(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922405
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】手術室用保温保冷装置
(51)【国際特許分類】
A61B 50/00 20160101AFI20160510BHJP
【FI】
A61B19/02 504
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-290106(P2011-290106)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138733(P2013-138733A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 亮次
(72)【発明者】
【氏名】上野 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】岩田 学
(72)【発明者】
【氏名】宝仙 啓治
(72)【発明者】
【氏名】深井 敦司
【審査官】
村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−040371(JP,A)
【文献】
実開昭64−041068(JP,U)
【文献】
特開2001−153522(JP,A)
【文献】
実開平05−017470(JP,U)
【文献】
特開平04−002302(JP,A)
【文献】
特開昭61−168767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術に用いられる物品を収納するための収納空間を有し、少なくとも保冷用バケットおよび保温用バケットを含む複数のバケットと、
各バケットの前記収納空間が外部に開放可能となるように、前記各バケットを保持するバケット保持体と、
前記バケット保持体に設けられる第1熱源体であって、第1吸熱部および第1放熱部を有し、前記第1吸熱部は、前記保冷用バケットに臨んで配置される第1熱源体と、
前記バケット保持体に設けられる第2熱源体であって、第2吸熱部および第2放熱部を有し、前記第2放熱部は、前記保温用バケットに臨んで配置される第2熱源体と、
前記バケット保持体に設けられ、前記第1および前記第2熱源体に電力を供給する電源手段と、
前記バケット保持体に設けられ、前記第1熱源体の第1放熱部で発生した温熱を、前記第1および第2放熱部間で熱媒体を循環させて、前記第2熱源体の第2放熱部に導く伝熱手段とを、含むことを特徴とする手術室用保温保冷装置。
【請求項2】
前記バケット保持体に設けられ、前記第2熱源体の第2放熱部によって発生した温熱を放出することによって、前記保冷用バケットの収納空間内の温度および前記保温用バケットの収納空間内の温度を調整する温度調整手段を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の手術室用保温保冷装置。
【請求項3】
前記第1熱源体および前記第2熱源体は、ペルチェ素子を含み、
前記電源手段は、充電式電源装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の手術室用保温保冷装置。
【請求項4】
前記保冷用バケットは、前記バケット保持体の最上位に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の手術室用保温保冷装置。
【請求項5】
前記バケット保持体は、透光性および断熱性を有する蓋体が開閉可能に設けられる天板を有し、
前記保冷用バケットは、前記蓋体によって前記収納空間が開放可能であることを特徴とする請求項4に記載の手術室用保温保冷装置。
【請求項6】
前記複数のバケットおよび前記バケット保持体は、非磁性材料から成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の手術室用保温保冷装置。
【請求項7】
前記複数のバケットおよび前記バケット保持体は、抗菌性に優れた材料から成ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の手術室用保温保冷装置。
【請求項8】
