(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記日光量測定装置により測定された日光の量に基づいて前記複数のプランターが前記水供給位置を通過する際の前記複数のプランターへの水の供給量を決定し、当該決定された水の供給量に従って前記水供給装置の動作を制御する、
請求項1記載の移動栽培装置。
前記複数のプランターの周囲の気温を検知する気温計を具備し、前記制御装置は、前記気温計により検知された前記複数のプランターの周囲の気温に基づいて前記決定された周回数を修正する、請求項1または請求項2記載の移動栽培装置。
前記複数のプランターに収容された培土の湿度を検知する培土水分計を具備し、前記制御装置は、前記培土水分計により検知された前記培土の水分量に基づいて前記決定された周回数を修正する、請求項1または請求項2記載の移動栽培装置。
前記複数のプランターに収容された培土の温度を検知する培土温度計を具備し、前記制御装置は、前記培土温度計により検知された前記培土の温度に基づいて前記決定された周回数を修正する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の移動栽培装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しつつ、本発明に係る移動栽培装置の実施の一形態である移動栽培装置1について説明する。
図1および
図2に示す如く、移動栽培装置1は複数のプランター2・2・・・、複数の栽培ベンチ10・10・・・、第一縦搬送装置20A、第二縦搬送装置20B、第一横搬送装置40A、第二横搬送装置40B、読み取り・書き込み装置51、防除装置52、薬液供給装置53、水供給装置54、気温計55・56、照度計57・58、無線検知ユニット60、受信機65および制御ユニット70を具備する。
【0014】
本実施形態では重力が作用する方向に基づいて上下方向が定められ、上下方向に垂直な方向として前後方向が定められ、上下方向および前後方向に垂直な方向として左右方向が定められる(
図1参照)。以下では便宜上、前後方向を「縦方向」、左右方向を「横方向」と定め、これらの方向を用いて説明する。なお、本実施形態では縦方向および横方向がいずれも水平面に対して平行(上下方向に対して垂直)であるが、本発明はこれに限定されず、植物の栽培に支障をきたさない限度において、縦方向および横方向が水平面に対して多少傾斜していても(水平面に対して平行でなくても)良い。
【0015】
プランター2は植物を栽培するための容器である。
図3の(a)に示す如く、プランター2の外形は縦方向に短く、横方向に長い形状を有する。より詳細には、プランター2の外形は、概ねその上面に比べて下面の縦方向および横方向における長さが小さい四角錐台形状であり、プランター2の内部には空間が形成される。プランター2の内部に形成される空間には培土が収容され、当該培土に植物が植えられる。プランター2の上面は大きく開口し、プランター2の下面には余剰の水および薬液を外部に排出するための排出孔(不図示)が形成される。また、プランター2の上面の前端部および後端部にはそれぞれ係止片2a・2aが形成される。なお、本実施形態のプランター2はイチゴを栽培する用途に用いられるが、本発明に係る移動栽培装置は他の種々の植物を栽培する用途に適用することが可能である。
【0016】
栽培ベンチ10はプランター2を支持する構造体である。栽培ベンチ10は移動栽培装置1の搬送装置(第一縦搬送装置20A、第二縦搬送装置20B、第一横搬送装置40Aおよび第二横搬送装置40B)により搬送される。
図3の(b)に示す如く、栽培ベンチ10はロアフレーム11、一対のアッパーフレーム12・12、八つの車輪13・13・・・、受け樋14およびICタグ17を備える。
【0017】
ロアフレーム11および一対のアッパーフレーム12・12は栽培ベンチ10の主たる構造体を成す。一対のアッパーフレーム12・12はそれぞれベンチフレーム11の前端部および後端部に設けられる。
図4に示す如く、プランター2をロアフレーム11の上面において一対のアッパーフレーム12・12で挟まれる部分に載置することにより、プランター2の係止片2a・2aは一対のアッパーフレーム12・12に係止され、プランター2は栽培ベンチ10に支持される。なお、プランター2を栽培ベンチ10から左右横方向に引き出すことにより、栽培ベンチ10に支持されるプランター2を容易に入れ替えることが可能である。車輪13・13・・・はロアフレーム11の下方に設けられ、ロアフレーム11および一対のアッパーフレーム12・12を支持する。車輪13・13・・・は前後方向に回転可能である。ただし、移動が容易にできるようにキャスター輪で構成することもできる。受け樋14はプランター2の下面に形成された排出孔から排出された余剰の水および薬液を受け止める部材である。受け樋14はロアフレーム11の上面の前後方向における略中央部に固定される。プランター2が栽培ベンチ10に支持されたとき、受け樋14はプランター2の下面(ひいては、プランター2の下面に形成された排出孔)の下方に配置される。
