特許第5923017号(P5923017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923017
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】中空構造板の接合構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/10 20060101AFI20160510BHJP
   B29C 65/18 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   B29C65/10
   B29C65/18
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-197847(P2012-197847)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-51053(P2014-51053A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】石原 昇
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−295551(JP,A)
【文献】 特開平11−034176(JP,A)
【文献】 特開2001−270000(JP,A)
【文献】 特開2002−303396(JP,A)
【文献】 特開2010−012484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 − 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の中空構造板の端面部と接合対象物の面部とが樹脂溶接により接合された接合構造であって、前記樹脂溶接によって形成された溶接ビードの肉盛部分が、前記中空構造板の端面部と前記接合対象物の面部の間を経て前記中空構造板の端面部から中空部の内部にまで連続したことを特徴とする中空構造板の接合構造。
【請求項2】
合成樹脂製の中空構造板の板面部と接合対象物の面部とが樹脂溶接により接合された接合構造であって、前記樹脂溶接によって形成された溶接ビードの肉盛部分が前記中空構造板の端面部から中空部の内部にまで連続したことを特徴とする中空構造板の接合構造。
【請求項3】
合成樹脂製の中空構造板の端面部と接合対象物の面部とが樹脂溶接により接合された接合構造であって、前記樹脂溶接によって形成された溶接ビードの肉盛部分が、前記中空構造板の板面部に形成された孔又は切欠きを介して当該中空構造板の中空部の内部にまで連続したことを特徴とする中空構造板の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空構造板と接合対象物を樹脂溶接により接合した中空構造板の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には梱包容器に用いる板材として、両主面を構成するライナー部分と両ライナー部分を連結するリブ部分とが一体に形成されたプラスチック段ボールを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−28012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、合成樹脂製の中空構造板を用いてボックスを製造するには、中空構造板の端面部と他の中空構造板の板面部又は端面部を接合し、中空構造板同士をL字状に接続する必要があるが、このように中空構造板同士を接合すると、隣接する中空構造板によってL字状の隅部が形成される。このL字状の隅部にはゴミが溜まりやすく、このゴミは拭き取り難い。また、L字状の隅部の汚れは拭き取り難いという問題もある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、合成樹脂製の中空構造板と接合対象物との接合部分にゴミが溜まり難く、しかも中空構造板と接合対象物とを強固に接合できる中空構造板の接合構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の中空構造板の接合構造は、合成樹脂製の中空構造板2の端面部と接合対象物の面部とが樹脂溶接により接合された接合構造であって、前記樹脂溶接によって形成された溶接ビード16の肉盛部分160が、前記中空構造板2の端面部と前記接合対象物の面部の間を経て前記中空構造板2の端面部から中空部22の内部にまで連続したことを特徴とする。
