(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記覆い部の先端部には、前記筒状部材の端部に筒状のプロテクタを引っ掛けるプロテクタ係止部が外側から内側に向かうほど嵌合方向後方に傾斜した逆テーパ状に設けられている請求項4記載の電線挿通部材。
前記嵌合回動部および前記覆い部の少なくとも何れか一方には、前記筒状部材の端部が乗り上げることで同筒状部材を前記第1係止部に向けて押圧し前記筒状部材を前記第1係止部と共に前記筒状部材の軸線方向に挟持するテーパ状の押圧傾斜面が設けられている請求項4または請求項5に記載の電線挿通部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のリテーナが装着されるシールドブラケットなどの厚みが薄い場合、係止突起が係止孔に嵌まり込むと、係止突起がシールドブラケットの外周面から外方に突出した状態となる。この状態において、シールドブラケットの外周面にプロテクタやかしめリングを固定したり、テープを巻き付けたりすると、係止突起が係止孔から押し出されてしまう虞があり、係止突起が係止孔から押し出された場合には、シールドブラケットからリテーナが脱落してしまう虞がある。
本明細書では、シールドブラケットなどの筒状部材からリテーナなどの保護部材が脱落することを防ぐ技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される技術は、電線が挿通される金属製の筒状をなす筒状部材の端部に合成樹脂製の保護部材が取り付けられた電線挿通部材であって、前記筒状部材を内外に貫通して設けられ、前記筒状部材の端部から前記筒状部材の軸線方向に沿うように延びる軸方向切欠溝と、前記筒状部材を内外に貫通して設けられ、前記軸方向切欠溝から前記筒状部材の軸心を中心に周方向に延びる周方向切欠溝と、前記筒状部材内に嵌合して前記電線と前記筒状部材の開口縁部との間に配されるように前記保護部材に設けられ、前記筒状部材内において前記筒状部材の軸心を中心に周方向に回動可能な筒状の嵌合回動部と、前記嵌合回動部から突出して形成され、前記嵌合回動部が前記筒状部材内に嵌合されるに伴って前記軸方向切欠溝に進入し、前記嵌合回動部の回動に伴って前記周方向切欠溝に進入する第1係止部と、前記保護部材に設けられ、前記第1係止部が前記周方向切欠溝に進入した際に、前記軸方向切欠溝における前記周方向切欠溝が設けられた側の縁部と対向する縁部に係止する第2係止部とを備える構成とした。
【0007】
このような構成の電線挿通部材によると、筒状部材に保護部材の嵌合回動部を嵌合させて回動させると、第1係止部が周方向切欠溝の縁部に対して筒状部材の軸線方向に係止するから、筒状部材から保護部材が脱落することを防ぐことができる。また、第1係止部が周方向切欠溝に至ると、第2係止部が軸方向切欠溝の縁部に対して周方向に係止するから、嵌合回動部が筒状部材内において周方向に回動することを防ぐことができる。つまり、第2係止部によって嵌合回動部が回動することが阻止されることで、第1係止部が周方向切欠溝内に収容された状態にロックされるから、筒状部材から保護部材が脱落することを防ぐことができる。 また、筒状部材に嵌合回動部を嵌合させる際に、第1係止部を軸方向切欠溝に進入させることで、筒状部材に対して嵌合回動部を正規の位置に位置決めして嵌合させることができるから、例えば、筒状部材に嵌合回動部を嵌合させた後、嵌合回動部の位置合わせをする場合に比べて、嵌合回動部の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0008】
本明細書によって開示される電線挿通部材は、以下の構成としてもよい。
前記第2係止部は、前記筒状部材に沿うように周方向に片持ち状に延びて前記嵌合回動部の径方向に弾性変位可能に設けられており、前記第2係止部は、前記嵌合回動部を前記筒状部材に嵌合させる際に、前記筒状部材に乗り上げ、前記第1係止部が前記周方向切欠溝に進入した後に、弾性復帰して前記軸方向切欠溝の縁部に係止する構成としてもよい。
