(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モータアシスト制御のためのモータアシスト特性を前記負荷情報に基づいて算定するモータアシスト特性算定部と、前記機械アシスト制御のための変速比を算定する機械アシスト変速比算定部が備えられている請求項1に記載のハイブリッド作業車。
前記モータアシスト特性は前記モータアシスト制御におけるアシスト量とアシスト時間を規定しており、かつ前記モータアシスト特性が、所定時間一定のアシスト量を維持する初期モータアシスト特性領域とアシスト量を零まで経時的に減少させる終期モータアシスト特性領域とからなる請求項2に記載のハイブリッド作業車。
前記初期モータアシスト特性領域が1.5秒から2.5秒の時間間隔を有し、前記終期モータアシスト特性領域が1.5秒から2.5秒の時間間隔を有する請求項3に記載のハイブリッド作業車。
前記モータアシスト制御が実行された後、所定時間の間、次のモータアシスト制御の実行を禁止するモータアシスト制御禁止決定部が備えられている請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド作業車。
前記内燃機関はコモンレール方式で駆動され、前記負荷情報生成部は、コモンレール制御情報に基づいて前記負荷情報を生成する請求項1から5のいずれか一項に記載のハイブリッド作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2で取り扱われているハイブリッド車両は乗用車などの通常の車両であり、一般的には運転者によって操作されるアクセルペダルの踏み込み量などで、内燃機関に対するトルクアシストの必要性を判定することができ、特許文献1や特許文献2ではトルクアシストプロセスはそのように制御されている。これに対して、動力伝達軸を介して走行装置と作業装置とに駆動力を供給する内燃機関と、前記動力伝達軸に動力を出力することで前記内燃機関をアシストするモータジェネレータとを備えた、トラクタなどのハイブリッド作業車では、作業装置が受ける大きな作業負荷が動力伝達軸に、結果的には内燃機関に及ぶので、特許文献1や特許文献2で開示されたアシスト技術をそのまま流用することができない。
特に、作業装置として対地作業を行う耕耘装置等を装備したトラクタのような作業車の場合、作業負荷が回転負荷として内燃機関にかかる。しかながら、そのような作業負荷を常にモータジェネレータによるアシストで肩代わりしていると、短時間のうちにバッテリの充電量がなくなってしまう。そのために大きな容量のバッテリを搭載することは、省エネルギの観点からも避けなければならない。
【0007】
上記実情に鑑み、バッテリの上がりを回避しながらも、出力の小さな内燃機関で作業装置を用いたスムーズな作業走行が可能となるハイブリッド作業車が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるハイブリッド作業車は、動力伝達手段を介して走行装置と作業装置とに駆動力を供給する内燃機関と、前記動力伝達手段に設けられた変速装置と、前記変速装置の変速比を調整する変速制御ユニットと、前記動力伝達手段に接続されたモータジェネレータと、前記モータジェネレータから前記動力伝達手段に動力を出力することで前記内燃機関をアシストするモータアシスト制御を行うモータ制御ユニットと、前記モータジェネレータによって充電電力を受けるとともに前記モータジェネレータに駆動電力を与えるバッテリと、前記内燃機関が受ける回転負荷の増大を表す負荷情報を生成する負荷情報生成部と、
前記バッテリの充電量を算定するバッテリ管理部と、前記変速制御ユニットを通じて前記変速装置の変速比を下げることによって前記内燃機関をアシストする機械アシスト制御、または、前記モータアシスト制御の実行を決定するアシスト制御決定部とを備え
、
前記動力伝達手段は、前記変速装置による変速後の動力を前記走行装置に伝達し、かつ、前記変速装置による変速前の動力を前記作業装置に伝達し、
前記アシスト制御決定部は、前記バッテリ管理部が算定するバッテリ充電量が所定値を超えている状態で、前記負荷情報生成部の負荷情報から負荷の増大が判定された場合には、前記回転負荷の増大を解消するために、前記モータアシスト制御を
前記機械アシスト制御に優先して実行させ
、また、前記バッテリ管理部が算定するバッテリ充電量が所定値以下に低下している状態で、前記負荷情報生成部の負荷情報から負荷の増大が判定された場合には、バッテリ切れを避けながら前記回転負荷の増大を解消するために、前記モータアシスト制御に代えて前記機械アシスト制御を実行させる。
【0009】
