特許第5922611号(P5922611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5922611排ガス処理装置用反応器及びこれを用いた排ガス処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922611
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置用反応器及びこれを用いた排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/06 20060101AFI20160510BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20160510BHJP
   B01D 53/77 20060101ALI20160510BHJP
   F23J 15/04 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   F23G7/06 DZAB
   B01D53/34 134D
   F23J15/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-83239(P2013-83239)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206308(P2014-206308A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】592010106
【氏名又は名称】カンケンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】今村 啓志
(72)【発明者】
【氏名】塚田 勉
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/096466(WO,A1)
【文献】 特表2008−523348(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0111526(US,A1)
【文献】 特開平07−323211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/06
B01D 53/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス(E)中の除害対象ガスを熱分解するガス処理空間(R)が内部に形成されたケーシング(12)と、
炭化水素系の燃料ガスに空気または助燃性ガスを混合して燃焼させた火炎を前記ガス処理空間(R)に供給するバーナー(14)と、
前記バーナー(14)を着火させると共に、前記ガス処理空間(R)を加熱する電熱ヒーター(16)とを具備する排ガス処理装置用反応器であって、
前記ケーシング(12)には、ガス処理空間(R)内へ排ガス(E)を導入するための排ガス供給口(12a)が開口されると共に、その排ガス供給口(12a)から最も離間した位置に、ガス処理空間(R)内で熱分解処理した処理済の排ガス(E)を排出するための排ガス排出口(12b)が開口され、
前記バーナー(14)が前記排ガス供給口(12a)近傍に接続されると共に、前記ガス処理空間(R)内の温度を検出する温度計測手段(18)が前記排ガス排出口(12b)近傍に取り付けられており、
前記温度計測手段(18)が検出した温度信号に基いて、前記ガス処理空間(R)内全体の温度が1400℃前後に維持されるように、前記電熱ヒーター(16)への供給電力を調整する制御手段(20)が設けられている、ことを特徴とする排ガス処理装置用反応器。
【請求項2】
請求項1に記載した排ガス処理用反応器(10)と、
先端が前記排ガス処理用反応器(10)の排ガス供給口(12a)に接続され、前記ガス処理空間(R)内に排ガス(E)を送給する流入配管系(22)と、
後端が前記排ガス処理用反応器(10)の処理済ガス排出口(12b)に接続され、前記ガス処理空間(R)内で熱分解した処理済の排ガス(E)を大気中へと排出する排出配管系(24)と、
前記流入配管系(22)の途中に設けられ前記排ガス(E)を水洗する湿式の入口スクラバ(32)と、
