(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、形状検査装置の計測精度が低下すると、形状欠陥を持つタイヤが出荷されるおそれがあるため、定期的に形状検査装置の検査精度を確認する必要がある。また、この精度確認は、ユーザ側で簡便に行えることが望ましい。そのためには、精度確認用の特別な計測モードを用意するといったソフトウェアの変更を行わずに、精度確認を行えることが望ましい。
【0009】
しかしながら、特許文献1、2のいずれにも、形状検査装置の検査精度の確認に関する記載が全くなされていない。また、特許文献3では、ハードウェアの変更を要しないことは考慮されているが、ソフトウェアの変更を要しないことが考慮されていない。
【0010】
本発明の目的は、既存の形状検査装置に特別な計測モードを設けなくても、形状検査装置の計測精度を確認することができる形状検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一態様による形状検査装置は、タイヤの表面形状を計測し、計測結果に基づいて前記タイヤの凹凸欠陥を検査する形状検査装置であって、既知の形状値を持つ凹凸板が計測面に取り付けられ、前記タイヤを模擬した金属製のマスターディスクの前記計測面の表面形状を計測する計測部と、前記凹凸板内の所定の領域を有効領域とし、前記有効領域以外の領域を無効領域とするマスクデータを用いて、前記計測部により計測された計測データから前記無効領域の計測データを除去するマスク処理部と、前記マスク処理部により前記マスク領域が除去された計測データに基づいて、前記マスターディスクの前記計測面の表面形状を示すマスターデータを生成するマスターデータ生成部とを備える。
【0012】
この構成によれば、凹凸板内の所定の領域が有効領域、それ以外の領域が無効領域とされたマスクデータを用いて、マスターディスクの計測データから無効領域の計測データが除去され、この計測データに基づいて、マスターディスクの計測面の表面形状を示すマスターデータが生成される。
【0013】
そのため、マスターデータに含まれる凹凸板の表面形状を示すデータと凹凸板の既知の形状値とを比較することでユーザは形状検査装置の計測精度を確認することができる。また、マスターディスク全域の計測データではなく凹凸板内の有効領域の計測データのみが抽出されてマスターデータが生成されているため、影等によって実際の計測に失敗した欠陥データの影響により、マスターディスクの本来の形状から大きくずれたマスターデータが生成されることを防止することができる。
【0014】
また、既存の形状検査装置では、マスタータイヤの全域の計測データに対して凹凸マークを除去する処理やフーリエ変換処理を施してマスターデータが生成されているが、本構成では、マスターディスクの全域ではなく有効領域の計測データを用いてマスターデータが生成されている。そのため、処理対象の計測データに対して凹凸マークを除去する処理を実行しても、予期せぬ位置に凹凸マークを除去する処理が実行されたり、凹凸板の実際の形状から大きく乖離したフーリエ変換値が得られたりすることを防止することができる。そのため、既存の形状検査装置に特別な計測モードを設けなくても形状検査装置の計測精度を精度よく確認することができる。
【0015】
また、ゴム製のマスタータイヤは注入される空気の影響により大きなうねりを持つことがあるが、本構成では、金属製のマスターディスクが採用されているため、大きなうねりを持つことがない。そのため、うねりの影響により形状検査装置の計測精度が劣化していると判定されることを防止することができる。
【0016】
(2)前記凹凸板は、前記計測面と連なる2つのベース面と、前記ベース面から突出した凸面と、前記ベース面から陥没した凹面とを備え、前記有効領域は、一方の前記ベース面、他方の前記ベース面、前記凸面、及び前記凹面のそれぞれに1箇所ずつ設けられていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、凹凸板を構成する2つのベース面、凸面、凹面のそれぞれに1箇所ずつ有効領域が設けられているため、凹凸の変化が激しい箇所の計測データが処理対象データに含まれることを防止することができ、処理対象データに欠陥データが含まれることを防止することができる。
【0018】
(3)前記マスターディスクの種類に応じたマスクデータを予め記憶する記憶部を更に備え、前記マスク処理部は、前記計測部により計測されたマスターディスクに対応するマスクデータを用いて前記無効領域の計測データを除去してもよい。