本発明による上記構成によるハイブリッド作業車では、内燃機関に生じた回転負荷の増大を解消するために2つの方策が用意されている。1つの方策は、モータジェネレータを駆動してモータジェネレータから動力伝達手段に動力を出力することで内燃機関をアシストするモータアシストである。もう1つの方策は、変速制御ユニットを通じて動力伝達手段の変速装置の変速比を調整ことによって内燃機関をアシストする機械アシストである。本発明者の知見によれば、作業装置を用いて作業する作業車の場合、走行作業時や坂道発進時においては突発的にすなわち極めて短時間(数秒程度)だけ突出して高い作業負荷が生じ、それ以外では平均的な作業負荷が続く。突発的な高負荷の発生に対しては、応答性に優れたモータアシストが好適であり、持続する負荷に対してはバッテリ消費がない機械アシストが好適である。従って、負荷の増大が生じた際、先にモータアシストを実行し、さらに負荷の増大が続いている場合には、モータアシストに代えて機械アシストを実行することが適切である。このようにアシスト制御決定部が機械アシスト制御に優先してモータアシスト制御することで、バッテリの上がりを回避しながらも、出力の小さな内燃機関で作業装置を用いたスムーズな作業走行が実現する。
【0010】
内燃機関に対してより効果的なアシストを行なうためには、内燃機関にかかっている回転負荷の増大に応じて適切な量のアシストを行う必要がある。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記モータアシスト制御のためのモータアシスト特性を前記負荷情報に基づいて算定するモータアシスト特性算定部と、前記機械アシスト制御のための変速比を算定する機械アシスト変速比算定部が備えられている。
【0011】
モータアシストは、突発的な負荷増大に対して有効であるが、長時間のモータアシストの続行はバッテリ消費の観点から避けなければならないので、持続する負荷増大時には所定の短時間の経過後に、機械アシストへ移行することが重要である。このため、モータジェネレータのアシスト駆動挙動を決めるモータアシスト特性にはアシスト量だけでなくそのアシスト時間も規定しておくことが重要である。これにより、突発的な負荷増大だけに適応させることができ、無駄にバッテリを消費することが回避される。
【0012】
モータジェネレータによるアシストは、原則的には突発的な負荷増大を対象とした場合、短時間のアシスト過程の終了時に急激にアシストを停止すると搭乗者に違和感を与えることになる。この問題を抑制するため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記モータアシスト特性が、所定時間一定のアシスト量を維持する初期モータアシスト特性領域とアシスト量を零まで経時的に減少させる終期モータアシスト特性領域とから構成されている。これによりアシストがスムーズに終了することができる。
【0013】
走行しながらの耕耘作業などの対地作業では、作業装置が土壌などに突っ込む際や不意に硬い物質に遭遇した際に突発的な負荷増大が生じる。そのような突発的な負荷増大の時間は実験的かつ経験的に調べることができる。従って、そのような調査結果の統計的な評価に基づいてモータアシスト特性を予め決めておくことが好ましい。本発明の好適な実施形態の1つとして、前記初期モータアシスト特性領域が1.5秒から2.5秒の時間間隔を有し、前記終期モータアシスト特性領域が1.5秒から2.5秒の時間間隔を有することが提案される。そのような条件の下で算定された、いくつかのモータアシスト特性はマップ化し、負荷量や作業種で選択できるようにすると好都合である。
【0014】
本発明によるハイブリッド作業車では、一般的なハイブリッド車のように回生ブレーキを利用してバッテリを充電することで省エネルギを図るのではなく、突発的な負荷発生時にモータジェネレータでアシストすることで内燃機関を小型化して燃費を改善することを目的にしている。このため、小型のバッテリが搭載されるので、内燃機関の停止を導くバッテリ切れに注意を払わなければならない。この目的のために、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記アシスト制御が実行された後、所定時間の間、次のアシスト制御の実行を禁止するアシスト制御禁止決定部が備えられている。内燃機関に回転負荷の増大が検知されると、まずモータアシスト制御が実行され、その後に機械アシスト制御が実行されるが、回転負荷の増大が短期間の場合、アシスト制御がモータアシスト制御だけで終了するか、機械アシスト制御も短期間で終了することなる。そして、その後に再び内燃機関に回転負荷の増大が検知されると、またモータアシスト制御が実行される。このようなケースでは、モータアシスト制御が短期間で繰り返されることになり、バッテリの消費が激しくなる。このようなモータアシストの短期的な繰り返しは、アシスト制御禁止決定部によるモータアシスト制御に禁止期間を適切に設定することにより、抑制することができる。さらには、このアシスト制御禁止決定部の付加的な機能として、前記バッテリの充電量が所定未満と判定された場合には前記モータジェネレータによる前記内燃機関のアシストを強制的に禁止する機能を備えることができる。
【0015】
