(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造には、純度99.9%以上(例えば純度99.96%以上)の純アルミニウムを常法により熱間、冷間圧延して100μm前後の厚さにし、これを脱脂目的で薬品による洗浄を行い、500〜600℃で最終焼鈍した後、コイルの巻き直し工程を経て表面の粗面化処理、所定の陽極酸化処理が行われる。
【0003】
粗面化処理はアルミニウム箔の表面積の拡大を目的としたものであり、一般に塩酸を主体とした電解液の中で電気化学的に処理して多数のピット状の穴(以降エッチングピットと表記する)を形成させる。エッチングピットは立方体方位に沿って成長するため、90%以上の立方体方位占有率が必要である。高い立方体方位占有率を得るためには、99.99%以上の高純度アルミニウムを圧延し、100〜150μmの箔としたのち、500℃以上の温度にて焼鈍を行い、立方体方位を成長させる必要がある。
【0004】
1つずつのエッチングピットは酸化被膜中の表層から成長し表面積の増大をもたらし、未処理のものに比べて高い静電容量をもたらす。この粗面化における表面積拡大率が大きい程小型化及び省資源に寄与することができる。このため粗面化処理における表面積拡大率を高めるため、粗面化処理を行う条件及び、粗面化処理で高い粗面化処理率(拡大率)が得られる箔について種々の研究がなされている。
【0005】
また一方で、エッチング処理において、不均質にエッチングされると、エッチングが不十分な箇所では静電容量が低くなり、全体としての静電容量も低下するため、エッチングの均質性が重要である。そこで、エッチングピットの均質性確保のため、酸化被膜の均質性、さらに洗浄工程後の残留圧延油量に関しての関係に着目し、より均質なエッチングピットを有するアルミニウム箔の製造方法を提供した技術が知られている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年コンデンサ小型化の要求は益々高まりアルミニウム箔の粗面化処理率の向上の必要性が増している。また、従来の製造方法において、コイルの幅方向、長さ方向で粗面化処理率が不均一であったり、コイル全体が、必要な粗面化処理率に達しないといったことにより、最終製品である電解コンデンサとしての性能である静電容量が製品毎で大きくばらついたり、また時には十分な静電容量が得られないという問題が起こる。
【0008】
一方、従来技術の製造方法では、通常コイルに巻かれた状態で大気中、真空中、あるいは不活性ガス雰囲気中で焼鈍を行うが、アルミニウム箔コイル内部で気化した圧延油がコイル端部付近で付着し、茶褐色状に焼き付きをおこす。この部分は著しくエッチング性が低下するため製品化することはできない。このため、一般的には焼鈍前に酸、アルカリ、有機酸等の脱脂液による洗浄(脱脂処理)を行い、圧延油を除去した状態で焼鈍している。そこで先に記した脱脂液による洗浄(脱脂処理)が必要になり、脱脂液の処理も含めてコスト高の原因の一つとなっている。
【0009】
さらに、洗浄後はアルミニウム箔表面の油分がなくなるため、焼鈍の際、箔が密着してしまいブロッキング現象が発生しやすくなる。
本発明にかかる製造方法及び、アルミニウム箔は、上記事情を背景としてなされたものであり静電容量が大きく、安定した静電容量を有する電解コンデンサ電極用のアルミニウム箔の製造方法及びアルミニウム箔の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下に関するものである。
(1)電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法であって、残留圧延油が、30〜70mg/m
2であるアルミニウム箔を、還元性雰囲気中で500〜600℃、4時間以上の焼鈍を行うことを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
(2)(1)にかかる製造方法であって、焼鈍時の還元性雰囲気が水素ガス雰囲気であることを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法。
