(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922626
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】回生型インバータ装置及び単位電力セルを用いたインバータ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20160510BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20160510BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P7/63 302A
H02M7/12 A
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-182947(P2013-182947)
(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-54174(P2014-54174A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2013年9月4日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0098496
(32)【優先日】2012年9月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】チェ スン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ユ アンノ
【審査官】
服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−164846(JP,A)
【文献】
特開2009−106081(JP,A)
【文献】
特開2006−067754(JP,A)
【文献】
特開2005−295623(JP,A)
【文献】
特開平08−317638(JP,A)
【文献】
特開2010−263775(JP,A)
【文献】
実開平03−104093(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/12
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回生型インバータ装置において、
入力された単相交流電源を直流電源にして出力するコンバータ部と、
前記コンバータ部から出力される直流電源を緩衝するコンデンサ部と、
前記緩衝された直流電源を合成して負荷の駆動電力として出力するインバータ部と、
前記単相交流電源及び前記コンバータ部から出力される直流電源に基づいて前記コンバータ部を制御するコンバータ制御部と、を含み、
前記コンバータ制御部は、
前記コンバータ部に含まれる複数のゲートを制御するコンバータゲート信号発生部と、
前記コンバータゲート信号発生部の入力側に接続される加算器にコンバータ追加電力を出力する入力端高調波電圧発生部と、を含み、
前記入力端高調波電圧発生部は、前記コンバータ部を通して流れる電流に対する基本波電圧の所定倍数の大きさと所定倍数の周波数とを持つ電圧を生成して、前記コンバータ部を通して流れる該電流の第3高調波成分を有する電流が前記コンバータ部を通して流れるようにし、
前記コンバータ制御部は、
前記単相交流電源の位相情報を検出する位相検出部と、
前記検出された単相交流電源の位相情報に基づいて、前記単相交流電源の電流をdq同期座標系によるd軸電流及びq軸電流に変換する座標変換部と、
前記コンバータ部の出力電圧によってd軸制御電流及びq軸制御電流を発生する電圧制御部と、
前記座標変換されたd軸電流及びq軸電流と前記電圧制御部から出力されるd軸制御電流及びq軸制御電流によって前記コンバータ部の制御のための第1制御電圧を発生する電流制御部と、をさらに含み、
前記入力端高調波電圧発生部は、前記単相交流電源と前記第1制御電圧に基づいて第2制御電圧を出力し、
前記加算器は、前記第1制御電圧と前記第2制御電圧を加算し、該加算した電圧を前記コンバータゲート信号発生部に出力し、
前記入力端高調波電圧発生部は、
前記第1制御電圧及び前記単相交流電源の電圧の差を出力する減算部と、
前記減算部の出力の絶対値を演算して前記基本波成分の大きさを演算する絶対値演算部と、
前記演算された基本波成分の大きさに基づいて所定の大きさの高調波電圧を出力する比例制御部と、
前記比例制御部から出力される高調波電圧が前記基本波成分の前記所定倍数となるように位相を調整して前記第2制御電圧にして出力する位相決定部と、を含む、回生型インバータ装置。
【請求項2】
前記入力端高調波電圧発生部は、前記コンバータ追加電力の電圧の大きさ及び周波数が前記所定倍数を維持するようにする比例制御部を含む、請求項1に記載の回生型インバータ装置。
【請求項3】
前記所定倍数が3倍である、請求項1又は2に記載の回生型インバータ装置。
【請求項4】
前記インバータ部の出力電圧に基づいて前記インバータ部を制御するインバータ制御部をさらに含み、
前記インバータ制御部は、
前記インバータ部に含まれる複数のゲートを制御するインバータゲート信号発生部と、
前記インバータ部の出力電圧の基本波成分と大きさが同一であり、前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の所定倍数の周波数を有するインバータ追加電力を、前記インバータゲート信号発生部の入力側に接続される加算器に出力する出力端高調波電圧発生部と
を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回生型インバータ装置。
【請求項5】
前記コンバータ追加電力の周波数における前記単相交流電源の基本波成分の所定倍数と、前記インバータ追加電力の周波数における前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の所定倍数とが、同一である、請求項4に記載の回生型インバータ装置。
