(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る与信管理システムを詳細に説明する。
【0012】
まず始めに、与信管理システムの概要を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム構成を示す図である。
図1において、外部サーバ100は、外部ネットワーク内に設置されたサーバである。データセンタなどに設置された与信管理サーバ101は、ネットワーク102(例えば、インターネット)を介して、外部サーバ100と通信を行うように構成されている。また、与信管理サーバ101は、ネットワーク103(例えば、イントラネットやエクストラネット)を介して、1または複数のクライアント端末104a、・・・、104n(以下、まとめて「クライアント端末104」という)と通信を行うように構成されている。クライアント端末104は、例えば、与信判断を行う金融機関担当者が使用する端末である。なお、
図1において、与信管理サーバ101を単一のサーバとして示しているが、複数台のサーバによる分散システムとして構成することも可能である。
【0013】
与信管理サーバ101は、外部サーバ100から販売先データおよび仕入先データを受信し、かつ商流データを作成する。また、与信管理サーバ101は、作成した商流データに基づいて、為替明細データから商流為替明細データを作成する。この際、為替明細データのうち、口座名義が異なるため、別データ(レコード)として扱われる、本来は同一商流(取引先顧客と販売先とが実質的に同一、または取引先顧客と仕入先とが実質的に同一)のデータをサマリーする。そのため、与信管理サーバ101は、外部サーバ100から企業属性データを受信し、かつ当該企業属性データに基づいて名寄せ処理を実行する。
【0014】
次に、与信管理サーバ101の構成を詳細に説明する。なお、
図1では、単一のコンピュータシステムを想定し、必要な機能構成だけを示している。
【0015】
与信管理サーバ101は、CPU110に、システムバス115を介してRAM111、入力装置112、出力装置113、通信制御装置114、および不揮発性記憶媒体(ROMやHDDなど)で構成される記憶装置116が接続された構成を有する。記憶装置116は、与信管理システムの各機能を奏するためのソフトウェアプログラムを格納するプログラム格納領域と、当該ソフトウェアプログラムで取り扱うデータを格納するデータ格納領域とを備えている。以下に説明するプログラム格納領域の各手段は、実際は独立したソフトウェアプログラム、そのルーチンやコンポーネントなどであり、CPU110によって記憶装置116から呼び出されRAM111のワークエリアに展開されて、データベースなどを適宜参照しながら順次実行されることで、各機能を奏するものである。
【0016】
記憶装置116におけるデータ格納領域は、本発明に関連するものだけを列挙すると、販売先データ記憶部131、仕入先データ記憶部132、商流データ記憶部133、為替明細データ記憶部134、企業属性データ記憶部135、商流為替明細データ記憶部136、倒産データ記憶部137、アラームデータ記憶部138、および名寄せ条件データ記憶部139を備える。いずれも、記憶装置116内に確保された一定の記憶領域である。
【0017】
販売先データ記憶部131は、取引先顧客に対する販売先のデータを格納する。
図2は、本発明の一実施形態に係る販売先データ記憶部131に格納されたデータを示す図である。
図2における販売先データは、取引先顧客を一意に示す「企業番号」、取引先顧客に対する販売先を一意に示す「販売先企業番号」、およびデータの登録(更新)日を示す「更新日」を含む。なお、「企業番号」および「販売先企業番号」は同一フォーマットであり得、取引先顧客が、別の取引先顧客に対する販売先であることもある。また、外部サーバ100が複数存在する場合、各々のサーバから販売先データが連携される場合があり、この場合、「企業番号」および「販売先企業番号」は各々のサーバが保持するDBでユニークな番号となる。そのため、例えば、
図2における「企業番号」に代えて、同一の企業を示す場合であっても、「第1の企業番号」および「第2の企業番号」と複数保持することになる(すなわち、企業Aを示す企業番号であっても、第1の企業番号では「11111111」であり、第2の企業番号では「9999999999」であるというケースが起こり得る)。この考え方は、「販売先企業番号」についても適用され得る。