前記保冷用バケットおよび保温用バケットの少なくとも一方には、該バケットを前記バケット保持体に対して前記収納空間の開放位置への変位を阻止するロック手段が設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の手術室用保温保冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術室で使用される医療器具および薬品などの物品を適温で保管し、供給することができる利便性の向上された手術室用保温保冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、手術室で使用する医療器具、医療器材および薬品などの物品は、手術室の壁部に埋め込まれたステンレス製の器材棚などに保管され、手術時に使用される。前記器材棚には、保温庫および保冷庫が固定的に設置される場合が多い。この場合、手術前に複数の術者が必要とする物品を想定し、常に保温または保冷しておく必要があり、利便性が悪いという問題がある。
【0003】
また、医療器材および薬品などの物品を院内の中央材料室より前記器材棚まで移動する間、適温で保存することができないという問題がある。
【0004】
他の従来技術は、たとえば特許文献1に記載されている。この従来技術では、手術室の壁に室外側へ凹ませたアルコーブを形成し、アルコーブ内に手術室に必要な複数の器材を埋め込むように設置し、手術室を構築した後に仕様が変更された場合でも、設置済みの器材を取り外し後に、別の器材を設置できるようにし、器材の交換や配置替えを柔軟に行うことができる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−299409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記他の従来技術では、アルコーブ内に器材を埋め込むように設置されるので、患者毎に手術に必要な器具および薬品などの物品を、使用に適した温度で保管するためには、物品の保管場所が煩雑となり、しかも前記器具はアルコーブ内に設置されているため、手術台から離れており、迅速に適温状態で使用に供することができないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、患者毎に適温状態で使用に供することができる利便性の向上された手術室用保温保冷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、手術に用いられる物品を収納するための収納空間を有し、少なくとも保冷用バケットおよび保温用バケットを含む複数のバケットと、
各バケットの前記収納空間が外部に開放可能となるように、前記各バケットを保持するバケット保持体と、
前記バケット保持体に設けられる第1熱源体であって、第1吸熱部および第1放熱部を有し、前記第1吸熱部は、前記保冷用バケットに臨んで配置される第1熱源体と、
前記バケット保持体に設けられる第2熱源体であって、第2吸熱部および第2放熱部を有し、前記第2放熱部は、前記保温用バケットに臨んで配置される第2熱源体と、
前記バケット保持体に設けられ、前記第1および前記第2熱源体に電力を供給する電源手段と、
前記バケット保持体に設けられ、前記第1熱源体の第1放熱部で発生した温熱を、前記第1および第2放熱部間で熱媒体を循環させて、前記第2熱源体の第2放熱部に導く伝熱手段とを、含むことを特徴とする手術室用保温保冷装置である。
【0009】
また本発明は、前記バケット保持体に設けられ、前記第1熱源体の第1放熱部で吸熱した温熱を、前記第2熱源体の第2放熱部に導く伝熱手段を、さらに含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記バケット保持体に設けられ、前記第2熱源体の第2放熱部によって発生した温熱を放出することによって、前記保冷用バケットの収納空間内の温度および前記保温用バケットの収納空間内の温度を調整する温度調整手段を、さらに含むことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記第1熱源体および前記第2熱源体は、たとえばペルチェ素子を含み、
前記電源手段は、たとえば移動中などに商用交流電源のコンセントなどの端子部から電力を取ることが困難な場合にあっては、充電式電池などの充電式電源装置からの供給へ切り換わることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記保冷用バケットは、前記バケット保持体の最上位に配置されることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記バケット保持体は、透光性および断熱性を有する蓋体が開閉可能に設けられる天板を有し、