【0019】
この構成によれば、マスターディスクの種類に対応したマスクデータが用いられるため、マスターディスクにおける実際の凹凸板の位置とは異なる位置に有効領域が設定されることを防止することができる。
【0020】
(4)前記計測部は、光切断法により前記計測面の表面形状を計測してもよい。
【0021】
この構成によれば、光切断法によりマスターディスクの計測面の形状が計測されているため、スポット光を用いる場合に比べ、計測面全域の表面形状を高速に計測することができる。
【0022】
(5)前記計測面はサイドウォール面であってもよい。
【0023】
この構成によれば、サイドウォール面を計測する際の形状検査装置の計測精度を確認することができる。
【発明の効果】
【0024】
本特許発明によれば、既存の形状検査装置に特別な計測モードを設けなくても、形状検査装置の計測精度を簡便に確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1(A)は、本発明の実施の形態による形状検査装置のハードウェア構成の概要を示した図である。形状検査装置はセンサ部102及びアーム部103を備える。センサ部102は、撮像部及び光源を含む。光源は、マスターディスク100或いは計測対象となるタイヤの半径方向に光切断線を照射する。撮像部は、光切断線が照射されたマスターディスク100或いはタイヤを撮像する。アーム部103は、センサ部102の後端に設けられ、センサ部102を半径方向に移動させる。
【0027】
センサ部102を搭載した状態で、形状検査装置の計測精度を確認するためには、凹凸形状の形状値が既知である基準タイヤを用意する必要がある。基準タイヤとして、通常のタイヤと同じゴム製のタイヤを用いると、空気圧の変化や経年劣化により形状が大きく変化するおそれがあるため、ゴム製のタイヤを採用することは好ましくない。
【0028】
そこで、本実施の形態では、タイヤを模擬した金属製の擬似タイヤを作成し、これをマスターディスク100として用いる。マスターディスク100のサイドウォール面S1には、例えば1個の凹凸板101が取り付けられている。また、他方のサイドウォール面S1にも、例えば1個の凹凸板101が取り付けられている。凹凸板101は、例えば、ネジ150を用いてマスターディスク100に取り付けられている。
【0029】
ここで、サイドウォール面S1において、凹凸板101はマスターディスク100の中心軸106を中心として対称に配置されている。マスターディスク100は、凹凸板101を取り付けるために空間が設けられている。凹凸板101の形状値は、別途、ノギス等手段を用いて、1μm単位で予め計測され、この形状値が基準値とされる。なお、マスターディスク100は、金属製であるため、ゴム製のタイヤとは光学的な散乱率(反射率)が異なっている。そこで、マスターディスク100は、黒で塗装し、ゴム製のタイヤと同程度の光学的特性を持たせることが好ましい。
【0030】
図1(B)は凹凸板101の上面視からの図であり、
図1(C)は凹凸板101のC−C方向からの断面図である。
図1(C)に示すように、凹凸板101は、ベース面110、凸面120、凹面130、及びベース面140を備えている。
【0031】
ベース面110は、サイドウォール面S1と連なっており、サイドウォール面S1と平行である。凸面120は、ベース面110から所定の高さ分突出して形成され、サイドウォール面S1と平行である。凹面130は、ベース面110から所定の高さ分陥没して形成され、サイドウォール面S1と平行である。ベース面140は、サイドウォール面S1と連なっており、サイドウォール面S1と平行である。凸面120はベース面110に隣接し、凹面130は凸面120に隣接し、ベース面140は凹面130に隣接している。また、
図1(B)に示すように、上面視において、ベース面110、凸面120、凹面130、及びベース面140のそれぞれの形状は短冊状である。
【0032】
図2は、マスターディスク100の計測データの一例を示すグラフである。
図2において、縦軸は高さピクセル単位で示し、横軸はサイドウォール面S1の1周分のサンプル点を示している。
図2の例では、マスターディスク100を1回転させ、その間にセンサ部102で所定回数(例えば、1000〜5000回)、マスターディスク100を撮像し、得られた画像データから計測データを求めている。1枚の画像データには、光切断線と交差する方向に、所定本数(例えば、画像データの垂直方向の解像度に応じた本数)の水平ラインが含まれている。そして、