内燃機関がコモンレール方式で駆動されている場合の、本発明の具体的で好適な実施形態の1つでは、前記負荷情報生成部は、コモンレール制御情報を前記入力パラメータとして前記負荷情報を生成する。つまり、コモンレール制御を実行する制御部は、燃料噴射時期、燃料噴射量、機関回転数などの内燃機関データや、車速などの車両データから、負荷トルクを推定して、所定の機関回転数の維持や所定トルクの維持のために必要な燃料噴射時期や燃料噴射量を算定し、これを実行する機能を有する。従って、これらのコモンレール制御に関するコモンレール制御情報を利用して、機関回転数の突発的な低下検知または推定がおこなわれる。このようにして生成された負荷情報に基づいてモータアシスト特性が決定される。
【0016】
本発明の別な実施形態の一つとして、前記内燃機関の回転数挙動を入力パラメータとして前記負荷情報を生成するように、負荷情報生成部を構成してもよい。具体的には、比較的に容易に取得可能な、内燃機関の出力軸や動力伝達軸の回転数を測定した測定データから、所定時間当たりの回転数の変化や回転速度の変化が演算される。この演算結果からマップ等を用いて負荷の増減を算定または推定して負荷情報が生成され、モータアシスト特性の決定に利用される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるハイブリッド作業車の具体的な実施の形態を説明する前に、
図1を用いて本発明で採用されている動力システムの基本構成を説明する。
このハイブリッド作業車は、駆動源として、内燃機関E及びモータジェネレータ4を備え、車輪やクローラによって構成される走行装置2によって走行しながら、車体に装着された作業装置9を用いて走行作業を行う。駆動源からの動力を伝達するパワートレインである動力伝達手段1には、駆動源からの動力の伝達を入り切りする主クラッチ31と、作業装置9に動力を伝達するPTO軸90と、走行装置2に動力を伝達する動力伝達軸30と、変速装置10が含まれている。変速装置10は、好ましくは無段変速装置として構成され、変速制御ユニット8によってその変速比が調整される。なお、PTO軸90には動力伝達を入り切りするPTOクラッチ91が介装されている。
【0019】
モータジェネレータ4は、バッテリBを電力供給源として回転動力を生み出し、内燃機関Eと協働してハイブリッド作業車を走行させるものであるが、内燃機関Eによって駆動される状況下やハイブリッド作業車が減速している状況下、あるいは下り坂を慣性走行している状況下などにおいては、このモータジェネレータ4はバッテリBに電力を供給する発電機として機能することができる。
【0020】
内燃機関Eの回転制御は、電子ガバナ機構やコモンレール機構などのエンジン制御機器60を介してエンジン制御ユニット6によって行われる。モータジェネレータ4の駆動制御は、インバータ部70を介してモータ制御ユニット7によって行われる。エンジン制御ユニット6は、内燃機関Eの燃料噴射量などを制御するためのコンピュータユニットであり、内燃機関Eの回転数を一定に維持するようにエンジン制御機器60を制御する定速制御機能を有する。モータ制御ユニット7も同様にコンピュータユニットであり、モータジェネレータ4の回転数やトルクを制御するためにインバータ部70に制御信号を与える。また、モータ制御ユニット7は、モータジェネレータ4に対する駆動モードとして、動力伝達軸30に動力を出力するアシスト駆動モードと、バッテリBに充電電力を出力する充電駆動モードとを備えている。さらに、動力伝達軸30に対して影響を与えないゼロトルク駆動モードもあれば好都合である。
【0021】
インバータ部70は、よく知られているように、バッテリBの直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ4に供給し、モータジェネレータ4が発電機として動作する際には、バッテリBに直流電圧を供給するための整流器および電圧調整装置としての機能も果たす。つまり、バッテリBは、モータジェネレータ4にインバータ部70を介して電力を供給する放電プロセスで動作するとともに、モータジェネレータ4が発電機として動作する際にはモータジェネレータ4が発電する電力によって充電される充電プロセスで動作する。
【0022】
動力管理ユニット5は、エンジン制御ユニット6とモータ制御ユニット7に制御指令を与えることで、モータジェネレータ4が内燃機関Eに対してアシストするモータアシスト制御を管理する。さらに動力管理ユニット5は、モータジェネレータ4による
モータアシスト制御に代えて変速装置10の変速比を調整することで内燃機関Eにかかる回転負荷を低減する機械アシスト制御を変速制御ユニット8に要求する。動力管理ユニット5は、アシスト制御決定部50、負荷情報生成部51と、モータアシスト特性算定部52と、バッテリ管理部54と、運転モード選択部55を含んでいる。
【0023】
定速制御モードにおける内燃機関Eの運転自体はよく知られている。その際、作業装置9の作業状況や走行装置2が接地している地面状況によって、急激な負荷が動力伝達軸30にかかり、結果的に内燃機関Eの回転数を低下させる事態が
生じると、種々の問題が生じる。例えば、エンジン制御機器60による定速制御の遅れや、内燃機関E自体の出力不足などが原因で、内燃機関Eの回転数の低下(車速の低下)、極端な場合は内燃機関Eの停止(エンジンストール)が生じる。これを回避するために、動力伝達軸30にかかる負荷、結果的には内燃機関Eにかかる回転負荷を検知し、その負荷を少なくとも部分的に相殺すべく、モータアシスト制御または機械アシスト制御が実行される。