このような構成によると、嵌合回動部を筒状部材に嵌合させるに伴って弾性係止片を弾性変位させて筒状部材に乗り上げた状態にセットすることができる。すなわち、嵌合回動部を筒状部材に嵌合させて、嵌合回動部を回動させるだけで、保護部材を筒状部材に取り付けることができる。これにより、例えば、筒状部材に嵌合回動部を嵌合させた後、弾性係止片を別途弾性変位状態にセットするものに比べて、保護部材の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0009】
前記第2係止部の嵌合方向前側の側縁には、前記筒状部材に乗り上げるためのテーパ状の案内面が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、案内面によって弾性係止片が案内されて筒状部材に滑らかに乗り上げるから、弾性係止片が筒状部材によって削られて損傷することを抑制することができる。
【0010】
前記保護部材は、前記嵌合回動部の嵌合方向後側の後端縁から前記筒状部材の開口縁部を包み込むように外側に折り返された覆い部を有しており、前記第2係止部は、前記覆い部に一体に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、筒状部材の開口縁部における外周縁が保護部材の覆い部によって覆われるから、筒状部材の内部に配される電線だけでなく、他の部材が筒状部材の外周縁部に接触して損傷することを防ぐことができる。
また、第2係止部が筒状部材の外側に配されることになるから、例えば、第2係止部が筒状部材の内側に配される場合に比べて、電線が押しつけられて第2係止部が損傷することを防ぐことができる。
【0011】
前記覆い部の先端部には、前記筒状部材の端部に筒状のプロテクタを引っ掛けるプロテクタ係止部が外側から内側に向かうほど嵌合方向後方に傾斜した逆テーパ状に設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、筒状部材に取り付けられた保護部材のプロテクタ係止部にプロテクタを引っ掛けることで筒状部材の端部にプロテクタを組み付けることができる。これにより、例えば、筒状部材にプロテクタを引っ掛けるプロテクタ係止部を別途設ける場合に比べて、電線挿通部材の構造が複雑になることを防ぐことができる。
また、プロテクタ係止部が逆テーパ状に設けられているから、例えば、プロテクタ係止部が逆テーパ状に設けられていないものに比べて、保護部材にプロテクタをしっかりと固定することができる。
【0012】
前記嵌合回動部および前記覆い部の少なくとも何れか一方には、前記筒状部材の端部が乗り上げることで同筒状部材を前記第1係止部に向けて押圧し前記筒状部材を前記第1係止部と共に前記筒状部材の軸線方向に挟持するテーパ状の押圧傾斜面が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、筒状部材内において保護部材が筒状部材の軸線方向にがたつくことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本明細書によって開示される技術によれば、保護部材が脱落することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
実施形態について
図1から
図10を参照して説明する。
本実施形態は、車両に配索される電線(図示せず)が複数挿通される電線挿通部材10を例示しており、
図1から
図3に示すように、導電性に優れた金属からなるシールドパイプ(「筒状部材」の一例)20と、シールドパイプ20の後端部に取り付けられる合成樹脂製の保護部材30とを備えて構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは
図4における上下方向を基準とする。また、前後方向とは
図3、
図7および
図9を基準とし、図示左側を前側、図示右側を後側として説明する。
【0016】
シールドパイプ20は、
図1から
図3に示すように、円筒状をなしており、シールドパイプ20を切断することにより、その端部における開口縁部21は、エッジが鋭く尖った状態となっている。シールドパイプ20内には、図示しない複数の電線がシールドパイプ20を貫通して挿通されるようになっており、シールドパイプ20は、内部に挿通される電線をシールドすると共に、他の部材や水などから電線を保護するようになっている。また、シールドパイプ20は、その後端部が、
