特許第5922982号(P5922982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5922982ドライアイス噴射用ノズル及びドライアイス噴射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5922982
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】ドライアイス噴射用ノズル及びドライアイス噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 5/04 20060101AFI20160510BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20160510BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20160510BHJP
   B24C 3/00 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   B24C5/04 A
   B24C1/00 A
   B24C5/02 A
   B24C3/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-101270(P2012-101270)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-226628(P2013-226628A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591107034
【氏名又は名称】日本液炭株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中林 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 航
(72)【発明者】
【氏名】細野 久朗
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−277116(JP,A)
【文献】 特開平03−166058(JP,A)
【文献】 特開平06−126627(JP,A)
【文献】 特開2011−218324(JP,A)
【文献】 特開2004−351522(JP,A)
【文献】 特開昭57−137415(JP,A)
【文献】 特開平06−190721(JP,A)
【文献】 特開2005−319535(JP,A)
【文献】 特開2011−183538(JP,A)
【文献】 特開2007−302435(JP,A)
【文献】 特開2009−178805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C1/00;5/02;5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイスが圧縮ガスと共に圧送される流路を形成し、この流路の先端側に設けられた噴出口からドライアイスを噴射するドライアイス噴射用ノズルであって、
前記噴出口が断面略矩形状を有して、前記流路内の断面積最小部から前記噴出口に向かって、前記噴出口の長手方向において漸次径が拡大すると共に、前記噴出口の短手方向において漸次径が縮小する管路を備え、なお且つ、この管路の流路断面積が、前記断面積最小部から前記噴出口に向かって漸次拡大しており、
前記管路は、前記流路の基端側に設けられた導入口から前記断面積最小部に向かって漸次径が縮小する形状を有し、
前記管路において、前記断面積最小部での流路断面積をA、適正膨張時の噴出口での流路断面積をA、前記噴出口での流路断面積をAとし、
前記導入口での流路内圧力をp、前記噴出口での流路内圧力をp、適正膨張時の噴出口でのマッハ数をM、前記圧縮ガスの比熱比をkとしたときに、
前記適正膨張時の噴出口での流路断面積Aは、前記適正膨張時の噴出口でのマッハ数Mを下記式(1)により求め、この求めた値を下記式(2)に代入することにより求まる値であり、
前記噴出口での流路断面積Aは、下記式(3)の関係を満足する値に設定されていることを特徴とするドライアイス噴射用ノズル。
【数1】
【数2】
【数3】
【請求項2】