【0024】
負荷情報生成部51は、内燃機関Eないしは動力伝達軸30が受ける回転負荷を示す負荷情報を、エンジン制御ユニット6から与えられるエンジン制御情報または、各種センサによる検出情報から取り出される入力パラメータに基づいて生成する機能を有する。負荷情報生成部51で利用される入力パラメータとしては、内燃機関Eの回転数(回転速度)、動力伝達軸30の回転数(回転速度)、エンジン制御ユニット6によって算定されたエンジントルク、動力伝達軸30のトルク、車速、作業装置9の作業状態(耕耘深さ、牽引力、ローダーへの作用力など)が挙げられるが、実際に利用される入力パラメータは、作業車に装備されているセンサに依存する。動力伝達軸30の回転検出センサや車速センサは標準装備されている可能性が高いので、入力パラメータとして、動力伝達軸30の回転速度変動値や車速変動値を用いると好都合である。これらの入力パラメータは各種センサからの信号を処理する車両状態検出ユニットSを通じて送られてくる。負荷情報生成部51は、突発的な回転負荷の増大を検知するために、経時的な回転負荷の微分値または差分値に基づいて突発的な回転負荷の増大を示す負荷情報を生成してもよいが、単にしきい値判定だけでアシスト制御のトリガーとなる回転負荷の増大を示す負荷情報を生成してもよい。
【0025】
アシスト制御決定部50は、負荷情報生成部51で生成された負荷情報から、内燃機関Eに無視できない回転負荷の増大が生じていることが判定されると、モータアシスト制御または機械アシスト制御による内燃機関Eのアシストを決定する。その際、応答性に優れたモータアシスト制御を機械アシスト制御に優先して実行させる。但し、バッテリBの消費をできるだけ少なくするため、モータアシスト制御の実行時間は短時間に限定されている。さらに、バッテリ切れを避けるために、バッテリBの充電量が所定値以下になれば強制的にモータアシスト制御を中止させるモータアシスト制御禁止決定部53がアシスト制御決定部50に含まれている。また、このモータアシスト制御禁止決定部53は、モータアシスト制御が短期間の間で繰り返し実行されることを避けるために、モータアシスト制御の再実行を所定期間だけ禁止する。
【0026】
内燃機関Eが突発的な負荷増大に対処できるように、モータアシスト制御においてモータジェネレータ4を短時間だけ駆動させるが、このモータアシスト制御の適切な実行のために、モータアシスト特性算定部52が機能する。モータアシスト特性算定部52は、負荷情報生成部51によって生成された負荷情報に基づいて、モータジェネレータ4を用いた内燃機関Eのアシスト制御を実行すべく、アシスト制御におけるアシスト量とアシスト時間を規定するモータアシスト特性を決定する。モータ制御ユニット7は、モータアシスト特性算定部52で決定されたモータアシスト特性に基づいてインバータ部70を介してモータジェネレータ4を制御する。
【0027】
バッテリ管理部54はバッテリBの充電量を算定する。その際、バッテリBがコンピュータを備えたインテリジェントなバッテリユニットとして構成されていれば、バッテリBからのバッテリ情報に基づいてバッテリの充電量を算定し、そうでない場合は、バッテリ状態検出センサからの信号を受けた車両状態検出ユニットSからのバッテリ情報に基づいてバッテリBの充電量を算定する。
【0028】
機械アシスト制御は、アシスト制御決定部50からの要求に応じて変速制御ユニット8が変速装置10の変速比を調整して内燃機関Eの過剰な回転負荷を抑制する制御である。従って、機械アシスト制御で用いられる目標となる変速比は、現状の変速比と、内燃機関Eにかかっている回転負荷によって算定されることになる。この目的のために変速制御ユニット8に、機械アシスト変速比算定部80が備えられている。
【0029】
なお、運転モード選択部55は、PTO軸90から一定回転数の回転動力を取り出して作業に利用する作業装置9を用いた作業の際や、作業車を所定速度で走行(クルージング走行)させる際に用いられる回転数を一定に維持する定速制御モードを設定する。この定速制御モードが設定されると、エンジン制御ユニット6は内燃機関Eの回転数を設定された所定値に維持するようにエンジン制御機器60を制御する。
【0030】
モータアシスト制御及び機械アシスト制御における情報の基本的な流れが
図2に示されている。まず、エンジン制御ユニット6は、エンジン制御機器60にアクセル設定デバイスで設定された設定値に基づくエンジン制御信号を送っている。このエンジン制御信号に基づいて燃料噴射量等が調整され、内燃機関Eが駆動される。内燃機関Eの回転数の変動は外部因子の変動、つまり走行負荷や作業負荷などの負荷変動によって生じるので、その負荷変動量によって回転数の不測の低下やエンジンストールが生じないように、燃料噴射量等を調整して、トルクを大きくする。しかしながら、内燃機関Eの定格出力は通常作業で要求される最大のトルクに合わせているので、不測の突発的な負荷増大が生じた場合、回転数の低下、最悪の場合エンジンストールに至ってしまう。これを避けるために、アシスト制御決定部50が、まずはモータアシスト制御を実行させて、モータ制御ユニット7がインバータ部70にアシスト信号を送り、モータジェネレータ4を駆動して内燃機関Eをアシストする。その後、過剰な負荷が持続している場合には、モータアシスト制御に代えて機械アシスト制御を実行させて、機械アシスト変速比算定部80によって設定された変速比に変速装置10を調整して、内燃機関Eをアシストする。
