特許第5922450号(P5922450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5922450パイロット燃焼バーナ、ガスタービン燃焼器及びガスタービン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922450
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】パイロット燃焼バーナ、ガスタービン燃焼器及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/20 20060101AFI20160510BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20160510BHJP
   F23R 3/18 20060101ALI20160510BHJP
   F23R 3/06 20060101ALI20160510BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20160510BHJP
   F23R 3/34 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   F23R3/20
   F23R3/28 B
   F23R3/18
   F23R3/06
   F23R3/28 D
   F23R3/30
   F23R3/34
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-59347(P2012-59347)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-194928(P2013-194928A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】中尾 光宏
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 圭司郎
(72)【発明者】
【氏名】赤松 真児
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−144972(JP,A)
【文献】 特開2003−065536(JP,A)
【文献】 特開2010−249449(JP,A)
【文献】 特開2004−101081(JP,A)
【文献】 特開2006−017381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00−60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの燃焼器の軸心に配置されるパイロット燃焼バーナであって、
前記パイロット燃焼バーナの先端部分に設置した保炎器の任意半径位置において、前記保炎器の周方向に一定の間隔で孔を並べて貫通させ、圧縮機から送られた圧縮空気を前記孔に流入させるとともに、
前記圧縮空気の流れ方向において、燃料噴射口の位置を前記孔の上流側または内部に設けることで、燃料と前記圧縮空気とを混合して前記孔から噴出する予混合パイロットノズルと、
前記保炎器上において、前記孔と別の位置に設けた燃料噴射口から燃料を噴射することで拡散燃焼を行う拡散パイロットノズルと、
を備え、
メイン燃焼バーナの延長管出口位置と保炎器の位置関係に関し、前記燃焼器の軸心を通り燃焼器尾筒に向う直線に直交する方向で見たときに、前記保炎器の位置を前記延長管出口の位置よりも上流に設置するとともに、
前記保炎器の外周上、かつ前記メイン燃焼バーナの前記延長管の内側部分に、周方向に連続しているコーン部材を配置したこと、
または前記保炎器の外周上でかつ前記メイン燃焼バーナの前記延長管の内側部分に前記延長管の周方向位置と略一致させて複数の板を配置したこと、を特徴とするガスタービンのパイロット燃焼バーナ。
【請求項2】
ガスタービンの燃焼器の軸心に配置されるパイロット燃焼バーナであって、
前記パイロット燃焼バーナの先端部分に設置した保炎器の任意半径位置において、前記保炎器の周方向に一定の間隔で孔を並べて貫通させ、圧縮機から送られた圧縮空気を前記孔に流入させるとともに、
前記圧縮空気の流れ方向において、燃料噴射口の位置を前記孔の上流側または内部に設けることで、燃料と前記圧縮空気とを混合して前記孔から噴出する予混合パイロットノズルと、
前記保炎器上において、前記孔と別の位置に設けた燃料噴射口から燃料を噴射することで拡散燃焼を行う拡散パイロットノズルと、
を備え、
前記パイロットノズルに接続している燃料流路が、前記燃料流路内の燃料供給方向において、前記保炎器の上流に位置するキャビティに接続し、
前記キャビティには、外径が前記キャビティよりも大きく、前記燃料流路内の燃料供給方向において、その下流側を覆って蓋をする多孔板を設置するとともに、前記多孔板には複数の孔を設けて、前記孔から燃料を噴射できるようにし、
前記多孔板は、前記圧縮空気の流入方向で見て前記保炎器より上流側に位置し、かつ前記多孔板と前記保炎器との間には所定の隙間を設けるように設置し、
前記多孔板の周方向の孔位置を燃料噴射方向の下流に位置する前記保炎器の孔位置と一致する構成としたことで、前記多孔板と前記保炎器との隙間に前記圧縮空気が流入し、前記多孔板の孔位置から噴出した前記燃料と前記圧縮空気とを混合して噴出する予混合パイロットノズルを備えること、を特徴とするガスタービンのパイロット燃焼バーナ。
【請求項3】
前記予混合パイロットノズルは、
前記孔を設けた前記保炎器の半径位置における円周の接線方向に沿うように、前記孔を貫通させることで、前記燃料と前記圧縮空気とを含むパイロット混合ガスを周方向に旋回させること、を特徴とする請求項1または2に記載のガスタービンのパイロット燃焼バーナ。
【請求項4】
前記予混合パイロットノズルは、
