【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、製造スケールが大きくなり、生産数量の増加に伴ってPTH類縁物質の生成量が実質的に許容できない程度までに増加することが危惧されるに至り、当該PTH類縁物質を単離しキャラクタゼーションすることに成功した。更に、当該PTH類縁物質の生成が、PTHペプチド含有溶液等の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することにより顕著に防止・低減されることを見出した。
【0011】
また、理論に拘束されるわけではないが、前記でキャラクタリゼーションされたPTH類縁物質の構造的特徴、および当該類縁物質の生成が医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することにより防止・低減された事実から、それらのPTH類縁物質の生成が、医薬品製造施設内空気環境内に存在する酸化能を有する物質に起因すると推定された。確かに、医薬品製造施設の空気環境は、高い清浄度(グレードA等)であることの他に、屡、酸化能を有する気体性物質を含むことがある。つまり、医薬品製造施設は、より徹底した無菌環境を実現するためにホルムアルデヒドやオゾン等の滅菌剤により燻蒸消毒されることがある。そして、当該燻蒸消毒の残留物としてホルムアルデヒドやオゾンといった酸化能を有する気体を含有する場合があり得ることにも思い至ったのである。更に言えば、燻蒸消毒の有無に拘らずオゾンは大気中にも0.001〜0.02ppm、場所や時間、季節によっては約0.02〜0.1ppmの濃度で存在している。
【0012】
しかるに、本発明者らは、本発明で明らかとなったPTH類縁物質の生成が、オゾンを含有する空気に対してPTHペプチドを接触させることにより再現されることも確認した。
【0013】
したがって本発明は以下の局面及び好適な実施態様を包含する。
【0014】
[1] 高純度のPTHペプチドを有効成分として含有する凍結乾燥製剤であって、但し高純度とは、当該製剤中のPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する少なくとも1種のPTH類縁物質の量が1.0%以下であり、及び/又はPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する全PTH類縁物質量が5.0%以下であることを少なくとも意味し、該凍結乾燥製剤は、凍結乾燥前のPTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制したことを特徴とする方法により製造される、前記PTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0015】
[2] 前記PTH類縁物質が、
1)類縁物質1:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より64Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(1−a)〜(1−c)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(1−a) Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly−Lys(配列番号:1)の質量数+16Da、
(1−b) His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg(配列番号:2)の質量数+16Da、及び
(1−c) Val−Glu−Trp−Leu−Arg(配列番号:3)の質量数+4Da;
2)類縁物質2:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より36Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(2−a)〜(2−c)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(2−a) Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly−Lys(配列番号:1)の質量数+16Da、
(2−b) His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg(配列番号:2)の質量数+16Da、及び
(2−c) Val−Glu−Trp−Leu−Arg(配列番号:3)の質量数+4Da;
3)類縁物質3:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より32Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(3−a)〜(3−b)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(3−a) Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly−Lys(配列番号:1)の質量数+16Da、及び
(3−b) His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg(配列番号:2)の質量数+16Da;
4)類縁物質4:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より48Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(4−a)〜(4−b)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(4−a) Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly−Lys(配列番号:1)の質量数+16Da、及び
(4−b) Val−Glu−Trp−Leu−Arg(配列番号:3)の質量数+4Da;
5)類縁物質5:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より48Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(5−a)〜(5−b)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(5−a) His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg(配列番号:2)の質量数+16Da、及び
(5−b) Val−Glu−Trp−Leu−Arg(配列番号:3)の質量数+4Da;
6)類縁物質6:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より20Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(6−a)〜(6−b)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(6−a) His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg(配列番号:2)の質量数+16Da、及び
(6−b) Val−Glu−Trp−Leu−Arg(配列番号:3)の質量数+4Da;