ドライアイスを圧縮ガスと共に噴射するドライアイス噴射用ノズルと、
前記ドライアイスと前記圧縮ガスが混合される混合室と、
前記混合室にドライアイスを供給するドライアイス供給手段と、
前記混合室に圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給手段とを備え、
前記ドライアイス噴射用ノズルが、請求項に記載のドライアイス噴射用ノズルであることを特徴とするドライアイス噴射装置。
【請求項3】
前記ドライアイス噴射用ノズルは、ノズルガンを構成していることを特徴とする請求項に記載のドライアイス噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイス噴射用ノズル及びドライアイス噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、洗浄対象物に付着した汚れ等の付着物を除去する方法の1つとして、ドライアイスブラスト(ドライアイス洗浄)と呼ばれる方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。このドライアイスブラストでは、ペレット状やパウダー状等の粒子状のドライアイスを圧縮空気等の圧縮ガスと共に、ノズルの先端(噴出口)から高速で噴射し、洗浄対象物の表面に吹き付ける。
【0003】
これにより、洗浄対象物の表面を傷付けることなく、この洗浄対象物に付着した汚れ等の付着物を剥離して除去することができる。また、このドライアイスブラストでは、ドライアイス自体が気化してしまうため、ブラスト後の後処理も容易である。
【0004】
このようなドライアイスを噴射するドライアイス噴射装置は、上述したドライアイスブラストによる洗浄だけでなく、例えば、電気・電子部品や光学部品、それらの加工部品等の噴射対象物に対して、例えば、洗浄やバリ取り、表面加工等の各種処理を施す際に幅広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2557383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来のドライアイス噴射装置では、1回のノズル走査でなるべく広い範囲に亘って処理を行うために、噴出口を幅方向に広げた断面略矩形状の噴射用ノズルが用いられている。
【0007】
しかしながら、このような幅広形状を有する噴射用ノズルでは、噴出口の幅方向の全域に亘って均一な圧力でドライアイスを噴射させることが困難であった。すなわち、従来のドライアイス噴射用ノズルでは、ドライアイスを噴射する際に、ノズル内を流れるドライアイスに対して圧縮ガスにより十分な加速エネルギーを与えることができなかった。
【0008】
このため、従来のドライアイス噴射装置では、噴出口の幅方向の全域に亘ってドライアイスを高速で噴射させることができず、噴射対象物に対して十分な処理が行えないといった問題が発生していた。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、噴出口の幅方向の全域に亘ってドライアイスを高速で噴射させることを可能としたドライアイス噴射用ノズル及びドライアイス噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
(1) ドライアイスが圧縮ガスと共に圧送される流路を形成し、この流路の先端側に設けられた噴出口からドライアイスを噴射するドライアイス噴射用ノズルであって、
前記噴出口が断面略矩形状を有して、前記流路内の断面積最小部から前記噴出口に向かって、前記噴出口の長手方向において漸次径が拡大すると共に、前記噴出口の短手方向において漸次径が縮小する管路を備え、なお且つ、この管路の流路断面積が、前記断面積最小部から前記噴出口に向かって漸次拡大しており、
前記管路は、前記流路の基端側に設けられた導入口から前記断面積最小部に向かって漸次径が縮小する形状を有し、
前記管路において、前記断面積最小部での流路断面積をA、適正膨張時の噴出口での流路断面積をA、前記噴出口での流路断面積をAとし、
前記導入口での流路内圧力をp、前記噴出口での流路内圧力をp、適正膨張時の噴出口でのマッハ数をM、前記圧縮ガスの比熱比をkとしたときに、
前記適正膨張時の噴出口での流路断面積Aは、前記適正膨張時の噴出口でのマッハ数Mを下記式(1)により求め、この求めた値を下記式(2)に代入することにより求まる値であり、