【請求項6】
前記出力端高調波電圧発生部は、
前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の大きさを演算する絶対値演算部と、
前記インバータ部の出力電圧の負荷角及び前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の大きさに基づく位相調整により前記インバータ追加電力を出力する位相決定部と
を含む、請求項4又は5に記載の回生型インバータ装置。
【請求項7】
複数の単位電力セルを含むインバータ装置において、
入力電源から3相電源を受けて位相変換を行い、前記各単位電力セルに単相交流電源にして提供する位相変換変圧部と、
前記各単位電力セルから出力される電力を合成して3相駆動負荷に出力する出力端と、を含み、
前記各単位電力セルは、
入力された前記単相交流電源を直流電源にして出力するコンバータ部と、
前記直流電源を前記出力端に出力するインバータ部と、
前記単相交流電源及び前記コンバータ部から出力される直流電源に基づいて前記コンバータ部を制御するコンバータ制御部と、
前記インバータ部の出力電圧に基づいて前記インバータ部を制御するインバータ制御部と、を含み、
前記コンバータ制御部は、コンバータ追加電力を出力する入力端高調波電圧発生部を含み、該入力端高調波電圧発生部は、前記コンバータ部を通して流れる電流に対する前記単相交流電源の基本波電圧の所定倍数の大きさと所定倍数の周波数とを持つ電圧を生成して、前記コンバータ部を通して流れる該電流の第3高調波成分を有する電流が前記コンバータ部を通して流れるようにし、
前記インバータ制御部は、前記インバータ部の出力電圧の基本波成分と大きさが同一であり、前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の所定倍数の周波数を有するインバータ追加電力を出力する出力端高調波電圧発生部を含み、
前記コンバータ制御部は、
前記単相交流電源の位相情報を検出する位相検出部と、
前記検出された単相交流電源の位相情報に基づいて、前記単相交流電源の電流をdq同期座標系によるd軸電流及びq軸電流に変換する座標変換部と、
前記コンバータ部の出力電圧によってd軸制御電流及びq軸制御電流を発生する電圧制御部と、
前記座標変換されたd軸電流及びq軸電流と前記電圧制御部から出力されるd軸制御電流及びq軸制御電流によって前記コンバータ部の制御のための第1制御電圧を発生する電流制御部と、をさらに含み、
前記入力端高調波電圧発生部は、前記単相交流電源と前記第1制御電圧に基づいて第2制御電圧を出力し、
前記入力端高調波電圧発生部は、
前記第1制御電圧及び前記単相交流電源の電圧の差を出力する減算部と、
前記減算部の出力の絶対値を演算して前記基本波成分の大きさを演算する絶対値演算部と、
前記演算された基本波成分の大きさに基づいて所定の大きさの高調波電圧を出力する比例制御部と、
前記比例制御部から出力される高調波電圧が前記基本波成分の前記所定倍数となるように位相を調整して前記第2制御電圧にして出力する位相決定部と、を含む、単位電力セルを用いたインバータ装置。
【請求項8】
前記各単位電力セルは、前記3相駆動負荷の各相に対応する所定のグループに分けられて前記出力端に接続される、請求項7に記載の単位電力セルを用いたインバータ装置。
【請求項9】
前記3相駆動負荷の相電圧は、前記所定のグループに分けられた単位電力セルの電圧の和になるように合成される、請求項8に記載の単位電力セルを用いたインバータ装置。
【請求項10】
前記各単位電力セルに含まれる前記インバータ部及び前記コンバータ部は、カスケードHブリッジ構造に接続される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の単位電力セルを用いたインバータ装置。
【請求項11】
前記3相駆動負荷は、誘導電動機又は同期電動機の少なくとも一方を含む、請求項7〜10のいずれか一項に記載の単位電力セルを用いたインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生型インバータ装置及び単位電力セルを用いたインバータ装置に関し、特に、直流リンク電圧の脈動の改善によりシステムの体積減少及びコストダウンを図ることのできる、回生型インバータ装置及び単位電力セルを用いたインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧インバータとは、線間電圧の実効値(RMS値)が600V以上の入力電源を有するインバータを意味する。高圧インバータは、主にファン、ポンプ、圧縮機などの応用分野において用いられている。
【0003】
これらの応用分野において用いられている高圧インバータにおいては、可変速運転が頻繁に行われるが、急加速運転又は急減速運転が必要な場合は回生インバータにより回生運転を行うことで急加速又は急減速をサポートする。回生運転は、例えば牽引(トラクション)、昇降(ホイスト)、コンベアなどの応用分野において必須である。
【0004】
図7は一般的な高圧インバータ装置の接続構成を示す図である。高圧インバータ装置の種類は様々であるが、
図7においては単位電力で駆動される高圧インバータ装置を示す。
【0005】
図7に示すように、高圧インバータ装置100は、3相電源の供給を受けて位相を変換し、電源電流の全高調波歪率を改善し、その後、変圧器により単位電力を生成し、その単位電力を3相電圧に合成して各相毎に3相電動機に供給する。
【0006】
図8は
図7の高圧インバータ装置100の単位電力セルの構成を示す図である。
【0007】
各単位電力セルは、入力電源部201から交流電力を受けて貯蔵及び供給するインダクタ202と、インダクタ202を経由した電源を直流に変換するコンバータ203と、コンバータ203を制御するコンバータ制御部206と、コンバータ203の入出力電源を緩衝するコンデンサ204と、直流電源を再び交流に変換して出力するインバータ205と、インバータ205を制御するインバータ制御部207とを含む。
