(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ライナの前記外側表面に当接する前記ピボットの当接面は、前記キャリアリングの中心軸に直交する断面形状が円弧状であることを特徴とする請求項1に記載のティルティングパッド軸受。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したティルティングパッド軸受においては、回転軸が回転を開始して軸受パッドが傾く時や回転軸の回転中に、軸受パッド(特許文献1では調整ライナ)と球面ピボットとの当接部の位置が微小変化するため、軸受パッドとピボットの当接面が摺動してフレッティング摩耗が発生することがある。フレッティング摩耗は、軸受パッドやピボットの当接面の状態を悪化させる要因となる。すなわち、軸受パッドとピボットの当接面における摺動量が大きい程、当接面の表面状態が悪化し、長期にわたってその状態が継続するとティルティングパッド軸受の動作不良を引き起こす可能性もある。
この点、特許文献1には、軸受パッドとピボットの当接面に発生するフレッティング摩耗を抑制するための具体的な対策は何ら開示されていない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、軸受パッドの揺動に伴って軸受パッドとピボットの当接面に発生するフレッティング摩耗を抑制し得るティルティングパッド軸受および回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るティルティングパッド軸受は、
少なくとも一つの軸受パッドと、
前記軸受パッドの外周面に設けられた第1凹部に嵌合して前記軸受パッドに固定され、且つ、前記第1凹部の底面に全面が接触する内側表面を有するライナと、
前記ライナの前記内側表面とは反対側の外側表面に当接し、且つ、少なくとも軸受パッドの曲率中心が変位するように前記ライナを傾動可能に支持するピボットと、
前記軸受パッドの外周側に設けられ、前記ピボットが嵌合する第2凹部を内周面に有するキャリアリングと、を備え、
前記ライナの前記外側表面と前記ピボットとの当接部は前記第2凹部の内側に位置し、
前記軸受パッドは、前記ライナが前記第2凹部に嵌合することで、前記軸受パッドの前記軸受面の周方向に回り止めされるように構成されたことを特徴とする。
【0008】
上記(1)のティルティングパッド軸受によれば、キャリアリングに形成された第2凹部の内側に、ライナの外側表面とピボットとの当接部が位置するので、軸受パッド及びライナの傾動に伴う軸受パッドの曲率中心の変位量に対する、ライナの外側表面とピボットとの摺動距離の比が小さくなり、当接部におけるフレッティング摩耗を抑制できる。すなわち、第2凹部の内側に当接部が位置する場合における軸受パッドの曲率中心から当接部までの距離d
1は、キャリアリングよりも内周側に当接部が位置する場合における軸受パッドの曲率中心から当接部までの距離d
2よりも長くなる。そのため、軸受パッドが当接部を支点として同じ角度だけ傾斜したとき、距離d
2よりも長い距離d
1の方が、軸受パッドの曲率中心の変位量は大きくなる。つまり、軸受パッドの曲率中心の変位量が同じとき、距離d
2よりも長い距離d
1の方が、軸受パッドの傾斜角は小さくてすむ。ライナの外側表面とピボットとの当接部との摺動距離は軸受パッドの傾斜角に対応しているので、軸受パッドの曲率中心から当接部までの距離d
1を長くすることでライナの外側表面とピボットとの摺動距離も小さくすることができ、よってフレッティング摩耗を抑制できる。
また、ライナは、軸受パッドの第1凹部に嵌合して軸受パッドに固定されているので、ライナがキャリアリングの第2凹部に嵌合することで、軸受パッドはキャリアリングに対して周方向に回り止めされるようなっている。このため、ロータの回転により軸受パッドが周方向に移動してしまうことを防止できる。また、回り止めの機構を別に設けなくてもよくなり、軸受構造の簡素化が図れる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記ライナの前記外側表面に当接する前記ピボットの当接面は、前記キャリアリングの中心軸に直交する断面形状が円弧状である。
上記(2)の構成によれば、キャリアリングの中心軸に直交する断面内において揺動する軸受パッド及びライナを、ピボットにより適切に支持することができる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記軸受パッドの軸受面の周方向幅をW