【0018】
仕入先データ記憶部132は、取引先顧客に対する仕入先のデータを格納する。
図3は、本発明の一実施形態に係る仕入先データ記憶部132に格納されたデータを示す図である。
図3における仕入先データは、取引先顧客を一意に示す「企業番号」、取引先顧客に対する仕入先を一意に示す「仕入先企業番号」、およびデータの登録(更新)日を示す「更新日」を含む。なお、「企業番号」および「仕入先企業番号」は同一フォーマットであり得、取引先顧客が、別の取引先顧客に対する仕入先であることもある。また、「仕入先企業番号」についても、前項で説明した、「第1の企業番号」および「第2の企業番号」の考え方は適用され得る。
【0019】
商流データ記憶部133は、取引先顧客に対する商流データを格納する。
図4は、本発明の一実施形態に係る商流データ記憶部133に格納されたデータを示す図である。
図4における商流データは、取引先顧客を一意に示す「企業番号」、取引先顧客に対する販売先または仕入先を一意に示す「取引先企業番号」、取引先企業番号によって示される企業が販売先か仕入先かを示す「商流区分」、およびデータの登録(更新)日を示す「更新日」を含む。ここで、「商流区分」は、例えば、取引先企業番号によって示される企業が販売先である場合は「1」であり、仕入先の場合は「2」である。また、取引先顧客(企業Aとする)と、その取引先企業(企業Bとする)との間には各々商流が存在し、企業Aに対する販売先が企業Bである場合、企業Bに対する仕入先は企業Aという関係が成立する。そのため、原則として、商流データには、企業間の取引に対して、2レコード分のデータが存在することになる。
【0020】
為替明細データ記憶部134は、取引先顧客に対する入出金を示す為替明細データを格納する。
図5は、本発明の一実施形態に係る為替明細データ記憶部134に格納されたデータを示す図である。
図5における為替明細データは、代金を支払う側(債務者)である発信者の金融機関データおよび口座データ、ならびに代金を受け取る側(債権者)である受信者の金融機関データおよび口座データ、取引された金額を示す「取引額」、および取引された日付を示す「取引日」を含む。
【0021】
企業属性データ記憶部135は、販売先および仕入先を含む取引先企業のデータを格納する。
図6は、本発明の一実施形態に係る企業属性データ記憶部135に格納されたデータを示す図である。
図6における企業属性データは、取引先企業を一意に示す「企業番号」、企業名のカタカナ表記である「企業名カナ」、法人格(株式会社、有限会社)が何であるかを示す「法人格コード」、法人格が企業名の前後のいずれかに表示されるかを示す「法人格前後表示」、ならびに取引先企業の金融機関データおよび口座データを含む。ここで、「法人格コード」は、例えば、取引先企業が株式会社である場合は「01」であり、有限会社の場合は「02」である。また、「法人格前後表示」は法人格が企業名の前に表示される場合(例えば、株式会社特許商事)は「01」、後に表示される場合(例えば、ABC株式会社)は「02」である。
図6における「金融機関コード」および「支店コード」は、取引先企業が1〜3の3種類の金融機関および支店の組み合わせを有し得ることを意味している。他の実施形態では、「金融機関コード」および「支店コード」を3種類以上有し得るように項目数を増やすこともできるし、また1レコード1種類とし複数レコード持つこともできる。
【0022】
商流為替明細データ記憶部136は、為替明細データにおける同一名義人に対し名寄せ処理を施し、サマリーした商流為替明細データを格納する。
図7は、本発明の一実施形態に係る商流為替明細データ記憶部136に格納されたデータを示す図である。
図7における商流為替明細データは、代金を支払う側(債務者)である発信者を一意に示す「発信者企業番号」および「発信者名」、ならびに代金を受け取る側(債権者)である受信者を一意に示す「受信者企業番号」および「受信者名」、取引された金額の合計額を示す「取引額計」、および取引された月を示す「取引月」を含む。なお、
図7における商流為替明細データは、
