【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、独立請求項に記載の、ガスタービンのオイルミストサンプルの液滴分(droplet fraction)を分析する方法、およびガスタービンのオイルミストサンプルの液滴分を分析するシステムにより解決することができる。
【0012】
本発明の第一態様によれば、ガスタービンのオイルミストサンプルの液滴分を分析する方法が提示される。本方法によれば、オイルミストサンプルは、収集装置により収集される。収集装置は、オイルミストがその中を通って流れるようにガスタービンに連結されたブリーザ管内に配置されている。液滴分を、フィルタ装置により、オイルミストサンプルの気体分(gaseous fraction)から分離し、したがってフィルタ装置は液滴分を含浸(soaked)させられることになる。液滴分を、テトラクロロエチレンを溶媒として用いることにより、フィルタ装置から抽出する。分光計、例えば赤外分光計により、テトラクロロエチレン溶媒と混合した液滴分を分析する。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、ガスタービンのオイルミストサンプルの液滴分を分析するシステムが提示される。システムは、オイルミストサンプルを収集する収集装置と、フィルタ装置と、分光計、例えば赤外分光計と、を備える。収集装置は、オイルミストがその中を通って流れるようにガスタービンに連結されたブリーザ管内に配置されている。フィルタ装置は、オイルミストサンプルの気体分から液滴分を分離するように構成され、したがってフィルタ装置は液滴分を含浸させられることになる。分光計は、テトラクロロエチレンを溶媒として使用することにより、フィルタ装置から抽出可能な液滴分の成分(composition)を分析するように構成されている。
【0014】
ブリーザ管は、例えば、オイルブリーザを備えたガスタービンまたは他の任意の装置(例えば内燃機関)のシャフトの軸受となる、ガスタービンの軸受ハウジングに連結されている。ガスタービンの軸受は一般に、例えば潤滑油を用いて潤滑にされている。ガスタービンは運転中に高温となるため、オイルミストが発生することがある。オイルミストは、第一の部分(first fraction)、すなわち気体凝集状態(gaseous aggregate state)にある油と、第二の部分(second fraction)、すなわち液状/液滴凝集状態(liquid/droplet aggregate state)にある油と、を有する。オイルミストは、ブリーザ管を通って例えば収集タンクに流れる。ブリーザ管は、円形、楕円形、または長方形の断面を有することができる。
【0015】
ブリーザ管から排出されたオイルミストの成分を測定することが求められている。特に、環境保護上の要件のため、オイルミストの成分を分析することが求められている。さらに、オイルミストの成分は、ガスタービンのある欠陥、またはガスタービンの軸受の欠陥に関する情報をそれぞれ提供することができる。
【0016】
収集装置は、オイルミストのサンプルを収集する。例えば、それぞれの収集装置は、サンプルをそれぞれ収集し、収集されたサンプル、すなわちオイルミストサンプルの液体分および/または気体分を外部分析ユニットに送ることができ、ユニットはブリーザ管の外に配置することができる。具体的には、収集装置は、オイルミストのサンプルがそこからそれぞれの収集装置に入ることができる開口セクション(opening section)をそれぞれ備えることができる。さらに、収集装置は、吸引ユニットを備える、または吸引ユニットに連結することができ、したがって流体が開口セクションに入るときに流体速度が等速となるように、サンプルを収集装置のそれぞれの内部ボリューム(inner volume)に予め規定された速度で吸引することができる。収集装置は、内部ボリュームと、それぞれの流体のサンプルがブリーザ管からそこを通って内部ボリュームに入る開口セクションと、を備える。開口セクションは、それぞれの収集装置に着脱可能に固定することができる。したがって、それぞれのオイルミストサンプルは、それぞれの開口セクションからそれぞれの収集装置の内部ボリュームに入ることができる。内部ボリュームの内部には、例えばフィルタ装置および/または光分析装置(例えば分光計)などの分析ユニットを装着することができる。
【0017】