【0007】
また、合成樹脂製の中空構造板2の板面部132と接合対象物の面部とが樹脂溶接により接合された接合構造であって、前記樹脂溶接によって形成された溶接ビード16の肉盛部分160が前記中空構造板2の端面部から中空部22の内部にまで連続したことを特徴とする。
【0008】
また、合成樹脂製の中空構造板2の端面部と接合対象物の面部とが樹脂溶接により接合された接合構造であって、前記樹脂溶接によって形成された溶接ビード16の肉盛部分160が、前記中空構造板2の板面部132に形成された孔23又は切欠きを介して当該中空構造板2の中空部22の内部にまで連続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明にあっては、合成樹脂製の中空構造板の端面部と接合対象物の面部とを接合したときに形成される隅部に溶接ビードの肉盛部分を形成することができ、これにより中空構造板と接合対象物の接合部におけるL字状の角を無くすことができる。このため、中空構造板と接合対象物の接合部にゴミが溜まり難くなり、汚れが拭き取り易くなる。また、溶接ビードの肉盛部分が中空構造板の端面部と接合対象物の面部の間を経て中空構造板の端面部から中空部の内部まで連続する。このため、中空構造板の端面部と接合対象物の面部とを両者の間に入り込んだ溶接ビードを介して接合できる。また、中空構造板の中空部の内部にまで入り込んだ溶接ビードはアンカー効果を生じさせる。従って、中空構造板と接合対象物とを強固に接合することができる。
【0010】
請求項2に係る発明にあっては、合成樹脂製の中空構造板の板面部と接合対象物の面部とを接合したときに形成される隅部に溶接ビードの肉盛部分を形成することができ、これにより中空構造板と接合対象物の接合部におけるL字状の角を無くすことができる。このため、中空構造板と接合対象物の接合部にゴミが溜まり難くなり、汚れが拭き取り易くなる。また、溶接ビードの肉盛部分が中空構造板の端面部から中空部の内部にまで連続する。この場合、中空構造板の中空部の内部にまで入り込んだ溶接ビードによってアンカー効果を生じさせることができ、中空構造板と接合対象物とを強固に接合することができる。
【0011】
請求項3に係る発明にあっては、合成樹脂製の中空構造板の端面部と接合対象物の面部とを接合したときに形成される隅部に溶接ビードの肉盛部分を形成することができ、これにより中空構造板と接合対象物の接合部におけるL字状の角を無くすことができる。このため、中空構造板と接合対象物の接合部にゴミが溜まり難くなり、汚れが拭き取り易くなる。また、溶接ビードの肉盛部分が中空構造板の板面部に形成された孔又は切欠きを介して中空部の内部にまで連続する。この場合、中空構造板の中空部の内部にまで入り込んだ溶接ビードによってアンカー効果を生じさせることができ、中空構造板と接合対象物とを強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態のボックスを示す斜視図である。
図2】同上のボックス用板材の斜視図である。
図3】中空構造板の説明図である。
図4】同上の側板部の接合構造を示す水平断面図である。
図5】第二実施形態のボックスの斜視図である。
図6】同上の側板部の接合構造を示す水平断面図である。
図7】第三実施形態のパレットの下側から見た斜視図である。
図8】溶接ビードを中空構造板の板面部を通して中空部に入り込ませた接合構造を示す水平断面図である。
図9】第四実施形態の接合構造を示す断面図である。
図10】第四実施形態の他例の接合構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は合成樹脂製の中空構造板と接合対象物とを樹脂溶接により接合した中空構造板の接合構造であって、以下、各実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
(第一実施形態)
まず、第一実施形態について説明する。図1に示される本実施形態のボックス1は上方に開口した矩形箱状に形成されている。ボックス1は図2に示されるボックス用板材10から形成される。ボックス用板材10は矩形状の底板部11の各辺にヒンジ部12を介して矩形状の側板部13が一体に接続されたものである。このボックス用板材10は図3に示される層構造を有する中空構造板2を、5つの矩形板状部を十字状に一体に接続した形状(やっこ形状)にトリミングし、これにヒンジ部12を形成することで製造される。