【0018】
ICタグ17は対応するプランター2(ICタグ17が設けられた栽培ベンチ10に支持されるプランター2)により栽培される植物に係る情報を記憶する(読み書きできる)ものであり、ロアフレーム11の前端部かつ左右方向における略中央部となる位置に設けられる。ICタグ17により栽培される植物のトレーサビリティーが向上する。ICタグ17が記憶する「対応するプランター2により栽培される植物に係る情報」の具体例としては、プランター2により栽培される植物のロット番号(植物を特定するための番号)、品種、栽培開始日(播種や移植等)、植密度、開花日、収穫日、収穫量、品質、後述する防除作業の内容(防除剤の種類、散布量等)および日時、後述する薬液供給作業の内容(薬液の種類、供給量等)および日時、後述する水供給作業の内容(水の供給量等)および日時、その他植物に対して施された各種作業(摘心、誘引、摘果等)の履歴、後述する照度の推移(日照量)、後述する気温の推移、1日当たりのローテーション数(初期設定値および実際のローテーション数)、等が挙げられる。
【0019】
第一縦搬送装置20A、第二縦搬送装置20B、第一横搬送装置40Aおよび第二横搬送装置40Bは本発明に係る搬送装置の実施の一形態であり、それぞれ複数の栽培ベンチ10・10・・・、ひいては栽培ベンチ10・10・・・に支持された複数のプランター2・2・・・を搬送する。
図1に示す如く、第一縦搬送装置20Aおよび第二縦搬送装置20Bは左右方向(横方向)に並べて配置され、栽培ベンチ10・10・・・(ひいては、これらに支持されるプランター2・2・・・)を前後方向(縦方向)に搬送する。第一横搬送装置40Aおよび第二横搬送装置40Bは栽培ベンチ10・10・・・(プランター2・2・・・)を左右方向(横方向)に搬送する。
【0020】
第一横搬送装置40Aの右半部は第一縦搬送装置20Aの前端部の前方に配置され、第一横搬送装置40Aの左半部は第二縦搬送装置20Bの前端部の前方に配置される。第二横搬送装置40Bの右半部は第一縦搬送装置20Aの後端部の後方に配置され、第二横搬送装置40Bの左半部は第二縦搬送装置20Bの後端部の後方に配置される。第一横搬送装置40Aおよび第二横搬送装置40Bはいずれも、栽培ベンチ10・10・・・(プランター2・2・・・)を第一縦搬送装置20Aおよび第二縦搬送装置20Bとの間で受け渡すことが可能である。従って、移動栽培装置1は、第一縦搬送装置20Aから第一横搬送装置40A、第二縦搬送装置20Bおよび第二横搬送装置40Bを経て第一縦搬送装置20Aに戻る無端状(リング状)の搬送経路に沿って栽培ベンチ10・10・・・(プランター2・2・・・)を搬送することが可能である。なお、移動栽培装置1は、栽培ベンチ10・10・・・(プランター2・2・・・)を搬送経路に沿って平面視(
図1参照)で反時計回りに搬送することおよび時計回りに搬送することが可能である。以下では便宜上、平面視反時計回りに搬送する場合の搬送方向を「正方向」、平面視時計回りに搬送する場合の搬送方向を「逆方向」と定義し、これらの方向を用いて説明する。
【0021】
本実施形態では第一縦搬送装置20Aおよび第二縦搬送装置20Bの基本的な構造は同じである(ただし、平面視で互いに180°回転した向きで配置される)ことから、以下では第一縦搬送装置20Aについて説明し、第二縦搬送装置20Bの説明を省略する。
図1に示す如く、第一縦搬送装置20Aは四つのレール35・35・35・35、シリンダブラケット28、一対のロッド21・21、移動用エアシリンダ25、回転用エアシリンダ29、バルブユニット30、エアコンプレッサ34およびこれらの部材を支持するフレーム(不図示)を備える。
【0022】
レール35・35・35・35は、栽培ベンチ10・10・・・が第一縦搬送装置20Aにより搬送されるときに車輪13・13・・・が走行する経路を成す部材である。レール35・35・35・35は左右方向(横方向)に間隔を空けて並べられ、第一縦搬送装置20Aのフレームに固定される。栽培ベンチ10が第一縦搬送装置20Aによって前後方向(縦方向)に搬送されるとき、栽培ベンチ10の車輪13・13・・・はレール35・35・35・35に嵌合しつつレール35・35・35・35の長手方向に転がる。
