(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施形態における一の態様に係るクッション部材を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。(c)は、下層のみを張設した状態を説明するための図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の実施形態における他の態様に係るクッション部材を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。(c)は、下層のみを張設した状態を説明するための図である。
【
図3】
図3は、三次元立体編物の構成を説明するための図である。
【
図4】
図4は、グランド編地の編地組織の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、グランド編地の編地組織の他の例を示す図である。
【
図6】
図6(a)〜(c)は、連結糸の配置の仕方の例を示す図である。
【
図7】
図7(a),(b)は、試験例における試験方法を説明するための図である。
【
図8】
図8(a),(b)は、
図1に示した構造のクッション部材を試験する試験例1の方法を説明するための図である。
【
図9】
図9(a),(b)は、
図2に示した構造のクッション部材を試験する試験例2の方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、試験例1において、下層として製品番号:T27016Bを用いたクッション部材を直径30mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図11】
図11は、試験例1において、下層として製品番号:T27016Bを用いたクッション部材を直径98mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図12】
図12は、試験例1において、下層として製品番号:T27016Bを用いたクッション部材を直径200mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図13】
図13は、試験例1において、下層として製品番号:Y27013NPを用いたクッション部材を直径30mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図14】
図14は、試験例1において、下層として製品番号:Y27013NPを用いたクッション部材を直径98mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図15】
図15は、試験例1において、下層として製品番号:Y27013NPを用いたクッション部材を直径200mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図16】
図16は、試験例2において、クッション部材を直径30mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図17】
図17は、試験例2において、クッション部材を直径98mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図18】
図18は、試験例2において、クッション部材を直径200mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図19】
図19は、試験例3において、クッション部材を直径30mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図20】
図20は、試験例3において、クッション部材を直径98mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図21】
図21は、試験例3において、クッション部材を直径200mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図22】
図22は、試験例4において、クッション部材を直径30mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図23】
図23は、試験例4において、クッション部材を直径98mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図24】
図24は、試験例4において、クッション部材を直径200mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図25】