【0015】
中空構造板2はポリプロピレン(以下「PP」と略す)製であり、コア材20を一対のスキン材21によって両側から挟み込んだ構造の板材である。コア材20は断面六角形状の中空部22がなるべく隙間なく並設されたハニカム状に形成されている。このため、中空構造板2は単位重量当たりの強度が高く、機械的特性として等方性に優れている。また、中空構造板2は熱可塑性樹脂製であるから二次加工性にも優れている。なお、中空構造板2はハニカム構造以外の他の中空構造、例えば、平板状の隔壁が一方向に多数列設される中空構造や、中空の円形や円錐台が多数並設される中空構造等であってもよい。
【0016】
図2に示されるボックス用板材10の各ヒンジ部12は、中空構造板2のボックス1内側に臨む板面部において断面V字状の溝14を形成することによって設けられる。すなわち、各ヒンジ部12は溝14の底部によって構成される。溝14は例えば中空構造板2の板面部に断面三角形状の加熱刃を押し当てる熱罫線加工によって形成される。なお、この熱罫線加工では、外側のスキン材21よりも手前側の部分までを潰してもよいし、外側のスキン材21の厚み方向の途中までの部分を潰してもよい。溝14の両側面は前記加熱刃によって加熱溶融され、この溶融樹脂によって溝14の両側面は封止される。なお、前記やっこ形状のボックス用板材10は、例えば矩形状の中空構造板2の板面部に直線状の加熱刃を用いて井の字状の溝を形成し、この中空構造板2の四隅部を前記溝を境にして取り除くことで形成してもよい。この場合、一本の直線状の加熱刃を用いて、前記ヒンジ部12を形成するための溝14と、この溝14の両側に位置する側板部13の端面部を同時に形成できてよい。
【0017】
ボックス用板材10における各側板部13の両側の側端面部130は、当該側板部13の厚み方向においてボックス1内側に行く程側板部13の長手方向の中央側に向かうように傾斜している。各側板部13のボックス1外側の板面部と側端面部130とでなす角度は45度未満の値に設定されており、各側板部13を底板部11に対して直角に折り曲げ、隣接する側板部13を平面視で直角に配置したとき、隣接する側板部13の側端面部130同士はわずかな隙間15を介して対向するようになっている。なお、この状態では、隣接する側板部13の側端面部130はボックス1外側の端部同士を当接するように設定することが好ましく、このようにすることで隣接する側板部13の位置決めを行うことができる。また、前記隙間15は、各側端面部130の全長に形成されてもよいし、部分的に形成されてもよい。さらには加工時に部分的に形成されるものであってもよい。また、意図的に形成するものではなく、中空構造体の成形時やカット等の加工時にできる隙間であってもよい。また、この隙間は、コア材20とスキン材21の間にできるものでもあってもよい。
【0018】
ボックス用板材10を用いてボックス1を形成するには、各ヒンジ部12を折り曲げることで各側板部13を底板部11に対して直角に折り曲げ、この後、隣接する側板部13の側端面部130同士を樹脂溶接によって接合する。この樹脂溶接は、樹脂の原料としてとしてボックス用板材10を形成する樹脂材料と同素材又は同一材料の樹脂材料を用い、図示しない溶接機を用いてボックス1の内側となる入隅部側から行われる隅肉溶接である。前記同一材料とは、中空構造板2の全体の材料やスキン材21の材料であり、特に樹脂溶接される側のスキン材21と同一材料であることが好ましい。なお、樹脂溶接の際に用いられる樹脂の原料はボックス1と異なる原料でもよく、例えば、エラストマー、ウレタン、EVA等の柔らかい樹脂であってもよい。ここで、前記樹脂の原料としてはボックス用板材10と同素材又は同一材料で且つボックス用板材10を形成する樹脂材料よりも粘度が高いものを用いることが好ましい。このように溶接樹脂の原料の粘度を高くすることで、側板部13の平面を伝わって垂れて見栄えが悪くなることを防止できる。また、溶接樹脂が早く固まる。このため、一辺の入隅部に樹脂溶接した後に少しの時間を置いて、他の辺の入隅部を樹脂溶接することができ、ボックス1を早く作ることができる。
【0019】
