(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
精密機械設計の分野において一般的に遭遇する問題は、異なる熱膨張係数(coefficients of thermal expansion:CTE)から成る2つの本体を、温度変化および付随する寸法の変化に直面して、該2つの本体の相対位置を維持するような方法で取り付けおよび装着するための要件である。一般に、その取り付け方法は、該2つの本体の外部の基準フレームに対する注視点の動きを防ぐように、歪を防ぐためおよびこの注視点の位置を拘束するために、該2つの本体間の相対的な寸法の変化に適応させなければならない。
【0003】
図1は、上記の要件を満たす拘束部100の可能性のある構成の一つを示す。基準フレーム(例えば、機械的な基準フレーム)に対する本体105の膨張は、熱中心(thermal center:TC)として知られている一点を除いて、該本体の全てのパーツと該基準フレームとの間に相対的変位をもたらす。この点は、拘束ラインに垂直なラインの交点に位置する。該熱中心は、これが、必要な熱的非感受性を得るためこの点の寸法の不変性を利用するために、そこに機器のプローブ(即ち、ツール)が配置される点であるということで重要である。
【0004】
図2は、他方に対して一方の本体を拘束する拘束システム200が、それらの拘束部の幾何学的配置によって画定された熱中心を有していることを示す。キネマティックマウントの実施形態の2つの例は、それぞれマクスウェルクランプおよびケルビンクランプ210/215および250である。マクスウェルクランプの幾何学的配置210/215は、そのTCが、例えば、妨げられていない該マウントのある部分において、該マウントの中心と一致しているため、多くの場合、ケルビンクランプ220よりも好適である。
図3は、対称的なマクスウェルクランプ300と対照的な、改良されたマクスウェルクランプの幾何学的配置300’,300’’を示す。そのTCの位置は、拘束部C2およびC3の幾何学的配置、例えば、2つのV字状溝の方向性を変えることによって変更することができる。これらのマウントは、その拘束方向に対して直角の方向に沿った界面での摩擦がない場合にのみ、理想的なパフォーマンスが実現される状態で、該本体間での相対的な寸法の変化に適応させることについて、該界面における滑動に依存する。摩擦がある場合には、その挙動は予測し難く、および理想の挙動からの逸脱が観測される可能性がある。該拘束部における剛性(すなわち、それが加えられた力に対応する変形に耐える程度)と滑動方向は、通常は小さな相対運動の場合、拘束部の6つ全ての点について同じである。より大きな運動の場合、または、滑動方向における摩擦をなくしたか最小限にした構成においては、該剛性は、本質的にゼロである。
【0005】
図4Aおよび
図4Bは、多くの場合、2つの本体間で、コンプライアント接続要素C1,C2,C3を用いるキネマティックマウント400を構成するために用いられる別のアプローチを示す。コンプライアント要素C1,C2,C3は、その拘束方向において高い剛性を、残りの並進運動方向および回転方向において高い適合性を実現できるようにデザインされている。
図3に示す対称的なマクスウェルクランプの擬似運動学的たわみ部の均等物を
図4Aおよび
図4Bに示す。
図4Aは、該マクスウェルクランプの擬似運動学的たわみ部の均等物を生じさせる1つのたわみ構成C1,C2,C3を示す。
図4Bは、
図4Bに示す拘束パターンの平面図を示す。
図4Aおよび
図4Bの各々においては、それぞれの熱中心が図示され、および「滑動方向」または最大の適合性の方向を画定する(点線の)ラインの交点に位置する。弾性部材C1,C2,C3の形状に基づいて、2つの方向、すなわち、拘束方向k
Tおよび滑動方向k
Rにおける剛性は、個々のコンプライアント要素C1,C2,C3の幾何学的配置によって決まる。従来の実施形態においては、コンプライアント要素C1,C2,C3は、公称的には同一であり、および同じ剛性特性を有している。ここでもまた、滑動接点を用いる実施形態のように、TCの位置は、コンプライアント要素C1,C2,C3の配置によって決まる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
様々な図面における同様の参照符号は、同様の構成要素を示すものとする。
本発明のいくつかの実施形態において、拘束された対象物の熱中心の位置は、該拘束物の剛性を制御することによって制御される。対照的に、従来の多くのアプローチは、拘束部の幾何学的配置の制御に依存している。
【0015】
図5Aおよび
図5Bは、マクスウェルクランプのたわみ部均等物500に対して、熱中心(「TC」)をどのように操作できるかを示す。
図5Aにおいて、TC512の位置は、径方向および接線方向における3つ全ての拘束部C1,C2,C3の剛性は、それぞれ同じk
Rおよびk
Tであることから、拘束部C1,C2,C3の位置および方向によって決まる。対照的に、
図5Bにおいては、径方向および接線方向の剛性k
Riおよびk
Ti(i=1,…,3)は、もはや等しくはなく、その結果として、TCは、拘束部の幾何学的配置によって決まる位置512から、該剛性の相対値で決まる他の点514に移動する。上記で用いられた実施形態は、3つの拘束部C1,C2,C3(および関連する6つの剛性)を有しているが、この方法は、一般的であり、的確な数の拘束部よりも多く有する状況、例えば、過拘束の状況にまで拡大適用することができる。
【0016】
