(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤ電極を用いて被加工物を放電加工するワイヤカット放電加工装置が用いられている。一般に、被加工物を加工するワイヤ電極は上下に対向して配置された上ガイド部と下ガイド部によってガイドされており、ワイヤ電極を所望の角度に支持できるように上ガイド部と下ガイド部の相対的な位置制御が行われている。
【0003】
上下ガイド部を支持する部分は、温度などの外部環境の変化による変形が生じにくく剛性の高い素材で製造することが好ましく、特許文献1および2には、上ガイド部を支持する上側支持部または下ガイド部を支持する下側支持部に、熱による変形が少なく、剛性の高い素材であるセラミックを適用した放電加工装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上側支持部は、例えば、Z軸上の変位を可能とする移動ヘッドやテーパ加工のための横方向の変位を可能とするUV移動テーブル等など、コラムから横方向に延びるように連結された複数の部品により構成されている。これらの上側支持部を構成する各部品は、その形状や構造などを実現するための製造上の制限から鋳鉄製とせざるを得ない場合が多い。
【0006】
しかしながら、例えば、上側支持部を鋳鉄製とし、下側支持部を上側支持部よりも線膨張係数が小さいセラミック等の材料から形成すると、放電加工中に環境温度が変化した場合に、材料の線膨張係数が異なるため、上側支持部の熱変化による横方向の長さの変化量が、下側支持部の熱変化による横方向の長さの変化量よりも大きくなり、上ガイド部を支持する位置と下ガイド部を支持する位置とが意図していた位置からずれてしまうという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みて、上側支持部を鋳鉄等の材料で形成するとともに下側支持部の一部をセラミック等の材料で形成した場合であっても、ワイヤ電極を上側で案内する上ガイド部とワイヤ電極を下側で案内する下ガイド部の温度変化によって生じる相対位置のずれによる加工誤差を抑制可能な放電加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるワイヤカット放電加工装置は、上下方向に延びるコラムから横方向に延びてワイヤ電極を下側で案内する下ガイド部を支持する下側支持部と、前記コラムから横方向に延びて前記ワイヤ電極を上側で案内する上ガイド部を支持するとともにセラミックよりも線膨張係数が大きい材料から形成された上側支持部とを備えたワイヤカット放電加工装置であって、前記下側支持部が、前記コラムから延びるセラミックから形成される基端部材と、該基端部材に連結されるとともに前記上側支持部の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料から形成される変位調整部を有する先端部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記、上側支持部が「線膨張係数がセラミックの線膨張係数より大きい材料から形成された」とは、上側支持部を全体で1つの部品として考えたときに、上側支持部の線膨張係数がセラミックの線膨張係数よりも大きいことを意味する。例えば、上側支持部の横方向の長さの大部分を構成する部品を形成している材料の線膨張係数がセラミックの線膨張係数より大きい場合を含む。また、上側支持部の横方向の長さに対する上側支持部を構成している各部品の横方向の長さの割合と該部品の線膨張係数の積の和がセラミックの線膨張係数より大きい場合を含む。また、上側支持部は、上側支持部の線膨張係数がセラミックの線膨張係数よりも大きいものであれば1つ以上の任意の部品から構成でき、任意の形状および構造を使用してよい。上側支持部の材料として、例えば、鋳鉄を用いることができる。また、上側支持部は、上側支持部を全体で1つの部品として考えたときに、上側支持部の線膨張係数がセラミックの線膨張係数よりも大きいものであれば、一部に任意の線膨張係数を有する材質を含んでもよく、例えば、セラミックの線膨張係数より小さい線膨張係数を有する材質を含んでもよい。
【0010】
また、上記先端部材は一部または複数の部分として変位調整部を含むものであってよく、その全体が変位調整部からなるものであってもよい。
【0011】
また、上記「横方向」は水平方向だけでなく、水平方向から傾いた方向も含む。
【0012】