前記保冷用バケットは、前記蓋体によって前記収納空間が開放可能であることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記複数のバケットおよび前記バケット保持体は、非磁性材料から成ることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記複数のバケットおよび前記バケット保持体は、抗菌性に優れた材料から成ることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記保冷用バケットおよび保温用バケットの少なくとも一方には、該バケットを前記バケット保持体に対して前記収納空間の開放位置への変位を阻止するロック手段が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バケット保持体には、複数のバケットが、該バケットの収納空間を開放可能に保持される。このバケット保持体には、第1熱源体と第2熱源体とが設けられる。第1熱源体は、第1吸熱部と第1放熱部と有し、第1吸熱部が前記複数のバケットのうちの保冷用バケットに臨んで配置される。第2熱源体は、第2吸熱部と第2放熱部とを有し、第2放熱部が前記複数のバケットのうちの保温用バケットに臨んで配置される。これらの第1および第2熱源体には、電源手段から電力が供給され、第1および第2吸熱部の温度を低下させ、第1および第2放熱部の温度を上昇させることができる。
【0018】
このようにバケット保持体には、少なくとも保冷用バケットと保温用バケットとが設けられるので、手術室で使用される医療器具および薬品などの物品を適温で保管することができる。これによって、患者毎に適温状態で物品を使用に供することが可能となり、利便性を向上することができる。
【0019】
ま
た、バケット保持体に設けられる伝熱手段によって、第1熱源体の第1放熱部で発生した温熱が、第2熱源体の第2放熱部に導かれるので、保温用バケットで吸熱した温熱を保温に有効に利用し、省エネルギ化を図ることができる。
【0020】
また本発明によれば、バケット保持体に設けられる温度調整手段によって、第2熱源体の第2放熱部によって発生した温熱を放出して、保冷用バケットの収納空間内の温度および保温用バケットの収納空間内の温度を調整することができるので、第1および第2熱源体のオン・オフ動作を可及的に少なくして、第1および第2熱源体の劣化を抑制し、耐久性を向上することができる。
【0021】
また本発明によれば、第1および第2熱源体のペルチェ素子に、バケット保持体に設けられる充電式電源装置によって駆動電力を供給することができる。これによって、手術室に設けられる商用交流電源のコンセントなどの端子部から電力を取ることが困難な場合、たとえば移動中であっても、前記充電用電源装置の電力によって第1および第2熱源体を動作させることが
でき、使用上の利便性を向上することができる。
【0022】
また本発明によれば、バケット保持体には保冷用バケットが最上位に配置されるので、たとえば血液および低温に保たなければならない薬品の取入れ・取出し時に、従来技術の前面開放式の場合のように、冷気がバケット内から下方へ漏れることが防がれ、保冷用バケット内の冷気の漏れを極力防ぐことができる。
【0023】
また本発明によれば、バケット保持体が透光性および断熱性を有する蓋体が開閉可能に設けられる天板を有し、保冷用バケットは、前記蓋体によって前記収納空間が開放可能に構成されるので、保冷用バケットの収納空間内を、外部から蓋体を通して視認することができ、保冷用バケットの収納空間に手術に必要な物品が収容されているか否か、収容個数、向きなどの収納状態などを外部から容易に確認することができる。また蓋体は、断熱性を有するので、保冷用バケットの収納空間内が外光によって温度上昇することが抑制され、所望する温度を維持することができる。
【0024】
また本発明によれば、前記複数のバケットおよび前記バケット保持体は、非磁性材料から成るので、被収容物に対するMRIなどの電磁波の影響を排除することができる。
【0025】
また本発明によれば、前記複数のバケットおよび前記バケット保持体は、抗菌性に優れた材料から成るので、手術室用保温保冷装置の菌による汚染を防止することができる。
【0026】
また本発明によれば、前記保冷用バケットおよび保温用バケットの少なくとも一方には、該バケットを前記バケット保持体に対して前記収納空間の開放位置への変位を阻止するロック手段が設けられるので、第3者によるバケットの開放が防止され、安全性が向上されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態の手術室用保温保冷装置1を正面側から見た断面図である。
【
図2】手術室用保温保冷装置1を
図1の切断面線I−Iから見た断面図である。
【
図3】手術室用保温保冷装置1を背後側から見た断面図である。
【
図4】手術室用保温保冷装置1を
図1の上方から見た平面図である。
【
図5】手術室用保温保冷装置1を
図1の切断面線V−Vから見た断面図である。
【
図6】手術室用保温保冷装置1が手術室2に配置された状態の外観を示す斜視図である。
【
図7】保冷用バケット4aおよびその近傍の拡大断面図である。
