(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922963
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理方法、および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06F 13/00 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
G06F13/00 650R
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-72177(P2012-72177)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-205967(P2013-205967A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233778
【氏名又は名称】任天堂株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397037890
【氏名又は名称】株式会社インテリジェントシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130269
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 盛規
(72)【発明者】
【氏名】石原 晋
【審査官】
田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−016523(JP,A)
【文献】
特開2011−255053(JP,A)
【文献】
すばらしきこのせかい It's a Wonderful World,ゲーマガ,ソフトバンククリエイティブ株式会社,2007年 8月 1日,第24巻 第8号,p.44〜49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機能を有する情報処理装置のコンピュータを、
所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを記憶するオブジェクトデータ記憶手段と、
前記通信機能を用いて、所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理装置と通信する通信手段と、
前記通信手段によって所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理装置と通信が行われたか否かを判定する通信実績判定手段と、
前記通信実績判定手段の判定結果が前記他の情報処理装置との間で通信が行われたことを示すときは、当該通信によって前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していれば、当該受信したオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させ、当該通信によって前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していなければ、前記オブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させる制御手段として機能させる、情報処理プログラム。
【請求項2】
前記通信手段は、前記通信機能を用いて所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理装置を探索する探索手段を含み、
前記通信実績判定手段は、前記探索手段によって探索された他の情報処理装置の間で通信が行われたか否かを判定する、請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記情報処理プログラムは、前記通信が行われたか否かを示す第1の情報と、通信相手から前記所定のアプリケーションで利用可能なデータを受信したか否かを示す第2の情報を所定の記憶媒体に記憶させる実績データ記憶手段として前記コンピュータを更に機能させ、
前記実績判定手段は、前記第1の情報に基づいて、前記他の情報処理装置との間で前記通信が行われたか否かを判定し、
前記制御手段は、前記第2の情報に基づいて、前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していたか否かを判定する、請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記第1の情報は、前記他の情報処理装置との間で通信が行われた回数を示すデータであり、前記第2の情報は、前記受信したオブジェクトデータの有無を示す情報である、請求項3に記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
前記オブジェクトデータ記憶手段は、前記所定のアプリケーションが実行されることにより仮想空間内に登場する第1のオブジェクトのデータと、前記所定のアプリケーションが実行されるだけでは仮想空間内に登場しない第2のオブジェクトのデータとを予め記憶し、
