(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に脱アスファルテン性能は触媒細孔が20nmを超えないと大幅に向上しないため、特許文献1に記載された触媒のようにマクロポアを有していても主の反応細孔であるメソポアが必ずしも脱アスファルテン反応に有効ではない。また、特許文献1では、担体調製途中の捏和物に易分解物質を添加し焼成し除去することでマクロポアを調製すると記載されているが、当該調製法では、易分解物質を大量に使用する上、焼成する必要があるため生産性が低く、その結果生産コストが高くなることが問題であった。
【0006】
本発明の目的は、優れた脱メタル性能及び脱アスファルテン性能を示す水素化処理触媒、及び生産性の高い当該触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究した結果、細孔直径10〜30nmの範囲に細孔分布の極大値を有し、細孔直径5〜100nmの範囲に幅広い細孔分布を有する所定のアルミナ−リン担体に水素化活性金属を担持させた触媒が、優れた脱メタル性能及び脱アスファルテン性能を発揮することを見出した。また、前記課題であった触媒製造における生産性を向上させることもでき、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のような水素化処理触媒及びその製造方法を提供するものである。
〔1〕アルミナ-リン担体に水素化活性金属を担持した水素化処理触媒であって、
(1)比表面積が100m
2/g以上、
(2)水銀圧入法で測定した全細孔容積(PV
T)が0.80〜1.50ml/gの範囲にあり、
(3)細孔直径10〜30nmの範囲に細孔分布の極大値を有し、
(4)前記極大値における細孔直径の±2nmの範囲の細孔容積(ΔPV)
の細孔直径5nm〜100nmの範囲の細孔容積(PVme)に占める割合(ΔPV/PVme)が0.40以下であり、
(5)耐圧強度が10N/mm以上、
(6)リンを触媒全量基準でP
2O
5濃度換算量として0.4〜10.0質量%含み、
(7)水素化活性金属が周期律表第6A族金属及び第8族金属から選ばれる金属の少なくとも1種である
ことを特徴とする水素化処理触媒。
〔2〕上述の〔1〕に記載の水素化処理触媒において、前記アルミナ-リン担体におけるリン含有量が、担体全量基準でP
2O
5濃度換算量として0.5〜7.0質量%であることを特徴とする水素化処理触媒。
〔3〕上述の〔1〕または〔2〕に記載の水素化処理触媒において、前記水素化活性金属が、触媒全量基準で酸化物濃度換算量として1〜25質量%含まれることを特徴とする水素化処理触媒。
〔4〕上述の〔1〕から〔3〕までのいずれかに記載の水素化処理触媒において、細孔直径100〜1000nmの範囲に細孔分布の第2の極大値を有することを特徴とする水素化処理触媒。
〔5〕上述の〔4〕に記載の水素化処理触媒において、細孔直径100〜1000nmの範囲の細孔容積(PVma)と、細孔直径5〜100nmの範囲の細孔容積(PVme)との割合(PVma/PVme)が0.1〜0.5の範囲にあることを特徴とする重質炭化水素油の水素化処理触媒。
〔6〕上述の〔1〕から〔5〕までのいずれかに記載の水素化処理触媒において、重質炭化水素油の処理に用いられることを特徴とする水素化処理触媒。
〔7〕
上述の〔1〕から〔6〕までのいずれかに記載の水素化処理触媒を製造する方法であり、アルミナ−リン担体を製造後、前記担体に水素化活性金属を担持させ
る方法であって、前記担体の製造工程は、pHが2.0〜5.0に調整された酸性アルミニウム水溶液を攪拌しながら、pHが7.5〜10.0となるように塩基性アルミニウムの水溶液を添加してアルミナ水和物を得る第1工程と、前記アルミナ水和物の副生成塩を除去したアルミナ水和物にリンを添加してアルミナ-リン水和物を得る第2工程と、前記アルミナ−リン水和物を順次、熟成、捏和、成型、乾燥、及び焼成してアルミナ−リン担体を得る第3工程とを備えることを特徴とする水素化処理触媒の製造方法。
