(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922423
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20160510BHJP
H01H 73/02 20060101ALI20160510BHJP
H01H 73/08 20060101ALI20160510BHJP
H01H 83/02 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
H01H73/20 A
H01H73/02 A
H01H73/08
H01H83/02 H
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-25181(P2012-25181)
(22)【出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2013-161753(P2013-161753A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】平井 孝資
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智晴
(72)【発明者】
【氏名】須佐 太
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 肇
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−044947(JP,A)
【文献】
特開2009−290999(JP,A)
【文献】
特開2002−343222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00−69/01
H01H 71/00−83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性線と2本の電圧線から成る単相3線の電路のうち、中性線及び何れか一方の電圧線に接続して100Vを供給する分岐電路を形成し、前記分岐電路に過電流が流れたら分岐電路を遮断する回路遮断器であって、
電源側端子及び負荷側端子のうち、少なくとも電源側端子は単相3線式電路の3極に対応する3端子を備えると共に、分岐電路の電流を計測する電流センサ、及び検出した電流情報を外部に出力する計測端子を備え、
前記電流センサが前記分岐電路の中性線側の電路に対して設置されたことを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
3端子で構成された前記端子の電圧線を接続する2端子は、一つの端子金具を前記2端子間で移動可能とし、接続する電圧線に対応する端子のみ端子金具を備えたことを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路遮断器に関し、特に単相3線式電路に対して使用され且つ電路電流を計測する機能を備えた回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より電流計測機能を備えた回路遮断器がある。例えば、特許文献1では電路電流を計測するためにホール素子を備えたユニットを回路遮断器に装着して電流値情報を外部に出力可能としている。また、回路遮断器とは独立させて分電盤内に個々の回路遮断器に対応させた複数の変流器を配置して、検出した電流情報を集約してデータ処理する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
このように個々の回路遮断器に電流計測機能を設ければ、住戸全体の電力使用量を詳細に管理することが可能となるため、今後普及することが考えられる。特に、太陽光発電設備等の発電設備を備えた住宅においては、住宅の省電力化を進める上で個々の電力設備を管理することは必要であり、今後の普及が考えらる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−547155号公報
【特許文献2】特開2008−136282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、回路遮断器とは独立したケースに電流検出回路を組み込んだ構成であり、既存の分電盤内に組み込むことができない。また特許文献2の技術は、回路遮断器の設置数に合わせて電流センサを設置しなければならないため、作業が面倒であったし配線の接続作業が厄介であった。
そのため、電流センサを回路遮断器に内蔵させれば、既存の分電盤を大きく変更することなく使用することができるし、個々の回路遮断器に設けた計測端子にコードを接続するだけで個々の分岐電路の電流を計測できるため望ましいが、近年の回路遮断器は小型化(特に薄型化)が進んでいるため、電流計測機能を回路遮断器に内蔵するのは難しい。
【0005】
特に単相3線式の電路に使用される回路遮断器の場合、分電盤内に3本の電路が配設されて、そのうち2線を選択して接続する構成であるため、接続する線に合わせて接続端子位置を変更できる複雑な構成の回路遮断器を用意する必要がある。そのため、電流計測機能を具備させることは更に部品点数を増やしコスト増を招くものであった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、1つの電流センサを内蔵するだけで電圧線の選択によらず電路電流を計測可能とした単相3線式電路に使用する100V対応の回路遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、中性線と2本の電圧線から成る単相3線の電路のうち、中性線及び何れか一方の電圧線に接続して100Vを供給する分岐電路を形成し、前記分岐電路に過電流が流れたら分岐電路を遮断する回路遮断器であって、
電源側端子及び負荷側端子のうち、少なくとも電源側端子は単相3線式電路の3極に対応する3端子を備えると共に、分岐電路の電流を計測する電流センサ、及び検出した電流情報を外部に出力する計測端子を備え、前記電流センサが前記分岐電路の中性線側の電路に対して設置されたことを特徴とする。
この構成によれば、
電源側端子は3端子で構成されるため、使用する電圧線に拘わらず回路遮断器のケースは1種類で対応できる。そして、電流センサは中性線と2本の電圧線のうちの一方の電圧線とで構成される分岐電路のうち必ず接続される中性線側で電流を計測するため、接続する電圧線が変更されても1つの電流センサを移動することなく対応でき、最小限のコスト増で済む。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、
3端子で構成された前記端子の電圧線を接続する2端子は、一つの端子金具を前記2端子間で移動可能とし、接続する電圧線に対応する端子のみ端子金具を備えたことを特徴とする。