隣接する側板部13同士を樹脂溶接するには、まず、底板部11に対して隣接する側板部13を直角に折り曲げ、この状態を治具等を用いて維持する。この状態では、前述したように隣接する側板部13の対向する側端面部130の間にボックス1の内側に向かって開口する隙間15が形成される。次に手持ち式又は設置式の溶接機に同素材又は同一材料のPP樹脂線を挿入し、これを溶接機が備えるヒーターの加熱により溶融させる。PP樹脂線は、中空構造板2と同素材又は同一材料を紐状に成形し、ロールに巻き付けて置いたものを、溶接機に取り付けるものである。PP樹脂線の太さは、溶接機で早く溶融するように、細く形成されており、溶接ビートの太さより細い方が望ましい。または、PP樹脂線は、肉盛部分160の肉厚より薄いことが望ましい。PP樹脂線は、細くすることによって、成形時に気泡が入り難くなり、溶融するときにガスを積極的に抜く必要が無く、溶接ビードの中に気泡が入ることなく、確実に溶接することができるからである。なお、前記手持ち式の溶接機としては、機能がシンプルで軽くて小型の溶接機を用いることが好ましい。
【0020】
そして、溶接機に設けられた熱風孔から出る熱風で側板部13同士の接合部分を溶融しながら、溶接機の先端部に設けられたノズルの円形(楕円)又は多角形の注出孔から前記PP樹脂線を溶融させた溶接樹脂を隣接する両側板部13でなす入隅部に向けて注出する。また、このように前記入隅部に置かれた溶接樹脂をノズルの先端で隙間15側に押さえる。ここでノズルの外周形状は中空構造板に当接して位置決めをすることが可能であり、これにより一定の高さを保ちながら左右にぶれることなく、溶接ビードを注出することができるので、綺麗に溶接することができるようになっている。また、この場合、形成する肉盛部分160の形状に合わせて、ノズルの外周部の形状を変えることができる。例えばノズルの外周形状を円錐形にすることが好ましく、このようにすることで溶接樹脂を凹となる平面視弧状の曲面を形成する等の肉盛部分160の形状を作ることができるので、肉盛部分160の形状が、簡単な方法で形成できる。また、ノズルの外周部の形状を平坦な部分を形成する三角錐等にすることも好ましく、この場合、溶接樹脂を平坦にすることができる。また、ノズルの外周部は、溶接ビードより低温のときには、溶接ビードの冷却効果もあり、溶接ビードと同等又は高温なときには、熱風の変わりに側板部13の接合部分を溶融させることや溶融させながら凹ませて溶着面積を大きくすることも可能である。
【0021】
上記により、両側板部13でなす入隅部には肉盛部分160となる溶接樹脂が置かれると共に、該溶接樹脂の一部が隣接する側板部13の間の隙間15に入り込む。さらにこの隙間15に入り込んだ溶接樹脂の一部は、各側板部13の側端面部130から隙間15に露出した中空部22にも入り込む。これにより、両側板部13の接合部分にあっては、図4に示される溶接ビード16が形成される。この溶接ビード16は、両側板部13でなす入隅部に形成された断面略三角形状の肉盛部分160と、肉盛部分160に連続して両側板部13の側端面部130の間の隙間15の一部又は略全体に入り込んだ断面略直線状の接続部分161と、接続部分161に連続して各側板部13の中空部22に入り込んだアンカー部分162を備える。ここで、溶接ビード16の肉盛部分160の隙間15と反対側のボックス1内側に臨む面は、隙間15側に向かって凹となる平面視弧状の曲面になっており、両側板部13のボックス1内側の板面部同士を滑らかに接続している。なお、同面はより凹みの大きい平面視半円状の曲面であってもよいし、また、平面視直線状の面であってもよい。また、特に鋭角にならないように肉盛部分160を形成するとよい。また、同じ樹脂量でも接着面積が大きい方がよく、その為に断面三角形状の肉盛部分160よりも凹んだ半円形の方がよい。
【0022】
このように本実施形態の接合構造にあっては、隣接する側板部13の側端面部130同士とを接合したときに形成される隅部に溶接ビード16の肉盛部分160を形成することができる。このため、両側板部13の接合部におけるL字状の角を無くすことができゴミが溜まり難くなり、汚れが拭き取り易くなる。また、ボックス1の隅部の全てを溶接し、ボックス1内の液体を漏れ難くすることもできる。
【0023】
加えて、溶接ビード16の肉盛部分160が両側板部13の側端面部130の間を経て各側板部13の側端面部130に露出した中空部22にまで広範囲に亘って連続するため、両側板部13を強固に溶接することができる。また、中空構造板2は特に中空部22が形成されたコア材20の部分において綺麗に切断することが難しく、前記樹脂溶接される側板部13の側端面部130が切断面であると、該切断面にできる凹凸又はコア材20の長短や凹凸によって側板部13の側端面部130同士を密着して接合することが難しい。しかし、本実施形態では両側板部13の側端面部130同士を溶接ビード16の接続部分161を介して肉盛部分160側において隙間なく接合できる。このため、側板部13の側端面部130が切断面である場合にも両側板部13を強固に接合することができる。また、この場合、コア材20をスキン材13よりも肉厚を薄くすることで、溶接樹脂がコア材20に当接したときに溶融してコア材20と一体になり易くなる。また、溶接ビード16のアンカー部分162は各側板部13の中空部22に入り込むため、溶接ビード16はボックス1の内側に抜け難い構造となる。従って、この点でも両側板部13を強固に接合することができる。
