特許第5922769号(P5922769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922769
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】試験用キャリア
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20140101AFI20160510BHJP
【FI】
   G01R31/26 J
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-519928(P2014-519928)
(86)(22)【出願日】2013年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2013064608
(87)【国際公開番号】WO2013183479
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2014年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-128164(P2012-128164)
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽登
(72)【発明者】
【氏名】高野 一男
(72)【発明者】
【氏名】増田 則之
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/028238(WO,A1)
【文献】 特開平5−299148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験電子部品を保持する第1部材と、
前記第1部材に重ねられて前記被試験電子部品を覆う第2部材を備えた試験用キャリアであって、
前記第1部材は、
前記被試験電子部品と電気的に接続する配線を有した基板及び前記被試験電子部品と電気的な接点をとる接点部を備え、
前記配線は、
所定の第1抵抗値をもつ第1配線部と、当該第1抵抗値より高い第2抵抗値をもつ第2配線部とを有し、
前記第1配線部の一端は前記接点部に接続されている
ことを特徴とする試験用キャリア。
【請求項2】
請求項1記載の試験用キャリアであって、
前記第2抵抗値は、
前記被試験電子部品を試験する試験装置の所定の上限出力と、前記被試験電子部品と前記試験用キャリアとの間の電気的な接点の数に応じて設定されている
ことを特徴とする試験用キャリア。
【請求項3】
請求項1又は2記載の試験用キャリアであって、
前記第1部材は前記配線の一端に電気的に接続された外部電極を備え、
前記第2配線部は、
前記外部電極より、前記被試験電子部品と前記第1部材との間の電気的な接点部分に近い側に形成されている
ことを特徴とする試験用キャリア。
【請求項4】
被試験電子部品を保持する第1部材と、
前記第1部材に重ねられて前記被試験電子部品を覆う第2部材を備えた試験用キャリアであって、
前記第1部材は、前記被試験電子部品と電気的な接点をとる接点部を複数有し、
前記接点部の抵抗値は、前記被試験電子部品を試験する試験装置の所定の上限出力と、前記被試験電子部品と前記第1部材との間の電気的な接点の数に応じて設定されている
ことを特徴とする試験用キャリア。
【請求項5】
請求項4記載の試験用キャリアであって、
前記接点部は、導電性の弾性材により形成され、
前記抵抗値は、前記弾性材の含有量で調整されている
ことを特徴とする試験用キャリア。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の試験用キャリアであって、
前記第1部材の基板は多層基板により形成されている
ことを特徴とする試験用キャリア。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の試験用キャリアであって、
前記第1部材の基板はノイズを抑制するノイズ抑制部を有する
ことを特徴とする試験用キャリア。
【請求項8】
請求項7記載の試験用キャリアであって、
前記第1部材は配線の一端に電気的に接続された外部電極を備え、
前記ノイズ抑制部は、前記外部電極より、前記被試験電子部品と前記第1部材との間の電気的な接点部分に近い側に形成されている
ことを特徴とする試験用キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイに形成された集積回路等の電子回路を試験するために、当該ダイチップが実装される試験用キャリアに関するものである。