前記制御手段は、前記通信実績判定手段の判定結果が前記他の情報処理装置との間で通信が行われたことを示しており、かつ、当該通信によって前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していなかったときに、前記第2のオブジェクトを前記仮想空間内に登場させる、請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
前記仮想空間に登場するオブジェクトは、前記通信実績判定手段の判定結果にかかわらず前記所定のアプリケーションが実行されることにより仮想空間内に登場する第1の種類に属するオブジェクトと、前記所定のアプリケーションが実行されただけでは仮想空間内に登場しない第2の種類に属するオブジェクトに分類されており、
前記制御手段は、前記通信実績判定手段の判定結果が前記他の情報処理装置との間で通信が行われたことを示しているときに、前記受信したオブジェクトデータあるいは前記オブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータに基づいて前記第2の種類に属するオブジェクトを仮想空間内に登場させる、請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記仮想空間内に登場させたオブジェクトを利用する所定の処理を実行するオブジェクト利用処理手段を含み、
前記オブジェクト利用処理手段は、その処理の実行に際して、前記受信したオブジェクトデータに基づくオブジェクト、および、前記オブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータに基づくオブジェクトのいずれも利用することが可能である、請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項8】
前記通信によって受信されるオブジェクトデータは、ユーザが作成したオブジェクトデータであり、前記オブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータは、ユーザが作成したオブジェクトデータとは異なる、プリセットされたオブジェクトデータである、請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項9】
通信機能を有する情報処理装置であって、
所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを記憶するオブジェクトデータ記憶手段と、
前記通信機能を用いて、所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理装置と通信する通信手段と、
前記通信手段によって所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理装置と通信が行われたか否かを判定する通信実績判定手段と、
前記通信実績判定手段の判定の結果が前記他の情報処理装置との間で通信が行われたことを示すときは、当該通信によって前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していれば、当該受信したオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させ、当該通信によって前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していなければ、前記オブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させる制御手段とを備える、情報処理装置。
【請求項10】
通信機能を有する情報処理システムであって、
所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを記憶するオブジェクトデータ記憶手段と、
前記通信機能を用いて、所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理システムと通信する通信手段と、
前記通信手段によって所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理システムと通信が行われたか否かを判定する通信実績判定手段と、
前記通信実績判定手段の判定の結果が前記他の情報処理システムとの間で通信が行われたことを示すときは、当該通信によって前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していれば、当該受信したオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させ、当該通信によって前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していなければ、前記オブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させる制御手段とを備える、情報処理システム。