図2の例では、中央の水平ラインのサンプル点のうち、凹凸板101が存在しているサンプル点の計測データが示されている。
図2の縦軸に示すように、凹凸板101の高さは所定範囲内で変動していることが分かる。
【0033】
図2において、縦軸の中央付近を通り、横軸と平行なベースラインA205は、ベース面110、140を基準としたときの凸面120及び凹面130の高さを決定するための補助ラインである。
【0034】
ベースラインA205は、例えば、ベース面110に対応する領域A101の計測データに基づいて決定される。
図2に示すように、領域A101の計測データを全て用いてベースラインA205を決定すると、領域A101内の計測データはギザついているため、本来のベース面110の傾きからずれた傾きを持つベースラインA205が算出されるおそれがある。
【0035】
更に、
図2に示すように、凹面130の右端に対応する領域A202には、凹面130とベース面140との段差による影の影響により計測できない欠陥サンプル点が発生することもある。この欠陥サンプル点が存在すると、この欠陥サンプル点の影響によりベースラインA205が本来のベース面110の傾きからずれるおそれがある。
【0036】
したがって、後述するマスク処理を行って、凹凸板101の全域の計測データではなく、凹凸板101内の一部の計測データを用いてベース面110、140、凸面120、凹面130の傾き求めた方が、これらの面が本来持つ傾きを正確に求めることができる。したがって、本実施の形態では、後述するマスク処理を行う。
【0037】
図3は、ある1ラインの1周分の計測データを示したグラフである。
図4は、
図3の凹凸板101に対応する領域A301の計測データを拡大したグラフである。
図5は、
図4に示す凸面120の形状を示す関数と、凹面130の形状を示す関数と、これら2つの関数の差分とを示したグラフである。
【0038】
図3、
図4において、縦軸及び横軸は、
図2と同じである。
図5において、左側の縦軸はベースラインを基準としたときの凸面120及び凹面130の高さをピクセル単位で示し、右側の縦軸は、凸面120の高さと凹面130の高さとの差分をピクセル単位で示している。
【0039】
図4に示すように、凸面120の計測データから凸面120の形状を示す関数を算出すると、その関数はy=a1・x+b1であった。ここで、xは横軸、yは縦軸を示す。また、凹面130の形状を示す関数は、y=a2・x+b2であった。また、ベース面110の形状を示す関数は、y=a3・x+b3であった。また、ベース面140の形状を示す関数は、y=a4・x+b4であった。
【0040】
このように、計測データのギザつきや欠陥サンプル点の存在により、ベース面110、140、凸面120、及び凹面130の傾きは本来0になるべきところであるが、0になっていないことが分かる。
【0041】
したがって、
図5のグラフに示すように、どのサンプル点の計測データを用いるかによって、凸面120及び凹面130の高さが大きく変動することが分かる。
【0042】
以上のように全ての計測データをそのまま使用すると、計測データのギザつきや、欠陥サンプル点に引きずられて、形状検査装置の計測精度を正しく判定できないおそれがある。
【0043】
また、特許文献2に示すように、既存の形状検査装置では、基準となるサンプルタイヤの計測データからマスターデータを生成しておき、このマスターデータを用いて検査対象となるタイヤの計測データから凹凸マークを除去し、除去後の計測データからタイヤの形状が評価されている。また、タイヤ形状の評価試験においては、計測データの所定次数(例えば16〜100次程度)以上のフーリエ変換値を用いて評価することが定められている。
【0044】
そのため、既存の形状検査装置では、サンプルタイヤの計測データから凹凸マークを検出して除去し、フーリエ変換値を求めてマスターデータを算出するソフトウェアモジュールが組み込まれている。
【0045】
マスターディスク100の全サンプル点の計測データをこのソフトウェアモジュールに通すと、ギザつきの大きなサンプル点が凹凸マークを構成するデータとみなされて予期しない位置の計測データが除去されるおそれがある。また、欠陥サンプル点やギザつきの大きなサンプル点の影響により、フーリエ変換値が本来の形状を表す値から大きくずれてしまうおそれがある。
