(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5922293
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】コリオリ式質量流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
G01F1/84
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-212060(P2015-212060)
(22)【出願日】2015年10月28日
【審査請求日】2015年11月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305000482
【氏名又は名称】株式会社アツデン
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】村上 英一
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−529652(JP,A)
【文献】
特開2006−275682(JP,A)
【文献】
特開平4−291119(JP,A)
【文献】
特開平2−176525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定流体を一方向に流通する測定管と、該測定管に対し所定の位置に配置した固定部と、弾性部材を有し該弾性部材により前記固定部に連結した保持部と、前記測定管に振動を与える加振駆動部と、前記測定管の往き管と戻り管の2個所において前記測定管の変位を検出する変位検出部とを有するコリオリ式質量流量計であって、前記保持部は、前記測定管を一点で前記固定部に弾性的に引き寄せることにより前記測定管を保持するようにしたことを特徴とするコリオリ式質量流量計。
【請求項2】
前記測定管には前記弾性部材を係止するための係止部を付設したことを特徴とする請求項1に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項3】
前記保持部は前記係止部の前記1点を針状部材により引き寄せるようにしたことを特徴とする請求項2に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項4】
前記係止部には前記針状部材の先端が当接する円錐凹部を設けたことを特徴とする請求項3に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項5】
前記測定管の保持は前記往き管と前記戻り管との境界に設けた曲管部に対して行うようにしたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項6】
前記係止部は前記測定管の曲管部に付設したことを特徴とする請求項5に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項7】
前記係止部に永久磁石又は強磁性体から成る加振体を付設し、前記加振駆動部の電磁コイルにより前記加振体を介して前記測定管を所定の周波数で加振するようにしたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のコリオリ式質量流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定管の形状を保持するコリオリ式質量流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コリオリ式質量流量計とは、速度Vで回転振動系の回転中心に向かう、又は回転中心から離れる質量mの質点に働くコリオリ力が、質量mと速度Vの積に比例することから、コリオリ力を測定して質量流量を求める方式の流量計である。
【0003】
コリオリ式質量流量計は差圧式、電磁式、容積式などの流量計と比較すると、直接的に質量流量が得られること、摩耗などを起こす機械的可動部分がないこと、保守性に優れていること、そして原理上、測定管の振動数の計測から密度が計測できることなどの数々の優れた特長を有している。
【0004】
例えば、特許文献1には
図6に示すように、U字形測定管を用いたコリオリ式質量流量計が開示されている。測定管は1本のU字形測定管1で構成され、取付フランジ2a、2bを介して固定された点を中心にして、片持ち梁状のU字形測定管1は加振した共振周波数で上下に振動を繰り返す。
【0005】
この測定管1内に流入した測定流体は、入口からU字の曲がり部に向かって流れる際に、測定管1に対する速度によりコリオリ力が生じ、測定管1に歪を与え、曲管部から出口に向かって流れる際は、コリオリ力により逆方向の歪を与え振動となる。
【0006】
測定管1のU字形を成す先端には振動子3が設けられ、曲がり部の両側の測定管1には変位検出センサ4a、4bがそれぞれ取り付けられている。
【0007】
測定管1に測定流体を流し、振動子3を駆動し測定管1を加振する。振動子3の振動方向の角速度ω、測定流体の流速νとすると、Fc=−2mω×νのコリオリ力が働き、このコリオリ力Fcに比例した振動の振幅を変位検出センサ4a、4bで検出し、演算を行えば質量流量が測定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−41319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、この従来例のコリオリ式質量流量計では、測定管1内に測定流体が充満しても、例えばU字状部分が自重などで垂れ下がるなどの変形による測定誤差が介入しないように、測定管1には通常は金属管が使用されている。しかし、金属管の加工は難しく、加工により同一特性の金属管を揃えることは困難であり、使用に際してはその支持構造が大型となり重量も大となり、価格も高価となる。
