特許第5923003号(P5923003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923003
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】光受信器
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/67 20130101AFI20160510BHJP
   G02F 2/00 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   H04B9/00 670
   G02F2/00
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-155444(P2012-155444)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-17762(P2014-17762A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本オクラロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家村 光貴
(72)【発明者】
【氏名】坂 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】三上 秀治
(72)【発明者】
【氏名】大澤 賢太郎
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−013246(JP,A)
【文献】 特開2007−151026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
G02F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の遅延干渉計と、
第2の遅延干渉計と、
外部から入力された変調光を第1の遅延干渉計へ入射する光と第2の遅延干渉計へ入射する光とに分岐させる入力光分岐部とを含み、
前記第1の遅延干渉計は、
当該第1の遅延干渉計へ入射する光を第1の光と第2の光とに分岐させる第1の光分岐部と、
前記第1の光を前記第1の光分岐部に向けて反射する第1の反射部と、
前記第2の光を前記第1の光分岐部に向けて反射する第2の反射部と、
を含み、
前記第2の遅延干渉計は、
前記第2の遅延干渉計へ入射する光を第3の光と第4の光とに分岐させる第2の光分岐部と、
前記第3の光を前記第2の光分岐部に向けて反射する第3の反射部と、
前記第4の光を前記第2の光分岐部に向けて反射する第4の反射部と、
を含み、
前記第1の光分岐部と前記第2の反射部との間の領域と、前記第2の光分岐部と前記第4の反射部との間の領域とが交差する、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項2】
請求項1に記載の光受信器であって、
前記第1の反射部と前記第1の光分岐部との距離は、前記第2の反射部と前記第1の光分岐部との距離より短く、
前記第3の反射部と前記第2の光分岐部との距離は、前記第4の反射部と前記第2の光分岐部との距離より短い、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項3】
請求項2に記載の光受信器であって、
前記第1の光分岐部から前記第1の反射部を介して当該第1の光分岐部に戻る前記第1の光の光路長は、前記第1の光分岐部から前記第2の反射部を介して当該第1の光分岐部に戻る前記第2の光の光路長より1シンボルに相当する量だけ短く、
前記第2の光分岐部から前記第3の反射部を介して当該第2の光分岐部に戻る前記第3の光の光路長は、前記第2の光分岐部から前記第4の反射部を介して当該第2の光分岐部に戻る前記第4の光の光路長より1シンボルに相当する量だけ短い、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の光受信器であって、
前記入力光分岐部、前記第1の光分岐部および第2の光分岐部はハーフビームスプリッタであり、
前記入力光分岐部は、前記第1の反射部で反射され前記第1の光分岐部を直進する光の光路と前記第2の光分岐部との間、かつ、前記第3の反射部で反射され前記第2の光分岐部を直進する光の光路と前記第1の光分岐部との間に位置するように配置される、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光受信器であって、
光ファイバから入力される前記変調光を前記入力光分岐部に向けて反射する入力光反射ミラーをさらに含み、
前記光ファイバから入力される前記変調光の光路と、前記入力光反射ミラーが反射した光の光路とがなす角は43°から47°である、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光受信器であって、
