【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度〜平成24年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発 実用性向上のための技術開発 超効率運転のための高圧運転技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料電池セル筒の内側に燃料供給室から燃料ガスを導入して燃料排出室へ排出するとともに、酸化剤供給室から発電室内に酸化剤を導入して前記燃料電池セル筒の外側を酸化剤排出室へ向けて下方から上方へ流し、前記燃料ガスと前記酸化剤とを電気化学的に反応させて発電する燃料電池の酸化剤供給方法であって、
容器の内部を上下方向に区画して上から順に前記燃料供給室、前記酸化剤排出室、前記発電室、前記酸化剤供給室及び前記燃料排出室を形成し、
前記容器内で前記発電室を上下方向に貫通する複数本の前記燃料電池セル筒を、上端を前記燃料供給室に開口させるとともに下端を前記燃料排出室に開口させ、
前記燃料排出室を前記容器の下面となる支持架台の凹部に収納設置して壁面間に間隙部を形成した二重箱構造とし、前記支持架台の内側縁部に仕切部材を設置して前記間隙部及び前記燃料排出室の上面を封止するとともに、前記間隙部と前記酸化剤供給室との間を連通させる酸化剤流通流路を設けて、
前記酸化剤を前記容器の下部から前記間隙部を介して前記酸化剤供給室に供給するとともに、前記燃料排出室の前記燃料ガスを、前記支持架台を貫通する管路によって前記容器の下部から排出することを特徴とする燃料電池の酸化剤供給方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来のSOFCは、燃料電池モジュールを構成するケーシングの平面視が略長方形を有しており、該ケーシングの長辺側を隣接させて複数を並べた配置となる。このため、燃料電池モジュールのケーシング側面(長辺側)から導入した空気を発電室内へ供給する構成では、空気配管の取り回しなど平面的に大きな設置スペースが必要になる。
【0006】
すなわち、空気配管のスペースを確保するためには、SOFCの燃料電池モジュール間に必要な面間距離が大きくなるので、その分だけSOFC全体も大きくなる。なお、燃料電池モジュールの短辺側に空気配管を設ける構成にしても、SOFC全体が長辺方向に大型化することに変わりはない。
一方、燃料電池モジュールの下面側は、燃料排出ヘッダや集電子を設置する必要があるため、発電室へ供給する空気の供給流路を単純な配管経路によって確保することは困難であった。
【0007】
このような背景から、従来のSOFCにおいては、燃料電池モジュールの設置スペースを低減してSOFCを小型化できる酸化剤供給構造の開発が望まれている。また、空気極の損傷を防ぐためには、発電室内に対して酸化剤を均一に供給することが望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、設置スペースを低減して小型化できる燃料電池及びその酸化剤供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る燃料電池は、複数の発電セルと、複数の前記発電セルの一方の端部を固定する仕切部材と、前記仕
切部材を介して発電室と連通するガス流路部と、前記ガス流路部に設ける第一空間と第二空間とを備える燃料電池であって、
一方の面と他方の面と側面とで囲まれた前記第一空間は、
前記一方の面側で前記発電セルの内部と連通し、
前記他方の面及び
前記側面で
前記第二空間と金属部材を介して隣接することを特徴とするものである。
【0009】
このような燃料電池によれば、ガス流路部に設ける第一空間が、一方の面側で発電セルの内部と連通し、他方の面及び側面で第二空間と金属部材を介して隣接するので、酸化剤供給の配管や燃料ガス排出の配管を燃料電池の側面からなくすことができ、従って、隣接する燃料電池間の間隔を狭めることで設置スペースを低減できる。
【0010】
この場合、前記第二空間は、複数の流通孔により前記発電室と連通し、前記流通孔は、前記第二空間の側壁鍔部の少なくとも一辺に設けられるスリットを備えていることが望ましく、これにより、発電室内に対して酸化剤をより一層均一に供給することができる。