前記保炎器の半径方向外側に向って前記孔を貫通させ、前記燃料と前記圧縮空気とを含むパイロット混合ガスを半径方向外側に噴出させること、を特徴とする請求項1または2に記載のガスタービンのパイロット燃焼バーナ。
【請求項5】
圧縮空気と燃料とが内部で燃焼して燃焼ガスを発生させる燃焼筒と、
前記燃焼筒内における軸心に配置されるパイロット燃焼バーナと、
前記燃焼筒内における前記パイロット燃焼バーナを取り囲むように配置される複数のメイン燃焼バーナと、を備えるガスタービン燃焼器において、
前記パイロット燃焼バーナの先端部分に設置した保炎器の任意半径位置において、前記保炎器の周方向に一定の間隔で孔を並べて貫通させ、圧縮機から送られた圧縮空気を前記孔に流入させるとともに、
前記圧縮空気の流れ方向において、燃料噴射口の位置を前記孔の上流側に設けることで、燃料と前記圧縮空気とを混合して前記孔から噴出する予混合パイロットノズルと、
前記保炎器上において、前記孔と別の位置に設けた燃料噴射口から燃料を噴射することで拡散燃焼を行う拡散パイロットノズルと、を備え、
前記メイン燃焼バーナの延長管出口位置と保炎器の位置関係に関し、前記燃焼器の軸心を通り燃焼器尾筒に向う直線に直交する方向で見たときに、前記保炎器の位置を前記延長管出口の位置よりも上流に設置するとともに、
前記保炎器の外周上、かつ前記メイン燃焼バーナの前記延長管の内側部分に、周方向に連続しているコーン部材を配置したこと、
または前記保炎器の外周上でかつ前記メイン燃焼バーナの前記延長管の内側部分に前記延長管の周方向位置と略一致させて複数の板を配置したこと、を特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項6】
圧縮空気と燃料とが内部で燃焼して燃焼ガスを発生させる燃焼筒と、
前記燃焼筒内における軸心に配置されるパイロット燃焼バーナと、
前記燃焼筒内における前記パイロット燃焼バーナを取り囲むように配置される複数のメイン燃焼バーナと、を備えるガスタービン燃焼器において、
前記パイロット燃焼バーナの先端部分に設置した保炎器の任意半径位置において、前記保炎器の周方向に一定の間隔で孔を並べて貫通させ、圧縮機から送られた圧縮空気を前記孔に流入させるとともに、
前記圧縮空気の流れ方向において、燃料噴射口の位置を前記孔の上流側に設けることで、燃料と前記圧縮空気とを混合して前記孔から噴出する予混合パイロットノズルと、
前記保炎器上において、前記孔と別の位置に設けた燃料噴射口から燃料を噴射することで拡散燃焼を行う拡散パイロットノズルと、を備え、
前記パイロットノズルに接続している燃料流路が、前記燃料流路内の燃料供給方向において、前記保炎器の上流に位置するキャビティに接続し、
前記キャビティには、外径が前記キャビティよりも大きく、前記燃料流路内の燃料供給方向において、その下流側を覆って蓋をする多孔板を設置するとともに、前記多孔板には複数の孔を設けて、前記孔から燃料を噴射できるようにし、
前記多孔板は、前記圧縮空気の流入方向で見て前記保炎器より上流側に位置し、かつ前記多孔板と前記保炎器との間には所定の隙間を設けるように設置し、
前記多孔板の周方向の孔位置を燃料噴射方向の下流に位置する前記保炎器の孔位置と一致する構成としたことで、前記多孔板と前記保炎器との隙間に前記圧縮空気が流入し、前記多孔板の孔位置から噴出した前記燃料と前記圧縮空気とを混合して噴出する予混合パイロットノズルを備えること、を特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項7】
圧縮機で圧縮した圧縮空気に燃焼器で燃料を供給して燃焼し、発生した燃焼ガスをタービンに供給することで回転動力を得るガスタービンにおいて、
前記燃焼器は、
高圧空気と燃料とが内部で燃焼して燃焼ガスを発生させる燃焼筒と、
該燃焼筒内における中央部に配置されるパイロット燃焼バーナと、
前記燃焼筒内における前記パイロット燃焼バーナを取り囲むように配置される複数のメイン燃焼バーナを有し、
前記パイロット燃焼バーナの先端部分に設置した保炎器の任意半径位置において、前記保炎器の周方向に一定の間隔で孔を並べて貫通させ、圧縮機から送られた圧縮空気を前記孔に流入させるとともに、
前記圧縮空気の流れ方向において、燃料噴射口の位置を前記孔の上流側に設けることで、燃料と前記圧縮空気とを混合して前記孔から噴出する予混合パイロットノズルと、
前記保炎器上において、前記孔と別の位置に設けた燃料噴射口から燃料を噴射することで拡散燃焼を行う拡散パイロットノズルと、を備え、
前記メイン燃焼バーナの延長管出口位置と保炎器の位置関係に関し、前記燃焼器の軸心を通り燃焼器尾筒に向う直線に直交する方向で見たときに、前記保炎器の位置を前記延長管出口の位置よりも上流に設置するとともに、
前記保炎器の外周上、かつ前記メイン燃焼バーナの前記延長管の内側部分に、周方向に連続しているコーン部材を配置したこと、
または前記保炎器の外周上でかつ前記メイン燃焼バーナの前記延長管の内側部分に前記延長管の周方向位置と略一致させて複数の板を配置したこと、を特徴とするガスタービン。
【請求項8】
圧縮機で圧縮した圧縮空気に燃焼器で燃料を供給して燃焼し、発生した燃焼ガスをタービンに供給することで回転動力を得るガスタービンにおいて、
前記燃焼器は、
高圧空気と燃料とが内部で燃焼して燃焼ガスを発生させる燃焼筒と、
該燃焼筒内における中央部に配置されるパイロット燃焼バーナと、
前記燃焼筒内における前記パイロット燃焼バーナを取り囲むように配置される複数のメイン燃焼バーナを有し、
前記パイロット燃焼バーナの先端部分に設置した保炎器の任意半径位置において、前記保炎器の周方向に一定の間隔で孔を並べて貫通させ、圧縮機から送られた圧縮空気を前記孔に流入させるとともに、
前記圧縮空気の流れ方向において、燃料噴射口の位置を前記孔の上流側に設けることで、燃料と前記圧縮空気とを混合して前記孔から噴出する予混合パイロットノズルと、