第1から第4の干渉光反射部をさらに有し、
前記第1の光分岐部は、前記第1の反射部から入射する前記第1の光と前記第2の反射部から入射する前記第2の光とに基づく第1の干渉光と第2の干渉光とを出力し、
前記第2の光分岐部は、前記第3の反射部から入射する前記第3の光と前記第4の反射部から入射する前記第4の光とに基づく第3の干渉光と第4の干渉光とを出力し、
前記第1から第4の干渉光反射部はそれぞれ第1から第4の干渉光を反射する、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項7】
請求項6に記載の光受信器であって、
前記第1の光分岐部から前記第2の干渉光反射部への前記第2の干渉光の光路と、前記第2の分岐部から前記第3の干渉光反射部への前記第3の干渉光の光路とが交差する、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光受信器であって、
前記第1から第4の干渉光反射部の断面は台形であり、前記第1から第4の干渉光が前記台形の互いに平行でない対辺のうち一方を含む面から入射し、前記台形の互いに平行な辺のうち長い辺を含む面で反射するように配置される、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の光受信器であって、
前記第1の干渉光反射部に反射された第1の干渉光と前記第2の干渉光反射部に反射された第2の干渉光とを受光する第1の光受光部と、
前記第3の干渉光反射部に反射された第3の干渉光と前記第4の干渉光反射部に反射された第4の干渉光とを受光する第2の光受光部と、
をさらに含み、
前記第1の光分岐部は、前記第1の干渉光反射部に反射された第1の干渉光の光路と前記第2の干渉光反射部に反射された第2の干渉光の光路との間の角の2等分線上に存在し、
前記第2の光分岐部は、前記第3の干渉光反射部に反射された第3の干渉光の光路と前記第4の干渉光反射部に反射された第4の干渉光の光路との間の角の2等分線上に存在する、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項10】
請求項1に記載の光受信器であって、
前記入力光分岐部、前記第1の遅延干渉計および前記第2の遅延干渉計が搭載されるメイン基板と、
前記メイン基板が格納されるケースと、をさらに含む、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項11】
請求項10に記載の光受信器であって、
前記入力光分岐部、前記第1の光分岐部および前記第2の光分岐部は、ハーフビームスプリッタである、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項12】
請求項11に記載の光受信器であって、
前記各々のハーフビームスプリッタの分岐膜面は、前記ケースの長手方向の辺と略平行である、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項13】
請求項11に記載の光受信器であって、
前記各々のハーフビームスプリッタの各々の反射分岐面は、前記ケースの長手方向の辺に対して、1°から8°傾いている、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項14】
請求項11に記載の光受信器であって、
前記メイン基板の長手方向の辺は、前記ケースの長手方向の辺と略平行である、
ことを特徴とする光受信器。
【請求項15】
請求項12に記載の光受信器であって、
前記入力光分岐部の前記ハーフビームスプリッタの分岐膜面と前記変調光とがなす角度は、37°から44°、もしくは46°から53°である、
ことを特徴とする光受信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は差動4相位相偏移変調方式等の変調方式で変調された変調光を空間光学系干渉計を用いて受信する光受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光伝送システムの大容量化及び長距離化の要望に応えるために、位相変調方式が実用化されている。例えば、差動位相偏移変調(Differential Phase Shift Keying:以下、DPSKと記す)、差動4相位相偏移変調(Differential Quadrature Phase Shift Keying:以下、DQPSKと記す)などが光伝送システムに用いられている。また、これらの方式で変調された光信号を復調する復調器に、空間光学系の干渉計を用いる技術の開発も行われている。
【0003】
特許文献1から3には、2つのマイケルソン干渉計を用いたDQPSK変調光の復調用の光受信器が開示されている。この2つのマイケルソン干渉計は、光を反射させるためのプリズムを共有している。1つ目の干渉計はプリズムの内側を用いて光を折り返させ、2つめの干渉計はプリズムの外側を用いて光を折り返させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−151026号公報
