特許第5922588号(P5922588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5922588アルミホイールの塗装方法及びアルミホイール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922588
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】アルミホイールの塗装方法及びアルミホイール
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/14 20060101AFI20160510BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20160510BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20160510BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20160510BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20160510BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160510BHJP
   C09D 161/28 20060101ALI20160510BHJP
   B60B 21/00 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   B05D7/14 101B
   B05D7/24 302P
   C09D5/08
   C09D133/00
   C09D163/00
   C09D7/12
   C09D161/28
   B60B21/00 J
   B60B21/00 L
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-552753(P2012-552753)
(86)(22)【出願日】2012年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2012050436
(87)【国際公開番号】WO2012096331
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-3748(P2011-3748)
(32)【優先日】2011年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120019
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 敏安
(72)【発明者】
【氏名】植村 純哉
(72)【発明者】
【氏名】清水 徹
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩司
(72)【発明者】
【氏名】小栗 立也
(72)【発明者】
【氏名】前田 雅史
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−241674(JP,A)
【文献】 特開平06−057178(JP,A)
【文献】 特開平06−057177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
C09D 1/00− 10/00
C09D 101/00−201/10
B60B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミホイールにジルコニウム系の化成処理を行う工程及び
当該アルミホイール上に防食塗料組成物を塗布した後、クリヤー塗料組成物を塗布して透明複層塗膜を形成させる工程を有するアルミホイールの塗装方法において、
前記防食塗料組成物は、質量平均分子量50,000〜140,000、ガラス転移点25〜35℃、水酸基価10〜50mgKOH/g、酸価10〜40mgKOH/gのアクリル樹脂(1)、及び、エポキシ当量210〜1,000g/eqのエポキシ樹脂(2)を含有し、
アクリル樹脂(1)固形分100質量部に対してエポキシ樹脂(2)を固形分換算で5〜20質量部含有する防食塗料組成物であることを特徴とするアルミホイールの塗装方法。
【請求項2】
前記防食塗料組成物が、更に、上記成分(1)及び(2)の合計固形分100質量部に対して、一次粒子の個数平均径が7〜9nm、比表面積(BET法)200〜380m/gの粉末シリカ(3)5〜20質量部、及び、一次粒子の個数平均径が50〜80nmの架橋性重合体粒子(4)1〜10質量部を配合した防食塗料組成物である請求項1に記載のアルミホイールの塗装方法。
【請求項3】
前記クリヤー塗料組成物は、アクリル樹脂(5)と、メラミン樹脂(6)とを配合し、更に、上記成分(5)と(6)との固形分の合計100質量部に対して、紫外線吸収剤(7)、及び、光安定剤(8)をそれぞれ1〜5質量部を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミホイールの塗装方法。