図3に示すように、前後方向に直線状に延びた形態をなしているものの、シールドパイプ20全体としては、シールドパイプ20内に電線が挿通された後、曲げ加工が施されることで所定の形状に屈曲されている。
【0017】
保護部材30は、
図2から
図4および
図7に示すように、シールドパイプ20内に嵌合される嵌合回動部31と、シールドパイプ20の後端開口縁を外側から覆う覆い部32とを備えて構成されている。
嵌合回動部31は、
図2、
図7および
図9に示すように、前後に延びる円筒状に形成されており、シールドパイプ20の後端部内に適合して嵌合される形態とされている。また、嵌合回動部31は、シールドパイプ20内において周方向に回動可能とされている。
嵌合回動部31は、嵌合回動部31の周壁の一端部が前後方向(嵌合回動部31が延びる軸線方向)に分断されることにより側方に開口しており、この側方開口から嵌合回動部31の内側に電線を挿入することで、嵌合回動部31に電線を軸線方向に挿通することができるようになっている。
【0018】
覆い部32は、
図2、
図4および
図7に示すように、嵌合回動部31の後端縁部に周設されており、嵌合回動部31の後端縁部から嵌合回動部31の径方向外側に折り返されてやや前方に向けて延びた形態とされている。覆い部32は、
図7に示すように、シールドパイプ20に対して嵌合回動部31を所定の深さ位置まで嵌合させると、シールドパイプ20の後端開口縁部21を後方から包み込むようにして覆う構成となっている。したがって、保護部材30がシールドパイプ20に取り付けられることで、シールドパイプ20内に配される電線がシールドパイプ20のエッジに接触して損傷することを防ぐことができるようになっている。なお、
図4に示すように、嵌合回動部31の軸心を中心として嵌合回動部31の側方開口とは反対側の位置では、覆い部32が分断されており、この覆い部32が分断された位置を支点に嵌合回動部31が僅かに弾性変形することで側方開口からの電線の挿入作業が容易に行えるようになっている。
【0019】
覆い部32の先端部である前端部には、
図9および
図10に示すように、電線挿通部材10の後端部に取り付けられるプロテクタ50を引っ掛けるためのプロテクタ係止部33が設けられている。
プロテクタ50は、ゴムなどの弾性材からなり、シールドパイプ20の後端部および保護部材30を一括して覆う略円筒状に形成されている。プロテクタ50の内周面には、環状の引っ掛け部51が周設されており、この引っ掛け部51がプロテクタ係止部33に前方から係止することで、プロテクタ50がシールドパイプ20の後端部から後方に外れることが防がれている。
【0020】
プロテクタ50の内周面における引っ掛け部51の前方には、保護部材30の後述する係止突部34を逃がす逃がし溝52が径方向外側に向かって凹んだ形態で形成されており、プロテクタ50をシールドパイプ20の後端部に取り付けた際に、プロテクタ50と保護部材30の係止突部34とが干渉することを防いでいる。
【0021】
プロテクタ係止部33の前端面は、
図9および
図10に示すように、プロテクタ50の引っ掛け部51を引っ掛けやすくするために、径方向内側に向かうほど後方に向かって傾斜した逆テーパ状に形成されており、例えば、プロテクタ係止部の前端面が逆テーパ状に傾斜することなく径方向外側に向けて広がっているものに比べて、保護部材30に対するプロテクタ50の保持力を高くすることができるようになっている。また、本実施形態によると、シールドパイプ20などにプロテクタ50を引っ掛けるプロテクタ係止部を別途設ける必要がないため、電線挿通部材10の構造が複雑になることを防ぐことができる。
【0022】
さて、嵌合回動部31の外周面には、
図1および
図2に示すように、外方に向けて突出する係止突部(「第1係止部」の一例)34が設けられており、シールドパイプ20の後端部には、嵌合回動部31がシールドパイプ20内に嵌合された際に、係止突部34が進入する切欠溝22が設けられている。
係止突部34は、
図2および
図7に示すように、嵌合回動部31の外周面における前後方向略中央部に配されおり、前後左右の四方に周面を有する略方形のブロック状に形成されている。