【0024】
また、側板部13同士を樹脂溶接するにあたって隅肉溶接を行った場合、溶接した後に時間が経過すると、入隅部における溶接ビード16の収縮によって両側板部13が引っ張られ、これにより両側板部13の側端面部130の間に出隅部側に開口する隙間が形成される恐れがある。この隙間にはゴミや液体等が入り込む可能性がある。しかし、本実施形態では前述したように側板部13同士を強固な樹脂溶接により接合できるため前記隙間が形成され難くなる。ここで、中空構造板2に肉盛部分160を形成するとボックス1の外側から衝撃が加わったときには、中空構造体2と肉盛部分160の強度が異なって(特に肉盛部分の肉厚が厚くなると肉盛部分が硬くなる)、剥離する可能性があるので、肉盛部分160の肉厚を薄して強度を低下させるとよいものであり、肉盛部分の形状は三角形状よりも凹みの大きい半円状の曲面を有するものがよい。
【0025】
なお、本実施形態では溶接ビード16を隣接する中空構造板2のいずれの中空部22にも入り込むようにしたが、例えば一方の中空構造板2の端面部を加熱溶融させて封止し、他方の中空構造板2の中空部22にのみ溶接ビード16が入り込むようにしてもよい。また、本実施形態ではボックス1を一枚の中空構造板2を折り曲げて形成したが、例えば底板部11及び対向する一対の側板部13をトリミングし、これら側板部13の端面処理を施した側面視コ字状の一枚の中空構造板2を用意し、このコ字状の中空構造板2の両側端部の内側に他の一対の中空構造板2からなる側板部13を夫々配置し、この後、隣接する側板部13同士の入隅部と底板部11と側板部13の入隅部を本実施形態と同様の樹脂溶接により接合してボックス1を形成してもよい。また、この場合、側板部13の端面処理をしていなくてもよく、さらには側板部13を傾斜させて、舟形形状のボックスを形成しもよい。
【0026】
(第二実施形態)
次に上記とは異なる第二実施形態について説明する。なお、以下の説明では第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は極力省略する。
【0027】
図5に示される本実施形態のボックス1は複数枚の中空構造板2を樹脂溶接することによって形成される。すなわち、底板部11及び四方の側板部13は夫々が一枚の中空構造板2によって構成されている。ボックス1は、各側板部13の下端面部131を底板部11の上面縁部に樹脂溶接により接合し、また、ボックス1の四隅において側板部13の側端面部130を隣接する側板部13の板面部132の縁部に樹脂溶接により接合することで形成される。これら隣接する側板部13同士の樹脂溶接、並びに側板部13と底板部11の樹脂溶接は隅肉溶接であって、第一実施形態と同様の溶接機及び樹脂の原料を用いて行われる。この樹脂溶接により、隣接する側板部13の側端面部130同士とを接合したときに形成される隅部や、側板部13と底板部11とで接合したときに形成される隅部に、溶接ビード16の肉盛部分160を形成するくことができる。このため、両側板部13の接合部、及び側板部13と底板部11の接合部において、L字状の角を無くすことができ、ゴミが溜まり難くなり、汚れが拭き取り易くなる。また、ボックス1の隅部の全てを溶接し、ボックス1内の液体を漏れ難くすることもできる。
【0028】
側板部13の隣接する側板部13に突き合わされる側端面部130は、図6に示されるように当該側板部13の厚み方向に対して傾斜している。具体的には、この側端面部130は当該側板部13の厚み方向においてボックス1内側に行く程側板部13の長手方向における中央側に向かうように傾斜している。このため、隣接する側板部13同士を樹脂溶接するにあたって、各側板部13の側端面部130におけるボックス1外側の端部を隣接する側板部13のボックス1内側の板面部132に突き合わせて、側板部13同士を平面視で直角に配置したとき、各側板部13の側端面部130とこれに隣接する側板部13の板面部132の間にはボックス1内側に向かって開口する隙間17が形成されるようになっている。なお、隙間17は各側端面部130の全長に形成されてもよいし、部分的に形成されてもよい。さらには加工時に部分的に形成されるものであってもよい。