この能力は、例えば、複数の性能要件(例えば、熱安定性、動的性能、ベース歪みからの分離等)の同時最適化を必要とする設計上の問題の解決において、光学センサマウントの設計者に追加的な「ノブ」を与える。これらの要件は、多くの場合、矛盾しており、そのため、それらの要件を同時に実現することを困難にしている。この実施形態は、別の構成要素または特性との干渉が、拘束部を所望の位置または方向に配置することを困難にし、それによって、拘束部の幾何学的配置だけに基づいて、TCを所望の位置に配置することができなくなるという、一般的に遭遇する状況であろう。
【0017】
この明細書に記載されている実施形態は、熱中心を所望の位置に戻すとともに、他の設計制約条件を満たすために、以下に詳細に説明するように、光エンコーダアプリケーションの設計において、該熱中心の位置を操作する必要性に対応するように構成されている。このことは、予測可能な方法で、剛性を意図的に操作して、熱中心の位置を変えるという一般的概念をもたらした。
【0018】
本願明細書における記述は、2次元平面における熱中心の位置の操作について記載しているが、その同じ原理を3次元にも拡大適用することができる。さらに、本願明細書に記載されている剛性の操作は、コンプライアント部材の寸法を変えることによって、該部材で構成された拘束部の剛性を調節することに基づいているが、剛性制御の他のメカニズムも想定することができる。例えば、ヘルツ接触の接触剛性は、予圧を操作することによって調節することができ、コンプライアント要素の剛性は、軸方向荷重を変えること、境界条件(クランピング、負荷位置、材料)を変えること、および弾性係数の熱依存を利用すること等によって調節することができる。
【0019】
次に、上記の定性的な説明をサポートする計算について説明する。ここで提示する数理処理は、一般的であり、および任意の数の拘束部を備える本体に適用される。この解析は、いくつかの仮定、すなわち、(i)該拘束部の平面内の拘束された本体の変形は主要因ではないことに基づいている。ここでの仮定は、該拘束部の剛性は、該本体の剛性よりも著しく低く、それによって、剛体としてのその取り扱いを保証するということである。(ii)該解析は、原理的には、3次元のシステムに拡大適用することができるが、2次元の拘束システムに制約される。ここで導出された式は、有限要素シミュレーションによって実証される。
【0020】
図6は、総数Nの拘束部C1,C2,…,CNとともに、本体605を含む一般化拘束システム600を示す。各拘束部の位置「i」は、原点0を有する全体座標系におけるその座標(x
i,y
i)によって決まる。同様に、熱中心TCの座標は、同じ座標系における(x
TC,y
TC)によって与えられる。各拘束部iにおける剛性は、それぞれ径方向(または、法線方向)および接線方向の剛性k
Riおよびk
Tiに関して表される。さらに、径方向の剛性は、局所座標系のx軸に沿って方向付けされると仮定される。局所座標系の方向は、局所座標系のx軸と、全体座標系の対応する軸との間の角度を表す角度θ
iによって表される。恒例により、反時計回りの方向の回転を正方向と仮定する。
【0021】
各拘束部における剛性k
1は、その拘束部の局所座標系における剛性テンソルに関して表すことができ、
【0023】
そして、i番目の拘束部に関する全体座標系における剛性は、
【0024】
【数2】
によって与えられ、ただし、回転行列R(θ
i)は、
【0026】
式(0.1)および式(0.3)を式(0.2)に代入すると、
【0027】
【数4】
ここで、熱中心(x
TC,y
TC)の位置を、x方向およびy方向における力平衡に基づいて導出することができる。所定の方向における各拘束部で生成される力は、その拘束部の歪みと対応する剛性との積である。その変位もまた、該ベースと、拘束された対象物との間の示差温度ΔTの変化と、差CTEαと、TCからの拘束部の距離とに比例する。x方向およびy方向における変位に対するΔx
iおよびΔy
iは、それぞれ、
【0030】
【数6】
によって与えられる、単に、剛性テンソルと変位ベクトルとの積である。
【0031】
式(0.5)を式(0.6)に代入すると、各拘束部における力成分に対する式、すなわち、
【0035】
これらの方程式の解は、拘束部C1,C2,…,CNの位置が定義されている同じ座標系内の熱中心x
TCおよびy
TCの位置に対する座標をもたらす。熱中心TCの位置は、予想通りに、温度の変化と膨張係数の両方に実質的に無関係であることが分かる。非常に大きな温度の変化に対しては、いくつかのカップリングが生じる可能性がある。それは、該拘束部の幾何学的配置及び剛性の一次の関数である。上記の方程式は、該拘束部の剛性に対称性がある場合に、何らかの寸法の変化が同時に生じる剛体の回転を含んでいないが、この回転は、一般的に、小さな温度変化に対しては小さくなりやすい。その回転の大きさは、温度変化ΔTとCTEαに比例する。この回転を考慮せねばならず、特定の適用に関するその効果をその影響について判断するため解析しなければならない。多くの実際の適用において、例えば、回転対称光学系の光軸の位置の断熱化において、それらの回転は、全く重要ではない。
【0036】
上述した解析は、3次元のケースに、すなわち、3次元におけるTCの位置の制御のために拡大適用することができる。この場合、各拘束部は、3つの剛性成分を有し、および一般的に、TCの位置と、3つの剛体の回転を解くには、6つの方程式が必要である。それらの方程式は、3つの座標方向における力平衡方程式と、座標軸に関するモーメント平衡方程式をゼロに設定することによって得ることができる。また、ここでは、該剛性の変換は、3つの回転を伴う。
【0037】