また、前記スリットは、前記側壁鍔部の長辺側及び短辺側に設けられていることが好ましく、これにより、発電室内に対して酸化剤のガスをより一層均一に供給することができる。
【0011】
本発明に係る燃料電池の酸化剤供給方法は、燃料電池セル筒の内側に燃料供給室から燃料ガスを導入して燃料排出室へ排出するとともに、酸化剤供給室から発電室内に酸化剤を導入して前記燃料電池セル筒の外側を酸化剤排出室へ向けて下方から上方へ流し、前記燃料ガスと前記酸化剤とを電気化学的に反応させて発電する燃料電池の酸化剤供給方法であって、容器の内部を上下方向に区画して上から順に前記燃料供給室、前記酸化剤排出室、前記発電室、前記酸化剤供給室及び前記燃料排出室を形成し、前記容器内で前記発電室を上下方向に貫通する複数本の前記燃料電池セル筒を、上端を前記燃料供給室に開口させるとともに下端を前記燃料排出室に開口させ、前記燃料排出室を前記容器の下面となる支持架台の凹部に収納設置して壁面間に間隙部を形成した二重箱構造とし、前記支持架台の内側縁部に仕切部材を設置して前記間隙部及び前記燃料排出室の上面を封止するとともに、前記間隙部と前記酸化剤供給室との間を連通させる酸化剤流通流路を設けて、前記酸化剤を前記容器の下部から前記間隙部を介して前記酸化剤供給室に供給するとともに、前記燃料排出室の前記燃料ガスを、前記支持架台を貫通する管路によって前記容器の下部から排出することを特徴とするものである。
【0012】
このような燃料電池の酸化剤供給方法によれば、燃料排出室を容器の下面となる支持架台の凹部に収納設置して壁面間に間隙部を形成した二重箱構造とし、支持架台の内側縁部に仕切部材を設置して間隙部及び燃料排出室の上面を封止するとともに、間隙部と酸化剤供給室との間を連通させる酸化剤流通流路を設けて、酸化剤を容器の下部から間隙部を介して酸化剤供給室に供給するとともに、燃料排出室の燃料ガスを、支持架台を貫通する管路によって容器の下部から排出するようにしたので、酸化剤供給の配管や燃料ガス排出の配管を容器側面からなくすことができ、従って、隣接する燃料電池間の間隔を狭めることで設置スペースを低減できる。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明によれば、燃料電池の設置スペースを低減してSOFC(固体酸化物形燃料電池)を小型化することができる。
また、発電室内に対して酸化剤を均一に供給することが可能になるので、空気極の損傷を防止または抑制し、発電室内の流量偏差及び温度を均一化して信頼性や耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る燃料電池及びその酸化剤供給方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図示の燃料電池(燃料電池モジュール)10は、固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と呼ぶ)システムに適用されるものである。一般的なSOFCシステムは、発電を行なうSOFC形の燃料電池10と、都市ガスや天然ガス等の燃料ガスを改質するための改質器と、酸化剤のガス(酸化剤とは酸素を略15%〜21%含むガスであり、代表的には空気が好適であるが、空気以外にも燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなど、空気に限定されるものではない。)を予熱する空気予熱器と、燃料電池10から排出された排ガス中に含まれる未燃の燃料ガスを燃焼させる燃焼器と、を備えている。以下では、酸化剤のガスとして空気を使用するものとして説明する。
【0016】
また、以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて各構成要素の位置関係を特定するが、鉛直方向に対して必ずしもこの限りである必要はなく、たとえば上下が逆転したもの、鉛直方向に直交する水平方向や、水平方向から傾斜したものでもよい。
【0017】
また、SOFCシステムは、起動時において燃料電池10に供給される空気に対してメタン等の昇温用燃料ガスを供給する昇温用燃料供給部と、起動時において空気を所定温度にまで加熱する予熱ヒータと、を備えている。
予熱ヒータは、電力の供給を受けて熱を発生させるヒータであり、燃焼触媒において空気と昇温用燃料とが反応を起こす所定温度にまで加熱するものである。
【0018】