前記噴出口での流路断面積Aは、下記式(3)の関係を満足する値に設定されていることを特徴とするドライアイス噴射用ノズル。
【数1】
【数2】
【数3】
) ドライアイスと圧縮ガスが混合される混合室と、
前記混合室にドライアイスを供給するドライアイス供給手段と、
前記混合室に圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給手段と、
前記混合室から供給されたドライアイスを圧縮ガスと共に噴射するドライアイス噴射用ノズルとを備え、
前記ドライアイス噴射用ノズルが、前記()に記載のドライアイス噴射用ノズルであることを特徴とするドライアイス噴射装置。
) 前記ドライアイス噴射用ノズルは、ノズルガンを構成していることを特徴とする前記()に記載のドライアイス噴射装置。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、噴出口の幅方向の全域に亘ってドライアイスを高速で噴射させることを可能としたドライアイス噴射用ノズル及びドライアイス噴射装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用したドライアイス噴射装置の一例を示す模式図である。
図2】本発明を適用したドライアイス噴射用ノズルの一構成例を示し、(a)は、その正面図、(b)は、そのX−X’断面図、(c)は、そのY−Y’断面図、(d)は、そのZ−Z’断面図、(e)は、そのZ−Z’断面図、(f)は、そのZ−Z’断面図である。
図3】本発明を適用したドライアイス噴射用ノズルの変形例を示し、(a)は、その正面図、(b)は、そのX−X’断面図である。
図4】実施例1,2のドライアイス噴射用ノズルの各部寸法を示し、(a)は、そのX−X’断面図、(b)は、そのY−Y’断面図である。
図5】比較例1のドライアイス噴射用ノズルの各部寸法を示し、(a)は、その正面図、(b)は、そのX−X’断面図、(c)は、そのZ−Z’断面図、(d)は、そのZ−Z’断面図である。
図6】比較例2のドライアイス噴射用ノズルの各部寸法を示し、(a)は、その正面図、(b)は、そのX−X’断面図、(c)は、そのY−Y’断面図、(d)は、そのZ−Z’断面図、(e)は、そのZ−Z’断面図、(f)は、そのZ−Z’断面図、(g)は、そのZ−Z’断面図である。
図7】比較例3のドライアイス噴射用ノズルの各部寸法を示し、(a)は、その正面図、(b)は、そのX−X’断面図、(c)は、そのY−Y’断面図、(d)は、そのZ−Z’断面図、(e)は、そのZ−Z’断面図、(f)は、そのZ−Z’断面図、(g)は、そのZ−Z’断面図である。
図8】実施例1,2及び比較例1〜3について、圧縮ガスの速度を計算した結果を示すグラフである。
図9】ドライアイスの噴射能力を評価する試験方法を説明するための図であり、(a)は、噴出口の長手方向に沿った断面図、(b)は、噴出口の短手方向に沿った断面図である。
図10】実施例1,2及び比較例1〜3について、感圧紙が受ける力を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用したドライアイス噴射用ノズル及びドライアイス噴射装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
(ドライアイス噴射装置)
図1は、本発明を適用したドライアイス噴射装置1の一例を示す模式図である。
このドライアイス噴射装置1は、図1に示すように、ペレット状のドライアイス(ドライアイスペレット)を供給するドライアイス供給機構(ドライアイス供給手段)2と、圧縮空気(圧縮ガス)を供給する圧縮ガス供給機構(圧縮ガス供給手段)3と、ドライアイスと圧縮空気を混合する混合室4と、圧縮空気と混合されたドライアイスを噴射するノズルガン(ドライアイス噴射用ノズル)5とを概略備えている。
【0015】
ドライアイス供給機構2は、装置本体1aに組み付けられたものであり、図示を省略するドライアイスペレタイザー(ドライアイスペレット製造機)から供給されたドライアイスペレット(例えば粒径3mm)を保冷状態で貯留するホッパー6と、ホッパー6からドライアイスペレットを搬出するフィーダー7と、フィーダー7により供給されたドライアイスペレットを粉砕してパウダー状(例えば粒径0.5mm以下)のドライアイス(ドライアイス粉末)とする粉砕機8とを有して、このドライアイス粉末を混合室4へと供給する。