上述した方法は、エンコーダスケールに基づいて、マイクロリソグラフィーシステムにおけるウェーハステージの相対的位置の変化をモニタするために用いられる光エンコーダヘッド用マウントに適用することができる。干渉型エンコーダシステムを含む多数の光エンコーダシステムが、レズリー エル.デック(Leslie L.Deck)らによる「干渉型エンコーダシステム(INTERFEROMETRIC ENCODER SYSTEMS)」という名称の米国特許出願公開第2011/0255096号明細書に開示されており、その内容は、参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。エンコーダヘッドの熱的性能は、重要な性能パラメータとなる可能性があり、また、本願明細書に開示されている方法は、所望の性能を実現するための、熱的に誘導される寸法変化を制御するための手段をもたらす。
【0038】
エンコーダヘッドアセンブリにおける熱的不安定性は、主に3つの原因、すなわち、該光学系の屈折率の変化および該光学系の物理的寸法の変化、測定データムの位置の変化をもたらす該光学系の全体的動作および光学アセンブリ全体の全体的動作によって誘導される光路長(optical path length:OPL)変化に起因する。この明細書で説明した方法は、最後の要因から生じる熱的不安定性動作を制御する。
【0039】
図7は、(エンコーダヘッド、ヘッドまたはエンコーダとも呼ばれる)エンコーダヘッドアセンブリ700の概略を示す。エンコーダヘッド700は、そのエンコーダマウントに取り付けられている2つの干渉計アセンブリ(干渉計1及び干渉計2)を含み、該エンコーダマウントも同様に、エンコーダ700がその中で使用されるマシンの構造物に取り付けられている。
図16に図示されている実施形態において、エンコーダヘッド700/1826は、リソグラフィーツール1800内で用いられる。この実施形態において、エンコーダヘッド1826のエンコーダマウントは、そのエンコーダスケールを含むリソグラフィーツール1800の機械的な基準フレームに機械的に連結されている。例えば、該機械的な基準フレームはさらに、該エンコーダスケールがマスクステージ1816上に配置される場合、露光ベース1804と、マスクステージ1816とを含む。別法として、または、追加的に、該機械的な基準フレームはさらに、該エンコーダスケール(または、追加的なエンコーダスケール)がウェーハステージ1822上に配置される場合、露光ベース1804およびウェーハステージ1822を含む。ここでまた
図7を参照すると、ヘッドアセンブリ700は、それぞれXZ方向およびYZ方向における変位を感知する干渉計1および2に対応する2つの測定データムM
1およびM
2を有している。(Z方向は、このページに直角である。)干渉計1および2は、残りの直交する面内方向における変位に反応せず、例えば、干渉計1は、Y方向の変位に反応せず、および干渉計2は、X方向に変位に反応しない。一般に、該マウント構造は、好ましくは、いくつかの要件を同時に満たす。
【0040】
ヘッドアセンブリ700に対する第1の要件は、それぞれの感知方向におけるマシンフレーム上の固定データムに対する測定データムM
1およびM
2の動きを制御することに関連している。例えば、動きは、M
1およびM
2それぞれに対してX方向およびY方向で制御すべきである。機械的な基準フレームとも呼ばれる上述したマシンフレームは、その中でヘッドアセンブリ700が用いられるマシンの一部である。
【0041】
第2の要件は、該マウントと内部の該光学系との間の熱的に誘導される歪みを最小限にすること、または該歪に適応することに関連している。このことは、応力が誘導する係数変化、連結ラインの完全性の安定性およびメンテナンスによる該マウントおよびOPLの変化に対する該光学系の動きを最小限にすることに関して重要である可能性がある。
【0042】
第3の要件は、該マウントと、該装置が取り付けられる(機械的な基準フレームとも呼ばれる)該マシンフレームとの間の相対的熱歪みを最小限にすること、または、該歪に適応することに関連している。このことは、大きな応力の蓄積、および結果として生じる該マウントの変形、ならびに該マウントの非決定性の動きを防ぐことに対して重要である可能性がある。
【0043】
第4の要件は、様々な光学要素の全体的動作を最小限にすることに関連している。このことは、(その内容を、参照によって本願明細書に組み込むものとする、Deckらによる米国特許出願公開第2011/0255096号明細書に開示されているような)X方向およびY方向における変位の測定の熱膨張の特性である光学系のコモンモード動作を否定する固有の測定原理により、この適用における第2の留意事項になる可能性がある。この状況は、面外(Z)方向には当てはまらない。
【0044】
第5の要件は、動的性能要件を満たすために、マウントに適切な剛性を与えることに関連している。
いくつかの実施形態において、測定点M1およびM2の所要の制御は、(
図7に両矢印で示す)干渉計1および2の一方向性の面内感受性とともに、温度変化時に変わらない位置に、測定点M1およびM2を設けることによって対処される。このことは、拘束部C1,C2およびC3の所定の構成、例えば、該エンコーダマウントと、(機械的な基準フレームとも呼ばれる)該マシンフレームとの間の接続部によって実現され、その一つの可能性のある構成が
図7に示されている。拘束部C1,C2およびC3は、この場合、該拘束部の、該マシンフレームである「地面」への取付けを表す直線状の縁部に沿ってハッチングを伴う半円形として図示されている。拘束部C1,C2およびC3は、図示された点における概念上の切取り部内で該アセンブリに接触する減摩性ベアリングアセンブリであると考えられる。これらの拘束部C1,C2およびC3は、該接点において高い垂直剛性を有し、および該接線方向において実質的にゼロの剛性および摩擦を有しており、すなわち、膨張中に、該接線方向において、該接点には抵抗力が生じない。
【0045】