(3)残留圧延油が、30〜70mg/m
2であるアルミニウム箔に、還元性雰囲気中で500〜600℃、4時間以上の焼鈍処理を施した電解コンデンサ用アルミニウム箔であって、表面に酸化被膜が形成されており、酸化被膜のバリアー層の膜厚が10〜30Åであることを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔。
(4)(3)で記載されたアルミニウム箔であって、厚みが100〜150μmであることを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔
(5)(3)で記載されたアルミニウム箔であって、エッチングピットの起点となるクラックが、コイル全体に分散していることにより、粗面化効率に優れた電解コンデンサ用アルミニウム箔。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、焼鈍時に圧延油の残油が、エッチングピットの開始点になることに着目し、静電容量の向上に最適な残油量の範囲を明確に示すことにより、電解コンデンサの小型化に寄与するものである。また、本発明にかかる製造方法は、アルミニウム箔の洗浄に用いる脱脂液の使用を少なくすることが可能であるため、安価でかつ耐環境性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法について説明する。なお、本明細書における「アルミニウム」の語はアルミニウム及びその合金を含む意味で用いる。
【0014】
本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔は一例として以下の製造工程を経て製造される。第一に高純度アルミニウムを溶解し、Fe、Si、Cu、Pbを所定の含有量に調質したのち、連続鋳造法にて高純度アルミニウムスラブとしたものを用いる。高い立方体方位率を得るため、純度99.99%以上のアルミニウムであることが望ましい。次に前記のアルミニウム合金を、既知の半連続鋳造法や連続鋳造圧延法などの常法により溶製する。ここで、半連続鋳造により得られる鋳塊は、必要に応じて均質化処理を行ってもよい。その後、熱間圧延によりアルミニウム合金板が得られ、連続鋳造圧延法によっては、そのままアルミ合金板を得ることができる。次いで、必要に応じて中間焼鈍を行い、その後、冷間圧延を行うことにより100〜150μmの厚みのアルミニウム合金箔を得る。アルミニウム箔の厚みは100μm以上が好ましく、これ以上薄くなると立方体方位占有率が低下するためである。また150μm以下であることが好ましく、これ以上厚くなった場合、粗大結晶粒が成長し立方体方位占有率が低下するためである。上記工程で製造されたアルミニウム箔は所定の長さごとにコイル状に巻き取られる。
【0015】
また、これらの圧延工程においてはロールと被圧延材の潤滑や冷却を目的として圧延油が使用される。圧延油は脂肪酸を添加した石油系炭化水素を用いることが一般的であるが、本発明においてはその種類に限定されない。
【0016】
上記の工程により得られたアルミニウム箔を巻き出し、アルミニウム箔の両面を洗浄し、圧延工程で付着した圧延油の残油量を30〜70mg/m
2にする。洗浄は、脱脂液、又は水によって行われ、シャワー、あるいは液中に浸漬させることで、洗浄を行うことができ、その際の洗浄時間は巻き出したアルミニウム箔のライン速度により調整される。脱脂の度合いは洗浄時間、及び洗浄液(水、又は脱脂液)の温度によって調整することができ、特に脱脂液を用いる場合は、その濃度によっても調整することができる。脱脂液の種類は問わないが、例えば日本ペイント株式会社製のサーフクリーナーを用いることができる。
このときアルミニウム箔上の残油量が30mg/m
2未満であると、後述する後工程である焼鈍において、圧延油の分解の際に発生するクラックの起点の密度が不十分でありエッチングによる粗面化処理において、適度な粗面化が行われない。また圧延油の残留量が70mg/m
2を越えると、発生するクラックが高密度化してしまいエッチング時にエッチングピット同士の連結などが発生し、かえって表面積の増大を阻害し、結果として粗面化効率がさがってしまう。したがって圧延油の残油量は30mg/m