図25は、試験例4において、クッション部材を直径30mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図26】
図26は、試験例4において、クッション部材を直径98mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図27】
図27は、試験例4において、クッション部材を直径200mmの加圧板で加圧した荷重−たわみ特性を示した図である。
【
図28】
図28は、各試験例において上層又は下層として用いた二次元又は三次元の布帛の引張特性を示した図である。
【
図29】
図29は、中間層を複数の層にしたクッション部材の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係るクッション部材1を示した図である。このクッション部材1は、中間層10を挟んで上層20及び下層30を有する三層の積層構造からなる。
【0011】
中間層10は、発泡樹脂、例えばポリウレタンフォームから構成される。中間層10は、例えば、厚さ2〜10mm程度で形成される。
【0012】
上層20は、二次元又は三次元の布帛から形成され、これらには、織布、不織布、編物、皮革、合成皮革を含む。なお、
図1は、上層20として二次元の布帛を用いた態様を示した図であり、
図2は、上層20として三次元の布帛(三次元立体編物)を用いた態様を示した図である。
【0013】
下層30は、上層と同様に、二次元又は三次元の布帛から形成され、これらには、織布、不織布、編物、皮革、合成皮革を含む。
【0014】
なお、上層20と下層30とは、上層20の方が下層30よりも面方向の伸縮性(復元力)が高いものを用いることが好ましい。
【0015】
上層20又は下層30に使用できる三次元布帛としては、例えば、特開2002−331603号公報に開示されているような三次元立体編物50を用いることができる。三次元立体編物50は、
図3に示したように、互いに離間して配置された一対のグランド編地51,52と、該一対のグランド編地51,52間を往復して両者を結合する多数の連結糸53とを有する立体的な三次元構造となった編地である。
【0016】
各グランド編地51,52としては、例えば、単繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)によって形成されたもの(
図4参照)や、あるいは、単繊維を撚った糸から、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する編み目構造(
図5参照)に形成されたものが採用される。もちろん、この編地組織は任意であり、細目組織やハニカム状以外の編地組織を採用することもできるし、2つのグランド編地51,52を異なる編地組織としたり、両者とも同じ編地組織としたりするなど、その組み合わせも任意である。但し、ハニカム状組織の編み目に形成された面を中間層10との固着面とすると、中間層10を後述のようにフレームラミネート加工により積層固着した際に、溶融するポリウレタンフォームの一部、あるいは、接着で接合する際の接着剤が侵入しやすくなる。また、ハニカム状組織のように比較的粗い目にしたり、あるいは細目組織のように細かい組織にしたりすることにより、三次元立体編物の剛性を調整することができる。但し、本発明は、中間層10と積層することで全体の剛性が高くなるが、ハニカム状組織のような比較的粗い目のものを用いると、使用する糸が同じ素材であるとすると、より柔らかなフィット感の高いものを形成することができる。
【0017】
連結糸53は、一方のグランド編地51と他方のグランド編地52とが所定の間隔を保持するように、2つのグランド編地51,52間に編み込んだものであり、モノフィルメント、マルチフィラメントのいずれでもよい。但し、中間層10の一部が三次元立体編物に侵入する構成とすることにより、モノフィラメントと比較してより柔らかなバネ感のマルチフィラメントを用いても、所定の剛性を付与することが可能である。連結糸53をグランド編地51,52間に往復させて配置する際の配置の仕方(パイル組織)も種々あり、X字状、ストレート状などがある。
図6(a)〜(c)にその一例を示す。
図6(a)〜(c)は、後述の試験例で使用した三次元立体編物における連結糸53の配設仕方を示したものであり、各図の左側がロール方向(三次元立体編物のロール巻き原反の巻き方向)に沿った断面図であり、各図の右側がロール方向に直交する幅方向に沿った断面図である。
【0018】