pad1とし、前記ライナの前記外側表面の周方向幅をW
L1としたとき、0.3W
pad1≦W
L1≦0.5W
pad1を満たす。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記軸受パッドの軸受面の軸方向幅をW
pad2とし、前記ライナの前記外側表面の軸方向幅をW
L2としたとき、0.25W
pad2≦W
L2≦0.5W
pad2を満たす。
上記(3)又は(4)の構成によれば、ライナの剛性を向上させることができる。よって、回転軸の回転に起因した温度上昇及びピボットから受ける支持荷重によって曲率が小さくなる方向に変形しようとする軸受パッドをライナによって背面側から支えることで、軸受パッドの変形を抑制できる。
【0011】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記ライナの前記内側表面の周方向幅をW
L1とし、前記ライナの前記外側表面に当接する前記ピボットの当接面の周方向幅をW
P1としたとき、0.5W
P1≦W
L1≦1.1W
P1を満たす。
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記ライナの前記内側表面の軸方向幅をW
L2とし、前記ライナの前記外側表面に当接する前記ピボットの当接面の軸方向幅をW
P2としたとき、0.5W
P2≦W
L2≦1.1W
P2を満たす。
【0012】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記ライナの厚さは、前記ピボットの厚さよりも大きい。
上記(7)の構成によれば、ライナの剛性を向上できるので、回転軸の回転に起因した温度上昇及びピボットから受ける支持荷重によって曲率が小さくなる方向に変形しようとする軸受パッドをライナによって背面側から支えることで、軸受パッドの変形を抑制できる。また、上記(1)に記載したように、ライナの外側表面とピボットとの当接部がキャリアリングの第2凹部の内側に位置するので、上記(7)の構成においてライナの厚さをピボットの厚さに比べて大きくしやすい。
【0013】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記キャリアリングの前記第2凹部の側壁面と前記ライナの側壁面との間には間隙が形成されており、
前記ライナは、前記キャリアリングに対して前記間隙の大きさに応じた量だけ傾動可能である。
上記(8)の構成によれば、キャリアリングの第2凹部の側壁面とライナの側壁面との間に間隙が形成されているため、キャリアリングとライナとの干渉を防止してライナを自在に傾動可能とすることができる。
【0014】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、
上記(1)乃至(8)の何れか一に記載のティルティングパッド軸受と、
前記ティルティングパッド軸受によって支持される回転軸と、を備えることを特徴とする。
上記(9)の回転機械によれば、ライナの外側表面とピボットとの当接部におけるフレッティング摩耗を抑制可能なティルティングパッド軸受を採用することにより、耐久性の優れた回転機械を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、キャリアリングに形成された第2凹部の内側に、ライナの外側表面とピボットとの当接部が位置するので、軸受パッド及びライナが傾動して軸受パッドの曲率中心が変位したとき、ライナの外側表面とピボットとの当接部との摺動距離が小さくなり、当接部におけるフレッティング摩耗を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0018】
最初に、
図1及び
図2を参照して、幾つかの実施形態に係るティルティングパッド軸受10に共通の全体構成について説明する。
図1は、一実施形態に係るティルティングパッド軸受10の軸方向に沿った断面図である。
図2は、
図1のA−A線断面図である。なお、
図2は軸方向に直交する断面である。また、本実施形態において軸方向とは、ティルティングパッド軸受10に支持される回転軸(以下、ロータと呼ぶ)2の中心軸線Oの方向であり、径方向とは、ロータ2の半径方向である。
【0019】
図1及び