【0016】
圧縮ガス供給機構3は、装置本体1aの外部に配置されたコンプレッサ9を備え、このコンプレッサ9は、外部の空気を圧縮した後、この圧縮空気中に含まれるごく微量のオイルを図示を省略するオイルミストフィルターにより除外し、更に、図示を省略するドライヤーにより圧縮空気中の水分を除去した後、この清浄な圧縮空気を圧力調整弁10を介して混合室4へと供給する。
【0017】
混合室4は、装置本体1aの内部に配置されており、ドライアイス供給機構2から供給されたドライアイス粉末と、圧縮ガス供給機構3から供給された圧縮ガスとを混合して、ノズルガン5へと供給する。
【0018】
ノズルガン5は、ホース11を介して装置本体1a内の混合室4と接続されており、トリガー12を引くことで、混合室4から供給されたドライアイス粉末を圧縮空気と共に、ノズルの先端(噴出口)5aから高速で噴射する。これにより、例えば、電気・電子部品や光学部品、それらの加工部品等の噴射対象物に対して、例えば、洗浄やバリ取り、表面加工等の各種処理を施すことが可能となっている。
【0019】
なお、本発明を適用したドライアイス噴射装置は、上記図1に示すドライアイス噴射装置1の構成に必ずしも限定されるものではなく、例えば、上記粉砕機8を省略して、ドライアイスペレットを圧縮空気と共に噴射する構成であってもよい。
【0020】
また、本発明を適用したドライアイス噴射用装置は、例えば、液化炭酸ガスボンベから供給される液化炭酸ガスを使用してドライアイス粉末を生成した後、ノズルガン等のドライアイス噴射用ノズルを用いて、このドライアイス粉末を噴射するものであってもよい。この場合、圧縮ガスとして、液化窒素ガスボンベから供給される窒素ガス等を用いることができる。
【0021】
なお、本発明を適用したドライアイス噴射用装置は、洗浄対象物に付着した汚れ等の付着物を除去するドライアイスブラスト(ドライアイス洗浄)に好適に用いられるものの、そのような用途に必ずしも限定されるものではなく、上述した様々な用途に利用可能である。
【0022】
(ドライアイス噴射用ノズル)
上記ノズルガン5は、本発明を適用したドライアイス噴射用ノズルによって構成されており、例えば図2に示すような構成を有している。
【0023】
なお、図2は、本発明を適用したドライアイス噴射用ノズルの一構成例を示し、(a)は、その噴出口21側から見た正面図、(b)は、その噴出口21の長手方向Xに沿ったX−X’断面図、(c)は、その噴出口21の短手方向Yに沿ったY−Y’断面図、(d)は、その噴出口21でのZ−Z’断面図、(e)は、その断面積最小部22でのZ−Z’断面図、(f)は、その導入口23でのZ−Z’断面図である。
【0024】
具体的に、この図2(a)〜(f)に示すドライアイス噴射用ノズルは、ドライアイスが圧縮ガスと共に圧送される流路を形成し、この流路の先端側に設けられた噴出口21からドライアイスを噴射するものであり、噴出口21が断面略矩形状(本例では長方形)を有して、流路内の断面積最小部(スロートと呼ばれる。)22から噴出口21に向かって、噴出口21の長手方向Xにおいて漸次径が拡大すると共に、噴出口21の短手方向Yにおいて漸次径が縮小する管路20を備えている。なお且つ、この管路20の流路断面積は、断面積最小部22から噴出口21に向かって漸次拡大している。
【0025】
本発明では、管路20の噴出口21の長手方向Xに沿った断面形状が、断面積最小部22から噴出口21に向かって漸次径が拡大することで、このドライアイス噴射用ノズルを幅広形状とし、1回のノズル走査でなるべく広い範囲に亘ってドライアイスを噴射することが可能となっている。
【0026】
一方、本発明では、管路20の噴出口21の短手方向Yに沿った断面形状が、断面積最小部22から噴出口21に向かって漸次径が縮小することで、この噴出口21の長手方向(幅方向)Xの全域に亘って均一な圧力でドライアイスを噴射させることが可能となっている。
【0027】
また、管路20は、その基端側に設けられた導入口23から断面積最小部22に向かって漸次径が縮小する形状を有することによって、噴出口21の長手方向Xに沿った断面において、その流路が途中で細くなる、いわゆる中細ノズル(ラバールノズル)構造を有している。
【0028】
