特許第5922527号(P5922527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5922527-グロメット 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922527
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20160510BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160510BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   H02G3/22
   B60R16/02 622
   H01B17/58 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-173704(P2012-173704)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-33564(P2014-33564A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】浅山 真彦
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−104802(JP,A)
【文献】 実開平06−072183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
H01B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グロメットインナとグロメットインナを覆うように組み付けられるグロメットアウタとで形成され、パネルの取付孔に挿通されるグロメットであって、
前記取付孔の開口縁部に密着当接する前記グロメットアウタは、電線が挿通される電線挿通筒部と、この電線挿通筒部と一体に形成されて前記取付孔の開口縁部に対向するフランジ部と、該フランジ部から延設されて前記取付孔の開口縁部に密着当接する環状リップ部とを有し、
前記グロメットインナと前記グロメットアウタとを組み付けた状態で前記取付孔に挿通することによって前記グロメットアウタの前記フランジ部と前記環状リップ部とが当接し、前記環状リップ部が前記取付孔の開口縁部に押圧される押圧部を有し、
前記フランジ部は、前記電線挿通筒部から外周側に突設された基壁と、この基壁の先端側に一体形成された外周壁と、該外周壁から前記基壁と同方向へ延設された自由端壁とで形成され、
前記環状リップ部は、前記自由端壁の先端から外周壁側へ延設された撓み環状壁と、この撓み環状壁の先端側に設けられた当接環状部とで形成され、
前記当接環状部に前記押圧部が設けられていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
請求項1に記載のグロメットであって、
前記基壁と前記自由端壁との間に組付内周溝が設けられ、該組付内周溝には前記グロメットインナに設けられた組付外周壁が挿入され、前記押圧部が前記外周壁の前記自由端壁側の端部に押圧されることを特徴とするグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルに設けられた貫通孔に取り付けられて貫通孔を挿通する電線の周囲からの浸水を防止するグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、多数の電子部品が搭載されており、この電子部品を制御または起動させるために複数の電線が例えば自動車のエンジンルーム内等から車室へ配設されている。エンジンルーム等から車室内に配設される電線は、パネルを挿通させるためグロメットによって車室内への雨水などが浸入を阻止している。
【0003】
例えば、特許文献1に、パネル等の取付部材に対向する接合面に、前記取付部材に液密状態に押圧される全体として環状のシール用リップ部が設けられたグロメットの取り付け構造が提案されている。この構造において前記シール用リップ部の内周側に、前記取り付け部材に液密状態に接触されるシール用突条が更に形成され、前記取付部材の接触面のうち、前記シール用リップ部が接触する第1の面と、前記シール用突条が接触する第2の面とが、これらの面に垂直な方向に段差がつけられている。そして、グロメットと貫通孔との嵌合時に、取付部材にシール用リップ部およびシール用突条が密着して、グロメットと取付部材との固定部分に段差のある二重のシール部分を形成しています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−164041
