脂の構成成分としてイソフタル酸ジアリルの重要性が理解できる。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂は、熱・光による変色度が小さい。
実施例2と比較例1との対比から、熱硬化性樹脂はイソフタル酸ジアリルが用いられて構成されれば良いと言うものでは無いことが判る。すなわち、熱硬化性樹脂は、少なくともイソフタル酸ジアリル及び不飽和ポリエステル樹脂が用いられて構成されることが重要なことが判る。
比較例3と比較例4との対比から、不飽和ポリエステル樹脂はイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂であることが好ましいことが判る。
(前記イソフタル酸ジアリル)/(前記不飽和ポリエステル樹脂)が40/60〜70/30(質量比)の場合が好ましかった。
実施例2と実施例4との対比から、耐熱性・耐光性の観点からは、補強材の量は少ない方が好ましいことが判る。すなわち、機械的強度の観点から補強材を必要とする場合でも、機械的強度が満足できる範囲内で、その量は少ない方が好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1 リードフレーム
2 LED素子
3 LEDリフレクター(光反射体)
【要約】
耐久性に優れた高品質な光反射体を提供することである。
熱硬化性樹脂と白色系顔料とを含み、前記熱硬化性樹脂は、少なくとも、イソフタル酸ジアリルと、不飽和ポリエステル樹脂とが用いられて構成されてなり、(前記イソフタル酸ジアリル)/(前記不飽和ポリエステル樹脂)が40/60〜80/20である光反射体材料。