【
図8】保温用バケット4bおよびその近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は本発明の一実施形態の手術室用保温保冷装置1を正面側から見た断面図であり、
図2は手術室用保温保冷装置1を
図1の切断面線I−Iから見た断面図であり、
図3は手術室用保温保冷装置1を背後側から見た断面図である。
図4は手術室用保温保冷装置1を
図1の上方から見た平面図であり、
図5は手術室用保温保冷装置1を
図1の切断面線V−Vから見た断面図であり、
図6は手術室用保温保冷装置1が手術室2に配置された状態の外観を示す斜視図である。
【0029】
本実施形態の手術室用保温保冷装置1は、手術室2に用いられる物品を収納するための収納空間3を有し、少なくとも保冷用バケット4aおよび保温用バケット4bを含む複数のバケット4a〜4d(総称する場合には、添え字a,b,c,dを省略して「バケット4」と記す)と、各バケット4の前記収納空間3が外部に開放可能となるように、前記各バケット4を保持するバケット保持体5と、バケット保持体5に設けられ、第1吸熱部6および第1放熱部7を有し、前記第1吸熱部6は保冷用バケット4aに臨んで配置される第1熱源体8と、前記バケット保持体5に設けられ、第2吸熱部9および第2放熱部10を有し、第2放熱部10は、保温用バケット4bに臨んで配置される第2熱源体11と、前記バケット保持体5に設けられ、第1および前記第2熱源体8,11に電力を供給する電源手段12とを含む。前記第1および第2吸熱部6,9は、たとえば熱伝導性に優れたアルミニウムまたはアルミニウム合金製のブロックから成り、第1および第2放熱部7、10は、たとえば断面が櫛歯状の熱伝導性に優れたアルミニウム製のヒートシンクから成る。
【0030】
前記手術室用保温保冷装置1はさらに、バケット保持体5に設けられ、前記第1熱源体8の第1放熱部7で発生した温熱を、第2熱源体11の第2放熱部10に導く伝熱手段13と、前記バケット保持体5に設けられ、第2熱源体11の第2放熱部10によって発生した温熱を放出することによって、前記保冷用バケット4aの収納空間3内の温度および前記保温用バケット4bの収納空間3内の温度を調整する温度調整手段28とをさらに含む。
【0031】
この温度調整手段28は、バケット保持体5の保温用バケット4bに臨む壁面に設けられる排気ファン14と、複数(本実施形態では4)の排気ダクト15とを含んで構成され、第2熱源体11の第2放熱部10に発生した熱の排出量を調整し、保冷用バケット4aおよび保温用バケット4b内の温度調整を行うことができる。前記電源手段12は、充電式電源装置であるバッテリによって実現される。
【0032】
前記バケット保持体5の下部には、4つのキャスタ25が設けられ、これらのキャスタ25によって手術室用保温保冷装置1は手術室2および通路などの床26上を自在に移動させて、医材などの物品を運搬し、未使用時などにはアルコーブ29内に退避させておくことができる。伝熱手段13は、水などの熱媒体をチューブなどを含む循環経路を構築して第1および第2放熱部7,10間で温水を循環させ、第1および第2熱源
体8,11で廃熱を有効利用することができるように構成される。
【0033】
図7は保冷用バケット4aおよびその近傍の拡大断面図であり、
図8は保温用バケット4bおよびその近傍の拡大断面図であり、
図9はペルチェ素子20を示す平面図であり、
図10はペルチェ素子20の側面図である。前記保冷用バケット4aは、バケット保持体5の前記保温用バケット4bよりも上方に配置される。この保冷用バケット4aの下方には、前記第1熱源体8および前記第2熱源体11が設けられる。第1熱源体8および前記第2熱源体11は、各複数(本実施形態では4)のペルチェ素子20をそれぞれ有する。各ペルチェ素子20としては、一例として述べると、室内の測定温度が27℃でAC抵抗計4端子測定法によって測定した抵抗値が2.3Ω、最大温度差を得るための最大電流が6.0A、最大温度差を得るための最大電圧が15.7V、温度差が0℃における吸熱量である最大吸熱量が55.6W(27℃)、61.0W(50℃)、吸熱量0Wにおける温度差である最大温度差が70℃〜77℃のペルチェ素子が用いられる。
【0034】
また前記保温用バケット4bは、一対のガイドレール24によって水平に移動可能に構成される。
【0035】
図11は蓋体21の断面図であり、
図12は蓋体21の平面図である。前記バケット保持体5は、空気層を挟んだ3層のパネル構造とされて透光性および断熱性を有する蓋体21がヒンジ23によって開閉可能に設けられる天板22を有する。前記保冷用バケット4aは、前記蓋体21によって前記収納空間3が開放可能である。
【0036】