【請求項11】
通信機能を有する情報処理システムのコンピュータに用いる情報処理方法であって、
前記コンピュータが、所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを記憶するオブジェクトデータ記憶ステップと、
前記コンピュータが、前記通信機能を用いて所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理システムと通信する通信ステップと、
前記コンピュータが、前記所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理システムと通信が行われたか否かを判定する通信実績判定ステップと、
前記通信実績判定ステップの判定の結果が前記他の情報処理システムとの間で通信が行われたことを示すときは、前記コンピュータが、当該通信によって前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していれば、当該受信したオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させ、当該通信によって前記所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していなければ、前記オブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させる制御ステップとを備える、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を有する情報処理装置の情報処理に関し、より特定的には、当該情報処理装置同士の通信、および、その通信結果に基づく所定の処理の実行制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近距離無線通信を用いたシステムであって、アプリケーションの実行の有無にかかわらず、当該アプリケーションで利用可能なデータを他の情報処理装置に提供可能なシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシステムでは、所定のアプリケーションの識別情報を比較して、一致した場合にのみ交換データの送受信が行われていた。そのため、いずれか一方のみしか所定のアプリケーションを有していない場合は、当該アプリケーションに関するデータの送受信は行われず、それ故に、近距離無線通信によって他の情報処理装置から受信したデータを利用するようなイベント処理が実行されることもなかった。
【0005】
それ故に、本発明の目的は、所定範囲内の通信によるユーザ体験の向上が可能な情報処理プログラム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、例えば以下のような構成例が挙げられる。
【0007】
構成例の一例は、情報処理装置のコンピュータを、オブジェクトデータ記憶手段、通信手段、通信結果判定手段、制御手段として機能させる情報処理プログラムである。オブジェクトデータ記憶手段は、所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを記憶する。通信手段は、通信機能を用いて、所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理装置と通信する。通信実績判定手段は、通信手段によって所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理装置と通信が行われたか否かを判定する。制御手段は、通信実績判定手段の判定の結果が他の情報処理装置との間で通信が行われたことを示すときは、当該通信によって所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していれば、当該受信したオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させ、当該通信によって所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していなければ、オブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータに基づくオブジェクトを仮想空間内に登場させる。
【0008】
他の構成例として、通信手段は、通信機能を用いて所定範囲内に存在する不特定の他の情報処理装置を探索する探索手段を含み、通信実績判定手段は、探索手段によって探索された他の情報処理装置の間で通信が行われたか否かを判定するようにしてもよい。
【0009】
他の構成例として、情報処理プログラムは、通信が行われたか否かを示す第1の情報と、当該通信相手から所定のアプリケーションで利用可能なデータを受信したか否かを示す第2の情報を所定の記憶媒体に記憶させる実績データ記憶手段としてコンピュータを更に機能させ、実績判定手段は、第1の情報に基づいて、他の情報処理装置との間で前記通信が行われたか否かを判定し、制御手段は、第2の情報に基づいて、所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していたか否かを判定するようにしてもよい。