改質器は、後述する空気排出ヘッダ(空気排出室)23から排出された高温の空気が内部を通過するように構成されており、これにより、外部から供給された燃料ガスが加熱されるようになっている。
燃焼器は、後述する燃料排出ヘッダ(燃料排出室)20と接続されるとともに、空気予熱器を介して空気排出ヘッダ23と接続されている。
【0019】
燃料電池10は、たとえば
図1に示すように、断熱材のケーシング(容器)11と、略円筒状に形成された複数のセルチューブ(燃料電池セル筒)12と、セルチューブ12の両端を支持する上下の管板13,14と、これら上下の管板13,14の間に配置された上下の断熱体15,16と、ケーシング11の下部に設けられ、燃料排出ヘッダ(第一空間)20を収納して空気流路(後述する空気供給流路40及び空気流通孔41)を形成する二重容器構造の支持架台30と、から概略構成されている。
また、上断熱体15は、後述する空気排出ヘッダ23を形成するため、第1上断熱体15Aと第2上断熱体15Bとに二分割されている。すなわち、空気排出ヘッダ23は、第1上断熱体15Aと第2上断熱体15Bとの間に形成されている。
【0020】
ケーシング11と上下の断熱体15,16との間には、具体的には第1断熱体15Aと下断熱体16との間には、発電室17が形成されている。ケーシング11と上管板13との間には、燃料供給ヘッダ(燃料供給室)18が形成され、上面に燃料供給管19が接続されている。下管板14の下側には、燃料排出ヘッダ20の空間が形成されている。
そして、下管板14と下断熱体16との間には、空気供給ヘッダ22が形成され、上管板13と上断熱体15との間には、空気排出ヘッダ23が形成されている。なお、図中の符号24は、空気排出ヘッダ23に接続された空気排出管である。
【0021】
上管板13は、略長方形の水平断面形状を有する角柱状のケーシング11において、長手方向の上側(
図1の上方)に配置された板状の部材であり、燃料供給ヘッダ18の下面部材でとなる。
また、下管板14は、同じく長手方向の下側(
図1の下方)に配置された板状の部材であり、燃料排出ヘッダ20の上面部材とともに空気供給ヘッダ22の下面部材となる。また、下管板14は、後述する空気供給流路40の上端部を封止し、外周部が鍔部20aとして機能する部材である。
下管板14には、セルチューブの一方の端部が気密に固定支持されている。燃料ガスはセルチューブの内面を流れることで、発電室を経由して燃料供給ヘッダ18から燃料排出ヘッダ20に流通している。
なお、この場合の長手方向については、略角柱形状となるケーシング11の上下方向と読み替えることも可能である。
【0022】
セルチューブ12は、多孔質セラミックスから形成された略円筒状の管であり、長手方向における中央部には発電を行なう燃料電池セル(不図示)が設けられている。本実施形態において、セルチューブ12は略円筒状の管を用いたが、内部が空洞となっている筒型の形状であればよく、円、楕円、方形の形状を持つ管を発電セルとして用いる。
セルチューブ12は、一方の開口端が燃料供給ヘッダ18に開口するとともに、他方の開口端が燃料排出ヘッダ20内に開口するように、上下の管板13,14に穿設した貫通孔よって支持されている。また、セルチューブ12は、燃料電池セルが発電室17内にのみ位置するように配置されている。
【0023】
上断熱体15は、ケーシング11の長手方向の上側(
図1の上方)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材である。下断熱材16は、ケーシング11の長手方向の下側(
図1の下方)に配置され、断熱材料を用いてブランケット状あるいはボード状などに形成された部材であり、空気供給ヘッダ22の上面部材ともなる。
上断熱体15及び下断熱体16には、セルチューブ12を挿通させる孔15a,16aが形成され、孔15a,16aの直径は、空気の流通を可能にするためセルチューブ12の直径よりも大きく形成されている。
【0024】
また、孔15a,16aの内周面は、略円筒状に形成されていてもよいし、あるいは、螺旋状または、直線状の凹部(溝)または凸部(畝状突起)が形成されていてもよく、特に限定されることはない。
このような構成にすることで、セルチューブ12と孔15a,16aとの間を通って発電室17に流入する空気に下断熱体16の熱が伝達されやすくなるので、発電室17の温度を高温に保ちやすくなる。