【請求項4】
ジルコニウム系の化成処理層を有するアルミホイール上に
質量平均分子量50,000〜140,000、ガラス転移点25〜35℃、水酸基価10〜50mgKOH/g、酸価10〜40mgKOH/gのアクリル樹脂(1)、及び、エポキシ当量210〜1,000g/eqのエポキシ樹脂(2)を含有し、
アクリル樹脂(1)固形分100質量部に対してエポキシ樹脂(2)を固形分換算で5〜20質量部含有する防食塗料組成物によって形成された防食塗膜層及び
防食塗膜層上に形成されたクリヤー塗膜層
を有する透明複層塗膜層が表面に形成されていることを特徴とするアルミホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミホイールの塗装方法及び当該塗装方法によって得られたアルミホイールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミホイールは鋳造、鍛造等の手段によって成形されたアルミニウム系合金に対して、ステンレス合金等の金属小片を打ちつけるショット工程を行い、その後必要部分を切削加工することによって得られている。
【0003】
このような加工を施されたアルミホイールは、更に化成処理を施した後で、その全面又は一部に防食性、美粧性、耐候性を付与するための塗装が行われる。アルミホイールは、高いレベルでの美粧性及び過酷な使用条件下での防食性が要求されるものであるから、このような塗装について、優れた外観、高い防食性能を得るための検討が行われてきた。
【0004】
特に、海水の塩分と接触しやすい海岸地域や凍結防止剤としての塩化カルシウムが多量に使用される寒冷地域においては、塩害によって塗膜が劣化されやすくなるため、アルミニウム合金が腐食を受け、外観が悪くなったり、錆を生じたりしやすいという問題がある。よって、これらの問題に対処できるような、より高い水準での防食性能を有する塗膜の形成方法が求められている。
【0005】
特に近年は、環境負荷の観点から、化成処理において従来用いられていたクロメート処理を行わず、ノンクロメート処理としてジルコニウム系化合物による化成処理が行われている。しかしながらジルコニウム系化合物によるノンクロメート化成処理は、防食性の点においてクロメート処理に及ばないことがあり、ノンクロメート化成処理皮膜、防食塗膜、およびクリヤー塗膜を含めた複層塗膜で、防食性を確保している。
【0006】
特許文献1には、特定の物性を有するアクリル樹脂、エポキシ樹脂、粉末シリカ及び架橋性重合体粒子を含有する防食塗料組成物が記載されている。更に、アクリル樹脂、ブロックイソシアネート化合物、粉末シリカ及び架橋性重合体粒子を含有する厚膜塗料組成物も記載されている。更には、これらの防食塗料組成物と厚膜塗料組成物を使用した塗膜の形成方法も記載されている。
【0007】
特許文献2には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物、有機ベントナイト、アマイド系湿潤分散剤を含有する防錆用プライマー塗料組成物が記載されている。
【0008】
特許文献3には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物、有機ベントナイト、アマイド系湿潤分散剤を含有する防錆用プライマー塗料組成物を使用した塗膜形成方法が記載されている。しかし、いずれの特許文献に記載された塗料組成物を使用した塗膜の形成方法によっても、塩害による塗膜の劣化を完全には抑制することができず、ノンクロメート化成処理の場合における複層塗膜として、過酷な使用条件下での防食性を満たすものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−57178号公報
【特許文献2】特開2002−241674号公報
【特許文献3】特開2002−239455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような現状に鑑み、塩害を受けやすい地域での使用においても、腐食を防ぐことができるような防食性、密着性を有し、優れた美粧性を有する塗膜を形成することができるような塗料組成物を使用したアルミホイールの塗装方法及びそれによって得られるアルミホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アルミホイールにジルコニウム系の化成処理を行う工程及び当該アルミホイール上に防食塗料組成物を塗布した後、クリヤー塗料組成物を塗布して透明複層塗膜を形成させる工程を有するアルミホイールの塗装方法において、前記防食塗料組成物は、質量平均分子量50,000〜140,000、ガラス転移点25〜35℃、水酸基価10〜50mgKOH/g、酸価10〜40mgKOH/gのアクリル樹脂(1)、及び、エポキシ当量210〜1,000g/eqのエポキシ樹脂(2)を含有し、アクリル樹脂(1)固形分100質量部に対してエポキシ樹脂(2)を固形分換算で5〜20質量部含有する防食塗料組成物であることを特徴とするアルミホイールの塗装方法である。
【0012】