【0023】
図1および
図5に示す如く、一対のロッド21・21はレール35・35・35・35のうち左端から二番目のレール35と左端から三番目のレール35とで挟まれる位置に配置され、互いに左右方向に並べられる。一対のロッド21・21は互いに左右対称であることから、以下では一方のロッド21について説明し、他方については説明を省略する。
【0024】
ロッド21はロッド本体22、複数の係止突起23・23・・・およびアーム24を有する。ロッド本体22は金属製の丸パイプからなり、ロッド本体22の長手方向が前後方向(縦方向)に平行に配置され、かつ前後方向に移動可能に第一縦搬送装置20Aのフレームに支持される。複数の係止突起23・23・・・は前後方向に所定の間隔を空けて並べられ、前後方向に間隔を空けてロッド本体22の外周面に固定される。係止突起23・23・・・はロッド本体22の半径方向に突出する。アーム24の一端部はロッド本体22に固定され、アーム24の他端部はロッド本体22の半径方向に突出する。
【0025】
図5に示す如く、シリンダブラケット28はフレーム(不図示)に固定される固定部材28a、互いに左右方向(横方向)に並んで配置されるとともに両端部が固定部材28aに固定される一対のスライドレール28b・28b、およびスライドレール28b・28bの長手方向(前後方向)に移動可能に支持されるスライド部材28cを有する。
【0026】
図5に示す如く、移動用エアシリンダ25は主移動用エアシリンダ26および副移動用エアシリンダ27を有する。
図6に示す如く、主移動用エアシリンダ26はシリンダ本体26a、シリンダロッド26bおよびピストン26cを有する。副移動用エアシリンダ27はシリンダ本体27a、シリンダロッド27bおよびピストン27cを有する。
【0027】
図5に示す如く、移動用エアシリンダ25の基端部(シリンダ本体27aの他端部)は固定部材28aに固定され、移動用エアシリンダ25の先端部(シリンダロッド26bの他端部)はスライド部材28cに固定される。また、一対のロッド21・21の中途部は、スライド部材28cに対して長手方向の軸中心に回転可能かつ前後方向(縦方向)に相対移動不能に支持される。従って、移動用エアシリンダ25が伸長したときにはスライド部材28cおよび一対のロッド21・21は後方に移動し、移動用エアシリンダ25が収縮したときにはスライド部材28cおよび一対のロッド21・21は前方に移動する。また、主移動用エアシリンダ26および副移動用エアシリンダ27は互いに直列的に連結され、それぞれ伸長・収縮することが可能である。従って、主移動用エアシリンダ26および副移動用エアシリンダ27の伸長・収縮の組み合わせにより、シリンダロッド26bの位置を多段的に変更すること(一対のロッド21・21を前後方向(縦方向)に多段階に移動させること)が可能である。
【0028】
図6に示す如く、回転用エアシリンダ29はシリンダ本体29a、シリンダロッド29bおよびピストン29cを有する。
図5に示す如く、回転用エアシリンダ29の基端部(シリンダ本体29aの他端部)は右側のロッド21におけるアーム24の他端部に回動可能に連結され、回転用エアシリンダ29の先端部(シリンダロッド29bの他端部)は左側のロッド21におけるアーム24の他端部に回動可能に連結される。
【0029】
図7の(a)に示す如く、回転用エアシリンダ29が収縮しているとき、一対のロッド21・21の係止突起23・23・・・は一対のロッド21・21の外周面から概ね上方に突出する位置に配置される。
図7の(b)に示す如く、回転用エアシリンダ29が伸長しているとき、右側のロッド21の係止突起23・23・・・は右側のロッド21の左側方に突出する位置に配置され、左側のロッド21の係止突起23・23・・・は左側のロッド21の右側方に突出する位置に配置される。
【0030】
図7の(a)および
図8に示す如く、係止突起23・23・・・が一対のロッド21・21の上方に突出しているとき、係止突起23・23・・・の先端部は車輪13・13・・・がレール35・35・・・に嵌合した状態における栽培ベンチ10のロアフレーム11の下面よりも上方に配置される。従って、係止突起23・23・・・が一対のロッド21・21の上方に突出した状態を保持しつつ一対のロッド21・21が前後方向(縦方向)に移動することにより、栽培ベンチ10を係止突起23・23・・・で押して前後方向(縦方向)に移動させる(搬送する)ことが可能である。
【0031】
また、