【特許文献2】特開2009−300539号公報
【特許文献3】特開2009−300540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空間光学系を用いると小型化が難しいという問題がある。例えば、特許文献1から3に示す技術では、共有されるプリズムが大型化するだけではなく、いわゆるスキューをあわせるための光路長調整用の部材をわざわざ設ける必要が生じ、これらが小型化を妨げる。ここでこの光路長調整用の部材は、受光素子に入力される4つの光について、最初に入力光を2つの干渉計に向けて分岐させる素子から受光素子までの光路長を同一にするよう調整するものである。なお、特許文献1から3に示す光受信器では、特性の制御が難しいという問題も生じる。この光受信器はプリズムの内側の干渉計と外側の干渉計という非対称な形状の2つの干渉計を用いている。この非対称性のために、位相調整部材の熱光学効果を用いて光の位相を制御しようにも、熱のムラにより2つの干渉計内を進む光の光路長がずれる。また、熱による基板の歪みの影響の度合いが2つの干渉計の間で異なってしまう。そのため、特許文献1から3に示す光受信器では、クロストークや信号の損失や偏波特性の特性ばらつきを抑えることが難しい。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、2つの空間光学系干渉計を用いてDQPSK方式などの変調光を復調する光受信器を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明にかかる光受信器は、第1の遅延干渉計と、第2の遅延干渉計と、外部から入力された変調光を第1の遅延干渉計へ入射する光と第2の遅延干渉計へ入射する光とに分岐させる入力光分岐部とを含み、前記第1の遅延干渉計は、当該第1の遅延干渉計へ入射する光を第1の光と第2の光とに分岐させる第1の光分岐部と、前記第1の光を前記第1の光分岐部に向けて反射する第1の反射部と、前記第2の光を前記第1の光分岐部に向けて反射する第2の反射部と、を含み、前記第2の遅延干渉計は、前記第2の遅延干渉計へ入射する光を第3の光と第4の光とに分岐させる第2の光分岐部と、前記第3の光を前記第2の光分岐部に向けて反射する第3の反射部と、前記第4の光を前記第2の光分岐部に向けて反射する第4の反射部と、を含み、前記第1の光分岐部と前記第2の反射部との間の領域と、前記第2の光分岐部と前記第4の反射部との間の領域とが交差する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記第1の反射部と前記第1の光分岐部との距離は、前記第2の反射部と前記第1の光分岐部との距離より短く、前記第3の反射部と前記第2の光分岐部との距離は、前記第4の反射部と前記第2の光分岐部との距離より短くてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記第1の光分岐部から前記第1の反射部を介して当該第1の光分岐部に戻る前記第1の光の光路長は、前記第1の光分岐部から前記第2の反射部を介して当該第1の光分岐部に戻る前記第2の光の光路長より1シンボルに相当する量だけ短く、前記第2の光分岐部から前記第3の反射部を介して当該第2の光分岐部に戻る前記第3の光の光路長は、前記第2の光分岐部から前記第4の反射部を介して当該第2の光分岐部に戻る前記第4の光の光路長より1シンボルに相当する量だけ短くてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記入力光分岐部、前記第1の光分岐部および第2の光分岐部はハーフビームスプリッタであり、前記入力光分岐部は、前記第1の反射部で反射され前記第1の光分岐部を直進する光の光路と前記第2の光分岐部との間、かつ、前記第3の反射部で反射され前記第2の光分岐部を直進する光の光路と前記第1の光分岐部との間に位置するように配置されてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様では、光ファイバから入力される前記変調光を前記入力光分岐部に向けて反射する入力光反射ミラーをさらに含み、前記光ファイバから入力される前記変調光の光路と、前記入力光反射ミラーが反射した光の光路とがなす角は43°から47°であってもよい。
【0012】