【0010】
更に他の構成例として、第1の情報は、他の情報処理装置との間で通信が行われた回数を示すデータであり、第2の情報は、受信したオブジェクトデータの有無を示す情報であってもよい。
【0011】
更に他の構成例として、制御手段は、通信実績判定手段の判定結果が他の情報処理装置との間で通信が行われたことを示さないときには、オブジェクトを仮想空間内に登場させないようにしてもよい。
【0012】
更に他の構成例として、オブジェクトデータ記憶手段は、所定のアプリケーションが実行されることにより仮想空間内に登場する第1のオブジェクトのデータと、所定のアプリケーションが実行されるだけでは仮想空間内に登場しない第2のオブジェクトのデータとを予め記憶し、制御手段は、通信実績判定手段の判定結果が他の情報処理装置との間で通信が行われたことを示しており、かつ、当該通信によって所定のアプリケーションで利用可能なオブジェクトデータを受信していなかったときに、第2のオブジェクトを仮想空間内に登場させるようにしてもよい。
【0013】
更に他の構成例として、仮想空間に登場するオブジェクトは、通信実績判定手段の判定結果にかかわらず所定のアプリケーションが実行されることにより仮想空間内に登場する第1の種類に属するオブジェクトと、所定のアプリケーションが実行されただけでは仮想空間内に登場しない第2の種類に属するオブジェクトに分類されていてもよい。そして、制御手段は、通信実績判定手段の判定結果が他の情報処理装置との間で通信が行われたことを示しているときに、受信したオブジェクトデータあるいはオブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータに基づいて第2の種類に属するオブジェクトを生成して仮想空間内に登場させてもよい。
【0014】
更に他の構成例は、通信によって受信されるオブジェクトデータはユーザが作成したオブジェクトデータであり、オブジェクトデータ記憶手段に予め記憶されているオブジェクトデータは、ユーザが作成したオブジェクトデータとは異なる、プリセットされたオブジェクトデータであってもよい。
【0015】
上記情報処理プログラムは、任意のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、半導体メモリカード、ROM、RAMなど)に格納され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、データ交換のための通信処理が実行されたにもかかわらず、所定のアプリケーションで利用可能なデータが得られなかったときでも、当該データを利用する処理と同様の処理を実行でき、ユーザ体験の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】携帯ゲーム装置10の構成の一例を示すブロック図
【
図4】「交換用近距離通信」とイベント処理との関係を示す図
【
図5】メインメモリに記憶されるプログラムおよび情報の一例を示す図
【
図6】プロセッサ等によって実行される処理の一例を示すフローチャートを示す図
【
図7】プロセッサによって実行される処理の一例を示すフローチャートを示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
図1において、携帯ゲーム装置10は、入力装置11、表示装置12、プロセッサ13、内部記憶装置14、メインメモリ15、および無線通信装置16を備えている。
【0020】
入力装置11は、携帯ゲーム装置10のユーザによって操作され、ユーザの操作に応じた信号を出力する。入力装置11は、例えば、十字スイッチや押しボタンやタッチパネルである。表示装置12は、携帯ゲーム装置10において生成された画像を画面に表示する。表示装置12は、典型的には液晶表示装置である。内部記憶装置14には、プロセッサ13によって実行されるコンピュータプログラムが格納されている。また、内部記憶装置14には、後述する「交換用近距離通信」において交換されるデータも格納される。内部記憶装置14は、典型的には、フラッシュEEPROMである。メインメモリ15は、コンピュータプログラムや情報を一時的に記憶する。無線通信装置16は、無線通信によって他の携帯ゲーム装置へ信号を送信したり、他の携帯ゲーム装置から信号を受信したりする。
【0021】
以下、本実施形態にかかる携帯ゲーム装置10の動作概要を説明する。
【0022】