前記保炎器上において、前記孔と別の位置に設けた燃料噴射口から燃料を噴射することで拡散燃焼を行う拡散パイロットノズルと、を備え、
前記パイロットノズルに接続している燃料流路が、前記燃料流路内の燃料供給方向において、前記保炎器の上流に位置するキャビティに接続し、
前記キャビティには、外径が前記キャビティよりも大きく、前記燃料流路内の燃料供給方向において、その下流側を覆って蓋をする多孔板を設置するとともに、前記多孔板には複数の孔を設けて、前記孔から燃料を噴射できるようにし、
前記多孔板は、前記圧縮空気の流入方向で見て前記保炎器より上流側に位置し、かつ前記多孔板と前記保炎器との間には所定の隙間を設けるように設置し、
前記多孔板の周方向の孔位置を燃料噴射方向の下流に位置する前記保炎器の孔位置と一致する構成としたことで、前記多孔板と前記保炎器との隙間に前記圧縮空気が流入し、前記多孔板の孔位置から噴出した前記燃料と前記圧縮空気とを混合して噴出する予混合パイロットノズルを備えること、を特徴とするガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの燃焼器の軸心に配置されるパイロット燃焼バーナ、このパイロット燃焼バーナを有するガスタービン燃焼器及びこのガスタービン燃焼器が搭載されるガスタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なガスタービンは、圧縮機と燃焼器とタービンとにより構成されている。そして、空気取入口から取り込まれた空気が圧縮機によって圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器において、この圧縮空気に燃料を供給して燃焼させることで高温・高圧の燃焼ガスを得て、この燃焼ガスによりタービンを駆動させ、このタービンにロータを介して連結された発電機により発電を行う。タービンを駆動した燃焼ガスは、排気車室のディフューザを経由して大気に放出される。
【0003】
近年、大気放出される燃焼ガスの環境影響を考慮して、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物(以下、NOx)等の低減が求められている。そのため、ガスタービンの燃焼器にも低NOx化の特性が要求されるようになった。これに対し、従来のガスタービンの燃焼器に使用されてきた拡散燃焼方式は、燃焼安定性が高い反面、燃料と酸素とが量論比になる部分に火炎が形成され、火炎温度が断熱火炎温度に近い高温になるため、NOxの排出濃度が高くなる。そこで、燃焼前に理論空燃比よりも空気の量が過剰な混合ガスを作り、それを燃焼するという希薄予混合燃焼方式が提案された。この方式は火炎温度を抑えた燃焼が可能となるため、低NOx化に対して優れている。しかし、希薄混合ガスは燃料濃度が低過ぎるので、火炎を保持することが困難である。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に記載されているように、混合ガスとは別個にパイロット燃焼バーナを使用し、メインの予混合燃焼バーナとは別の高温の燃焼ガスを作り、そのガスを主燃焼器の希薄混合ガスに吹き込んで安定的に燃焼を行う燃焼器が提案された。
【0005】
しかし、特許文献1のパイロット燃焼バーナは拡散燃焼を行うため、可燃範囲が広く火炎は安定するが、燃焼時に局所的な高温部が発生するので、更なる低NOx化のためには限界がある。
【0006】
そこで特許文献2に記載されているように、パイロット燃焼バーナにおいても拡散燃焼方式と予混合燃焼方式を併用することが検討された。この技術では、燃焼が不安定な起動時には拡散燃焼を行い、ガスタービンが所定の負荷に達したら予混合燃焼に切り替えることにより、起動時における吹き消えを防止することができるとともに、低NOx化を実現する効果を狙ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−101081号公報
【特許文献2】特開2010−249449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ガスタービン起動から定格運転に合わせて、パイロット燃焼バーナの燃焼方式を拡散燃焼方式から予混合燃焼方式に切り替え、さらに、更なる低NOx化のため、予混合パイロット燃焼バーナにおける燃料の比率(パイロット比率)を下げていくと、燃焼器内に燃焼振動が発生する場合がある。
【0009】
パイロット比率を下げていくとパイロット混合ガスの燃焼温度が下がり、また、燃焼速度が遅くなるために、低温燃焼域になった火炎長が長くなっていく。つまり、パイロット比率が高い間はメイン燃焼バーナの混合ガスへは高温の既燃ガスが到達していたのに対し、パイロット比率を下げていくと未燃予混合ガスが到達するようになり、その結果、メイン燃焼バーナの保炎器部に対して、既燃ガスと未燃ガスとが不規則な影響を与えるため、燃焼安定性が損なわれ、燃焼振動が発生する。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、燃焼振動を抑制することで安定燃焼を行うとともにNOxの発生量を抑制することができるパイロット燃焼バーナ、ガスタービン燃焼器及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の問題点に対し本発明は、以下の各手段を以って課題の解決を図る。
【0012】
第1の発明のパイロット燃焼バーナは、ガスタービンの燃焼器の軸心に配置されるパイロット燃焼バーナであって、前記パイロット燃焼バーナの先端部分に設置した保炎器の任意半径位置において、前記保炎器の周方向に一定の間隔で孔を並べて貫通させ、圧縮機から送られた圧縮空気を前記孔に流入させるとともに、前記圧縮空気の流れ方向において、燃料噴射口の位置を前記孔の上流側または内部に設けることで、燃料と前記圧縮空気とを混合して前記孔から噴出する予混合パイロットノズルと、前記保炎器上において、前記孔と別の位置に設けた燃料噴射口から燃料を噴射することで拡散燃焼を行う拡散パイロットノズルと、を備えることを特徴とする。