前記排出配管系(24)の途中に設けられ前記処理済の排ガス(E)を水洗する湿式の出口スクラバ(34)とで構成された、ことを特徴とする排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体製品の製造工程等において排出される有毒性,可燃性,腐食性を有する排ガスを除害する処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスや液晶パネル或いは太陽電池パネルといった半導体製品の製造工程では、様々な反応ガスが使用されている。具体的には、デポジット用ガスとしてN2OやSiHなどが使用されており、エッチング用ガスとしてPFCs(パーフルオロコンパウンド)などが使用されている。これら反応ガスの多くは、人体や地球環境に対して悪影響を及ぼすことから、半導体製造装置からの排ガスに含まれる未反応の反応ガス(すなわち除害対象ガス)は、いずれかの手段によって分解或いは除去する必要があり、種々の排ガス処理(除害)方法が実用化されている。その代表例として、吸着式,湿式,電熱酸化分解式,火炎燃焼式などが挙げられる。
【0003】
このうち、電熱ヒーターを用いる電熱酸化分解式の排ガス処理方法は、半導体製造プロセスにおける排ガス処理方法として現在最も普及している分解処理方法であり、除害対象ガスの分解処理に際して処理工程を制御しやすく、除害対象ガスを安全に分解処理することができる。とりわけ、電熱ヒーターを用いた加熱分解装置の前後に湿式のスクラバを設けた排ガス処理装置では、半導体製造における多岐多様な条件に追従して、何れの除害対象ガスについても、それら成分のTLV[Threshold Limit Value;暴露限界]以下の濃度まで除害処理することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−323211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、先の東日本大震災における福島第1原子力発電所事故の発生以降、計画停電の実施など電力の安定供給が損なわれる事態が生じており、また、かかる事態に伴い、わが国の電力政策或いは今後のエネルギー構成やエネルギーの効率的な利用等について様々な議論が活発化してきている。なお、このような状況(すなわち、今後のエネルギー構成やエネルギーの効率的な利用等に関する様々な議論など)は、大規模な原子力発電所事故を経験した我が国特有のものでなく、例えば、シェールガス革命が進行中の米国などでも同様であり、グローバルな潮流と言える。
以上のような状況の下、加熱の際のエネルギーとして比較的多量の電力を消費する上記従来の電熱酸化分解式の排ガス処理装置では、電力の安定供給が損なわれた際、その影響を諸に受けるばかりでなく、将来的なエネルギー構成に変化が生じた際に、かかる変化への対応が困難になることも予想される。
【0006】
それゆえに、本発明の主たる課題は、従来の電熱酸化分解式の排ガス処理装置の利点をそのままの形で有すると共に、電力消費量を低減させてエネルギーの効率利用を図ることが可能な排ガス処理装置用反応器と、これを用いた排ガス処理装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1に示すように、排ガス処理装置用反応器10を次のように構成した。
すなわち、本発明の排ガス処理装置用反応器10は、排ガスE中の除害対象ガスを熱分解するガス処理空間Rが内部に形成されたケーシング12と、炭化水素系の燃料ガスに空気または助燃性ガスを混合して燃焼させた火炎を前記ガス処理空間Rに供給するバーナー14と、前記バーナー14を着火させると共に、前記ガス処理空間Rを加熱する電熱ヒーター16とを具備する。
前記ケーシング12には、ガス処理空間R内へ排ガスEを導入するための排ガス供給口12aが開口されると共に、その排ガス供給口12aから最も離間した位置に、ガス処理空間R内で熱分解処理した処理済の排ガスEを排出するための排ガス排出口12bが開口される。
また、前記バーナー14が前記排ガス供給口12a近傍に接続されると共に、前記ガス処理空間R内の温度を検出する温度計測手段18が前記排ガス排出口12b近傍に取り付けられる。
そして、前記温度計測手段18が検出した温度信号に基いて、前記ガス処理空間R内全体の温度が1400℃前後に維持されるように、前記電熱ヒーター16への供給電力を調整する制御手段20が設けられる。
【0008】
本発明において「1400℃前後」とは、排ガスE中の除害対象ガスを完全に熱分解でき、しかも排ガス処理装置用反応器10に過度な耐熱対策を施す必要のない温度域を意味する。
【0009】
