【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0043】
本実施例では、先ず、本発明のドライアイス噴射用ノズル(実施例1,2)と、比較例のドライアイス噴射用ノズル(比較例1,2,3)について、コンピュータシミュレーションによるドライアイスの加速性能の評価を行った。
【0044】
(実施例1)
実施例1のドライアイス噴射用ノズルは、上記
図2に示す管路20を備えたものであり、この実施例1のドライアイス噴射用ノズル(管路20)の各部寸法は、
図4に示すとおりである。
【0045】
すなわち、この実施例1のドライアイス噴射用ノズル(管路20)では、導入口23の口径D
1を14mmφ、断面積最小部22の口径D
2を5mmφ、噴出口21の幅W及び高さHを40mm×1.2mm、入側流路20bの長さL
1を20mm、出側流路20aの長さL
2を99.6mm、整流路24の長さL
3を10mmとした。また、出側管路20A及び入側管路20Bの材質をSUS304とした。
【0046】
また、圧縮ガスを空気(比熱比k=1.4)とし、上記混合室4内の圧力を0.4MPaG及び温度を0℃とし、常圧雰囲気中にドライアイスを噴射する場合、導入口23での流路内圧力p
0は、0.5013MPa、噴出口21での流路内圧力pは、0.1013MPaとなる。
【0047】
そして、これらの値を上記式(1)に代入すると、上記適正膨張時の噴出口21でのマッハ数Mは、1.702となる。さらに、この値を上記式(2)に代入すると、上記適正膨張時の噴出口での流路断面積A
2と上記断面積最小部での流路断面積A
1の比(A
2/A
1)は、1.34となる。したがって、A
3/A
2の値は、1.83であり、実施例1では、上記式(3)の関係を満足している。
【0048】
(実施例2)
実施例2のドライアイス噴射用ノズルは、上記
図2に示す管路20を備えたものであり、この実施例2のドライアイス噴射用ノズル(管路20)の各部寸法は、上記
図4に示す各部寸法のうち、噴出口21の幅W及び高さHを40mm×0.66mmとした以外は、上記実施例1と同様である。この場合、上記A
3/A
2の値は、1.0である。
【0049】
(比較例1)
比較例1のドライアイス噴射用ノズルは、
図5(a)〜(d)に示すような管路20を備えたものである。
なお、
図5は、比較例1のドライアイス噴射用ノズルの構成を示し、(a)は、その噴出口21側から見た正面図、(b)は、その噴出口21のX−X’断面図、(c)は、その断面積最小部22でのZ
1−Z
1’断面図、(d)は、その導入口23でのZ
2−Z
2’断面図である。
また、この
図5(a)〜(d)に示す管路20において、上記
図2(a)〜(f)に示す管路20と同等の部位については同じ名称及び符号を付すと共に、その説明を省略するものとする。
【0050】
この管路20は、断面円形状の断面積最小部22から断面円形状の噴出口21に向かって同径となる出側流路20aを有している。それ以外は、上記
図2に示す管路20と基本的に同様の構造を有している。
【0051】
そして、この比較例1のドライアイス噴射用ノズル(管路20)の各部寸法は、
図5(b)に示すとおりである。すなわち、この比較例1のドライアイス噴射用ノズル(管路20)では、導入口23の口径D
1を14mmφ、噴出口21及び断面積最小部22の口径D
2を5mmφ、入側流路20bの長さL
1を20mm、出側流路20aの長さL
2を99.6mmとした。また、出側管路20A及び入側管路20Bの材質をSUS304とした。
【0052】
(比較例2)
比較例2のドライアイス噴射用ノズルは、
図6(a)〜(g)に示すような管路60を備えたものである。
なお、
図6は、比較例2のドライアイス噴射用ノズルの構成を示し、(a)は、その噴出口21側から見た正面図、(b)は、その噴出口21の長手方向Xに沿ったX−X’断面図、(c)は、その噴出口21の短手方向Yに沿ったY−Y’断面図、(d)は、その噴出口21でのZ