【0008】
高圧インバータ装置100の単位電力セルは、単相電源の供給を受け、相電圧を出力する。これについての具体的な動作はコンバータ制御部206及びインバータ制御部207のスイッチング制御により行われ、その詳細については非特許文献1を参照されたい。
【0009】
より具体的には、コンバータ制御部206は、コンバータ203の出力端であって、コンデンサ204に接続された直流リンク電圧を制御する。一般に、コンデンサ204は、入出力端の電力不均衡を解消するために用いられるが、電源側から供給される入力電力が負荷で消費される出力電力よりも大きい場合は直流リンク電圧が増加し、逆の場合は直流リンク電圧が減少するように動作することにより、緩衝作用をする。
【0010】
図9及び
図10は直流リンク電圧を制御するためのコンバータ制御部206の直流リンク電圧制御器の構成を示す図である。
【0011】
一般的な直流リンク電圧制御器は、適用分野に応じて選択的に、
図9に示すように積分比例制御器で構成してもよく、
図10に示すように比例積分制御器で構成してもよい。
【0012】
図9及び
図10において、Kpは比例ゲインであり、Kiは積分ゲインであり、Vdcはコンデンサ204に出力される直流リンク電圧の測定値であり、Vdc*は直流リンク電圧制御指令信号の値である。
【0013】
dq座標系の電流を基準とすると、
図9において取得されるq軸電流指令信号iq*は下記数式1のように計算され、
図10において取得されるq軸電流指令信号iq*は下記数式2のように計算される。
【数1】
【数2】
【0014】
前述したように、直流リンクに接続されたコンデンサ204の電圧は直流リンク電圧制御器により制御することができ、当該直流リンク電圧制御器の出力はq軸電流指令信号iq*である。コンバータ制御部206の電流制御器は、電流指令信号に応じて同期座標系上のd、q軸電流をそれぞれ制御するが、q軸電流成分を有効電力分電流と定義し、d軸電流成分を無効電力分電流と定義する。
【0015】
必要に応じて、コンバータ制御部206の電流制御器の動作により、交流電源端の力率も制御することができる。電源電圧と電流が正弦波の場合、力率(PF)は下記数式3のように表される。
【数3】
【0016】
ここで、e
dq^e=e
d^e+je
q^e、i
dq^e=i
d^e+ji
q^eであり、e
dq^e・i
dq^eとは同期座標系上の電源電圧複素数ベクトルと電流複素数ベクトルの内積を意味し、|e
dq^e||i
dq^e|とは各複素数ベクトルの大きさの積を意味する。上記数式3から、直流リンク電圧制御器から出力される力率制御のための同期座標系上のd軸電流指令信号値i
d^e*は下記数式4のように表される。
【数4】
【0017】
一方、コンバータ制御部206の電流制御器は、
図11に示すように構成してもよい。電流制御器は、前述した直流リンク電圧制御器から出力される力率制御により計算された電流指令信号と、電流センサにより測定された電流に基づいて、比例積分制御器及びフィードフォワード補償器を用いて電圧指令信号を出力する。
【0018】
図11において、Kpd及びKpqはそれぞれd軸電流指令信号の比例ゲイン値及びq軸電流指令信号の比例ゲイン値であり、Kid及びKiqはそれぞれd軸電流指令信号の積分値及びq軸電流指令信号の積分値である。
【0019】
このような
図11の電流制御器により出力される電圧指令信号値は次の通りである。
【数5】
【0020】
このように生成された電圧指令信号値は、コンバータ203で用いることができるように、単相静止座標系に変換されて出力されるようにしてもよい。
【0021】
一方、コンバータ制御部206を含む単位電力セルの電圧の脈動は、次のように求められる。
【0022】
まず、単位電力セルの入力電圧及び入力電流は下記数式6のように表される。
【数6】
【0023】
上記数式6において、δはコンバータ203の入力電圧と入力電流の位相差であり、w
sは入力電源周波数、tは時間、V
sは入力電圧の実効値、I
sは入力電流の実効値である。
【0024】
また、上記数式6から、単位電力セルの入力電力p
s(t)は下記数式7のように求められる。
【数7】
【0025】
この場合、単位電力セルの出力電圧及び出力電流は下記数式8のように表される。
【数8】
【0026】
上記数式8において、Φは負荷角、w
oは運転周波数、tは時間である。また、V
0は出力電圧の実効値、I
0は出力電流の実効値である。
【0027】
また、上記数式8から、単位電力セルの出力電力p
0(t)は下記数式9のように求められる。
【数9】
【0028】
上記数式9から分かるように、単位電力セルの入力電力及び出力電力は直流成分と交流成分とからなり、入力電力の交流成分は入力周波数の2倍に相当する脈動を有し、出力電力の交流成分は運転周波数の2倍に相当する脈動を有する。
【0029】
直流リンクに接続されたコンデンサ204に送られる電力は、コンバータ203の入力電力と出力電力の差により決定される。また、入力電力の平均値と出力電力の平均値が同じでなければならないので、残りの交流成分はコンデンサ204に送られる電力となる。これは下記数式10のように表される。
【数10】
【0030】
上記数式10から分かるように、直流リンクには入力周波数及び運転周波数の2倍に相当する脈動がそれぞれ発生し、入力電力及び出力電力の交流成分が大きくなると直流リンク電源電圧の脈動が大きくなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】Bin Wu著、High-Power Converters and AC Drives、Wiley InterScience(第7章)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