【0031】
負荷情報生成部51は、車両状態検出ユニットSから送られてくる車両状態情報あるいは、エンジン制御機器60から送られてくるエンジン状態情報に基づいて負荷量を含む負荷情報を生成して、アシスト制御決定部50とモータアシスト特性算定部52、さらには機械アシスト変速比算定部80に送る。バッテリ管理部54は、バッテリBからの充電情報に基づいて、充電量(一般にSOCと呼ばれている)を算定し、この充電量を含むバッテリ情報をアシスト制御決定部50及びモータアシスト特性算定部52に送る。
【0032】
モータアシスト特性算定部52は、負荷情報から読み出した負荷量:Lと、バッテリ情報から読み出した充電量:SCに基づいて、適切なモータアシスト特性:W(t)を決定する。このモータアシスト特性は、W(t)=Γ〔L,SC〕といった一般式から導出されるものである。つまり、モータアシスト特性は、経時的なアシスト量を決めるグラフで表すことできる。実際には、複数のモータアシスト特性をマップ化して格納しておき、負荷量:Lと充電量:SCとから最適なモータアシスト特性を選択する構成が好適である。
【0033】
モータアシスト特性が決定されると、モータ制御ユニット7がこのモータアシスト特性に基づいてアシスト制御信号を生成し、インバータ部70を通じてモータジェネレータ4を駆動制御し、動力伝達軸30に生じた負荷の増大を補償する。電気モータのトルク応答性は早いので、突発的な走行負荷や作業負荷の増大が発生しても、それにより回転数の低下が回避される。
【0034】
なお、モータ制御ユニット7は、アシスト制御以外に、発電指令をインバータ部70に送ることで、モータジェネレータ4をジェネレータとして機能させ、バッテリBを充電することができる。また、モータ制御ユニット7がゼロトルク制御信号をインバータ部70に送ることで、モータジェネレータ4はゼロトルク駆動を行う。
【0035】
変速制御ユニット8がアシスト制御決定部50から機械アシストの要求を受けると、機械アシスト変速比算定部80によって、負荷情報生成部51からの負荷情報と、変速制御ユニット8で管理している現状の変速比とに基づいて機械アシスト制御における目標となる変速比(機械アシスト変速比)が算定される。機械アシスト変速比が算定されると、その変速比が実現するように変速装置10に対して変速制御信号が出力される。この機械アシスト制御は、内燃機関Eに生じている負荷の増大に対処するために、モータアシスト特性に基づいて短時間のアシスト制御が終了後に実行される。つまり、モータアシスト制御禁止決定部53によってアシスト制御が禁止されていない限りにおいて、モータアシスト制御はこの機械アシスト制御に先立って実行される。これにより、応答性がアシスト制御に較べて遅い機械アシスト制御が、頻繁に生じる突発的な負荷増大に応答して発生するハンチング現象が抑制される。但し、短期間でのモータアシスト制御の繰り返しを避けるために、モータアシスト制御の終了後の所定時間、次のモータアシスト制御はモータアシスト制御禁止決定部53によって禁止される。
【0036】
次に、本発明の具体的な実施形態を説明する。この実施形態では、ハイブリッド作業車は、
図3に示すような、よく知られた形態の汎用トラクタである。このトラクタの動力システムは、
図4に模式化して示されている。トラクタ車体には、内燃機関E、モータジェネレータ4、油圧駆動式の主クラッチ31、変速装置10、運転部20、及び、走行装置2としての左右一対の前輪2aと後輪2bなどが備えられている。さらに車体の後部に作業装置9として耕耘装置が昇降機構によって装着されている。昇降機構は油圧シリンダによって動作する。
【0037】
図4と
図5に模式的に示されているように、このトラクタの内燃機関Eはコモンレール方式で回転制御されるディーゼルエンジン(以下、エンジンEと略称する)であり、エンジン制御機器60としてコモンレール制御機器を備えている。変速装置10は、油圧機械式の無段変速装置(以下、HMTと略称する)12と前後進切換装置13と複数段の変速を行うギヤ変速装置14、ディファレンシャル機構15とを含み、その動力は動力伝達軸30を通じて、最終的に駆動車輪(前輪2aまたは後輪2bあるいはその両方)2を回転させる。前後進切換装置13とギヤ変速装置14のそれぞれには油圧駆動式の変速クラッチ10aが備えられている。さらに、このエンジンE及びモータジェネレータ4の回転動力を伝達する動力伝達軸30の一部を構成するPTO軸90を経てトラクタに装備された耕耘装置9は回転動力を受けることができ、これにより耕耘ロータが所定の耕耘深さで回転駆動する。
【0038】
HMT12は、エンジンE及びモータジェネレータ4からの動力を受ける