1−Z
1’断面図、(e)は、その拡径部26でのZ
2−Z
2’断面図、(f)は、その断面積最小部22でのZ
3−Z
3’断面図、(g)は、その導入口23でのZ
4−Z
4’断面図である。
また、この
図6(a)〜(g)に示す管路60において、上記
図2(a)〜(f)に示す管路20と同等の部位については同じ名称及び符号を付すと共に、その説明を省略するものとする。
【0053】
この管路60は、断面円形状の断面積最小部22から断面矩形状の噴出口21に向かって、噴出口21の長手方向Xに沿った断面において漸次径が拡大し、且つ、噴出口21の短手方向Yに沿った断面において漸次径が拡大した後に、漸次径が縮小する出側流路20aを有している。すなわち、この出側流路20aは、噴出口21の短手方向Yに沿った断面において、その軸線方向Zの中途部に拡径部26を有して、この拡径部26から噴出口21に向かって漸次径が縮小し、且つ、断面積最小部22から拡径部26に向かって漸次径が拡大した形状を有している。それ以外は、上記
図2に示す管路20と基本的に同様の構造を有している。
【0054】
そして、この比較例2のドライアイス噴射用ノズル(管路60)の各部寸法は、
図6(b),(c)に示すとおりである。すなわち、この比較例2のドライアイス噴射用ノズル(管路60)では、導入口23の口径D
1を14mmφ、断面積最小部22の口径D
2を5mmφ、噴出口21の幅W
1及び高さH
1を40mm×1.2mm、拡径部26の幅W
2及び高さH
2を13mm×6.0mm、入側流路20bの長さL
1を20mm、出側流路20aの長さL
2を99.6mm、整流路24の長さL
3を10mm、断面積最小部22から拡径部26までの長さL
4を30mmとした。また、出側管路20A及び入側管路20Bの材質をSUS304とした。
【0055】
(比較例3)
比較例3のドライアイス噴射用ノズルは、
図7(a)〜(g)に示すような管路80を備えたものである。
なお、
図7は、比較例3のドライアイス噴射用ノズルの各部寸法を示し、(a)は、その噴出口21側から見た正面図、(b)は、その噴出口21の長手方向Xに沿ったX−X’断面図、(c)は、その噴出口21の短手方向Yに沿ったY−Y’断面図、(d)は、その噴出口21でのZ
1−Z
1’断面図、(e)は、その拡径部26でのZ
2−Z
2’断面図、(f)は、その断面積最小部22でのZ
3−Z
3’断面図、(g)は、その導入口23でのZ
4−Z
4’断面図である。
【0056】
この管路80は、断面円形状の断面積最小部22から断面矩形状の噴出口21に向かって、噴出口21の長手方向Xに沿った断面において漸次径が拡大した後に、漸次径が縮小し、且つ、噴出口21の短手方向Yに沿った断面において漸次径が縮小する出側流路20aを有している。すなわち、この出側流路20aは、噴出口21の長手方向Xに沿った断面において、その軸線方向Zの中途部に拡径部26を有して、この拡径部26から噴出口21に向かって漸次径が縮小し、且つ、断面積最小部22から拡径部26に向かって漸次径が拡大した形状を有している。それ以外は、上記
図2に示す管路20と基本的に同様の構造を有している。
【0057】
そして、この比較例3のドライアイス噴射用ノズル(管路80)の各部寸法は、
図7(b),(c)に示すとおりである。すなわち、この比較例3のドライアイス噴射用ノズル(管路80)では、導入口23の口径D
1を14mmφ、断面積最小部22の口径D
2を5mmφ、噴出口21の幅W
1及び高さH
1を40mm×1.2mm、拡径部26の幅W
2及び高さH
2を45mm×3.8mm、入側流路20bの長さL
1を20mm、出側流路20aの長さL
2を99.6mm、整流路24の長さL
3を10mm、断面積最小部22から拡径部26までの長さL
4を30mmとした。また、出側管路20A及び入側管路20Bの材質をSUS304とした。
【0058】
