(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メインラミネート装置及び前記サブラミネート装置のいずれかの熱板に電気式ヒータを埋設したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のラミネート装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0022】
<1>被加工物(太陽電池モジュール)
ここで本発明のラミネート装置でラミネートされる被加工物10について説明する。
【0023】
図1は、被加工物10として結晶系セルを使用した太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、図示のように、透明なカバーガラス11と裏面材12との間に、充填材13、14を介して複数列のストリング15を挟み込んだ構成を有する。裏面材12にはポリエチレン樹脂等の材料が使用される。また、充填材13、14にはEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が使用される。ストリング15は、結晶系セルとしての太陽電池セル18を複数枚リード線19を介して接続した構成である。この複数列のストリング15は、電極16、17の間でリード線により接続されている。
【0024】
また、被加工物10としては、上述した太陽電池モジュールだけではなく、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池モジュールを対象とすることもできる。この薄膜式太陽電池モジュールの代表的な構造例では、透明なカバーガラスに、予め、透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。このような薄膜式太陽電池モジュールは、カバーガラス(基板ガラス)を下向きに配置し、カバーガラス上の発電素子の上に充填材を被せる。更に、充填材の上に裏面材を被せた構造になっている。このような状態で真空加熱ラミネートすることにより薄膜式太陽電池モジュールの構成部材が接着される。すなわち、薄膜式太陽電池モジュールは、上述した太陽電池モジュールの結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけである。薄膜式太陽電池モジュールの基本的な封止構造は上述した太陽電池モジュールと同じである。
【0025】
尚本発明のラミネート装置及びラミネート方法は、上記の発電素子を蒸着した基板ガラスに充填材を被せ、さらにその上にカバーガラスを被せた構成の薄膜式太陽電池モジュールにも適用することができる。
【0026】
<2>本発明のラミネート装置の概略構成の説明
本発明のラミネート装置は、メインラミネート装置(以下、主機と略称する)の後工程に少なくとも1台のサブラミネート装置(以下、副機と略称する)を設置した構成である。主機と副機にて使用するラミネート装置については、
図2を使用して説明する。
【0027】
本発明のラミネート装置LMは、主機100の後工程に主機と離して別置として副機400を複数台配置する構成とすることも可能である。本実施形態の説明においては、
図2のように主機の後部に副機を1台、コンベア等で接続した形態にて説明する。
【0028】
主機及び副機の構成は、それぞれ別構成(別形態)のものを使用することもできる。しかし本実施形態の説明においては、同一形態のものを使用する場合で説明する。熱板以外は同一であるので、主機の構成について説明する。主機100は、上ケース110と、下ケース120と、被加工物10を搬送するための搬送シート130とを有する。搬送シート130は、被加工物10を上ケース110と下ケース120との間に搬送する。主機100には、ラミネート前の被加工物10を主機100に搬送するための搬入コンベア200が設けられている。また、主機100には、ラミネート後の被加工物10を主機100から搬出し、副機400へ搬入するための接続コンベア300が設けられている。搬入コンベア200と接続コンベア300とは、主機に連接されている。被加工物10は、搬入コンベア200から搬送シート130に受け渡され、搬送シート130から接続コンベア300に受け渡される。
【0029】
副機400にてラミネ−ト加工するための被加工物10は接続コンベア300から副機に搬入され、ラミネート加工を行う。ラミネート加工後、被加工物10は搬出コンベア500に受け渡さされる。接続コンベア300と搬出コンベア500とは、副機に連接されている。
【0030】
主機100には、シリンダ及びピストンロッド等で構成される図示しない昇降装置が設けられている。昇降装置は、上ケース110を水平状態に維持したまま下ケース120に対して昇降させることができる。昇降装置が上ケース110を下降させることで、上ケース110と下ケース120との内部空間を密閉させることができる。