7)類縁物質7:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より16Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(7−a)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(7−a) Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly−Lys(配列番号:1)の質量数+16Da;
8)類縁物質8:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より16Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(8−a)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(8−a) His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg(配列番号:2)の質量数+16Da;
9)類縁物質9:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より32Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(9−a)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(9−a) Val−Glu−Trp−Leu−Arg(配列番号:3)の質量数+4Da;
10)類縁物質10:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より16Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(10−a)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(10−a) Val−Glu−Trp−Leu−Arg(配列番号:3)の質量数+16Da;又は
11)類縁物質11:
製剤に含有されたPTHペプチドの質量数より4Da大きな質量数を有し、且つ当該類縁物質をトリプシン消化した際に、以下の(11−a)のフラグメントに対応する消化物を生じる前記PTHペプチドの酸化物、
(11−a) Val−Glu−Trp−Leu−Arg(配列番号:3)の質量数+4Da、
のうちの少なくとも1種以上である、[1]記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0016】
[3] 前記PTH類縁物質が、
1)類縁物質1’:
ヒトPTH(1−34)の8位および18位メチオニンに対応する残基がメチオニンスルホキシド残基に、並びに23位トリプトファンに対応する残基が下記構造式(a)で示される残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物、
【化1】
;
2)類縁物質2’:
ヒトPTH(1−34)の8位および18位メチオニンに対応する残基がメチオニンスルホキシド残基に、並びに23位トリプトファンに対応する残基が下記構造式(b)で示される残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物、
【化2】
;
3)類縁物質3’:
ヒトPTH(1−34)の8位および18位メチオニンに対応する残基がメチオニンスルホキシド残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物;
4)類縁物質4’:
ヒトPTH(1−34)の8位メチオニンに対応する残基がメチオニンスルホキシド残基に、並びに23位トリプトファンに対応する残基が上記構造式(a)で示される残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物;
5)類縁物質5’:
ヒトPTH(1−34)の18位メチオニンに対応する残基がメチオニンスルホキシド残基に、並びに23位トリプトファンに対応する残基が上記構造式(a)で示される残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物;
6)類縁物質6’:
ヒトPTH(1−34)の18位メチオニンに対応する残基がメチオニンスルホキシド残基に、並びに23位トリプトファンに対応する残基が上記構造(b)で示される残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物;
7)類縁物質7’
ヒトPTH(1−34)の8位メチオニンに対応する残基がメチオニンスルホキシド残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物;
8)類縁物質8’
ヒトPTH(1−34)の18位メチオニンに対応する残基がメチオニンスルホキシド残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物;
9)類縁物質9’:
ヒトPTH(1−34)の23位トリプトファンに対応する残基が上記構造式(a)で示される残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物;
10)類縁物質10’:
ヒトPTH(1−34)の23位トリプトファンに対応する残基が下記構造式(c−1)又は(c−2)で示されるトリプトファン一酸化物残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物;
【化3】
;又は
11)類縁物質11’:
ヒトPTH(1−34)の23位トリプトファンに対応する残基が上記構造式(b)で示される残基に変化した前記PTHペプチドの酸化物、
のうちの少なくとも1種以上である、[1]記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0017】
[4] 前記高純度が、製剤中の少なくとも1種以上の上記類縁物質1乃至11の量が該製剤中のPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して1.0%以下であり、及び/又は上記類縁物質量1乃至11の合計量がPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して5.0%以下であることを意味する、[2]に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0018】
[5] 前記高純度が、製剤中の少なくとも1種以上の上記類縁物質1’乃至11’の量が該製剤中のPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して1.0%以下であり、及び/又は上記類縁物質量1’乃至11’の合計量がPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して5.0%以下であることを意味する、[3]に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0019】
[6] 前記PTHペプチドがヒトPTH(1−34)である、[1]乃至[5]いずれか1つに記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0020】
[7] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤がガラス製バイアルに収容された製剤である、[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0021】