上記防食塗料組成物は、更に、上記成分(1)及び(2)の合計固形分100質量部に対して、一次粒子の個数平均径が7〜9nm、比表面積(BET法)200〜380m/gの粉末シリカ(3)5〜20質量部及び一次粒子の個数平均径が50〜80nmの架橋性重合体粒子(4)1〜10質量部を配合した防食塗料組成物であることが好ましい。
【0013】
上記クリヤー塗料組成物は、アクリル樹脂(5)と、メラミン樹脂(6)とを配合し、更に、上記成分(5)と(6)の固形分の合計100質量部に対して紫外線吸収剤(7)、及び光安定剤(8)をそれぞれ1〜5質量部を配合したものであってもよい。
【0014】
本発明は、ジルコニウム系の化成処理層を有するアルミホイール上に
質量平均分子量50,000〜140,000、ガラス転移点25〜35℃、水酸基価10〜50mgKOH/g、酸価10〜40mgKOH/gのアクリル樹脂(1)、及び、エポキシ当量210〜1,000g/eqのエポキシ樹脂(2)を含有し、
アクリル樹脂(1)固形分100質量部に対してエポキシ樹脂(2)を固形分換算で5〜20質量部含有する防食塗料組成物によって形成された防食塗膜層及び
防食塗膜層上に形成されたクリヤー塗膜層
を有する透明複層塗膜層が表面に形成されていることを特徴とするアルミホイールでもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗装方法によって、塩害に対しても劣化を生じることが少ない防食性及び優れた美粧性を有するアルミホイールを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、防食塗料組成物を塗布した後、クリヤー塗料組成物を塗布して透明複層塗膜を形成させるアルミホイールの塗装方法である。
【0017】
本発明においては、防食塗料組成物としてエポキシ樹脂を含有する塗料を使用することによって、基材及びクリヤー塗膜層との密着性が良好な塗膜を形成する。従来の塗料では、使用される樹脂のガラス転移点が低いため、塗膜が柔らかく、そのために塗膜のフクレが大きくなり、耐食性が悪かった。そのため、本発明においては、防食塗料組成物として、ガラス転移点の高いアクリル樹脂を使用し、塗膜の架橋密度向上による防食因子の遮断性向上により、塗料のフクレを小さくして、耐食性を向上させた。更に、エポキシ樹脂の添加により、基材との密着を高めた。そして更に、特定の特数値を有する粉末シリカおよび架橋性重合体粒子の配合により、塗料粘性を高めてエッジカバー性を確保し、これらの組み合わせにより、優れた防食性能を得るものである。更に、本発明は、外観(平滑性)、耐チッピング性、耐候性を要求されるホイール用塗料においても、優れた性能を有するものである。
【0018】
本発明の塗装対象物であるアルミホイールは、例えば、Al−Si−Mg系合金に分類されるAC4C合金やAC4CH合金といったアルミニウム合金基材が主として用いられる。
【0019】
一般にアルミホイールはアルミニウム系合金を鋳造、鍛造等の手段によりホイール形状に成形する。その後表面に残る離形剤や酸化皮膜の除去及び表面粗さの均一化を目的として、ステンレス合金等の金属小片を成形したアルミニウム系合金に打ちつける。その後車軸への装着、タイヤの装着及び意匠を目的として必要部分を切削加工する。
【0020】
切削工程を経たアルミホイールを塗装するにあたっては、塗料の密着性の向上及び塗装面の防食性を強化するためにジルコニウム系の化成処理を行なうことが好ましい。ジルコニウム系の化成処理の方法としては特に限定されず、公知の方法を適用することができる。より具体的には例えば、特開2008−80286号公報に記載された方法等を挙げることができる。
【0021】
本発明のアルミホイールの塗装方法は、上述した成形を行ったアルミホイール上に防食塗料組成物を塗布した後、クリヤー塗料組成物を塗布して透明複層塗膜を形成させるアルミホイールの塗装方法である。
【0022】
上記防食塗料組成物は、アクリル樹脂(1)及びエポキシ樹脂(2)を含有するものである。これらのアクリル樹脂(1)及びエポキシ樹脂(2)は以下に詳述するようなものである。
【0023】
アクリル樹脂(1)は、質量平均分子量(以下、Mwと略す)が50,000〜140,000、ガラス転移点(以下、Tgと略す)20〜50℃、水酸基価10〜50mgKOH/g及び酸価10〜40mgKOH/gのアクリル樹脂である。
【0024】
上記アクリル樹脂(1)において、Mwは50,000〜140,000であり、好ましくは50,000〜100,000である。Mwが50,000〜140,000の範囲にあることで良好な密着性、防食性が得られる。なお、Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を使用してポリスチレン標準を用いて換算されて得られた値である。なお、本明細書におけるMwは、更に詳細にはGPC用カラム(TSKgelsuperHZM−M、4.6mmIDx15cm、カラム温度40℃)を用い、THF(テトラヒドロフラン)を溶離液とし流速0.35ml/分という条件下で測定された値である。
【0025】
上記アクリル樹脂(1)は、Tgが20〜50℃である。20℃未満であると防食性が低下し、50℃を超えると耐チッピング性が低下するという問題を生じる。Tgは、25〜35℃であることが好ましい。なお、本明細書におけるTgは、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度から各モノマーの加重平均より理論的に計算されるガラス転移温度である。