さらに、本発明は、図1に示すように、上記の排ガス処理装置用反応器10と、先端が前記排ガス処理用反応器10の排ガス供給口12aに接続され、前記ガス処理空間R内に排ガスEを送給する流入配管系22と、後端が前記排ガス処理用反応器10の処理済ガス排出口12bに接続され、前記ガス処理空間R内で熱分解した処理済の排ガスEを大気中へと排出する排出配管系24と、前記流入配管系22の途中に設けられ前記排ガスEを水洗する湿式の入口スクラバ32と、前記排出配管系24の途中に設けられ前記処理済の排ガスEを水洗する湿式の出口スクラバ34とで構成された排ガス処理装置Xを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、次の作用効果を奏する。
すなわち、排ガス処理装置用反応器のガス処理空間に火炎を供給するバーナーを、該ガス処理空間の加熱を行なう電熱ヒーターで着火させるようにしているので、パイロットバーナーや電気スパークなどバーナー固有の着火源が不要となる。このため、バーナーの構造がシンプルになり、故障が生じ難く、長時間の連続運転が可能になる。
また、バーナーの火炎で加熱され、局所的に高温領域が形成されたガス処理空間を、更に電熱ヒーターで「追い焚き」することによって、ガス処理空間内全体の温度を、排ガスE中の除害対象ガスを完全に熱分解可能な温度域に保温することができるので、従来の電熱酸化分解方式の排ガス処理装置の利点、すなわち、除害対象ガスの分解処理に際して処理工程を制御しやすく、除害対象ガスを安全に分解処理することができると言った利点をそのままの形で有すると共に、反応器の熱源として電熱ヒーターのみを用いる場合に比べ電力消費量を著しく低減させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の排ガス処理装置用反応器を用いた排ガス処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。図1は、本発明の排ガス処理装置用反応器(以下、単に「反応器」ともいう。)10を用いた排ガス処理装置Xの一例を示す概略図である。この図が示すように、本実施例の排ガス処理装置Xは、大略、反応器10,入口スクラバ32及び出口スクラバ34で構成されている。
【0013】
反応器10は、半導体製造プロセスなどから排出される排ガスE中の有害な除害対象ガスを火炎燃焼式と電熱酸化分解式とを併用して熱分解する装置であり、ケーシング12,バーナー14及び電熱ヒーター16を有する。
【0014】
ケーシング12は、少なくともその内面がキャスタブルなどの耐火性材料で構成され、内部にガス処理空間Rが形成された密閉容器である。図示実施形態では、このケーシング12の底面に、ガス処理空間R内へ排ガスEを導入するための排ガス供給口12aが開口されており、さらにケーシング12底面の排ガス供給口12aから最も離間した位置に、ケーシング12内(すなわち、ガス処理空間R内)で熱分解した処理済の排ガスEを大気中へと排出するための処理済ガス排出口12bが開口されている。なお、上述したように、図1では排ガス供給口12a及び処理済排ガス排出口12bをケーシング12の底面に設ける場合を示しているが、排ガス供給口12a及び処理済排ガス排出口12bを設ける位置は設備の設置状況等に応じて適宜変更することができる。
【0015】
また、上述した排ガス供給口12aには、下流端が半導体製造装置などの排ガス発生源に接続され、ガス処理空間R内に排ガスEを送給する流入配管系22の先端(上流端)が接続されており、処理済排ガス排出口12bには、ガス処理空間R内で熱分解した処理済の排ガスEを大気中へと排出する排出配管系24の後端(下流端)が接続されている。
そして、この流入配管系22の先端部と排出配管系24の後端部との間にはこれらを跨ぐように熱交換器26が取り付けられており、反応器10に導入する排ガスEと反応器10で熱分解した処理後の排ガスEとの間で熱交換するようになっている。
【0016】
バーナー14は、メタンやプロパンなどの炭化水素系の燃料ガスに、空気または酸素などの助燃性ガスを混合して燃焼させた火炎をガス処理空間Rに供給するためのものである。図示実施形態では、このバーナー14が排ガス供給口12a近傍に接続されている。
ここで、一般的なバーナーにおいては、火炎を形成するためにパイロットバーナーや電気スパークなどの火種(すなわち、着火源)が必要であるが、本発明の反応器10に用いるバーナー14では、後述する電熱ヒーターを着火源としているので、バーナー自体の構造が極めてシンプルとなる。その結果、故障も少なく、長期間安定して稼動させることができるようになる。