図8は、熱膨張時のエンコーダヘッドアセンブリ800の動作を示す。
図8に示すように、エンコーダマウント805上には、膨張時に変わらない点が一点ある。この点は、熱中心(TC)と呼ばれ、および測定点M
2と一致するように選択され、それによって、この点の、膨張時の面内運動に対する熱的感受性が実質的になくなる。さらに、
図8に示すように、TCに加えて、拘束部C1,C2およびC3の幾何学的配置によっても決まる一方向性の不変の2つのラインがある。それらは、ラインAA’およびBB’によって表され、膨張は、それらに沿って一方向であり、およびそれぞれX方向およびY方向のみに沿って起きる。他の測定点M
1のY方向における所要の熱的感受性は、ラインAA’に対してこの点を通過するように配置することによって実現される。その結果として、干渉計1は、その感受性方向に沿った運動に実質的に遭遇せず、熱的に誘導される運動は、その非感受性方向と一致する方向に限定される。
【0046】
上記で開示した方法は、熱変形により誘導された、拘束部の箇所における接線力の不安定な変化がない場合に適用することができる。該接線力は、拘束部C1,C2およびC3における摩擦または接線方向の剛性によって生じる。不安定な力が存在する場合、以下に記載されているように、該力の均衡を取って、熱中心の位置を有効に変える静的平衡を実現するには、該本体の剛体運動が必要である。
【0047】
上述した第1および第3の要件は、そのデザインに、不平衡な力をもたらして、その結果として、熱中心の所望の位置からのずれを生じさせるものに至らせる可能性がある。この状況は、以下に記載されているような様々な境界における示差熱膨張に適応する必要性から生じる。そこでの膨張差を不作用にしなければならない第1の境界は、マウント805と該光学系との間にある。このことは、マウント805と光学素子との間のCTEの不一致が最小限になるように、マウント805の材料を選択することによって調整される。このことは、〜8.4ppm/KのBK7光学系のCTEに一致するような8.5〜9ppm/KのCTEを有するチタン合金(例えば、Ti6Al4V)の選択によって実現される。上述した第3の要件は、相対的歪みをなくすのではなく、該相対的歪みに適応する手段を設けることによって対処される。このことは、アルミナマシンフレームが、チタンのCTEとは著しく異なる〜5.4ppm/KのCTEを有するということから必然的に生じる。その適応は、所要の方向に該拘束部を備えると同時に、熱的に誘導された示差的な寸法の変化に適応するために必要な適合性を備え、および摺動界面における摩擦の非決定性作用をなくす方法でそうする戦略的に配設されたたわみ要素から成る手段によって実現される。
【0048】
図9は、エンコーダヘッドアセンブリ900のための拘束部パターンのたわみ部均等物を示す。この均等物は、回転要素拘束部が、マウント905との接点において、法線方向に非常に高い剛性を有し、および該法線に直角な方向にゼロまたは非常に低い剛性を有するという概念に基づいている。
図9に示すたわみブレードC1,C2およびC3は、ブレードC1,C2およびC3の面に一致する拘束方向に高い剛性を有し、およびブレードC1,C2およびC3に垂直な方向に比較的低い剛性を有するように配置される。また、該回転要素拘束部と同様に、たわみ部C1,C2およびC3から成るこの構成もまた、より少ない程度に小さな面内回転および面外回転を可能にする。要約すれば、小さな撓みの場合、たわみ部C1,C2およびC3は、異なる力特性であっても、該回転要素または摺動接点と同じ拘束部および自由度を呈する。
【0049】
しかし、今やたわみ要素の利用に関する選択は、(拘束方向に直角な)接線方向に限定された剛性を有する拘束部と、熱中心の位置の好ましくないずれの可能性をもたらす。
図10は、この予想が実現されることを示している。変位場のプロット1000は、全ての拘束部の剛性が等しいと仮定されている、エンコーダ900の拘束部パターンの単純化した有限要素解析に相当する。該拘束部の幾何学的配置によって決定付けられた位置(所望のTC)からの熱中心(実際のTC)の変位は、(実際の)熱中心の近傍のベクトルプロット1000の拡大図において明らかである。(実際の)熱中心が、XおよびYの両方向にずれていることは明白である。X方向の動きの主な要因は、拘束部C3に関する剛体回転によるものである。換言すれば、この動きの主な原因は、AA’に沿って作用する不平衡力によりC3に関して生成されたモーメントである。不平衡力はまた、C1およびC2のたわみ部のX方向に沿った不均一な変形からも生じる。その熱変形は、その長さに比例し、および幾何学的配置、すなわち、ラインBB’による該熱中心の位置から、AA’に沿ったC1およびC2の位置までの長さが等しくないため、該力が平衡に達するまで、マウント905を回転させる力の不均衡が生じる。その結果、(実際の)熱中心は、X方向に移動する。該力を均等化するいかなる方法も、このずれを防ぐことが可能である。同じ理由で、該幾何学的配置によって決定付けられた位置からのY方向のずれが生じる。
【0050】
この力の不平衡な変化は、いくつかの方法で防ぐことができる。いくつかの実施形態において、該接点は、接線方向の「ゼロの」剛性を有し、それによって、何らかの力の変化を防ぐように配置される。この状況は、上述したような回転要素を用いた拘束部によって近似することができる。しかし、このことは、特に、エンコーダヘッドアプリケーション700,800,900においては、必ずしも実用的ではない。他の実施形態において、該拘束部は、該熱中心に関して対称な、限定された等しい接線方向の剛性を備えて配置される。このことは、該本体上で均衡した力の変化をもたらし、それによって、剛体運動およびその結果としての該熱中心のずれが防止される。例えば、AA’に沿って作用する不均衡力は、拘束部C1およびC2をBB’に関して対称的に配置することによってなくすことができる。これは、他の構成要素の位置と、システム700,800,900の全体的な許容限度とによって除外される選択肢である。