図7の(b)に示す如く、係止突起23・23・・・が一対のロッド21・21の側方に突出しているとき、係止突起23・23・・・の先端部は車輪13・13・・・がレール35・35・・・に嵌合した状態における栽培ベンチ10のロアフレーム11の下面よりも下方に配置される。従って、係止突起23・23・・・が一対のロッド21・21の側方に突出した状態を保持しつつ、一対のロッド21・21が前後方向(縦方向)に移動しても、係止突起23・23・・・はロアフレーム11、ひいては栽培ベンチ10に当接しない(干渉しない)ので、栽培ベンチ10は前後方向に移動しない。
【0032】
図6に示す如く、バルブユニット30は主移動用バルブ31、副移動用バルブ32、回転用バルブ33およびこれらを収容する本体(不図示)を有する。
【0033】
主移動用バルブ31はバルブスプール31aおよびソレノイド31bを有する。主移動用バルブ31はシリンダ本体26aの他端部に接続される。ソレノイド31bに通電しているとき、バルブスプール31aは収縮位置から伸長位置に移動し、伸長位置で保持される。ソレノイド31bに通電していないとき、バルブスプール31aは伸長位置から収縮位置に移動し、収縮位置で保持される。
【0034】
副移動用バルブ32はバルブスプール32a、ソレノイド32bおよびソレノイド32cを有する。副移動用バルブ32はシリンダ本体26aの一端部およびシリンダ本体27aの他端部に接続される。ソレノイド32bに通電し、かつソレノイド32cに通電していないとき、バルブスプール32aは中立位置から伸長位置に移動し、伸長位置で保持される。ソレノイド32cに通電し、かつソレノイド32bに通電していないとき、バルブスプール32aは中立位置から収縮位置に移動し、収縮位置で保持される。ソレノイド32bおよびソレノイド32bの両方に通電していないとき、バルブスプール32aは中立位置で保持される。
【0035】
回転用バルブ33はバルブスプール33a、ソレノイド33bおよびソレノイド33cを有する。回転用バルブ33はシリンダ本体29aの一端部および他端部に接続される。ソレノイド33bに通電し、かつソレノイド33cに通電していないとき、バルブスプール33aは中立位置から伸長位置に移動し、伸長位置で保持される。ソレノイド33cに通電し、かつソレノイド33bに通電していないとき、バルブスプール33aは中立位置から収縮位置に移動し、収縮位置で保持される。ソレノイド33bおよびソレノイド33bの両方に通電していないとき、バルブスプール33aは中立位置で保持される。
【0036】
エアコンプレッサ34は主移動用バルブ31、副移動用バルブ32および回転用バルブ33に接続され、これらのバルブを通じて移動用エアシリンダ25および回転用エアシリンダ29に圧縮されたエアを供給する。
【0037】
以下では
図1を用いて第一横搬送装置40Aおよび第二横搬送装置40Bについて説明する。第一横搬送装置40Aおよび第二横搬送装置40Bはいずれも複数の栽培ベンチ10・10・・・を搬送面(本実施形態の場合、後述する載置板46・46・・・の板面)に載置して左右方向(横方向)に搬送するチェーンコンベアである。本実施形態では第一横搬送装置40Aおよび第二横搬送装置40Bの基本的な構造は同じである(ただし、平面視で互いに180°回転した向きで配置される)ことから、以下では第一横搬送装置40Aの詳細について説明し、第二横搬送装置40Bの詳細な説明を省略する。第一横搬送装置40Aは第一横搬送装置40Aの構造体を成すフレーム47、無端状の一対のチェーン41・41、フレーム47に回転可能に軸支され、スプロケットを介して一対のチェーン41・41が巻回される駆動軸42・従動軸43、駆動軸42の一端部に固定されるハンドル44、電気式のサーボモータであって駆動軸42ひいては一対のチェーン41・41を回転駆動する駆動源を成すモータ45、および、間隔を空けて一対のチェーン41・41に固定されるとともに第一縦搬送装置20Aあるいは第二縦搬送装置20Bから受け渡された栽培ベンチ10の車輪13・13・・・を支持する載置板46・46・・・を備える。
【0038】
図1に示す如く、読み取り・書き込み装置51は移動栽培装置1の搬送経路の中途部、より詳細には第一横搬送装置40Aの右半部に沿った位置に配置される。読み取り・書き込み装置51は「読み取り・書き込み位置」を通過する栽培ベンチ10に設けられたICタグ17から「当該栽培ベンチ10に支持されたプランター2により栽培される植物に係る情報」を読み取り、ICタグ17に「当該栽培ベンチ10に支持されたプランター2により栽培される植物に係る情報」を書き込むことが可能である。
【0039】
