【実施例】
【0030】
(実施例1)
(1)前処理
厚さ1mmの市販されているA5052アルミニウム合金板が18mm×45mmの矩形のシートに切断され、ついで、そのシートが40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬された。水酸化ナトリウム水溶液の温度は40℃であった。1分後、矩形のシートは水洗いされ、乾燥され、前処理されたアルミニウム合金シートが得られた。
【0031】
(2)表面処理1
それぞれのアルミニウム合金シートが、20重量%の硫酸溶液を含む陽極酸化処理槽に陽極として配置され、アルミニウム合金が、10分間にわたって、20ボルトの電圧、18℃で電解された。ついで、アルミニウム合金シートがブロー乾燥された。
【0032】
表面処理1の後のアルミニウム合金シートの断面が金属顕微鏡によって観察され、厚さ5μmのアルミニウム酸化物の層が、電解されたアルミニウム合金シートの表面に形成されたことがわかった。表面処理1の後のアルミニウム合金シートの表面が電子顕微鏡によって観察され、約40nm以上約60nm以下の細孔径と1μmの深さとを有するナノ細孔がアルミニウム酸化物の層に形成されたことがわかった。
【0033】
(3)表面処理2
温度が20℃で10重量%の500mlの炭酸ナトリウム溶液(pH=12)がビーカーに用意された。ステップ(2)の後のアルミニウム合金シートが炭酸ナトリウム溶液に浸漬され、5分後に引き上げられ、水を含むビーカーに配置され、1分間にわたって浸漬された。5サイクルの後、最後の水への浸漬の後に、アルミニウム合金シートがブロー乾燥された。
【0034】
表面処理2の後のアルミニウム合金シートの表面が電子顕微鏡によって観察され、300nm以上1000nm以下の細孔径と4μmの深さとを有する腐食孔が、浸漬されたアルミニウム合金シートの表面に形成されたことがわかった。アルミニウム酸化物の層に二層三次元の細孔構造があることと、腐食孔がナノ細孔と連通されたことも観察され得る。
【0035】
(4)成形
61重量部のポリフェニレンオキシドPPO(China Bluestar Chengrand Chemical Co.,Ltd.から市販されているPPO LXR040)と、30重量部のポリアミドPA(China Pingmei Shenma Groupから市販されているEPR27)と、1重量部の流動性改良剤、すなわち環状ポリエステル(CBT100)と、8重量部の融点が65℃のグラフトポリエチレン(Arkema Groupから市販されているLotader AX8900)とが計量され、均一に混合されて、樹脂混合物が得られた。ついで、射出成形機を用いて、ステップ(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に、溶融された樹脂混合物が射出成形され、本実施例における金属−樹脂複合構造S1が得られた。
【0036】
(実施例2)
本実施例における金属−樹脂複合構造S2は、以下の例外を除いて、実施例1における方法とおおよそ同じ方法によって準備された。
【0037】
ステップ(1)において、実施例1におけるアルミニウム合金板の代わりに、厚さ3mmの市販のマグネシウム合金板が、18mm×45mmの矩形シートに切断された。
【0038】
ステップ(2)において、それぞれのマグネシウム合金シートが、20重量%の硫酸溶液を含む陽極酸化処理槽に陽極として配置され、マグネシウム合金が、10分間にわたって、15ボルトの電圧、18℃で電解された。ついで、マグネシウム合金シートはブロー乾燥された。
【0039】
表面処理1の後のマグネシウム合金シートの断面が金属顕微鏡によって観察され、厚さ5μmのマグネシウム酸化物の層が、電解されたマグネシウム合金シートの表面に形成されたことがわかった。表面処理1の後のアルミニウム合金シートの表面が電子顕微鏡によって観察され、20nm以上40nm以下の細孔径と1μmの深さとを有するナノ微少孔がマグネシウム酸化物の層に形成されたことがわかった。
【0040】
表面処理2の後のマグネシウム合金シートの表面が電子顕微鏡によって観察され、300nm以上1000nm以下の細孔径と4μmの深さとを有する腐食孔が、浸漬されたマグネシウム合金シートの表面に形成されたことがわかった。マグネシウム酸化物の層に二層三次元の細孔構造があることと、腐食孔がナノ細孔と連通されたことも観察され得る。