また、本発明にかかるワイヤカット放電加工装置において、前記変位調整部が、ステンレス、アルミニウム合金および真鍮から選択される1つ以上の材料からなり、前記上側支持部の温度変化による横方向の長さの変化量が、前記先端部材の温度変化による横方向の長さの変化量と前記基端部材の温度変化による横方向の長さの変化量の和と等しくなるように前記先端部材の長さと前記基端部材の長さが構成されることが好ましい。
【0013】
上記「等しくなる」とは、上側支持部の温度変化による横方向の長さの変化量が、先端部材の温度変化による横方向の長さの変化量と基端部材の温度変化による横方向の長さの変化量の和が、必ずしも厳密に一致する必要はなく、放電加工における所望の加工精度を実現可能な範囲の近い値であればよい。例えば、上側支持部の温度変化による横方向の長さの変化量と、先端部材の温度変化による横方向の長さの変化量と基端部材の温度変化による横方向の長さの変化量の和との差が、上側支持部の温度変化による横方向の長さの変化量の30%以下になるようにすることが好ましく、20%以下になるようにすることがより好ましく、10%以下になるようにすることがさらに好ましい。
【0014】
また、本発明にかかるワイヤカット放電加工装置において、前記先端部材が筒状部を備え、該筒状部が前記基端部材の先端側に嵌合することにより前記基端部材と連結されていることが好ましい。
【0015】
また、筒状部とこの筒状部に勘合する基端部材の部分は、互いに嵌合可能なものであればいかなる形状であってもよいが、例えば、筒状部を円筒形状とし、この筒状部に勘合する部分を筒状部の内径と略同じ外形を有する円柱形状とすることが好ましい。
【0016】
また、本発明にかかるワイヤカット放電加工装置において、前記筒状部と前記先端部材は接着材または焼き嵌めにより連結されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のワイヤカット放電加工装置は、上下方向に延びるコラムから横方向に延びてワイヤ電極を下側で案内する下ガイド部を支持する下側支持部と、コラムから横方向に延びてワイヤ電極を上側で案内する上ガイド部を支持するとともにセラミックよりも線膨張係数が大きい材料から形成された上側支持部とを備えたワイヤカット放電加工装置であって、下側支持部が、コラムから延びるセラミックから形成される基端部材と、基端部材に連結されるとともに上側支持部の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料から形成される変位調整部を有する先端部材とを備える。
【0018】
つまり、セラミック製の基端部材の線膨張係数は上側支持部の線膨張係数より小さいものの、先端部材に含まれる変位調節部の線膨張係数は上側支持部の線膨張係数より大きいため、基端部材と先端部材の温度変化による変位量の和である下側支持部全体の温度変化による変位量は、下側支持部全体をセラミック製にした場合よりも大きくなる。このため、下側支持部と上側支持部との温度変化による変位量の差が小さくなり、下側支持部に支持された下ガイド部に対する上側支持部に支持された上ガイド部の温度変化による位置のずれを抑制できる。従って、例えば、上側支持部を鋳鉄等の材料で形成するとともに下側支持部の一部をセラミック等の材料で形成した場合であっても、ワイヤ電極を上側で案内する上ガイド部とワイヤ電極を下側で案内する下ガイド部の温度変化によって生じる位置ずれによる加工誤差を抑制可能な放電加工装置を提供することができる。
【0019】
また、本発明にかかるワイヤカット放電加工装置において、先端部材の部分が、ステンレス、アルミニウム合金および真鍮から選択される1つ以上の材料からなり、上側支持部の温度変化による横方向の長さの変化量が、先端部材の部分の温度変化による横方向の長さの変化量と基端部材の温度変化による横方向の長さの変化量の和と同じになるように先端部材の長さと基端部材の長さを構成した場合には、より下側支持部と上側支持部との温度変化による変位量の差が小さくなり、下側支持部に支持された下ガイド部に対する上側支持部に支持された上ガイド部の温度変化による位置のずれをさらに抑制できる。
【0020】
また、本発明にかかるワイヤカット放電加工装置において、先端部材が筒状部を備え、該筒状部が基端部材の先端側に嵌合することにより基端部材と連結されている場合には、基端部材と先端部材を簡単な構造により連結できるため、部材の組み立てが容易であり、製造コストの低減を図ることができる。
【0021】
また、本発明にかかるワイヤカット放電加工装置において、筒状部と先端部材は接着材または焼き嵌めにより連結されている場合には、両者をより簡易に連結することができ、製造コストを低減できる。また、筒状部にねじ止めのための孔などを設ける必要がないため、筒状部の強度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる放電加工装置1を示す。なお、