[8] 凍結乾燥前のPTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露の抑制が、PTHペプチド含有溶液調製工程、無菌濾過工程、薬液充填工程、及び凍結乾燥手段への搬入工程のいずれか1以上の工程で行われることを特徴とする、[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0022】
[9] 更に、凍結乾燥後のバイアル封栓工程においても凍結乾燥物が医薬品製造施設内空気環境に暴露されることを抑制することを含む方法により製造されることを特徴とする、[8]に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0023】
[10] 凍結乾燥前のPTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露の抑制が、凍結乾燥手段への搬入工程で行われることを特徴とする、[1]乃至[9]のいずれか1項に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0024】
[11] 前記暴露の抑制が、医薬品製造施設内空気が凍結乾燥手段内へ流入することを抑制する手段が講じられた凍結乾燥庫を用いることで行われることを特徴とする、[10]に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0025】
[12] 前記凍結乾燥手段が、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を収容する容器を該手段に搬出入する際に開く小扉部分に生じる開口部に備えられた容易に開閉可能な副扉を有する凍結乾燥庫であり、それにより前記搬入工程において、該副扉を容器搬入時のみ開け且つ搬入後は速やかに閉めることで凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することを特徴とする、[11]に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0026】
[13] 前記凍結乾燥手段が、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を収容する容器を該手段に搬出入する際に開く小扉部分に生じる開口部を有する凍結乾燥庫であり、医薬品製造施設内空気が凍結乾燥手段内へ流入することを抑制する手段が、流動空気の流れを該開口部から庫内に向かわない方向に変える整風カバーである、[11]に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
[14] 前記搬入工程が、凍結乾燥手段内を不活性ガスで置換することで凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することを特徴とする、[10]に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0027】
[15] 前記凍結乾燥手段が、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を収容する容器を該手段に搬出入する際に開く小扉部分に生じる開口部に備えられた容易に開閉可能な副扉を有する凍結乾燥庫であり、それにより前記搬入工程において、該副扉を容器搬入時のみ開け搬入後は速やかに閉めること、並びに凍結乾燥手段内を不活性ガスで置換することで凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することを特徴とする、[10]に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0028】
[16] 前記凍結乾燥手段が、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を収容する容器を該手段に搬出入する際に開く小扉部分に生じる開口部を有し、更に該開口部に整風カバーを備える凍結乾燥庫であり、それにより前記搬入工程において、該整風カバーが流動空気の流れを庫内に向かわない方向に変えること、並びに凍結乾燥手段内を不活性ガスで置換することで凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することを特徴とする、[10]に記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
[17] 前記搬入工程が3時間以上にわたる該工程である、[10]乃至[16]のいずれか1つに記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0029】
[18] PTHペプチド含有溶液調製工程の開始から凍結乾燥手段への搬入工程の終了までが3時間以上にわたり、その間の1以上の工程においてPTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露が抑制される方法により製造されることを特徴とする、[8]乃至[17]のいずれか1つに記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0030】
[19] 前記不活性ガスが窒素ガスである、[14]乃至[18]のいずれか1つに記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0031】
[20] 高純度のPTHペプチドを有効成分として含有する凍結乾燥製剤であって、該凍結乾燥製剤は、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を凍結乾燥手段へ搬入する際に医薬品製造施設内空気環境に対して暴露されるのを抑制したことを特徴とする方法で製造され、但し前記高純度とは当該製剤中のPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する少なくとも1種のPTH類縁物質の量が1.0%以下であり、及び/又はPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する全PTH類縁物質量が5.0%以下であることを少なくとも意味し、前記搬入工程は3時間以上にわたる工程であり、且つ前記空気環境はHEPAフィルターを通過した清浄な空気が上から下方に向かって一方向の気流として維持されている環境であり、該HEPAフィルター直下20cmの位置の気流が0.2〜1.0m/sの流速気流である、PTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
[21] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤の製造方法であって、PTHペプチド含有溶液調製工程の開始から凍結乾燥手段への搬入工程終了の間の1以上の工程においてPTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することを特徴とする方法。
【0032】
[22] 更に、凍結乾燥後のバイアル封栓工程においても凍結乾燥物が医薬品製造施設内空気環境に暴露されることを抑制することを含む、[21]に記載の方法。
【0033】
[23] 凍結乾燥手段への搬入工程においてPTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することを特徴とする、[21]又は[22]に記載の方法。
【0034】
[24] 前記暴露の抑制が、医薬品製造施設内空気が凍結乾燥手段内へ流入することを抑制する手段が講じられた凍結乾燥庫を用いることを特徴とする、[23]に記載の方法。