この構成によれ
ば、電源側端子の2つの電圧端子に対して端子金具が1つであっても、接続する電圧線に応じて端子金具の位置を変更して対応するため、部材を削減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電流センサは中性線と一方の電圧線で構成される分岐電路のうち必ず使用される中性線側で電流を計測するため、接続する電圧線が変更されても電流センサを移動することなく対応でき、最小限のコスト増で済む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る回路遮断器の一例を示し、ケースを開けた状態の側面説明図である。
【
図2】回路遮断器に組み込まれた電流計測のための回路図である。
【
図3】端子配列を変えた回路遮断器の他の例を示し、ケースを開けた状態の側面説明図である。
【
図4】端子配列を変えた回路遮断器の他の例を示し、ケースを開けた状態の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る回路遮断器の一例を示す説明図であり、回路遮断器のケースを開けた状態の側面図を示している。
図1において、1は電源側端子、2は負荷側端子、3は電源側端子1から負荷側端子3に至る電路を開閉操作するための操作ハンドル、4は短絡電流等の電路異常を検知するための可動電磁片、5は過電流を検知するためのバイメタル片、6は電路の開閉接点6aを内蔵した開閉機構部であり、操作ハンドル3は回路遮断器ケース10の上面に配置され、電源側端子1は背面に形成され、負荷側端子2は前面に形成されている。
【0012】
この回路遮断器は、中性線Nと2本の電圧線L1,L2で構成される単相3線式電路に対して使用されるもので、中性線Nと2本の電圧線L1,L2のうちの1本に接続して100V電圧を分岐して出力する。そのため、電源側端子1及び負荷側端子2は、中性極端子1a,2a、第1電圧極端子1b,2b、第2電圧極端子1c,2cの3端子をそれぞれ備えている。但し、後述するように常時接続する中性極端子1a,2aと、使用する一方の電圧極端子とに端子金具11,12を備えた構造となっている。
【0013】
そして、7はホール素子、8は変流器であり、何れも回路遮断器が形成する分岐電路の電流を計測するよう設けられている。また、9はホール素子7及び変流器8が計測した電流情報を外部に出力する計測端子である。
また、電源側端子1は上から中性線に接続する中性極端子1a、第1電圧線に接続する第1電圧極端子1b、第2電圧線に接続する第2電圧極端子1cの順に配列されている。負荷側端子2は、上から第1電圧極端子2b、中性極端子2a、第2電圧極端子2cの順に配列されている。
【0014】
そして、電源側端子1の中性極端子1a及び一方の電圧極端子(ここでは第1電圧極端子1b)に端子金具11がそれぞれ配置され、負荷側端子2の中性極端子2a及び一方の電圧極端子(ここでは第1電圧極端子2b)に端子金具12がそれぞれ配置されている。
この電圧極端子に組み付けられた端子金具11,12は、それぞれ2つの端子間(電源側の第1電圧極端子1bと第2電圧極端子1cの間、及び負荷側の第1電圧極端子2bと第2電圧極端子2cの間)で移動可能となっており、回路遮断器を接続する電圧線に合わせて一方の端子に配置され、同一のケース10を使用して対応できるよう構成されている。
図1では、第1電圧線L1に接続されるため、第1電圧極端子1b,2bが使用され、この端子に端子金具11,12が配置されている。
【0015】
図2は、回路遮断器に組み込まれた電流計測回路の回路図を示している。上述したように、中性線Nと2本の電圧線L(第1電圧線L1,第2電圧線L2)のうち第1電圧線L1に接続した場合を示している。よって、回路遮断器により分岐される分岐電路13は、中性線Nと電圧線L1とで構成されている。
そして、分岐電路13のうち中性線N上に、ホール素子7を備えた第1電流センサ15、及び変流器8を使用した第2電流センサ16が設けられている。また、17は計測端子9に接続されて電流センサ15,16の計測情報を基に電流値を演算して記録等行う外部の電力計測ユニットを示している。2種類の電流センサ15,16を設けることで、電路電流の高精度な計測を可能としている。
【0016】
ホール素子7を有する第1電流センサ15は、電路13のうちの中性線Nを挟むようにコ字状(或いはC字状)のフェライトコア14を配置し、そのギャップにホール素子7(
図1に示す)を配置して構成されている。ホール素子はホールIC15に組み込まれ、計測端子9に電線で接続され、電力計測ユニット17から必要な電源の供給を受けて、計測した電流情報を出力している。
【0017】
一方、変流器8を使用した第2電流センサ16は、変流器8の鉄心に電路13のうちの中性線Nが挿通され、二次巻き線が計測端子9に電線を介して接続されている。尚、
図1では、ホール素子7(ホールIC15)から計測端子9に至る配線、変流器8から計測端子9に至る配線は何れも省略してある。尚、変流器8に挿通される中性線Nは銅バー20で形成されている。
【0018】
このように、電流センサ15,16は中性線Nと2本の電圧線L1,L2のうちの一方の電圧線で構成される分岐電路13のうち中性線N側の電流を計測するため、接続する電圧線が変更されても電流センサ15,16を移動することなく対応でき、最小限のコスト増で済む。
また、電源側端子1は3端子で構成されるため、使用する電圧線Lに拘わらず回路遮断器のケース10は1種類で対応できる。そして、電源側端子1の2つの電圧極端子1b,1cに対して端子金具11が1であっても、接続する電圧線lに応じて端子金具11の位置を変更して対応するため、部材を削減できる。
【0019】
尚、上記実施形態では、負荷側端子2の配置を上から順に第1電圧極端子2b、中性極端子2a、第2電圧極端子2cとしたが、この順番は任意であり変更しても良く、
図3,
図4は変更した例を示している。
図3では、中性極端子2aの位置を変えず、第1電圧極端子2bを最下部に配置している。また
図4では、電源側の接続を第1電圧極端子1bから第2電圧極端子1cに変更した場合を示し、負荷側端子2は
図3と同様に最上部を第2電圧極端子2cとした場合を示している。
更に、負荷側端子2を電源側端子1に合わせて3端子としているが、2端子としても良く、この場合は端子金具12の変更は無くなる。
また、変流器8は分岐電路13の電流を計測するために組み込まれているが、電路電流はホール素子7のみで計測しても良い。その場合、分岐電路13を構成する全ての電線を変流器8に通せば、漏電を検出する零相変流器として使用できる。
【符号の説明】
【0020】
1・・電源側端子、2・・負荷側端子、7・・ホール素子、8・・変流器、9・・計測端子、11,12・・端子金具、13・・分岐電路、15・・第1電流センサ、16・・第2電流センサ。