まず、本実施形態において、携帯ゲーム装置10は、「交換用近距離通信」を用いることで、所定のアプリケーション(以下ではその一例として、所定のゲーム)で利用可能なデータを交換できる。ここで、「交換用近距離通信」とは、内部記憶装置14に格納された所定のデータ(以下、交換用データ)を近距離無線通信を用いて不特定の他の携帯ゲーム装置10との間で相互に送受信する通信をいう。当該「交換用近距離通信」は、例えば、携帯ゲーム装置10を所持しているユーザ同士がすれ違った際(つまり、互いに近距離無線通信が可能な範囲内にいる場合)に行われる。また、上記交換用データは、ユーザの操作等に基づいて作成されて予め内部記憶装置14の所定の領域に記憶される。交換用データの例は、例えば、所定のゲームでNPC(ノンプレイヤキャラクタ)として利用可能なキャラクタデータ(オブジェクトデータ)等が挙げられる。
【0023】
本実施形態において、この交換用データの交換が行われるのは、互いに同じゲームのデータが内部記憶装置14に記憶されている場合である。例えば、ユーザが、携帯ゲーム装置10を所持して外出する場合を想定する。このような場合、
図2に示すように、携帯ゲーム装置A、B(ユーザA、B)共に、ゲームAのキャラクタデータを内部記憶装置14に格納しているときは、両ユーザがすれ違った際に「交換用近距離通信」が行われた結果、互いのキャラクタデータが送受信される。一方、ゲーム装置AのみがゲームAのキャラクタデータを格納していた場合(ゲーム装置BにはゲームAのデータが格納されていない)は、
図3に示すように、すれ違った際に「交換用近距離通信」は発生しても、ゲームAのキャラクタデータの送受信は行われない。つまり、「交換用近距離通信」は発生したが、ユーザAは、ゲームAについての他人の作成したキャラクタデータは得られないことになる。
【0024】
そこで、本実施形態では、例えば、ユーザが帰宅した後、ユーザの操作に基づいて実行される上記所定のゲームのゲーム処理において、上記「交換用近距離通信」が発生した結果、当該ゲームに関する交換用データが得られていれば、当該交換用データを用いてイベント処理を実行する(上記
図2)。一方、「交換用近距離通信」は発生したが、所定のゲームに関するデータは得られなかったときは、携帯ゲーム装置10に予め記憶されている代替用データを用いてイベント処理を実行する(上記
図3)。
【0025】
このイベント処理の例としては、例えば、RPGやSLGにおいて、他のユーザが作成したキャラクタをNPCとしてワールドマップ上に登場させる(例えば行商人として登場させる)ことが挙げられる。そして、ゲーム内で当該キャラクタに話しかける処理を行うことで、当該キャラクタからアイテムを購入したり、戦ったりすること等ができる。なお、当該イベント処理は、「交換用近距離通信」の発生に応じて実行されるため、当該NPCは、「交換用近距離通信」が行われない限り、ゲーム内に登場してこないキャラクタでもある。
【0026】
また、上記代替用データは、上記ユーザ作成にかかるキャラクタと同等の機能を有するデータ、換言すれば、NPCとして利用可能なデータであって、例えば上記所定のゲームのゲームデータの一部として予め作成されているデータである(つまり、ゲームソフトの一部としてパッケージング・プリセットされているデータ)。例えば、データフォーマットがユーザの作成にかかるキャラクタデータと同一であり、上記イベント処理において、上記「交換用近距離通信」で得られたキャラクタデータを利用した場合と同様の処理(アイテムの購入等)が可能となるデータである。換言すれば、開発者が予め作成したキャラクタであり、一見しただけではユーザ作成によるものかどうかわからないようなキャラクタのデータである。
【0027】
図4に、上記のような「交換用近距離通信」と(所定のゲームにおける)イベント処理との関係をテーブル形式で示す。本実施形態では、上記のようなイベント処理は、「交換用近距離通信」が発生していれば発生し得ることになる。そして、このイベント処理の際に利用するデータについて、(そのイベント処理が実行されるゲーム用の)交換用データが得られていればそれを用い、交換用データが得られていなければ、上記代替用データを用いて処理を行うことになる。
【0028】
このように、本実施形態では、「交換用近距離通信」の結果、その通信結果に応じて交換用データあるいは代替用データを用いて上記イベント処理(NPCの登場)を実行する。これにより、携帯ゲーム装置10を所持する他のユーザとすれ違った場合に、「交換用近距離通信」は発生しているのに当該他のユーザが作成したキャラクタデータは得られなかった(その結果、NPCが登場しない)ことでユーザを落胆させてしまうことを防ぎ、また、上述したイベント処理の発生頻度を高めることができる。
【0029】
次に、
図5〜
図7を参照して、携帯ゲーム装置10の動作をより詳細に説明する。
【0030】
図5は、携帯ゲーム装置10のメインメモリ15に格納されるプログラムおよび情報の一例を示している。
【0031】
「交換用近距離通信」用データ201は、「交換用近距離通信」プログラム202、交換用データ203および「交換用近距離通信」回数データ207を含む。当該「交換用近距離通信」用データ201は、必要に応じて内部記憶装置14からメインメモリ15へロードされる。「交換用近距離通信」プログラム202は、「交換用近距離通信」を実行するためのプログラムである。交換用データ203は、当該データに関連するアプリ(ゲーム)を示すデータである関連アプリID204、「交換用近距離通信」において送信対象となるデータである送信データ205、および、「交換用近距離通信」において他の携帯ゲーム装置10から受信したデータである受信データ206から構成される。また、「交換用近距離通信」回数データ207は、携帯ゲーム装置10の電源投入からの「交換用近距離通信」が行われた回数を示すデータである。携帯ゲーム装置10の電源が切断されると、本データもクリア(0にリセット)される。