また、本発明の一態様では、光受信器は第1から第4の干渉光反射部をさらに有し、前記第1の光分岐部は、前記第1の反射部から入射する前記第1の光と前記第2の反射部から入射する前記第2の光とに基づく第1の干渉光と第2の干渉光とを出力し、前記第2の光分岐部は、前記第3の反射部から入射する前記第3の光と前記第4の反射部から入射する前記第4の光とに基づく第3の干渉光と第4の干渉光とを出力し、前記第1から第4の干渉光反射部はそれぞれ第1から第4の干渉光を反射してもよい。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記第1の光分岐部から前記第2の干渉光反射部への前記第2の干渉光の光路と、前記第2の分岐部から前記第3の干渉光反射部への前記第3の干渉光の光路とが交差してもよい。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記第1から第4の干渉光反射部の断面は台形であり、前記第1から第4の干渉光が前記台形の互いに平行でない対辺のうち一方を含む面から入射し、前記台形の互いに平行な辺のうち長い辺を含む面で反射するように配置されてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様では、光受信器は前記第1の干渉光反射部に反射された第1の干渉光と前記第2の干渉光反射部に反射された第2の干渉光とを受光する第1の光受光部と、前記第3の干渉光反射部に反射された第3の干渉光と前記第4の干渉光反射部に反射された第4の干渉光とを受光する第2の光受光部と、をさらに含み、前記第1の光分岐部は、前記第1の干渉光反射部に反射された第1の干渉光の光路と前記第2の干渉光反射部に反射された第2の干渉光の光路との間の角の2等分線上に存在し、前記第2の光分岐部は、前記第3の干渉光反射部に反射された第3の干渉光の光路と前記第4の干渉光反射部に反射された第4の干渉光の光路との間の角の2等分線上に存在してもよい。
【0016】
また本発明の一態様では、光受信器は、前記入力光分岐部、前記第1の遅延干渉計および前記第2の遅延干渉計が搭載されるメイン基板と、前記メイン基板が格納されるケースと、をさらに含んでもよい。
【0017】
また本発明の一態様では、前記入力光分岐部、前記第1の光分岐部および前記第2の光分岐部は、ハーフビームスプリッタであってもよい。
【0018】
また本発明の一態様では、前記各々のハーフビームスプリッタの分岐膜面は、前記ケースの長手方向の辺と略平行であってもよい。
【0019】
また本発明の一態様では、前記各々のハーフビームスプリッタの各々の反射分岐面は、前記ケースの長手方向の辺に対して、1°から8°傾いていてもよい。
【0020】
また本発明の一態様では、前記メイン基板の長手方向の辺は、前記ケースの長手方向の辺と略平行であってもよい。
【0021】
また本発明の一態様では、前記入力光分岐部の前記ハーフビームスプリッタの分岐膜面と前記変調光とがなす角度は、37°から44°、もしくは46°から53°であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、2つの空間光学系干渉計を用いてDQPSK方式などにより変調された変調光を復調する光受信器を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。
図2】本発明の第2の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。
図3】本発明の第3の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。
図4】本発明の第4の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。
図5】本発明の第5の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。出現する構成要素のうち同一機能を有するものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。この光受信器は、DQPSK方式で変調された光信号を復調する。光受信器は、メイン基板151と、サブ基板152と、信号電流出力用の電極153と、メイン基板151およびサブ基板152が固定されるケース155と、を含む。ケース155の形状は直方体であり、その底面と上面は、その直方体を構成する面のうち最も広い面である。メイン基板151は、ケース155の内側にその底面に沿うように固定される。またその底面に対する4つの側面のうち1つの側面に、変調光を光受信器に入力するコリメータ付光ファイバ154が接続される。コリメータ付光ファイバ154は、光送信器によりDQPSK変調された変調光を、その1つの側面に垂直な方向に光受信器の入力光として入力する。
【0026】
メイン基板151は、平面的にみて長方形であり、ケース155の底面に沿うように固定されている。平面的にみてメイン基板151の短手方向は、コリメータ付光ファイバ154が接続されるケース155の側面に平行である。メイン基板151の上には、第1の干渉計と、第2の干渉計と、それらの2つの干渉計に光を入力する光回路と、第1受光部113および第2受光部114と、2つの干渉計が出力する干渉光を第1受光部113および第2受光部114に入射させる光回路とが配置されている。第1および第2の干渉計は遅延干渉計であり、具体的にはいわゆるマイケルソン干渉計である。なお、これらの光学素子はケース155に直接配置してもよいが、メイン基板151に配置した後にケース155に組み込む方が組み立て作業容易になる。またメイン基板151とケース155の長手方向の辺は略平行に配置されており、組み立て作業を容易にすることができる。ここで「略平行」とは、2つの辺を製造誤差の範囲で動かすと平行となりうる範囲も含む。