従って、単位電力セルの単相コンバータ203とインバータ205とからなる電力回路の直流リンク電圧(コンデンサ204に送られる電圧)には、入力端の電源周波数及び出力端の運転周波数の2倍に相当する大きな脈動が発生し、これを低減するために必要な直流リンクコンデンサの容量が大きくなる。これは、結局、システム全体の体積増加及びコストアップをもたらす。また、直流リンク電圧の脈動はインバータの出力電圧に影響を及ぼすため、システム信頼性を阻害する。
【0033】
本発明の目的は、インバータの直流リンク電圧の脈動を低減することのできる、回生型インバータ装置及び単位電力セルを用いたインバータ装置を提供することにある。
【0034】
本発明の他の目的は、インバータの直流リンクコンデンサの容量を低減することのできる、回生型インバータ装置及び単位電力セルを用いたインバータ装置を提供することにある。
【0035】
本発明のさらに他の目的は、単位電力セルの能動的な電圧制御によりインバータ出力のシステム信頼性を向上させることのできる、回生型インバータ装置及び単位電力セルを用いたインバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態によるインバータ装置は、回生型インバータ装置において、入力された単相交流電源を直流電源にして出力するコンバータ部と、前記コンバータ部から出力される直流電源を緩衝するコンデンサ部と、前記緩衝された直流電源を合成して負荷の駆動電力として出力するインバータ部と、前記単相交流電源及び前記コンバータ部から出力される直流電源に基づいて前記コンバータ部を制御するコンバータ制御部とを含み、前記コンバータ制御部は、前記コンバータ部に含まれる複数のゲートを制御するコンバータゲート信号発生部と、前記単相交流電源の基本波成分と大きさが同一であり、前記単相交流電源の基本波成分の所定倍数の周波数を有するコンバータ追加電力を、前記コンバータゲート信号発生部の入力側に接続される加算器に出力する入力端高調波電圧発生部とを含む。
【0037】
前記コンバータ制御部は、前記単相交流電源の位相情報を検出する位相検出部と、前記検出された単相交流電源の位相情報に基づいて、前記単相交流電源の電流をdq同期座標系によるd軸電流及びq軸電流に変換する座標変換部と、前記コンバータ部の出力電圧によってd軸制御電流及びq軸制御電流を発生する電圧制御部と、前記座標変換されたd軸電流及びq軸電流と前記電圧制御部から出力されるd軸制御電流及びq軸制御電流によって前記コンバータ部の制御のための第1制御電圧を発生する電流制御部とをさらに含み、前記入力端高調波電圧発生部は、前記単相交流電源と前記第1制御電圧に基づいて第2制御電圧を出力し、前記加算器は、前記第1制御電圧と前記第2制御電圧を加算して前記コンバータゲート信号発生部に出力するようにすることが好ましい。
【0038】
前記入力端高調波電圧発生部は、前記第1制御電圧及び前記単相交流電源の電圧の差を出力する減算部と、前記減算部の出力の絶対値を演算して前記基本波成分の大きさを演算する絶対値演算部と、前記演算された基本波成分の大きさに基づいて所定の大きさの高調波電圧を出力する比例制御部と、前記比例制御部から出力される高調波電圧が前記基本波成分の前記所定倍数となるように位相を調整して前記第2制御電圧にして出力する位相決定部とを含むことが好ましい。
【0039】
前記入力端高調波電圧発生部は、前記コンバータ追加電力の電圧の大きさ及び周波数が前記所定倍数を維持するようにする比例制御部を含むことが好ましい。
【0040】
前記所定倍数は、3倍であることが好ましい。
【0041】
本発明の実施形態によるインバータ装置は、前記インバータ部の出力電圧に基づいて前記インバータ部を制御するインバータ制御部をさらに含み、前記インバータ制御部は、前記インバータ部に含まれる複数のゲートを制御するインバータゲート信号発生部と、前記インバータ部の出力電圧の基本波成分と大きさが同一であり、前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の所定倍数の周波数を有するインバータ追加電力を、前記インバータゲート信号発生部の入力側に接続される加算器に出力する出力端高調波電圧発生部とを含むようにしてもよい。
【0042】
前記コンバータ追加電力の周波数における前記単相交流電源の基本波成分の所定倍数と、前記インバータ追加電力の周波数における前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の所定倍数とは、同一であることが好ましい。
【0043】
前記出力端高調波電圧発生部は、前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の大きさを演算する絶対値演算部と、前記インバータ部の出力電圧の負荷角及び前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の大きさに基づく位相調整により前記インバータ追加電力を出力する位相決定部とを含むことが好ましい。
【0044】
また、上記目的を達成するために、本発明の実施形態によるインバータ装置は、複数の単位電力セルを含むインバータ装置において、入力電源から3相電源を受けて位相変換を行い、前記各単位電力セルに単相交流電源にして提供する位相変換変圧部と、前記各単位電力セルから出力される電力を合成して3相駆動負荷に出力する出力端とを含み、前記各単位電力セルは、入力された前記単相交流電源を直流電源にして出力するコンバータ部と、前記直流電源を前記出力端に出力するインバータ部と、前記単相交流電源及び前記コンバータ部から出力される直流電源に基づいて前記コンバータ部を制御するコンバータ制御部と、前記インバータ部の出力電圧に基づいて前記インバータ部を制御するインバータ制御部とを含み、前記コンバータ制御部は、前記単相交流電源の基本波成分と大きさが同一であり、前記単相交流電源の基本波成分の所定倍数の周波数を有するコンバータ追加電力を出力する入力端高調波電圧発生部を含み、前記インバータ制御部は、前記インバータ部の出力電圧の基本波成分と大きさが同一であり、前記インバータ部の出力電圧の基本波成分の所定倍数の周波数を有するインバータ追加電力を出力する出力端高調波電圧発生部を含む。
【0045】