図5における為替明細データに対し、取引月単位でサマリーしたものを想定しているため、「取引額計」は、為替明細データにおける同一名義人における「取引月」単位の「取引額」の合計である。
【0023】
倒産データ記憶部137は、倒産した企業のデータを格納する。
図8は、本発明の一実施形態に係る倒産データ記憶部137に格納されたデータを示す図である。
図8における倒産データは、倒産した企業の「企業番号」、および倒産した日を示す「倒産日」格納する。
【0024】
アラームデータ記憶部138は、取引先顧客ごとのアラームデータを格納する。
図9は、本発明の一実施形態に係るアラームデータ記憶部138に格納されたデータを示す図である。
図9におけるアラームデータは、取引先顧客を一意に示す「企業番号」、各アラームデータを格納する。各アラームデータは、一実施形態では、取引先顧客が倒産したことを示す「倒産」、取引先顧客に対する販売先または仕入先が倒産したことを示す「商流倒産」、および取引先顧客における入金が一定期間に所定の割合減ったことを示す「入金減」である。なお、この場合、例えば、各データは「0」がアラームとして非該当、「1」が該当することを示すON/OFFフラグとして使用することができる。しかしながら、「商流倒産」の場合は、「0」が非該当、「1」が販売先倒産、「2」が仕入先倒産、ならびに「3」が販売先および仕入先倒産として使用することができる。また、「入金減」については、小幅減から大幅減などと段階分けし、各々を示す数値を割り当てることもできる。これにより、より細かいアラームデータを示すことができる。
【0025】
名寄せ条件データ記憶部139は、名寄せ処理に用いる変換データを格納する。
図10は、本発明の一実施形態に係る名寄せ条件データ記憶部139に格納されたデータを示す図である。
図10における名寄せ条件データは、変換前の文字列を示す「変換元」、および変換後の文字列を示す「変換先」格納する。なお、「変換先」が空白の場合は、「変換元」が示す文字列を単に削除するという意味である。また、他の実施形態では、削除文字列のみをデータとして保持することができる。この場合は、名寄せ条件データとして、変換用のデータと、削除用のデータの2つに基づいて、名寄せ処理を実施することになる。さらに他の実施形態では、変換および削除条件をプログラム上に記述する(いわゆるハードコーディング)場合は、名寄せ処理に用いる変換データは不要となるため名寄せ条件データ記憶部139も不要となる。
【0026】
次に、記憶装置116におけるプログラム格納領域に格納されているソフトウェアプログラムは、本発明に関連するものだけを列挙すると、データ送受信手段120、商流データ作成手段121、商流為替明細データ作成手段122、名寄せ手段123、および異常値捕捉手段124を備えている。これらの手段120−124は、CPU110によって実行される。
【0027】
データ送受信手段120は、外部サーバ100から販売先データ、仕入先データ、企業属性データ、および倒産データなどを受信し、それぞれ、販売先データ記憶部131、仕入先データ記憶部132、企業属性データ記憶部135、および倒産データ記憶部137に記憶する。また、データ送受信手段120は、アラームデータをクライアント端末104に送信する。
【0028】
商流データ作成手段121は、外部サーバ100から受信した販売先データおよび仕入先データに基づいて、
図4に示すような商流データを作成し、商流データ記憶部133に記憶する。なお、他の実施形態において、外部サーバ100が既に
図4に示すような商流データの形でデータを保持し、かつ与信管理サーバ101に連携される場合、本手段は当然ながら必要ない。
【0029】
商流為替明細データ作成手段122は、商流データおよび企業属性データに基づいて、為替明細データから取引先顧客の入出金データを抽出し、例えば取引月ごとにサマリーし、
図7に示すような商流為替明細データを作成し、かつ商流為替明細データ記憶部136に記憶する。
【0030】
名寄せ手段123は、商流為替明細データを作成する際、企業属性データおよび名寄せ条件データに基づいて、名寄せ処理を実行する。
【0031】
異常値捕捉手段124は、商流為替明細データおよび倒産データに基づいて、取引先顧客のアラームデータを作成する。
【0032】
次に、
図11のフローチャート、ならびに