【0031】
<3>ラミネート部
次に、本実施形態に係る主機100のラミネート部101の構成についてより具体的に説明する。副機のラミネート部の構成は同一であるので<2>と同様、主機についてのみ説明する。
図3は、主機100において被加工物10をラミネート加工する前のラミネート部101の側断面図である。
図4は、ラミネート加工時におけるラミネート部101の側断面図である。
【0032】
上ケース110には、下方向に開口された空間が形成されている。この空間には、空間を水平に仕切るように押圧部材としてのダイヤフラム112が設けられている。ダイヤフラム112は、シリコーン系のゴム等の耐熱性のあるゴムにより成形されている。後述するように、ダイヤフラム112は、被加工物10を押圧する押圧部材として機能し、ラミネートを行う。上ケース110内には、ダイヤフラム112によって仕切られた空間(上チャンバ113)が形成される。
【0033】
また、上ケース110の上面には、上チャンバ113と連通する吸排気口114が設けられている。上チャンバ113では、吸排気口114を介して、上チャンバ113内を真空ポンプにより真空引きして真空状態にしたり、上チャンバ113内に大気を導入したりすることができる。
【0034】
下ケース120には、上方向に開口された空間(下チャンバ121)が形成されている。この空間には、熱板150(パネル状のヒータ)が設けられている。熱板150は、下ケース120の底面に立設された支持部材によって、水平状態を保つように支持されている。この場合に、熱板150は、その表面が下チャンバ121の開口面とほぼ同一高さになるように支持される。この熱板150は、副機は異なる構成のものを使用する。この点については後述する。
【0035】
また、下ケース120の下面には、下チャンバ121と連通する吸排気口123が設けられている。下チャンバ121では、吸排気口123を介して、下チャンバ121内を真空ポンプにより真空引きして真空状態にしたり、下チャンバ121内に大気を導入したりすることができる。
【0036】
上ケース110と下ケース120との間であって、熱板150の上方には、搬送シート130が移動自在に設けられている。搬送シート130は、
図2の搬入コンベア200からラミネート前の被加工物10を受け取ってラミネート部101の中央位置、すなわち熱板150の中央部に正確に搬送する。また、搬送シート130は、主機にてラミネート加工後の被加工物10を
図2の接続コンベア300に受け渡す。
【0037】
<4>熱板の構成
本実施形態では、主機と副機の熱板150を以下のように構成している。本実施形態の説明では、主機と副機の熱板は材質のみの違いであり基本的な構成は同じであるため、同一番号を付している。
【0038】
主機の熱板150は、その熱板上の被加工物10への給熱部を熱伝導率が110(Wm
−1K
−1)以上、398(Wm
−1K
−1)以下の材料で形成している。すなわち主機では、ラミネート加工する被加工物10の温度上昇を早めるために熱板の給熱部の素材をアルミニウム合金材の熱伝導率以上の素材を使用している。これにより熱板から被加工物へ迅速に給熱され、被加工物の温度を目標温度に早期に到達させることができる。また主機の熱板の設定温度を被加工物内の充填材料の架橋温度以上とすることができるので、更に被加工物の温度を迅速に上昇させることができる。また熱板150全体を本素材にて形成することでも良い。
【0039】
一方副機の熱板150は、熱板上の被加工物への給熱部を熱伝導率が20(Wm
−1K
−1)以下の材料で形成している。すなわちステンレス材等の熱伝導率以下の素材にて熱板の供熱部を形成している。副機においては、熱板の温度を被加工物の充填材の架橋温度に設定し充填材の架橋反応を促進させラミネート加工を行う。このためアルミニウム合金のように熱伝導率が良好ということよりも、熱伝導率は小さくとも、熱容量(比熱×密度)の大きな材料を使用し温度変化を無くし安定的に保持することが必要である。このためステンレス材のような材料が好ましい。また主機と同じように、熱板150全体を本素材にて形成することでも良い。
【0040】
本実形態の主機及び副機に使用する熱板は、一例として電気式ヒータを使用し
図5に示すように構成することができる。また熱板内の温度分布を一様にするためにヒートパイプを併用することも可能である。
【0041】
熱板150は、