【0051】
他のいくつかの実施形態において、該拘束部の剛性は、正味ゼロの力の変化を生じるように調整される。このことは、補償力を生成するための追加的な構成要素の導入を含む可能性がある。この戦略は、例えば、熱的に安定したエンコーダヘッドの実施形態において用いることができる。また他のいくつかの実施形態において、該拘束部の幾何学的配置は、該熱中心のずれを事前に補償するように調整される。換言すれば、該拘束部は、所望の不変性をもたらすように、理想的な幾何学的配置に対して意図的に間違った位置に配置される。この戦略は、該拘束部の位置が、指定された境界要件を満たすように予め決められている場合のセンサマウントの構造には用いることができない。さらに、不平衡な力の変化は、上述した2つの実施形態の組合せを用いることによって防ぐことができる。
【0052】
図11は、弾性支持体によって、2つの端部で拘束された矩形状の剛体1105の略
図1100を示す。略
図1100は、拘束部C1およびC2にとって適切な剛性を選択する方法を説明するために用いられる。この実施形態において、該弾性支持体は、ばねとして描かれている。この実施形態のために、拘束部C1およびC2のY方向における剛性は、両支持体に対して同じであると仮定され、およびここではゼロであると仮定することができる。しかし、恐らく、この剛性は、この方向に拘束部を設けるために高くなるであろう。この剛性は、本質的にX方向の成分を有していないため、差し当たり無視することができる。水平なX方向の適合性の目的は、剛体1105の熱的に誘導された寸法の変化に適応する手段を設けることである。対称性の根拠から、剛性k
1およびk
2が等しい場合には、その熱中心が、その幾何学的中心と一致しているため、長手方向軸に沿った方向で不変のままである剛体1105上の点は、該2つの支持体間の中間にあることを理解することは容易である。
【0053】
図12(a)に示すように、膨張は、拘束された本体1205の寸法の変化をもたらすが、本体1205の正味の剛体運動はない。一方において、
図12(b)、
図12(c)に示すように、該剛性が等しくない場合、拘束部C1,C2間の一つの位置における寸法の変化による運動を相殺して、熱的に誘導される寸法の変化時に、その位置を不変にする剛体運動が生じる。該剛体運動による熱膨張の相殺は、該本体の外部の基準フレームに対して不変である点を形成するために用いることができる。
【0054】
該熱中心の正規化された(または、パラメトリックな)位置βの式は、力平衡等式から導出することができる。
図11に示すように、パラメータβの値は、0〜1の範囲で変動し、その極値は、剛体1105の両端における拘束部C1およびC2の位置に対応する。拘束部C1,C2間の中間、すなわち、その幾何学的中心における熱中心位置は、β=0.5に相当する。2つの拘束部の剛性k
1およびk
2に関するβの式は、
図13を参照して導出することができる。該熱中心を、剛性k
1を有する拘束部C1からある程度の距離l
1に配置するとする。その場合、βの定義に基づいて、l
1は、
【0056】
【数11】
によって与えられ、ただし、Lは、剛体1305の長さであり、l
2は、剛性k
2を有する拘束部C2からの熱中心の距離である。さらに、剛体1305が、CTEαの材料で形成され、および温度変化ΔTに晒されていると仮定する。該温度の変化およびCTEは、この実施形態においては、正数であると仮定する。
【0057】
ここで再び
図13を参照し、および一般的に、2つの拘束部C1およびC2は、Δ
1およびΔ
2によって変形し、および
【0058】
【数12】
によって与えられる力F
1およびF
2を生成することに留意する。
静的平衡は、F
1=F
2であることを要する。該力の式を式(0.12)から同等と見なして、βについて解くと、
【0061】
【数14】
によって与えられる剛性γ=k
2/k
1の比に関する式が生じる。
【0062】
式(0.14)のリミット試験の結果を表1に示し、および剛性比γの関数としてのβのプロット1400を
図14に示す。
該熱中心の位置は、優位な拘束部に向かって移動し、および該剛性比が極値に近づくにつれて、その拘束部の位置に漸近的に近づくことに留意する。これは、該拘束部のうちの1つが、限りなく堅い場合には、その周りで膨張が起きる点が該拘束部の位置で発生するであろうという点および全ての寸法の変化は、より大きなコンプライアントの拘束部によって適応されるであろうという点で、物理的直観と調和している。
【0063】
表1 式(0.14)のリミットケース試験
【0064】
【表1】
式(0.14)は、(該熱中心に必要な)温度の変化と、該材料のCTEの両方に無関係であることに留意する。それは、純粋に該剛性の比の関数である。この最後の特性は、特に、多数の対象物を備える設計シナリオにおいて、計り知れない設計自由度をもたらすため、過小評価はできない。例えば、X方向における該システムの動的性能(共振周波数)は、(所定の質量に対する)剛性の絶対値に左右され、一方、熱中心の位置は、該比に左右され、それによって、多数の対象物を同時に実現することを可能にしている。
【0065】
この戦略は、2つの異なる方法で、該エンコーダヘッド内の所望の位置に該熱中心を配置するために役立てるように用いられている。X方向におけるTCの移動は、それぞれ
図10および
図15の変位場1000および1500のプロットを比較して明らかなように、大部分は、C2の該たわみブレードの厚さを増すことによって実現されている。