前記各単位電力セルは、前記3相駆動負荷の各相に対応する所定のグループに分けられて前記出力端に接続されることが好ましい。前記3相駆動負荷の相電圧は、前記所定のグループに分けられた単位電力セルの電圧の和になるように合成されることが好ましい。
【0046】
前記各単位電力セルに含まれる前記インバータ部及び前記コンバータ部は、カスケードHブリッジ構造に接続されることが好ましい。
【0047】
前記3相駆動負荷は、誘導電動機又は同期電動機の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0048】
本発明の一実施形態によれば、入力端高調波電圧発生器を用いて脈動電力の周波数を高めることにより、コンバータの直流リンク電圧の脈動を小さくすることができる。
【0049】
また、本発明の他の実施形態によれば、入力端高調波電圧発生器及び出力端高調波電圧発生器を用いて脈動電力の周波数を高めることにより、コンバータの直流リンク電圧の脈動を小さくすることができる。
【0050】
さらに、コンバータの直流リンク電圧の脈動の低減により直流リンクコンデンサの容量を低減することができ、従って、システム全体の体積減少及びコストダウンを図ることができるという効果がある。
【0051】
さらに、コンバータの直流リンク電圧の脈動の低減によりシステム信頼性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の一実施形態によるインバータ装置を含む全体システムの一例を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるインバータ装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるインバータ装置の単位電力セルの構成をより詳細に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるインバータ装置の入力端高調波電圧発生部の動作を説明するための制御図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるインバータ装置の出力端高調波電圧発生部の動作を説明するための制御図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるインバータ装置のゲート信号発生動作を説明するための制御図である。
【
図7】一般的な高圧インバータ装置の接続構成を示す図である。
【
図8】
図7の高圧インバータ装置の単位電力セルの構成を示す図である。
【
図9】
図8の単位電力セルのコンバータ制御部の直流リンク電圧制御器の構成の一例を示す図である。
【
図10】
図8の単位電力セルのコンバータ制御部の直流リンク電圧制御器の構成の他の例を示す図である。
【
図11】
図8の単位電力セルのコンバータ制御部の電流制御器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、単に本発明の原理を例示する。よって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本明細書に明確に説明又は図示されていないとしても本発明の原理を実現して本発明の概念及び範囲に含まれる様々な装置を発明することができるであろう。また、本明細書に記載される全ての条件付き用語及び実施形態は原則的に本発明の概念の理解を助ける目的でのみ用いられるものであり、本明細書に記載された実施形態及び態様により本発明の思想が制限されるように解釈されるべきではない。
【0054】
さらに、本発明の原理、観点及び実施形態、並びに特定の実施形態についての詳細な説明は、それらの構造的及び機能的均等物を含むように意図されたものと理解されるべきである。なお、これらの均等物は、公知の均等物だけでなく、将来開発される均等物、すなわち構造に関係なく同じ機能を果たすように発明された全ての素子を含むものと理解されるべきである。
【0055】
つまり、例えば本明細書のブロック図は、本発明の原理を具体化する例示的な回路の概念的な観点を示すものと理解されるべきである。これと同様に、本明細書のフロー図、状態遷移図、疑似コードなどは、コンピュータ可読媒体で実現することができ、コンピュータ又はプロセッサが明確に図示されているか否かを問わず、コンピュータ又はプロセッサにより行われる様々なプロセスを示すものと理解されるべきである。
【0056】
本発明の目的、特徴及び利点は、後述する発明の詳細な説明及び添付図面によりさらに明確になるであろう。よって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を容易に実施できるであろう。なお、本発明を説明するにあたって、関連する公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0057】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい一実施形態を詳細に説明する。
【0058】
図1は本発明の一実施形態によるインバータ装置を含む全体システムの一例を概略的に示す図である。
【0059】
図1に示すように、本発明の一実施形態によるインバータ装置701を含む全体システムは、電源入力部705、位相変換変圧部703、複数の単位電力セルa1〜c3及び3相電動機702を含む。
【0060】
電源入力部705は、電源供給業者から3相電圧を受けて位相変換変圧部703に送る。高圧インバータの場合、電源入力部705は、線間電圧の実効値が600V以上の3相電圧を受ける。
【0061】
位相変換変圧部703は、入力端から供給される電源入力部705の電力の高調波を低減して電源電流の全高調波歪率を改善し、変圧過程を行って各単位電力セルに単相電源を供給する。また、位相変換変圧部703は、電源入力部705の入力端とインバータ装置701との電気的絶縁を提供することもできる。
【0062】