【0023】
切欠溝22は、
図2に示すように、シールドパイプ20の後端開口縁部21から前方に向けて直線状に延びる軸方向切欠溝23と、軸方向切欠溝23の前端部における背面視左側縁部23Lからシールドパイプ20の軸心を中心に反時計回り方向に延びる周方向切欠溝24とを有しており、全体としては略L字状に形成されている。
【0024】
軸方向切欠溝23は、
図2に示すように、シールドパイプ20を内外に貫通するスリット状に形成されている。また、軸方向切欠溝23は、
図4から
図6に示すように、周方向切欠溝24をシールドパイプ20の上側に配置した状態において、後方から視ると、右側上部の位置においてシールドパイプ20を上下方向に貫通して形成されている。つまり、軸方向切欠溝23における側縁は、シールドパイプ20の径方向に対して傾斜した形態となっており、背面視右側縁部23Rには、径方向内側に向かうほど周方向右側に傾斜するアンダーカット形状の被係止面23Aが形成されている。
【0025】
軸方向切欠溝23における周方向の溝幅寸法は、
図6に示すように、嵌合回動部31における係止突部34の左右の幅寸法よりもやや大きい寸法とされており、シールドパイプ20内に嵌合回動部31を嵌合させる際に、軸方向切欠溝23内に係止突部34を進入させることで、シールドパイプ20に対して嵌合回動部31を周方向に位置決めして嵌合させることができるようになっている。また、軸方向切欠溝23は、シールドパイプ20に対して嵌合回動部31が所定の深さ位置に至った際に係止突部34が軸方向切欠溝23の前端縁部23Fに当接する程度の長さ寸法に形成されており、係止突部34が軸方向切欠溝23の前端縁部23Fに当接することで嵌合回動部31の嵌合が前止まりされるようになっている。
【0026】
周方向切欠溝24は、
図2に示すように、軸方向切欠溝23と同様に、シールドパイプ20を内外に貫通するスリット状に形成されている。周方向切欠溝24の前後方向の幅寸法は、
図7に示すように、嵌合回動部31の係止突部34における前後方向の幅寸法よりも僅かに大きい寸法とされており、周方向切欠溝24の周方向の長さ寸法は、係止突部34の左右の幅寸法とほぼ同じ長さ寸法とされている。
【0027】
周方向切欠溝24には、嵌合回動部31を背面視反時計回り方向に回動させることに伴って軸方向切欠溝23の前端部に配された係止突部34が進入するようになっており、周方向切欠溝24の奥端部が保護部材30の組み付け終了後に係止突部34が配される最終組付位置とされている。したがって、
図1に示すように、周方向切欠溝24の最終組付位置に係止突部34が配されると、係止突部34と周方向切欠溝24の後側縁部24Rとが前後方向に係止することで、保護部材30がシールドパイプ20から脱落することを防止することができるようになっている。
【0028】
また、嵌合回動部31における係止突部34の後方周辺は、
図1、
図2および
図4に示すように、覆い部32が除かれた露出部35とされており、露出部35の背面視右側に配される覆い部32には、軸方向切欠溝23の背面視右側縁部23Rにおける被係止面23Aと周方向に係止する弾性係止片(「第2係止部」の一例)36が一体に設けられている。
【0029】
弾性係止片36は、
図4から
図6に示すように、嵌合回動部31の外周面に沿うようにして覆い部32から周方向切欠溝24の延びる方向と同一となる反時計回り方向に片持ち状に延出された形態をなしており、嵌合回動部31の径方向外側に向けて弾性変位可能とされている。また、弾性係止片36は、嵌合回動部31の外周面からシールドパイプ20の肉厚分程度の距離だけ径方向外側に浮き上がった形態をなしている。弾性係止片36の延出端には、径方向内側に向けて突出する係止爪37が設けられている。係止爪37における背面視右側の面は、径方向内側に向かうほど周方向右側に傾斜しており、シールドパイプ20の軸方向切欠溝23における被係止面23Aとほぼ同じ角度に傾斜した係止面37Aとされている。
【0030】
弾性係止片36は、シールドパイプ20に保護部材30を後方から組み付ける過程において、