図5に示すように、上記で説明した素材により、被加工物10を載置できるようなパネル状に形成されている。熱板本体151には、ヒータ152およびヒートパイプ153を埋設するために、奥行き方向に収容溝154が加工されている。この収容溝154にU字状のヒータ152が平行に複数配設されている。ヒートパイプ153は、U字状のヒータ152の中央に平行に設けられている。ヒータ152とヒートパイプ153は、クッション材155を介して熱板本体151と略同一寸法の裏板156を熱板本体151とボルト等により固定し収容溝154内に埋設固定される。これによりヒータの外周、およびヒートパイプの外周が収容溝154の底面と密着する。このようにヒータとヒートパイプが複数組設けられている。尚ヒータ152は、U字状でなくても良く、直線状のものを使用することでも良い。
【0042】
ここでは、ヒータとしては、公知のシースヒータSHを使用することができる。シースヒータSHは、
図6に示すように、中心にコイル状に加工されたニクロム線SH1と、ニクロム線SH1の周りに充填された酸化マグネシウム等の絶縁材SH2と、絶縁材SH2の全周を覆うシースSH3(外周をなす外皮)から構成される。
【0043】
ヒートパイプ153は,公知の構成のものを使用することができる。ヒートパイプは、管内に作動液が飽和蒸気圧の状態で密封されていて、ヒートパイプの長さ方向に温度差があると高温部から低温部に蒸気流が発生します。そして作動液は、高温部で蒸発熱を奪い、低温部では凝縮熱を与えることになる。
【0044】
<5>本発明のラミネート方法
主機及び副機のラミネート加工の詳細は、<6>にて説明するが、ラミネート加工時間の短縮はラミネート加工中の被加工物の加熱時間をいかに短くするかに依存している。このため熱板の温度を高く設定すると昇温時間は短縮され、加熱時間も短縮される。しかしながら主機を1台のみでラミネート加工する場合は、熱板の設定温度を充填材の架橋温度以上に設定することは困難である。
【0045】
そこで本発明のラミネート方法では、
図2に示すように、主機の後部に副機を配置する構成としている。このような構成とすることにより主機の熱板150の設定温度を被加工物10内の充填材13、14の架橋温度以上に設定することが可能となり、熱板上の被加工物10の温度を架橋温度付近に迅速に加熱することが可能である。架橋温度付近に加熱された被加工物10は、副機に搬入され、再度ラミネート加工される。副機の熱板は、その温度は架橋温度に設定されている。被加工物10は、副機で一定時間加圧加熱され充填材料の架橋反応が促進されてラミネート加工が終了する。
【0046】
本発明のラミネート方法によれば、2台の主機の熱板温度を架橋温度に設定して2台同時に運転してラミネート加工する場合に比べ合計のラミネート加工時間が短縮され生産効率が大幅に向上する。
【0047】
<6>主機のラミネート工程の説明
次に、本実施形態に係る主機のラミネート工程についてより具体的に説明する。まず、
図3に示すように、搬送シート130は、被加工物10をラミネート部101の中央位置に搬送する。
【0048】
次に、昇降装置は、上ケース110を下降させる。上ケース110を下降させることにより、
図4に示すように、上ケース110と下ケース120との内部空間は、密閉される。すなわち、上ケース110と下ケース120との内部にて上チャンバ113及び下チャンバ121は、それぞれ密閉状態に保つことができる。
【0049】
次に、主機100は、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113内を真空ポンプにより真空引きを行う。同様に、主機100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121内を真空ポンプにより真空引きを行う(以下真空工程という)。真空工程の到達真空度は、通常のラミネート装置と同程度であり、具体的には約130Pa程度である。下チャンバ121の真空引きにより、被加工物10内に含まれている気泡やガスは、被加工物10外に送出される。
【0050】
被加工物10は、温度制御装置CL(
図5参照)の温度制御により加熱された熱板150によって加熱されるので、被加工物10の内部に含まれる充填材13、14も加熱される。
【0051】
次に、主機100は、下チャンバ121の真空状態を保ったまま、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113に大気を導入する。これにより、上チャンバ113と下チャンバ121との間に気圧差が生じることで、ダイヤフラム112が膨張する。従って、ダイヤフラム112は、
図4に示すように下方に押し出される(以下加圧工程という)。被加工物10は、下方に押し出されたダイヤフラム112と、熱板150とで挟圧される。この挟圧とともに、主機100の熱板の温度は、<5>にて説明のとおり、被加工物10内の充填材の架橋温度以上に設定されている。このため被加工物10は、早期に温度上昇する。また挟圧により、加熱溶融された充填材13、14によって各構成部材が接着される。