これにより、管路20内を流れるドライアイスに対して圧縮ガスにより十分な加速エネルギーを与えることができ、噴出口21の長手方向(幅方向)Xの全域に亘ってドライアイスを高速で噴射させることが可能となっている。
【0029】
なお、管路20は、断面積最小部22を挟んで出側管路20Aと入側管路20Bに分割された構造を有している。そして、出側管路20Aは、断面円形状の断面積最小部22から断面矩形状の噴出口21に向かって、噴出口21の長手方向Xに沿った断面において漸次径が拡大し、且つ、噴出口21の短手方向Yに沿った断面において漸次径が縮小する出側流路20aを形成する一方、入側管路20Bは、断面円形状の導入口23から断面円形状の断面積最小部22に向かって、噴出口21の長手方向X及び短手方向Yに沿った断面において、それぞれ漸次径が縮小する入側流路20bを形成している。
【0030】
また、出側管路20Aには、噴出口21から噴射されたドライアイスの流れを整流するための整流路24が設けられている。この整流路24は、噴出口21と同一断面形状(断面矩形状)を有して、噴出口21から軸線方向Zに延長して設けられている。
【0031】
一方、入側管路20Bには、上記混合室4から供給されるドライアイスを圧縮ガスと共に導入口23へと導入するための導入路25が設けられている。この導入路25は、導入口23と同一断面形状(断面円形状)を有して、導入口23から軸線方向Zに延長して設けられている。
【0032】
本発明では、上記管路20において、断面積最小部22での流路断面積をA、適正膨張時の噴出口21での流路断面積をA、噴出口21での流路断面積をAとし、導入口23での流路内圧力をp、噴出口21での流路内圧力をp、適正膨張時の噴出口21でのマッハ数をM、圧縮ガスの比熱比をkとしたときに、適正膨張時の噴出口でのマッハ数Mを下記式(1)により求めた後、この求めた値を下記式(2)に代入することによって、適正膨張時の噴出口21での流路断面積Aを求める。このとき、噴出口21での流路断面積Aは、下記式(3)の関係を満足する値に設定する必要がある。
【数4】
【数5】
【数6】
【0033】
すなわち、上記式(1),(2)は、不要な衝撃波の発生を防ぎつつ、ドライアイスの最適な膨張噴流を得るための条件式であり、導入口23での流路内圧力pと、噴出口21での流路内圧力pの間で圧力差が十分にあれば、この導入口23から噴出口21まで圧縮ガスが加速されて、マッハ数Mが1以上となる。
【0034】
このとき、上記式(1),(2)に適合する場合は、管路20の内部や噴出口21付近で衝撃波が発生するのを防ぎつつ、ドライアイスの最適な膨張噴流を得ることが可能である。
【0035】
そして、上記式(3)は、本発明を適用した噴射用ノズルとしての機能を発揮させるための条件式であり、上記式(3)の関係を満足する、すなわち、上記式(1),(2)により求めた適正膨張時の噴出口21での流路断面積Aよりも、噴出口21での流路断面積Aを大きくする(A<A)ことで、ドライアイスの最適な膨張噴流を得ることが可能である。
【0036】
一方、上記式(3)を満足しない場合、すなわち、A≧Aになると、圧縮ガスの膨張が不足してしまい、長手方向(幅方向)Xの全域に亘って圧縮ガスを加速させることができなくなる。その結果、噴出口21から噴射されるドライアイスの速度を高めることが困難となる。
【0037】
すなわち、このドライアイス噴射用ノズルでは、管路20内を流れる圧縮ガスの速度(流速)が高くなるほど、この圧縮ガスの流れに追従してドライアイスの速度(流速)も高めることができる。そして、噴出口21から噴射されるドライアイスの速度が高いほど、ドライアイスが噴射対象物に衝突した際のエネルギーも大きくなるため、洗浄等の処理を効率良く行うことが可能となる。
【0038】
一方、管路20の流路断面積が断面積最小部22から噴出口21に向かって漸次拡大せずに、その途中で流路断面積が拡大する場合は、圧縮ガスの膨張が不足してしまい、長手方向(幅方向)Xの全域に亘って圧縮ガスを加速させることができなくなる。その結果、噴出口21から噴射されるドライアイスの速度を高めることが困難となる。
【0039】
なお、噴出口21での流路断面積Aが断面積最小部22での流路断面積Aよりも小さくなる(A<A)場合は、圧縮ガスが噴出口21でチョークするため、この圧縮ガスを長手方向(幅方向)Xの全域に亘って加速させることができなくなる。
【0040】