図6に示すように、係止爪37がシールドパイプ20の後端開口縁から外周面に乗り上げることで径方向外側に向けて弾性変位する。そして、保護部材30の嵌合回動部31を背面視反時計回り方向に回動させると、
図4および
図5に示すように、係止爪37が軸方向切欠溝23内に嵌まり込むことで弾性係止片36が弾性復帰し、係止爪37と軸方向切欠溝23の背面視右側縁部23Rにおける被係止面23A(軸方向切欠溝23において周方向切欠溝24が設けられた側の縁部と対向する側縁部)とが周方向に係止するようになっている。また、弾性係止片36の係止爪37と軸方向切欠溝23の被係止面23Aとが係止した状態になると、係止突部34が周方向切欠溝24の最終組付位置に至るようになっている。
【0031】
つまり、保護部材30の嵌合回動部31を背面視反時計回り方向に回動させると、係止突部34が周方向切欠溝24内に収容されて周方向切欠溝24における最終組付位置に配されて嵌合回動部31の背面視反時計回り方向への回動が止められる。また、これと同時に、弾性係止片36の係止爪37における係止面37Aが軸方向切欠溝23の背面視右側縁部23Rにおける被係止面23Aに対して周方向に係止することで嵌合回動部31の背面視時計回り方向への回動が防がれる。これにより、
図1に示すように、係止突部34が、周方向切欠溝24における前側縁部24Fおよび後側縁部24Rによって前後両側から係止された状態にロックされ、保護部材30がシールドパイプ20から脱落することが防止される。
【0032】
また、係止爪37の前端縁には、
図1に示すように、径方向内側に向かうほど後方に向けて傾斜するテーパ状の案内面37Bが形成されている。この案内面37Bは、弾性係止片36の係止爪37がシールドパイプ20の後端開口縁から外周面に乗り上げる際に、弾性係止片36を滑らかに案内する。つまり、案内面37Bによって弾性係止片36が円滑に案内されることで、シールドパイプ20に保護部材30を組み付ける作業を円滑に実施することができると共に、弾性係止片36がシールドパイプ20の後端開口縁部21によって削られて損傷することを抑制することができるようになっている。
【0033】
また、嵌合回動部31の後端外周面には、
図7から
図10に示すように、シールドパイプ20の後端開口縁部21における内周縁21Aを前方に向けて押圧する押圧部38が張り出して形成されている。これらの押圧部38は、嵌合回動部31において周方向に間隔を空けて複数配されており、押圧部38の前端面は、後方に向かうほど径方向外側に突出する押圧傾斜面38Aとされている。押圧傾斜面38Aには、
図7および
図8に示すように、嵌合回動部31をシールドパイプ20に嵌合させた際に、シールドパイプ20の後端開口縁部21における内周縁21Aが乗り上げてシールドパイプ20が押圧部38によって前方に押圧された状態となる。つまり、シールドパイプ20の後端部が係止突部34と押圧部38とによって前後両側から挟持されることで、シールドパイプ20に対して保護部材30を前後方向にがたつかないように固定できるようになっている。
【0034】
本実施形態は、以上のような構成であって、続いて、電線挿通部材10の組み立て手順を説明すると共に、その作用および効果について説明する。
まず、
図2に示すように、シールドパイプ20と、保護部材30とを準備し、シールドパイプ20の後端内部に保護部材30の嵌合回動部31を嵌合させるようにして、シールドパイプ20の後端部に保護部材30を取り付ける。
【0035】
この取り付け過程では、
図6に示すように、嵌合回動部31の係止突部34をシールドパイプ20の軸方向切欠溝23に合わせるようにしてシールドパイプ20内に嵌合回動部31を嵌合させる。これにより、シールドパイプ20に対して保護部材30の嵌合回動部31を周方向に位置決めして嵌合させることができる。そして、シールドパイプ20に対して嵌合回動部31を所定の深さ位置まで嵌合させると、係止突部34が軸方向切欠溝23の前端縁部23Fに当接することで嵌合回動部31が前止まりされる。
【0036】
また、この嵌合過程の終盤では、弾性係止片36の係止爪37における案内面37Bがシールドパイプ20の後端開口縁部21から外周面に円滑に乗り上げることにより弾性係止片36が径方向外側に向けて弾性変位する。つまり、保護部材30の嵌合回動部31をシールドパイプ20の後端内部に嵌合させるだけで、弾性係止片36をシールドパイプ20の後端開口縁部21によって損傷させることなく、弾性係止片36をシールドパイプ20の外周面に乗り上げた状態にセットすることができる。