そして、これら実施例1,2及び比較例1〜3のドライアイス噴射用ノズルについて、コンピュータシミュレーションにより圧縮ガスの流れを計算し、噴射用ノズル内での圧縮ガスの速度を算出した。なお、コンピュータシミュレーションでは、上記混合室4内の圧力を0.4MPaG及び温度を0℃、噴出口から遠く離れた位置での圧力を0MPaG及び温度を0℃に設定して計算を行った。そのシミュレーション結果を
図8に示す。
【0059】
図8に示すように、実施例1のドライアイス噴射用ノズルは、比較例1〜3のドライアイス噴射用ノズルよりも圧縮ガスの速度が速くなっており、優れた加速性能を有していることがわかる。特に、実施例1のドライアイス噴射用ノズルは、比較例2,3のドライアイス噴射用ノズルよりも圧縮ガスの速度が3倍以上速くなっている。
【0060】
ドライアイス噴射用ノズルでは、その流路内を流れる圧縮ガスの速度(流速)が高くなるほど、この圧縮ガスの流れに追従してドライアイスの速度(流速)も高めることができる。そして、上記噴出口21から噴射されるドライアイスの速度が高いほど、ドライアイスが噴射対象物に衝突した際のエネルギーも大きくなるため、洗浄等の処理を効率良く行うことが可能となる。
【0061】
一方、実施例2のドライアイス噴射用ノズルは、比較例2,3のドライアイス噴射用ノズルよりも圧縮ガスの速度が速いものの、実施例1のドライアイス噴射用ノズルよりも遅いことがわかる。したがって、圧縮ガスの速度を高めるためには、上記A
3/A
2の値を1.0よりも大きい値に設定することが望ましい。
【0062】
次に、本発明のドライアイス噴射用ノズル(実施例1,2)と、比較例のドライアイス噴射用ノズル(比較例1〜3)について、
図9に示すように、それぞれの噴出口21から噴射されたドライアイスDIを感圧紙Pに衝突させながら、この感圧紙Pを噴出口21の短手方向Yに一定の速度で移動させ、このとき感圧紙Pが受ける力を計測した。
【0063】
具体的には、これら実施例1,2及び比較例1〜3のドライアイス噴射用ノズルについて、圧縮ガスを空気とし、上記混合室4内の圧力を0.4MPaG及び温度を0℃とし、ドライアイスDIの供給量を20kg/h、噴出口21から感圧紙Pまでの距離を30mm、感圧紙Pの送り速度を150mm/sとして試験を実施した。
【0064】
その試験結果を
図10に示す。なお、
図10では、感圧紙Pが受ける力の最大値を1として、その比率を噴出口21の長手方向Xにおける圧力分布として表示した。
【0065】
図10に示すように、実施例1のドライアイス噴射用ノズルは、比較例1〜3のドライアイス噴射用ノズルよりも幅方向の全域に亘って感圧紙Pが受ける力が大きく、処理能力が高いことがわかる。
【0066】
一方、実施例2のドライアイス噴射用ノズルは、比較例2,3のドライアイス噴射用ノズルよりも感圧紙Pが受ける力が大きいものの、実施例1のドライアイス噴射用ノズルよりも感圧紙Pが受ける力が小さいことがわかる。したがって、処理能力を高めるためには、上記A
3/A
2の値を1.0よりも大きい値に設定することが望ましい。
【0067】
一方、比較例1のドライアイス噴射用ノズルは、
図8及び
図10に示すように、実施例2のドライアイス噴射用ノズルよりも圧縮ガスの速度が速くなるものの、実施例2のドライアイス噴射用ノズルよりも感圧紙Pが受ける力が大きくなる幅方向の領域が極めて狭いことがわかる。したがって、比較例1のドライアイス噴射用ノズルでは、1回のノズル走査で処理できる範囲が限られてしまう。
【0068】
また、実施例1と比較例2のドライアイス噴射用ノズルは、噴出口21での流路断面積A
3が同じであるが、実施例1のドライアイス噴射用ノズルから噴射される空気流量は、比較例2のドライアイス噴射用ノズルよりも少なく、この比較例2のドライアイス噴射用ノズルに対して約77%であった。
【0069】
したがって、実施例1のドライアイス噴射用ノズルを用いた場合、圧縮ガスの使用量を少なくできるため、従来よりも上記コンプレッサ9による圧縮ガスの供給能力等を下げることができ、その結果、電気料金等のランニングコストを低減することが可能となる。