【0052】
このようにして架橋反応が完了する一定時間前に、主機100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121に大気を導入する。このとき、昇降装置は、上ケース110を上昇させる。上ケース110を上昇させることにより、
図3に示すように、搬送シート130を移動させることができるようになる。搬送シート130は、ラミネート後の被加工物10を接続コンベア300に受け渡す。
【0053】
<7>副機のラミネート工程の説明
次に、本実施形態に係る副機400のラミネート工程についてより具体的に説明する。まず、接続コンベア300上の主機でラミネート加工した被加工物10を副機の搬送シート130により、ラミネート部101の中央位置に搬送する。
図3と同じような状態とする。
【0054】
次に、昇降装置は、上ケース110を下降させる。上ケース110を下降させることにより、
図4に示すように、上ケース110と下ケース120との内部空間は、密閉される。すなわち、上ケース110と下ケース120との内部にて上チャンバ113及び下チャンバ121は、それぞれ密閉状態に保つことができる。
【0055】
次に、副機400は、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113内を真空ポンプにより真空引きを行う。同様に、副機400は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121内を真空ポンプにより真空引きを行う(以下真空工程という)。副機の真空工程の到達真空度は、既に被加工物内の気泡が外部に送出されているので。主機ほど到達真空度は小さくなくても良い。被加工物の特性に応じて適宜設定することができる。
【0056】
被加工物10は、温度制御装置の温度制御CL(
図5参照)により加熱された熱板150によって加熱される。主機同様、被加工物10の内部に含まれる充填材13、14(既に溶融状態である)も加熱される。
【0057】
次に、副機400は、下チャンバ121の真空状態を保ったまま、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113に大気を導入する。これにより、上チャンバ113と下チャンバ121との間に気圧差が生じることで、ダイヤフラム112が膨張する。従って、ダイヤフラム112は、
図4に示すように下方に押し出される(以下加圧工程という)。被加工物10は、下方に押し出されたダイヤフラム112と、熱板150とで挟圧される。この挟圧とともに、副機400の熱板の温度は、<5>にて説明のとおり、被加工物10の内部に含まれる充填材13、14は架橋温度に設定されており、被加工物10内の充填材等の温度は架橋温度に一定時間保持される。これにより充填材の架橋反応が促進し、目標となる架橋密度を有するラミネート体が完成しラミネート加工が終了する。
【0058】
このように被加工物10のラミネート加工が終了した後に、副機400は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121に大気を導入する。このとき、昇降装置は、上ケース110を上昇させる。上ケース110を上昇させることにより、
図3に示すように、搬送シート130を移動させることができるようになる。搬送シート130は、ラミネート後の被加工物10を搬出コンベア500に受け渡す。
【0059】
<8>本発明の別例のラミネート装置
図7により本発明の別例のラミネート装置の実施形態について説明する。本実施形態のラミネート装置を主機及び副機に使用しても良いし、主機または副機のいずれか一方に使用しても良い。尚説明において
図3のラミネート装置と同様の機能及び構造を有する部位には同一番号を付している。
【0060】
図7に示すように、本実施形態のラミネート装置600は、上ケース110を有し、下ケースは熱板650と兼用する構成である。被加工物10は熱板650上を走行する搬送シート130により熱板650上の所定位置に載置される。ラミネート加工の内容は<5>から<7>の記載と同様である。真空工程は、上ケースの吸排気口114と熱板に適宜の数箇所設けられた下方への吸排気用の貫通孔623により行われる。また加圧工程は、押圧部材であるダイヤフラム112により行われる。
【0061】
ラミネート装置を本実施形態のような構成とすることにより、<5>で記載したラミネート加工時間が短縮され生産効率が大幅に向上するという効果が得られるとともに装置の構成が大幅に簡略化され装置のコストを安価とすることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのは勿論である。