【0002】
文献の参照による組み込みが認められる指定国については、2012年6月5日に日本国に出願された特願2012−128164号に記載された内容を参照により本明細書に組み込み、本明細書の記載の一部とする。
【背景技術】
【0003】
ベアチップ状態の半導体チップが一時的に実装される試験用キャリアとして、コンタクトシートとケースとの間の空間に、ベアチップ状態の半導体チップを挟みこむことで、一時的に半導体チップを実装する試験用キャリアにおいて、コンタクトシートが、フィルム上に、当該チップの電極パターンに対応して形成された導電性のコンタクトパッドと、コンタクトパッドに接続され、外部の試験装置とのコンタクトをとるための導電性の配線パターンにより形成されるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−263504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、試験用キャリアを用いてチップを試験する場合に、チップの試験装置は、各ピンに対して試験を可能とする信号出力を出力しなければならないため、ピンの数が多くなると、その分、試験装置の消費電力が大きくなる。そして、上記の試験用キャリアにおいて、各ピンにそれぞれ対応した信号出力が大きい場合には、試験装置の消費電力はさらに大きくなる。その一方で、試験装置の出力電力に限界がある。そのため、従来の試験用キャリアでは、多ピン化したチップに対応することができない、という問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、チップの多ピン化に対応した試験用キャリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係る試験用キャリアは、被試験電子部品を保持する第1部材と、前記第1部材に重ねられて前記被試験電子部品を覆う第2部材を備えた試験用キャリアであって、前記第1部材は、前記被試験電子部品と電気的に接続する配線を有した基板及び前記被試験電子部品と電気的な接点をとる接点部を備え、前記配線は、所定の第1抵抗値をもつ第1配線部と、当該第1抵抗値より高い第2抵抗値をもった第2配線部とを有し、前記第1配線部の一端は前記接点部に接続されていることを特徴とする。
【0008】
[2]上記発明において、前記第2抵抗値は、前記被試験電子部品を試験する試験装置の上限出力と、前記被試験電子部品と前記試験用キャリアとの間の電気的な接点の数に応じて設定されてもよい。
【0009】
[3]上記発明において、前記第1部材は前記配線の一端に電気的に接続された外部電極を備え、前記第2配線部は、前記外部電極より、前記被試験電子部品と前記第1部材との間の電気的な接点部分に近い側に形成されていてもよい。
【0010】
[4]また本発明に係る試験用キャリアは、被試験電子部品を保持する第1部材と、前記第1部材に重ねられて前記被試験電子部品を覆う第2部材を備えた試験用キャリアであって、前記第1部材は、前記被試験電子部品と電気的な接点をとる接点部を複数有し、前記接点部の抵抗値は、前記被試験電子部品を試験する試験装置の上限出力と、前記被試験電子部品と前記第1部材との間の電気的な接点の数に応じて設定されていることを特徴とする。
【0011】
[5]上記発明において、前記接点部は、導電性の弾性材により形成され、前記抵抗値は、前記弾性材の含有量で調整されてもよい。
【0012】
[6]上記発明において、前記基板は多層基板により形成されていてもよい。
【0013】
[7]上記発明において、前記基板はノイズを抑制するノイズ抑制部を有してもよい。
【0014】
[8]上記発明において、前記第1部材は前記配線の一端に電気的に接続された外部電極を備え、前記ノイズ抑制部は、前記外部電極より、前記被試験電子部品と前記第1部材との間の電気的な接点部分に近い側に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ピンの数が多くなっても、多層基板によって、被試験電子部品に近い部分の配線密度を高めることができるので、多数のピンに対応した試験用キャリアを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態におけるデバイス製造工程の一部を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明の実施形態における試験用キャリアの分解斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態における試験用キャリアの断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態における試験用キャリアの多層基板の断面図の一部である。