2以上であり70mg/m
2以下であることが望ましい。
【0017】
洗浄工程を経たアルミニウム箔コイルに最終焼鈍を施す。この焼鈍では、99体積%以上の還元性ガス、好ましくは99体積%以上の水素ガスからなる雰囲気中で前記アルミニウム箔を加熱する。
還元性ガスとして、水素ガスを用いる場合の酸素濃度は、爆発限界を考慮し、0.3体積%以下とする。また、水素ガス以外の残部分がアルゴン、窒素等の不活性ガスで構成される場合、水素ガス濃度を数%下げることは可能であり、コストの点でわずかなメリットがあるものの、この場合、制御が複雑となるため、好ましくない。
上記のように高い濃度の還元性雰囲気中で焼鈍処理を行うことでアルミニウム箔表面に10〜30Åの厚さの酸化被膜が形成されるとともに、アルミニウム箔表面に付着している油分が還元され高温加熱状態で分解、ガス化し、アルミニウム箔から容易に離脱する。
【0018】
昇温過程後の保持過程では、保持加熱温度を500〜600℃とするのが望ましい。これは、還元性ガス雰囲気下で適切な酸化被膜(厚さ)及びアルミ素材(高立方体方位率組織)を得るには500℃以上の高温にするのが望ましいためである。なお、アルミ素材の立方体方位率が高くなることによっても粗面化処理における粗面化処理率が向上する。一方、温度が高くなりすぎると、箔が密着してしまいブロッキング現象が発生しやすくなるため、保持温度を600℃以下とすることが望ましい。なお、結晶組織的に立方体方位を高くするため530℃以上がより好ましく、また同様の理由で580℃以下がより望ましい。
【0019】
また、焼鈍時の保持時間については4時間以上とするのが望ましく、これは、4時間未満であると立方体方位率が不十分であるためである。焼鈍時に前記の保持温度での保持時間を長くとりすぎると、ブロッキング現象が発生してしまうが、ブロッキング現象が起こらない保持時間の上限を規定することは難しく、これは焼鈍温度、アルミニウム箔表面の圧延油の残油量、アルミニウム箔のコイルのサイズ、アルミニウム箔の箔面の面粗度等によって、ブロッキング現象が発生し始める保持時間が変わるからである。一例として、530℃の焼鈍温度の場合10時間以下とすることが好ましく、530℃の焼鈍温度の場合保持時間を10時間より長くとると、ブロッキング現象が発生する傾向が強くなる。
前記の保持温度において、保持時間は12時間以下であることが好ましく、6時間以下であることがより好ましい。保持時間を12時間より長くするとブロッキング現象が起こりやすくなり、12時間以下、特に6時間以下に抑えることで、ブロッキング現象は起こりにくくなる。また、生産性の観点からも、保持時間は短いほうが好ましく、実用上は10時間以下であることが好ましい。
【0020】
昇温過程での昇温速度においては、本発明において限定されない。また、冷却過程では、この焼鈍が比較的高い温度で保持加熱されることから急冷すると熱応力によってアルミニウム箔にしわが発生しやすくなり、酸化被膜にも微小なひび割れ等が発生して後の粗面化処理での均質性が損なわれやすくなる。したがって、冷却過程では冷却速度が速くなりすぎないように炉冷等により制御するのが望ましく、具体的には平均で30〜100℃/時間程度の冷却速度で冷却するのが望ましい。これより早い冷却を行った場合は、コイルの内周と外周の温度差が大きくなり、巻きずれが発生する虞がある。
【0021】
図1において、アルミニウム箔に形成した酸化被膜の焼鈍及び巻き直し工程による状態の変化を模式的に示した。
図1(a)に示すように焼鈍前アルミニウム箔11にはアルミニウム基材20の表裏面にバリアー層(酸化被膜)21aが形成され、それらの外面には圧延時に付着した圧延油が残留している。ここでバリアー層とはアルミニウムの酸化被膜層の一形態であり、後述するポーラス層(酸化被膜)21bが多孔質の酸化被膜であるのに対して、無孔性の薄層酸化被膜である。
【0022】
以上のバリアー層21aが形成されたアルミニウム箔11は焼鈍によって、