【0025】
ケーシング11の下端部側(下部構造)は、支持架台30の内部に燃料排出ヘッダ20を収納して空気流路を形成する金属部材による二重箱(二重壁)構造となっている。
燃料排出ヘッダ20は、上面に下管板14を備えた中空箱形(略直方体形状)の部材であり、略同形状にして上面を開口させた支持架台30の内部空間(略直方体形状)に収納設置されている。
【0026】
すなわち、燃料排出ヘッダ20は、支持架台30より若干小さい略同形状の中空部材であり、下管板14がその上面開口を塞ぐようにして、上端部等の適所に固定して取り付けられている。
この場合、下管板14の平面形状を燃料排出ヘッダ20より大きくすることで、外周部が全周にわたって水平方向外向きに突出することとなり、この突出部が燃料排出ヘッダ20の鍔部20aを形成している。なお、図中の符号21は、燃料排出ヘッダ20の底面に接続された燃料排出管である。
【0027】
図1の発電室17の下部に配置される空気供給ヘッダ22、空気供給流路(第二空間)40、燃料排出ヘッダ20について、
図2〜
図5を用いてさらに詳細に説明する。
支持架台30は、上面が開放されている箱型の部材であって、側面31及び底面32により構成されている。側面31の上端部には、側壁鍔部31aが形成されている。側壁鍔部31aには外周側より低い段差部33が全周にわたって設けられている。この段差部33は、支持架台30の内部に燃料排出ヘッダ20を収納する際、燃料排出ヘッダ20の上端外周部に設けた鍔部20aを設置して係止するための部分である。
【0028】
また、支持架台30の底面32には空気供給口34が設けられ、下方へ向けた空気供給ノズル35が接続されている。空気供給ノズル35の側面には、空気供給管36が接続されている。さらに、上述した燃料排出ヘッダ20の燃料排出管21は、空気供給口34及び空気供給ノズル35の内部を通り、空気供給ノズル35の底部35aを下方へ貫通して図示しない外部機器に接続されている。
【0029】
空気供給口34及び空気供給ノズル35は、燃料排出管21より大径とされる。このため、燃料排出管21の外周面と空気供給ノズル35の内周面との間には、空気供給管36から供給された空気を空気供給ヘッダ22へ導く断面形状がリング状である空気導入空間部37が形成されている。この空気導入空間部37は、支持架台30の内周面と燃料排出ヘッダ20の外周面との間に形成された空気供給流路40の間隙部と空気供給口34を介して連通している。従って、空気供給管36から供給された空気は、空気導入空間部37から、燃料排出ヘッダ20の外周(底面及び側面)に形成された空気供給流路40へ流入する。
【0030】
また、空気供給流路40は、支持架台30における側壁31の上端部に設けられる側壁鍔部31aにおいて、段差部33の上面に上述した鍔部20aが設置されることから、空気供給流路40から空気供給ヘッダ22へ、すなわち、空気供給ヘッダ22に空気を供給するため、側壁鍔部31aの段差部33に設けた複数の空気流通孔(酸化剤流通流路)41を備えている。この空気流通孔41は、たとえば
図4に示すように、平面視が略長方形の支持架台30において、空気供給室22の周囲に開口するように配置して設けられている。空気供給流路40は、空気流通孔41を介して発電室17と連通しており、酸化剤が空気供給ヘッダ20を経由して発電室17に供給される。
【0031】
具体的に説明すると、空気流通孔41は、対向する一対の長辺側に所定のピッチで多数設けられるとともに、対向する一対の短辺側に1箇所ずつ設けられているが、これに限定されることはない。但し、発電室17に対して空気を均一に供給するには、空気供給室22の内部において、空気流通孔41が周囲に開口するよう設けられていればよく、より一層均一に供給するためには、長辺側に加えて短辺側にも設けることが望ましい。
【0032】
図示の空気流通孔41は、段差部33に設けた凹溝状のスリット41aと、鍔部20aの壁面とにより形成されている。この空気流通孔41は、段差部33の外周側までスリット41aを延在させてもよいし、あるいは、鍔部20a側の切欠きと組み合わせたものでもよい。
なお、空気流通孔41は、上述したスリット41aに限定されることはなく、たとえば側壁31や鍔部20aを貫通するような孔を設け、空気流通流路40と空気供給ヘッダ22との間を連通させてもよい。
【0033】