【0013】
第2の発明のパイロット燃焼バーナは、上述したパイロット燃焼バーナにおいて、前記予混合パイロットノズルは、前記孔を設けた前記保炎器の半径位置における円周の接線方向に沿うように、前記孔を貫通させることで、前記燃料と前記圧縮空気とを含むパイロット混合ガスを周方向に旋回させること、を特徴とする。
【0014】
第3の発明のパイロット燃焼バーナは、上述したパイロット燃焼バーナにおいて、前記予混合パイロットノズルは、前記保炎器の半径方向外側に向って前記孔を貫通させ、前記燃料と前記圧縮空気とを含むパイロット混合ガスを半径方向外側に噴出させること、を特徴とする。
【0015】
第4の発明のパイロット燃焼バーナは、上述したパイロット燃焼バーナにおいて、前記メイン燃焼バーナの延長管出口位置と保炎器の位置関係に関し、前記燃焼器の軸心を通り燃焼器尾筒に向う直線に直交する方向で見たときに、前記保炎器の位置を前記延長管出口の位置よりも上流に設置するとともに、前記保炎器の外周上、かつ前記メイン燃焼バーナの前記延長管の内側部分に、周方向に連続しているコーン部材を配置したこと、または前記保炎器の外周上でかつ前記メイン燃焼バーナの前記延長管の内側部分に前記延長管の周方向位置と略一致させて複数の板を配置したこと、を特徴とする。
【0016】
第5の発明のパイロット燃焼バーナは、上述したパイロット燃焼バーナにおいて、前記パイロットノズルに接続している燃料流路が、前記燃料流路内の燃料供給方向において、前記保炎器の上流に位置するキャビティに接続し、前記キャビティには、外径が前記キャビティよりも大きく、前記燃料流路内の燃料供給方向において、その下流側を覆って蓋をする多孔板を設置するとともに、前記多孔板には複数の孔を設けて、前記孔から燃料を噴射できるようにし、前記多孔板は、前記圧縮空気の流入方向でみて前記保炎器より上流側に位置し、かつ前記多孔板と前記保炎器との間には所定の隙間を設けるように設置し、前記多孔板の周方向の孔位置を燃料噴射方向の下流に位置する前記保炎器の孔位置と一致する構成としたことで、前記多孔板と前記保炎器との隙間に前記圧縮空気が流入し、前記多孔板の孔位置から噴出した前記燃料と前記圧縮空気とを混合して噴出する予混合パイロットノズルを備えること、を特徴とする。
【0017】
第6発明のガスタービン燃焼器は、圧縮空気と燃料とが内部で燃焼して燃焼ガスを発生させる燃焼筒と、前記燃焼筒内における軸心に配置されるパイロット燃焼バーナと、前記燃焼筒内における前記パイロット燃焼バーナを取り囲むように配置される複数のメイン燃焼バーナと、を備えるガスタービン燃焼器において、前記パイロット燃焼バーナの先端部分に設置した保炎器の任意半径位置において、前記保炎器の周方向に一定の間隔で孔を並べて貫通させ、圧縮機から送られた圧縮空気を前記孔に流入させるとともに、前記圧縮空気の流れ方向において、燃料噴射口の位置を前記孔の上流側に設けることで、燃料と前記圧縮空気とを混合して前記孔から噴出する予混合パイロットノズルと、前記保炎器上において、前記孔と別の位置に設けた燃料噴射口から燃料を噴射することで拡散燃焼を行う拡散パイロットノズルと、を備えることを特徴とする。
【0018】
第7発明のガスタービンは、圧縮機で圧縮した圧縮空気に燃焼器で燃料を供給して燃焼し、発生した燃焼ガスをタービンに供給することで回転動力を得るガスタービンにおいて、前記燃焼器は、高圧空気と燃料とが内部で燃焼して燃焼ガスを発生させる燃焼筒と、該燃焼筒内における中央部に配置されるパイロット燃焼バーナと、前記燃焼筒内における前記パイロット燃焼バーナを取り囲むように配置される複数のメイン燃焼バーナを有し、前記パイロット燃焼バーナの先端部分に設置した保炎器の任意半径位置において、前記保炎器の周方向に一定の間隔で孔を並べて貫通させ、圧縮機から送られた圧縮空気を前記孔に流入させるとともに、前記圧縮空気の流れ方向において、燃料噴射口の位置を前記孔の上流側に設けることで、燃料と前記圧縮空気とを混合して前記孔から噴出する予混合パイロットノズルと、前記保炎器上において、前記孔と別の位置に設けた燃料噴射口から燃料を噴射することで拡散燃焼を行う拡散パイロットノズルと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上述した第1の発明のパイロット燃焼バーナ、第6発明のガスタービン燃焼器及び第7発明のガスタービンの構成によると、周方向に複数配置した予混合パイロットノズルから噴出したパイロット混合ガスは周方向に分割されている。そして、予混合パイロットノズルの周方向の位置と拡散パイロットノズルの周方向の位置がずれているので、拡散パイロットノズルからの燃焼ガスは、パイロット混合ガスの切れ目をすり抜けてメイン燃焼バーナの延長管出口まで到達しやすくなることでメイン燃焼バーナからの希薄予混合燃料の保炎性が増し燃焼が安定するので、燃焼振動を抑制する効果が得られる。
【0020】
また、メイン燃焼バーナから噴出した燃焼ガスは燃焼器尾筒内で循環し、高温の既燃ガスの循環流になるが、この高温の既燃ガスの循環流が予混合パイロットノズルから噴出したパイロット混合ガスの間を抜けてメイン燃焼バーナの延長管出口まで到達し、予混合パイロットの濃度と関係なくメイン燃焼バーナからの希薄予混合燃料の保炎性が増し、燃焼が安定するので、燃焼振動を抑制する効果が得られる。
【0021】
以上により、ガスタービン起動から定格運転に合わせて、パイロット燃焼バーナでの燃焼方式を拡散燃焼方式から予混合燃焼方式に切り替え、さらに、更なる低NOx化のためパイロット比率を低く運転することでパイロット燃焼ガスが低温になった場合でも、メイン燃焼バーナの燃焼を安定させ、燃焼振動を抑制することができ、低NOx化を実現することができるという効果が得られる。
【0022】