図2−10の表を参照して、本発明の一実施形態に係る与信管理処理を流れに沿って説明する。
【0033】
図11は、本発明の一実施形態に係る与信管理処理を示すフローチャートである。なお、
図11のフローチャートは一連の処理を連続して記載しているが、必ずしも連続して処理する必要はない。処理のタイミングおよび周期は、任意設定することができる。特に、ステップ1101−1102の商流データ作成処理、ならびにステップ1103以降の商流為替明細データ作成および異常値捕捉処理は、例えば、商流データ作成処理を予めしておいて、1日1回の夜間バッチなどで当該商流データに基づいて、為替明細データから商流為替明細データ作成し、異常値捕捉処理を実行することが想定される。また、商流為替明細データを作成する際、該当する商流データが存在しない場合も想定できるため、この場合は、商流為替明細データを作成するタイミングで、該当の商流データを作成することになる。
【0034】
図11のフローチャートについて詳細に説明する。まず、ステップ1101にて、データ送受信手段120が、外部サーバ100から、販売先データ(
図2)および仕入先データ(
図3)を受信し、各々、販売先データ記憶部131および仕入先データ記憶部132に格納する。販売先データおよび仕入先データは各々、取引先顧客(「企業番号」が示す企業)と、販売先および取引先企業との関係を示すデータである。なお、外部サーバ100は、例えば、外部ネットワーク内に設置されたサーバである。本ステップの処理は、外部DBから、販売先および仕入先の商流データを取得することを意味する。そのため、販売先データおよび仕入先データを複数の外部DBから取得する場合、販売先データおよび仕入先データは、各々、複数存在することになる。また、各データのデータ項目である「企業番号」、「販売先企業番号」、および「仕入先企業番号」は、各外部DBでユニークであればよい(管理元が各々異なるため、データフォーマットの統一は実質不可能)。そのため、与信管理システムで扱う場合、例えば、「企業番号」は、各々、「第1の企業番号」、「第2の企業番号」などと別項目として管理する必要がある。この場合、「第1の企業番号」および「第2の企業番号」が同一の企業であることを示すために、与信管理システムはマッピングテーブルなどにより、両番号の関連付けを行う。
【0035】
次に、受信した販売先データおよび仕入先データに基づいて、商流データ作成手段121は商流データ(
図4)を作成し、商流データ記憶部133に格納する(ステップ1102)。商流データは、取引先顧客(「企業番号」が示す企業)と、その取引先企業(「取引先企業番号」が示す企業)と関係を示すデータである。本実施形態では、「商流区分」が「1」の場合、取引先企業は取引先顧客に対する販売先企業であり、「2」の場合、仕入先企業である。「商流区分」は、商流データを作成する際のデータの取得元が、販売先データであるか、仕入先データであるかで決定することができる。なお、商流データは、企業間の振込実績などから作成することもできる。これは、例えば企業Aに対し、企業Bから一定期間(3ヵ月など)に継続して複数回行われた場合、当該企業Bは当該企業Aの販売先である(他方で企業Aは企業Bの仕入先である)と判定することができ、各々、商流データを作成することができる。また、別の実施形態では、取引形態が手形取引である場合は、1回でもこれが発生した場合、両者が相互に取引先であると判定することができる。また、さらに別の実施形態では、外部サーバ100から連携されてくるデータが、既に
図4のようなフォーマットの商流データである場合、ステップ1101および1102は、単にこれを受信し、商流データ記憶部133に格納するだけである。なお、ステップ1102後、ステップ1103以降に進まずに、処理を終了することもできる。この場合、ステップ1103以降は別処理として実行される。
【0036】
次に、予め為替明細データ記憶部134に格納された為替明細データ(
図5)に対して、名寄せ手段123が、企業属性データ(
図6)および名寄せ条件データ(