【0029】
このような隙間17を形成することで、両側板部13でなす入隅部に置かれた溶接樹脂の一部を隙間17に入り込ませ、さらにこの隙間17より側板部13の側端面部130に露出した中空部22にも入り込ませることができる。すなわち、本実施形態の両側板部13を繋ぐ溶接ビード16も、肉盛部分160と、肉盛部分160に連続する接続部分161と、接続部分161に連続して側板部13の中空部22に入り込んだアンカー部分162を備えることとなる。従って、両側板部13を強固に樹脂溶接することができる。なお、この溶接ビード16の肉盛部分160のボックス1内側に臨む面は、第一実施形態と同様、平面視弧状の曲面としてもよいし、平面視直線状の面としてもよい。
【0030】
また、図示は省略するが、各側板部13の底板部11の上面に突き合わされる下端面部131も当該側板部13の厚み方向に対して傾斜している。具体的には、各側板部13の下端面部は当該側板部13の厚み方向においてボックス1内側に行く程ボックス1上側に向かうように傾斜している。このため、各側板部13と底板部11を樹脂溶接するにあたって、側板部13の下端面部131におけるボックス1外側の端部を底板部11の上面に突き合わせて側板部13を底板部11に対して直角に配置したとき、側板部13の下端面部131とこれに対向する底板部11の上面との間にはボックス1内側に向かって開口する隙間が形成されるようになっている。このような隙間を形成することで、側板部13と底板部11とでなす入隅部に置かれた溶接樹脂の一部を隙間に入り込ませ、さらにこの隙間より側板部13の下端面部131に露出した中空部22に入り込ませることができる。また、この底板部11側の入隅部に溶接ビード(肉盛部分)を形成しなかった場合、同部には三角錐状の空間が形成されて、ボックス1の中で一番ゴミが溜まり易く、汚れを拭き取り難い部分となる。しかし、本実施形態では前記底板部11側の入隅部に溶接樹脂をすることによって、前記三角錐状の空間を溶接ビード(肉盛部分)で埋めることになり、ゴミが溜まり難く、汚れが拭き取り易くなる。なお、前記三角錐状の空間を埋める溶接ビードの形状は隅切り形状のような平面や内向きに開口した凹曲面にしてもよい。
【0031】
(第三実施形態)
次に上記とはさらに異なる第三実施形態について説明する。なお、以下の説明では第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は極力省略する。
【0032】
図7に本実施形態のパレット3を下側から見た斜視図を示す。パレット3は、上面板部30と、上面板部30の両側端部及び中間部から下方に向けて突出する脚板部31、32とで構成されている。上面板部30及び両側端部の脚板部31は一枚の中空構造板2から形成される。具体的には、中空構造板2の板面部の両側に第一実施形態のボックス用板材10と同様の断面V字状の溝が形成されてヒンジ部33が形成され、該中空構造板2において両ヒンジ部33の間の部分が上面板部30とされ、両ヒンジ部33よりも外側の部分の夫々が脚板部31とされる。そして、ヒンジ部33を折り曲げて両脚板部31を上面板部30に対して垂直に折り曲げ、上面板部30の側端面部300と各脚板部31の上端面部310とを熱溶着することで、上面板部30と両脚板部31が形成される。なお、前記熱溶着はヒンジ部33を形成する際に加熱刃によって溶融された状態にある上面板部30の側端面部300と脚板部31の上端面部310とを合わせることによりなされる。
【0033】
パレット3の中間部の脚板部32は上面板部30とは別の中空構造板2で構成されている。この脚板部32は中空構造板2で構成される定尺板から切り出されたものである。脚板部32の上端面部320は前記切り出しの際に、上面板部30の下面と略平行となるように切断された切断面である。脚板部32はその上端面部320を上面板部30の下面に樹脂溶接することによって接合される。この樹脂溶接は両側隅肉溶接であって第一実施形態と同様の溶接機及び樹脂の原料を用いて行われる。この樹脂溶接により、パレット3の上面板部30と脚板部32の接合部分の両側に形成される隅部に、溶接ビード16の肉盛部分160を形成することができる。このため、上面板部30と脚板部32の接合部分においてL字状の角を無くすことができ、ゴミが溜まり難く、汚れが拭き取り易くなる。なお、この溶接ビード16の肉盛部分160の外側の面(上面板部30と脚板部32との接合面と反対側の面)も、第一実施形態と同様、平面視弧状の曲面であってもよいし、平面視直線状の面であってもよい。