【0046】
本実施の形態では、形状検査装置に新たに計測モードを設けることなく、形状検査装置の計測精度を確認することを目的としている。そこで、マスターディスク100の全サンプル点のうち装置の計測精度の確認に必要となる計測データのみをマスクデータを用いて抽出し、得られた計測データをこのソフトウェアモジュールに処理させてマスターデータを算出し、得られたマスターデータと凹凸板101の既知の形状値とを比較することで形状検査装置の計測精度を確認する。
【0047】
図6は、本発明の実施の形態によるマスクデータの模式図である。
図6では、マスターディスク100の計測データに重畳するようにマスクデータが示されている。
図6において、横軸は周方向を示し、縦軸は半径方向を示している。
図6において、明暗は高さを示しており、明るくなるにつれて高い箇所が示され、暗くなるにつれて低い箇所が示されている。
【0048】
図6において画面全域に帯状に表れている領域401は、マスターディスク100のサイドウォール面の計測データが配置された領域である。領域401の中央には、縦方向を長手方向とする四角形の4つの有効領域411〜414が設けられている。有効領域411〜414は、それぞれ、
図1(C)に示す、ベース面110、凸面120、凹面130、及びベース面140に対応して設けられている。有効領域411〜414以外の領域は無効領域である。マスクデータを用いて計測データにマスク処理を実行すると、有効領域411〜414のみの計測データが抽出され、それ以外の無効領域の計測データ無効とされる。
【0049】
図7は、
図6の周方向に沿ったある1ラインにおける計測データを示したグラフであり、縦軸は高さをmm単位で示し、横軸はサンプル点を示している。
【0050】
図7に示すように、有効領域411は、ベース面110の全域ではなく、凸面120との境界位置が含まれないように、ベース面の中央に設けられている。また、有効領域412は、凸面120の全域ではなく、ベース面110及び凹面130との境界位置が含まれないように凸面120の中央に設けられている。また、有効領域413は、凹面130の全域ではなく、凸面120及びベース面140との境界位置が含まれないように凹面130の中央に設けられている。また、有効領域414は、ベース面140の全域ではなく、凹面130との境界位置が含まれないようにベース面140の中央に設けられている。
【0051】
これにより、欠陥サンプル点が除去された計測データを用いて、装置の計測精度を確認することができる。
【0052】
なお、有効領域及び無効領域の設定は、形状計測装置の製造メーカによって予め行われている。つまり、形状計測装置の製造メーカは、マスターディスク100とセットで、そのマスターディスク100に対応するマスクデータを提供する。なお、形状計測装置の製造メーカの開発者は、マスターディスク100の計測データを表示画面に表示させ、ベース面110、140、凸面120、及び凹面130に対応する計測データ上の位置を目視により特定し、有効領域及び無効領域を設定することでマスクデータを作成する。
【0053】
ここで、無効領域の各サンプル点の計測データは、ベース面110、140に対応する有効領域411、414の計測データを用いて算出されてもよい。例えば、有効領域411、412から数点のサンプル点を取り出し、取り出したサンプル点の計測データを、無効領域内に等間隔でプロットしていき、線形補間することで、無効領域の各サンプル点の計測データを求めてもよい。
【0054】
図8は、凹凸板101の設計上の高さを示したグラフであり、縦軸は、高さをmm単位で示し、横軸は周方向のサンプル点を示している。
図8の凹凸板101では、ベース面110、140を基準としたときの凸面120の高さ501の平均は、例えば、0.5〜3.0mm程度である。また、ベース面110、140を基準としたときの凹面130の高さ502の平均は、例えば、−0.5〜−3.0mm程度である。
【0055】
図9は、形状検査装置が生成したマスターディスク100の一方のサイドウォール面のマスターデータを示したグラフであり、縦軸は高さをmm単位で示し、横軸は周方向のサンプル点を示している。
図10は、形状検査装置が生成したマスターディスク100の他方のサイドウォール面のマスターデータを示したグラフであり、縦軸は高さをmm単位で示し、横軸は周方向のサンプル点を示している。
【0056】