フィルタ装置は、収集されたサンプルから第一の部分(液体、液滴分)と第二の部分(気体分)とに分離するために、例えば石英/ガラスウール、および/またはフィルタ薄膜を備えることができる。
【0018】
分光計は、ブリーザ管に対して外部に、例えば隣接した研究所に配置することができる。分光計により、収集されたサンプルの液滴(液体)分の成分を分析する。フィルタ装置から液滴分を抽出した後、液滴分をテトラクロロエチレン溶媒と混合する。分光計により、液滴分およびテトラクロロエチレン溶媒の混合物を分析し、測定する。特に、液滴分のガス種の、すなわちメタンだけの炭化水素(MOHC)の、一酸化炭素(CO)の、二酸化炭素(CO
2)の、および全炭化水素(THC)の量を分析することができる。さらに、サンプルから抽出された液滴分の量は、赤外分光計により測定可能である。
【0019】
さらに、赤外分光計は、適正な測定結果が得られるように較正する。赤外分光計により、特にオイルミストサンプルの液滴分およびテトラクロロエチレン溶媒の溶液を、放射光(例えば赤外光)の吸収を測定することにより測定する。
【0020】
本発明により、テトラクロロエチレン溶媒を使用することにより、液滴分をフィルタ装置から抽出する。テトラクロロエチレン(Cl
2C=CCl
2)は、特に、フィルタ装置により吸収されたオイル液滴などの有機材料を溶解させる溶媒である。従来の手法では、フレオンなどの可燃性で、かつ汚染性の高い溶媒が使用されてきている。本発明の手法によれば、安定性が高く、非可燃性のテトラクロロエチレンを使用する。さらに、テトラクロロエチレンは、フレオンなどの他のこれまで使用されてきた溶媒に比べて、環境に対する汚染物質がより少なく、かつ毒性がより低い。さらに、テトラクロロエチレン溶媒は、分光分析、すなわち赤外分光分析での使用に適している。したがって、本発明により、環境に対する害がより少なく、及び分析手順全体に対する害がより少ない分析方法が提供される。
【0021】
フィルタ装置に集められたオイルミストの液滴分を、テトラクロロエチレン溶媒により、例えばソックスレー抽出器を使用することにより抽出することができる。ソックスレー抽出器をテトラクロロエチレン溶媒とともに使用することにより、収集されたオイルミスト液滴分の大部分をフィルタ装置(例えば石英ウール)から抽出することが可能となる。
【0022】
抽出された液滴分を、テトラクロロエチレン溶媒とともに(赤外)分光計により分析する。
【0023】
さらなる例示的な実施形態によれば、オイルミストの気体分から液滴分を分離するステップは、ウールエレメント(wool element)、特に石英ウールエレメントを使用することにより、オイルミストの気体分から液滴分を分離するステップを含む。
【0024】
フィルタ装置、すなわちウールエレメントは、オイルミストの液滴分を含浸させられるものであり、ウールエレメントをソックスレー装置に配置することができ、ソックスレー装置を抽出装置として使用することができる。抽出装置内で、抽出に使用するテトラクロロエチレン溶媒により、フィルタ装置からオイルミストサンプルの液滴分を分離する。
【0025】
さらなる例示的な実施形態によれば、フィルタ装置は、収集装置内、特に収集装置の内部ボリュームの内部に配置する。したがって、ガスタービンの運転中に、連結ラインまたは他の取付け具などの外部取付け機器をブリーザ管にさらに連結する必要はない。
【0026】
したがって、オイルミストサンプルの気体分からの液滴分の分離は、収集装置の内部で直接実施される。したがって、ガスタービンを連続して運転することができ、その運転時間中に集まり、回収されたオイルミストサンプルの液滴分が、フィルタ装置により連続して分離されることになる。
【0027】
予め規定された点検周期で、収集装置および/またはフィルタ装置をブリーザ管から取り出し、そのフィルタ装置をソックスレー装置などの抽出ユニットに入れることができる。収集装置には、取り出されたフィルタ装置がソックスレー装置内にある間、別のフィルタ装置を据え付けることができる。したがって、収集装置内のフィルタ装置が交換可能であるため、ガスタービンの保守時間が短縮する。
【0028】
本方法のさらなる例示的な実施形態によれば、オイルミストの気体分から液滴分を分離した後に、収集装置を気体分分析ユニットと連結する連結ラインにより、ガス分を気体分分析ユニットへと導く。したがって、ガスタービンの運転中、気体分を、気体分分析ユニットに連続して導くことができ、気体分、したがって気体分の成分を、ガスタービンの運転中に分析することができる。
【0029】