【0034】
ここで、脚板部31の上端面部320は上面板部30の下面と平行になるように切断されるが、完全に平行に切断することは難しい。また、中空構造板2におけるコア材20部分は切断刃によって綺麗に切断し難い。また、上面板部30の下面を完全に平坦に形成することが難しく、凹部が形成される可能性がある。さらに脚板部31の片側を上面板部30に隅肉溶接したときには、当該樹脂溶接により形成された溶接ビードの収縮により、脚板部31が当該溶接した側に傾く可能性がある。これらの要因により脚板部31の上端面部320と上面板部30の下面の間には脚板部31と上面板部30とでなす隅部側に開口する隙間が形成される。このため、脚板部31と上面板部30とでなす隅部に置かれた溶接樹脂の一部を前記隙間に入り込ませ、さらにこの隙間より脚板部31の上端面部320に露出した中空部22に入り込ませることができる。従って、本実施形態においても、脚板部31と上面板部30とでなす隅部に位置する肉盛部分160と、この肉盛部分に連続して脚板部31の上端面部320と上面板部30の下面部との間に位置する接続部分と、この接続部分に連続して脚板部31の中空部22に入り込んだアンカー部分を備えた溶接ビード16を形成することができる。なお、前記脚板部31の上端面部320と上面板部30の下面の間に形成される隙間は脚板部31の全長に形成されてもよいし、部分的に形成されてもよい。さらには、第二実施形態のように脚板部31の上端面部320を上面板部30の下面に対して傾斜した傾斜面とすることで形成しても構わない。
【0035】
(第四実施形態)
次に上記とはさらに異なる第四実施形態について説明する。なお、以下の説明では第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は極力省略する。本実施形態では図9に示されるように板材4の板面部40に中空構造板2を樹脂溶接で接合しており、中空構造板2によって厚みの小さい板材4の補強を図っている。この板材4に中空構造板2を接合したものは、例えば蓋や棚として使用することができる。なお、板材4は合成樹脂や木等の中実のものであってもよいし、中空のものであってもよい。
【0036】
中空構造板2の板面部24は板材4の板面部40に当接され、この状態で両者が樹脂溶接によって接合されている。この樹脂溶接は第一実施形態と同様の溶接機及び樹脂の原料を用いて行われるものであり、板材4の板面部40と中空構造板2の端面部25によって形成される隅部に溶接ビード16の肉盛部分160を形成する隅肉溶接である。そして、樹脂溶接前における中空構造板2の両端面部25には中空部22が露出しており、各隅部に置かれた溶接樹脂は端面部25に露出した中空部22の内部にまで入り込むようになっている。すなわち、本実施形態の溶接ビード16の肉盛部分160は中空構造板2の対応する端面部25に露出した中空部22の内部にまで連続する。
【0037】
なお、図9に示す例では中空構造板2の端面部25は封止されていないが、中空構造板2の端面部を加熱溶融させて封止し、この封止面に中空構造板2の中空部22と溶接ビード16の肉盛部分160が位置する部分とを連通させる孔を形成し、これにより図10に示されるように溶接ビード16の肉盛部分160を前記孔を介して中空部22に入り込むようにしても構わない。また、前記中空構造板2の端面部を加熱溶融させて封止するときには樹脂を溶融させて押し潰すものの、中空部22の空気が膨張されて封止面に孔が開くこともあり、この孔を介して溶接ビード16の肉盛部分160が中空部22に入り込むようにしてもよい。また、中空構造板2の封止された端面部25が溶接時における溶接樹脂の熱や溶接機から吹き出される熱風等により溶かすことで孔が空くようにし、この孔を介して隅部の溶接樹脂が中空構造板2の中空部22に入り込むようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態は、例えばボックス等を形成するにあたって、コーナー部を介して隣接する側板を構成する両板材のうち、一方の板材に対して他方の板材を一方の板材の外側に折り曲げて重ね合わせ、その他方の板材の端面と一方の板材の側面を樹脂溶接する際にも適用できる。
【0039】