また、各単位電力セルa1〜c3は、単相電力を受けて相電圧を出力する。相電圧は、各相に対応する単位電力セルa1〜c3の電圧の和になるように合成され、3相電動機702に出力されるようにしてもよい。
【0063】
よって、単位電力セルa1〜c3はグループ化される。例えば、単位電力セルグループ704aが単位電力セルa1、a2、a3を含み、単位電力セルグループ704aに含まれる単位電力セルa1、a2、a3の出力が1つの相に対応して合成され、単相電力が3相電動機702に出力されるようにしてもよい。また、各単位電力セルグループ704a〜704cの電圧は、3相電力を形成するために、120°の位相差を有するようにしてもよい。
【0064】
以下、
図2〜
図6を参照して本発明の一実施形態によるインバータ装置の単位電力セルの構成をより詳細に説明する。
【0065】
図2は本発明の一実施形態によるインバータ装置の単位電力セルの構成を示すブロック図である。
【0066】
図2に示すように、本発明の一実施形態によるインバータ装置は、入力された単相交流電源を貯蔵及び供給するインダクタ部802と、インダクタ部802の出力を直流電源に変換及び昇圧して出力するコンバータ部803と、前記昇圧された直流電源を再び交流電源に変換して出力するインバータ部805と、前記単相交流電源及びコンバータ部803の出力電力に基づいてコンバータ部803を制御するコンバータ制御部820と、インバータ部805の出力電圧に基づいてインバータ部805を制御するインバータ制御部830とを含む。
【0067】
また、コンバータ制御部820は、前記単相交流電源の基本波成分と大きさが同一であり、前記単相交流電源の基本波成分の所定倍数の周波数を有するコンバータ追加電力を出力する入力端高調波電圧発生部を含んでもよい。
【0068】
また、インバータ制御部830は、インバータ部805の出力電圧の基本波成分と大きさが同一であり、インバータ部805の出力電圧の基本波成分の所定倍数の周波数を有するインバータ追加電力を出力する出力端高調波電圧発生部を含んでもよい。
【0069】
このようなコンバータ制御部820及びインバータ制御部830の動作により、コンバータ部803から出力される直流電圧の脈動を低減することができる。
【0070】
以下、
図2を参照して説明した本発明の一実施形態によるインバータ装置の構成要素のうち、コンバータ制御部820及びインバータ制御部830について
図3を参照してより詳細に説明し、他の構成要素についてはその説明を省略する。
【0071】
図3は本発明の一実施形態によるインバータ装置の単位電力セルの構成をより詳細に示す図である。
【0072】
まず、コンバータ制御部820は、位相検出部806、座標変換部807、電圧制御部808、電流制御部809、入力端高調波電圧発生部814、第1加算器812及びコンバータゲート信号発生部810を含む。
【0073】
位相検出部806は、単位電力セルの入力電源801に接続され、入力電源801から入力される単相電力の電圧を測定して位相情報を取得し、座標変換部807に提供する。
【0074】
座標変換部807は、位相検出部806及び単位電力セルの入力電源801に接続される。座標変換部807は、位相検出部806からの位相情報に基づいて、単相静止座標系上で送られる単位電力セルの入力電源801の電流をdq同期座標系上での電流に変換する。
【0075】
電圧制御部808は、コンバータ部803の出力端の直流リンク電圧によって電流制御指令信号を生成し、電流制御部809に出力する。電圧制御部808は、コンバータ部803の出力端の直流リンク電圧から測定された電圧及び直流リンク電圧制御指令信号Vdc*に基づいて、同期座標系上のd軸電流指令信号id*及びq軸電流指令信号iq*を発生する。前記直流リンク電圧制御指令信号は、使用者から受信するようにしてもよく、メイン制御システムから受信するようにしてもよく、予め値が設定されるようにしてもよい。また、電圧制御部808は、基本波成分の電流指令信号のみを出力するためのバンドパスフィルタを含んでもよい。
【0076】
本発明の実施形態において、電圧指令信号とは、電圧制御のための特定の値の制御電圧をいい、電流指令信号とは、電流制御のための特定の値の制御電流をいう。説明の便宜上、制御電圧は電圧指令信号といい、制御電流は電流指令信号という。
【0077】
電流制御部809は、電圧制御部808及び座標変換部807に接続される。電流制御部809は、電圧制御部808から電流指令信号を受信する。また、電流制御部809は、受信した電流指令信号及び座標変換部807により座標変換された電流に基づいて電圧指令信号を生成し、生成された電圧指令信号Va*を出力する。
【0078】
コンバータゲート信号発生部810は、コンバータ部803に含まれる各電力素子、とりわけ複数のスイッチ803a〜803dを制御するためのスイッチング信号を生成し、コンバータ部803に入力する。コンバータゲート信号発生部810は、第1加算器812に接続される。コンバータゲート信号発生部810は、第1加算器812により電流制御部809の出力信号と入力端高調波電圧発生部814の出力信号とが加算された電圧指令信号を受信し、それに基づいてPWM信号を生成してコンバータ部803のスイッチング動作を制御する。
【0079】
第1加算器812は、電流制御部809の出力信号と入力端高調波電圧発生部814の出力信号を加算し、その結果信号をコンバータゲート信号発生部810に送る。
【0080】
入力端高調波電圧発生部814は、前記単相交流電源の基本波成分と大きさが同一であり、前記単相交流電源の基本波成分の所定倍数の周波数を有するコンバータ追加電力を、コンバータゲート信号発生部810の入力側に接続される第1加算器812に出力する。よって、コンバータ部803から出力される直流リンク電力の脈動を低減することができ、コンデンサ部804を小さくすることができる。このような入力端高調波電圧発生部814の動作のための具体的な構成については後述する。
【0081】
一方、インバータ制御部830は、インバータゲート信号発生部811、第2加算器813及び出力端高調波電圧発生部815を含む。
【0082】