図2に示すティルティングパッド軸受10は、潤滑方式(給油方式)として直接潤滑方式を採用しており、下半部に2個の軸受パッド30,32が配置された構成を有している。以下、図示されるティルティングパッド軸受10について例示的に説明するが、本実施形態に係るティルティングパッド軸受10はこの構成に限定されるものではない。例えば、他の実施形態に係るティルティングパッド軸受は、潤滑方式として、油浴方式や他の潤滑方式を採用してもよい。また、他の実施形態に係るティルティングパッド軸受は、周方向位置は限定されず少なくとも1個の軸受パッドを有していればよく、例えば、上半部および下半部にそれぞれ2個の軸受パッドが配置された構成であってもよい。
【0020】
なお、本実施形態に係るティルティングパッド軸受10が適用される回転機械1としては、例えば、ガスタービンや蒸気タービンや機械駆動用タービン等のタービン、風力発電装置等の風力機械、または過給機などが挙げられる。
ここで、回転機械1は、回転駆動されるロータ2と、ロータ2を収容する軸受ハウジング(不図示)と、ロータ2を支持するためのティルティングパッド軸受10と、を備える。
【0021】
一実施形態において、ティルティングパッド軸受10は、回転機械1の軸受ハウジング(不図示)に取り付けられたキャリアリング11と、キャリアリング11の内周側に配置された2つの軸受パッド30,32と、各軸受パッド30,32に固定されるライナ36と、軸受パッド30,32及びライナ36を支持するピボット38と、を備える。
【0022】
以下、ティルティングパッド軸受10の各部材の具体的な構成例について説明する。
キャリアリング11は、上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13を含む。上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13は、それぞれ、軸方向に直交する断面が半円弧状となるような内周面12a,13a及び外周面12b,13bを有している。なお、図示される例では、キャリアリング11が上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13に分割された構成を示しているが、キャリアリング11は一体構造であってもよい。
【0023】
上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13は、それぞれ、軸受ハウジング(不図示)に対して、固定手段によって周方向位置及び軸方向位置が固定されている。
キャリアリング11の軸方向の両端側には、サイドプレート17,18が配置されている。サイドプレート17,18は、円板状に形成されており、中央にロータ2が貫通する穴17a,18aが形成されている。これらのサイドプレート17,18によって、後述する給油ノズル25〜29から供給される潤滑油の外部への漏出を抑制するようになっている。
【0024】
上半部キャリアリング12は、主としてロータ2の跳ね上がりを防止するために、内周面12aにガイドメタル20,21が取り付けられている。例えば、上半部キャリアリング12の軸方向の両端側で且つサイドプレート17,18よりも軸方向において内側に、一対のガイドメタル20,21が取り付けられる。ガイドメタル20,21は、半円形状に形成されている。
【0025】
上半部キャリアリング12及び下半部キャリアリング13には、少なくとも一本の給油ノズル25〜29が設けられている。
図2に示す例では、ロータ2が図中矢印Sに示すように時計回りに回転する場合、ロータ2の回転方向において上流側から第1給油ノズル25、第2給油ノズル26、第3給油ノズル27、第4給油ノズル28、第5給油ノズル29を含む5本の給油ノズルが設けられている。第1給油ノズル25及び第2給油ノズル26は、上流側に位置する軸受パッド30よりも上流側に、周方向に並んで配置されている。第2給油ノズル26と軸受パッド30の上流側端部との間には間隙が設けられていてもよい。第3給油ノズル27及び第4給油ノズル28は、軸受パッド30と、該軸受パッド30よりも下流側に位置する軸受パッド32との間に、周方向に並んで配置されている。第3給油ノズル27と軸受パッド30との間、及び、第4給油ノズル28と軸受パッド32との間には間隙が設けられていてもよい。第5給油ノズル29は、軸受パッド32よりも下流側に配置されている。第5給油ノズル29と軸受パッド32との間には間隙が設けられていてもよい。
【0026】
キャリアリング11の内部には、潤滑油供給路(不図示)が形成されている。潤滑油供給路に供給された潤滑油は各給油ノズル25〜29に送られて、各給油ノズル25〜29から軸受パッド30,32の近傍に噴出される。
【0027】