図10および
図15の両方において、(
図11、
図12、
図13に関連して上述した単純なモデルにおける剛性k
1およびk
2に対応する)制御剛性は、拘束部C1およびC2のX方向における剛性である。剛性の増加は、
図12(b)に示されているようなより堅いたわみ部に向かうTCの動きをもたらす。このようにして、TCは、C2の剛性を増すことにより、または、C1の剛性を小さくすることによって、
図10および
図15における正のX方向に移動される。
【0066】
Y方向におけるTCの位置の調整は、いくらか複雑である。この場合、該制御剛性は、該剛体の一方の端部におけるY方向のC1およびC2の正味の剛性と、他方の端部におけるC3のY方向の剛性である。原理的には、ラインAA’は、(例えば、
図8に示すように)C1およびC2と交わるため、Y位置は、このラインと一致しなくてはならない。しかし、BB’に沿ったC3の有限の剛性により、および(ラインAA’とC3との間の比較的長い偏心距離による)温度が誘導した寸法の変化時のC3の比較的大きな変形によって、Y方向におけるたわみ部C1およびC2の有限の(高いが無限ではない)剛性によるTCのY方向の動きをもたらす著しく不均衡な力が生成される。TCが(採用された座標系に応じて)0.3または0.7のβを有する(X方向の)コンプライアント部材のどちらにも近接していない前述の状況と対照的に、この場合の要件は、TCを、例えば、(ここでもまた、採用された座標系に応じて)0または1に非常に近いβ値に対応するラインAA’に沿って、Y方向において、ちょうど該弾性拘束部のうちの1つに配置することである。
図14の検査は、これが、曲線1400の平坦な領域に一致し、その領域では、剛性比γの一層大きな変化が、βの著しい変化をもたらさないことを示している。換言すれば、C1およびC2のY方向の剛性を増すこと、または、C3のY方向を少なくすることは、TCの位置に実質的に影響をほとんど及ぼさない。
【0067】
代替的なアプローチが必要であり、およびここで採用されたアプローチは、
図15に示すように、ラインAA’上に追加的な補償たわみ部を導入することにより、βの好ましい値(0.17または0.83)で、TCの所望の位置を配置することである。βのこの値は、ゼロではないかなりの傾斜を有するグラフの領域内にあり、それによって、所望の変化をもたらす所要の感度を与えている。この補償たわみ部の作用を観察するための別の方法は、それを、C3の撓みによって生じた不平衡力を相殺するための補償力を生成する装置と見なすことである。
【0068】
本願明細書における記述は、2次元平面内での該熱中心の位置の操作について説明しているが、同じ原理を、容易な方法で3次元に拡大適用することができる。さらに、本願明細書に記載されている剛性の操作は、コンプライアント部材の寸法を(例えば、たわみブレードを用いて)変えることにより、該部材で構成された拘束部の剛性を調節することに基づいているが、剛性制御の他のメカニズムも想定することができる。例えば、ヘルツ接触の接触剛性は、予圧を操作することによって調節することができ、コンプライアント要素の剛性は、軸方向荷重を変えること、境界条件(クランピング、負荷位置、材料)を変えることおよび弾性係数の熱依存を利用すること等によって調節することができる。
【0069】
リソグラフィーツールアプリケーション
上述したように、本願明細書において開示した方法は、例えば、リソグラフィーツールにおいて、1つ以上のエンコーダヘッドの取り付けのために用いることができる。リソグラフィーツールは、特に、コンピュータチップ等の大規模集積回路を製造する際に使用されるリソグラフィー用途に有用である。リソグラフィーは、半導体製造業における主要技術の推進力である。オーバーレイの改善は、100nmの線幅(デザインルール)を切る5つの最も困難な課題のうちの1つであり、例えば、「半導体産業のロードマップ(the Semiconductor Industry Roadmap)」、1997年発行の82頁を参照されたい。
【0070】
オーバーレイは、性能、すなわち、ウェーハステージおよびレチクル(またはマスク)ステージを位置決めするために用いられる計量システムの精度および精密さに直接的に依存する。1つのリソグラフィーツールは、年に5000万〜1億ドルの製品を作り出すことができるため、改良された計量システムによる経済的価値は相当なものである。各該リソグラフィーツールの生産量の1%の増加は、年に約100万ドルの経済的利益を集積回路の製造会社にもたらし、およびかなりの競争上の優位性をリソグラフィーツール業者にもたらす。
【0071】
リソグラフィーツールの機能は、空間的にパターン化された放射を、フォトレジストで被覆されたウェーハ上に向けることである。そのプロセスは、該ウェーハのどの位置が該放射を受けるかを判断すること(アライメント)と、該放射を、その位置で該フォトレジストに印加すること(露光)とを伴う。
【0072】
露光中、空間的にパターン化された放射を生成するための放射を散乱させるパターン化されたレチクルを放射源が照射する。該レチクルはマスクとも呼ばれ、およびこれらの用語は、以下において置換え可能に用いられる。縮小リソグラフィーの場合、縮小レンズが、散乱された放射を集光して、該レチクルパターンの縮小画像を形成する。別法として、近接プリンティングの場合、該散乱された放射は、該ウェーハに接触して、該レチクルパターンの1:1の画像を生成する前に、小さな距離(通常、数マイクロメートル程度)を伝播する。該放射は、レジスト内で該放射パターンを潜像に変換する光化学プロセスを開始する。
【0073】