【0032】
ゲームデータ208は、ゲーム処理を実行するための各種プログラムおよびデータを含む。当該ゲームデータ208は、内部記憶装置14からメインメモリ15へロードされてもよいし、外部記憶装置から読み込まれてメインメモリ15にロードされてもよいし、他の携帯ゲーム装置10またはサーバ装置から受信されてメインメモリ15にロードされてもよい。
【0033】
ゲームプログラム209は、後述するようなゲーム処理を実行するためのプログラムである。通信回数カウンタ210は、ゲームのセーブデータの一部として「交換用近距離通信」回数を記録したデータである。本データは、上記「交換用近距離通信」回数データ207と共に、イベント処理の際に後述の代替キャラデータ213を利用するか否かを判定するために用いられる。ユーザキャラデータ211は、ユーザによって作成されたキャラクタのデータである。当該データが上記送信データ205にコピーされることで、他の携帯ゲーム装置10との間での交換対象として登録できる。代替キャラデータ213は、上記ユーザキャラデータ211と同様のデータフォーマットを有するデータであり、ゲーム開発者等によって予め生成されているキャラクタのデータである。このキャラクタの数については、1体だけでもよいし、複数体分用意されていても良い。イベントNPCデータ212は、上記イベント処理の一環としてゲーム中に登場させるNPC(以下、イベントNPCと呼ぶ)のデータである。当該データは、上記受信データ206あるいは代替キャラデータ213に基づき作成される。また、当該イベントNPCは、アプリを実行するだけでは登場しないキャラクタでもある。例えば、ゲームの実行が開始されても、上記「交換用近距離通信」が一度も行われていないような場合は、登場しないキャラクタである。換言すれば、「交換用近距離通信」の発生に応じて登場するキャラクタである。
【0034】
その他、上記「交換用近距離通信」の有無に関わらず、ゲームが実行されることでゲーム内に登場し得るNPC(以下、通常NPC)のデータである通常NPCデータ214等もメインメモリ15に格納される。
【0035】
次に、
図6のフローチャートを参照して、携帯ゲーム装置10のプロセッサ13および無線通信装置16の連携によって実行される「交換用近距離通信」処理の流れを説明する。この処理は、例えばゲーム装置がいわゆる「スリープ状態」(スタンバイ状態などと呼ばれることもある)のときに、バックグラウンド処理として実行される処理である。例えば、スリープ中は、基本的には無線通信装置16が主体となって動作し、必要に応じて一時的にプロセッサ13のスリープが解除され、プロセッサ13が一時的に実行主体となる等の制御が行われる(例えば、他のゲーム装置の探索処理は無線通信装置16で行い、データの送受信はプロセッサ13で行う等)。その他、例えば、プロセッサ13とは別に低消費電力で動作可能な第2のプロセッサを備えるようにし、スリープ中は当該第2のプロセッサが実行主体となるようにしてもよい。また、本処理は、「スリープ状態」でない場合でも、ユーザの指示操作などによって適宜実行されても良い。
【0036】
まず、ステップS1で、他の携帯ゲーム装置10の探索処理が実行される。これは、例えば、携帯ゲーム装置10がそれぞれ、接続要求を示すビーコンの送信処理、および、このビーコンの受信処理を繰り返すことにより実行される。次に、ステップS2において、上記探索の結果、通信可能範囲内に他の携帯ゲーム装置10が存在しているか否かが判定される。例えば、上記送信したビーコンに対して所定時間内に他の携帯ゲーム装置10からの応答信号を受信した場合や、他の携帯ゲーム装置10からの上記ビーコンを受信した場合に、肯定と判定される。
【0037】
通信可能範囲内に他の携帯ゲーム装置10が存在していなかったときは(ステップS2でNO)、上記ステップS1に戻り処理が繰り返される。存在していたときは(ステップS2でYES)、ステップS3において、「交換用近距離通信」を行うための通信路を確立する処理が実行される。通信路が確立すれば、上記関連アプリID204の送受信が行われ、ステップS4において、お互いに同じ関連アプリID204を有しているか否かが判定される。つまり、双方とも、同じゲームの交換用データ203が準備されているか否かが判定されることになる。この判定の結果、同じ関連アプリID204を有していれば(ステップS4でYES)、ステップS5において、送信データ205の送信処理、および、他のゲーム装置から送られたデータを受信データ206として格納する処理が実行される。一方、双方が同じ関連アプリID204を有していないときは(ステップS4でNO)、上記ステップS5の処理はスキップされる。
【0038】