なお、グランド編地51,52を形成するグランド糸又は連結糸53の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、レーヨン等の合成繊維や再生繊維、ウール、絹、綿等の天然繊維が挙げられる。上記素材は単独て用いてもよいし、これらを任意に併用することもできる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などに代表される熱可塑性ポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン系繊維、あるいはこれらの繊維を2種類以上組み合わせたものである。なお、ポリエステル系繊維はリサイクル性に優れており好適である。また、グランド糸又は連結糸の糸形状も限定されるものではなく、丸断面糸でも異形断面糸等でもよい。
【0019】
中間層10の表面側と上層20、並びに、中間層10の裏面側と下層30とは、それぞれ、接着、フレームラミネート加工などにより固着されている。固着した際には、中間層10の厚み方向の一部が、上層20又は下層30を構成する布帛の糸間の間隙に侵入して固着されることにより、上層20又は下層30を構成する糸同士の結合力に弾性が付与され、張力、圧縮力、引張力によるバネ特性(バネ定数)が増大するため好ましい。そのためには、フレームラミネート加工を適用することが好ましい。フレームラミネート加工によれば、融点差を利用することで中間層10を構成するポリウレタンフォームの一部を溶融させることができ、上層20又は下層30の糸間の間隙に侵入した状態で固着することを容易に行うことができる。
【0020】
上層20又は下層30として三次元立体編物50を用いた場合、糸間の間隙に中間層10であるポリウレタンフォームが侵入して固化する。このとき、ポリウレタンフォームは、三次元立体編物50のうち、中間層10に隣接する一方のグランド編地51側から侵入する一方で、他方のグランド編地52の糸間にまで達していない構成であることが好ましい。より好ましい侵入量は、中間層10に隣接する一方のグランド編地51側から、三次元立体編物50の全体の厚さの1/3〜2/3の範囲である。中間層10であるポリウレタンフォームが他方のグランド編地52に至るまで侵入させた構成とすると、厚み方向に圧縮した際のバネ特性が硬くなり過ぎ、表面にしわなどが生じやすい。しかし、上記した範囲に設定して積層すると、三次元立体編物50又はポリウレタンフォームを単独で用いた場合よりも、圧縮特性が高くなる一方で、ポリウレタンフォームと一体化していない三次元立体編物50の連結糸53及び他方のグランド編地52がそれら独自のバネ特性が作用し、それら独自の圧縮特性が機能すると共に、連結糸53の傾斜が作用し引張特性も高くなる。その結果、三次元立体編物50を単体で用いて得られる引張特性と同じ引張特性を得ようとする場合、本実施形態の積層構造によれば、三次元立体編物50として、単体のものよりも引張特性の低いもの(例えば、連結糸53としてモノフィラメントではなくマルチフィラメントを用いたもの)等を採用でき、製造コストの低減に寄与する。この点は、三次元立体編物50に限らず、二次元の布帛や他の三次元の布帛を用いた場合も同様である。
【0021】
中間層10の表面側と上層20、並びに、中間層10の裏面側と下層30とを接着により固着する場合、接着剤が、上層20又は下層30を構成する布帛の糸間の間隙に侵入するようにして固着することが好ましい。
【0022】
本実施形態では、上記したクッション部材1を、所定間隔離間して配置された任意のフレーム間に張設することにより張力構造体として設ける。任意のフレームとは、クッション部材1を座席構造に用いる場合、シートクッション部を構成するフレーム間(例えば、一対のサイドフレーム間、あるいは、前縁部付近に配置されるフレームと後縁部付近に配置されるフレームとの間等)、又はシートバック部を構成するフレーム間(例えば、一対のサイドフレーム間、上縁部付近に配置されるフレームと後縁部付近に配置されるフレームとの間等)に張って設けられる。また、ヘッドレスト部、アームレスト部又はオットマン部を構成する任意のフレーム間に張って設け、ヘッドレスト部を構成するクッション部材、アームレスト部を構成するクッション部材、又はオットマン部を構成するクッション部材として用いることもできる。
【0023】
このとき、クッション部材1の張設方向の端縁部1a〜1dを、張設しようとするフレーム、例えば、
図1(b)及び
図2(b)に示したように、シートクッション部のサイドフレーム100a,100bに、端縁部1a,1bにおける上層20が表側に、下層30が裏側になる方向に折り曲げて固着する。これにより、折り曲げ部においては、上層20の周長が、下層30の周長よりも長くなる。その結果、上層20の面方向の張力が増大し、下層30の面方向の張力よりも大きくなる。
図1(c)及び
図2(c)に示したように、下層30のみをサイドフレーム100a,100bに張設した場合には、下層30の自重と面方向の張力のつり合いだけで形状(張り具合)を維持しようとしているため、中央付近を中心として下方に垂れ下がる傾向を示す。しかし、本実施形態によれば、上記のように、上層20の面方向の張力が下層30よりも大きくなるように張設しているため、中間層10は、上層20に隣接している表面側の方が裏面側よりも外方に引っ張られ、中間層10に圧縮・せん断力が発生し(