【0026】
上記アクリル樹脂(1)は、水酸基価が10〜50mgKOH/gである。水酸基価が10mgKOH/g未満であるとクリヤー塗料組成物によって形成される塗膜との密着性が不十分となり、所望の効果を得ることができない。水酸基価が50mgKOH/gを超えると、防錆効果が低下するために、十分な防食性が得られない。水酸基価は、10〜30mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価はJIS K1557−1に準拠した方法により求めることができる。
【0027】
上記アクリル樹脂(1)は、酸価が10〜40mgKOH/gである。酸価が10mgKOH/g未満であると、密着性が低下したり塗膜架橋密度が不足して耐食性が低下するという問題を生じる点で好ましくない。酸価が40mgKOH/gを超えると、低温でのチッピング性が低下するという問題を生じる点で好ましくない。酸価は、15〜30mgKOH/gであることがより好ましい。酸価はJIS K1557−5に準拠した方法により求めることができる。
【0028】
上記アクリル樹脂(1)は上述した物性を満たすものであれば、その化学構造を特に限定されるものではなく、分子内にラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体からなる組成物の重合によって得られるもの等を挙げることができる。
【0029】
上記分子内にラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルブチル、N−メチロールアクリルアミン等のヒドロキシル基を有するエチレン性モノマー;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等のカルボキシル基を有するエチレン性モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のモノマー;(メタ)アクリロニトリル、スチレン等の上述したモノマーと共重合可能なエチレン性モノマーからなる単量体組成物を使用して、通常の方法により重合することができるものを挙げることができる。
【0030】
上記アクリル樹脂(1)は、上記エチレン性不飽和基を有する化合物を原料として使用した乳化重合、溶液重合、懸濁重合等の周知の重合方法によって得ることができる。アクリル樹脂は、合成時に成分の使用量および合成条件を調整することにより、分子量、酸価、水酸基価を調節することができる。アクリル樹脂の合成方法、アクリル樹脂の分子量、酸価、水酸基価を調整する具体的な方法は周知である。
【0031】
本発明におけるアクリル樹脂(1)としては、市販のものを使用することもできる。上記アクリル樹脂(1)として使用することができる市販のアクリル樹脂としては、ダイヤナールHR−2079、ダイヤナールAS−1545(三菱レイヨン社製)等を挙げることができる。
【0032】
上記エポキシ樹脂(2)は、エポキシ当量が210〜1,000g/eqのエポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂(2)は1分子中に2個又はそれ以上のエポキシ基を含有する化合物からなる汎用のエポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂(2)を配合することによって、塗膜の密着性が良好なものとなり、これによって防食性等の物性を良好なものとすることができる。上記エポキシ当量が 210g/eq未満であると、低温での耐チッピング性が低下したり塗膜架橋密度が不足して耐食性が低下し、1,000g/eqを超えると耐水性が低下する。上記エポキシ当量は、好ましくは270〜1,000g/eqである。
【0033】
上記エポキシ樹脂(2)として、具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、1,1,2,2−テトラキス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリフェノール類化合物のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、フロログルシン等の多価フェノール類のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;エチレングリコール、ブタンジオール、グリセロール、エリスリトール、ポリオキシアルキレングリコール等の多価アルコール類のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等の環状脂肪族系エポキシ樹脂;フタル酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸等のポリカルボン酸のエステル縮合物のポリグリシジルエステル系エポキシ樹脂;ポリグリシジルアミン系エポキシ樹脂等があげられる。なかでも、エポキシ当量210〜1,000g/eqのグリシジルエーテル系エポキシ樹脂又は環状脂肪族系エポキシ樹脂が好ましい。