また前記複数のバケット4および前記バケット保持体5は、抗菌性に優れた非磁性体材料、たとえばステンレス鋼または合成樹脂から成るので、被収容物に対するMRIなどの電磁波の影響を排除し、菌による汚染を防止することができる。
【0037】
また前記保冷用バケット4aおよび保温用バケット4bの少なくとも一方には、該バケット4を前記バケット保持体5に対して前記収納空間3の開放位置への変位を阻止するロック手段27が設けられるので、第3者によるバケットの開放が防止され、安全性が向上されている。このロック手段27は、たとえば電子式キーロック機構によって実現される。
【0038】
このように構成される本実施形態の手術室用保温保冷装置1によれば、バケット保持体5には、複数のバケットが、該バケットの収納空間3を開放可能に保持される。このバケット保持体5には、第1熱源体8と第2熱源体11とが設けられる。第1熱源体8は、第1吸熱部6と第1放熱部7と有し、第1吸熱部6が前記複数のバケット4のうちの保冷用バケット4aに臨んで配置される。第2熱源体11は、第2吸熱部9と第2放熱部10とを有し、第2放熱部10が前記複数のバケット4のうちの保温用バケット4bに臨んで配置される。これらの第1および第2熱源体8,11には、電源手段12から電力が供給され、第1および第2吸熱部6,9の温度を低下させ、第1および第2放熱部7,10の温度を上昇させることができる。
【0039】
このようにバケット保持体5には、少なくとも保冷用バケットと保温用バケットとが設けられるので、手術室2で使用される医療器具および薬品などの物品を適温で保管することができる。これによって、患者毎に適温状態で物品を使用に供することが可能となり、利便性を向上することができる。
【0040】
また、バケット保持体5に設けられる伝熱手段13によって、第1熱源体8の第1放熱部7で発生した温熱が、第2熱源体11の第2放熱部10に導かれるので、保冷部で吸熱した温熱を保温に有効に利用し、省エネルギ化を図ることができる。
【0041】
また、バケット保持体5に設けられる温度調整手段28によって、第2熱源体11の第2放熱部10によって発生した温熱を放出して、保冷用バケット4aの収納空間3内の温度および保温用バケット4bの収納空間3内の温度を調整することができるので、第1および第2熱源体8,11のオン・オフ動作を可及的に少なくして、第1および第2熱源体8,11の劣化を抑制し、耐久性を向上することができる。
【0042】
また、第1および第2熱源体8,11のペルチェ素子に、バケット保持体5に設けられる充電式電源装置によって駆動電力を供給することができる。これによって、手術室に設けられる商用交流電源のコンセントなどの端子部から電力を取ることが困難な場合、たとえば移動中であっても、前記充電用電源装置の電力によって第1および第2熱源体8,11を動作させることができ、使用上の利便性を向上することができる。
【0043】
また、バケット保持体5には保冷用バケット4aが最上位に配置されるので、たとえば血液および低温に保たなければならない薬品の取入れ・取出し時に、従来技術の前面開放式の場合のように、冷気がバケット内から下方へ漏れることが防がれ、保冷用バケット内の冷気の漏れを極力防ぐことができる。
【0044】
また、バケット保持体5が透光性および断熱性を有する蓋体21が開閉可能に設けられる天板22を有し、保冷用バケット4aは、前記蓋体21によって前記収納空間3が開放可能に構成されるので、保冷用バケット4aの収納空間3内を、外部から蓋体21を通して視認することができ、保冷用バケット4aの収納空間3に手術に必要な物品が収容されているか否か、収容個数、向きなどの収納状態などを外部から容易に確認することができる。また蓋体21は、断熱性を有するので、保冷用バケット4aの収納空間3内が外光によって温度上昇することが抑制され、所望する温度を維持することができる。
【0045】
また、従来の埋込み器材に代えてカート方式とするによって、生理食塩水や血液・薬品類を保管する保冷庫・保温庫を自在に移動することが可能となり、医材および生理食塩水・血液・薬品類のすべてを保管・在庫している病院などの中央材料部から、手術を受ける
患者一人毎に一人分の物品を搭載し、手術室2へ供給することができる。
【0046】
これによって一人分の生理食塩水・血液・薬品類が収容でき、カートに搭載するため小形化し、手術室用保温保冷装置1に前記物品を搭載して、バッテリ駆動によって保冷・保温状態を保ちながら、患者への使用間違いなく、必要な医材を供給することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 手術室用保温保冷装置
2 手術室
3 収納空間
4 バケット
5 バケット保持体
6 第1吸熱部
7 第1放熱部
8 第1熱源体
9 第2吸熱部
10 第2放熱部
11 第2熱源体
12 電源手段