【0027】
サブ基板152は、第1アンプ115、第2アンプ116等の高周波部品を搭載する。なお、これらの高周波部品の配置先がメイン基板151になるように、高周波線路の設計やケース155への実装方法を変更してもよい。
【0028】
以下ではメイン基板151に実装される光学素子について説明する。便宜上、コリメータ付光ファイバ154が接続されるケースの側面が上にあるとして説明する。
【0029】
2つの干渉計に光を入力する光回路を構成する光学素子は、入力光分岐部101と、入力光反射ミラー112とである。コリメータ付光ファイバ154からの入力光は、入力光反射ミラー112により入力光分岐部101に入力される。入力光分岐部101は具体的にはハーフビームスプリッタであり、直角プリズムを2つ組み合わせた直方体の形状を有する。2つのプリズムの界面を分岐膜面と呼ぶ。ハーフビームスプリッタは、その分岐膜面に対しほぼ45度(一般的にハーフビームスプリッタが機能する範囲を考慮すると43〜47度)で入射する光を、その入射する向きに直進する光と、ほぼ直角に反射する光とに分割する。入力光反射ミラー112は例えば金属膜ミラーであり、入力光分岐部101に向けて入力光を反射する。入力光反射ミラー112は、その反射光を入力光分岐部101が2つに分岐するような位置や角度で配置される。図1の例では、下から上の方向に対し右45度に傾く向きに入力光を反射する。それにより、コリメータ付光ファイバ154からの入力光の光路と反射光の光路とがなす角は45度となる。なお、コリメータ付光ファイバ154からの入力光が下から上の方向であってもよい。この場合には入力光反射ミラー112の配置がその条件に合わせて適宜変更される。入力光分岐部101の分岐膜面はメイン基板151の長手方向に平行である。入力光分岐部101には入力光反射ミラー112により反射される入力光が入力され、入力光分岐部101は、入力された入力光を2つの光に分割し、それぞれ第1の干渉計と第2の干渉計へ入力する。この2つの光は、分岐膜面を透過し右上方向に進む光と、分岐膜面で反射され左上方向に向かう光である。なお、メイン基板151に実装される光学素子の間を進む光の光路は、メイン基板151に沿った平面上にある。
【0030】
第1の干渉計を構成する光学素子は、第1光分岐部102と、第1反射部104と、第2反射部105と、第1位相調整回路117とであり、第2の干渉計を構成する光学素子は、第2光分岐部103と、第3反射部106と、第4反射部107と、第2位相調整回路118とである。第1光分岐部102および第2光分岐部103は、入力光分岐部101と同じくハーフビームスプリッタである。第1光分岐部102および第2光分岐部103の反射面は、メイン基板151の長手方向に平行である。また第1反射部104、第2反射部105、第3反射部106、および第4反射部107は直角プリズムであり、断面の直角三角形の斜辺に相当する面に入射された光をその光路が入射光より下側に平行移動するように反射するように配置されている。第1位相調整回路117および第2位相調整回路118は例えば熱光学効果を用いてそこを通過する光の光路長を調整する回路である。ここで、第1の干渉計と第2の干渉計は、入力光分岐部101のほぼ中心を通り長手方向に延びる対称線145を軸として鏡映対称となるように配置される。
【0031】
第1の干渉計に入力される光は、入力光分岐部101の左上側にある第1光分岐部102に入射する。第1光分岐部102は、その入力される光を左上方向へ進む第1の光と右上方向に進む第2の光に分割する。ここで、入力光分岐部101、第1光分岐部102、第1反射部104は、左上方向に順に並んでいる。第1反射部104は、第1の光を第1光分岐部102に向けて反射し、第2反射部105は、第2の光を第1光分岐部102に向けて反射する。第1反射部104および第2反射部105は、第1反射部104が反射した第1の光と第2反射部105が反射した第2の光とが第1光分岐部102の反射面上で重なるように配置される。第1光分岐部102は、第1の光と第2の光が重なる点から左下に向かう第1干渉光119と、右下に向かう第2干渉光120とを出力する。また、第1位相調整回路117は第1光分岐部102と第1反射部104との間に設置され、第1光分岐部102からの光と第1反射部104からの光との光路長を変化させて位相を調整する。なお、第1位相調整回路117は、第1光分岐部102と第2反射部105との間に設置されてもよい。
【0032】