【0034】
本発明におけるエポキシ樹脂(2)としては、市販のものを使用することもできる。上記エポキシ樹脂(2)として使用することができる市販のエポキシ樹脂としては、たとえばEP−0150(新日化エポキシ製造社製)等を挙げることができる。
【0035】
上記アクリル樹脂(1)とエポキシ樹脂(2)との固形分の配合比率(質量部)は(1)/(2)として100/5〜100/20であり、好ましくは100/5〜100/15である。成分(1)の配合比率が100/5より低いと、耐水密着性が低下し、100/20を超えると、低温での耐チッピング性が低下する。
【0036】
本発明において使用する防食塗料組成物は、上記アクリル樹脂(1)及びエポキシ樹脂(2)更に、一次粒子の個数平均径が7〜9nm、比表面積(BET法)200〜380m/gの粉末シリカ(3)及び一次粒子の個数平均径が50〜80nmの架橋性重合体粒子(4)を含有するものであってもよい。これらの成分を含有することによって、塗装後、熱硬化時における樹脂の流動性が制御され、良好なエッジカバー性が得られるために、優れた防食性が得られる点で好ましいものである。
【0037】
本発明で使用する粉末シリカ(3)は、一次粒子の個数平均径7〜9nm、BET法(気体吸着を用いた窒素ガスによる定圧・容量方法)による比表面積200〜380m/gの粉末シリカであることが好ましい。なお、一次粒子の個数平均径は、電子顕微鏡観察によって得られた3000〜5000個の粒子の直径の平均値である。一次粒子の個数平均径を上記範囲内とすることで、良好な外観(肌感)を得ることができるという効果が得られる点で好ましい。なお、比表面積は、BET法(気体吸着を用いた窒素ガスによる定圧、定量方法)という測定方法によって得られた値である。比表面積を上記範囲内とすることで、塗装後、熱硬化時における樹脂の流動性が制御され、良好なエッジカバー性が得られる。
【0038】
上記数値範囲を満たす粉末シリカとしては、市販のものを使用することができ、例えば、アエロジル300(日本アエロジル社製)、KONASIL K−300(OCI Company Ltd.社製)等を挙げることができる。
【0039】
アクリル樹脂(1)及びエポキシ樹脂(2)の合計固形分質量を100としたときの粉末シリカ(3)の配合量(質量部)は、5〜20であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。
上記範囲内とすることで、良好な外観とエッジカバー性の付与を両立することができるという効果が得られる点で好ましい。
【0040】
本発明で使用する一次粒子の個数平均径が50〜80nmの架橋性重合体粒子(4)は、塗料において使用される各種樹脂粒子のうち、上記粒子径を満たすものであれば任意のものを使用することができる。上記個数平均径は、動的光散乱法を用いた粒子径、粒度分布測定方法(ELS−800、大塚電子社製)によって測定された値である。
【0041】
上記架橋性重合体粒子(4)として使用できる具体的なものとしては、例えば分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーを全配合中に0.1質量%又はそれ以上使用して乳化重合又は溶液重合させることにより得られるアクリル樹脂粒子等を挙げることができる。具体的には特開昭62−79873号公報等に記載の架橋性重合体微粒子(ミクロゲル)の製法によって得られた架橋性重合体粒子等を挙げることができる。
【0042】
アクリル樹脂(1)及びエポキシ樹脂(2)の合計固形分質量を100としたときの架橋性重合体粒子(4)の配合量(質量部)は、1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、塗装後、熱硬化時における樹脂の流動性が適切となり、エッジカバー性に優れるという効果が得られる点で好ましい。
【0043】
上記防食塗料組成物は、塗料組成物としての性能に影響を与えない範囲であれば、上記成分(1)〜(4)以外の成分を配合してもよい。配合することができる成分としては例えば、シランカップリング剤、ポリエチレンワックス等のワックス類、可塑剤、レべリング剤、分散剤、増粘剤、表面調整剤等を挙げることができる。
【0044】
なかでも、シランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤を配合することによって、防食塗料組成物と基材との密着性が向上し、防食性能が改善される点で好ましい。
【0045】
上記シランカップリング剤は、有機ポリマー(硬化樹脂等)に対して反応性及び/又は親和性を示す有機官能基と、無機系材料(防食塗料組成物に含有される顔料等)に対して反応性及び/又は親和性を示す無機官能基とを併せ持つ化合物である。かかるシランカップリング剤を用いることにより、有機ポリマーと無機系材料とが接する界面の密着性等を向上させることが可能となり、塗膜の防食性及び耐電気防食性を高めることができる。有機ポリマーに対して反応性及び/又は親和性を示す有機官能基としては、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられる。また、無機系材料に対して反応性及び/又は親和性を示す有機官能基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の加水分解可能なアルコキシ基を挙げることができる。