〔8〕上述の〔7〕に記載の水素化処理触媒の製造方法において、前記第2工程では、アルミナ水和物に対してリンを、前記担体全量基準でP
2O
5濃度換算量として3.0〜7.0質量%となるように添加することを特徴とする水素化処理触媒の製造方法。
〔9〕上述の〔7〕に記載の水素化処理触媒の製造方法において、前記第2工程では、アルミナ水和物に対してリンを、担体全量基準でP
2O
5濃度換算量として0.5〜2.5質量%となるように添加することを特徴とする水素化処理触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水素化処理触媒によれば、優れた脱メタル性能及び脱アスファルテン性能を示す。それ故、特に重質炭化水素油の水素化処理触媒として有効である。
また、本発明の水素化処理触媒の製造方法は簡便であって生産性が高く、製造コスト的にも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る水素化処理触媒(以下、「本触媒」ともいう。)は、アルミナ−リン担体に水素化活性金属を担持した触媒である。
ここで、アルミナ−リン担体は、アルミナとリンの酸化物だけでもよいし、他にシリカ、ボリア、チタニア、ジルコニア、
酸化マンガンなどの無機酸化物を含んでいてもよい。当該担体は、担体強度を保つとともに生産コストを抑える観点より、担体全量基準でアルミナを65質量%以上含有することが好ましく、75〜99質量%含有することがより好ましい。
以下、本発明の好適な実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
(1)比表面積が100m
2/g以上である点
本触媒の比表面積は100m
2/g以上である。該比表面積が100m
2/g未満の場合には、脱メタル性能へ影響は小さいが脱硫反応速度が大きく低下する傾向にある。該比表面積は、150〜250m
2/gの範囲にあることが望ましい。比表面積が250m
2/gを超えても、本発明の効果の向上はさほど認められず、むしろ脱メタル性(脱メタル選択性)が低下したり、触媒活性の安定性が低下するおそれがある。なお、本発明での比表面積はBET法で測定した値である。
【0013】
(2)水銀圧入法で測定した全細孔容積(PV
T)が0.80〜1.50ml/gの範囲である点
本触媒の全細孔容積(PV
T)は0.80〜1.50ml/gの範囲にある。該全細孔容積(PV
T)が0.80ml/g未満の場合には脱メタルの寿命が短くなる傾向にあり、1.50ml/gより大きい場合には触媒強度が低下する。該全細孔容積(PV
T)は、0.85〜1.40ml/gの範囲にあることが好ましく、0.90〜1.30ml/gの範囲にあることがより好ましい。なお、本発明における該全細孔容積(PV
T)は、細孔直径が3.2〜10000nm範囲の細孔容積を意味する。
本発明での細孔直径、細孔容積及び細孔分布は、水銀圧入法により測定したものであり、細孔直径は、水銀の表面張力480dyne/cm、接触角150°を用いて計算した値である。
【0014】
(3)細孔直径10〜30nmの範囲に細孔分布の極大値を有する点
本触媒の細孔分布は、細孔直径10〜30nmの範囲に極大値を有する。当該極大値が細孔直径10nm未満の範囲にあると、脱メタル性能が大幅に低下し、一方、当該極大値が細孔直径30nmを超える範囲にあると脱硫性能が低下する傾向にあり好ましくない。この極大値が存在する好ましい細孔直径の範囲は、12〜25nmであり、更に好ましくは15〜20nmである。
【0015】
(4)当該極大値における細孔直径の±2nmの範囲の細孔容積(ΔPV)の占める割合と細孔直径5〜100nmの範囲の細孔容積(PVme)に占める割合(ΔPV/PVme)が0.40以下である点