第2の干渉計に入力される光は、入力光分岐部101の右上側にある第2光分岐部103に入射する。第2光分岐部103は、その入力される光を右上方向へ進む第3の光と左上方向に進む第4の光に分割する。ここで、入力光分岐部101、第2光分岐部103、第3反射部106は、右上方向に順に並んでいる。第3反射部106は、第3の光を第2光分岐部103に向けて反射し、第4反射部107は、第4の光を第2光分岐部103に向けて反射する。第3反射部106および第4反射部107は、第3反射部106が反射した第3の光と第4反射部107が反射した第4の光とが第2光分岐部103の反射面上で重なるように配置される。第2光分岐部103は、第3の光と第4の光が重なる点から左下に向かう第3干渉光121と、右下に向かう第4干渉光122とを出力する。また、第2位相調整回路118は第2光分岐部103と第3反射部106との間に設置され、第2光分岐部103からの光と第3反射部106からの光の光路長を変化させて位相を調整する。なお、第2位相調整回路118は、第2光分岐部103と第4反射部107との間に設置されてもよい。
【0033】
第1光分岐部102から第1反射部104を介して第1光分岐部102に戻る第1の光の光路長をL1、第1光分岐部102から第2反射部105を介して第1光分岐部102に戻る第2の光の光路長をL2とすると、光路差(L2−L1)はほぼ通信の1シンボルに相当する量となる。ここで、DQPSKでは1シンボルは2種類の光のそれぞれが1ビットを送る時間に相当する。一般的には約20GHzでデータを送るため、1シンボルに相当する空気中の光路長差は15mm程度になる。なお、この光路長差は、計算で求められる量と厳密に等しくなくてもよく、その量から第1位相調整回路117で調整できる程度の違い(数波長程度)が存在してもよい。また、第2光分岐部103から第3反射部106を介して第2光分岐部103に戻る第3の光の光路長をL3、第2光分岐部103から第4反射部107を介して第2光分岐部103に戻る第4の光の光路長をL4とした場合の光路差も同様である。なお、入力光、第1から第4の光、第1から第4干渉光119〜122のそれぞれの光路は、基板にほぼ平行な平面上にある。
【0034】
ここで、第1光分岐部102と第1反射部104との間にある領域を第1領域141、第1光分岐部102と第2反射部105との間にある領域を第2領域142、第2光分岐部103と第3反射部106との間にある領域を第3領域143、第2光分岐部103と第4反射部107との間にある領域を第4領域144とすると、第2領域142と第4領域144とが交差する。ここで、第1領域141,第2領域142,第3領域143,第4領域144のそれぞれは第1から第4の光の光路を含む。さらに、メイン基板151の長手(短手)方向が、第1から第4の光の光路のいずれとも平行にならない(好適にはこれらの光路と長手方向とがなす角をほぼ45度にする)ようにすると、2つのマイケルソン干渉計を組み合わせることにより生じるデッドスペースをさらに削減することが可能となる。メイン基板151上の光学素子の実装領域を矩形とした場合に、最も長さが必要な第2領域と第4領域をその矩形の角の近傍から斜め方向(対角線により近い方向)に伸ばすことが可能になるからである。
【0035】
ここで、第1反射部104の左端と第4反射部107の左端とが、ケース155の左端(右端)からみてほぼ同じ距離になるように入力光分岐部101、第1光分岐部102、第2光分岐部103、第1から第4の光の光路が調整されている。なお、第2反射部105の右端と第3反射部106の右端とも同様である。こう調整すると、メイン基板151の大きさを可能な限り削減することができる。
【0036】
入力光分岐部101は、第1反射部104で反射され第1光分岐部102を超えて直進する光、より具体的には第1光分岐部102からの第2干渉光120の光路と、第2光分岐部103との間に位置する。また入力光分岐部101は、第3反射部106で反射され第2光分岐部103を超えて直進する光、より具体的には第2光分岐部103からの第3干渉光121の光路と、第1光分岐部102との間に位置する。このようにすると、入力光分岐部101と第1光分岐部102との間、入力光分岐部101と第2光分岐部103との間に光路がない。これにより、光受信器をさらに小型化することが可能となる。
【0037】
次に、第1から第4干渉光119〜122を第1および第2受光部113,114に入射させる光回路について説明する。この光回路を構成する光学素子は、第1ミラー108、第2ミラー109、第3ミラー110、第4ミラー111である。
【0038】
第1から第4ミラー108〜111は、それぞれ第1から第4干渉光119〜122が進む先に配置される。第1ミラー108と第2ミラー109とは、それぞれ第1干渉光119と第2干渉光120とを第1受光部113に向けて反射させる。第3ミラー110と第4ミラー111とは、それぞれ第3干渉光121と第4干渉光122とを第2受光部114に向けて反射させる。またメイン基板151の短手方向に延びる1つの仮想線上には左から順に第1ミラー108,第3ミラー110、第2ミラー109、第4ミラー111が配置されている。第2干渉光120の光路と第3干渉光121の光路とが第2ミラー109や第3ミラー110で反射される前後で交差している。これは、第1および第2の干渉計の左右幅を小さくするためである。