図9において、有効領域411〜414の計測データを用いて、ベース面110、140を基準としたときの、凸面120及び凹面130の高さの平均値を算出した。すると、凸面120及び凹面130の高さの平均値はマスターディスク100の凸面120及び凹面130の設計上の高さとほぼ一致した。
【0057】
また、
図10において、有効領域411〜414の計測データを用いて、ベース面110、140を基準としたときの、凸面120及び凹面130の高さの平均値を算出した。すると、凸面120及び凹面130の高さの平均値は設計上のマスターディスク100の凸面及び凹面130の設計上の高さの平均値とほぼ一致した。そのため、計測データに対してマスクデータを用いたマスク処理を施すことで、凸面120及び凹面130の正確な高さが得られていることが分かる。
【0058】
図11は、本発明の実施の形態による形状検査装置の全体構成図である。形状検査装置は、回転部2、センサ部102、エンコーダ4、制御部5、及びユニット駆動部10を含む。回転部2は、タイヤ又はマスターディスク(以下、両者を纏めて計測物Tと記述する)を回転軸Rを中心軸として回転させる。具体的には、回転部2は、計測物Tの中心軸に取り付けられるシャフト及びシャフトを回転させるためのモータ等を含む。回転部2による計測物Tの回転速度としては、例えば60rpmが採用される。
【0059】
センサ部102は、計測物Tのトレッド面側に設けられたセンサ部31と、計測物Tのサイドウォール面の上側に設けられたセンサ部32と、計測物Tのサイドウォール面の下側に設けられたセンサ部32とが存在する。センサ部31はトレッド面を計測する際に用いられ、センサ部32は上側のサイドウォール面を計測する際に用いられ、センサ部33は下側のサイドウォール面を計測する際に用いられる。
【0060】
センサ部31は、回転中の計測物Tに対して半径方向にスリット状の光切断線を照射することで光切断線をトレッド面の周方向に走査し、計測物Tからの反射光を受光し、トレッド面の全域の計測データを取得する。
【0061】
センサ部32、33も、センサ部33と同様にして、それぞれ、光切断線を計測物Tに照射し、サイドウォール面の全域の計測データを取得する。
【0062】
エンコーダ4は、計測物Tが所定角度回転する毎に、回転角度を示す角度信号を制御部5に出力する。角度信号は、センサ部102の計測タイミングを決定するために用いられる。
【0063】
制御部5は、例えば、専用のハードウェア回路や、CPU等により構成され、センサ部102から出力された計測データに対して後述する処理を行う。ユニット駆動部10は、センサ部31〜33を位置決めするための3本のアーム部(図略)及び3本のアーム部をそれぞれ移動させるための3個のモータ等を含み、制御部5の制御の下、センサ部31〜33を位置決めする。
【0064】
なお、
図11において、センサ部102としてセンサ部31〜33を設ける態様を示したが、これに限定されない。例えば、センサ部31〜33のうちいずれか1個又は2個を省いてもよい。
【0065】
図12は、センサ部102の詳細な構成図である。
図12では、トレッド面を計測する際のセンサ部102が示されている。
図12において、Y軸は回転軸R(
図11参照)と平行な方向を示し、Z軸はトレッド面の法線方向を示し、X軸はY軸及びZ軸のそれぞれと直交する方向を示している。
【0066】
光源7は、半導体レーザ及びシリンドリカルレンズ等を含む光源であり、光切断線を計測物Tに照射する。ここで、光源7は、Z軸と交差する方向から光切断線を照射する。計測物Tは回転部2によって回転されているため、光切断線は計測物Tのドレッド面の全域を走査することができる。
【0067】
カメラ6は、カメラレンズ8、及び撮像素子9を含む。カメラレンズ8はトレッド面からの反射光を撮像素子9に導く。撮像素子9は、例えば、CCDやCOMS等のイメージセンサにより構成され、カメラレンズ8を介して反射光を受光する。撮像素子9は、制御部5の制御の下、トレッド面を撮像する。なお、反射光は正反射光が好ましいため、カメラレンズ8は正反射光を撮像素子9に導くように構成される。
【0068】
図13は、本発明の実施の形態による形状検査装置の構成を示すブロック図である。形状検査装置は、光源7、撮像素子9(計測部の一例)、制御部5、操作部820、記憶部830、及び表示部840を備えている。撮像素子9は、光切断線が照射されたマスターディスク100を所定のフレームレートで撮像する。
【0069】