以上のように、本発明によれば、噴出口21の幅方向Xの全域に亘ってドライアイスを高速で噴射させることを可能としたドライアイス噴射用ノズル、並びにそのようなドライアイス噴射用ノズルを備えたドライアイス噴射装置を提供することが可能である。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明では、図3(a),(b)に示すように、上記ドライアイス噴射用ノズル(管路20)を上記噴出口21の長手方向(幅方向)Xに複数並べて配置して又は連結して使用することも可能である。この場合、1回のノズル走査で処理できる範囲を拡大することが可能である。また、上記噴出口21の長手方向(幅方向)Xにおいて、隣接する管路20の噴出口21の間で整流路24が繋がる(重なる)ことによって、1つの整流路24を形成していてもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0043】
本実施例では、先ず、本発明のドライアイス噴射用ノズル(実施例1,2)と、比較例のドライアイス噴射用ノズル(比較例1,2,3)について、コンピュータシミュレーションによるドライアイスの加速性能の評価を行った。
【0044】
(実施例1)
実施例1のドライアイス噴射用ノズルは、上記図2に示す管路20を備えたものであり、この実施例1のドライアイス噴射用ノズル(管路20)の各部寸法は、図4に示すとおりである。
【0045】
すなわち、この実施例1のドライアイス噴射用ノズル(管路20)では、導入口23の口径Dを14mmφ、断面積最小部22の口径Dを5mmφ、噴出口21の幅W及び高さHを40mm×1.2mm、入側流路20bの長さLを20mm、出側流路20aの長さLを99.6mm、整流路24の長さLを10mmとした。また、出側管路20A及び入側管路20Bの材質をSUS304とした。
【0046】
また、圧縮ガスを空気(比熱比k=1.4)とし、上記混合室4内の圧力を0.4MPaG及び温度を0℃とし、常圧雰囲気中にドライアイスを噴射する場合、導入口23での流路内圧力pは、0.5013MPa、噴出口21での流路内圧力pは、0.1013MPaとなる。
【0047】
そして、これらの値を上記式(1)に代入すると、上記適正膨張時の噴出口21でのマッハ数Mは、1.702となる。さらに、この値を上記式(2)に代入すると、上記適正膨張時の噴出口での流路断面積Aと上記断面積最小部での流路断面積Aの比(A/A)は、1.34となる。したがって、A/Aの値は、1.83であり、実施例1では、上記式(3)の関係を満足している。
【0048】
(実施例2)
実施例2のドライアイス噴射用ノズルは、上記図2に示す管路20を備えたものであり、この実施例2のドライアイス噴射用ノズル(管路20)の各部寸法は、上記図4に示す各部寸法のうち、噴出口21の幅W及び高さHを40mm×0.66mmとした以外は、上記実施例1と同様である。この場合、上記A/Aの値は、1.0である。
【0049】
(比較例1)
比較例1のドライアイス噴射用ノズルは、図5(a)〜(d)に示すような管路20を備えたものである。
なお、図5は、比較例1のドライアイス噴射用ノズルの構成を示し、(a)は、その噴出口21側から見た正面図、(b)は、その噴出口21のX−X’断面図、(c)は、その断面積最小部22でのZ−Z’断面図、(d)は、その導入口23でのZ−Z’断面図である。
また、この図5(a)〜(d)に示す管路20において、上記図2(a)〜(f)に示す管路20と同等の部位については同じ名称及び符号を付すと共に、その説明を省略するものとする。
【0050】
この管路20は、断面円形状の断面積最小部22から断面円形状の噴出口21に向かって同径となる出側流路20aを有している。それ以外は、上記図2に示す管路20と基本的に同様の構造を有している。
【0051】
そして、この比較例1のドライアイス噴射用ノズル(管路20)の各部寸法は、図5(b)に示すとおりである。すなわち、この比較例1のドライアイス噴射用ノズル(管路20)では、導入口23の口径Dを14mmφ、噴出口21及び断面積最小部22の口径Dを5mmφ、入側流路20bの長さLを20mm、出側流路20aの長さLを99.6mmとした。また、出側管路20A及び入側管路20Bの材質をSUS304とした。
【0052】
(比較例2)