図5図5は、図3のV部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本実施形態におけるデバイス製造工程の一部を示すフローチャートである。
【0019】
本実施形態では、半導体ウェハのダイシング後(図1のステップS10の後)であって、最終パッケージングの前(ステップS50の前)に、ダイ90に造り込まれた電子回路の試験を行う(ステップS20〜S40)。
【0020】
本実施形態では、先ず、キャリア組立装置(不図示)によってダイ90を試験用キャリア10に一時的に実装する(ステップS20)。次いで、この試験用キャリア10を介してダイ90と試験装置(不図示)とを電気的に接続することで、ダイ90に形成された電子回路の試験を実行する(ステップS30)。そして、この試験が終了したら、試験用キャリア10からダイ90を取り出した後(ステップS40)に、このダイ90を本パッケージングすることで、デバイスが最終製品として完成する。
【0021】
以下に、本実施形態においてダイ90が一時的実装される(仮パッケージングされる)試験用キャリア10の構成について、図2図9を参照しながら説明する。
【0022】
図2図5は本実施形態における試験用キャリアを示す図である。
【0023】
本実施形態における試験用キャリア10は、図2図4に示すように、ダイ90が載置されるベース部材20と、このベース部材20に重ねられてダイ90を覆っているカバー部材60と、を備えている。この試験用キャリア10は、ベース部材20とカバー部材60との間にダイ90を挟み込むことで、ダイ90を保持する。本実施形態におけるダイ90が、本発明における被試験電子部品の一例に相当する。
【0024】
ベース部材20は、ベースフレーム30と、ベースフィルム40と、多層基板50を備えている。本実施形態におけるベースフィルム40が、本発明における第1部材の一例に相当する。
【0025】
ベースフレーム30は、高い剛性(少なくともベースフィルム40よりも高い剛性)を有し、中央に開口31が形成されたリジッド基板である。このベースフレーム30を構成する材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ガラスエポキシ樹脂、セラミックス、ガラス等を例示することができる。
【0026】
一方、ベースフィルム40は、可撓性を有するフィルムであり、中央開口31を含めたベースフレーム30の全面に接着剤(不図示)を介して貼り付けられている。このように、本実施形態では、可撓性を有するベースフィルム40が、剛性の高いベースフレーム30に貼り付けられているので、ベース部材20のハンドリング性の向上が図られている。
【0027】
またベースフィルム40は多層基板50を支持する基板でもある。
【0028】
なお、ベースフレーム30を省略して、ベースフィルム40及び多層基板50のみでベース部材20を構成してもよい。
【0029】
多層基板50は、多層に形成された基板であって、ベースフレーム30の側面のうち、ダイ60と対向する面の中央に、接着剤(不図示)を介して貼り付けられている。多層基板50は、ベースフィルム40に形成された配線パターン42と、ダイ90と接点をとるバンプ54との間で、電気的な導通を形成するための配線回路を有している。
【0030】
図2に示すように、試験用キャリア10は、ベースフィルム40の側面の中央部分にダイ90を実装する。そして、ダイ90のピンが数百を超えた多数のピンになると、当該中央部分における配線回路のレイアウトに対して高密度化が要求される。そのため、本例では、高密度が要求される部分を多層化にすることで、多数ピンのダイ90に対応するようにしている。その一方で、ベースフィルム40の外縁側では、中央部分に比べて、配線レイアウトを形成するスペースが大きい。そのため、ベースフレーム30の外縁側には、多層基板50を設けずに、ベースフレーム40の表面上に配線パターン42を形成している。すなわち、ベースフィルム40の表面上において、多層基板50の外側に配線パターン42が形成されている。
【0031】
そして、多層基板50は、ダイ90と対向する対向面に沿う方向において、ダイ90の表面より大きく、カバーフレーム70の中央の開口71より小さくなるように形成されている。言い換えると、多層基板50は、カバーフレーム70及びダイ90とそれぞれ対向する多層基板50の対向面の面積は、ダイ90の対向面の面積より大きく、かつ、開口61の対向面の面積より小さくなるように、形成されている。