上述した第2の発明のパイロット燃焼バーナの構成により、パイロット混合ガスは旋回流となり、遠心力によって外周方向に広がるので、予混合パイロットノズルの前方を通過するメイン既燃ガスの循環流と衝突しにくくなる。このため、パイロット比率を低く運転することで低温になったパイロット燃焼ガスが、高温のメイン既燃ガスの循環流に衝突を抑制できる。これにより、既燃ガスの循環流による、メイン燃焼バーナからの希薄予混合燃料の保炎を高めることができる。
【0023】
上述した第3の発明のパイロット燃焼バーナの構成により、パイロット混合ガスを外周方向に広げて放出することができるので、第2の実施の形態のパイロット燃焼バーナと同様の効果が得られる。
【0024】
上述した第4の発明の形態のパイロット燃焼バーナの構成により、保炎器の位置をメイン燃焼バーナの延長管出口位置より上流に所定の距離で離して設置し、かつ保炎器の外縁にコーン部材を設置したことにより、燃焼器尾筒内を循環してきた高温のメイン既燃ガスは保炎器とメイン燃焼バーナの間にできた空間内に広がって、その後、保炎器外縁に設置したコーン部材に沿って流れる。これにより、メイン燃焼バーナの延長管出口付近では、メイン燃焼バーナの延長管出口から噴出された希薄予混合燃料と上記の高温の既燃ガスが略平行に合流するようになる。これにより、合流付近での流れの乱れが小さくなり、それによりメイン燃焼バーナの混合ガスの燃焼速度は低下して、その火炎が長く延びる。なお、保炎器外縁上でかつメイン燃焼バーナの延長管の内側部分に延長管の周方向位置と略一致させて複数の板を配置しても、コーン部材を配置したのと略同様の効果を得ることができる。
【0025】
メイン燃焼バーナの延長管出口付近では燃料と圧縮空気の均一な混合が進んでいる途中であり、ここ付近での流れの乱れが大きいと、燃料と圧縮空気が完全に予混合できる前に燃焼が完了してしまう可能性がある。そのため、第4の実施の形態のパイロット燃焼バーナにより、メイン燃焼バーナの延長管出口付近でのメイン燃焼バーナからの希薄予混合燃料と高温の既燃ガスの循環流の合流角度を小さくし略平行にすることで、メイン燃焼ガスの予混合を促進する効果が得られる。これにより、メイン燃焼バーナからの希薄予混合燃料の保炎を高めることで燃焼を安定させる効果に加え、メイン燃焼バーナの燃焼における低NOx化を実現することができるという効果が得られる。
【0026】
上述した第5の発明の形態のパイロット燃焼バーナの構成によると、予混合パイロットノズルの燃料流路を通って送られた燃料は、燃料通路に接続したキャビティを経由して多孔板の孔部から噴出し、多孔板と保炎器の隙間に沿って流れ込んできた圧縮空気と混合され、保炎器の基盤部分に設けた孔から圧縮空気と燃料の予混合ガスとして噴出される。
【0027】
さらに、多孔板と保炎器の隙間に沿って圧縮空気が流れるので、火炎に曝され加熱された保炎器の冷却効果を高めることができる。これにより、メイン燃焼バーナからの希薄予混合燃料の保炎を高めることで燃焼を安定させる効果に加え、炎器の冷却効果を高める効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係るガスタービンを表す概略構成図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係るガスタービン燃焼器を表す概略構成図である。
図3-1】図3−1は、本発明の第1の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナの要部を拡大して示した断面図である。
図3-2】図3−2は、本発明の第1の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナをパイロット混合ガスが噴射された側からみた平面図である。
図4-1】図4−1は、本発明の第2の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナの要部を拡大して示した断面図である。
図4-2】図4−2は、本発明の第2の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナをパイロット混合ガスが噴射された側からみた平面図である。
図5-1】図5−1は、本発明の第3の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナの要部を拡大して示した断面図である。
図5-2】図5−2は、本発明の第3の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナをパイロット混合ガスが噴射された側からみた平面図である。
図6-1】図6−1は、本発明の第4の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナにおいて、延長管内側に配置されるコーン部材を設けた保炎器の要部を拡大して示した断面図である。
図6-2】図6−2は、本発明の第4の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナにおいて、延長管内側に配置されるコーン部材を取り付けた保炎器をパイロット混合ガスが噴射された側からみた平面図である。
図6-3】図6−3は、本発明の第4の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナにおいて、延長管内側に配置される複数の板を取り付けた保炎器の要部を拡大して示した断面図である。
図6-4】図6−4は、本発明の第4の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナにおいて、延長管内側に配置される複数の板を取り付けた保炎器をパイロット混合ガスが噴射された側からみた平面図である。
図7-1】図7−1は、本発明の第5の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナの要部を拡大して示した断面図である。