光源7は、計測物Tに光切断線を照射する。制御部5は、例えば、FPGAにより構成され、計測データ算出部811(計測部の一例)、マスク処理部812、及びマスターデータ生成部813を備えている。操作部820は、例えば、キーボードやマウス等の入力装置により構成され、ユーザからの操作指示を受け付ける。
【0070】
計測データ算出部811は、撮像素子9により撮像された撮像データから光切断線の位置を検出する。具体的には、計測データ算出部811は、撮像素子9が1枚の撮像データを撮像する都度、その撮像データに含まれる光切断線CLの位置を検出する。計測データ算出部811は、
図12に示すように撮像素子9において、光切断線CLに交差する方向に垂直座標が設定され、光切断線CLに沿う方向に水平座標が設定されているとすると、垂直方向の各ラインにおいて輝度のピークとなる座標をピクセルレベル又はサブピクセルレベルで検出し、その座標を光切断線CLの位置として検出する。
【0071】
そして、計測データ算出部811は、検出した位置から三角測量の原理を用いて光切断線の各位置の高さデータを算出し、この高さデータからなるデータ群を半径方向に沿った1ラインの計測データとして算出する。
【0072】
そして、計測データ算出部811は、1ラインの計測データをマトリックス状に配列し、計測物Tの計測面の全域の計測データを算出する。例えば、1ラインの計測データを構成する高さデータの数がM個、撮像素子9が撮像した撮像データの枚数がN個とすると、計測データは、高さデータがM行×N列で配列されたデータとなる。なお、計測データ算出部811は、検査対象となるタイヤの計測データについても、マスターディスク100と同様にして算出する。
【0073】
マスク処理部812は、計測データ算出部811により算出された計測データに対して、マスクデータを用いたマスク処理を実行し、得られた計測データを処理対象データとしてマスターデータ生成部813に出力する。なお、本実施の形態では、形状検査装置の計測精度を評価するときのみ、マスク処理部812はマスク処理を行い、それ以外のときは、マスク処理を行わない。この場合、計測データ算出部811で算出された計測データは、マスターデータ生成部813に出力される。
【0074】
マスクデータとしては、
図6に示したマスクデータ、すなわち、ベース面110、140、凸面120、及び凹面130の一部が有効領域411〜414、有効領域411〜414以外の領域が無効領域とされたマスクデータが採用される。
【0075】
そして、マスク処理部812は、マスターディスク100の計測データから有効領域411〜414の計測データを抽出する。
【0076】
また、マスク処理部812は、ベース面110、140に対応する有効領域411、414を構成する数点のサンプル点の計測データを無効領域にプロットして、線形補間により無効領域の計測データを求める。例えば、
図6に示す無効領域において、垂直方向に4つ、水平方向に4つの合計16個の計測データをプロットする場合、ベース面110から8個の計測データを取り出し、これら8個の計測データを有効領域411の左側の無効領域に4行×2列で等間隔にプロットし、ベース面140から8個の計測データを取り出し、これら8個の計測データを有効領域414の右側の無効領域に4行×2列で等間隔にプロットすればよい。そして、マスク処理部812は、プロットした16個の計測データを線形補間して、無効領域の各サンプル点における計測データを求めればよい。そして、マスク処理部812は、得られた無効領域の計測データと有効領域の計測データとを処理対象データとして、マスターデータ生成部813に出力してもよい。
【0077】
マスターデータ生成部813は、上述した、サンプルタイヤの計測データから凹凸マークを検出して除去し、フーリエ変換値を求めてマスターデータを算出するソフトウェアモジュールにより構成されている。ここで、処理対象データは、欠陥サンプル点が除去されているため、凹凸マークを検出して除去する処理が実行されても、凹凸マークが検出されない。なお、マスターデータはマスターディスク100の計測面の表面形状を示すデータである。
【0078】
また、マスターデータ生成部813は、マスターデータを例えばグラフ化して表示部840に表示させる。これにより、ユーザは、このマスターデータと凹凸板101の既知の形状値とを比較することで、形状検査装置の計測精度を評価する。例えば、