【0035】
[25] 凍結乾燥手段への搬入工程が3時間以上にわたる該工程である、[23]又は[24]に記載の方法。
【0036】
[26] 前記凍結乾燥手段が、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を収容する容器を搬出入する際に開く小扉部分に生じる開口部に備えられた容易に開閉可能な副扉を有する凍結乾燥庫であり、それにより前記搬入工程において、該副扉を容器搬入時のみ開け搬入後は速やかに閉めることで凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制する、[24]又は[25]に記載の方法。
【0037】
[27] 前記凍結乾燥手段が、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を収容する容器を該手段に搬出入する際に開く小扉部分に生じる開口部を有する凍結乾燥庫であり、医薬品製造施設内空気が凍結乾燥手段内へ流入することを抑制する手段が、流動空気の流れを該開口部から庫内に向かわない方向に変える整風カバーである、[24]又は[25]に記載の方法。
[28] 凍結乾燥手段内を不活性ガスで置換することで凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することを特徴とする、[23]又は[25]に記載の方法。
【0038】
[29] 前記凍結乾燥手段が、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を収容する容器を搬出入する際に開く小扉部分に生じる開口部に備えられた容易に開閉可能な副扉を有する凍結乾燥庫であり、それにより前記搬入工程において、該副扉を溶液容器搬入時のみ開け搬入後に速やかに閉めること、並びに凍結乾燥手段内を不活性ガスで置換することで凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することを特徴とする、[23]又は[25]に記載の方法。
[30] 前記凍結乾燥手段が、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を収容する容器を該手段に搬出入する際に開く小扉部分に生じる開口部を有し、更に該開口部に整風カバーを備える凍結乾燥庫であり、それにより前記搬入工程において、該整風カバーが流動空気の流れを庫内に向かわない方向に変えること、並びに凍結乾燥手段内を不活性ガスで置換することで凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液の医薬品製造施設内空気環境への暴露を抑制することを特徴とする、[23]又は[25]に記載の方法。
【0039】
[31] 前記不活性ガスが窒素である、[28]乃至[30]のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
[32] 前記PTHペプチド含有溶液を収容する容器がガラス製バイアルである、[21]乃至[31]のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
[33] 前記PTHがヒトPTH(1−34)である、[21]乃至[32]のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
[34] 医薬品製造施設内空気環境が、1)グレードAの空気であり、2)粒径0.3μmの粒子を99.97%以上の効率で捕らえる性能を有するHEPA フィルターを通過した清浄な空気が上から下方に向かって一方向の気流として維持されており、且つ、3)含有オゾン濃度が0.001〜0.1ppmの空気環境である、[21]乃至[33]のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
[35] 医薬品製造施設内空気環境が、含有ホルムアルデヒド濃度0.1ppm以下の空気環境である、[21]乃至[34]のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
[36] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤中のPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する少なくとも1種のPTH類縁物質の量を1.0%以下とし、及び/又はPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する全PTH類縁物質量を5.0%以下とするための、[21]乃至[35]のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
[37] 上記[2]に記載のPTH類縁物質1乃至11の生成を抑制するための、[21]乃至[36]のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
[38] 上記[3]に記載のPTH類縁物質1’乃至11’ の生成を抑制するための、[21]乃至[36]のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
[39] 上記[21]〜[38]のいずれか1つに記載の方法により製造された、PTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
[40] 高純度のPTHペプチドを有効成分として含有する凍結乾燥製剤の製造方法であって、該製造方法は、凍結乾燥前PTHペプチド含有溶液を凍結乾燥手段へ搬入する際に医薬品製造施設内空気環境に対して暴露されるのを抑制したことを特徴とする方法であり、但し前記高純度とは、当該製剤中のPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する少なくとも1種のPTH類縁物質の量が1.0%以下であり、及び/又はPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する全PTH類縁物質量が5.0%以下であることを少なくとも意味し、前記搬入工程は3時間以上にわたる工程であり、且つ前記空気環境はHEPAフィルターを通過した清浄な空気が上から下方に向かって一方向の気流として維持されている環境であり、該HEPAフィルター直下20cmの位置の気流が0.2〜1.0m/sの流速気流である、前記製造方法。
【0048】
更に本発明は、PTHペプチド含有凍結乾燥製剤の医薬品としての適合性の保証及び法令の遵守のために重要である検査方法を意図する。当該検査方法は、前記PTH類縁物質のいずれか1つ以上、またはその全ての存在確認、及び/又は存在量を定量することを特徴とする。当該局面及び好適な実施態様として以下のものを包含する。
【0049】
[41] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤の検査方法であって、該方法は、該PTHペプチド含有凍結乾燥製剤中における[2]に記載のPTH類縁物質1乃至11の少なくとも1種以上の存在を確認、及び/又は存在量を定量することを特徴とする方法。
【0050】
[42] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤の検査方法であって、該方法は、該PTHペプチド含有凍結乾燥製剤中における[3]に記載のPTH類縁物質1’乃至11’の少なくとも1種以上の存在を確認、及び/又は存在量を定量することを特徴とする方法。
【0051】