上述したように、本実施形態の燃料電池10は、セルチューブ12の内側に燃料供給ヘッダ18から燃料ガスを導入して燃料排出ヘッダ20へ排出するとともに、空気供給ヘッダ22から発電室17内に空気を導入してセルチューブ12の外側を空気排出ヘッダ23へ向けて下方から上方へ流し、燃料ガスと酸化剤の空気とを電気化学的に反応させて発電する。そして、この燃料電池10は、ケーシング11の内部を上下方向に区画し、上から順に形成された燃料供給ヘッダ18、空気排出ヘッダ23、発電室17、空気供給ヘッダ22及び燃料排出ヘッダ20を備えている。
【0034】
セルチューブ12は、ケーシング11内で発電室17を上下方向に貫通するように複数本設けられ、各セルチューブ12の上端が燃料供給ヘッダ18に開口するとともに、下端が燃料排出ヘッダ20に開口している。
また、ケーシング11の下端部は、燃料排出ヘッダ20をケーシング11の下面となる支持架台30の凹部に収納設置した二重箱構造とされ、ケーシング11と燃料排出ヘッダ20との壁面間に空気供給流路40となる間隙部が形成されている。この間隙部、すなわち空気供給流路40の上端部と、燃料排出ヘッダ20の上面とは、支持架台30の内側縁部である段差部33に設置した仕切部材の下管板14により封止されている。この場合、空気供給流路40の上端部を封止するのは、鍔部20aとして機能する下管板14の外周部である。
【0035】
そして、空気供給流路40と空気供給室22との間は、適所に設けた複数の空気流通孔41により連通されている。このため、酸化剤の空気は、ケーシング11の下部から、すなわち、支持架台30の底面32から空気供給流路40及び空気流通孔41を介して空気供給室22に供給される。
この空気は、下断熱体16に形成された孔16aとセルチューブ12との間を通って発電室17に供給される。また、発電室17で電気化学的な反応に使用された空気は、上断熱体15に形成された孔15aとセルチューブ12との間を通って発電室17から空気排出ヘッダ23に流出し、空気排出管24を通ってケーシング11の外部へ導かれる。
【0036】
一方、燃料供給管19から燃料供給ヘッダ18に導入された燃料ガスは、セルチューブ12を通って燃料排出ヘッダ20内に流出する。この燃料ガスは、発電室17を通過する際に空気と電気化学的に反応して発電する。
燃料排出室20に流出した燃料ガスは、支持架台30の底面32を貫通する管路の燃料排出管21を通り、ケーシング11の下部から、すなわち、支持架台30の底面32からケーシング11の外部へ排出される。
【0037】
このように、ケーシング11の下端部が二重箱構造とされ、燃料排出室20をケーシング11の下面となる支持架台30の凹部に収納設置して壁面間に空気供給流路40を形成し、空気が空気供給流路40及び空気流通孔41を通ってケーシング11の下部底面側から空気供給ヘッダ22に供給され、かつ、燃料排出ヘッダ20の燃料ガスについても、支持架台30の底面32を貫通する燃料排出管21によってケーシング11の下部底面側から排出するので、ケーシング11の側面には、空気供給に必要な配管類や燃料ガス排出に必要な配管類の設置スペースが不要となる。
【0038】
すなわち、燃料電池10の底面側は、燃料排出ヘッダ20や図示しない集電子の設置スペースを必要とするが、上述した二重箱構造の採用によって、燃料排出ヘッダ20や集電子の設置に支障をきたすことなく、発電室17へ空気を供給する空気流路の空気供給流路40及び空気流通孔41を設けることが可能になる。
この結果、平面視が長方形の長辺側を隣接させて複数配置される燃料電池10は、互いの間隔を狭めることで設置スペースを低減でき、結果として、SOFC全体を小型化できる。
【0039】
上述した空気流通孔41は、空気供給ヘッダ22の内部において、周囲に設けられていることが好ましい。すなわち、空気流通孔41は、空気供給ヘッダ22の空間を形成する内壁面下方に複数を配置し、換言すれば、空気供給ヘッダ22の下面を形成している下管板14の外周部に開口させて複数を配置し、空気供給ヘッダ22から発電室17へ空気を略均一に供給することが望ましい。
具体的には、平面視が略長方形となる空気供給ヘッダ22の両長辺側に等ピッチで多数の空気流通孔41を配置すればよいが、両長辺側に加えて短辺側にも設けることが好ましい。この場合、両短辺側については、それぞれ1個の空気流通孔41を中央部付近に設ければよく、これにより、発電室17内に対して空気をより一層均一に供給することができる。