【0041】
上記ステップの後、本実施例における金属−樹脂複合構造S2が得られた。
【0042】
(実施例3)
本実施例における金属−樹脂複合構造S3は、以下の例外を除いて、実施例1における方法とおおよそ同じ方法によって準備された。
【0043】
ステップ(2)において、それぞれのアルミニウム合金シートが、20重量%の硫酸溶液を含む陽極酸化処理槽に陽極として配置され、アルミニウム合金が、10分間にわたって、40ボルトの電圧、18℃で電解された。ついで、アルミニウム合金シートはブロー乾燥された。
【0044】
表面処理1の後のアルミニウム合金シートの断面が金属顕微鏡によって観察され、厚さ5μmのアルミニウム酸化物の層が、電解されたアルミニウム合金シートの表面に形成されたことがわかった。表面処理1の後のアルミニウム合金シートの表面が電子顕微鏡によって観察され、60nm以上80nm以下の細孔径と1μmの深さとを有するナノ細孔がアルミニウム酸化物の層に形成されたことがわかった。
【0045】
表面処理2の後のアルミニウム合金シートの表面が電子顕微鏡によって観察され、300nm以上1000nm以下の細孔径と4μmの深さとを有する腐食孔が、浸漬されたアルミニウム合金シートの表面に形成されたことがわかった。アルミニウム酸化物の層に二層三次元の細孔構造があることと、腐食孔がナノ細孔と連通されたことも観察され得る。
【0046】
上記ステップの後、本実施例における金属−樹脂複合構造S3が得られた。
【0047】
(実施例4)
本実施例における金属−樹脂複合構造S4は、以下の例外を除いて、実施例1における方法とおおよそ同じ方法によって準備された。
【0048】
ステップ(4)において、46重量部のポリフェニレンオキシドPPO(China Bluestar Chengrand Chemical Co.,Ltd.から市販されているPPO LXR040)と、46重量部のポリアミドPA(China Pingmei Shenma Groupから市販されているEPR27)と、8重量部の融点が105℃のグラフトポリエチレン(Arkema Groupから市販されているLotader 4210)とが計量され、均一に混合されて、樹脂混合物が得られた。ついで、射出成形機を用いて、ステップ(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に、溶融された樹脂混合物が射出成形され、本実施例における金属−樹脂複合構造S4が得られた。
【0049】
(比較例1)
本例における金属−樹脂複合構造DS1は、以下の例外を除いて、実施例1における方法とおおよそ同じ方法によって準備された。
【0050】
ステップ(4)において、66重量部のポリフェニレンオキシドPPO(China Bluestar Chengrand Chemical Co.,Ltd.から市販されているPPO LXR040)と、33重量部のポリアミドPA(China Pingmei Shenma Groupから市販されているEPR27)と、1重量部の流動性改良剤、すなわち環状ポリエステル(CBT100)とが計量され、均一に混合されて、樹脂混合物が得られた。ついで、射出成形機を用いて、ステップ(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に、溶融された樹脂混合物が射出成形され、本例における金属−樹脂複合構造DS1が得られた。
【0051】
(比較例2)
本例における金属−樹脂複合構造DS2は、以下の例外を除いて、実施例1における方法とおおよそ同じ方法によって準備された。
【0052】
ステップ(4)において、91重量部のポリフェニレンスルフィドPPS(Sichuan Deyang Chemical Co.,Ltd.,Chinaから市販されているPPS−HC1)と、1重量部の流動性改良剤、すなわち環状ポリエステル(CBT100)と、8重量部の融点が105℃のグラフトポリエチレン(Arkema Groupから市販されているLotader AX8900)とが計量され、均一に混合されて、樹脂混合物が得られた。ついで、射出成形機を用いて、ステップ(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に、溶融された樹脂混合物が射出成形され、本例における金属−樹脂複合構造DS2が得られた。