なお、図示しないが、バーナー14に炭化水素系の燃料ガスや空気または酸素などの助燃性ガスを供給するライン(管路)には、マスフローコントローラー等からなる流量調整手段が設けられている。
【0017】
電熱ヒーター16は、ハステロイ(ヘインズ社登録商標)やステンレスなどの金属製或いはセラミック製の二重管の管壁間にニクロム線やカンタル(サンドビックAB社登録商標)線などの金属線を螺旋状に巻回した発熱抵抗体を配設すると共に、当該二重管の管壁間にセラミック粉末を充填した電熱式のヒーターで、反応器10内部のガス処理空間Rを加熱する熱源であると同時に、バーナー14より供給される燃料ガスを着火させるための着火源でもある。なお、この電熱ヒーター16を構成する発熱体としては、上述したものの他に、例えばSiCなどの発熱体を棒状に成形したものなどであってもよい。
また、図示実施形態では、この電熱ヒーター16がケーシング12の天井面から垂下されると共に、リード線28を介して電源装置30に接続されている。
【0018】
ここで、本実施形態の反応器10では、ガス処理空間Rの温度を検出する熱電対などで構成された温度計測手段18が処理済排ガス排出口12b近傍に取り付けられると共に、この温度計測手段18で検出した温度データ(温度信号)が信号線L1を介して後述する制御手段20へと与えられるようになっている。また、電熱ヒーター16に電力を供給する電源装置30は、配線L2を介して制御手段20に接続されている。
なお、図示しないが、この制御手段20はバーナー14にも接続されている。
【0019】
制御手段20は、電源装置30やバーナー14が所定の動作を行なうよう、シーケンス制御するためのものであり、図示しないが、大略、CPU[Central Processing Unit;中央処理装置],メモリ,入力装置および表示装置などで構成されている。
このうち、CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行する装置であり、その入力側には、信号線L1を介して温度計測手段18で検出した温度データが入力され、出力側には、配線L2を介して電源装置30が接続されている。
そして、メモリには、ガス処理空間R内全体の温度が1400℃前後に維持されるように、電熱ヒーター16への供給電力を調整するプログラムなど複数のプログラムが格納されている。なお、「1400℃前後」という温度は、排ガスE中の除害対象ガスを完全に熱分解でき、しかも排ガス処理装置用反応器10に過度な耐熱対策を施す必要のない温度を表している。
【0020】
入口スクラバ32は、反応器10に導入する排ガスEに含まれる粉塵や水溶性成分などを除去するためのものであり、直管型のスクラバ本体32aと、このスクラバ本体32a内部の頂部近傍に設置され、水などの薬液を噴霧状にして撒布するスプレーノズル32bと、スプレーノズル32bから撒布された薬液と排ガスEとの気液接触を促進させるための充填材32cとで構成されている。
この入口スクラバ32は、流入配管系22の途中に設けられると共に、水などの薬液を貯留するタンク36上に立設されている。
そして、スプレーノズル32bとタンク36との間には循環水ポンプ38が設置されており、タンク36内の貯留薬液をスプレーノズル32bに揚上するようになっている。
【0021】
出口スクラバ34は、反応器10を通過した熱分解後の排ガスEを冷却すると共に、熱分解によって副成した水溶性成分等を最終的に排ガスE中から除去するためのものであり、直管型のスクラバ本体34aと、このスクラバ本体34a内部の頂部近傍に設置され、排ガスE通流方向に対向するように上方から水などの薬液を噴霧する下向きのスプレーノズル34bと、スプレーノズル34bから撒布された薬液と排ガスEとの気液接触を促進させるための充填材34cとで構成されている。
この出口スクラバ34は、排出配管系24の途中に設けられると共に、水などの薬液を貯留するタンク36上に立設されている。
また、上述した入口スクラバ32と同様に、図示実施形態では、スプレーノズル34bとタンク36との間には循環水ポンプ38が設置されており、タンク36内の貯留薬液をスプレーノズル34bに揚上するようになっているが、このスプレーノズル34bには、タンク36内の貯留薬液ではなく、新水などの新しい薬液を供給するようにしてもよい。
【0022】