次に、軸受パッド30,32及びその周辺構造について詳細に説明する。
図3は、一実施形態に係るティルティングパッド軸受10の部分拡大図である。
図4は、
図3のB−B線断面図である。
図5は、他の実施形態に係るティルティングパッド軸受10の部分拡大図である。
図6は、
図5のC−C線断面図である。なお、
図3及び
図5は、
図2と同一の方向から視たティルティングパッド軸受10における軸受パッド30及びその周辺構造を示している。また、
図3乃至
図6において、上流側に位置する軸受パッド30を例示しているが、下流側に位置する軸受パッド32も同一の構成を有している。
【0028】
図3乃至
図6に示すように、軸受パッド30は、ロータ2に対向する軸受面(内周面)30aと、下半部キャリアリング13に対向する外周面30bと、を有する。軸受面30a及び外周面30bは、それぞれ、周方向においては、ロータ2に対応した曲率を有するように湾曲した形状を有しており、軸方向においては、ロータ2の軸方向に沿って直線状に形成されている。軸受パッド30の外周面30bには、該軸受パッド30の略中央領域に第1凹部34が形成されている。第1凹部34は、周方向において、軸受パッド30の幅の中心よりも下流側に設けられており、軸方向において、軸受パッド30の長さの中心に設けられていてもよい。また、第1凹部34は、円柱状に形成されていてもよい。
【0029】
ライナ36は、第1凹部34に嵌合して軸受パッド30に固定され、且つ、第1凹部34の底面34aに全面が接触する内側表面36aを有している。ライナ36は、第1凹部34に対応した形状に形成されている。例えば、第1凹部34が、底面34aが平面状の円柱形状を有している場合、ライナ36も内側表面36aが平面状の円柱形状を有している。これにより、ライナ36の内側表面36a及び側壁面36cは、第1凹部34の底面34a及び側壁34cと隙間なく接触するようになっている。
また、ライナ36の厚みは第1凹部34の深さよりも大きい。そのため、ライナ36の内側表面36aが第1凹部34の底面34aに接触するようにライナ36が第1凹部34に嵌合した状態で、ライナ36の外側表面36bは軸受パッド30の外周面30bから径方向外側へ突出している。軸受パッド30の外周面30bから突出したライナ36の外側表面36bは、平坦に形成されていてもよい。
【0030】
ピボット38は、軸受パッド30の外周側に設けられ、下半部キャリアリング13の内周面13aに形成された第2凹部19に嵌合するように構成されている。例えば、第2凹部19は円柱状に形成され、ピボット38も略円柱状に形成されている。第2凹部19の底面19a側に位置するピボット38の嵌合面38aは平坦に形成されていてもよい。一方、ロータ2に対向する側に位置するピボット38の当接面38bは、キャリアリング11の中心軸に直交する断面形状が円弧状であり、この当接面38bは、ライナ36の外側表面36bに当接するようになっている。このため、キャリアリング11の軸方向に直交する断面内において揺動する軸受パッド30及びライナ36を、ピボット38により適切に支持することができる。図示される例では、ピボット38は、キャリアリング11の軸方向に直交する断面形状が円弧状であるとともに、軸方向を含む断面形状が円弧状となっている。すなわち、ピボット38は、当接面38bが球面形状の球面ピボットである。そのため、軸受パッド30の軸方向における揺動もピボット38によって適切に支持できる。
【0031】
図1乃至
図6を参照して、上記構成を有するティルティングパッド軸受10においては、ロータ2の停止時、軸受パッド30,32の上流側端部とロータ2の外周面との間の軸受すきまと、軸受パッド30,32の下流側端部とロータ2の外周面との間の軸受すきまとは所定の間隔に維持されている。ロータ2の回転が開始すると、ロータ2の回転によって、軸受パッド30,32の軸受パッド30,32の軸受面30aとロータ2の外周面との間の軸受すきまに上流側端部側から潤滑油が引き込まれ、軸受すきまにくさび状油膜が形成される。このとき、軸受パッド30,32及びライナ36はピボット38との当接部37を中心に傾くので、軸受パッド30,32の軸受面30aの上流側端部とロータ2の外周面との間の軸受すきまは停止時に比べて拡がり、軸受パッド30,32の軸受面30aの下流側端部とロータ2の外周面との間の軸受すきまは停止時に比べて狭まる。軸受パッド30,32の軸受面30aとロータ2の外周面との間に形成されたくさび形油膜によって、軸受パッド30,32とロータ2との間の潤滑性が確保され、ロータ2がティルティングパッド軸受10によって安定的に支持される。