図10)に基づいて名寄せ処理を実行する(ステップ1103)。為替明細データは、入出金データであり、発信者(代金を支払う側)および受信者(代金を受け取る側)の金融機関および口座データ、ならびに取引額などを含む。しかしながら、各企業は、複数の口座を持つことがあり、同一の取引先企業との取引にも、複数の口座を利用することがある。そのため、為替明細データにおいて、口座名義が異なるため、別データ(レコード)として扱われる、本来は同一商流(取引先顧客と販売先とが実質的に同一、または取引先顧客と仕入先とが実質的に同一)に係るデータをサマリーするために、名寄せ処理を実行する。なお、名寄せ対象となる各口座は、同一の金融機関のものに限られず、異なる金融機関間の口座とすることもできる。
【0037】
名寄せ処理は、為替明細データの口座名義に対し、所定の文字列を、削除したり、別の文字列に変換したりすることにより行われる。
図5の為替明細データを例とすると、1レコード目から4レコード目の「受信口座名義」が示す、「ユウゲンガイシャトレードマークデザイン」および「(ユウ)トレードマークデザイン」は、全て同一の企業(
図6の企業属性データの9レコード目が示す企業番号「999999999」の「ユウゲンガイシャトレードマークデザイン」)である。しかしながら、データ上、当該文字列は異なるものと判断されるため、
図10のような名寄せ条件データを用いて、データ変換を行う。例えば、
図10の名寄せ条件データの6レコード目は、文字列「(ユウ)」を文字列「ユウゲンガイシャ」に変換することを示す。これにより、「(ユウ)トレードマークデザイン」は、「ユウゲンガイシャトレードマークデザイン」に変換され、
図5の1レコード目から4レコード目の「受信口座名義」は全て、
図6の企業属性データの9レコード目と関連付けることができ、同一の企業であると判断することができる。なお、この際、さらに
図6の企業属性データにおける金融機関コードおよび支店コードの各組み合わせと、為替明細データにおける金融機関コードおよび支店コードを突き合わせることにより、名寄せ処理の精度を向上させることができる。
【0038】
また、
図10において「変換先」が空白であるものは、「変換元」を空白で変換する、すなわち「変換元」の文字列を削除することを意味する。なお、名寄せ条件データは、文字列の変換および削除用に、各々別のデータとして持つこともできる。
【0039】
一方、「変換元」が示す文字列が重複する場合、例えば、
図10の1レコード目の「(カブ)」および2レコード目の「カブ)」は、口座名義の文字列が「(カブ)トッキョショウジ」の場合、どちらも該当することになる。しかしながら、2レコード目の「カブ)」を用いて変換を行うと、「(カブシキガイシャトッキョショウジ」と、「(」が残ってしまうことも考えられる。そのため、
図10の名寄せ条件データに、優先順位を持たせたり(図示しないが、優先順位を示す数値など)、
図6に示されるように企業属性データが「法人格前後表示」を持つ場合はこれを利用したりすることができる。例えば、「法人格前後表示」が「01」であり前表示を示す場合、口座名義の文字列「(カブ)トッキョショウジ」を前(左)から1文字ずつチェックすると、変換すべき文字列は「カブ)」ではなく、「(カブ)」であると判断することができる。
【0040】
次に、商流為替明細データ作成手段122は、ステップ1103にて名寄せ処理を施した為替明細データから、商流データ(
図4)および企業属性データ(
図6)に基づいて、取引先顧客の入出金データを抽出し、商流為替明細データ(
図7)を作成し、かつ商流為替明細データ記憶部136に記憶する(ステップ1104)。一実施形態では、商流データの企業番号が示す取引先顧客ごとに、取引月ごとにサマリーし、かつ時系列にソートし、商流為替明細データを作成する。
【0041】
より具体的には、商流データ(
図4)の「企業番号」および「取引先企業番号」を検索キーとして、企業属性データ(
図6)から各々の「企業名カナ」を特定する(すなわち、企業番号が示す企業名カナと、取引先企業番号が示す企業名カナを取得する)。次に特定された各々の「企業名カナ」を検索キー(AND条件)として、名寄せ処理を施した為替明細データから、対象レコードを抽出する。この際、商流データ(