防除装置52は移動栽培装置1の搬送経路の中途部、より詳細には第二横搬送装置40Bの左右方向における略中央部に配置される。防除装置52は第二横搬送装置40Bにより搬送される栽培ベンチ10に支持されたプランター2(ひいては、プランター2により栽培される植物)に防除剤(植物の病害および虫害を防止する薬剤)を散布する。本実施形態の防除装置52は防除剤を圧送する配管、当該配管に設けられる散布ノズル、当該散布ノズルへの防除剤の供給およびその停止を切り替える電磁バルブを備える。
【0040】
薬液供給装置53は移動栽培装置1の搬送経路の中途部、より詳細には第二横搬送装置40Bの左右方向における略中央部に配置される。ここで、「第二横搬送装置40Bの左右方向における略中央部」は本実施形態において予め設定された「水供給位置」に相当する。薬液供給装置53は第二横搬送装置40Bにより搬送される栽培ベンチ10に支持されたプランター2(ひいては、プランター2により栽培される植物)に薬液を供給する。本実施形態の薬液供給装置53は薬液を圧送する配管、当該配管に設けられる薬液供給ノズル、当該薬液供給ノズルへの薬液の供給およびその停止を切り替える電磁バルブを備える。
【0041】
水供給装置54は移動栽培装置1の搬送経路の中途部、より詳細には第二横搬送装置40Bの左右方向における略中央部に配置される。ここで、「第二横搬送装置40Bの左右方向における略中央部」は本実施形態において予め設定された「水供給位置」に相当する。水供給装置54は第二横搬送装置40Bが左右方向(横方向)に搬送することにより「水供給位置」を通過する栽培ベンチ10に支持されたプランター2(ひいては、プランター2により栽培される植物)に水を供給する(潅水する)。本実施形態の水供給装置54は水を圧送する配管、当該配管に設けられる水供給ノズル、当該水供給ノズルへの水の供給およびその停止を切り替える電磁バルブを備える。
【0042】
気温計55・56は本発明に係る気温計の実施の一形態であり、プランター2・2・・・の周囲の雰囲気の温度(気温)を検知する。気温計55は第一縦搬送装置20Aの右側方となる位置に配置され、気温計56は第二縦搬送装置20Bの左側方となる位置に配置される。本実施形態では気温計55は搬送経路の右半部(第一縦搬送装置20A、第一横搬送装置40Aの右半部および第二横搬送装置40Bの右半部)に配置された栽培ベンチ10・10・・・に支持されるプランター2・2・・・の周囲の気温を検知するものとみなされ、気温計56は搬送経路の左半部(第二縦搬送装置20B、第一横搬送装置40Aの左半部および第二横搬送装置40Bの左半部)に配置された栽培ベンチ10・10・・・に支持されるプランター2・2・・・の周囲の気温を検知するものとみなされる。
【0043】
照度計57・58は本発明に係る日光量測定装置の実施の一形態であり、搬送経路に沿って搬送されるプランター2・2・・・に照射される日光の量(本実施形態では、光の照度)を測定する。照度計57は第一縦搬送装置20Aの右側方となる位置に配置され、照度計58は第二縦搬送装置20Bの左側方となる位置に配置される。本実施形態では照度計57は搬送経路の右半部に配置された栽培ベンチ10・10・・・に支持されるプランター2・2・・・に照射される光の照度を測定するものとみなされ、照度計58は搬送経路の左半部に配置された栽培ベンチ10・10・・・に支持されるプランター2・2・・・に照射される光の照度を測定するものとみなされる。本発明に係る日光量測定装置の具体例としては、本実施形態の照度計57・58の他、種々の光センサが挙げられる。
【0044】
図2に示す如く、無線検知ユニット60は培土水分計61、培土温度計62および送信機63を備える。本実施形態では複数の無線検知ユニット60・60・・・が用意され、それぞれ対応するプランター2・2・・・に搭載される。培土水分計61は本発明に係る培土水分計の実施の一形態であり、対応するプランター2に収容された培土の水分量を検知する。本実施形態の培土水分計61はプローブを備え、当該プローブを培土に差し込むことにより当該培土の誘電率(培土の水分量に概ね比例する)を検知する。培土温度計62は本発明に係る培土温度計の実施の一形態であり、対応するプランター2に収容された培土の温度を検知する。本実施形態の培土温度計62はプローブを備え、当該プローブを培土に差し込むことにより当該培土の温度を検知する。なお、本実施形態では培土水分計61および培土温度計62が別体であるが、これらを一体化したセンサを用いても良い。また、培土水分計61および培土温度計62を周回されるプランター2の適宜位置(搬送経路に沿った位置)に配置し、その近傍に停止したプランター2の培土に培土水分計61および培土温度計62のプローブをエアシリンダ等で差し込むことにより検知しても良い。このとき、培土水分計61および培土温度計62を複数個所に配置し、これらにより検知された値の平均値を求めても良い。送信機63は培土水分計61および培土温度計62に接続され、培土水分計61が検知した培土の水分量に係る情報および培土温度計62が検知した培土の温度に係る情報を取得し、これらの情報を無線で後述する受信機65に送信する。