本触媒の細孔分布においては、当該極大値における細孔直径の±2nmの範囲の細孔容積(ΔPV)の占める割合と細孔直径5〜100nmの範囲の細孔容積(PVme)に占める割合(ΔPV/PVme)が0.40以下である。ΔPV/PVmeが0.40を超えるとアスファルテン分子との反応性が低下し、脱メタル性能及び脱アスファルテン性能が低下するため好ましくない。
【0016】
(5)耐圧強度が10N/mm以上である点
本触媒の耐圧強度は、10N/mm以上である。この耐圧強度が10N/mm未満であると、触媒を充填する際に壊れやすく、反応時に偏流や圧損の原因となるおそれがある。このため、耐圧強度が10N/mm以上でなければならない。なお、耐圧強度は、圧壊強度ともいわれ、本発明での耐圧強度は、木屋式硬度計で測定した値である。
【0017】
(6)リンを触媒全量基準でP
2O
5濃度換算量として0.4〜10.0質量%含む点
本触媒には、リンが触媒全量基準でP
2O
5濃度換算量として0.4〜10.0質量%含まれる。リン含有量が0.4質量%未満であると触媒強度(耐摩耗性)が低下するため好ましくない。リン含有量が10.0質量%を超えると触媒の比表面積が下がるため好ましくない。リンは触媒中に0.5〜10.0質量%含まれることが好ましく、1.0〜8.0質量%含まれることがより好ましく、2.0〜7.0質量%含まれることが更に好ましい。
【0018】
ただし、リンは、本触媒を構成するアルミナ−リン担体において、担体全量基準でP
2O
5濃度換算量として0.5〜7.0質量%含まれることが好ましく、1.0〜6.0質量%含まれることがより好ましく、1.5〜5.5質量%含まれることが更に好ましい。
当該担体におけるリン含有量が0.5質量%未満では、触媒強度が低下するおそれがある。また、本発明の目的である細孔直径5〜100nmの範囲に幅広い細孔分布を有することが困難となるおそれがある。また、担体におけるリン含有量が7.0質量%を超えると、細孔直径100〜1000nmの範囲の細孔容積が大きくなりすぎ触媒強度が低下するおそれがある。さらに、触媒嵩密度が低下して触媒性能も低下してしまうおそれもある。
【0019】
(7)水素化活性金属が周期律表第6A族金属及び第8族金属から選ばれる金属の少なくとも1種である点
本触媒では、担持される水素化活性金属が周期律表第6A族金属及び第8族金属から選ばれる金属の少なくとも1種である。当該水素化活性金属の担持量は、触媒全量基準で酸化物として1〜25質量%の範囲が好ましく、3〜20質量%の範囲がより好ましく、3〜15質量%の範囲がさらに好ましい。この金属担持量が1質量%以上であると、本発明の効果をより一層発揮することができる。また、この金属担持量が25質量%以下であると、脱メタル性(脱メタル選択性)や触媒活性の安定性を維持でき、さらに生産コストを抑えられる点で好ましい。
また、担体に担持させる金属としては、上述の周期律表第6A族金属と第8族金属を組み合わせて使用することが反応性の観点より好ましい。第6A族金属としては、モリブデンやタングステンが好ましく、第8族金属としては、ニッケルやコバルトが好ましい。
また、周期律表第6A族の金属に関しては、酸化物として好ましい担持量は、1〜20質量%の範囲、より好ましくは3〜15質量%の範囲である。周期律表第8族の金属に関しては、酸化物として好ましい担持量は、0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.3〜5質量%の範囲である。
【0020】
次に、本触媒を製造するための好適な実施形態について、以下に説明する。
【0021】
[アルミナ−リン担体の製造方法]
(第1工程)
敷き水に酸性アルミニウム塩を添加し、Al
2O
3として0.1〜2.0質量%、pH2.0〜5.0となるように調製した酸性アルミニウム水溶液を攪拌しながらその液温を50〜80℃、好ましくは60〜70℃に加温する。本発明で用いられる酸性アルミニウム塩としては、水溶性の塩であればよく、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどが挙げられ、Al