【0010】
また、例えば半導体製造装置等で使用する腐蝕性液体を測定する場合には、耐蝕性が大きなフッ素樹脂管等を使用せざるを得ないが、合成樹脂管の使用により測定管の加工性が有利で軽量化ができる反面で、変形を少なくし振動に対する剛性を大きくした支持構造が必要となる。
【0011】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、測定管を1点において保持し、小型化が可能で安価なコリオリ式質量流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係るコリオリ式質量流量計は、測定流体を一方向に流通する測定管と、該測定管
に対し所定の位置に配置した固定部と、弾性部材を有し該弾性部材により前記固定部に連結した保持部と、前記測定管に振動を与える加振駆動部と、前記測定管の往き管と戻り管の2個所において前記測定管の変位を検出する変位検出部とを有するコリオリ式質量流量計であって、前記保持部は、前記測定管を一点で
前記固定部に弾性的に引き寄せることにより前記測定管を保持するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコリオリ式質量流量計によれば、測定管を1点において弾性的に引き寄せて保持することにより、測定管が自重などで変形することなく、発生したコリオリ力を基に安定して流量を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1のコリオリ式質量流量計の斜視図である。
【
図6】従来例のコリオリ式質量流量計の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を
図1〜
図5に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本実施例1のコリオリ式質量流量計の斜視図、
図2は側面図である。このコリオリ式質量流量計は主として、測定流体を一方向に流通する測定管11と、測定管11の1点を保持するために、測定管11を保持する保持部12と、保持部12に引き寄せる固定部13と、測定管11を加振する加振駆動部14と、測定管11の変位を検出する変位検出部15と、測定流体の温度を測定する温度測定部16とから成り、これらの機構に対し検出信号、制御信号を入出力し、測定流体の流量を演算する図示しない演算制御部とから成っている。
【0017】
測定管11は合成樹脂管の例えばフッ素樹脂管から成り、直径が例えば3.2mmで、中央部にU字状の曲管部11aを有している。なお、測定流体が腐蝕性を有していなければ、測定管11はフッ素樹脂管でなくとも通常の合成樹脂管であってもよい。しかし、測定管11は振動を十分に伝達可能とする硬度の弾性係数を有し、柔軟でない材質が必要である。測定管11の径は1例であり、任意の径の測定管11を使用できることは勿論である。
【0018】
測定管11の曲管部11aを境界とする往き管11bと戻り管11cの平行な2個所は、基板17上に配置されたハウジング18に挟着されることにより、測定管11は固定されている。
【0019】
図3に示す要部の拡大断面図のように、測定管11の曲管部11aには、係止部11dが付設され、この係止部11dの先端には角孔状の孔部11eが穿けられ、孔部11eの外側の内壁面には円錐凹部11fが設けられている。
【0020】
この孔部11eには保持部12の角環状の引寄部材12aが係合されており、円錐凹部11fを向く内壁面には円錐凹部11fに先端が当接する針状部材であるピボット針12bが設けられている。そして、引寄部材12aの他端は、コイルばね等から成る弾性部材12cにより固定部13側に弾性的に引き寄せられている。なお、係止部11d、引寄部材12aは金属製でも合成樹脂製でもよいが、耐久性を考慮すると、少なくとも円錐凹部11f、ピボット針12bは金属製であることが好ましい。
【0021】
引寄部材12aは図示しない2つ以上の部品から成り、孔部11eに引寄部材12aの部品を挿入した後に、溶接、接着、ボルト等を介して1つの部品としている。
【0022】
そして、ピボット針12bの先端が円錐凹部11fの底部に当接することにより、ピボット針12bの先端の1点で係止部11dを引き寄せることができる。なお、この保持位置は測定管11の往き管11b、戻り管11cに作用するコリオリ力の中心位置であり、しかも1点保持であるので、コリオリ力に大きな影響を与えることはない。
【0023】
また、係止部11dの下側には、加振駆動部14の一部として機能する加振体14aとして、永久磁石が磁極面を下方向に向けて取り付けられている。加振体14aの下方の基板17上には電磁石である電磁コイル14bが設けられ、加振体14aと磁気的に共働して加振駆動部14とされている。
【0024】
電磁コイル14bの鉄心14cに巻回したコイル14dに、電流の方向を切換えながら通電し、鉄心14cの端部から発生する磁束の方向を切換えることにより、加振体14aに対し磁気吸引力、磁気反発力を繰り返して作用し、加振体14a、係止部11dを介して測定管11に非接触で所定の振動を加振する。
【0025】