【0045】
図2に示す受信機65は送信機63から「培土水分計61が検知した培土の水分量に係る情報および培土温度計62が検知した培土の温度に係る情報」を無線で受信する。
【0046】
図1および
図2に示す如く、制御ユニット70は制御部71、入力部72、表示部73および出力部74を備える。
図1に示す如く、制御ユニット70は第一横搬送装置70Aの右端部の前方となる位置に配置される。
【0047】
制御部71は本発明に係る制御装置の実施の一形態であり、移動栽培装置1の各部(移動栽培装置1の搬送装置、読み取り・書き込み装置51、防除装置52、薬液供給装置53および水供給装置54)の動作を制御する。制御部71は種々のプログラム等を格納し、これらのプログラム等を展開し、これらのプログラム等に従って所定の演算を行い、当該演算の結果等を記憶することができる。本実施形態の制御部71はバスで相互に接続されたCPU、ROM、RAM等を備える。
【0048】
図1および
図2に示す如く、制御部71は第一縦搬送装置20Aのバルブユニット30および第二縦搬送装置20Bのバルブユニット30に接続され、これらのバルブユニット30のバルブ群(主移動用バルブ31、副移動用バルブ32、回転用バルブ33)を動作させる信号を送信する(これらのバルブのソレノイドに通電する)ことが可能である。
制御部71は第一縦搬送装置20Aにおけるシリンダロッド26b・27b・29bの位置を検出するセンサ(不図示)および第二縦搬送装置20Bにおけるシリンダロッド26b・27b・29bの位置を検出するセンサ(不図示)に接続され、これらのシリンダロッドの位置に係る情報を受信することが可能である。制御部71は第一横搬送装置40Aのモータ45および第二横搬送装置40Bのモータ45に接続され、これらのモータの回転角度に係る情報(信号)を受信することが可能であるとともに、これらのモータに対して所望の回転方向に所望の回転角度だけ回転する旨の指令を信号として送信することが可能である。制御部71は読み取り・書き込み装置51に接続され、読み取り・書き込み装置51がICタグ17から読み取った情報(栽培ベンチ10に支持されたプランター2により栽培される植物に係る情報)を信号として受信して記憶することが可能であるとともに、読み取り・書き込み装置51に「栽培ベンチ10に支持されたプランター2により栽培される植物に係る情報」および「当該情報をICタグ17に書き込む(記憶させる)旨の指令」を信号として送信することが可能である。制御部71は防除装置52、薬液供給装置53および水供給装置54(厳密には、これらの装置の電磁バルブ)に接続され、これらの動作を指令する信号を送信する(これらの電磁バルブのソレノイドに通電する)ことが可能である。制御部71は気温計55・56に接続され、これらのセンサにより検知される周囲の気温に係る情報(信号)を受信することが可能である。制御部71は照度計57・58に接続され、これらのセンサにより測定される日光の量(光の照度)に係る情報(信号)を受信することが可能である。制御部71は受信機65に接続され、受信機65が送信機63から無線で受信した情報(培土水分計61が検知した培土の水分量に係る情報および培土温度計62が検知した培土の温度に係る情報)を取得することが可能である。本実施形態では制御部71をインターネット等の電気通信回線を通じて他のコンピュータ等に接続することが可能であり、他のコンピュータ等の間で相互に情報を送受信することが可能である。
【0049】
入力部72は制御部71に接続され、作業者が操作することにより移動栽培装置1の各種作業に係る種々のデータ、指示等を制御部71に入力する。表示部73は作業者が入力部72を用いて制御部71に入力した内容、移動栽培装置1の動作状況、制御部71に記憶された各種情報(読み取り・書き込み装置51から受信した各プランター2の植物に係る情報を含む)等を表示する。本実施形態ではタッチパネルを用いることにより入力部72および表示部73を一体化しているが、入力部72および表示部73を別体としても良い。入力部72および表示部73を別体とする場合、入力部72は例えばキーボード、マウス、ボタン、スイッチ等により構成され、表示部73は例えばモニター、液晶ディスプレイ等により構成される。出力部74は制御部71に接続され、読み取り・書き込み装置51から受信した各プランター2の植物に係る情報等を所定の用紙に印刷する。
【0050】
本実施形態では第一横搬送装置40Aの前方のスペース(