そして、出口スクラバ34の頂部出口近傍の排出配管系24上には、処理済みの排ガスEを大気中へと放出する排気ファン40が接続されている。
【0023】
なお、本実施形態の排ガス処理装置Xにおける反応器10を除く他の部分には、排ガスEに含まれる、或いは、当該排ガスEの分解によって生じるフッ酸などの腐食性成分による腐蝕から各部を守るため、塩化ビニル,ポリエチレン,不飽和ポリエステル樹脂およびフッ素樹脂などによる耐蝕性のライニングやコーティングが施されている。
【0024】
次に、以上のように構成された排ガス処理装置Xを用いて排ガスEの除害処理を行う際には、まず始めに、排ガス処理装置Xの運転スイッチ(図示せず)をオンにして電熱ヒーター16を作動させ、反応器10内の加熱を開始する。
続いて、ガス処理空間R内の温度が炭化水素系の燃料ガスの燃焼温度(例えば、燃料ガスがメタンの場合には、約700℃前後)に達すると、制御手段20がバーナー14を作動させて、ガス処理空間R内に炭化水素系の燃料ガスと空気または助燃性ガスとの混合ガスが送給される。すると、バーナー14先端より火炎が放射され、ガス処理空間R内がこの火炎と電熱ヒーターの熱とで加熱される。
そして、ガス処理空間R内の温度が1400℃前後に達すると、排気ファン40が作動し、排ガス処理装置Xへの排ガスEの導入を開始させる。すると、排ガスEは、入口スクラバ32、反応器10及び出口スクラバ34をこの順に通過して排ガスE中の除害対象成分が除害される。また、ガス処理空間R内の温度が1400℃前後を保持するように電熱ヒーター16に供給される電力量が制御される。
【0025】
本実施形態の排ガス処理装置Xによれば、反応器10のガス処理空間Rに火炎を供給するバーナー14を、該ガス処理空間Rの加熱を行なう電熱ヒーター16で着火させるようにしているので、パイロットバーナーや電気スパークなどバーナー固有の着火源が不要となる。このため、バーナー14の構造がシンプルになり、故障が生じ難く、長時間の連続運転が可能になる。
また、バーナー14の火炎で加熱され、局所的に高温領域が形成されたガス処理空間Rを、更に電熱ヒーター16で「追い焚き」しているので、ガス処理空間R内全体の温度を、排ガスE中の除害対象ガスを完全に熱分解可能な温度域に保温することができる。その結果、従来の電熱酸化分解方式の排ガス処理装置の利点、すなわち、除害対象ガスの分解処理に際して処理工程を制御しやすく、除害対象ガスを安全に分解処理することができると言った利点をそのままの形で有すると共に、反応器10の熱源として電熱ヒーター16のみを用いる場合に比べ電力消費量を著しく低減させてエネルギーの効率利用を図ることができる。
【0026】
さらに、本実施形態の排ガス処理装置Xによれば、入口スクラバ32及び出口スクラバ34を備えているので、反応器10に導入する排ガスEを予め液洗して流入配管系22の目詰まり等を防止し、より安定して反応器10を連続運転できると共に、熱分解後の処理済排ガスEの清浄度を向上させることができる。
【0027】
なお、上記の実施形態は、次のように変更可能である。
すなわち、上述の排ガス処理装置Xでは、入口スクラバ32と出口スクラバ34の両方を備える場合を示したが、処理する排ガスEの種類によってはこれらの何れか一方を備えるようにしてもよい。
【0028】
また、図示実施形態において、入口スクラバ32及び出口スクラバ34をタンク36上に立設する場合を示したが、入口スクラバ32及び出口スクラバ34をタンク36とは別個に配設すると共に、両者を配管で接続し、各スクラバ32,34からの排水がタンク36に送り込まれるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の排ガス処理装置用反応器および排ガス処理装置は、様々な種類の排ガスを確実に熱分解できるのはもとより、処理効率が極めて高く、しかも安全性にも非常に優れたものであることから、半導体製造プロセスから排出される排ガスの熱分解処理のみならず、化学プラントにおける排ガス処理など、あらゆる工業プロセスより排出される除害対象ガスの分解処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10…反応器
12…ケーシング
12a…排ガス供給口
12b…処理済ガス排出口
14…バーナー
16…電熱ヒーター
18…温度計測手段
20…制御手段
22…流入配管系
24…排出配管系
26…熱交換器
32…入口スクラバ
34…出口スクラバ
X…排ガス処理装置
R…ガス処理空間
E…排ガス
図1