インバータゲート信号発生部811は、第2加算器813を介して出力電圧指令信号を受信する。インバータゲート信号発生部811は、インバータ部805に含まれる各電力素子、とりわけ複数のスイッチ805a〜805dを制御するためのスイッチング信号を生成し、インバータ部805に入力する。
【0083】
第2加算器813は、出力端高調波電圧発生部815の出力信号とインバータ部805の出力電圧に対する電圧指令信号Vo*を加算した信号をインバータゲート信号発生部811に出力する。インバータ部805の出力電圧に対する電圧指令信号は、回生型インバータ方式によりインバータ部805の出力電圧をそのまま含むようにしてもよい。しかし、電圧指令信号は、必要に応じて、使用者により設定されるようにしてもよく、その他の制御システムに接続された場合、制御システムの制御によって決定されるようにしてもよい。
【0084】
出力端高調波電圧発生部815は、インバータ部805の出力電圧の基本波成分と大きさが同一であり、インバータ部805の出力電圧の基本波成分の所定倍数の周波数を有するインバータ追加電力を、インバータゲート信号発生部811の入力側に接続される第2加算器813に出力する。よって、出力周波数を高めることにより、コンバータ部803から出力される直流リンク電力の脈動をさらに低減することができ、コンデンサ部804をさらに小さくすることができる。このような出力端高調波電圧発生部815の動作のための具体的な構成については後述する。
【0085】
図4は本発明の一実施形態によるインバータ装置の入力端高調波電圧発生部814の動作を説明するための制御図である。
【0086】
図4に示すように、本発明の一実施形態によるインバータ装置の入力端高調波電圧発生部814は、第1減算部901、第1絶対値演算部902、第1比例制御部903及び第1位相決定部904を含む。
【0087】
第1減算部901は、電流制御部809から出力される電圧指令信号Va*と単相交流電源801の入力電圧との差を演算し、第1絶対値演算部902に出力する。
【0088】
第1絶対値演算部902は、第1減算部901からの出力を受け、その絶対値を演算し、比例制御部903に信号出力する。第1絶対値演算部902により演算された絶対値は、コンバータ部803の入力巻線に印加されるコンバータ電圧の基本波成分の大きさを示す。
【0089】
第1比例制御部903は、第1絶対値演算部902から受信したコンバータ電圧の基本波成分の大きさを示す絶対値信号に基づいて、その大きさが比例制御された高調波電圧を第1位相決定部904に出力する。比例定数は、例えばKであり、K値は、第1比例制御部903の出力がコンバータ電圧の基本波成分の大きさの所定倍数を維持するように決定される。
【0090】
第1位相決定部904は、位相検出部806に接続され、位相検出部806から出力される電源位相角情報を受信する。また、第1位相決定部904は、第1比例制御部903から出力される高調波電圧信号によって、その基本波成分の3倍に相当する高調波電圧の位相を決定し、決定された電圧の位相に基づいて、第1比例制御部903から出力される高調波電圧信号の位相及び座標を変換し、第1加算器812に出力する。
【0091】
図5は本発明の一実施形態によるインバータ装置の出力端高調波電圧発生部815の動作を説明するための制御図である。
【0092】
図5に示すように、本発明の一実施形態によるインバータ装置の出力端高調波電圧発生部815は、第2絶対値演算部1001及び第2位相決定部1002を含む。
【0093】
第2絶対値演算部1001は、インバータ部805から出力されるインバータ部805の出力電圧を電圧指令信号Vo*として受信し、受信したインバータ部805の出力電圧の絶対値を演算し、第2位相決定部1002に信号出力する。出力される絶対値信号は、インバータ部805の出力電圧の基本波成分の大きさを示す。
【0094】
第2位相決定部1002は、第2絶対値演算部1001から出力される電圧の大きさ信号を受信し、インバータ部805の出力電圧の基本波成分の大きさ及びインバータ部805の出力端に接続された負荷の負荷角に基づいて、インバータ部805の出力電圧の周波数の3倍に相当する高調波電圧の位相を決定する。また、第2位相決定部1002は、決定された電圧の位相に基づいて、第2絶対値演算部1001から出力される高調波電圧信号の位相及び座標を変換し、第2加算器813に出力する。
【0095】
入力端高調波電圧発生部814及び出力端高調波電圧発生部815により、入力電源及び出力電源は次のように調整される。
【0096】
まず、入力端高調波電圧発生部814の動作により、コンバータ部803の入力電力の交流成分の周波数を高めるために必要な電圧指令が生成される。当該電圧指令は、電源電流の基本波成分の大きさと同じ大きさの第3高調波電流を発生することができ、このためには、基本波電流の大きさを決定する電圧の大きさを必要とする。その大きさはコンバータ部803の入力巻線の電圧方程式である下記数式11から分かる。
【数11】
【0097】
ここで、v
a(t)はコンバータ部803の入力巻線の電圧を示す。
【0098】
上記数式11から、コンバータ部803の入力電力の電流に影響を及ぼす電圧の大きさは、コンバータ部803の入力電圧と単相入力電源v
sの電圧との差により決定されることが分かる。
【0099】
従って、入力端高調波電圧発生部814は、インダクタ部802を流れる電流に影響を及ぼす基本波電圧の大きさ及び周波数がそれぞれ3倍である電圧を、コンバータ部803を介して入力巻線に印加し、第3高調波成分の電流が流れるようにすることができる。
【0100】
また、入力端高調波電圧発生部814は、基本波電流の大きさと同じ大きさの第3高調波成分の電流が流れるようにするための電圧の大きさが周波数又は動作環境に応じて変化することがあるため、比例制御器を用いて正確に制御することができる。このような入力端高調波電圧発生部814の出力電圧指令は、電流制御部809の出力電圧指令に加算されるようにしてもよい。ここで、コンバータ部803の入力電圧、電流及び電力は、下記数式12のように表される。