【0046】
本発明において好ましく用いられるシランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロポキシトリメトキシシラン等のγ−グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン等のγ−アミノアルキルトリアルコキシシラン;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン等のN−フェニル−γ−アミノアルキルトリアルコキシシラン等が挙げられる。これらのなかでも、有機ポリマーに対する反応性に優れるという観点からみてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0047】
シランカップリング剤は、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、0.5〜10質量部の割合で用いられることが好ましく、より好ましくは1〜5質量部である。かかる割合でシランカップリング剤を用いることにより、得られる防食塗膜と基材との密着性や防食塗膜の耐膨れ性をより優れたものとすることができ、防食性能により優れた防食塗料組成物を得ることができる。
【0048】
上記防食塗料組成物は、水系、溶剤系等の任意の形態の塗料組成物とすることができるが、溶剤系塗料とすることが好ましい。防食塗料組成物の塗装は、通常の方法によって行うことができる。本発明のアルミホイールの塗装方法においては、上記防食塗料組成物を塗装後、焼き付けを行うことが好ましい。焼き付けは、焼き付け温度が室温〜160℃、焼き付け時間が1〜30分間の条件において行うことが好ましい。防食塗料組成物の焼き付け後の切削面での膜厚は10〜30μm が好ましい。上記防食塗料組成物は、透明性を有するクリヤー塗料であることが好ましい。
【0049】
本発明のアルミホイールの塗装方法においては、上記防食塗料組成物の塗装後に、クリヤー塗料組成物を塗装する工程を有する。上記クリヤー塗料組成物としては、アクリル樹脂(5)、メラミン樹脂(6)、紫外線吸収剤(7)及び光安定剤(8)を所定量配合する塗料組成物を使用することが好ましい。
このようなクリヤー塗料組成物を使用することによって、防食塗膜との密着性が良好となり、化成処理皮膜、防食塗膜、クリヤー塗膜からなる複層塗膜として、塩害を受けやすい地域での使用においても、腐食を防ぐことができるような防食性、密着性を実現することができるという点で好ましい効果が得られる。
【0050】
上記アクリル樹脂(5)は、Mw7,000〜20,000、Tg0〜40℃、水酸基価50〜100mgKOH/gのアクリル樹脂であることが好ましい。
【0051】
上記アクリル樹脂(5)は、質量平均分子量を7,000〜20,000とすることで、得られる塗膜表面の平滑性と防食塗膜に対する密着性という点で好ましい効果が得られる。上記アクリル樹脂(5)は、Tgを0〜40℃とすることで、耐チッピング性の点で好ましい効果が得られる。上記アクリル樹脂(5)は、水酸基価50〜100mgKOH/gとすることで、防食塗膜に対する密着性という点で好ましい効果が得られる。このようなアクリル樹脂(5)は、上述したアクリル樹脂(1)と同様の原料を使用して、同様の重合方法によって得ることができる。
【0052】
上記アクリル樹脂(5)は、塗料樹脂固形分質量の合計に対して60〜80質量%含まれることが好ましい。含有量が下限を下回るとチッピング性が不十分となるおそれがあり、上限を上回ると耐候性が不十分となるおそれがある。
【0053】
上記メラミン樹脂(6)は、特に限定されるものではなく、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル・ブチル混合型メラミン樹脂等を用いることができる。市販のものとしては例えば、日本サイテック株式会社から市販されている「サイメル303」、「サイメル254」、三井化学株式会社から市販されている「ユーバン128」、「ユーバン20N60」、住友化学工業株式会社から市販されている「スミマールシリーズ」等を挙げることができる。
【0054】
上記メラミン樹脂(6)は、塗料樹脂固形分質量の合計に対して10〜30質量%含まれることが好ましい。含有量が下限を下回ると硬化性が不十分となるおそれがあり、上限を上回ると硬化塗膜が堅くなりすぎ脆くなるおそれがある。メラミン樹脂(6)の含有量は、より好ましくは15〜25質量%である。
【0055】
上記紫外線吸収剤(7)としては、特に限定されず、例えば、以下のものを挙げることができる。フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシルベンゾエート、4−t−オクチルフェニルサリシレート等のサリシレート系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2´−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2´−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;