[43] 前記PTH類縁物質の定量が、PTHペプチド含有凍結乾燥製剤に由来する試料を高速液体クロマトグラフィーに付して紫外部吸収を測定した際のクロマトグラム上における前記PTH類縁物質に相当するピークの面積を計算することを含む、[41]又は[42]に記載の方法。
【0052】
[44] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤に由来する試料を高速液体クロマトグラフィーに付して紫外部吸収を測定した際のクロマトグラム上における前記PTH類縁体に相当するピークの面積と、同一クロマトグラム上におけるPTHペプチドに相当するピーク面積或いはPTHペプチドのピーク面積とそれ以外に検出された全てのPTH類縁物質のピーク面積の和を比較することで当該PTHペプチド含有凍結乾燥製剤中のPTHペプチドの純度を算出することを含む、[43]に記載の方法。
【0053】
[45] 前記クロマトグラム上で前記PTH類縁物質のいずれか2種以上が1又は2以上の単一ピークとして検出されるクロマトグラフィー条件を適用した場合において、当該ピークの面積と、同一クロマトグラム上におけるPTHペプチドに相当するピーク面積或いはPTHペプチドのピーク面積とそれ以外に検出された全てのPTH類縁物質のピーク面積の和を比較することで当該PTHペプチド含有凍結乾燥製剤中のPTHペプチドの純度を算出することを含む、[44]に記載の方法。
【0054】
[46] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤中のPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する少なくとも1種のPTH類縁物質の量が1.0%以下、及び/又はPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する全PTH類縁物質量が5.0%以下であることを保証するための、[41]乃至[45]のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
[47] 更に、高速液体クロマトグラフィー質量分析計を用いて前記PTH類縁物質の質量数を検出することを含む、[41]乃至[46]のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
[48] 更に、前記クロマトグラム上で単一ピークを与える物質を分取し、当該物質をトリプシン消化して生じるフラグメントの質量数を同定することを含む、[41]乃至[47]のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
[49] 上記[41]乃至[48]のいずれか1つに記載の検査方法を実施する工程を含む、PTHペプチド含有凍結乾燥製剤から成る医薬品の製造方法。
【0058】
更に、本発明の好適なPTHペプチド含有凍結乾燥製剤として以下の局面も意図される。
【0059】
[50] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤であって、少なくとも1以上のPTH類縁物質がPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して1.0%以下であり、及び/又全PTH類縁物質量がPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して5.0%以下であることを特徴とするPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0060】
[51] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤であって、それぞれのPTH類縁物質のいずれもがPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して1.0%以下であり、及び/又全PTH類縁物質量がPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して5.0%以下であることを特徴とするPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0061】
[52] PTH類縁物質が上記[2]記載の類縁物質である、[50]又は[51]記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0062】
[53] PTH類縁物質が上記[3]記載の類縁物質である、[50]又は[51]記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0063】
[54] PTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する類縁物質量が少なくとも下記の関係:
類縁物質1量が0.04%以下;
類縁物質3と類縁物質4の合計量が0.11%以下;
類縁物質5の量が0.26%以下;
類縁物質7の量が0.33%以下;
類縁物質8の量が0.21〜1.00%から任意に選ばれる百分率以下;及び
類縁物質9の量が0.68%以下
にある、[52]記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0064】
[55] PTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対する類縁物質量が少なくとも下記の関係:
類縁物質1’量が0.04%以下;
類縁物質3’と類縁物質4’の合計量が0.11%以下;
類縁物質5’の量が0.26%以下;
類縁物質7’の量が0.33%以下;
類縁物質8’の量が0.21〜1.00%から任意に選ばれる百分率以下;及び
類縁物質9’の量が0.68%以下
にある、[53]記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0065】
[56] 類縁物質1の量、類縁物質2の量、類縁物質3と類縁物質4の合計量、類縁物質5の量、類縁物質6の量、類縁物質7の量、類縁物質8の量、類縁物質9の量、類縁物質10及び類縁物質11の合計量のいずれもがPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して1.0%以下である、[52]記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0066】
[57] 類縁物質1’の量、類縁物質2’の量、類縁物質3’と類縁物質4’の合計量、類縁物質5’の量、類縁物質6’の量、類縁物質7’の量、類縁物質8’の量、類縁物質9’の量、類縁物質10’及び類縁物質11’の合計量のいずれもがPTHペプチド量と全PTH類縁物質量の和に対して1.0%以下である、[53]記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0067】
[58] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤が、栓を有するガラス容器に充填された製剤である、[50]乃至[57]のいずれか1つに記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0068】
[59] PTHペプチド含有凍結乾燥製剤がガラス製バイアル製剤である、[50]乃至[58]のいずれか1つに記載のPTHペプチド含有凍結乾燥製剤。
【0069】
[60] PTHペプチドがヒトPTH(1−34)である[50]乃至[59]いずれか1つに記載のPTH含有凍結乾燥製剤。