比較例2のドライアイス噴射用ノズルは、図6(a)〜(g)に示すような管路60を備えたものである。
なお、図6は、比較例2のドライアイス噴射用ノズルの構成を示し、(a)は、その噴出口21側から見た正面図、(b)は、その噴出口21の長手方向Xに沿ったX−X’断面図、(c)は、その噴出口21の短手方向Yに沿ったY−Y’断面図、(d)は、その噴出口21でのZ−Z’断面図、(e)は、その拡径部26でのZ−Z’断面図、(f)は、その断面積最小部22でのZ−Z’断面図、(g)は、その導入口23でのZ−Z’断面図である。
また、この図6(a)〜(g)に示す管路60において、上記図2(a)〜(f)に示す管路20と同等の部位については同じ名称及び符号を付すと共に、その説明を省略するものとする。
【0053】
この管路60は、断面円形状の断面積最小部22から断面矩形状の噴出口21に向かって、噴出口21の長手方向Xに沿った断面において漸次径が拡大し、且つ、噴出口21の短手方向Yに沿った断面において漸次径が拡大した後に、漸次径が縮小する出側流路20aを有している。すなわち、この出側流路20aは、噴出口21の短手方向Yに沿った断面において、その軸線方向Zの中途部に拡径部26を有して、この拡径部26から噴出口21に向かって漸次径が縮小し、且つ、断面積最小部22から拡径部26に向かって漸次径が拡大した形状を有している。それ以外は、上記図2に示す管路20と基本的に同様の構造を有している。
【0054】
そして、この比較例2のドライアイス噴射用ノズル(管路60)の各部寸法は、図6(b),(c)に示すとおりである。すなわち、この比較例2のドライアイス噴射用ノズル(管路60)では、導入口23の口径Dを14mmφ、断面積最小部22の口径Dを5mmφ、噴出口21の幅W及び高さHを40mm×1.2mm、拡径部26の幅W及び高さHを13mm×6.0mm、入側流路20bの長さLを20mm、出側流路20aの長さLを99.6mm、整流路24の長さLを10mm、断面積最小部22から拡径部26までの長さLを30mmとした。また、出側管路20A及び入側管路20Bの材質をSUS304とした。
【0055】
(比較例3)
比較例3のドライアイス噴射用ノズルは、図7(a)〜(g)に示すような管路80を備えたものである。
なお、図7は、比較例3のドライアイス噴射用ノズルの各部寸法を示し、(a)は、その噴出口21側から見た正面図、(b)は、その噴出口21の長手方向Xに沿ったX−X’断面図、(c)は、その噴出口21の短手方向Yに沿ったY−Y’断面図、(d)は、その噴出口21でのZ−Z’断面図、(e)は、その拡径部26でのZ−Z’断面図、(f)は、その断面積最小部22でのZ−Z’断面図、(g)は、その導入口23でのZ−Z’断面図である。
【0056】
この管路80は、断面円形状の断面積最小部22から断面矩形状の噴出口21に向かって、噴出口21の長手方向Xに沿った断面において漸次径が拡大した後に、漸次径が縮小し、且つ、噴出口21の短手方向Yに沿った断面において漸次径が縮小する出側流路20aを有している。すなわち、この出側流路20aは、噴出口21の長手方向Xに沿った断面において、その軸線方向Zの中途部に拡径部26を有して、この拡径部26から噴出口21に向かって漸次径が縮小し、且つ、断面積最小部22から拡径部26に向かって漸次径が拡大した形状を有している。それ以外は、上記図2に示す管路20と基本的に同様の構造を有している。
【0057】
そして、この比較例3のドライアイス噴射用ノズル(管路80)の各部寸法は、図7(b),(c)に示すとおりである。すなわち、この比較例3のドライアイス噴射用ノズル(管路80)では、導入口23の口径Dを14mmφ、断面積最小部22の口径Dを5mmφ、噴出口21の幅W及び高さHを40mm×1.2mm、拡径部26の幅W及び高さHを45mm×3.8mm、入側流路20bの長さLを20mm、出側流路20aの長さLを99.6mm、整流路24の長さLを10mm、断面積最小部22から拡径部26までの長さLを30mmとした。また、出側管路20A及び入側管路20Bの材質をSUS304とした。
【0058】
そして、これら実施例1,2及び比較例1〜3のドライアイス噴射用ノズルについて、コンピュータシミュレーションにより圧縮ガスの流れを計算し、噴射用ノズル内での圧縮ガスの速度を算出した。なお、コンピュータシミュレーションでは、上記混合室4内の圧力を0.4MPaG及び温度を0℃、噴出口から遠く離れた位置での圧力を0MPaG及び温度を0℃に設定して計算を行った。そのシミュレーション結果を図8に示す。