斜板式可変吐出型油圧ポンプと当該油圧ポンプからの油圧によって回転して動力を出力する油圧モータとからなる静油圧式変速機構12Aと、遊星歯車機構12Bとから構成されている。遊星歯車機構12Bは、エンジンE及びモータジェネレータ4からの動力と油圧モータからの動力とを入力として、その変速出力を後段の動力伝達軸30に供給するように構成されている。
【0039】
この静油圧式変速機構12Aでは、エンジンE及びモータジェネレータ4からの動力がポンプ軸に入力されることにより、油圧ポンプから油圧モータに圧油が供給され、油圧モータが油圧ポンプからの油圧によって回転駆動されてモータ軸を回転させる。油圧モータの回転はモータ軸を通じて遊星歯車機構12Bに伝達される。静油圧式変速機構12Aは、油圧ポンプの斜板12aに連動されているシリンダを変位させることにより、この斜板12aの角度変更が行なわれ、正回転状態、逆回転状態、及び正回転状態と逆回転状態の間に位置する中立状態に変速され、かつ正回転状態に変速された場合においても逆回転状態に変速された場合においても、油圧ポンプの回転速度を無段階に変更して油圧モータの回転速度(時間当たり回転数)を無段階に変更する。その結果、油圧モータから遊星歯車機構12Bに出力する動力の回転速度を無段階に変更する。静油圧式変速機構12Aは、斜板12aが中立状態に位置されることで、油圧ポンプによる油圧モータの回転を停止、結果的には油圧モータから遊星歯車機構12Bに対する出力を停止する。
【0040】
遊星歯車機構12Bは、サンギヤと、当該サンギヤの周囲に等間隔で分散して配置された3個の遊星ギヤと、各遊星ギヤを回転自在に支持するキャリヤと、3個の遊星ギヤに噛合うリングギヤと、前後進切換装置13に連結している出力軸(動力伝達軸30の1つ)とを備えている。なお、この実施形態では、キャリヤは外周にエンジンE側の動力伝達軸30に取り付けられた出力ギヤと噛み合うギヤ部を形成しているとともに、サンギヤのボス部に相対回転自在に支持されている。
【0041】
上述した構成により、このHMT12は、静油圧式変速機構12Aの斜板12aの角度を変更することにより、駆動車輪である前輪2aまたは後輪2bあるいはその両方への動力伝達を、無段階で変速することができる。この斜板12aの制御は、変速制御ユニット8からの制御指令に基づいて動作する油圧制御ユニット8aの油圧制御によって実現する。また、上述した油圧駆動式のシリンダや主クラッチ31や変速クラッチ10aなどの油圧アクチュエータの油圧源としての油圧ポンプPが備えられている。この油圧ポンプPは動力伝達軸30から回転動力を受ける機械式ポンプを採用してもよいし、電動モータから回転動力を受ける電動式ポンプを採用してもよい。電動式ポンプの場合、その電動モータは油圧制御ユニット8aによって制御される。
【0042】
変速制御ユニット8には、変速装置10に対する変速操作(変速比調整操作)を行うための種々の制御機能が構築されているが、特に本発明に関係する機能は、内燃機関Eにおける負荷の増大を軽減するように変速比を変更する機械アシスト制御を実行する機能であり。ここでは、この機能を実現するために、機械アシストのための機械アシスト変速比を算定する機械アシスト変速比算定部80が構築されている。機械アシスト変速比算定部80の簡単な構築方法の一例は、
図5で模式的に示されているが、負荷量と現変速比を入力として機械アシストにおける目標変速比(機械アシスト変速比)を導出するマップを作成することである。つまり、負荷情報生成部51で生成される負荷情報に含まれる負荷量:L1と変速制御ユニット8が自ら保持している現変速比:R1と変数として機械アシスト変速比:rを導く関数:r=G(L1,R1)をマップ化する。
【0043】
変速制御ユニット8は、変速装置10の変速比を機械アシスト変速比算定部80で算定された機械アシスト変速比に変更する変速制御信号を油圧制御ユニット8aに与える。具体的には、
図5に示すように、変速制御ユニット8は、機械アシスト変速比算定部80によって算定された変速比を実現するために、HMT12の斜板12aの角度を変更する油圧制御信号を油圧制御ユニット8aに送る。
【0044】
この動力システムにおけるモータジェネレータ4の制御、つまりエンジンEに対するトルクアシストは、動力管理ユニット5によって行われるが、ここでは、この動力管理ユニット5は、
図1と
図2を用いて説明した構成を流用している。動力管理ユニット5、エンジン制御ユニット6、車両状態検出ユニットSも、それぞれ車載LANによってデータ伝送可能に接続されている。
【0045】
車両状態検出ユニットSは、トラクタに配備されている種々のセンサからの信号や、運転者によって操作される操作器(クラッチペダルやブレーキペダル)の状態を示す操作入力信号を入力し、必要に応じて信号変換や評価演算を行い、得られた信号やデータを車載LANに送り出す。
【0046】
油圧制御ユニット8aに制御指令を与える上部の電子デバイスとして、耕耘装置9の操作のための作業装置制御ユニット99も油圧制御ユニット8aと接続されている。
【0047】