図7-2】図7−2は、本発明の第5の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナを構成する多孔板ノズルを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係るガスタービンの燃焼器の軸心に配置されるパイロット燃焼バーナ、このパイロットノズルを有するガスタービン燃焼器、このガスタービン燃焼器が搭載されるガスタービンの好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0030】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態のガスタービンは、図1に示すように、圧縮機27と燃焼器2とタービン28により構成され、さらに図示しない発電機がガスタービンに連結されており、発電可能となっている。
【0031】
圧縮機27は空気取入口29を有し、圧縮機車室30内に入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)31が設置されるとともに、複数の静翼32と動翼33とが前後方向(後述するロータ34の軸方向)に交互に設置され、その外側には抽気室35が設けられている。燃焼器2は、圧縮機27で圧縮された圧縮空気3に対して燃料4を供給し点火することで燃焼を行う。タービン28はタービン車室36内に複数の静翼37と動翼38とが前後方向(後述するロータ34の軸方向)に交互に設置されている。このタービン車室36の下流側には、排気車室39を介して排気室40が設置されており、排気室40はタービン28に連続する排気ディフューザ41を有する。
【0032】
また、圧縮機27、燃焼器2、タービン28、排気室40の中心部をロータ(回転軸)34が貫通している。ロータ34は、圧縮機27側の端部が軸受部42により回転自在に支持され、排気室40側の端部が軸受部43により回転自在に支持されている。そして、このロータ34は、圧縮機27で、各動翼33が装着されたディスクが複数重ねられて固定され、タービン28で、各動翼38が装着されたディスクが複数重ねられて固定されており、排気室40側の端部に図示しない発電機の駆動軸が連結されている。
【0033】
そして、このガスタービンは、圧縮機27の圧縮機車室30が脚部44に支持され、タービン28のタービン車室36が脚部45により支持され、排気室40が脚部46により支持されている。
【0034】
従って、圧縮機27の空気取入口29から取り込まれた圧縮空気が、入口案内翼31、複数の静翼32と動翼33を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気3となる。燃焼器2で、この圧縮空気3に対して所定の燃料4が供給され、燃焼する。そして、この燃焼器2で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン28を構成する複数の静翼37と動翼38を通過することでロータ34を駆動回転し、このロータ34に連結された発電機を駆動する。一方、排気ガス(燃焼ガス)のエネルギは、排気室40の排気ディフューザ41により圧力に変換され減速されてから大気に放出される。
【0035】
図2に示すように、上述した燃焼器2の中心に位置してパイロット燃焼バーナ1が配置されるとともに、燃焼器2の内周面に周方向に沿ってパイロット燃焼バーナ1を取り囲むように複数のメイン燃焼バーナ6が配置されている。
【0036】
また、図示しないパイロット燃料ラインがパイロット燃焼バーナの燃料流路62、63に連結され、図示しないメイン燃焼ラインが各メイン燃焼ノズルの燃料流路15に連結されている。
【0037】
したがって、高温・高圧の圧縮空気3が燃焼器2内に流れ込み、この燃焼器2内で、この圧縮空気3がメイン燃焼バーナ6から噴射された燃料4と混合され、予混合ガスの旋回流102となって燃焼器尾筒48内に流れ込む。また、圧縮空気3は、パイロット燃焼バーナ1から噴射された燃料4と混合され、図示しない種火により着火されて燃焼し、燃焼ガス100となって燃焼器尾筒48内に噴出する。このとき、燃焼ガス100の一部が燃焼器尾筒48内に火炎を伴って周囲に拡散するように噴出することで、メイン燃焼バーナ6から燃焼器尾筒48内に流れ込んだ予混合ガス102に着火されて燃焼する。即ち、パイロット燃焼バーナ1から噴射されたパイロット燃料による火炎101により、メイン燃焼バーナ6からの希薄予混合燃料の安定燃焼を行うための保炎を行うことができる。また、パイロット燃焼バーナ1の端部に保炎器12を配置している。図3−1に示すように、この保炎器12の下流には、リ・サーキュレーションゾーン(再循環領域)103と呼ばれる領域が発生する。この再循環領域103の中では、メイン燃焼バーナ6の高温の既燃ガスが中心軸の近くで逆流するような渦運動をするので、これがメイン燃焼バーナ6の希薄予混合燃料を定常的に着火させるのに役立っている。
【0038】
次に、本発明に係る第1の実施の形態によるパイロット燃焼バーナ1について詳細に説明する。
【0039】
図3−1に第1の実施の形態に係るパイロット燃焼バーナ1の要部を拡大して示した断面図を、図3−2にパイロット燃焼バーナ1をパイロット混合ガスが噴射された側から見た平面図を示す。
【0040】
図3−1に示すように、パイロット燃焼バーナ1は、その中心に拡散パイロットノズル11を配置し、拡散パイロットノズル11を取り囲むように予混合パイロットノズル10を配置している。予混合パイロットノズル10に燃料を供給する燃料流路62、拡散パイロットノズル11に燃料4を供給する燃料流路63は、それぞれが独立した系統になっており、燃料流量を別々に変更できる。
【0041】