【0032】
ダイ90は、カバーフレーム70の開口61に張られたカバーフィルム80と、多層基板50との間で狭持されるため、配線密度はこの間で密となる。また、一般的に、多層基板50はベースフィルム40よりコストがかかる。そのため、多層基板50の大きさを上記のように規定することで、基板のコストを抑えつつ、試験用キャリア10の多ピン化を実現している。
【0033】
図5に示すように、ベースフィルム40は、フィルム本体41と、そのフィルム本体41の表面に形成された配線パターン42と、外部電極43とを有している。フィルム本体41は、例えば、ポリイミドフィルム等から構成されており、配線パターン42は、例えば、フィルム本体41上に積層された銅箔をエッチングすることで形成されている。
【0034】
配線パターン42は、カバー部材60と対向する対向面に沿う方向において、多層基板50の配線52より外側の位置に形成されている。上記のとおり、ベースフィルム40の表面上で、多層基板50との接着する部分の外側では、例えば、図2に示すように放射状に配線パターンを形成した場合に、配線間の距離を確保することができるため、外側では、ベースフィルム上の配線パターンで42により配線を形成している。
【0035】
図5に示すように、配線パターン42の一端は、ボンディングワイヤ44などの配線により多層基板50に接続されている。配線パターン42の他端には、外部端子43が形成されている。この外部端子43には、ダイ90に形成された電子回路の試験の際に、試験装置のコンタクタ(不図示)が電気的に接触して、試験用キャリア10を介してダイ90が試験装置に電気的に接続される。
【0036】
なお、配線パターン42は、上記の構成に限定されない。特に図示しないが、例えば、配線パターン42の一部を、ベースフィルム40の表面にインクジェット印刷によってリアルタイムに形成してもよい。或いは、配線パターン42の全てをインクジェット印刷によって形成してもよい。
【0037】
また、外部端子43の位置は、上記の位置に限定されず、外部端子43をベースフィルム40の下面に形成してもよい。なお、本実施形態における配線パターン42が本発明における第1配線部の一例に相当する。
【0038】
また、特に図示しないが、ベースフィルム40に加えて、カバーフィルム80に配線パターンや外部端子を形成したり、カバーフレーム70に外部端子を形成してもよい。
【0039】
また、ボンディングワイヤ44の代わりに、インクジェットなどによる描画方式で形成された配線を用いてもよい。
【0040】
図3図5に示すように、多層基板50は、基板本体51と、配線52と、抵抗部53と、バンプ54とを備えている。多層基板50は、基板本体51を構成する絶縁体と配線52とを層状に積み重ねた基板である。ベースフィルム40と異なり、多層基板50は層状に形成されているため、基板本体51の表面に限らず、内層に配線52のパターンが形成されている。
【0041】
配線52は、基板本体51の各層に応じて形成された配線であり、各配線52の一端はバンプ54に接続され、他端は、ボンディングワイヤ44を介して、配線パターン42に接続されている。配線42は、ダイ90の測定ピンの数と対応するように形成されている。多層基板50は、基板本体51に柔軟性を持たせたようなフレキシブル基板でもよく、また、リジッド基板であってもよい。配線52は、銅などの低抵抗の材料で形成されている。
【0042】
抵抗部53は、高抵抗の部分であって、配線52の一部に形成されている。抵抗部53の抵抗値(本発明における第2抵抗値)が配線52の抵抗値(本発明における第1抵抗値)より高くなるように、抵抗部53は形成されている。また抵抗部53の線路長は配線52の線路長に比べて十分に短くすることで、試験装置から送信され、配線52を伝送する信号への影響を少なくし、信号の減衰を防ぐことができる。なお抵抗部53の長さは、抵抗値を計算する際に、分布定数回路で扱うよりも、集中定数回路で扱えるほどに、高周波の信号波長よりも十分に短い長さである。
【0043】
抵抗部53は、ニクロムやタンタル等により形成されている。なお、抵抗部53は、単位長さあたりの抵抗値を、配線42の単位長さあたりの抵抗値より大きくなるように、形成されてもよい。本実施形態の抵抗部53の抵抗値が本発明の第1抵抗値の一例であり、配線52の抵抗値が第2抵抗値の一例となる。
【0044】