図1において、放電加工装置1の一部(加工槽40、下側支持部70、上側支持部60の一部)を断面図で示す。
図2は本実施形態に係る下側支持部の要部を拡大して示す図であり、
図3は
図2のA−A断面図である。
【0024】
放電加工装置1は、設置面に載置されたベッド10と、水平方向であるY軸方向に移動可能に、ベッド10上に設置されたサドル20と、Y軸方向と垂直な水平方向(X軸方向)に移動可能に、サドル20上に設置されたテーブル30とを備えている。テーブル30には加工槽40が取り付けられ、被加工物WPが加工槽40内のワークスタンドWS上に載置される。ベッド10の後部には、コラム50が垂直に立設されている。
【0025】
コラム50には、コラム50から水平方向に延びてワイヤ電極ELを下側で案内する下ガイドアッセンブリ81(下ガイド部)を支持する下側支持部70と、コラム50から水平方向に延びてワイヤ電極ELを上側で案内する上ガイドアッセンブリ(上ガイド部)82を支持するとともに後述するようにセラミックよりも線膨張係数が大きい材料から形成された上側支持部60とが設けられている。
【0026】
放電加工装置1は、図示しない放電加工用の電源装置から被加工物WPとワイヤ電極ELとに加工電圧を供給しつつ、図示しない制御装置により、Y軸方向にサドル20を変位させ、X軸方向にテーブル30を変位させることにより、テーブル30に載置された被加工物WPを、上ガイドアッセンブリ82と下ガイドアッセンブリ81に支持されたワイヤ電極ELに対して所望の経路に沿って相対的に移動させ、放電加工を行うことができる。このとき、放電加工装置1では、加工液の温度がベッド10、サドル20、テーブル30、コラム50を含む装置本体の温度と一致するように、加工液の温度が装置本体の温度に合わせて管理されている。
【0027】
上側支持部60は、コラム側から順に、Z軸方向に移動可能なヘッド61と、ヘッド61に取り付けられ、ワイヤ電極ELを斜めに支持してテーパ加工を行う際に、下ガイドアッセンブリ81に対して上ガイドアッセンブリ82を水平方向に相対変位させるためのUVテーブル62と、UVテーブル62に取り付けられ垂直下方向に延びる垂直アーム63A、63B、63Cと、垂直アーム63Cに取り付けられ、上ガイドアッセンブリ82を支持する上側連結部材64からなる。なお、UVテーブル62は、X軸方向に平行なU軸方向に移動可能なU軸移動ユニット62Uと、Y軸方向に平行なV軸方向に移動可能なV軸移動ユニット62Vからなる。ここでは、上側支持部60を構成する全ての部品は、製造上の制約から鋳鉄で形成されている。
【0028】
コラム50には、コラム50に固定され、水平方向に延びて、加工槽40の槽壁に設けられた貫通孔を水平に貫いて加工槽40に挿入された円筒形状のスライドパイプ91が取付けられている。スライドパイプ91には、スライドパイプ91の外縁から貫通孔の開口部分を覆うように広がるスライドプレート92が設けられ、加工槽40のスライドパイプ91に対するX軸方向の相対移動に応じてスライドプレート92もX軸方向に移動し、加工槽40の貫通孔からの液漏れを防止している。なお、スライドパイプ91が挿入される加工槽40の貫通孔は基端部材71の加工槽40に対する相対移動範囲に応じた大きさに設けられている。
【0029】
また、
図2に示すようにスライドパイプ91の内側には、スライドパイプ91を貫くように、下側支持部70とワイヤ電極ELをコラム50に向けて案内するワイヤ案内パイプ93が設けられている。放電加工後のワイヤ電極ELは、下ガイドアッセンブリ81から後述の下側連結部材73に取り付けられたプーリ94を経由し、その後ワイヤ案内パイプ93内を通過してコラム50側で回収される。
【0030】
下側支持部70は、コラム50の下方の側壁に固定されてコラム50から延び、セラミックから形成される基端部材71と、基端部材71に連結された延長部材72(変位調整部)と、延長部材72に取り付けられて下ガイドアッセンブリ81を上ガイドアッセンブリ82に対向する位置に支持する下側連結部材73からなる。ここでは、延長部材72と下側連結部材73が先端部材74を構成している。延長部材72は、上側支持部60を形成する鋳鉄の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料であるステンレスから形成される。下側連結部材73は、L字型の薄板形状であり、下ガイドアッセンブリ81を延長部材72に連結すると共に、下ガイドアッセンブリ81に案内されたワイヤ電極ELをワイヤ案内パイプ93に導くためのプーリ94を支持している。