ステップS6で、「交換用近距離通信」回数データ207に1が加算され、続くステップS7で、「交換用近距離通信」を切断するための処理が実行される。その後、上記ステップS1に戻り、例えば「スリープ状態」が解除されるまで、上記処理が繰り返される。
【0039】
なお、上記処理の他の例として、関連アプリID204を上記ビーコンに含めて送信するようにしてもよい。そして、受信した携帯ゲーム装置側で、同じ関連アプリIDを有しているか否かを判定して、有している場合にのみ通信路確立処理(ステップS3)を行うようにしても良い(つまり、上記ステップS4の処理をステップS3の前に行う)。また、有していなければ、通信路確立処理は行わず、上記ステップS6に処理を進めるようにしても良い。通信は行われなかったが、すれちがった実績はあることを記録しておくためである。つまり、本実施形態では、探索処理も通信の一態様に含まれるといえる。
【0040】
次に、
図7のフローチャートを参照して、携帯ゲーム装置10のプロセッサ13によって実行されるゲーム処理の流れを説明する。このゲームは、例えばRPGであり、ワールドマップ(フィールドマップ)上に、上記「交換用近距離通信」の結果に基づくイベントNPCが登場する。プレイヤは、ゲーム内で当該イベントNPCに話しかけることでアイテムの売買等を行うことができる。また、一旦話しかけられたイベントNPCは、アイテムの売買等の終了後、ワールドマップ上から消去される。
【0041】
まず、ゲームプログラム209の実行が開始されると、ステップS21で、通信回数カウンタ210が参照され、通信回数Xが取得される。当該通信回数Xは、上記のように、ゲームのセーブデータの一部として記録されている「交換用近距離通信」回数である。すなわち、当該データがロードされることによって、当該ゲームにおいて前回のゲーム実行時までに行われた「交換用近距離通信」回数を示す。次に、ステップS22で、ゲームのワールドマップの表示を更新する処理が実行される。これは、後述する処理でイベントNPCが配置された仮想ゲーム空間を画面表示に反映させる処理でもある。
【0042】
次に、ステップS23で、交換用データ203が参照され、受信データ206に他の携帯ゲーム装置10から受信したキャラクタデータがあるか否かが判定される。換言すれば、「交換用近距離通信」においてキャラクタデータの送受信が行われたか否かが判定されることになる。その結果、受信したキャラクタデータがないときは(ステップS23でNO)、後述のステップS27に処理が進められる。一方、受信したキャラクタデータがあるときは(ステップS23でYES)、ステップS24で、受信データ206を読み込むことで当該キャラクタデータを取得する。次に、ステップS25で、当該キャラクタデータに基づいてイベントNPCが生成され、イベントNPCデータ212として記憶される。更に、当該イベントNPCがワールドマップ上の所定の位置に配置される。次に、ステップS26で、当該イベントNPCの作成の基になった上記受信データ206が消去される。
【0043】
次に、ステップS27で、「交換用近距離通信」回数データ207が参照され、「交換用近距離通信」回数Yが取得される。当該回数Yは、携帯ゲーム装置10の電源投入時以降に行われた「交換用近距離通信」回数である。次に、ステップS28で、「交換用近距離通信」が発生しており、かつ、他の携帯ゲーム装置10との間でキャラクタの交換も行われたか否かの判定が行われる。具体的には、プロセッサ13は、通信回数Xが「交換用近距離通信」回数Yとは等しくない値であり、かつ、回数Yが0より大きい(1以上)であり、なおかつ、今回の処理ループにおいて、イベントNPCがまだ配置されていない状態であるか否かが判定される。その結果、肯定であれば(ステップS28でYES)、ステップS29において、代替キャラデータ213が取得される(複数体分のキャラクタデータが含まれている場合は、ランダムで1キャラ分のデータが取得される)。次に、ステップS30で、当該取得されたデータに基づいてイベントNPCデータ212が生成され、当該データに基づくイベントNPCがワールドマップ上の所定位置に配置される。
も説明は入れてあります(段落32,34)。
【0044】
一方、上記ステップS28の判定の結果が否定であれば(ステップS28でNO)、上記ステップS29およびS30の処理はスキップされる。
【0045】
次に、ステップS31で、通信回数カウンタ210の値が「交換用近距離通信」回数データ207の値で更新される。
【0046】
次に、ステップS32で、その他の各種ゲーム処理が実行される。例えば、ユーザの操作に基づいたキャラクタの生成処理や、このデータを送信データ205として設定する処理や、上記イベントNPCを相手にした処理(アイテムの売買等)が適宜実行される。そして、上記ステップS22に戻り、ゲーム終了の所定条件が満たされるまで上記処理が繰り返される。
【0047】