図1(b)及び
図2(b)の中間層10の部分に示した斜線は、せん断力が作用して中間層10の変形している状態及び変形している方向を示している)、クッション部材1を上方へ引き上げる分力が発生する。従って、本実施形態によれば、クッション部材1自体の厚み方向のストローク特性(圧縮特性)が向上する。
【0024】
(試験例1)
図7に示したような平面視で略正方形のフレーム200a〜200dを有する固定ジグ200に、クッション部材1を張設した。具体的には、
図7に示したように、クッション部材1の四辺に沿った端縁部1a〜1dを固定ジグ200の各フレーム200a〜200dに、端縁部1a〜1dにおける上層20を表面側に、下層30を裏面側にして固着した。なお、クッション部材1は、フレーム200a〜200dに、伸び率5%以下で張設した。
【0025】
試験例1では、クッション部材1として
図1に示した構成のものを用いた。すなわち、クッション部材1は、厚さ3mm又は5mmのポリウレタンフォーム(硬度:83.5N、密度:0.02g/cm
3)からなる中間層10の表面側と裏面側に、上層20と下層30が積層されるが、上層20として、厚さ1mmの二次元の布帛(セーレン株式会社製、製品番号:C009A)を用いた。下層30は、厚さ5mmの三次元立体編物(旭化成株式会社製、製品番号:T27016B)を積層したものと、厚さ1mmの二次元の布帛(旭化成株式会社製、製品番号:Y27013NP)を積層したものを準備した。また、中間層10の表面側と裏面側に対し、上層20及び下層30は、それぞれ接着により一体化した。なお、下層30として、厚さ5mmの三次元立体編物(製品番号:T27016B)を用いたクッション部材は、接着剤が三次元立体編物の一方のグランド編地の糸間に侵入するように塗布して接着した。
【0026】
試験は、
図8に示したように、クッション部材1の中央付近に、直径30mm、直径98mmの円形の加圧板を当接して100Nまで荷重をかけた場合と、直径200mmの円形の加圧板を当接して1000Nまで荷重をかけた場合について、荷重−変位特性を測定した(
図8の中間層10の部分に示した斜線は、せん断力が作用して中間層10の変形している状態及び変形している方向を示している)。その結果を
図10〜
図15に示す。
【0027】
まず、
図10〜
図12は、下層30として、製品番号T27016Bを用いて加圧板で加圧したデータであって、記号「T27016B−t3.0」は中間層10として厚さ3mmのポリウレタンフォームを用いた際のデータであり、記号「T27016B−t5.0」は中間層10として厚さ5mmのポリウレタンフォームを用いた際のデータである。また、記号「T27016B」は、三次元立体編物(製品番号:T27016B)単体を上記の固定ジグ200に張設して測定したデータであり、「筋肉特性」は、40歳代男性の片側臀部を加圧板で加圧した際のデータである。
【0028】
図10の直径30mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「T27016B」は22.5mm、「T27016B−t3.0」は29.5mm、「T27016B−t5.0」は35mmであった。三次元立体編物単体と比較し、ポリウレタンフォームの厚さ3mm又は5mmに、上層20の厚さ1mmを加えて、4mm又は6mmの厚さが増しただけであるにも拘わらず、ストロークの増加量は、7mm、12.5mmであった。
【0029】
このことから、中間層10を介して、上層20の面方向の張力が下層30よりも高くなるように設定することにより、中間層10の厚さ以上にストローク特性が増加しており、ストローク特性が向上し、ソフトな座り心地が設計でき、フィット感を向上させることができることがわかる。
【0030】
図11の直径98mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「T27016B」は17mm、「T27016B−t3.0」は22mm、「T27016B−t5.0」は31mmであり、ストロークの増加量は、5mm、14mmであった。また、
図12の直径200mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「T27016B」は31mm、「T27016B−t3.0」は38mm、「T27016B−t5.0」は45mmであり、ストロークの増加量は、7mm、14mmであった。従って、いずれの場合でもストローク特性が向上していた。
【0031】
図13〜