該ウェーハを正確に位置決めするために、該ウェーハは、専用センサによって測定することができるアライメントマークを該ウェーハ上に含む。該アライメントマークの測定位置は、該ツール内での該ウェーハの位置を定義する。この情報は、該ウェーハ表面の所望のパターニングの仕様とともに、該空間的にパターン化された放射に対する該ウェーハのアライメントをガイドする。このような情報に基づいて、該フォトレジストで被覆されたウェーハを支持する平行移動可能なステージは、該放射が、該ウェーハの正しい位置を露光するように該ウェーハを移動させる。いくつかのリソグラフィーツール、例えば、リソグラフィースキャナにおいては、該マスクも、露光中に、該ウェーハに合わせて移動される平行移動可能なステージ上に位置決めされる。
【0074】
前述したシステム等のエンコーダシステムは、該ウェーハおよびレチクルの位置を制御し、および該ウェーハ上の該レチクル像を記録する位置決め機構から成る重要なコンポーネントである。このようなエンコーダシステムが、上述した機能を含む場合、該システムによって測定される距離の精度は、オフラインメンテナンスを伴うことなく、長期間にわたって、向上および維持の内の少なくともいずれか一方をすることができ、歩留まりの向上およびより少ないツールのダウンタイムにより、より高いスループットをもたらす。
【0075】
一般的に、露光装置とも呼ばれるリソグラフィーツールは、典型的には、照明システムと、ウェーハ位置決めシステムとを含む。該照明システムは、紫外線、可視光、X線、電子またはイオン放射等の放射を生成するための放射源と、該放射にパターンを与えるためのレチクルまたはマスクとを含み、それによって、空間的にパターン化された放射を生成する。また、縮小リソグラフィーの場合、該照明システムは、該空間的にパターン化された放射を該ウェーハ上に結像するレンズアセンブリを含むことができる。該結像された放射は、該ウェーハ上にコーティングされたレジストを露光する。また、該照明システムは、該マスクを支持するためのマスクステージと、該マスクを介して案内された該放射に対する該マスクステージの位置を調節するための位置決めシステムとを含む。該ウェーハ位置決めシステムは、該ウェーハを支持するためのウェーハステージと、結像された放射に対する該ウェーハステージの位置を調節するための位置決めシステムとを含む。集積回路の製造は、複数の露光工程を含む可能性がある。リソグラフィーに関する一般的参照のために、例えば、「マイクロリソグラフィー:科学技術(Microlithography:Science and Technology)」、ジェイ.アール.シーツ(J.R.Sheats)及びビー.ダブリュ.スミス(B.W.Smith)著、ニューヨーク所在のマーセルデッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、1998年発行を参照し、その内容を参照によって本願明細書に組み込むものとする。
【0076】
上述したエンコーダシステムは、レンズアセンブリ、放射源または支持構造等の該露光システムの他のコンポーネントに対する該ウェーハステージおよびマスクステージの各々の位置を正確に測定するために用いることができる。このような場合においては、該エンコーダシステムの光学アセンブリを固定構造物に取り付けることができ、また、エンコーダスケールを、該マスクステージおよびウェーハステージの一方等の可動構成要素に取り付けることができる。別法として、その状況を逆にすることができる。すなわち、該光学アセンブリを可動対象物に取り付け、および該エンコーダスケールを固定対象物に取り付けることができる。
【0077】
より一般的には、このようなエンコーダシステムは、該露光システムの他の何らかのコンポーネントに対する該露光システムのいずれか1つのコンポーネントの位置を測定するために用いることができ、この場合、該光学アセンブリは、該コンポーネントのうちの1つに取り付けられ、または、該1つのコンポーネントによって支持され、および該エンコーダスケールは、他のコンポーネントに取り付けられ、または、該他のコンポーネントによって支持される。
【0078】
干渉計システム1826を用いるリソグラフィーツール1800の実施形態を
図16に示す。該エンコーダシステムは、露光システム内のウェーハ(図示せず)の位置を正確に測定するために用いられる。ここで、ステージ1822は、露光ステーションに対して該ウェーハを位置決めし、および支持するために用いられる。スキャナ1800は、他の支持構造物と、それらの構造物上に支持された様々なコンポーネントを支えるフレーム1802を含む。露光ベース1804には、その上に、レチクルまたはマスクを支持するために用いられるレチクルステージまたはマスクステージ1816が取り付けられているレンズハウジング1806がその上部に取り付けられている。該露光ステーションに対して該マスクを位置決めするための位置決めシステムが、構成要素1817によって概略的に図示されている。位置決めシステム1817は、例えば、圧電トランスデューサ要素と、対応する制御電子装置とを含むことができる。この記載した実施形態には含まれていないが、上述したエンコーダシステムのうちの1つ以上は、該マスクステージの位置と、リソグラフィー構造部を製造するためのプロセスにおいて、その位置を正確にモニタしなければならない他の可動構成要素の位置とを正確に測定するためにも用いることができる(上記のシーツ及びスミスの「マイクロリソグラフィー:科学技術」を参照)。
【0079】