また、下側支持部70は、加工液がコラム50側から下側支持部70の内部を通過して下ガイドアッセンブリ81の不図示の加工液噴出ノズルから噴出するように構成されている。加工液は、コラム50から基端部材の中央を貫通する孔71bおよび噴流接続パイプ96の内部を通過して、噴流接続パイプ96と不図示のチューブによって接続される下ガイドアッセンブリ81内のチャンバに供給され、加工時にワイヤ電極ELの下側のガイド位置近傍で、ワイヤ電極ELと同軸方向(下から上に向かって)に噴射される。なお、ここでは、噴流接続パイプ96は、一端を基端部材71の小径部71aの中央に設けられた貫通孔71bの先端部71cに固定され、他端を下側連結部材73の凹部73aに加工液が液漏れしないようにOリングを介して支持されている。また、噴流接続パイプ96の上記他端側は、Oリングによって延長部材72の温度変化による長さの変位量と噴流接続パイプ96の温度変化による長さの変位量の差を吸収できるように支持されている。また、延長部材72に中心位置合わせ用の円盤95で支持されている。
【0031】
本実施形態では、上側支持部60の温度変化による水平方向の長さL0の変化量ΔL0が、先端部材74の温度変化による水平方向の長さL2の変化量ΔL2と基端部材71の温度変化による水平方向の長さL1の変化量ΔL1の和と同じになるように、つまり下記式(1)が成立するように先端部材74の長さL2と基端部材71の長さL1が構成される。なお、下記式(1a)では、水平方向に短い部品である下側連結部材72の水平方向の長さの変化量を、その値が微小であるため省略し、延長部材72の長さを先端部材74の長さL2とする。上側支持部60を形成する材料である鋳鉄の線膨張係数をA0、基端部材71を形成するセラミックの線膨張係数をA1、延長部材72を形成するステンレスの線膨張係数をA2、温度変化をΔtとすると、ΔL0=A0×L0×Δt、ΔL1=A1×L1×Δt、ΔL2=A2×L2×Δtと表すことができるため、これらを下記式(1)に代入して整理すると、結局、式(1)は、以下の式(1a)のように変形できる。
ΔL0=ΔL1+ΔL2・・・(1)
A0×L0=A1×L1+A2×L2 ・・・(1a)
上記式(1a)を満たす一例として、例えば、上側支持部60を形成する鋳鉄の線膨張係数がA0=11×10
−6/Kであり、基端部材71を形成するセラミックスの線膨張係数がA1=5×10
−6/Kであり、延長部材72を形成するステンレスの線膨張係数がA2=17×10
−6/Kである場合には、L1:L2=1:1となる。また、例えば、上側支持部60を形成する鋳鉄の線膨張係数がA0=11×10
−6/Kであり、基端部材71を形成するセラミックスの線膨張係数がA1=5×10
−6/Kであり、延長部材72を形成するアルミニウムの線膨張係数がA2=23×10
−6/Kである場合には、L1:L2=1:2となる。
【0032】
なお、上側支持部60がN個の部品からなり、上側支持部60のi番目(1≦i≦N)の部品が水平方向の長さがL
aiであり、線膨張係数A
aiの材料で形成され、下側支持部70がM個の部品からなり、下側支持部70のj番目(1≦j≦M)の部品が水平方向の長さL
bjであり、線膨張係数A
bjの材料で形成されている場合には、上記式(1a)を下記式(1b)のように拡張して適用できる。ただし、上側支持部60や下側支持部70の一部の部品が水平方向の長さが非常に短いなど、温度変化による水平方向の長さの変化量にほぼ影響を与えないと見なせる場合には、そのような一部の部品は無視して、主に温度変化による水平方向の長さの変化量に主に寄与している部品のみを用いて、式(1b)を適用してよい。
【数1】
【0033】
本実施形態では、上記式(1a)を満たすように、各部品の長さL0、L1、L2を構成したため、上側支持部材60の温度変化による変化量が、先端部材74と基端部材71の温度変化による変化量の和と等しい。このように、上側支持部材60の温度変化による変化量が、先端部材74と基端部材71の温度変化による変化量の和とほぼ等しくなるように上側支持部60および下側支持部70を構成した場合には、下側支持部70と上側支持部60との温度変化による変位量の差が非常に小さいため、下側支持部70に支持された下ガイドアッセンブリ81に対する上側支持部60に支持された上ガイドアッセンブリ82の温度変化による相対的な位置のずれを好適に抑制できる。従って、例えば、上側支持部60を鋳鉄等の材料で形成するとともに下側支持部70の一部をセラミック等の材料で形成した場合であっても、ワイヤ電極ELを上ガイドアッセンブリ82とワイヤ電極を下ガイドアッセンブリ81の温度変化による位置ずれによる加工誤差を抑制可能な放電加工装置を提供することができる。