2O
3換算で0.5〜20質量%、好ましくは2〜10質量%含む水溶液を用いることが望ましい。
【0022】
次に、この酸性アルミニウム水溶液を攪拌しながら、pH7.5〜10.0となるように塩基性アルミニウムの水溶液を30〜200分間、好ましくは60〜180分間で添加し、アルミナ水和物を得る。本発明で用いられる塩基性アルミニウム塩としては、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリなどが挙げられ、Al
2O
3換算で2〜30質量%、好ましくは10〜25質量%含む水溶液を用いることが望ましい。
【0023】
(第2工程)
次に、得られたアルミナ水和物を50〜70℃、好ましくは55〜65℃の純水で洗浄し、ナトリウム、硫酸根等の不純物を除去し、洗浄ケーキを得る。更に、洗浄ケーキに純水を加えて、Al
2O
3濃度が5〜18質量%、好ましくは7〜15質量%となるように調製した後、アルミナ水和物にリンを添加して、アルミナ-リン水和物を得る。リンは、担体中にP
2O
5濃度として0.5〜7.0質量%含まれるよう添加することが好ましく、1.0〜6.0質量%含むことがより好ましく、1.5〜5.5質量%含むことが更に好ましい。リン源としては、リン酸、亜リン酸、リン酸アンモニア、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどのリン酸化合物が使用可能である。
【0024】
(第3工程)
得られたアルミナ−リン水和物を還流器付きの熟成タンク内において、30℃以上、好ましくは80〜100℃で、かつ、1〜10時間、好ましくは2〜5時間熟成し、慣用の手段により、例えば、加熱捏和して成形可能な捏和物とした後、押出成形などにより所望の形状に成形・乾燥し、400〜800℃で0.5〜10時間焼成して、アルミナ−リン担体を得る。
【0025】
[担体への金属の担持方法]
前述のアルミナ−リン担体を用いて、慣用の手段で周期律表第6A族金属及び第8族金属から選ばれる金属の少なくとも1種の金属を担持することにより、本発明の水素化処理触媒を製造することができる。このような金属の原料としては、例えば、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸コバルト、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモン、及びパラタングステン酸アンモンなどの金属化合物が使用され、含浸法、浸漬法などの周知の方法などにより担体に担持される。金属担持後の担体は、通常400〜600℃で0.5〜5時間焼成され本発明の水素化処理触媒となる。
【0026】
アルミナ−リン担体の製造方法における第2工程において、担体にリンを担体全量基準でP
2O
5濃度として3.0〜7.0質量%となるように添加することで、細孔直径100〜1000nmの範囲で細孔分布に第2の極大値を有する触媒を得ることができる。細孔分布に第2の極大値を有すると、脱アスファルテン及び脱メタル性能を高くすることができる。
また、この第2の極大値を有する触媒において、細孔直径100〜1000nmの範囲の細孔容積(PVma)と、細孔直径5〜100nmの範囲の細孔容積(PVme)との割合(PVma/PVme)が0.1〜0.5の範囲にあると、上述の効果をより一層発揮することができる。ただし、PVma/PVmeが0.5を超えると触媒強度が低下するおそれがある。
【0027】
一方、アルミナ−リン担体の製造方法における第2工程において、担体にリンを担体全量基準でP
2O
5濃度として0.5%〜2.5質量%となるように添加することで、細孔直径100〜1000nmの範囲で細孔分布に第2の極大値を有さない触媒を得ることができる。この触媒は、脱硫選択性に優れる。