【0032】
また、上記ティルティングパッド軸受10において、ライナ36の外側表面36bとピボット38との当接部37は、下半部キャリアリング13の第2凹部19の内側に位置する。
このように、下半部キャリアリング13に形成された第2凹部19の内側に、ライナ36の外側表面36bとピボット38との当接部37が位置するので、軸受パッド30及びライナ36の傾動に伴う軸受パッド30の曲率中心の変位量に対する、ライナ36の外側表面36bとピボット38との摺動距離の比が小さくなり、当接部37におけるフレッティング摩耗を抑制できる。すなわち、
図7に示すように、第2凹部19の内側に当接部37が位置する場合における軸受パッド30の曲率中心
M1から当接部37までの距離d
1は、キャリアリング11よりも内周側に当接部37が位置する場合における軸受パッド30の曲率中心
M1から当接部37までの距離d
2よりも長くなる。軸受パッド30が当接部37を支点として曲率中心
M1から曲率中心
M2まで同じ角度θだけ傾斜したとき、距離d
2よりも長い距離d
1の方が、軸受パッド30の曲率中
心の変位量は大きくなる。つまり、軸受パッド30の曲率中
心の変位量が同じとき、距離d
2よりも長い距離d
1の方が、軸受パッド30の傾斜角θは小さくてすむ。ライナ36の外側表面36bとピボット38との当接部37との摺動距離は軸受パッド30の傾斜角θに対応しているので、軸受パッド30の曲率中
心から当接部37までの距離d
1を長くすることでライナ36の外側表面36bとピボット38との摺動距離も小さくすることができ、よってフレッティング摩耗を抑制できる。なお、
図7において、軸受パッド30’、ライナ36’及び当接部37’は、傾斜後の状態を示している。
【0033】
さらに、軸受パッド30は、ライナ36が第2凹部19に嵌合することで、軸受パッド30の軸受面30aの周方向に回り止めされるように構成されている。すなわち、ライナ36は、軸受パッド30の第1凹部34に嵌合して軸受パッド30に固定されているので、ライナ36がキャリアリング11の第2凹部19に嵌合することで、軸受パッド30はキャリアリング11に対して周方向に回り止めされるようなっている。なお、軸受面30aの周方向とは、ロータ2の回転方向Sと概ね一致する。
これにより、ロータ2の回転によって軸受パッド30が周方向(回転方向S)に移動してしまうことを防止できる。また、回り止めの機構を別に設けなくてもよくなり、軸受構造の簡素化が図れる。
【0034】
図3乃至
図6に戻り、下半部キャリアリング13の第2凹部19の側壁面19cとライナ36の側壁面36cとの間には間隙が形成されていてもよい。この場合、ライナ36は、下半部キャリアリング13に対して前記間隙の大きさに応じた量だけ傾動可能となっている。
この構成によれば、下半部キャリアリング13の第2凹部19の側壁面19cとライナ36の側壁面36cとの間に間隙が形成されているため、下半部キャリアリング13とライナ36との干渉を防止してライナ36を自在に傾動可能とすることができる。なお、軸受パッド30が意図せず周方向に回動した際に、第2凹部19の側壁面19cとライナ36の側壁面36cとが接触することにより軸受パッド30の回動を阻止するように構成されていてもよい。
【0035】
一実施形態において、軸受パッド30の軸受面(内周面)30aの周方向幅をW
pad1とし、ライナ36の外側表面36bの周方向幅をW
L1としたとき、0.3W
pad1≦W
L1≦0.5W
pad1を満たす。
また、軸受パッド30の軸受面(内周面)30aの軸方向幅をW
pad2とし、ライナ36の外側表面36bの軸方向幅をW
L2としたとき、0.25W
pad2≦W
L2≦0.5W
pad2を満たす。
これらの構成によれば、ライナ36の剛性を向上させることができる。よって、ロータ2の回転に起因した温度上昇及びピボット38から受ける支持荷重によって曲率が小さくなる方向に変形しようとする軸受パッド30をライナ36によって背面側から支えることで、軸受パッド30の変形を抑制できる。
【0036】
また、ライナ36の厚さは、ピボット38の厚さよりも大きくてもよい。
この構成によれば、ライナ36の剛性を向上できるので、ロータ2の回転に起因した温度上昇及びピボット38から受ける支持荷重によって曲率が小さくなる方向に変形しようとする軸受パッド30をライナ36によって背面側から支えることで、軸受パッド30の変形を抑制できる。また、上述したように、ライナ36の外側表面36bとピボット38との当接部37が下半部キャリアリング13の第2凹部19の内側に位置するので、ライナ36の厚さをピボット38の厚さに比べて大きくしやすい。