図1参照)が作業者の作業スペースとして設定される。作業者は、当該スペースにおいて種々の作業(例えば、植物から収穫物を収穫する作業、雑草を除去する作業、植物の不要部分を切除する作業、プランター2の入れ替え作業等)を行う。本実施形態では作業者の作業スペースに隣接する位置に制御ユニット70が配置されているため、作業者は移動栽培装置1の操作を行うために作業スペースから離れて長い距離を移動する必要がなく、作業性に優れる。特に、出力部74が作業スペースに隣接する位置に配置されることにより、作業者は作業スペースから移動せずに植物から収穫物を収穫する作業および収穫物を梱包する作業を一連の作業として行うことが可能である。本実施形態では防除装置52および薬液供給装置53が移動栽培装置1の搬送経路において作業スペースから最も離れた位置(第二横搬送装置40Bに沿った位置)に配置されているため、防除剤および薬液が作業者に付着することを防止する観点から優れている。
【0051】
以下では、制御部71による移動栽培装置1の動作制御について説明する。制御部71は、予めプランター2毎、あるいは植物の品種毎に、植物に関する栽培条件を記憶している。上記栽培条件としては、例えば、栽培開始日、基本日照量範囲(植物の生育ステージ毎に設定される、一日当たりの基本的な日照量の範囲)、基本気温範囲(植物の生育ステージ毎に設定される、基本的な気温の範囲)、基本培土水分量範囲(植物の生育ステージ毎に設定される、基本的な培土の水分量の範囲)、基本培土温度範囲(植物の生育ステージ毎に設定される、基本的な培土の温度の範囲)、防除条件(防除剤の散布量および散布頻度)、薬液供給条件(薬液の供給量および供給頻度)、水供給条件(水の供給量および供給頻度)、作業スペースにおいて施される作業の内容およびその頻度、気温条件、日照条件等)また、上記水供給条件のうち「水の供給量」を「基本水供給量」と定義し、供給頻度を「基本水供給回数」と定義する。
【0052】
制御部71は、上記栽培条件、栽培ベンチ10に設けられたICタグ17から読み取り・書き込み装置51を経て受信した植物に係る情報、および照度計57・58により検知された光の照度に係る情報に基づいて移動栽培装置1の「運転条件」を決定する。ここで、移動栽培装置1の「運転条件」は、「移動栽培装置1の搬送装置が一日当たりに複数のプランター2・2・・・を搬送経路に沿って搬送する周回数、複数のプランター2・2・・・が水供給位置(移動栽培装置1の搬送経路において水供給装置54が配置されている位置)を通過する際の複数のプランター2・2・・・への水の供給量を含む。
【0053】
また、制御部71は、気温計55・56により検知された複数のプランター2・2・・・の周囲の気温、培土水分計61・61・・・により検知された「対応するプランター2の培土の水分量」、培土温度計62・62・・・により検知された「対応するプランター2の培土の温度」等に基づいて移動栽培装置1の「運転条件」を修正する。
【0054】
以下では制御部71による「運転条件」の決定および修正の詳細について説明する。制御部71は、日の出から所定時間(例えば、数時間)経過後までの間における「照度計57・58により測定されたプランター2・2・・・に照射される光の照度」に基づき、その日におけるプランター2・2・・・の「予想日射量」を算出する。次に、制御部71は、算出された「予想日射量」が「基本日照量範囲」の上限値よりも大きい場合にはその日のプランター2・2・・・への水の供給量を「基本水供給量よりも大きい値」に決定し、算出された「予想日射量」が「基本日照量範囲」の範囲内である場合(「基本日照量範囲」の下限値以上かつ上限値以下である場合)にはその日のプランター2・2・・・への水の供給量を「基本水供給量」と同じ値に決定し、「予想日射量」が「基本日照量範囲」の下限値よりも小さい場合にはその日のプランター2・2・・・への水の供給量を「基本水供給量よりも小さい値」に決定する。ここで、「予想日射量」が「基本日照量範囲」の上限値よりも大きい、あるいは下限値よりも小さい値となった場合に「基本水供給量」に対して水供給量をどの程度増減させるかは種々の方法が考えられ、栽培対象たる植物の種類等に応じて適宜選択することが望ましい。例えば、水供給量の増減量を「予想日射量」と「『基本日照量範囲』の上限値あるいは下限値」との差分に比例させても良く、差分の大きさに関わらず一律で所定量だけ増減させても良い。
【0055】