【0034】
なお、上側支持部材60の温度変化による水平方向の変化量が、先端部材74と基端部材71の温度変化による水平方向の変化量の和と略等しいとは、上側支持部材60の温度変化による水平方向の変化量と、先端部材74と基端部材71の温度変化による水平方向の変化量の和が、必ずしも厳密に一致する必要はなく、放電加工における所望の加工精度を実現可能な範囲の近い値であればよい。
【0035】
また、本実施形態に限定されず、変位調整部は、任意の部品を用いて任意の構造で構成してよく、上側支持部60の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料であれば任意の材料を用いてよい。例えば、上側支持部60の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料としてステンレス、アルミニウム合金および真鍮から選択される1つ以上の材料から形成することが好ましい。
【0036】
また、延長部材72は筒状部72aを備え、基端部材71は筒状部72aの内径と外形が略等しい小径部71aを備え、筒状部72aは小径部71aに嵌合して連結されている。基端部材71と延長部材72を嵌合により連結できるため、部品の組み立てが容易であり、製造コストの低減を図ることができる。また、筒状部72aが円筒形状であり、小径部72aが筒状部72aの内径と外形が略等しい円柱形状であるため、筒状部72aおよび小径部72aの形状を簡易な構造とすることができ、製造コストのさらなる低減を図ることができるとともに、より組み立てやすい。
【0037】
また、本実施形態において筒状部72aを小径部71aに嵌合した部分は接着剤により連結されている。例えば、同部分をねじ止めにより連結することもできる。この場合には、例えば、基端部材71にねじ用のブッシュを設けることが考えられる。しかし、ブッシュのための孔を設けることはセラミック製の基端部材71の強度の低下の原因となるとともに、セラミック製の基端部材71の強度を維持しながら孔を設けようとすると基端部材71の厚みや形状など設計の制約が増加してしまう。これに対し、筒状部72aを小径部71aに嵌合した部分を接着剤により連結した場合には、基端部材71に孔などを設ける必要がないため、基端部材71の強度を維持できるとともに製造の容易化を実現できる。このため、筒状部72aを小径部71aに嵌合した部分を接着剤により連結することにより製造および組立が簡単でコスト低下を実現できる。また、同部分を焼き嵌めにより連結することもでき、この場合にも接着剤と同様に、セラミック製の部品である基端部材71に孔等を設ける必要がなく、基端部材71の強度を維持しつつ製造および組立が簡単でコスト低下を実現することができる。
【0038】
また、本実施形態のように、基端部材71や延長部材72に比べて水平方向の長さが非常に短い下側連結部材73などの部品が下側支持部に含まれる場合には、このような水平方向に短い部品に起因するワイヤ電極ELの水平方向の長さの変化量は微小である。このため、許容誤差の許す範囲であれば下側連結部材73などの水平方向に短い部品を任意の材料で形成し、この部品の水平方向の長さの変化量を無視してもよい。しかし、水平方向に短い部品についても好ましくは、上側支持部60の線膨張係数よりも大きい材料から形成することが望ましい。例えば、上記実施形態においては、下側連結部材73も延長部材72と同じようにステンレスから形成することが好ましい。この場合には、より上ガイドアッセンブリ82と下ガイドアッセンブリ81の温度変化による位置ずれをより抑制できる。
【0039】
上記実施形態に限定されず、延長部材72の一部または複数の部分が変位調節部により構成されていてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、上側支持部60は上側支持部を構成する全部品の線膨張係数がセラミックの線膨張係数よりも大きいものであったが、これに限定されず、上側支持部を全体で1つの部品として考えたときに、上側支持部の線膨張係数がセラミックの線膨張係数よりも大きいものであれば、上側支持部は一部に任意の線膨張係数を有する材質を含んでもよい。例えば、上側支持部がセラミックの線膨張係数より小さい線膨張係数を有する材質を含んでもよい。
【0041】
以上説明した本発明は、この発明の精神および必須の特徴的事項から逸脱することなく他のいろいろな形態で実施することができる。したがって、本明細書に記載した実施例は例示的なものであり、これに限定して解釈されるべきものではない。