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグロメットでは、二重のシール部分を形成しているため止水性は確保することができるが、グロメットを取付部材に組み付ける際にシール用突条を押圧して嵌合させなければならないため、シール用突条を押圧する強力な押圧力が必要となり、グロメットを取付部材に容易に組み付けることができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、容易に貫通孔に組み付けることができ、かつ、グロメット内への水等の浸入を防ぎ、確実に止水することのできるグロメットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明では、グロメットインナと、グロメットインナを覆ように組み付けられるグロメットアウタとで形成されてパネルの取付孔に挿通されるグロメットであって、前記取付孔の開口縁部に密着当接する前記グロメットアウタは、電線が挿通される電線挿通筒部と、この電線挿通筒部と一体に形成されて前記取付孔の開口縁部に対向するフランジ部と、該フランジ部から延設されて前記取付孔の開口縁部に密着当接する環状リップ部とを有し、前記グロメットインナと前記グロメットアウタとを組み付けた状態で前記取付孔に挿通することで前記グロメットアウタの前記フランジ部と前記環状リップ部とが当接し、前記環状リップ部が前記取付孔の開口縁部に押圧される押圧部を有し、前記フランジ部は、前記電線挿通筒部から外周側に突設された基壁と、この基壁の先端側に一体形成された外周壁と、該外周壁から前記基壁と同方向へ延設された自由端壁とで形成され、前記環状リップ部は、前記自由端壁の先端から外周壁側へ延設された撓み環状壁と、この撓み環状壁の先端側に設けられた当接環状部とで形成され、前記当接環状部に前記押圧部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項に係る発明では、請求項に記載のグロメットであって、前記基壁と前記自由端壁との間に組付内周溝が設けられ、該組付内周溝には前記グロメットインナに設けられた組付外周壁が挿入され、前記押圧部が前記外周壁の前記自由端壁側の端部に押圧されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、グロメットインナとグロメットアウタとを組み付けた状態で取付孔に挿通することでグロメットアウタのフランジ部と環状リップ部とが当接し、環状リップ部が取付孔の開口縁部に押圧される押圧部を少なくとも環状リップ部又はフランジ部のいずれか一方に設けたことにより、グロメット内への水等の浸入を防ぎ、確実に止水することができる。
【0011】
また、請求項の発明によれば、当接環状部に押圧部が設けられることにより、より確実にグロメット内への水等の浸入を防ぎ、確実に止水することができる。
【0012】
請求項の発明によれば、組付内周溝に組付外周壁が挿入されることにより、自由端壁の撓みを抑えることができ、当接環状部に設けられた押圧部が外周壁の自由端壁側の端部に押圧されることにより外周壁が撓むため、グロメットを容易に組み付けることができ、かつ、より強固にパネルを支持することができる。
【0013】
すなわち、グロメットインナとグロメットアウタとを組み付け、パネルの取付孔に挿通する際、当接環状部がパネルの開口縁部に当接して押圧部がフランジ部側へ押圧されるが、組付内周溝に組付外周壁が挿入されているため、自由端壁が基部側へ撓むのを阻止する。したがって、組付内周溝に組付外周壁を挿入してパネルへグロメットの組み付けを行うことにより、自由端壁が基部側へ撓むことがないのでより強固に撓み環状壁の先端に形成された押圧部をフランジ部へ押し付けることができるため、グロメット内への水等の浸入を防ぎ、確実に止水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)本発明のグロメットの全体図。(b)本発明の要部拡大図。
図2】グロメットアウタのグロメットインナへの組み付け前の状態を示す図。
図3】グロメットアウタとグロメットインナを組み付けた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1(a)、(b)に示すように本発明のグロメット1は、略円筒状のグロメットインナ3と、グロメットインナ3を覆うように組み付けられるとともに取付孔6の開口縁部8に密着当接するグロメットアウタ2と、から構成されている。
【0017】
略円筒状のグロメットアウタ2は、軟質で一体に形成され内周に電線が挿通される電線挿通筒部10と、この電線挿通筒部10と一体に形成されて取付孔6の開口縁部8に対向するフランジ部12と、フランジ部12から延設されて取付孔6の開口縁部に密着当接する環状リップ部14と、で形成されている。
【0018】
電線挿通筒部10は、略円筒状の筒部が2本形成され、これらの2本の筒部の一側に楕円形のフランジ部12が形成されている。これらの筒部はフランジ部12側から縮径されて形成されている。
【0019】
電線挿通筒部10と一体に形成されるフランジ部12は、電線挿通筒部10から外周側に突設された基壁24と、この基壁24の先端側に一体形成された外周壁26と、外周壁26から基壁24と同方向へ延設された自由端壁28と、から構成されている。そして、基壁24、外周壁26、自由端壁28とで囲まれる内側が組付内周溝16となっている。
【0020】
フランジ部12の自由端壁28に連続して環状に形成される環状リップ部14は、自由端壁28の先端から外周壁側へ延設された弾性を有する撓み環状壁30と、この撓み環状壁30の先端側に設けられた当接環状部32と、フランジ部12側へ突設する押圧部34と、から構成されている。
【0021】
この押圧部34は、図2で示すように先端が鋭角に形成されており、外周壁26の自由端壁28側の端部に押圧される。また、押圧部34の先端の形状は鋭角以外でもよく、例えば曲面形状であってもよい。すなわち、押圧部34が外周壁26の自由端壁28側の端部に押圧される形状であればどのような形状でもよい。