予混合パイロットノズル10の燃料噴射口16と拡散パイロットノズル11の燃料噴射口17は保炎器12部分に設けている。保炎器12はパイロット混合ガスが噴射された側から見ると円盤状であるが、側面方向から見ると断面形状が台形をしており、燃料噴射方向に進むにつれてその半径が大きくなっている。また、保炎器12のパイロット混合ガス噴射口側の端面位置は、燃焼器2の中心軸を通る直線に垂直な方向で見た場合、メイン燃焼バーナ6の延長管13の出口部分と略同じ位置になっている。
【0042】
上述の構成において、拡散パイロットノズル11は保炎器12に所定の径で複数個貫通させた燃料噴射口17から燃料4を噴出することで、周囲の圧縮空気3と混合を行い、燃焼器2内で拡散燃焼を行う。なお、拡散パイロットノズル11の燃料噴射口17は、保炎器12の半径方向外側に向って燃料を放出できるようにすることが望ましく、そのため、保炎器12の半径方向に沿って貫通させ、燃料噴射方向が保炎器12の外縁方向になるように保炎器12を垂直に貫通する直線と所定の傾斜角度を持たることが好ましい。このようにすることで、燃料4を半径方向外側に噴出できるので、拡散パイロットノズルからの燃焼ガスが保炎器12の外周方向にあるメイン燃焼バーナの延長管13の出口まで到達し、メイン燃焼バーナからの希薄予混合燃料の保炎性が増し燃焼が安定する。
【0043】
一方、予混合パイロットノズル10は保炎器12に所定の径で複数個貫通させた孔14とこの孔14から所定の寸法の隙間を設けた位置に設けた予混合パイロットノズル10の燃料噴射口16で構成している。燃料噴射口15から噴出した燃料4は、圧縮空気3と混合し、孔14からパイロット混合ガスとして放出され、燃焼器2内で燃焼する。
【0044】
図3−2に示すように、予混合パイロットノズル10は、複数のメイン燃焼バーナ6(図では8個)の内側にある保炎器12の所定の半径位置において、その周方向に複数の孔14(図では8個)を貫通させ、また、その孔の中心位置でかつ燃料噴射に関して上流側に予混合ノズルの燃料噴射口16を設ける。
【0045】
このとき、保炎器12の中心と各孔14の中心を結ぶ直線の延長上に各メイン燃焼ノズル7がこないようにするため、孔14の周方向位置をメイン燃焼ノズル7の周方向位置とずらして配置する。なお、孔14の周方向の間隔は一定にすることが好ましい。一方、拡散パイロットノズル噴射口17についても保炎器12の所定の半径位置に設けているが、その中心と保炎器12の中心を結ぶ直線上の延長上にメイン燃焼ノズル7の中心位置がくるように、拡散パイロットノズル噴射口17を配置することが望ましい。
【0046】
以上により、予混合パイロットノズル10が周方向に一定の間隔を持って配置されているので、予混合パイロットノズル10から噴出されるパイロット混合ガスは周方向には切れ目ができることになる。メイン燃焼バーナ6から噴出した燃焼ガスは燃焼器尾筒48内で循環し、高温の既燃ガスの循環流になり、この高温の既燃ガスの循環流が予混合パイロットノズル10から噴出したパイロット混合ガスの間を抜けてメイン燃焼バーナ6の延長管13出口まで到達し、メイン燃焼バーナ6からの希薄予混合燃料の保炎性が増し燃焼が安定するので、燃焼振動を抑制することができる。
【0047】
なお、図3−2では、予混合パイロットノズル10及び拡散パイロットノズル11の燃料噴射口の個数をメイン燃焼バーナ6と同数にしているが、その個数は適宜変更可能である。また、図3−2において、拡散ノズルの燃料噴射口17は簡便のため円形で記載しているが、実際の形状は燃料噴出方向に長軸を持つ楕円形である。
【0048】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態によるパイロット燃焼バーナ1は、図4−2に示すように保炎器12をパイロット混合ガスが噴射された側から見た平面上に孔14の中心線を投影した場合に、その中心線を投影した直線が孔14を設けた保炎器12の半径位置における円周の接線と平行となるようにするように孔14を貫通させるか、または投影直線が保炎器12の外周方向に向うように孔14を貫通させるようにするため、基盤部分26を垂直に貫通する直線と所定の角度で傾斜させている。つまり、孔14を通過した圧縮空気3と燃料4のパイロット混合ガスが保炎器12の中心軸まわりにその周方向に旋回させるようにするか、または外縁方向に向うように孔14を貫通させる。
【0049】
このように孔14を貫通させることで、予混合ノズルの燃料噴射口16から放出されるパイロット混合ガスは、周方向(図4−2の矢印方向)に放出され、旋回に伴う遠心力により、保炎器12の外縁方向に広がる。なお、図4−2において、拡散ノズルの燃料噴射口17及び孔14は簡便のため円形で記載しているが、実際の形状は燃料噴出方向に長軸を持つ楕円形である。
【0050】
上述の構成によりパイロット混合ガスが外縁方向に広がることで、パイロット燃焼ガスと高温のメイン既燃ガスの循環流との衝突が抑制される。これにより、低NOx化のために、パイロット比率を低く運転することでパイロット燃焼ガスが低温になった場合でも、高温の既燃ガスの循環流はメイン燃焼バーナの延長管出口まで到達しやすくなっているので、メイン燃焼バーナからの希薄予混合燃料の保炎性が増し、燃焼が安定するので、燃焼振動を抑制することができる。一方、パイロット燃焼ガスが外周方向に噴出されることで、メイン燃焼バーナ出口付近の保炎器基部に到達しやすくなり、パイロット比率を高めパイロット燃焼ガス温度を高くして運転している場合には、パイロット燃焼ガスによるメイン燃焼バーナからの希薄予混合燃料の保炎を高めることができるので燃焼を安定させ、燃焼振動を抑制することができる。