ここで、抵抗部53の抵抗値と測定ピンとの関係について説明する。ダイ90を試験する試験装置には、出力できる最大の電力(定格電力)が装置毎に予め決まっている。ダイ90の試験時には、出力電力が測定ピン毎に分散されるよう、信号出力が配線52を通り、ダイ90のピンに入力される。この時、ダイ90の試験を可能とするための、信号出力の電圧の下限値(1ピンあたりの下限電圧)は予めきまっており、例えば1.5〜2.0Vである。
【0045】
そして、試験用キャリア10の多ピン化を実現するためには、多くのピン、それぞれに対して、上記の下限値以上の電圧を入力しなければならず、試験装置に対して要求される電力は大きくなってしまう。その一方で、上記のとおり、試験装置の定格電力(上限電力)は決まっている。
【0046】
そのため、本例では、各ピンに対する信号出力の電圧を下限値以上にしつつ、各信号出力の電流を小さくすることで、各ピンの消費電力を抑える。そして、本例は、各信号出力の電流を小さくするために、抵抗部53を多層基板50に設けている。
【0047】
試験装置の定格出力を、本例の試験キャリアのピン数で除算すると、各ピンへの信号出力が算出される。そして、各ピンの信号出力の下限電圧はきまっているため、当該各ピンへの信号出力を下限電圧で除算することで、抵抗部53に必要な抵抗値が算出される。すなわち、抵抗部53の抵抗値を算出された当該抵抗値以上の値に設定することで、各ピンの信号出力を下限電圧以上にしつつ、試験装置の消費電力を定格電力以下にして、多ピンのダイ90を試験することができる。
【0048】
これにより、抵抗部53の抵抗値は、試験装置の定格電力と、ダイ90と試験用キャリア10との電気的な接点であるピンの数に応じて設定されている。なお、抵抗部53の抵抗値について、試験装置の消費出力に余裕をもたせるために定格電力より低い出力電力(当該出力電力を上限電力とする)から、ピン数で除算することで、各ピンへの信号出力を算出し、算出した信号出力を信号出力の下限電圧で除算した値を、抵抗値として設定してもよい。
【0049】
また、抵抗部53は、配線52の一端に配線パターン42を介して電気的に接続されている外部端子43よりも、バンプ54に近い側に形成されている。また、好ましくは、抵抗部53は、配線52において、配線52の両端のうち、配線パターン42に接続された一端よりも、バンプ54に接続された他端に近い側に形成され、パンプ54になるべく近い位置に形成されてもよい。
【0050】
本例と異なり、抵抗部53をバンプ54から離れた位置に形成した場合には、抵抗部53とバンプ54との間の配線52の寄生成分により、信号が劣化(減衰)してしまうため、ダイ90の評価に影響を及ぼす。一方、抵抗部53をバンプ54に近づけることで、当該寄生成分を少なくすることができるため、パンプ54からダイ90に入力される信号の劣化(減衰)を抑制することができる。本実施形態における抵抗部53が本発明における第2配線部の一例に相当する。
【0051】
バンプ54は、多層基板50とダイ90との電気的な導通を図るための部材であって、ダイ90の電極パッド91の配列と対応しつつ、基板本体51の表面上に設けられている。バンプ54は、例えば銅やニッケルを含んだ導電性の弾性材により形成されており、例えば、セミアディティブ法によって形成されている。またバンプ54は、基板本体51の表面上であって、配線52の一端に接続されている。本実施形態におけるバンプ54が本発明における接点部の一例に相当する。
【0052】
図2図4に示すように、カバー部材60は、カバーフレーム70と、カバーフィルム80と、を備えている。本実施形態におけるカバー部材60が、本発明における第2部材の一例に相当する。
【0053】
カバーフレーム70は、高い剛性(少なくともベースフィルム40よりも高い剛性)を有し、中央に開口71が形成されたリジッド板である。このカバーフレーム70は、例えば、ガラス、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ガラスエポキシ樹脂、セラミックス等から構成されている。
【0054】
一方、本実施形態におけるカバーフィルム80は、ベースフィルム40よりも低いヤング率(低い硬度)を有し且つ自己粘着性(タック性)を有する弾性材料から構成されたフィルムであり、ベースフィルム40よりも柔軟となっている。このカバーフィルム80を構成する具体的な材料としては、例えばシリコーンゴムやポリウレタン等を例示することができる。ここで、「自己粘着性」とは、粘着剤や接着剤を用いることなく被粘着物に粘着することのできる特性を意味する。
【0055】
なお、カバーフィルム80とベースフィルム40の双方が自己粘着性を有してもよい。
【0056】