図15は、下層30として、製品番号Y27013NPを用いた場合の試験結果を示す。なお、記号「Y27013NP−t3.0」は中間層10として厚さ3mmのポリウレタンフォームを用いた際のデータであり、記号「Y27013NP−t5.0」は中間層10として厚さ5mmのポリウレタンフォームを用いた際のデータであり、記号「Y27013NP」は、二次元の布帛単体を上記の固定ジグ200に張設して測定したデータである。
【0032】
図13の直径30mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「Y27013NP」は27mm、「Y27013NP−t3.0」は41mm、「Y27013NP−t5.0」は42mmであり、ストロークの増加量は、14mm、15mmであった。
【0033】
図14の直径98mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「Y27013NP」は22mm、「Y27013NP−t3.0」は32mm、「Y27013NP−t5.0」は36mmであり、ストロークの増加量は、10mm、14mmであった。
【0034】
図15の直径200mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「Y27013NP」は32mm、「Y27013NP−t3.0」は52mm、「Y27013NP−t5.0」は48mmであり、ストロークの増加量は、20mm、16mmであった。
【0035】
よって、下層30として二次元の布帛を用いた場合も、中間層10を介して、上層20の面方向の張力が下層30よりも高くなるように設定することにより、中間層10の厚さ以上にストローク特性が向上することがわかる。
【0036】
(試験例2)
試験例2では、上層20として、三次元立体編物を採用した
図2に示した構造のクッション部材1について荷重−たわみ特性を測定した。試験例2で用いた上層20を構成する三次元立体編物は、旭化成株式会社製、製品番号:T28019C8G、厚さ7mmのものであり、この三次元立体編物を、中間層10である試験例1と同様の厚さ3mm又は5mmのポリウレタンフォーム(硬度:83.5N、密度:0.02g/cm
3)に積層して固着した。このとき、上層20を構成する三次元立体編物における中間層10と隣接するグランド編地の糸間に接着剤が侵入するように固着した。下層30は、試験例1で使用した三次元立体編物:製品番号「T27016B」を用いた。また、試験例2では、上層20の三次元立体編物(T28019C8G)と下層30の三次元立体編物(T27016B)とを、それらのロール方向(三次元立体編物のロール巻き原反の巻き方向)が直交の位置関係となるように中間層10に積層固着した。
【0037】
試験は、
図9に示したように、クッション部材1の中央付近に、直径30mm、直径98mmの円形の加圧板を当接して100Nまで荷重をかけた場合と、直径200mmの円形の加圧板を当接して500Nまで荷重をかけた場合について、荷重−変位特性を測定した(
図9の中間層10の部分に示した斜線は、せん断力が作用して中間層10の変形している状態及び変形している方向を示している)。その結果を
図16〜
図18に示す。なお、図中、「ラミt3.0」は厚さ3mmのポリウレタンフォームに積層したもののデータであり、「ラミt5.0」は厚さ5mmのポリウレタンフォームに積層したもののデータである。
【0038】
図16の直径30mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「T27016B」単体に対し、「ラミt3.0」は約17mm、「ラミt5.0」は約23mmストロークが増加していた。
図17の直径98mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「T27016B」単体に対し、「ラミt3.0」は約12mm、「ラミt5.0」は約16mmストロークが増加していた。
図18の直径200mmの加圧板で加圧した場合のストロークは、「ラミt3.0」及び「ラミt5.0」はいずれも500Nまでであるにも拘わらず、1000Nまで加圧した「T27016B」単体のデータと比較して、「ラミt3.0」は約10mm、「ラミt5.0」は約22mmストロークが増加していた。従って、いずれの場合にも、中間層10を構成するポリウレタンフォームの厚さ以上にストロークが増加しており、ストローク特性が向上し、ソフトな座り心地が設計でき、フィット感を向上させることができることがわかる。
【0039】
(試験例3)
試験例3では、試験例2と同様に、上層20として、三次元立体編物を採用した
図2に示した構造のクッション部材1について荷重−たわみ特性を測定した。試験例3で用いた上層20を構成する三次元立体編物は、旭化成株式会社製、製品番号:T05112、厚さ7mmのものであり、この三次元立体編物を、中間層10である試験例1と同様の厚さ3mm又は5mmのポリウレタンフォーム(硬度:83.5N、密度:0.02g/cm