【0040】
以下では、空気流通孔41の配置(数)と流量偏差との関係について、
図6から
図8を参照して説明する。この場合の流量偏差は、
図8に示すような下部構造のシミュレーションモデル(燃料電池10の1/4モデル)を用い、長辺側及び短辺側の空気流通孔41となるスリット41aの開口位置を変化させたケース1〜10について、発電室17内のセルチューブ12毎に空気の質量流量を算出し、最大及び最小の流量偏差を求めたものである。
【0041】
図8に示すシミュレーションモデル(1/4モデル)には、長辺側16本/短辺側4.5本のセルチューブ12が配列され、かつ、長辺側20個/短辺側4個のスリット41aが設けられている。なお、図中の符号25,26は、集電棒を通す穴である。
シミュレーションにおける空気流入条件は、圧力0.33Mpa、流量0.0052Kg/s、温度500℃と設定し、
図6に示すケース1〜10について計算した結果が
図7に示されている。
【0042】
この計算結果によれば、全周(長辺側及び短辺側に設けた全てのスリット41a)から空気を供給するケース1の場合、最大偏差120.8%/最小偏差91.8%となる。これに対し、ケース8では、最大偏差108.4%/最小偏差95.2%、流量偏差が−4.8〜8.4%となり、ケース1と比較すれば偏差の小さい均一な空気供給がなされていることになる。また、ケース10においても、最大偏差109.4%/最小偏差95.8%、すなわち流量偏差が−4.2%〜9.4%となり、略同様に偏差の小さい均一な空気供給がなされていることになる。
【0043】
ケース8で空気を供給するスリット41aは、長辺側の全て及び短辺側の1個(短辺方向スリット番号1)であり、従って、実機の燃料電池10においては、両長辺の全てにスリット41aを配設するとともに、両短辺の中央部に各々2個のスリット41aを設けたものとなる。
【0044】
また、ケース10で空気を供給するスリット41aは、長辺側の全て及び短辺側の0.5個(短辺方向スリット番号1)であり、従って、実機の燃料電池10においては、上述した実施形態で説明したように、両長辺の全てにスリット41aを配設するとともに、両短辺の中央部に各々1個のスリット41aを設けたものとなる。
なお、この計算結果によれば、長辺側に設けた全てのスリット41aから空気を供給する場合において、ケース8やケース10は、短辺側からの空気供給がないケース2と比較して良好な結果を示しており、従って、短辺側のスリット41aが均一化に有効であることが分かる。
【0045】
このように、上述したケース8やケース10のようなスリット41aの配置とすれば、セルチューブ12への空気供給において、発電室17へ供給する空気の均一化により空気極の損傷やセルチューブ間の温度偏りを防ぐことができる。
また、上述した燃料電池10の下部を二重箱構造にしたので、大きなスペースを確保しなくてもケーシング11の下部から空気を供給できるようになり、この結果、レイノルズ数を約3000以下(Re≦3000)の値にして流れの乱れを防止した整流化が可能となる。
【0046】
そして、上述した燃料電池10においては、燃料排出ヘッダ20をケーシング11の下面となる支持架台30の凹部に収納設置して壁面間に空気供給流路40を形成する二重箱構造とし、さらに上述した空気流通孔41を設けて、空気をケーシング11の下部から空気供給流路40及び空気流通孔41を介して空気供給ヘッダ22に供給するとともに、燃料排出ヘッダ20の燃料ガスを、支持架台30を貫通する燃料排出管21によってケーシング11の下部から排出する空気(酸化剤)供給方法が可能になる。
このため、空気供給管36や燃料排出管21をケーシング11の側面からなくすことができ、従って、隣接する燃料電池10の間隔を狭めることで設置スペースを低減できる。
【0047】
このように、上述した本実施形態によれば、空気配管等の複雑なマニホールドが不要となり、組立時の精度管理も容易になるとともに、燃料電池10の設置スペースを低減してSOFCを小型化することができる。
また、発電室17内に対して空気を均一に供給できるので、空気極の損傷を防止または抑制して信頼性や耐久性を向上させることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。