【0037】
幾つかの実施形態において、ライナ36の内側表面36aの周方向幅をW
L1とし、ライナ36の外側表面36bに当接するピボット38の当接面38bの周方向幅をW
P1としたとき、0.5W
P1≦W
L1≦1.1W
P1を満たす。
また、ライナ36の内側表面36aの軸方向幅をW
L2とし、ライナ36の外側表面36bに当接するピボット38の当接面38bの軸方向幅をW
P2としたとき、0.5W
P2≦W
L2≦1.1W
P2を満たす。
以下、上記構成を有する各実施形態について説明する。
【0038】
図3及び
図4に示す一実施形態は、一例として、原子力プラントに具備される蒸気タービンに用いられるティルティングパッド軸受10を示している。
図3に示す例では、ライナ36の内側表面36aの周方向幅をW
L1とし、ライナ36の外側表面36bに当接するピボット38の当接面38bの周方向幅をW
P1としたとき、0.9W
P1≦W
L1≦1.1W
P1を満たす。
図4に示す例では、ライナ36の内側表面36aの軸方向幅をW
L2とし、ライナ36の外側表面36bに当接するピボット38の当接面38bの軸方向幅をW
P2としたとき、0.9W
P2≦W
L2≦1.1W
P2を満たす。
なお、図示される例では、ライナ36の内側表面36aの周方向幅W
L1と、ピボット38の当接面38bの周方向幅W
P1とが概ね一致し、且つ、ライナ36の内側表面36aの軸方向幅W
L2と、ピボット38の当接面38bの軸方向幅W
P2とが概ね一致している。この場合、第2凹部19は、ピボット38が嵌合する部位の径と、ライナ36が位置する部位の径とは略同一であり、第2凹部19の側壁面19cに段差は設けられていない。
【0039】
図5及び
図6に示す他の実施形態は、一例として、ガスタービンに用いられるティルティングパッド軸受10を示している。
図5に示す例では、ライナ36の内側表面36aの周方向幅をW
L1とし、ライナ36の外側表面36bに当接するピボット38の当接面38bの周方向幅をW
P1としたとき、0.5W
P1≦W
L1≦0.7W
P1を満たす。
図6に示す例では、ライナ36の内側表面36aの軸方向幅をW
L2とし、ライナ36の外側表面36bに当接するピボット38の当接面38bの軸方向幅をW
P2としたとき、0.5W
P2≦W
L2≦0.7W
P2を満たす。
なお、図示される例では、ライナ36の内側表面36aの周方向幅W
L1の方が、ピボット38の当接面38bの周方向幅W
P1よりも大きく、且つ、ライナ36の内側表面36aの軸方向幅W
L2の方が、ピボット38の当接面38bの軸方向幅W
P2よりも大きい。そのため、第2凹部19は、ピボット38が嵌合する部位の径よりもライナ36が位置する部位の径の方が大きく形成されている。すなわち、第2凹部19は、ピボット38が嵌合する側壁面19cと、該側壁面19cから段差を介して延在する側壁面19dと、を含む。
【0040】
上述したように、本発明の実施形態によれば、キャリアリング11(下半部キャリアリング13)に形成された第2凹部19の内側に、ライナ36の外側表面36bとピボット38との当接部37が位置するので、軸受パッド30,32及びライナ36が傾動して軸受パッド30,32の曲率中心が変位したとき、ライナ36の外側表面36bとピボット38との当接部37との摺動距離が小さくなり、当接部37におけるフレッティング摩耗を抑制できる。
【0041】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0042】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【解決手段】ティルティングパッド軸受は、少なくとも一つの軸受パッドと、前記軸受パッドの外周面に設けられた第1凹部に嵌合して前記軸受パッドに固定され、且つ、前記第1凹部の底面に全面が接触する内側表面を有するライナと、前記ライナの前記内側表面とは反対側の外側表面に当接し、且つ、少なくとも軸受パッドの曲率中心が変位するように前記ライナを傾動可能に支持するピボットと、前記軸受パッドの外周側に設けられ、前記ピボットが嵌合する第2凹部を内周面に有するキャリアリングと、を備える。前記ライナの前記外側表面と前記ピボットとの当接部は前記第2凹部の内側に位置する。前記軸受パッドは、前記ライナが前記第2凹部に嵌合することで、前記軸受パッドの前記軸受面の周方向に回り止めされるように構成される。