図6に示すように、このモータアシスト特性算定部52には、アシストマップ格納部52aが設けられている。このアシストマップ格納部52aは、モータアシスト特性をマップ化したモータアシスト特性マップMを予め複数作成して格納するか、あるいは必要に応じて適正なモータアシスト特性マップMを作成して設定する機能を有する。模式的に図示されているように、このモータアシスト特性は、経時的なアシスト量を決めるグラフで表すことできる。
図6の例では、横軸が時間で、縦軸がアシストゲインである。アシストゲインは、負荷情報から読み出した負荷量に応じて算定される最大アシスト量(モータトルク)に対する比率であり、0%から100%の間の数値をとる。つまり、最大アシスト量にこのモータアシスト特性マップMから得られたアシストゲインを乗算することで、実際にモータジェネレータ4によってアシストされるアシスト量が求められる。この実施形態でのモータアシスト特性は、所定時間一定のアシスト量を維持する初期モータアシスト特性領域Sとアシスト量を零まで経時的に減少させる終期モータアシスト特性領域Eとからなる。初期モータアシスト特性領域Sの時間間隔t1が1.5秒から2.5秒、好ましくは
2秒であり、終期モータアシスト特性領域Eの時間間隔t2が1.5秒から2.5秒、好ま
しくは2秒である。図示されたモータアシスト特性マップMでは、初期モータアシスト特性領域Sにおけるアシストゲインは100%で一定であり、終期モータアシスト特性領域Eは線形である。もちろん、その減少傾向は、任意の形状を採用することができる。また、初期モータアシスト特性領域Sと終期モータアシスト特性領域Eの両方の領域において非線形なグラフを採用することも可能である。
【0048】
モータアシスト特性算定部52は、負荷情報から読み出した負荷量とバッテリ情報から読み出した充電量とから最適なモータアシスト特性マップMを決定する。その他のモータアシスト特性マップMでは、初期モータアシスト特性領域Sにおけるアシストゲインは10%程度から100%未満の範囲の値をとり、終期モータアシスト特性領域Eは減少関数となるような、種々のモータアシスト特性が記述されている。つまり、実際にモータジェネレータ4によって生み出されるアシスト量は、負荷量または充電量あるいはそれら両方によってその都度変動する。
【0049】
なお、このアシスト特性に基づくモータアシスト制御の短期間での繰り返しは、モータアシスト制御禁止決定部53によって禁止される。このモータアシスト制御の繰り返し禁止時間は、バッテリBの充電量によって変更してもよいし、バッテリBの容量によって予め決めておいても良い。また、作業によって可変されてもよい。いずれにせよ、バッテリ充電量の急激な低下をもたらさないように設定される。
【0050】
図7に示すように、エンジンEの後面側にモータジェネレータ4と主クラッチ31とを収容するモータハウジング40が備えられている。モータジェネレータ4は、エンジンEの駆動力により発電を行う三相交流発電機の機能と、外部から供給される電力により回転作動する三相交流モータの機能とを併せ持つ。従って、インバータ部70がバッテリBからの直流電力を三相交流電力に変換してモータジェネレータ4に供給する。また、インバータ部70は、モータジェネレータ4で発電された三相交流電流を直流電流に変換し昇圧してバッテリBに供給する。
【0051】
図7から明らかなように、エンジンEとモータジェネレータ4と主クラッチ31とが、この順序で備えられ、エンジンEの後部に連結したリヤエンドプレート40aに対してモータハウジング40が連結し、これによりモータハウジング40にモータジェネレータ4と主クラッチ31とが収容されている。
【0052】
モータジェネレータ4は、永久磁石41を外周に備えたロータ42と、このロータ42を取り囲む位置に配置されたステータ43とで構成され、ステータ43は、ステータコアの複数のティース部(図示せず)にコイルを巻回した構造を有している。エンジンEの出力軸Ex(クランク軸)の軸端に対向して、この出力軸Exの回転軸芯Xと同軸芯で、モータジェネレータ4のロータ42が配置され、このロータ42のうち出力軸Exと反対側の面に主クラッチ31のベースプレート31aが配置され、出力軸Exとロータ42と主クラッチ31のベースプレート31aとがねじ連結されている。このベースプレート31aはフライホイールとしての機能も有するが、上述したように、モータジェネレータ4は、フライホイールが果たしていた慣性力機能を部分的に実行するので、従来に比べ軽量化されている。
【0053】
モータハウジング40は、前部ハウジング40Aと後部ハウジング40Bとを分離可能に連結した構造を有しており、モータジェネレータ4を組み立てる際には、前部ハウジング40Aの内面にステータ43を備えた状態で、この前部ハウジング40Aをリヤエンドプレート40aに連結し、次に、出力軸Exの後端にロータ42が連結される。
【0054】
主クラッチ31は、ベースプレート31aの後面に連結するクラッチカバー31bの内部にクラッチディスク31cと、プレッシャプレート31dと、ダイヤフラムバネ31eとを配置し、クラッチディスク31cからの駆動力が伝えられる、動力伝達軸30の1つの構成要素としてのクラッチ軸30aとを備えており、図示されていないクラッチペダルによって操作される。