【0059】
図8に示すように、実施例1のドライアイス噴射用ノズルは、比較例1〜3のドライアイス噴射用ノズルよりも圧縮ガスの速度が速くなっており、優れた加速性能を有していることがわかる。特に、実施例1のドライアイス噴射用ノズルは、比較例2,3のドライアイス噴射用ノズルよりも圧縮ガスの速度が3倍以上速くなっている。
【0060】
ドライアイス噴射用ノズルでは、その流路内を流れる圧縮ガスの速度(流速)が高くなるほど、この圧縮ガスの流れに追従してドライアイスの速度(流速)も高めることができる。そして、上記噴出口21から噴射されるドライアイスの速度が高いほど、ドライアイスが噴射対象物に衝突した際のエネルギーも大きくなるため、洗浄等の処理を効率良く行うことが可能となる。
【0061】
一方、実施例2のドライアイス噴射用ノズルは、比較例2,3のドライアイス噴射用ノズルよりも圧縮ガスの速度が速いものの、実施例1のドライアイス噴射用ノズルよりも遅いことがわかる。したがって、圧縮ガスの速度を高めるためには、上記A/Aの値を1.0よりも大きい値に設定することが望ましい。
【0062】
次に、本発明のドライアイス噴射用ノズル(実施例1,2)と、比較例のドライアイス噴射用ノズル(比較例1〜3)について、図9に示すように、それぞれの噴出口21から噴射されたドライアイスDIを感圧紙Pに衝突させながら、この感圧紙Pを噴出口21の短手方向Yに一定の速度で移動させ、このとき感圧紙Pが受ける力を計測した。
【0063】
具体的には、これら実施例1,2及び比較例1〜3のドライアイス噴射用ノズルについて、圧縮ガスを空気とし、上記混合室4内の圧力を0.4MPaG及び温度を0℃とし、ドライアイスDIの供給量を20kg/h、噴出口21から感圧紙Pまでの距離を30mm、感圧紙Pの送り速度を150mm/sとして試験を実施した。
【0064】
その試験結果を図10に示す。なお、図10では、感圧紙Pが受ける力の最大値を1として、その比率を噴出口21の長手方向Xにおける圧力分布として表示した。
【0065】
図10に示すように、実施例1のドライアイス噴射用ノズルは、比較例1〜3のドライアイス噴射用ノズルよりも幅方向の全域に亘って感圧紙Pが受ける力が大きく、処理能力が高いことがわかる。
【0066】
一方、実施例2のドライアイス噴射用ノズルは、比較例2,3のドライアイス噴射用ノズルよりも感圧紙Pが受ける力が大きいものの、実施例1のドライアイス噴射用ノズルよりも感圧紙Pが受ける力が小さいことがわかる。したがって、処理能力を高めるためには、上記A/Aの値を1.0よりも大きい値に設定することが望ましい。
【0067】
一方、比較例1のドライアイス噴射用ノズルは、図8及び図10に示すように、実施例2のドライアイス噴射用ノズルよりも圧縮ガスの速度が速くなるものの、実施例2のドライアイス噴射用ノズルよりも感圧紙Pが受ける力が大きくなる幅方向の領域が極めて狭いことがわかる。したがって、比較例1のドライアイス噴射用ノズルでは、1回のノズル走査で処理できる範囲が限られてしまう。
【0068】
また、実施例1と比較例2のドライアイス噴射用ノズルは、噴出口21での流路断面積Aが同じであるが、実施例1のドライアイス噴射用ノズルから噴射される空気流量は、比較例2のドライアイス噴射用ノズルよりも少なく、この比較例2のドライアイス噴射用ノズルに対して約77%であった。
【0069】
したがって、実施例1のドライアイス噴射用ノズルを用いた場合、圧縮ガスの使用量を少なくできるため、従来よりも上記コンプレッサ9による圧縮ガスの供給能力等を下げることができ、その結果、電気料金等のランニングコストを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1…ドライアイス噴射装置 2…ドライアイス供給機構(ドライアイス供給手段) 3…圧縮ガス供給機構(圧縮ガス供給手段) 4…混合室 5…ノズルガン(ドライアイス噴射用ノズル) 5a…噴出口
20…管路 20A…出側管路 20B…入側管路 20a…出側流路 20b…入側流路 21…噴出口 22…断面積最小部 23…導入口 24…整流路 25…導入路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10