【0056】
2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´,5´−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2− (2´−ヒドロキシ−3´−t−ブチル−5´−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2− (2´−ヒドロキシ−3′,5´−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2− (2´−ヒドロキシ−3´,5´ジ−t−アミル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´− t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2、2´−メチレンビス[4−
(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記紫外線吸収剤の含有量は、上記アクリル樹脂(5)と上記メラミン樹脂の(6)固形分合計100質量部に対して、固形分として1〜5質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、耐候性試験時にクラックが発生するおそれがあり、5質量部を超えると、硬化性が低下するおそれがある。
【0057】
上記光安定剤(8)としては、特に限定されず、例えば、フェニル−4−ピペリジニルカーボネート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2− (3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン系光安定剤;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3´−ジフェニルアクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3− (p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート系光安定剤等を挙げることができる。なかでも、少量でより大きな効果を有するヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。上記光安定剤の含有量は、上記アクリル樹脂(5)と上記メラミン樹脂(6)の固形分合計100質量部に対して、固形分として1〜5質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、耐候性試験時にクラックが発生するおそれがあり、5質量部を超えると、硬化性が低下するおそれがある。
【0058】
上述したアクリル樹脂(5)、メラミン樹脂(6)、紫外線吸収剤(7)及び光安定剤(8)を所定量配合する塗料組成物は、公知の方法によって製造することができ、水性塗料であっても溶剤系塗料であってもよい。
【0059】
上記クリヤー塗料組成物は、塗料組成物としての性能に影響を与えない範囲であれば、上記成分(5)〜(8)以外の成分を配合してもよい。配合することができる成分としては例えば、シランカップリング剤、ポリエチレンワックス等のワックス類、可塑剤、レべリング剤、分散剤、増粘剤等を挙げることができる。
【0060】
上記クリヤー塗料組成物は、水系、溶剤系等の任意の形態の塗料組成物とすることができるが、溶剤系塗料とすることが好ましい。クリヤー塗料組成物の塗装は、通常の方法によって行うことができる。本発明のアルミホイールの塗装方法においては、上記防食塗料組成物を塗装後焼き付けし、クリヤー塗料組成物を塗装する場合と、防食塗料組成物を塗装後焼き付け無しで、クリヤー塗料組成物を塗装する場合があり、どちらでも良い。また、防食塗料組成物を数回重ね塗り後、クリヤー塗料組成物を塗装しても良い。焼き付けは、焼き付け温度80〜160℃、焼き付け時間5〜30分間の条件において行うことが好ましい。クリヤー塗料組成物の焼き付け後の切削面での膜厚は25〜60μmが好ましい。
【0061】
上述したようなアルミホイールの塗装方法によって塗装されたアルミホイールは、特に優れた防食性を有するものであることから、塩害による問題を生じやすい地域における使用においても十分な防食性を得ることができるものである。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0063】
〔防食塗料組成物の製造方法〕
炭化水素系溶剤/アルコール系溶剤/エステル系溶剤を表1に記載の配合比率(質量部)で混合した溶剤(以下、混合溶剤と略す)を用意し、アクリル樹脂、粉末シリカ、混合溶剤を、表1に記載した比率で、ガラスビーズを用いたバッチ式分散機でツブゲージ5μm以下(JIS K−5600−2−5)になるまで粉末シリカを分散した。分散物を別容器に取り出し攪拌しながら表1に基づくエポキシ樹脂ワニスを加え、次いで同様に架橋性重合体粒子溶液および添加剤を加えて各防食塗料組成物を製造した。