【0055】
クラッチ軸30aは、後部ハウジング40Bに対して回転軸芯Xを中心にして回転自在に支持され、クラッチディスク31cは、スプライン構造によりクラッチ軸30aに対してトルク伝動自在、かつ、回転軸芯Xに沿って変位自在に支持され、ダイヤフラムバネ31eは、プレッシャプレート31dを介してクラッチ入り方向への付勢力をクラッチディスク31cに作用させる構成を有している。また、クラッチ軸30aの動力は、ギヤ伝動機構を介して変速装置10の入力軸となる、動力伝達軸30の1つの構成要素としての中間伝動軸30bに伝えられる。
【0056】
トラクタに搭載されているバッテリBの容量は限定されたものであり、作業走行中のトルクアシストには、かなりの電力消費が要求されることから、作業中にアシスト制御が繰り返されると、バッテリBの充電量がすぐになくなってしまう。これを回避するために、モータジェネレータ4によるアシストはバッテリBの充電量を考慮しながら短時間だけ実行し、バッテリBの充電量が所定未満となれば、モータアシスト制御は中止することが必要となる。
【0057】
このため、この実施形態では、負荷情報生成部51によって生成された負荷情報に含まれている負荷量(エンジン負荷率、回転数低下量)と、バッテリ管理部54から送られてくるバッテリ情報に含まれている充電量とに基づいて、モータアシスト制御禁止決定部53が、
モータアシスト制御の許可と禁止を判定する。その際に用いられる判定マップの一例が
図8に示されている。この判定マップから理解できることは、原則的には充電量が十分でない限り
モータアシスト制御は行われないようにしている。例えば、充電量が80%程度のところをアシスト判定ラインとし、それ以下ではトルクアシストを行わず、バッテリBが上がってしまうことを避けようしている。しかしながら、エンジン負荷率が100%に近くなれば、エンジンストールの可能性が出てくるので、充電量が80%以下でも
モータアシスト制御を許可する。その際に、エンジン負荷率が90%から100%にかけてアシスト判定ラインを傾斜させて、つまりエンジン負荷率が所定量(ここでは約90%以上)において、エンジン負荷率が高いほど充電量が低い状態でも
モータアシスト制御が許可される。エンジン負荷率が100%では、充電量が30%程度でも
モータアシスト制御が許可される。この判定マップでは、アシスト判定ラインは帯状となっており、アシスト判定ラインの上側境界線より上の領域は、アシスト駆動領域であり、
モータアシスト制御が許可される。アシスト判定ラインの下側境界線より下の領域は充電駆動領域である。さらに、アシスト判定ラインの上側境界線と下側境界線とに囲まれたアシスト判定帯は、
モータアシスト制御も充電も行わないバッファ領域であり、この実施形態では、このバッファ領域をゼロトルク駆動制御が行われるゼロトルク駆動領域としている。充電駆動領域とゼロトルク駆動領域では、
モータアシスト制御は禁止される。
【0058】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、エンジンEに作用する負荷を検出するためにエンジン回転数ないしは伝動軸回転数を利用していたが、作業装置9に直接負荷検出センサを設けて、この負荷検出信号を用いて、アシスト制御の要否を判定してもよい。
(2)上記実施形態では、エンジンEとモータジェネレータ4とが直結されており、その後に主クラッチ31が装着され、動力伝達軸30に動力が伝達されていたが、これに代えて、エンジンEとモータジェネレータ4との間に主クラッチ31を装着してもよい。
(3)上記実施形態では、変速装置10にHMT12を用いた無段変速が採用されていたが、多段ギヤ式変速装置を用いた多段変速を採用してもよい。
(4)モータアシスト特性として、作業装置9のタイプおよびその使用形態にそれぞれ最適化された個別のモータアシスト特性を予め作成して、それを適切に選択するようにしてもよい。例えば、作業車に装着される作業装置9の種別を検知する作業装置種別検知部あるいは手動の作業装置種別設定部を設け、実際に装着され利用される作業装置9の種別を補助パラメータとしてモータアシスト特性算定部52に与える。これにより、モータアシスト特性算定部52は、使用作業装置種により適切なモータアシスト特性を決定することができる。
(5)上述した実施形態では、モータアシスト制御が終了してから機械アシスト制御が開始していたが、モータアシスト制御の途中でモータアシスト制御と機械アシスト制御とを所定のアシスト割合で同時に実行させてもよい。特に、モータアシスト制御から機械アシスト制御への移行時において、モータアシスト制御のアシスト割合を減少させていくとともに機械アシスト制御のアシスト割合を増加させていく混合制御も好適である。また、バッテリ充電量が少ない場合では、モータアシスト制御のアシストを機械アシスト制御のアシストで補うような制御方法も本発明に含まれるものである。つまり、モータアシスト制御が機械アシスト制御に優先するということは、モータアシスト制御が主で機械アシスト制御が従となる混合アシスト制御も含まれるのである。