3)に積層して固着した。このとき、上層20を構成する三次元立体編物における中間層10と隣接するグランド編地の糸間に接着剤が侵入するように固着した。下層30は、試験例1で使用した三次元立体編物:製品番号「T27016B」を用いた。また、試験例3では、上層20の三次元立体編物(T05112)と下層30の三次元立体編物(T27016B)とを、厚さ3mmのポリウレタンフォームに積層固着したものは、それらのロール方向(三次元立体編物のロール巻き原反の巻き方向)が直交の位置関係となるようにし、厚さ5mmのポリウレタンフォームに積層固着したものは、それらのロール方向が平行の位置関係となるようにした。
【0040】
試験は、試験例2と同様に、クッション部材1の中央付近に、直径30mm、直径98mmの円形の加圧板を当接して100Nまで荷重をかけた場合と、直径200mmの円形の加圧板を当接して500Nまで荷重をかけた場合について、荷重−変位特性を測定した。その結果を
図19〜
図21に示す。なお、図中、「ラミt3.0」は厚さ3mmのポリウレタンフォームに積層したもののデータであり、「ラミt5.0」は厚さ5mmのポリウレタンフォームに積層したもののデータである。
【0041】
図19の直径30mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「T27016B」単体に対し、「ラミt3.0」は約24mm、「ラミt5.0」は約22mmストロークが増加していた。
図20の直径98mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「T27016B」単体に対し、「ラミt3.0」は約18mm、「ラミt5.0」は約16mmストロークが増加していた。
図21の直径200mmの加圧板で加圧した場合のストロークは、「ラミt3.0」及び「ラミt5.0」はいずれも500Nまでであるにも拘わらず、1000Nまで加圧した「T27016B」単体のデータと比較して、「ラミt3.0」は約14mm、「ラミt5.0」は約10mmストロークが増加していた。従って、いずれの場合にも、試験例2と同様、中間層10を構成するポリウレタンフォームの厚さ以上にストロークが増加していることがわかる。
【0042】
但し、「ラミt3.0」と「ラミt5.0」を比較すると、試験例2の場合には、いずれも、「ラミt5.0」の方がストロークが大きくなっている。これは、ポリウレタンフォームの厚さの差がストロークに反映したものと考えられるが、試験例3の場合には、ポリウレタンフォームの厚さの薄い「ラミt3.0」の方がストロークが大きくなっている。試験例3では、「ラミt3.0」では、上層20と下層30とをそれらのロール方向が直交の位置関係となるようにしているのに対し、「ラミt5.0」では、それらのロール方向が平行の位置関係となるようにしている。ここで、下層30の各布帛の引張特性をロール方向と幅方向とで比較したデータが
図28であるが、このように、ロール方向と幅方向で引張特性がいずれも異なるため、ロール方向を平行(同方向)とした場合には、2枚が同じ方向に引っ張られるため、特に幅方向に伸び難くなる異方性となるのに対し、直交の位置関係とすることで、それぞれ異なる引張特性が生かされて等方性に近くなることによる。
【0043】
従って、試験例2及び試験例3から、上層及び下層の積層方向を任意に選択することにより、同じ素材を用いながら、異なる荷重−たわみ特性が得られるように設定することが可能であることがわかる。
【0044】
(試験例4)
試験例4では、上層20として、三次元立体編物を採用した
図2に示した構造のクッション部材1について荷重−たわみ特性を測定した。試験例4で用いた上層20を構成する三次元立体編物は、旭化成株式会社製、製品番号:T05112、厚さ7mmのものであり、この三次元立体編物を、中間層10である試験例1と同様の厚さ3mm又は5mmのポリウレタンフォーム(硬度:83.5N、密度:0.02g/cm
3)に積層して固着した。このとき、上層20を構成する三次元立体編物における中間層10と隣接するグランド編地の糸間に接着剤が侵入するように固着した。下層30は、試験例1で使用した厚さ1mmの二次元の布帛(旭化成株式会社製、製品番号:Y27013NP)を用いた。また、試験例4では、上層20の三次元立体編物(T05112)と下層30の二次元の布帛(Y27013NP)とを、それらのロール方向(三次元立体編物又は二次元布帛のロール巻き原反の巻き方向)が直交の位置関係となるように中間層10に積層固着した。
【0045】
試験は、
図9に示したように、クッション部材1の中央付近に、直径30mm、直径98mmの円形の加圧板を当接して100Nまで荷重をかけた場合と、直径200mmの円形の加圧板を当接して500Nまで荷重をかけた場合について、荷重−変位特性を測定した。その結果を