【数12】
【0101】
一方、出力端高調波電圧発生部815は、インバータ部805の出力電圧に対する電圧指令信号と大きさは同じであるが周波数は3倍である電圧指令信号を、インバータ部805の出力電圧に対する電圧指令信号に追加して供給することができる。ここで、追加される電圧指令信号は、負荷角に基づいて決定されるようにしてもよい。ここで、インバータ部805の出力電圧、電流及び電力は、下記数式13のように表される。
【数13】
【0102】
また、上記数式12の電力式及び上記数式13の電力式から、コンバータ部803の直流出力端のコンデンサ部804に印加される脈動電力を計算すると、下記数式14の通りである。
【数14】
【0103】
上記数式14から、上記数式7及び数式9と比較して、従来に比べて入力電力及び出力電力の交流成分の周波数がそれぞれ増加することが分かる。
【0104】
つまり、入力端高調波電圧発生部814及び出力端高調波電圧発生部815により計算された電圧指令がそれぞれコンバータ及びインバータの電圧指令に追加されることにより、前述したような結果となることを確認することができる。これを従来の電力回路の直流リンクコンデンサにおける脈動電力である上記数式10と比較すると、直流リンク周波数が2倍大きくなったことが分かる。
【0105】
直流リンクに用いられる電解コンデンサは、数kHz未満の領域でインピーダンスの大きさが減少することがある。例えば、電力回路の入力端周波数は50/60Hzであり、出力端周波数は200Hz未満である。この場合、上記数式14のような出力が形成されると、直流リンクコンデンサのインピーダンスは脈動電力の周波数が高くなるにつれて減少することがある。
【0106】
従って、このような直流リンクコンデンサの特性により、脈動電力の周波数が高くなるほど直流リンク電源電圧の脈動が低減されるという効果を奏する。これにより、同じ負荷電力が要求され、同じ直流リンクコンデンサを有する状況での直流リンク電源電圧の脈動を低減することができ、コンデンサに要求される大きさが減少することにより、体積減少及びコストダウンを図ることができるという効果がある。
【0107】
一方、
図6は本発明の一実施形態によるインバータ装置のゲート信号発生動作を説明するための制御図であり、本発明の一実施形態によるコンバータゲート信号発生部810の構成を示す。
【0108】
なお、コンバータゲート信号発生部810及びインバータゲート信号発生部811は、同じ回路を含んでもよい。コンバータゲート信号発生部810及びインバータゲート信号発生部811は、例えば同じ単極スイッチング方式で動作するようにしてもよい。よって、以下ではコンバータゲート信号発生部810の動作を中心に説明するが、これはインバータゲート信号発生部811の動作にも同様に適用することができる。
【0109】
コンバータゲート信号発生部810は、三角波発生部601、反転部602、第3減算部603、第4減算部604、第1ゲート信号発生部605、第2ゲート信号発生部606、第1NOTゲート607及び第2NOTゲート608を含む。
【0110】
三角波発生部601は、直流リンク電圧指令信号Va*と比較するための三角波信号を生成し、第3減算部603及び第4減算部604に出力する。
【0111】
反転部602は、直流リンク電圧指令信号Va*を受信し、反転した電圧を出力する。
【0112】
第3減算部603は、直流リンク電圧指令信号Va*を受信し、三角波発生部601の出力との差演算を行い、正の値又は負の値を有する信号を第1ゲート信号発生部605に出力する。
【0113】
第4減算部604は、反転部602により反転した電圧を受け、三角波発生部601の出力との差演算を行い、正の値又は負の値を有する信号を第2ゲート信号発生部606に出力する。
【0114】
第1ゲート信号発生部605は、第3減算部603の出力に応じてスイッチ状態値を決定し、コンバータ部803のスイッチ803a(インバータの場合、スイッチ805a)に出力し、NOTゲート607により反転した状態値をコンバータ部803のスイッチ803b(インバータの場合、スイッチ805b)に出力する。
【0115】
第2ゲート信号発生部606は、第4減算部604の出力に応じてスイッチ状態値を決定し、コンバータ部803のスイッチ803c(インバータの場合、スイッチ805c)に出力し、NOTゲート607により反転した状態値をコンバータ部803のスイッチ803d(インバータの場合、スイッチ805d)に出力する。
【0116】
このような入力端高調波電圧発生部814及び出力端高調波電圧発生部815による回路内の各ゲートのスイッチングのためのゲート信号発生動作により、コンバータ部803の入力端周波数及び出力端周波数が高くなる。従って、前述したような直流リンク電源電圧の脈動が低減される効果を回路により実現することができる。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して説明したが、本発明は、前述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に定義された本発明の要旨から外れない限り、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者により様々な変形実施が可能であることはもとより、これらの変形実施は本発明の技術的思想や展望と個別に理解されるべきではない。
【符号の説明】
【0118】
803 コンバータ部
804 コンデンサ部
805 インバータ部
806 位相検出部
807 座標変換部
808 電圧制御部
809 電流制御部
810 コンバータゲート信号発生部
811 インバータゲート信号発生部
812 第1加算器
813 第2加算器
814 入力端高調波電圧発生部
815 出力端高調波電圧発生部
820 コンバータ制御部
830 インバータ制御部
901 第1減算部
902 第1絶対値演算部
903 第1比例制御部
904 第1位相決定部
1001 第2絶対値演算部
1002 第2位相決定部