それ故、細孔分布に第2の極大値を有する触媒と第2の極大値を有さない触媒とを組み合わせることで、脱アスファルテン及び脱メタル性能と、脱硫選択性とを兼ね備えた触媒システムを提供することが可能となる。
なお、本触媒における上述したパラメータ(1)〜(5)についても、基本的にリンの添加量により制御することができるが詳細は実施例で説明する。
【0028】
本発明の水素化処理触媒組成物は、バナジウムやニッケルなどの金属汚染物質を含む残渣油などの重質炭化水素油の水素化処理、特に脱メタル処理に好適に使用され、既存の水素化処理装置及びその操作条件を採用することができる。
また、本組成物の製造は簡便であるので生産性も高く、製造コスト的にも有利である。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
薬液添加口2箇所を持つ循環ラインを設けたタンクに純水35.2kgを張り込み、攪拌しながら硫酸アルミニウム水溶液(Al
2O
3として濃度7質量%)13.0kgを添加し、70℃に加温して循環させた。この時のアルミナ水溶液のpHは2.3であった。次に、アルミン酸ナトリウム水溶液9.5kg(Al
2O
3として濃度22質量%)を攪拌及び循環させながら70℃を保ちながら180分で添加し、アルミナ水和物を得た。添加後のpHは、9.5であった。次に、得られたアルミナ水和物を60℃の純水で洗浄し、ナトリウム、硫酸根等の不純物を除去し、洗浄ケーキを得た。洗浄ケーキに純水を加えて、Al
2O
3濃度が8質量%となるように調製した後、アルミナ水和物にリン酸256g(P
2O
5として濃度62質量%)を添加して、還流器のついた熟成タンクにて95℃で3時間熟成し、アルミナ−リン水和物を得た。熟成終了後のスラリーを脱水し、スチームジャケットを備えた双腕式ニーダーにて練りながら所定の水分量まで濃縮捏和した。得られた捏和物を押出成形機にて1.7mmの四つ葉型の柱状に押し出し成形した。得られたアルミナ成形品は、110℃で12時間乾燥した後、さらに680℃で3時間焼成してアルミナ−リン担体aを得た。担体aは、リンがP
2O
5濃度換算で5質量%、アルミニウムがAl
2O
3濃度換算で95質量%(いずれも担体全量基準)含有されていた。
【0031】
酸化モリブデン26.6gと炭酸ニッケル9.7gとを、イオン交換水400mlに懸濁させ、この懸濁液を液容量が減少しないように適当な還流措置を施して95℃で5時間過熱した後、リンゴ酸13.3gを加えて溶解させ、含浸液を作製した。この含浸液を、500gの担体aに噴霧含浸させた後、250℃で乾燥し、更に電気炉にて550℃で1時間焼成して水素化処理触媒A(以下、単に「触媒A」ともいう。以下の実施例についても同様である。)を得た。触媒Aの金属成分は、MoO
3が5質量%(触媒全量基準)で、NiOが1質量%(触媒全量基準)であった。触媒Aの性状を表1に示す。また、
図1(A)及び(B)に、それぞれ水素化処理触媒Aの積分型、微分型の細孔分布図を示す。
【0032】
[実施例2]
実施例1において、添加するリン酸を99.4g添加すること以外は実施例1と同様にしてアルミナ−リン担体bを得た。担体bは、リンがP
2O
5濃度換算で2質量%、アルミニウムがAl
2O
3濃度換算で98質量%(いずれも担体全量基準)含有されていた。担体bを用いて実施例1と同様にして触媒Bを得た。触媒Bの性状を表1に示す。また、
図2(A)及び(B)に、それぞれ水素化処理触媒Aの積分型、微分型の細孔分布図を示す。
【0033】
[実施例3]
実施例1において、添加するリン酸を150.7g添加すること以外は実施例1と同様にしてアルミナ−リン担体cを得た。担体cは、リンがP
2O
5濃度換算で3質量%、アルミニウムがAl
2O
3濃度換算で97質量%(いずれも担体全量基準)含有されていた。担体cを用いて実施例1と同様にして触媒Cを得た。触媒Cの性状を表1に示す。