このように、本実施形態では、イベントNPCを登場させるというイベント処理の実行に際して、当該NPCの作成の基となるデータを、「交換用近距離通信」によって当該ゲームで利用できるデータを受信したか否かによって変えている。これにより、「交換用近距離通信」は行われたが、所定のゲームで利用可能なデータは受信していなかったような場合であっても、「交換用近距離通信」に基づくイベント処理を実行できる。また、イベント処理の際に利用する上記代替データは、上記受信したキャラクタデータと同様に利用することができるため、ユーザからすれば、実際のキャラデータの送受信が行われたか否かに関わらず、「交換用近距離通信」によって他のユーザからイベントNPCを得ることができたように思わせることができる。これにより、例えば、携帯ゲーム装置10自体は広く普及しているが、ゲームソフトそのものの普及率はそこまで高くないような場合であっても、「交換用近距離通信」さえ発生すれば上記イベント処理を発生させることができる。更に、ユーザからすれば、あたかも他のユーザが作成したキャラクタが登場しているかのように見えるため、当該ゲームソフトの興趣性を高めることができる。また、その結果、「交換用近距離通信」を積極的に発生させようとする動機付けをユーザに与えることも可能となる。
【0048】
また、上記イベントNPCは「交換用近距離通信」が発生していなければゲーム内に出現しないため、「交換用近距離通信」を積極的に発生させようとする契機をユーザに与え、例えば、ユーザが外出する際に携帯ゲーム装置を所持することを促進することができる。
【0049】
また、受信データに基づき生成されたNPCであっても、代替データに基づき生成されたNPCであっても、いずれの場合も同様の処理(アイテム売買等)が実行可能である。そのため、他の携帯ゲーム装置からキャラクタデータを受信したか否かを気にすることなく、「通信」が発生していれば実行され得る処理(上記イベント処理)を体験できる機会をユーザにより多く与えることができる。
【0050】
なお、他の携帯ゲーム装置10からの受信に関して、受信できるデータの件数は1件だけでもよいし、複数件受信できるようにしてもよい。例えば、ユーザが携帯ゲーム装置10を所持して外出している間に5回の「交換用近距離通信」が発生した場合は、5台の他の携帯ゲーム装置10からそれぞれ1件ずつ、計5体分の上記キャラクタデータを受信データ206として保持するようにしてもよい。この際、各データを受信した日時を示すデータも併せて保持するようにしておく。そして、ゲーム処理においては、受信した5体分のNPCを一度にワールドマップ上に登場させてもよいし、例えば、直近に受信した3体までのNPCが同時にワールドマップ上に登場するような制御を行っても良い。各NPCから話しかけられて、ワールドマップ上から消去されれば、残り(未登場)のNPCを登場させるようにすればよい。
【0051】
また、送信するデータについても、キャラクタ1体分だけのデータでもよいし、複数のキャラクタのデータを送信するようにしてもよい。
【0052】
また、上記データの交換に用いる通信手法に関して、上記実施形態では「交換用近距離通信」を例に挙げたが、この他、次のような手法で互いに近距離に存在する携帯ゲーム装置10同士の通信を行うようにしても良い。例えば、携帯ゲーム装置10がGPSを搭載しているとする。ゲーム装置は、GPSで取得した位置情報データ、位置情報データを取得したときの日時情報データ、および「交換対象データ」を所定のサーバに送信する。サーバでは、複数のゲーム装置から送信された位置情報データや日時情報データを用いて、ある時間帯において、所定距離以内まで接近した携帯ゲーム装置10を判定、抽出する。つまり、サーバにおいて、各ゲーム装置10からの位置情報を用いて各ゲーム装置10が上記のような近距離通信が可能な範囲に接近していたか(つまり、「すれちがった」か否か)を判別する。そして、「すれちがった」と判別された携帯ゲーム装置10に対して「交換対象データ」が互いに交換されるように、サーバを中継して各ゲーム装置に対して「交換対象データ」を送信するようにしてもよい。また、この手法において、位置情報データの取得については、GPSの他、例えば無線LANアクセスポイントからの電測情報(MACアドレスや電波強度)を利用して現在地を算出し、これを位置情報データとしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、
図6および
図7に示した複数の処理を1台の情報処理装置(携帯ゲーム装置10)において実行しているが、他の実施形態では、これらの複数の処理を複数の情報処理装置(例えば、携帯ゲーム装置10とサーバ装置)が分担して実行してもよい。また、
図6および
図7に示した複数の処理は、1つのコンピュータ(プロセッサ13)で実行されてもよいし、複数のコンピュータで分担して実行されてもよい。さらには、これらの複数の処理の一部または全部を専用回路によって実現してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、携帯型ゲーム装置を例に説明したが、これに限らず、他の情報処理装置と通信可能な携帯情報端末やタブレット端末、パーソナルコンピュータ等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 携帯ゲーム装置
11 入力装置
12 表示装置
13 プロセッサ
14 内部記憶装置
15 メインメモリ
16 無線通信装置