図2図4に戻り、カバーフィルム80は、中央開口71を含めたカバーフレーム70の全面に接着剤(不図示)によって貼り付けられている。本実施形態では、柔軟なカバーフィルム80が、剛性の高いカバーフレーム70に貼り付けられているので、カバー部材60のハンドリング性の向上が図られている。
【0057】
以上に説明した試験用キャリア10は、次のように組み立てられる。
【0058】
すなわち、先ず、カバー部材60を反転させて、電極パッド91が上方を向いた姿勢でカバーフィルム80の上にダイ90を載置する。なお、図9に示すように、ベースフィルム40に自己粘着性が付与されている場合には、多層基板50上にダイ90を載置する。
【0059】
この際、本実施形態では、上述のように、カバーフィルム80が自己粘着性を有しているので、ダイ90をカバーフィルム80の上に載置するだけで、ダイ90をカバーフィルム80に仮止めすることができる。
【0060】
次いで、カバー部材60の上にベース部材20を重ね合わせて、ベースフィルム40及び多層基板50とカバーフィルム80との間に形成された収容空間内にダイ90を収容して、ダイ90を挟み込む。
【0061】
この際、本実施形態では、カバーフィルム80が自己粘着性を有しているので、ベースフィルム40とカバーフィルム80とを密着させるだけでこれらが接合され、ベース部材20とカバー部材60とが一体化する。
【0062】
また、本実施形態では、カバーフィルム80がベースフィルム40よりも柔軟となっており、ダイ90の厚さ分だけカバーフィルム80のテンションが上昇する。このカバーフィルム40のテンションによって、ダイ90がベースフィルム40に押し付けられるので、ダイ90の位置ずれを防止することができる。
【0063】
なお、ベースフィルム40において配線パターン42が形成されている部分にレジスト等の樹脂層を形成してもよい。これにより、配線パターン42の凹凸を軽減されるので、ベースフィルム40とカバーフィルム80との接合が強化される。
【0064】
以上のように組み立てられた試験用キャリア10は、特に図示しない試験装置に運ばれて、当該試験装置のコンタクタが試験用キャリア10の外部端子44に電気的に接触し、試験用キャリア10を介して試験装置とダイ90の電子回路とが電気的に接続されてダイ90の電子回路の試験が実行される。
【0065】
なお、本発明の変形例として、バンプ54を抵抗部53のように高抵抗にしてもよい。バンプ53の抵抗値は、バンプ53に含まれる導電材の含有量を調整することで設定される。そして、バンプ53の抵抗値は、抵抗部53と同様に、試験装置の定格電力と、ダイ90と試験用キャリア10との電気的な接点であるピンの数に応じて設定されている。これにより、1ピンあたりの消費電力を下げることができ、多ピン化に対応した試験用キャリア10を実現することができる。
【0066】
また本例は、多層基板50に、試験用の信号に影響を及ぼすようなノイズを抑制するためのノイズフィルタを設けてもよい。ノイズフィルタは例えばコンデンサを含む回路で構成されている。上記のように、試験用キャリア10は多層基板50を備えているため、当該多層基板50に回路機能を持たせることができる。そして、その回路機能の一例として、ノイズフィルタを多層基板50に設けている。本実施形態に係るノイズフィルタが本発明のノイズ抑制部の一例に相当する。
【0067】
また、上記ノイズフィルタは、配線52において、配線52の一端に配線パターン42を介して電気的に接続されている外部端子43よりも、バンプ54に近い側に形成されてもよい。また、好ましくは、抵抗部53は、配線52において、配線52の両端のうち、配線パターン42に接続された一端よりも、バンプに接続された他端に近い側に形成されてもよい。これによりダイ90の近傍に、ノイズフィルタを配置することができ、ノイズ抑制効果を高めることができる。
【0068】
なお、多層基板50は必ずしも上記の大きさに規定する必要はなく、また、ベースフィルム40の代わりに、ベースフレーム30に多層基板50を載置してもよい。また、ダイ90の多ピンに対して、ベースフィルム40の表面上に形成された配線パターン42を実現できる場合には、多層基板50を省略してもよい。
【0069】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0070】
10…試験用キャリア
20…ベース部材
30…ベースフレーム
40…ベースフィルム
41…フィルム本体
42…配線パターン
43…外部電極
44…ボンディングワイヤ
50…多層基板
51…基板本体
52…配線
53…抵抗部
54…バンプ
60…カバー部材
70…カバーフレーム
71…開口
80…カバーフィルム
90…ダイ
91…電極パッド
図1
図2
図3
図4
図5