【0034】
[比較例1]
実施例1において、リン酸を添加しないこと以外は実施例1と同様にしてアルミナ担体dを得た。担体dを用いて実施例1と同様にして触媒Dを得た。触媒Dの性状を表1に示す。
【0035】
[比較例2]
実施例1において、添加するリン酸を9.8g添加すること以外は実施例1と同様にしてアルミナ−リン担体eを得た。担体eは、リンがP
2O
5濃度換算で0.2質量%、アルミニウムがAl
2O
3濃度換算で99.8質量%(いずれも担体全量基準)含有されていた。担体eを用いて実施例1と同様にして触媒Eを得た。触媒Eの性状を表1に示す。
【0036】
[比較例3]
実施例1において、添加するリン酸を481.8g添加すること以外は実施例1と同様にしてアルミナ−リン担体fを得た。担体fは、リンがP
2O
5濃度換算で9質量%、アルミニウムがAl
2O
3濃度換算で91質量%(いずれも担体全量基準)含有されていた。担体fを用いて実施例1と同様にして触媒Fを得た。触媒Fの性状を表1に示す。
【0037】
[比較例4]
実施例1において、アルミン酸ナトリウム水溶液の添加時間を10分間としたこと以外は、実施例1と同様にしてアルミナ−リン担体gを得た。担体gは、リンがP
2O
5濃度換算で5質量%、アルミニウムがAl
2O
3濃度換算で95質量%(いずれも担体全量基準)含有されていた。担体gを用いて実施例1と同様にして触媒Gを得た。触媒Gの性状を表1に示す。
【0038】
[触媒活性評価試験]
実施例1〜3の触媒A〜C及び比較例1〜3の触媒D〜Fについて、固定床式のマイクロリアクターを用い、以下に示す条件で水素化脱メタル活性、脱硫活性、及び脱アスファルテン活性を調べた。
反応条件;
触媒充填量 :400ml
反応圧力 :13.5MPa
液空間速度(LHSV) :1.0hr
−l
水素/油比(H
2/HC) :800Nm
3/kl
反応温度 :370℃
また、原料油には下記性状の常圧残渣油を使用した。
原料油性状;
密度(15℃) :0.9761g/cm
3
アスファルテン分 :3.4質量%
イオウ分 :4.143質量%
メタル(Ni+V)量 :80.5質量%
水素化脱メタル活性、脱硫活性、及び脱アスファルテン活性を脱メタル率、脱硫率及び脱アスファルテン率として表し、その値を表1に示した。
なお、脱メタル率は次式により求めた。
脱メタル率=(原料油中のメタル濃度−水素化処理生成油中のメタル濃度/原料油中のメタル濃度)×100
また、脱硫率は次式により求めた。
脱硫率=(原料油中の硫黄濃度−水素化処理生成油中の硫黄濃度/原料油中の硫黄濃度)×100
脱アスファルテン率は次式により求めた。
脱アスファルテン率=(原料油中のアスファルテン濃度−水素化処理生成油中のアスファルテン濃度/原料油中のアスファルテン濃度)×100
【0039】
【表1】
【0040】
[評価結果]
表1の結果から、本発明における触媒A〜Cは、所定の構成を有しているので、比較例1〜4の触媒D〜Gよりも脱メタル率、脱アスファルテン率の値が特に高く、脱硫活性も高いことがわかる。また、細孔径100〜1000nmの範囲に細孔分布の第2の極大値を有する触媒A、C(実施例1、3)では、脱メタル率と脱アスファルテン率が非常に高い値を示すこともわかる。ただし、単にこの第2の極大値を所定の範囲に有していても、本発明の他の構成を満たしていない比較例3の触媒Fでは、上述した本発明の効果を奏することはできない。また、比較例4は、実施例1と異なり、アルミン酸ナトリウム水溶液の添加時間を10分間として終了pHを9.5としたものである。(この操作によりΔPV/PVmeを制御することができる。)その結果、ΔPV/PVmeが本発明で規定する範囲をはずれてしまうため、リン量が実施例1と同じであっても触媒活性は劣ったものとなっている。また、この比較例4において、第2の極大値を所定の範囲に有していても触媒活性に寄与しないことは比較例3と同様である。