図22〜
図24に示す。なお、図中、「ラミt3.0」は厚さ3mmのポリウレタンフォームに積層したもののデータであり、「ラミt5.0」は厚さ5mmのポリウレタンフォームに積層したもののデータである。
【0046】
図22の直径30mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「Y27013NP」単体に対し、「ラミt3.0」は約8mm、「ラミt5.0」は約11mmストロークが増加していた。
図23の直径98mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「Y27013NP」単体に対し、「ラミt3.0」は約6mm、「ラミt5.0」は約8mmストロークが増加していた。
図24の直径200mmの加圧板で加圧した場合のストロークは、「ラミt3.0」及び「ラミt5.0」はいずれも500Nまでであるにも拘わらず、1000Nまで加圧した「Y27013NP」単体のデータと比較して、「ラミt3.0」は約5mm、「ラミt5.0」は約7mmストロークが増加していた。従って、いずれの場合にも、中間層10を構成するポリウレタンフォームの厚さ以上にストロークが増加しており、ストローク特性が向上し、ソフトな座り心地が設計でき、フィット感を向上させることができることがわかる。
【0047】
(試験例5)
試験例5では、上層20の三次元立体編物として、試験例2で用いたものと同じ旭化成株式会社製、製品番号:T28019C8G、厚さ7mmのものを用いると共に、この上層20(T28019C8G)と下層30の二次元の布帛(Y27013NP)とを、それらのロール方向(三次元立体編物又は二次元布帛のロール巻き原反の巻き方向)が平行の位置関係となるように中間層10に積層固着した点を除き、試験例4と同じ条件で試験を行った。
図25〜
図27がその結果である。
【0048】
図25の直径30mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「Y27013NP」単体に対し、「ラミt3.0」は約15mm、「ラミt5.0」は約20mmストロークが増加していた。
図26の直径98mmの加圧板で加圧した場合のストロークを比較すると、「Y27013NP」単体に対し、「ラミt3.0」は約13mm、「ラミt5.0」は約16mmストロークが増加していた。
図27の直径200mmの加圧板で加圧した場合のストロークは、「ラミt5.0」はいずれも500Nまでであるにも拘わらず、1000Nまで加圧した「Y27013NP」単体のデータと比較して、約11mmストロークが増加していた。また、「ラミt3.0」は約1000Nまで加圧したデータであるが、この場合には、「Y27013NP」単体のデータと比較して約18mmもストロークが増加していた。従って、試験例5においても、中間層10を構成するポリウレタンフォームの厚さ以上にストロークが増加しており、ストローク特性が向上し、ソフトな座り心地が設計でき、フィット感を向上させることができることがわかる。
【0049】
上記した実施形態では、1層の中間層10に対し、上層20及び下層30を積層固着しているが、中間層を2層以上設けたクッション部材500とすることも可能である。
図29はその一例を示したものであり、3枚の第1〜第3中間層511,512,513を設けている。各中間層511〜513には、いずれもその表面側に上層が、裏面側に下層が積層固着されるが、第1中間層511の下層と第2中間層512の上層とは兼用されて構成されており、1枚の層(以下、便宜上「第1兼用層541」)からなる。同様に、第2中間層512の下層と第3中間層513の上層とは兼用されて構成されており、1枚の層(以下、便宜上「第2兼用層542」)からなる。なお、最も外側に位置する第1中間層511の上層を符号520で示し、第3中間層513の下層を符号530で示す。
【0050】
上層520、第1兼用層541、第2兼用層542及び下層530は、上記した二次元の布帛又は三次元の布帛を用いるが、積層する際に各布帛の配置方向の位置関係(ロール方向同士が平行となる位置関係か、直角となる位置関係か等)を所望に設定することにより、異方性から等方性までの間で所望の特性に設定することができる(試験例2参照)。
【0051】
図29の例では、上層520と第1兼用層541とを直交の位置関係とし、第2兼用層542を第1兼用層541に対して45度傾けた位置関係とし、下層530を第2兼用層542に対して直交の位置関係となるように配置した。
図29のように布帛を多層としてその位置関係を少しずつずらすことにより、張力の特性をより等方性に近づけることが可能となり、より強靱なクッション部材となる。