【0064】
【表1】
表中の数値は、質量部を表す。
【0065】
表1中のアクリル樹脂は、それぞれ表に示した物性を有するアクリル樹脂として市販のものや合成したものを使用した。
なお、表中のアクリル樹脂以外の各成分は、以下のものである。
エポキシ樹脂;EXS−1003(日本ペイント社製) エポキシ当量480g/eq
粉末シリカ;アエロジル300(日本アエロジル社製)個数平均粒子径7nm、比表面積300m/g
架橋性重合体粒子;AZS−1230(日本ペイント社製)一次粒子の個数平均径69nm
密着性付与剤;シランカップリング剤KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業社製)
表面調整剤;レジミックス(三井化学社製)
【0066】
〔クリヤー塗料組成物の製造方法〕
アクリル樹脂Mとアクリル樹脂Nとを固形分質量比が1:2になるように混合し、更にアアクリル樹脂Mとアクリル樹脂Nとの合計量とメラミン樹脂との固形分質量比が70:30になるようにメラミン樹脂を混合した。さらに、アクリル樹脂Mとアクリル樹脂Nとメラミン樹脂の合計固形分質量100部に対し、架橋性重合体粒子を2部、紫外線吸収剤を4部、光安定剤を2部添加して、均一になるように混合し、クリヤー塗料を製造した。
【0067】
なお、上記クリヤー塗料組成物の製造方法において、使用した各原料は以下のものである。
アクリル樹脂M;ダイヤナールHR554(三菱レイヨン社製) Mw4000、Tg10℃、水酸基価 95mgKOH/g、酸価 22mgKOH/g
アクリル樹脂N;ACR−461(日本ペイント社製) Mw8300、Tg 25℃、水酸基価 70mgKOH/g、酸価 20mgKOH/g
メラミン樹脂;MFS1000(日本ペイント社製)Mw1500
架橋性重合体粒子;AZS−797(日本ペイント社製)一次粒子の個数平均径94nm
紫外線吸収剤;CHISORB234(Double Bond Chemical社製)
光安定剤;CHISORB292(Double Bond Chemical社製)
【0068】
〔試験片の前処理方法〕
アルミホイールに対して脱脂、水洗、酸洗処理、水洗を行った後、以下に示した条件で化成処理を行い、水洗、乾燥後、防食塗料組成物による塗装を行った。各工程は、全てディップ方式で処理を行い、乾燥は、電気乾燥機で120℃、15分間行った。化成処理液は、以下の組成を有するものを使用した。
化成処理液:ジルコニウムイオン0.025g/リットル、リン酸イオン0.07g/リットル、アルミニウムイオン0.04g/リットル、全フッ素イオン(F)0.115g/リットル、遊離フッ素イオン(F)0.005g/リットルの組成を有する化成処理液(pH3.2)、処理温度:40℃、浸漬処理時間:45秒。
【0069】
〔試験片の作成方法〕
切削加工されたアルミホイールに上記前処理を行った後に、各防食塗料組成物を、熱硬化後に切削面上で20μmの膜厚になるように、全面にエアースプレーした。その上にクリヤー塗料を、切削面上で、30μmの膜厚になるように全面にエアースプレーし、焼付(アルミホイールの表面温度を140℃まで上昇させ、20分間保持すること)して熱硬化した。
【0070】
〔塗装アルミホイールのCASS試験〕
CASS試験用各試験片の表面をカッターナイフにより10cm長さでカットし、JISZ2371−2000で調整されたCASS試験液を50±2℃で240時間噴霧を行い、カット部の周辺3mm以内における腐食の度合いを評価した。その結果において、塗膜の片側最大錆幅が3mm以下を良好とした。得られた結果を表2に示す。
【0071】
〔CASSエッジカバー性〕
CASS試験において、切削エッジ部の腐食の度合いを評価した。錆が全くないものをA錆が1〜3点発生しているものをB、錆が4点以上発生しているものをCとした。
【0072】
〔塗装アルミホイールの耐糸錆性試験〕
塗膜にカットを入れ、「塩水噴霧を24時間行い、その後、120時間、湿潤(湿度85%、40℃)させ、続いて、24時間、室温で自然乾燥させる」とのサイクルを8サイクル行い、カット部の片側の錆幅を測定した。その結果において、塗膜の錆幅が2mm以下を良好とした。得られた結果を表2に示す。
【0073】
〔CASSと糸錆複合試験〕
上述したCASS試験の方法による試験を行った後に、上述した耐糸錆性試験による塩水噴霧を行って、その後のカット部片側の錆幅を測定した。その結果において、片側最大錆幅10mm以下を良好とした。得られた結果を表2に示す。
【0075】
〔耐チッピング性試験〕
グラベロ試験機(スガ試験機製、JA−400LA)にて、飛び石試験機と試験片の距離が350mmとなるようにセットし、玄武岩6号砕石(日本舗道製)を篩にかけ、4.8〜8.0mmの大きさに調節した新品の飛び石100gを、射出圧力0.4MPaで試験片に射出した。評価は各試験片において傷の大きなものから10点を選択し、10点の長径の平均値が2.81mm未満をA、2.81mm以上をCとした。
【0076】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の塗装方法は、特に優れた防食性及び美粧性を付与する塗装方法であり、アルミホイールの塗装方法として好適に使用することができる。