なお、この振動は測定管11の左右対称の中心位置に加えることが好ましい。また、振動数は測定管11中に測定流体を充満した状態における測定管1の共振周波数、或いはその整数倍とされ、通常はオートチューニングより求められた数10〜数100Hzであり、測定管11の弾性係数、形状、測定流体の種類によって異なる。
【0026】
なお、加振駆動部14による加振量は微少であるので、測定管11が保持部12により保持されていても、測定管11を加振することができる。また、加振体14aは永久磁石以外にも鉄、コバルト、ニッケル、これらの合金から成る強磁性体であってもよい。なお、加振駆動部14には電磁コイル14b以外の他の加振駆動機構を使用することも可能である。
【0027】
流量測定中の測定管11の加振による変位の大きさを測定するために、測定管11の平行部分の往き管11b、戻り管11cの2個所には、光センサによる変位検出部15が配置されている。測定管11には光反射部15aがそれぞれ取り付けられ、光反射部15aの下方の基板17上には、送受光部15bがそれぞれ配置されている。
【0028】
この変位検出部15では、送受光部15bからの光ビームを光反射部15aに向けて送光し、その反射光を送受光部15bで受光して、反射光の位置ずれを検出する。この位置ずれにより送受光部15bから光反射部15aまでの距離、つまり送受光部15bからの往き管11bと戻り管11cへの距離をそれぞれ測定し、往き管11bと戻り管11cにおけるねじれ量に相当する量を演算制御部で時間差検出により求める。そして、これらの検出量を基に流量を求めるが、その演算方式等は公知なのでその説明は省略する。
【0029】
なお、この変位検出部15は位置ずれ検出方式により距離を測定しているが、ぼけ検出方式、光干渉方式等により距離を検出してもよい。また、光検出方式の代りに、例えば電磁式の変位検出器等に代えることもできる。しかし、光検出方式は測定管11に対して力を作用することがないので、微小なコリオリ力に影響を与えることがなく、精度の良い流量測定ができる。
【0030】
測定管11の下方の基板17上には、測定管11の温度を測定する温度測定部16が配置されている。測定管11は測定流体の温度によって、温められたり冷やされると弾性係数が変化して、測定管11の共振振動数やねじれ面が微妙に変化するので、これらを補正するために測定管11の温度を測定する。なお、この測定流体の温度はこのコリオリ式質量流量計以外の他の個所において測定していれば、この温度測定部16を用いて温度を測定する必要はない。
【0031】
図4は温度測定部16で使用される赤外線放射温度計の構成図を示し、温度測定部16はレンズ光学系16aと温度検知素子16bとを有している。レンズ光学系16aは赤外光を測定管11の表面と温度検知素子16bとを共役としている。温度検知素子16bは図示しない光学フィルタを介して測定管11の表面温度に依存する赤外線を検知して表面温度を求める。なお、実施例においては、このコリオリ式質量流量計をカバーで覆って内部を暗室としているので、周囲の外光が温度測定における外乱となることはない。
【0032】
なお、本実施例1においては、測定管11は水平に配置しているが、垂直方向に配置してコリオリ力を検出し易いようにすることもできる。
【実施例2】
【0033】
図5は実施例2の要部拡大斜視図であり、実施例1と同一の符号は同一の部材を示している。測定管11に付設した係止部11dの先端には、金属製の半円弧状のリング部材11gが突出されている。リング部材11gの最先端には、コイルばねなどから成る弾性部材12dを1点において接続することにより、固定部13に連結されている。
【0034】
このような構成の実施例2においても、測定管11はリング部材11g、弾性部材12dにより、1点において固定部13側に弾性的に引き寄せられて保持される。
【0035】
なお更に簡便には、係止部11dを使用せずに、測定管11の曲管部11aに針金等を結んで弾性的に引き寄せることもできる。この場合には、測定管11に対する加振は、実施例1以外の手段により行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は実施例以外の直管方式を含む種々の形状の測定管を使用するコリオリ式質量流量計に適用することができる。また、測定管が金属製であっても、測定管を1点において引き寄せることにより保持できるので、剛性の大きな支持構造を使用せずに済み、価格的に有利である。
【符号の説明】
【0037】
11 測定管
11a 曲管部
11b 往き管
11c 戻り管
11d 係止部
11e 孔部
11f 円錐凹部
11g リング部材
12 保持部
12b ピボット針
12c、12d 弾性部材
13 固定部
14 加振駆動部
14a 加振体
15 変位検出部
15a 光反射部
15b 送受光部
16 温度測定部
16a レンズ光学系
16b 温度検知素子
17 基板
18 ハウジング
【要約】 (修正有)
【課題】軽量の測定管を使用し、小型化が可能で安価なコリオリ式質量流量計を提供する。
【解決手段】測定管11の曲管部11aには、係止部11dが付設され、この係止部11dの先端には孔部11eが穿けられ、孔部11eの外側の内壁面には円錐凹部が設けられている。この孔部11eには保持部12の環状の引寄部材12aが係合されており、円錐凹部に対向する引寄部材12aの内壁面には円錐凹部に当接するピボット針12bが当接されている。引寄部材12aの他端は、弾性部材12cにより固定部13側に引き寄せられている。
【選択図】
図2