図4)の「商流区分」によって、検索キー(企業番号が示す企業名カナおよび取引先企業番号が示す企業名カナ)と突き合わせる、名寄せ処理を施した為替明細データにおけるデータ項目は変わる。例えば、「商流区分」が「1」(販売先)である場合、取引先企業番号が示す企業が「販売先」である。そのため、取引先企業番号が示す企業は、為替明細データにおける発信者(代金を支払う側)となり、企業番号が示す企業は、受信者(代金を受け取る側)となる。一方で、「商流区分」が「2」(仕入先)である場合、取引先企業番号が示す企業は「仕入先」であり、かつ受信者(代金を受け取る側)となり、企業番号が示す企業が発信者(代金を支払う側)となる。したがって、「商流区分」によって、いずれの「企業名カナ」を、名寄せ処理を施した為替明細データにおける「発信者口座名義」および「受信者口座名義」と突き合わせるかが変わる。
【0042】
企業番号および取引先企業が示す企業の各企業名カナと、「発信者口座名義」および「受信者口座名義」とを突き合わせ、為替明細データを取得した後、当該為替明細データにおける「取引日」を、例えば取引月ごとにサマリーし、時系列にソートすることで、
図7に示すような商流為替明細データ(
図7)を作成する。ここで、取引月ごとにサマリーする際、為替明細データの「取引額」を合計することで、商流為替明細データの「取引額計」を算出する。
【0043】
次に、異常値捕捉手段124は、商流為替明細データ(
図7)および倒産データ(
図8)に基づいて、取引先顧客のアラームデータを作成する(ステップ1106)。本ステップは、アラームの種類ごとに処理される。アラームの種類ごとの処理する順番は不同である。アラームの種類ごとに処理を説明する。
【0044】
取引先顧客が倒産したことを示す「倒産」アラームは、倒産データ(
図8)における「倒産日」が一定期間内(例えば、直近2週間以内)の企業番号が示す企業が取引先顧客である場合に挙げるものである。該当する場合、
図9のアラームデータに示すように「倒産」が「1」(倒産アラームON)となる。
【0045】
取引先顧客に対する販売先または仕入先が倒産したことを示す「商流倒産」アラームは、「倒産」アラーム同様、倒産データ(
図8)における「倒産日」が一定期間内の企業番号が示す企業が販売先および/または仕入先である場合に挙げるものである。可能性として販売先および仕入先が同時期に倒産することもあるため、一実施形態において、
図9のアラームデータにおける「商流倒産」アラームは、販売先が倒産の場合に「1」、仕入先が倒産の場合に「2」、いずれも倒産の場合は「3」となる。
【0046】
取引先顧客における入金が一定期間に所定の割合減ったことを示す「入金減」アラームは、商流為替明細データ(
図7)において、受信者企業番号が示す企業を取引先顧客とした場合、発信者企業番号が示す企業、すなわち、販売先企業からの取引額計(入金額計)が前月の取引月と比較し、所定の割合減っている場合に挙げるものである。該当する場合、
図9のアラームデータに示すように「入金減」が「1」(入金減アラームON)となる。また、別の実施形態では、「入金減」を非該当、小幅減、大幅減などと段階分けして各々を数値で示すことにより、より細かいアラームデータを示すことができる。
【0047】
次に、データ送受信手段120は、作成したアラームデータをクライアント端末104に送信する(ステップ1107)。ステップ1107の後、本処理は終了する。その後、クライアント端末104において、アラームデータはWeb画面を通じて一覧表示したり、メールやインスタントメッセージで通知したりすることにより、金融機関担当者は取引先顧客の与信判断を行うことができる。
【0048】
また、他の実施形態では、企業属性データ(
図6)、商流為替明細データ(
図7)、および倒産データ(
図8)から、取引先顧客の商流捕捉およびニーズ分析することにより、営業推進に活用することもできる。これは、取引先顧客に対する入出金情報、取引先顧客ならびにその販売先および仕入先の倒産情報を所定の条件に基づいて定期的に捕捉する。捕捉した情報はクライアント端末104に送信され、クライアント端末104において一覧表示させることで、金融機関担当者は取引先顧客の動向およびニーズなどを判断することができる。例えば、取引先顧客に対し、ベンチャーキャピタル(VC)から入金があった場合、当該取引先顧客は出資受け入れのニーズがある、と判断することができる。また、取引先顧客の販売先が倒産してしまった場合、売掛金の回収のためファクタリング(売掛債権保証)のニーズがあると、判断することができる。さらに、取引先顧客から監査法人に対する出金があった場合、当該取引先顧客にはIPO(株式公開)のニーズがあると判断することができる。