【0037】
次に、嵌合回動部31が所定の深さ位置まで嵌合したところで、嵌合回動部31を背面視反時計回り方向に回動させる。ここで、係止突部34が周方向切欠溝24内に収容され、係止突部34が周方向切欠溝24の最終組付位置に至ると、
図1に示すように、係止突部34が周方向切欠溝24の奥部に当接することで嵌合回動部31の反時計回り方向への回動が止められる。また、係止突部34が最終組付位置に至ると、
図1、
図4および
図5に示すように、弾性係止片36の係止爪37が軸方向切欠溝23内に嵌まり込んで弾性係止片36が弾性復帰し、係止爪37の係止面37Aが軸方向切欠溝23の背面視右側縁部23Rにおける被係止面23Aに周方向左側から係止することで、嵌合回動部31が背面視時計回り方向へ回動できない状態となる。
【0038】
つまり、嵌合回動部31を周方向の何れの方向にも回動させることができなくなることで、係止突部34が周方向切欠溝24における前後の側縁部によって前後両側から係止された状態にロックされ、保護部材30のシールドパイプ20からの脱落が確実に防止される。
【0039】
また、シールドパイプ20に対して保護部材30が取り付けられると、
図7から
図10に示すように、嵌合回動部31における押圧部38の押圧傾斜面38Aがシールドパイプ20の後端開口縁部21を前方に向けて押圧することにより、シールドパイプ20の後端部が係止突部34と押圧部38とによって前後両側から挟持され、保護部材30がシールドパイプ20に対して前後方向にがたつかないように固定される。これにより、保護部材30が前後方向にがたつくことなくシールドパイプ20に組み付けられた電線挿通部材10が完成する。
【0040】
次に、電線挿通部材10に所定の本数の電線を挿通し、シールドパイプ20に曲げ加工を施すことで所定の形状に屈曲させる。ここで、シールドパイプ20の後端開口縁部21は、エッジが鋭く尖った状態となっているものの、シールドパイプ20の後端開口縁部21における内周縁21Aと電線との間には、保護部材30の嵌合回動部31が配されることになる。また、シールドパイプ20の後端開口縁部21における外周縁21Bも保護部材30の覆い部32によって外側から覆われているから、他の部材などがシールドパイプ20に接触して損傷することを防ぐことができる。
【0041】
電線挿通部材10に電線が挿通されたところで、電線挿通部材10の後端部にプロテクタ50を取り付ける。なお、
図9および
図10では、電線を図示省略している。このプロテクタ50の取り付けにおいては、
図9および
図10に示すように、保護部材30の嵌合回動部31におけるプロテクタ係止部33にプロテクタ50の引っ掛け部51を前方から係止させることでプロテクタ50を電線挿通部材10に固定する。
【0042】
ここで、プロテクタ係止部33の前端面は、径方向内側に向かうほど後方に向かって傾斜した逆テーパ状になっており、プロテクタ50の引っ掛け部51が前方から引っかかりやすくなっているから、保護部材30に対するプロテクタ50の保持力を高くすることができる。また、シールドパイプ20にプロテクタ50を引っ掛けるプロテクタ係止部を別途設ける必要がないため、電線挿通部材10の構造が複雑になることを防ぐことができる。
【0043】
ところで、上記のように電線挿通部材10における保護部材30の外周にプロテクタ50が取り付けられたり、例えば、電線挿通部材10の外側にテープなどが巻き付けたりすると、プロテクタ50やテープなどによって保護部材30が径方向外側から押圧されたり、保護部材30に対して周方向に外力が作用することで、保護部材30がシールドパイプ20から脱落することが懸念される。
【0044】
しかしながら、本実施形態によると、係止突部34が径方向内側に向かって変位する構成とはなっておらず、弾性係止片36が軸方向切欠溝23の被係止面23Aに対して周方向に係止することで嵌合回動部31の回動が防がれているから、係止突部34が周方向切欠溝24から外れることがなく、保護部材30がシールドパイプ20から脱落することを防止することができる。