【0039】
ここで、第1仮想線146が、第1ミラー108に反射される第1干渉光119と、第2ミラー109に反射される第2干渉光120との間の角の2等分線とすると、第1仮想線146上には第1光分岐部102が配置される。また、第2仮想線147が、第3ミラー110に反射される第3干渉光121と第4ミラー111に反射される第4干渉光122との間の角の2等分線であるとすると、第2仮想線147上には、第2光分岐部103が配置される。こうすることで、第1受光部113に入射する第1干渉光119と第2干渉光120との間、また第2受光部114に入射する第3干渉光121と第4干渉光122との間で光路長が幾何学的にみてほぼ一致するため、光路調整用に専用の部材を設けなくとも必要な光路差を得ることができる。これも部品点数の削減を通じて小型化に貢献する。
【0040】
第1から第4ミラー108〜111のメイン基板151の底面に沿った断面は、台形の形状であり、これらは、第1から第4干渉光119〜122がその台形の互いに平行でない対辺のうち一方を含む面から入射し、その台形の互いに平行な辺のうち長い辺を含む面で反射するように配置される。
【0041】
一般的にはミラーは、入射面をミラー面としたプリズムが用いられる。しかしこのタイプのミラーは入射面の裏側にスペースを必要とするため、結果としてメイン基板151やケース155のサイズの増大を招く。この対応としては、プリズムの内部に光を入射させ、その隣りの面で光を反射させ、さらに隣の面から光を出射させることが考えられる。しかし、この方法を用いると、例えば第2ミラー109と第3ミラー110とが干渉してしまい基板上に実装できない。ここで、台形の断面を有するプリズムをミラーとして用いることで、光学素子や光路の干渉を防ぎ、さらなる小型化を実現することが可能となる。
【0042】
第1受光部113および第2受光部114は、2アレイのフォトダイオードチップからなる。第1受光部113は、第1干渉光119と第2干渉光120の強度差を電気信号出力し、第2受光部114は、第3干渉光121と第4干渉光122の強度差を電気信号出力する。第1アンプ115および第2アンプ116は、それぞれ第1受光部113および第2受光部114の出力電流を増幅し、2つの干渉光の強度差を信号電流出力用の電極153を介して出力する。
【0043】
[第2の実施形態]
第2の実施形態と第1の実施形態との相違点は、主に、入力光分岐部101、第1光分岐部102、第2光分岐部103の形状が異なる点である。以下ではこの相違点を中心に説明する。
【0044】
図2は、本発明の第2の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。本実施形態では、入力光分岐部101、第1光分岐部102、第2光分岐部103の3つのハーフビームスプリッタのメイン基板151に沿った断面は、菱形の形状である。図2の例ではその菱形の対角線のうち長い方に相当する面が、入射する光を分岐させる分岐膜面となる。このように、ハーフビームスプリッタの形状を菱形にすることで、多重反射によるリターンロスが抑制される。さらに、本実施形態では上述の3つのハーフビームスプリッタの断面形状を同じ形状にする。第1光分岐部102、第2光分岐部103の形状を同じにすれば、2つの干渉計が対称的な構造になるので、光学特性のばらつきや光回路の規模増大を防ぐことができる。ここで、一般的には、菱形の分岐膜とプリズムの交点側の角の角度は、他の角度より、1°程度鋭角になるようにする。ここで、1°程度の違いであればハーフビームスプリッタの全反射条件はくずれない。
【0045】
また、2つの干渉計などを構成する他の光学素子の配置は、図1と同様である。図2では、説明を容易にするため、第1〜4反射部104〜107の位置は、図1とほぼ同じ位置や角度にしているが、実際には、ハーフビームスプリッタの分岐膜面からの反射、屈折に応じて調整される。
【0046】
[第3の実施形態]
第3の実施形態と第1の実施形態との相違点は、主に入力光分岐部101、第1光分岐部102、第2光分岐部103の向きである。以下ではこの相違点を中心に説明する。
【0047】
図3は、本発明の第3の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。本実施形態では、入力光分岐部101、第1光分岐部102、第2光分岐部103の3つのハーフビームスプリッタであり、その分岐膜面は、ケース155の長手方向や対称線145に対して同一の向きに所定の角だけ回転している。こうすることで、多重反射によるリターンロスが抑制される。一般的にはリターンロスの改善のために、この所定の角を、1〜8°程度にするとよい。