制御部71は、日の出から所定時間(例えば、数時間)経過後までの間における「気温計55・56により検知された複数のプランター2・2・・・の周囲の気温の推移」に基づき、その日のプランター2・2・・・の「平均気温」を算出する。次に、制御部71は、算出された「平均気温」が「基本気温範囲」の上限値よりも高い場合には「先に決定されたその日のプランター2・2・・・への水の供給量」をより大きい値に修正し、「平均気温」が「基本気温範囲」の範囲内である場合には「先に決定されたその日のプランター2・2・・・への水の供給量」を修正せず、「平均気温」が「基本気温範囲」の下限値よりも低い場合には「先に決定されたその日のプランター2・2・・・への水の供給量」をより小さい値に修正する。
【0056】
制御部71は、日の出から所定時間(例えば、数時間)経過後までの間における「培土水分計61により検知された培土の水分量」に基づき、その日の対応するプランター2の培土の「平均水分量」を算出する。次に、制御部71は、算出された「平均水分量」が「基本培土水分量範囲」の上限値よりも大きい場合には「先に決定されたその日のプランター2・2・・・への水の供給量」をより小さい値に修正し、「平均水分量」が「基本培土水分量範囲」の範囲内である場合には「先に決定されたその日のプランター2・2・・・への水の供給量」を修正せず、「平均水分量」が「基本培土水分量範囲」の下限値よりも小さい場合には「先に決定されたその日のプランター2・2・・・への水の供給量」をより大きい値に修正する。
【0057】
制御部71は、日の出から所定時間(例えば、数時間)経過後までの間における「培土温度計62により検知された培土の温度」に基づき、その日の対応するプランター2の培土の「平均温度」を算出する。次に、制御部71は、算出された培土の「平均温度」が「基本培土温度範囲」の上限値よりも高い場合には「先に決定されたその日のプランター2・2・・・への水の供給量」をより大きい値に修正し、培土の「平均温度」が「基本培土温度範囲」の範囲内である場合には「先に決定されたその日のプランター2・2・・・への水の供給量」を修正せず、培土の「平均温度」が「基本培土温度範囲」の下限値よりも低い場合には「先に決定されたその日のプランター2・2・・・への水の供給量」をより小さい値に修正する。
【0058】
制御部71は、上記の如く、移動栽培装置1の運転条件を適宜修正し、修正された運転条件に基づいて、移動栽培装置1の搬送装置、読み取り・書き込み装置51、防除装置52、薬液供給装置53および水供給装置54の動作を制御する。このように構成することにより、移動栽培装置1の搬送経路上において気温あるいは日照量に差がある場合であっても、プランター2・・・の周囲の気温および日照量を均等にすることが可能であり、収穫物の品質向上に寄与する。本実施形態の場合、水供給装置54が単位時間当たりに供給(放水)する水の量は一定であり、制御部71は第二横搬送装置40Bがプランター2・・・を搬送する速度を調整することによりプランター2が水供給装置54を通過するのに要する時間、ひいては「周回数当たりのプランター2・2・・・への水の供給量」を調整する。制御部71は、周回数および上記「周回数当たりのプランター2・2・・・への水の供給量」を調整することにより、一日当たりのプランター2・2・・・への水の供給量を調整する。なお、第二横搬送装置40Bがプランター2・・・を搬送する速度を一定とするとともに水供給装置54に可変バルブを備えることにより、水供給装置54が単位時間当たりに供給(放水)する水の量を調整しても良い。
【0059】
本実施形態では二つの気温計55・56および二つの照度計57・58を具備するが、本発明はこれに限定されない。例えば、気温計および日光量測定装置を移動栽培装置1の搬送経路に沿って搬送されるプランター2・2・・・のそれぞれに対応して設けても良い。気温計および日光量測定装置を移動栽培装置1の搬送経路に沿って搬送されるプランター2・2・・・のそれぞれに対応して設ける方法の具体例としては、移動栽培装置1の搬送経路においてプランター2・2・・・が停止する位置ごとに気温計および日光量測定装置を配置する方法、各栽培ベンチ10(あるいは各プランター2)に気温計および日光量測定装置を固定し、これらが検知(測定)する気温および日光の量に係る情報を制御部71に無線で送信する方法、等が挙げられる。
【0060】
本実施形態では各プランター2に無線検知ユニット60(培土水分計61、培土温度計62および送信機63)が搭載されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、搬送経路上のプランター2・2・・・の一部に無線検知ユニット60を搭載し、一つの無線検知ユニット60による検知情報を、当該無線検知ユニット60を搭載するプランター2および当該プランター2の近傍に配置されている他のプランター2に対応する検知情報として扱っても良い。