それぞれのサンプルの気体分を、水素炎イオン化検出器(FID)により測定することができる。水素炎イオン化検出器により、特にそれぞれのサンプルの成分中の炭化水素などの揮発性有機化合物(VOC)を測定することができる。水素炎イオン化検出器は、2つの電極間の、火炎気体流体の導電率の測定に基づき、水素を可燃ガスとして使用し、水素を流体のガス分と混合する。このプロセスで、電子が放出され、放出された電子が周囲の金属ワイヤにより捕捉される。このため導電率が変化し、それによりガス分の成分を求めることができる。
【0030】
例示的な実施形態では、第一収集装置および第二収集装置が、ブリーザ管内に配置される。第一収集装置および/または第二収集装置は、それぞれの連結ラインにより気体分析ユニット、フィルタ装置、または抽出装置などの外部装置に連結される。それぞれの内部ボリュームの内部には、それぞれのオイルミストサンプルの液体/液滴分から気体分を分離するようにフィルタ装置が配置可能である。気体分は、連結ラインを介して外部の気体分析装置へと導かれる。液体分は、フィルタ装置の例えばガラスウール内に集まる。それぞれの収集装置内で所定時間、サンプルを収集した後、それぞれの収集装置から含浸したガラスウールを取り出すことができる。研究所で、ガラスウールから液体分を分離し、液体分の量および成分を分析する。したがって、液滴分は、研究所内で、オフラインで測定することができ(例えば分析機構がブリーザ管内にない場合)、ガス分析は、オンラインで連続して実施することができる(例えば、分析機構がブリーザ管内に配置され、かつエンジン、例えばガスタービンが運転している場合)。
【0031】
連結ラインは、ブリーザ管から安全な距離を置いて気体分を分析することができるように、約5mから約25m(メートル)、特に15mから20mの長さを有することができる。さらに、連結ラインは、温度を保持するために、したがって分析すべき気体分の流体流れ特性がほぼ変わらないように、被加熱トレースとすることができ、例えば発熱体、加熱ブレイド、または加熱ジャケットでよく、したがって、ブリーザ管から間隔が置かれていても、バイアスのない分析結果を得ることができる。
【0032】
本方法の例示的な実施形態によれば、ブリーザ管を通って流れる流体の速度、圧力、および/または温度を測定する。したがって、例えば等速なサンプル収集が調節可能なように、ブリーザ管内部の流体の流れ特性を決定することができる。
【0033】
特に、本方法の例示的な実施形態によれば、第一収集装置および第二収集装置の少なくとも一方の開口セクションの直径を、流体がその開口からそれぞれの第一収集装置またはそれぞれの第二収集装置の内部ボリュームへと等速に流れ込むように、ブリーザ管を通って流れる流体の測定速度、測定圧力、および/または測定温度に依存して調節する。
【0034】
さらに、第一収集装置および第二収集装置は、スプールピース(spool piece)に取り付けることができ、スプールピースは、例えばブリーザ管のフランジに着脱可能に配置することができる。スプールピース、およびそれぞれの収集装置を備える分析機構は、例えば様々なガスタービンからの様々なブリーザ管に装着することができ、分析機構は、それぞれのブリーザ管を通って流れる流体の個々の流れ状態に合わせて調節することができる。それぞれの収集装置の開口の直径を調節することにより、測定の調節を様々な運転条件に適合させることができ、したがって運転条件が様々であっても、開口を通って流れる流れを等速にすることができる。
【0035】
したがって、分析機構は、例えば様々なガスタービンの様々なブリーザ管に分析機構を使用することができるように、ブリーザ管に着脱可能に取り付けることができる。
【0036】
様々な主題に関して本発明の実施形態を説明してきたことに留意されたい。特に、いくつかの実施形態では装置タイプの請求項に関して説明し、他の実施形態では方法タイプの請求項に関して説明してきた。しかし、上記および以下の説明から、別段の記載がない限り、1つのタイプの主題に属する特徴のいかなる組合せにも加えて、異なる主題に関する特徴間、特に装置タイプの請求項の特徴と方法タイプの請求項の特徴との間のいかなる組合せも、本願で開示されているものとしてみなされることが当業者には理解されよう。
【0037】
本発明の上記で規定された態様、およびさらなる態様は、以下に記載する実施形態の例から明白であり、実施形態の例を参照しながら説明する。本発明について、以下で実施形態の例を参照しながらさらに詳細に記載するが、本発明はこれらの実施形態の例に限定されるものではない。