【0048】
本実施形態においては、3つのハーフビームスプリッタがほぼ同じ角度で回転している。こうすることで、2つの干渉計の対称性がくずれることを防ぎ、光学特性のばらつきと回路規模の増大とを防ぐことができる。なお、2つの干渉計などを構成する他の光学素子の配置は、図1と同様である。
【0049】
図3では、説明を容易にするため、第1〜4反射部104〜107の位置は、図1とほぼ同じ位置や角度にしているが、実際には、ハーフビームスプリッタの分岐膜面からの反射、屈折に応じて調整される。なお、リターンロス仕様が厳しい場合は、図2に示すハーフビームスプリッタの形状と、図3に示すハーフビームスプリッタの回転とを組み合わせてもよい。さらに、ここではハーフビームスプリッタを傾けたが、代わりに入力光反射ミラー112を傾ける角度を45°ではなく、リターンロスが低減するように37°〜44°、もしくは45°〜53°程度としても同様の効果が得られる。言い換えると、入力光反射ミラー112を45°からずらして反射するように配置することで、入力分岐部101であるハーフビームスプリッタにおいて、入力光が最初に入射される面に入力光が垂直に入射されなくなる。これにより、リターンロスを低減することができる。これは、入力分岐部101であるハーフビームスプリッタの分岐膜面と入力光がなす角度が、37°〜44°、もしくは45°〜53°であることに相当する。
【0050】
[第4の実施形態]
第4の実施形態と第1の実施形態との相違点は、主に、第1受光部113、第2受光部114が光受信器の内部にない点である。以下ではこの相違点を中心に説明する。
【0051】
図4は、本発明の第4の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。本実施形態では、光受信器のケース155の底面に、第1の干渉計と、第2の干渉計と、入力光分岐部101とが配置され、ケース155の側面に、コリメータ付光ファイバ154、第1出力光ファイバ156、第2出力光ファイバ157、第3出力光ファイバ158、第4出力光ファイバ159が接続されている。第1から第4出力光ファイバ156〜159はコリメータ付光ファイバである。第1から第4出力光ファイバ156〜159には、それぞれ、第1光分岐部102から出力する第1および第2干渉光119,120と、第2光分岐部103から出力する第3および第4干渉光121,122とが直接入射し、このケース155の外部にある受光素子に向けてそれらの干渉光を伝送する。このように、光受信器を光学素子のみから構成し、第1〜4干渉光119〜122をコリメータ付光ファイバにてケース155外に出力することも可能である。なお、本実施形態の構成と第2の実施形態や第3の実施形態に示すハーフビームスプリッタの構成と組み合わせてもよい。
【0052】
[第5の実施形態]
第5の実施形態と第4の実施形態との相違点は、入力光反射ミラー112がコリメータ付光ファイバ154からの入力光を入力光分岐部101に向けて反射する点と、第1から第4ミラー108〜111が反射した第1から第4干渉光119〜122を第1から第4出力光ファイバ156〜159に入力する点である。以下ではこの相違点を中心に説明する。
【0053】
図5は、本発明の第5の実施形態にかかる光受信器の構成の一例を示す平面図である。本実施形態では、2つの干渉計内を通る光の光路がケース155の側面と平行または垂直にならないよう(具体的にはその側面に対しほぼ45度の方向)になっており、また、第1から第4ミラー108〜111により、第1から第4出力光ファイバ156〜159がケース155の1つの側面に接続されるようになっている。こうすることで、光ファイバが延伸する方向が揃えられるので、光ファイバの取りまわしがしやすくなる。なお、本実施形態の構成と、第2の実施形態や第3の実施形態に示すハーフビームスプリッタの構成とを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
101 入力光分岐部、102 第1光分岐部、103 第2光分岐部、104 第1反射部、105 第2反射部、106 第3反射部、107 第4反射部、108 第1ミラー、109 第2ミラー、110 第3ミラー、111 第4ミラー、112 入力光反射ミラー、113 第1受光部、114 第2受光部、115 第1アンプ、116 第2アンプ、117 第1位相調整回路、118 第2位相調整回路、119 第1干渉光、120 第2干渉光、121 第3干渉光、122 第4干渉光、141 第1領域、142 第2領域、143 第3領域、144 第4領域、145 対称線、146 第1仮想線、147 第2仮想線、151 メイン基板、152 サブ基板、153 電極、154 コリメータ付光ファイバ、155 ケース、156 第1出力光ファイバ、157 第2出力光ファイバ、158 第3出力光ファイバ、159 第4出力光ファイバ。
図1
図2
図3
図4
図5