また、第一実施形態及び第二実施形態ではボックス1の各側板部13を底板部11に対して垂直なものとしたが、本発明は、例えば対向する一対の側板部13を上方に行く程ボックス1外側に向かうように傾斜させることで、ネスティング可能な舟形形状にしたボックス1に適用することもできる。さらには、円筒状や半割円筒状にした板材と平坦な板材の隅部を溶接して筒やケースを形成する場合にも本発明は適用可能である。さらに、板材を他の板材の曲線状に曲げた端面に沿って曲げながら両板材の隅部を溶接して筒やケースを形成する場合等にも本発明は適用可能である。この例としては、平坦な板材を半円形状の側板部の下端面に沿って曲げながら溶接することで、舟形のボックスを形成する場合が挙げられる。
【0040】
また、第一〜第三実施形態では入隅部に置かれた溶接ビードが中空構造板2の端面部に露出した中空部22に入り込むようにしたが、樹脂溶接前の中空構造板2の端面部を加熱溶融することによって、同部の中空部22を封止する封止面部とし、この封止面部が溶接樹脂や溶接機の熱風による加熱によって溶かされることで、入隅部に置かれた溶接樹脂が中空部22に入り込むようにしても構わない。
【0041】
また、第一〜第三実施形態においては、溶接ビードの肉盛部分を、中空構造板2の端面部とこれに対向する中空構造板2の端面部の間、又は中空構造板2の端面部とこれに対向する中空構造板2の板面部の間を介して中空構造板2の端面部に露出した中空部22の内部にまで連続するようにしたが、図8に示されるように中空構造板2の板面部に、中空構造板2の中空部22と隅部を連通させる孔23を形成し、隅部における溶接樹脂が孔23を介して中空部22の内部にまで入り込むようにしてもよい。すなわち、この場合の溶接ビード16は、入隅部に配置される肉盛部分160と、肉盛部分160に連続して孔23に配置される接続部分161と、接続部分161に連続して中空部22の内部に配置されるアンカー部分162を備えることとなる。
【0042】
また、図8の例のように溶接ビード16の肉盛部分160を孔23を介して中空構造板2の中空部22に至らせると共に、第一〜第三実施形態のように、溶接ビード16の肉盛部分160を隣接する中空構造板2の端面部と接合対象物の間を経て中空構造板2の端面部から中空部22に連続するようにしても構わない。また、図8の例では隣接する中空構造板2のいずれにも孔23を形成したが、一方の中空構造板2にのみ孔23を形成してもよい。また、孔23に代えて、中空構造板2の中空部22と溶接ビード16の肉盛部分160が位置する部分とを連通させる切欠きを設けても構わない。
【0043】
さらに図8の例では中空構造板2の板面部に予め孔23を形成したが、溶接時における溶接樹脂の熱や溶接機から吹き出される熱風、加熱刃等により溶かすことで孔が空くようにし、この孔を介して隅部における溶接樹脂が中空部22の内部にまで入り込むようにしてもよい。また、前記中空構造板2のコア材20は一枚のシート状物を折り畳んで形成され、この際に中空部11の一方のスキン材13側の端面部はシートの突き合わせ部分によって構成されるものであるため、前記のように中空構造板2の板面部を加熱して孔を空ける場合、前記シートの突き合わせ部分に隅部側と中空部22内部とを連通させる隙間27(図8参照)を形成してもよい。このようにすると、隅部側に臨むスキン材13を溶融させるだけで隅部における溶接樹脂が隙間27を介して中空部22に入り込むようになる。
【0044】
また、第一実施形態では側板部13と底板部11を樹脂溶接せずに単に側板部13を底板部11に対して折り曲げただけだが、側板部13の下端面部と底板部11の側端面部110を隅肉溶接により接合しても構わない。また、この場合、図8の例のように溶接ビード16の肉盛部分160を側板部13や底板部11を構成する中空構造板2の板面部に形成された孔23を介して当該中空構造板2の中空部22の内部にまで連続させてもよい。さらに前記各実施形態及び図8に示される接合構造は中空構造板2を中空構造板2以外の接合対象物に接合する場合にも適用可能である。また、上記では実施形態の第一〜第四まで記載したが、各実施形態に記載した構成や効果は、他の実施形態にも場合によっては適用することが可能である。特に、第一実施形態の隙間15、溶接樹脂の原料、溶接機、肉盛部分160の形状、中空構造体2の形状や肉厚、ボックス1の形状等については、第二〜第四に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
2 中空構造板
16 溶接ビード
22 中空部
23 孔
160 肉盛部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10