【0022】
グロメットアウタ2に組付固定されるグロメットインナ3は、グロメットアウタ2より硬質の硬質材で一体形成され環状に形成されるインナ本体18と、内周に電線が挿通される電線挿通部20と、グロメットアウタ2の組付内周溝16に挿入される組付外周壁22と、から構成されている。
【0023】
環状のインナ本体18は、パネル4の取付孔6に挿通されてインナ本体18の外周部19から突出して形成されるパネル支持部21を乗り越えることでパネル4の開口端部6がインナ本体18の外周部19に当接して支持している。また、インナ本体18の外周は、パネル4の取付孔6に挿通されるとともにグロメットアウタ2の自由端壁28に当接している。
【0024】
電線挿通部20は、環状のインナ本体18の内周側に形成されており、図示しない電線が挿通されている。
【0025】
組付外周壁22は、インナ本体18から外周方向に突出するように形成されており、グロメットアウタ2の組付内周溝16に嵌合することで、グロメットアウタ2とグロメットインナ3とを組付固定している。
【0026】
次に、グロメット1の取り付け構造について説明する。
【0027】
まず、グロメットインナ3の組付外周壁22をグロメットアウタ2の組付内周溝16に嵌合するようにグロメットインナ3とグロメットアウタ2とを組付固定する。組付固定されたグロメット1をパネル4の一方側から取付孔6に挿通し、取付孔6がインナ本体18の外周側に突出するパネル支持部21を乗り越えて外周部19に当接することでグロメット1がパネル4に支持される。
【0028】
また、グロメット1を取付孔6に組み付ける際、グロメットアウタ2の撓み環状壁30の先端に形成された当接環状部32がパネル4の開口縁部8に当接すると同時に、環状リップ部14の押圧部34がフランジ部12側へ押し上げられて外周壁26の自由端壁28側の端部に押圧される。
【0029】
このように取り付けることで、図3に示すようにグロメット1が取付孔6取り付けられる。
【0030】
上記のように、グロメットインナ3とグロメットアウタ2とを組み付けた状態で取付孔6に挿通することでグロメットアウタ2のフランジ部12と環状リップ部14とが当接し、環状リップ部14が取付孔6の開口縁部8に押圧される押圧部を環状リップ部14に設けたことによって、グロメット1内への水等の浸入を防ぎ、確実に止水することができる。
【0031】
また、環状リップ部14の撓み環状壁30は、弾性を有しているためパネル4方向へ復帰しようとする力が働くため、強固にパネル4とグロメットアウタ2を取り付けることができる。
【0032】
さらに、当接環状部32に押圧部34が設けられることにより、当接環状部32がパネル4に押し付けられるとともに、押圧部34が自由端壁28に押し付けられるので、より確実にグロメット1内への水等の浸入を防ぎ、確実に止水することができる。
【0033】
さらにまた、組付内周溝16に組付外周壁22が挿入されることにより、自由端壁28の撓みを抑えることができ、押圧部34が外周壁26の自由端壁28側の端部に押圧されることにより外周壁26が撓むため、グロメット1を容易に組み付けることができ、かつ、より強固にパネル4を支持することができる。
【0034】
すなわち、グロメットインナ3とグロメットアウタ2とを組み付け、パネル4の取付孔6に挿通する際、当接環状部32がパネル4に当接して押圧部34がフランジ部12側へ押圧されるが、組付内周溝16に組付外周壁22が挿入されているため、自由端壁28が基部24側へ撓むのを阻止する。加えて、グロメットアウタ2が軟質材によって形成されているため、押圧部34が外周壁26の自由端壁28側の端部に押圧される際、グロメットアウタ2が挿入方向と反対側に撓み易くなる。
【0035】
したがって、組付内周溝16に組付外周壁22を挿入してパネル4へグロメット1の組み付けを行うことにより、自由端壁28が基部24側へ撓むことがなく、軟質材によって形成されている外周壁26が押圧部34に押圧されるとグロメット1挿入方向と反対側に撓み易いため、グロメット1をパネル4に容易に組み付けることができる。さらに、より強固に撓み環状壁30の先端に形成された押圧部34をフランジ部12へ押し付けることができるため、グロメット内への水等の浸入を防ぎ、確実に止水することができる。また、パネル4にグロメット1の取り付けが完了すると、挿入時に撓んだ外周壁26が反力によってパネル4方向へ復帰しようとするため、押圧部34をパネル4側へ押し付けるので、パネル4とグロメット1との間の止水性をより高めることができる。
【0036】
なお、本実施例では、押圧部34を撓み環状壁30に設けたが、フランジ部12に押圧部34を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、グロメットに利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 グロメット
2 グロメットアウタ
3 グロメットインナ
4 パネル
6 取付孔
8 開口縁部
10 電線挿通筒部
12 フランジ部
14 環状リップ部
16 組付内周溝
22 組付外周壁
24 基壁
26 外周壁
28 自由端壁
30 撓み環状壁
32 当接環状部
34 押圧部
図1
図2
図3