ウェーハステージ1822を支える支持ベース1813は、露光ベース1804の下に吊るされている。ステージ1822は、該ステージに向けられた測定ビーム1854を光学アセンブリ1826によって回折させるための測定対象物を含む。光学アセンブリ1826に対してステージ1822を位置決めするための位置決めシステムは、構成要素1819によって概略的に図示されている。位置決めシステム1819は、例えば、圧電トランスデューサ要素と、対応する制御電子装置とを含むことができる。該測定対象物は、該測定ビームを回折させて反射させ、露光ベース1104上に取り付けられている該光学アセンブリに戻す。該エンコーダシステムは、前述した実施形態のうちのいずれかとすることができる。
動作中、放射ビーム1810、例えば、UVレーザ(図示せず)からの紫外線(UV)ビームは、ビーム成形光学アセンブリ1812を通って、ミラー1814から反射した後に、下方へ進む。その後、該放射ビームは、マスクステージ1816によって支えられたマスク(図示せず)を通過する。該マスク(図示せず)は、レンズハウジング1806内に支えられているレンズアセンブリ1808を介して、ウェーハステージ1822上のウェーハ(図示せず)上に結像される。ベース1804と、それによって支持されている様々なコンポーネントは、ばね1820によって図示されている制動システムによって、環境振動から分離されている。
【0080】
いくつかの実施形態において、前述した該エンコーダシステムのうちの1つ以上は、限定するものではないが、例えば、該ウェーハステージおよびレチクル(またはマスク)ステージに関連する複数の軸および角度に沿った変位を測定するために用いることができる。また、UVレーザビームではなく、例えば、X線、電子ビーム、イオンビームおよび可視光ビームを含む他のビームを、該ウェーハを露光するために用いることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、光学アセンブリ1826は、レチクル(またはマスク)ステージ1816、または、該スキャナシステムの他の可動構成要素の位置の変化を測定するために配置することができる。そして、該エンコーダシステムは、同様の方法で、スキャナに加えて、または、該スキャナの代わりに、ステッパを含むリソグラフィーシステムとともに用いることができる。
【0082】
周知されているように、リソグラフィーは、半導体装置を形成するための製造方法の重要な部分である。例えば、米国特許第5,483,343号明細書は、そのような製造方法のための工程について概説している。それらの工程を、
図17Aおよび
図17Bを参照して以下で説明する。
図17Aは、半導体チップ(例えば、ICまたはLSI)、液晶パネルまたはCCD等の半導体装置を製造するシーケンスのフローチャートである。ステップ1951は、半導体装置の回路をデザインするためのデザインプロセスである。ステップ1952は、回路パターンデザインに基づいて、マスクを製造するためのプロセスである。ステップ1953は、シリコン等の材料を用いてウェーハを製造するためのプロセスである。
【0083】
ステップ1954は、予め用意されたマスクおよびウェーハを用いて、リソグラフィーによって、該ウェーハ上に回路が形成される前工程と呼ばれるウェーハプロセスである。該マスク上の該パターンの十分な空間分解能に合う回路を該ウェーハ上に形成するには、該ウェーハに対する該リソグラフィーツールの干渉法による位置決めが必要である。本願明細書に記載されている干渉法およびシステムは、特に、該ウェーハプロセスに用いられるリソグラフィーの有効性を改善するために有用である可能性がある。
【0084】
ステップ1955は、組立工程であり、該工程は、ステップ1954によって処理された該ウェーハが複数の半導体チップに形成される後工程と呼ばれている。この工程は、組立(ダイシングおよびボンディング)と、パッケージング(チップ封入)とを含む。ステップ1956は、ステップ1955によって作り出された半導体装置の操作性チェック、耐久性チェック等が実行される検査工程である。これらのプロセスによって、半導体装置が完成されて、それらは出荷される(ステップ1957)。
【0085】
図17Bは、該ウェーハプロセスの詳細を示すフローチャートである。ステップ1961は、ウェーハの表面を酸化させるための酸化プロセスである。ステップ1962は、該ウェーハ表面に絶縁膜を形成するためのCVDプロセスである。ステップ1963は、蒸着によって、該ウェーハ上に電極を形成するための電極形成プロセスである。ステップ1964は、イオンを該ウェーハに注入するためのイオン注入プロセスである。ステップ1965は、レジスト(感光性材料)を該ウェーハに施すためのレジストプロセスである。ステップ1966は、上述した露光装置を介した露光(すなわち、リソグラフィー)によって、該マスクの回路パターンを該ウェーハ上に印刷するための露光プロセスである。ここでもまた、上述したように、本願明細書に記載されている干渉計システムおよび方法の使用が、そのようなリソグラフィー工程の精度および分解能を改善する。
【0086】
ステップ1967は、露光したウェーハを現像するための現像プロセスである。ステップ1968は、現像されたレジスト像以外の部分を除去するためのエッチングプロセスである。ステップ1969は、該エッチングプロセスに晒された後に該ウェーハ上に残っているレジスト材料を分離するためのレジスト分離プロセスである。これらのプロセスを繰り返すことにより、回路パターンが形成されて、該ウェーハ上に重ね合わせられる。
【0087】
上述した方法に従って取り付けられたエンコーダシステムは、対象物の相対的位置が、正確に測定される必要がある他の用途にも用いることができる。例えば、基板またはビームが移動する際に、レーザ、X線、イオンまたは電子ビーム等の書込みビームが、パターンを該基板上にマークする用途において、該エンコーダシステムは、該基板と書込みビームとの間の相対運動を測定するために用いることができる。
【0088】
その他の実施形態もまた、以下のクレームの範囲内にある。