【0045】
以上のように、本実施形態の電線挿通部材10によると、嵌合回動部31によってシールドパイプ20内に配される電線が損傷することを防ぐことができることはもちろんのこと、嵌合回動部31に設けられた係止突部34が周方向切欠溝24の後側縁部24Rに前方から係止すると共に、弾性係止片36によって嵌合回動部31が回動しないようにロックされているから、電線挿通部材10にプロテクタ50を取り付けたり、テープを巻き付けたりしても、保護部材30がシールドパイプ20から脱落することを防止することができる。
【0046】
また、電線挿通部材10にプロテクタ50を取り付ける際には、シールドパイプ20からの脱落が防止された保護部材30のプロテクタ係止部33に、プロテクタ50の引っ掛け部51を前方から係止させるから、例えば、シールドパイプにプロテクタを引っ掛けるプロテクタ係止部を別途設ける場合に比べて、電線挿通部材10の構造が複雑になることを防ぐことができる。さらに、プロテクタ係止部33が逆テーパ状に設けられているから、例えば、プロテクタ係止部が逆テーパ状に設けられていないものに比べて、保護部材30に対するプロテクタ50の保持力を向上させることができる。
【0047】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、嵌合回動部31を円筒状に構成した。しかしながら、これに限らず、嵌合回動部を角筒状に構成してもよい。
(2)上記実施形態では、弾性係止片36を覆い部32に設けてシールドパイプ20の外側から弾性係止片36を軸方向切欠溝23の被係止面23Aに係止させる構成とした。しかしながら、これに限らず、弾性係止片を嵌合回動部に設けて、シールドパイプの内側から弾性係止片を軸方向切欠溝の被係止面に係止させる構成にしてもよい。
(3)上記実施形態では、径方向外側に弾性変形可能な弾性係止片36を軸方向切欠溝23の被係止面23Aに係止させる構成とした。しかしながら、これに限らず、径方向内側に向けて突出する係止突起が設けられた覆い部を設け、係止突起を軸方向切欠溝の被係止面に係止させる構成としてもよい。
【0048】
(4)上記実施形態では、嵌合回動部31に電線を挿通させるための側方開口を設けた構成とした。しかしながら、これに限らず、嵌合回動部に側方開口を設けず、嵌合回動部に電線を先通しする構成としてもよい。
(5)上記実施形態では、係止突部34を略方形のブロック状に構成した。しかしながら、これに限らず、係止突部を円柱状や三角柱状に構成してもよい。
(6)上記実施形態では、周方向切欠溝24を軸方向切欠溝23から背面視反時計回り方向に延ばして形成し、嵌合回動部31を所定の深さ位置まで嵌合させた後、背面視反時計回り方向に回動させる構成とした。しかしながら、これに限らず、周方向切欠溝を軸方向切欠溝から背面視時計回り方向に延ばして形成すると共に、軸方向切欠溝の背面視左側縁に弾性係止片を周方向に係止される構成とし、嵌合回動部を所定の深さ位置まで嵌合させた後、背面視時計回り方向に回動させる構成としてもよい。
(7)上記実施形態では、シールドパイプ20に保護部材30を組み付けた電線挿通部材10を一例として示した。しかしながら、これに限らず、金属製のシールドブラケットなどの筒状部材に保護部材を組み付けた電線挿通部材に本明細書で開示した技術を適用してもよい。
【解決手段】本明細書によって開示される電線挿通部材は、電線が挿通される金属製のシールドパイプ20に合成樹脂製の保護部材30が取り付けられた電線挿通部材10であって、シールドパイプ20の後端部から前方に向けて延びる軸方向切欠溝23と、軸方向切欠溝23から周方向に延びる周方向切欠溝24と、シールドパイプ20内に嵌合可能に保護部材30に設けられ、周方向に回動可能な円筒状の嵌合回動部31と、嵌合回動部31に突設され、嵌合回動部31がシールドパイプ20内に嵌合されるに伴って軸方向切欠溝23に進入し、嵌合回動部31の回動に伴って周方向切欠溝に進入する係止突部34と、保護部材30に設けられ、係止突部34が周方向切欠溝24に至った際に、軸方向切欠溝23の被係止面23Aに対して周方向に係止する弾性係止片36とを備える構成となっている。