【0051】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態によるパイロット燃焼バーナ1は、図5−1及び図5−2に示すように、予混合パイロットノズル10における保炎器12の孔14を、保炎器12の半径方向外側に向って貫通させたものである。このようにすることで、パイロット混合ガスを直接外周方向に広げることができ、低温になったパイロット混合ガスが高温のメイン燃焼ガスの循環流を妨げることを抑制する効果が高まる。また、パイロット混合ガスが外周方向のメイン燃焼バーナ6の保炎基部に到達しやすくなるので、パイロット比を高めることで、パイロット燃焼ガスの温度を高くして運転している場合には、メイン燃焼バーナ6の保炎基部での保炎性を高めることができる。なお、図5−2において、拡散ノズルの燃料噴射口17及び孔14は簡便のため円形で記載しているが、実際の形状は燃料噴出方向に長軸を持つ楕円形である。
【0052】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態によるパイロット燃焼バーナ1は、図6−1、図6−2に示すようにメイン燃焼バーナ6の延長管13出口位置と保炎器12の位置関係に関し、燃焼器2の軸心を通り燃焼器尾筒48に向う直線に直行する方向で見たときに、保炎器12の位置をメイン燃焼バーナ6の延長管13出口位置より前方に所定の距離で離して設置したものである。さらに、保炎器12のパイロット燃焼ガスを噴射する側の端面の外周上でかつメイン燃焼バーナ6の延長管13の内側部分には、周方向に連続しているコーン部材18を配置している。コーン部材18の端面位置は燃焼器2の軸心を通る直線に垂直な方向で見たときに、メイン燃焼バーナ6の延長管13の出口部分と略同じ位置になっている。
【0053】
このように、保炎器12を燃焼ガスの噴出方向に関する位置関係において、メイン燃焼バーナ6の延長管13出口位置の上流側に所定の距離で離して設置し、かつ保炎器12の外周にコーン部材18を設置したことで、燃焼器尾筒48内を循環してきたメイン燃焼ガスは保炎器12の後流の空間に広がり、その後、保炎器12の外周のコーン部材18に沿って流れ、メイン燃焼バーナ6の延長管13出口付近では延長管13出口を出た直後のメイン燃焼バーナ6から噴出された希薄予混合燃料と略平行に合流するようになる。このため、延長管13出口付近における流れの乱れが小さくなり、メイン燃焼バーナ6の希薄予混合燃料の燃焼速度が低下し、それによりメイン燃焼バーナの混合ガスの燃焼速度は低下して、その火炎は、希薄予混合燃料の噴出方向に長く延びる。
【0054】
延長管13出口を出た直後のメイン燃焼バーナ6の希薄予混合燃料内では、燃料と圧縮空気との均一な混合が進んでいる途中であり、ここでの流れの乱れが大きいと、完全に予混合できる前に燃焼が進む可能性がある。したがって、第4の実施の形態のパイロット燃焼バーナの構成により、延長管13から噴出した希薄予混合燃料と循環してきた燃焼ガスとの合流角度を小さくし、略平行にすることで燃焼速度を遅くすることができ、燃料と圧縮空気の均一な混合が完了するまでの時間が確保できるので、予混合効果が促進されることになり、メイン燃焼バーナの燃焼における低NOx化を実現することができるという効果が得られる。
【0055】
なお、コーン部材18は周方向に連通しているが、図6−3、図6−4に示すように、延長管13の出口部分を沿うように、かつ、延長管13との間に所定の間隔を空けて複数の板材19を設置しても上述と同様の効果が得られる。なお、図6−2と図6−4において、拡散ノズルの燃料噴射口17は簡便のため円形で記載しているが、実際の形状は燃料噴出方向に長軸を持つ楕円形である。
【0056】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態によるパイロット燃焼バーナは、図7−1に示すように予混合パイロットノズル10の燃料流路62が、通路の内径よりも大きなキャビティ21に接続し、そのキャビティ21には外径がキャビティ21よりも大きく、キャビティ21の燃料方向の流れで下流側になる部分を覆って蓋をする円盤状の多孔板22が設置されている。多孔板22の周方向には孔23を複数設けている。この多孔板22に対し、燃料噴射方向において下流側位置に、保炎器12が所定の間隔を空けて配置される。このとき、多孔板に設けられた孔23の周方向位置は、保炎器12に設けた孔14の周方向位置と一致し、その径は孔14と略同じ大きさになっている。多孔板22の外径は保炎器12の外径と同じ程度である。また、多孔板22の中心部分には拡散パイロットノズル11の燃料流路63である配管を貫通させ、保炎器12に設けた拡散パイロットノズル11の燃料噴射口17から燃料を噴出することができる。
【0057】
予混合パイロットノズルの燃料流路62を通って送られた燃料4は、燃料通路62に接続したキャビティ21を経由して多孔板22の孔23から噴出し、多孔板22と保炎器12の隙間に沿って流れ込んできた圧縮空気3と混合され、保炎器12に設けた孔14から圧縮空気と燃料の予混合ガスとして噴出される。
【0058】
さらに、本手段によれば、多孔板22と保炎器12の隙間に沿った圧縮空気3の流れを作ることで流動する圧縮空気3と保炎器12の接触面積が確保でき、この結果、燃焼火炎に曝されて加熱された保炎器12の効率のよい冷却効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 パイロット燃焼バーナ
2 燃焼器
3 圧縮空気
4 燃料
6 メイン燃焼バーナ
7 メイン燃焼ノズル
8 燃焼器内筒
10 予混合パイロットノズル
11 拡散パイロットノズル
12 保炎器
13 延長管
14 孔
15 メインノズルの燃料流路
16 予混合ノズルの燃料噴射口
17 拡散ノズルの燃料噴射口
18 コーン部材
19 板材
21 キャビティ
22 多孔板
23 多孔板の孔
62 予混合パイロットノズルの燃料流路
63 拡散パイロットノズルの燃料流路
100 メイン燃焼ガス
101 パイロット火炎
102 予混合ガスの旋回流
103 予混合ガスのリ・サーキュレーションゾーン(再循環領域)
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7-1】
図7-2】