図2において、凸面120や凹面130の傾きが水平方向から傾いたマスターデータが表示部840に表示されたとする。この場合、ユーザは形状検査装置の計測精度が悪いと判定することができる。そして、ユーザは、形状検査装置の計測精度が改善されるように形状検査装置の調整を行う。
【0079】
一方、
図7に示すように、凸面120や凹面130の傾きが水平方向と平行なマスターデータが表示部840に表示された場合、ユーザは形状検査装置の計測精度は良好であると判定することができる。
【0080】
記憶部830は、ユーザにより予め作成されたマスクデータを記憶する。ここで、マスクデータは、マスターディスク100の種類に応じて複数作成されており、記憶部830は、マスクデータを特定するディスクIDと関連付けてマスターデータを記憶すればよい。なお、マスク処理部812は、マスターディスク100の計測時において、ユーザによりディスクIDが指定されると、そのディスクIDに対応するマスクデータを記憶部830から読み出してマスク処理を行う。また、記憶部830は、マスターデータ生成部813により生成されたマスターデータを記憶する。
【0081】
表示部840は、例えば、液晶ディスプレイにより構成され、計測データ算出部811により算出された計測データをグラフ化して表示したり、マスターデータ生成部813により生成されたマスターデータを表示したりする。
【0082】
図14は、本発明の実施の形態による形状検査装置がマスターデータを生成する処理を示したフローチャートである。まず、撮像素子9は、光切断線が照射されたマスターディスク100を撮像し、1枚の撮像データを得る(S901)。次に、マスターディスク100が1周していなければ(S902でNO)、撮像素子9は処理をS901に戻し、次の1枚の撮像データを得る。一方、マスターディスク100が1周すると(S902でYES)、処理がS903に進められる。つまり、撮像素子9は、マスターディスク100が1周するまで、所定のフレームレートで光切断線が照射されたマスターディスク100を繰り返し撮像するのである。
【0083】
S903において、計測データ算出部811は、撮像素子9により撮像された各撮像データに対して光切断線の位置を検出し、検出した位置から三角測量の原理を用いて光切断線が照射された各位置の高さデータを算出し、マスターディスク100の全域の計測データを算出する。
【0084】
次に、マスク処理部812は、計測データに対してマスクデータを用いたマスク処理を実行する(S904)。次に、マスク処理部812は、有効領域の計測データを用いて無効領域の各サンプル点の計測データを補間する(S905)。
【0085】
次に、マスク処理部812は、有効領域の計測データと、補間された無効領域の計測データとを処理対象データとして、マスターデータ生成部813に出力する(S906)。次に、マスターデータ生成部813は、確認用データに対して、凹凸マークを除去する処理及びフーリエ変換値を求める処理を実行してマスターデータを算出する(S907)。
【0086】
次に、マスターデータ生成部813は、マスターデータをグラフ化し、表示部840に表示する。ここで、マスターデータ生成部813は、周方向のある1ラインをグラフ化したマスターデータを表示部840に表示すればよい。また、マスターデータ生成部813は、操作部820によりユーザから周方向のラインを指定する指示を受け付けると、そのラインのグラフ化したマスターデータを表示部840に表示すればよい。
【0087】
ユーザは、表示部840に表示されたマスターデータを目視し、形状検査装置の計測精度を確認する。
【0088】
このように、本実施の形態の形状検査装置によれば、マスターディスク100に設けられた凹凸板101のベース面110、140、凸面120、及び凹面130の一部の計測データのみを用いて、マスターデータが生成されている。そのため、既存の形状検査装置に特別な計測モードを設けなくても、マスターディスク100の形状が正確に反映されたマスターデータが得られ、形状検査装置の計測精度の確認を精度よく行うことができる。
【0089】
なお、上記実施の形態では、有効領域のサンプル点の計測データを用いて無効領域のサンプル点の計測データを補間したが、本発明はこれに限定されず、有効領域の計測データを処理対象データとしてマスターデータを算出してもよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、サイドウォール面を計測面としたが、トレッド面を計測面としてもよい。この場合、トレッド面に凹凸板101を設ければよい。