図1(b)に示す焼鈍後アルミニウム箔12のように、酸化被膜が成長しバリアー層21aとポーラス層21bの積層からなる酸化被膜21が形成される。バリアー層21aは先に説明した無孔性の被膜であり、10Å以上30Å以下の厚みであることが望ましい。これは10Å未満では粗面化処理の場合に、全面溶解が起り、エッチングピットの長さが短くなり、静電容量が低下するためであり、また30Åを越えた場合、耐食性が増し、酸化被膜の弱い部分にエッチングピットが集中発生する結果、ピット分布が不均一になり静電容量が低下するためであり、高密度で深いエッチングピットを形成するため酸化被膜の厚みを上記範囲に限定した。バリアー層21aの膜厚が10〜30Åであるとき酸化被膜21aの上に形成されるポーラス層21bを含めた酸化被膜の厚さは30〜70Åであることが好ましい。
【0023】
また、残留圧延油は焼鈍時に分解蒸発するが、その際に酸化被膜21中に欠陥を残し、後工程のエッチング効率の悪いコイル端部を切り取る工程において、アルミニウム箔コイルの巻き直しが行われ、その際にアルミニウム箔に引っ張り応力がかかり、巻き直し後の
図1(c)に示すアルミニウム箔13ように、当該の欠陥がクラック30に成長する。
【0024】
最終焼鈍により得られる
図1(c)に示すアルミニウム箔13は、上記したように、その表面からは油分が確実に除去されており、しかもバリアー膜厚10〜30Åである酸化被膜21が均質に表面に形成されている。このアルミニウム箔13には、常法により粗面化処理を施すことができ、粗面化処理に際して高密度で均一なエッチングピットが形成され、高い粗面化処理率が得られる。高密度で均一なピットが形成されることにより、このアルミニウム箔13を用いた電解コンデンサは大きな静電容量を有することができる。
【0025】
本発明において、上記のようにして製造される電解コンデンサ用アルミニウム箔は、エッチング処理によって粗面化された後、電解コンデンサ用電極に供されるものである。以下、電解コンデンサ用アルミニウム箔の粗面化処理の一例について説明する。
電解コンデンサ用アルミニウム箔の粗面化処理は、前処理工程、エッチングピット発生工程、エッチングピット径拡大工程とによって行うことができる。前処理工程では、電解コンデンサ用アルミニウム箔を5%水酸化ナトリウム溶液(温度40℃)に60秒程度浸漬する。次に、エッチングピット発生工程を行う。この工程では、電解コンデンサ用アルミニウム箔を3M硫酸と1M塩酸との混合溶液(温度75℃)中に浸漬し、200mA/cm
2の直流電流で120秒電解する(1段目のエッチング)。これにより、電解コンデンサ用アルミニウム箔の表面に、各立方晶の(100)面に対して略垂直方向に伸びる腐食孔(ピット)が発生する。
【0026】
このとき、本発明により製造された電解コンデンサ用アルミニウム箔は立方晶率が90%以上と高く、また、適度な化学溶解性を有していることにより、ピットが高密度且つ均一に効率よく形成される。
【0027】
次に、エッチングピット径拡大工程を行う。この工程では、電解コンデンサ用アルミニウム箔を2M塩酸(温度80℃)に180秒程度浸漬する(2段目のエッチング)。これにより、電解コンデンサ用アルミニウム箔に形成されたピットの孔径が拡大する。
この工程でも、前工程と同様に、本発明により製造される電解コンデンサ用アルミニウム箔が適度な化学溶解性を有していることにより、ピットの孔径が均一に効率よく拡大する。以上の工程により、電解コンデンサ用アルミニウム箔の表面に、十分な深さを有するピットが高密度且つ均一に形成され、電解コンデンサ用アルミニウム箔の実効的な表面積が拡大する。ここで、この粗面化処理は、いずれの工程も無電解エッチングであるため、電力消費量の問題が無く、低いコストで行うことができる。
【0028】
このように粗面化処理が施された電解コンデンサ用アルミニウム箔(エッチング箔)は、電解コンデンサの電極として用いられる。電解コンデンサとしては、低圧用コンデンサ、中圧用コンデンサ、高圧用コンデンサのいずれでもよく、また、このエッチング箔は、陽極及び陰極のいずれとして用いても差し支えないが、中高圧電解コンデンサの陽極として使用するのが好適である。これにより、容量の大きな中高圧電解コンデンサを低コストで提供することができる。なお、電解コンデンサ用アルミニウム箔を陽極として用いる場合、該アルミニウム箔は、粗面化処理の後、その表面に酸化層(誘電体層)を形成する陽極酸化処理が施される。