【0053】
(比較例3)
本例における金属−樹脂複合構造DS3は、以下の例外を除いて、実施例1における方法とおおよそ同じ方法によって準備された。
【0054】
ステップ(4)において、91重量部のポリフェニレンスルフィドPPS(Sichuan Deyang Chemical Co.,Ltd.,Chinaから市販されているPPS−HC1)と、1重量部の流動性改良剤、すなわち環状ポリエステル(CBT100)と、8重量部の融点が105℃のグラフトポリエチレン(Arkema Groupから市販されているLotader AX8900)とが計量され、均一に混合されて、樹脂混合物が得られた。ついで、射出成形機を用いて、ステップ(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に、溶融された樹脂混合物が射出成形され、射出成形された金属−樹脂複合構造が得られた。該金属−樹脂複合構造が1時間にわたって180℃で焼きなましされ、本例における金属−樹脂複合構造DS3が得られた。
【0055】
(比較例4)
本例における金属−樹脂複合構造DS4は、以下の例外を除いて、実施例1における方法とおおよそ同じ方法によって準備された。
【0056】
ステップ(4)において、86重量部のポリフェニレンスルフィドPPS(Sichuan Deyang Chemical Co.,Ltd.,Chinaから市販されているPPS−HC1)と、1重量部の流動性改良剤、すなわち環状ポリエステル(CBT100)と、8重量部の融点が105℃のグラフトポリエチレン(Arkema Groupから市販されているLotader AX8900)と、5重量部の強靱化剤(Arkema Groupから市販されているLotader AX8840)とが計量され、均一に混合されて、樹脂混合物が得られた。ついで、射出成形機を用いて、ステップ(3)の後のアルミニウム合金シートの表面に、溶融された樹脂混合物が射出成形され、射出成形された金属−樹脂複合構造が得られた。該金属−樹脂複合構造が1時間にわたって180℃で焼きなましされ、本例における金属−樹脂複合構造DS4が得られた。
【0057】
(性能テスト)
1)金属−樹脂複合構造S1〜S4およびDS1〜DS4が引張試験のために万能試験機に固定され、それぞれの最大荷重が得られた。試験結果が表1に示された。
【0058】
2)ASTM D256に開示される方法に従って、片持ち梁衝撃試験機を用いて、金属−樹脂複合構造S1〜S4およびDS1〜DS4の標準サンプルの衝撃強度が試験された。
【0059】
試験結果が表1に示された。
【表1】
【0060】
金属−樹脂複合構造S1〜S4が約18MPa以上約20MPa以下の破壊強度を有し、そのことが金属−樹脂複合構造S1〜S4における金属シートとプラスチック層との間の接合力が非常に強いことを示すことと、金属−樹脂複合構造S1〜S4が約330J/m以上約380J/m以下の衝撃強度を有し、そのことが金属−樹脂複合構造S1〜S4が高い機械強度を有することを示すことが、表1における試験結果から理解され得る。
【0061】
金属−樹脂複合構造S1の試験結果と、金属−樹脂複合構造DS3、DS4の試験結果とを比較することによって、従来技術において用いられるポリフェニレンオキシド樹脂の靱性は非常に低く、また、強靱化剤によって改良された後のポリフェニレンオキシド樹脂の靱性も依然として低いことが理解され得る。
【0062】
例示的な態様が示され、記載されたが、上述の態様は本開示を限定するように解釈され得ないことと、また、本開示の精神、原理および範疇の範囲内で上述の態様における変更、代替および修正がなされ得ることとが当業者に理解されることは明白である。
【0063】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年2月24日に中華人民共和国国家知識産権局に出願された中国特許出願番号第201210043648.8号明細書に基づく優先権およびその利益を主張し、その全体が参照によって本明細書に包含される。