【0029】
以上、本発明にかかる電解コンデンサ用アルミニウム箔の製造方法の実施形態について説明したが、前記電解コンデンサ用アルミニウム箔を構成する各部、製造方法及び粗面化処理の各工程及び各条件は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の具体的実施例について説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
「実施例1〜6及び比較例1〜11」
以下に明記した手順で各試験片を製造、評価した。各実施例においては、焼鈍前油量を30〜70mg/m
2の範囲内で、焼鈍時の保持温度500〜600℃の範囲内で4時間以上、焼鈍雰囲気は水素ガスにて実施した。各比較例においては、焼鈍前油量30〜70mg/m
2の範囲外、又は焼鈍時の保持温度500〜600℃の範囲外、又は焼鈍時間4時間未満、又は焼鈍時の雰囲気を不活性ガスであるアルゴンガス雰囲気にて実施した。
【0031】
99.995%の高純度アルミニウム地金を溶解し、Fe:5〜20ppm、Si:5〜20ppm、Cu:45〜55ppm、Pb:0.3〜0.8ppmに調整したのち、連続鋳造法にて高純度アルミニウムスラブとした。これを定法により熱間圧延、冷間圧延を行い、厚さ115〜120μmのアルミニウム箔を作製した。圧延の際に用いた圧延油には脂肪酸を添加した市販の石油系炭化水素を用いた。
【0032】
上記のアルミニウム箔を市販の脱脂液(日本ペイント株式会社製のサーフクリーナー)を用い、40℃の水中に10〜180sec浸漬し箔表面の油分を所定の残油量まで除去した。箔表面の残油量の測定は、厚みが既知である試料の測定箇所を一定の大きさに切り取り重量を測定後、炭素量分析装置にて炭素量を分析し、厚みと重量から試料の正確な表面積を求め、圧延油成分と分析した炭素量から算出する。
【0033】
油分の除去後、速やかに表1に示された条件によって各試験片の焼鈍を行った。焼鈍後は、塩酸1M+硫酸3Mの混合溶液75℃中で、200mA/cm
2の直流電流にて120sec電解を行った。さらに同液中で600sec浸漬を行い、エッチングピット口径の拡大処理を行った。得られたエッチング箔を100g/lホウ酸溶液中80℃中で400Vの陽極酸化を行った。これらの試験片の評価方法に関しては以下に示すとおりである。
【0034】
〔評価に関して〕
・静電容量の測定を行った。なお、実施例1の静電容量を100%とし、実施例2〜6、比較例1〜11に関しては実施例1に対する百分率として評価をおこなった。
・端点の変色に関しては目視にて評価をおこなった。目視で観察できないレベルを◎、茶褐色で変色幅が5mm以内であれば○、茶褐色で変色幅が5mm以上を△、幅に関係なく黒変した場合は×とした。◎及び○を良好であると判断した。
・ブロッキング現象の評価は、焼鈍後のアルミニウム箔コイルを巻き出す際に、密着なく巻出しを行うことができたものを◎、巻きだす際に密着はあるが皺が入らなかったものは○、部分的に皺が発生したものを△、連続して皺が発生したものを×とした。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すように、実施例1〜6はいずれも100%以上の静電容量を示しており、しかもブロッキング現象及び、端面の変色は見られなかった。これに対して焼鈍前油量が規定値である30〜70mg/m
2の上限、あるいは下限から外れた比較例1、2、6、7は静電容量が100%に達していない。また、焼鈍時の雰囲気を不活性ガスであるアルゴンガスにした場合(比較例3、4、5、6、7)では、静電容量が100%を超えたものはあるものの、端面の変色、及びブロッキング現象が見られ、製品として不適合である。さらに、焼鈍温度が500℃未満である比較例8、及び保持時間が4時間未満である比較例10では、静電容量が100%に達しておらず、600℃を超えた比較例9、及び保持時間が極端に長く16時間とした比較例11では、ブロッキング現象が発生し、しかも端面変色が顕著であった。
これらから本発明である、焼鈍前の油量制御による効果及び焼鈍時の還元性雰囲気による効果を実証できた。