(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923072
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】化学弾等充填物の判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20060101AFI20160510BHJP
F42D 5/04 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
G01N23/04
F42D5/04
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-187870(P2013-187870)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-55512(P2015-55512A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】西山 毅
(72)【発明者】
【氏名】北村 竜介
(72)【発明者】
【氏名】立花 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】山根 義公
【審査官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−066100(JP,A)
【文献】
特開2000−304592(JP,A)
【文献】
特開2002−107100(JP,A)
【文献】
特開2002−039699(JP,A)
【文献】
米国特許第05730765(US,A)
【文献】
古川 尚道, 仲程 司,「中国の遺棄化学兵器の処理にあたって」,ファルマシア,社団法人日本薬学会,2004年 3月 1日,Vol. 40, No. 3,p. 235-239
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
F42D 5/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学弾等充填物の判定方法であって、
X線を用いて、化学弾等の充填物が所定の温度で液体か固体かを検査する工程、及び、
融点に基づいて前記充填物を判定する工程を含み、
前記温度の調節を、前記化学弾等を温浴または冷却することによって行う、
化学弾等充填物の判定方法。
【請求項2】
さらに必要に応じて、前記温度の調節を段階的に行い、前記化学弾等の温浴または冷却とX線による検査とを繰り返すことを含む、請求項1記載の判定方法。
【請求項3】
常温で、X線を用いて化学弾等の充填物が液体か固体かを検査し
液体である場合には、前記充填物がブロモアセトン、ブロモベンジルシアニド、ホスゲン、クロロアセトフェノンとクロロピクリンとクロロホルムの混合物、四塩化チタン、三酸化硫酸とクロロスルフォン酸との混合物、マスタード(ヒールなし)、クロロピクリンと塩化スズとの混合物あるいはクロロピクリンであると判定し、
固体である場合には、前記化学弾等を45〜60℃で温浴し、その後、X線を用いて化学弾等の充填物が液体か固体かを検査し、液体である場合には前記充填物が黄リン、固体である場合には前記充填物がマスタード(ヒールあり)であると判定する、
請求項1記載の判定方法。
【請求項4】
前記化学弾等が第二次世界大戦中に製造された化学弾等である、請求項1〜3のいずれかに記載の判定方法。
【請求項5】
温浴する際に、前記化学弾等をアルミラミネート袋で梱包する、請求項1〜4のいずれかに記載の判定方法。
【請求項6】
温浴または冷却後のX線による検査において、化学弾等を斜めに固定してX線撮影する、請求項1〜5のいずれかに記載の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学弾等の充填物の判定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軍事用の弾薬(砲弾、爆弾、地雷、機雷等)の構成としては、鋼製の弾殻の内部に炸薬や化学剤が設けられたものが知られている。
【0003】
第二次世界大戦の戦土となった沖縄県などでは、いまだ米国製の化学弾である可能性を排除できない不審物が見つかることがあるが、化学弾である場合、その充填物がいかなる化学剤であるかを判定することは重要なことである。
【0004】
化学弾等の充填剤
(化学弾等の充填物と同義)としては、例えば、非特許文献1に開示されているような物質(ブロモアセトン、ブロモベンジルシアニド、ホスゲン、クロロアセトフェノンとクロロピクリンとクロロホルムの混合物、四塩化チタン、三酸化硫酸とクロロスルフォン酸との混合物、マスタード(ヒールなし)、マスタード(ヒールあり)、クロロピクリンと塩化スズとの混合物、クロロピクリン、黄リン等)が報告されている。
【0005】
こういった化学弾等の充填物を鑑定する方法としては、米軍が保有する中性子鑑定装置という非破壊検査機器を使用する方法が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Potential Military Chemical Biological Agents and Compounds(Army Filed Manual No.3−9、Navy Publication No.P−467、Air Force Mannual No.355−7、1990年12月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、日本国内には実用化された中性子鑑定装置を保有している企業・機関は存在しない。また、そのような中性子鑑定装置は非常に高価な上に、これまでに、化学弾等の充填物を鑑定する目的にて、日本人が日本国内で使用した実績がないため、日本人が、日本国内で使用するためには、法律上認可が必要である。
【0008】
本発明は前記の点に鑑みてなされたものであり、中性子鑑定装置を用いることなく、安全かつ低コストで化学弾等の充填物を判定することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を重ね、下記構成の方法によって上記課題が解決し得ることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の一局面に係る化学弾等充填物の判定方法は、化学弾等充填物の判定方法は、X線を用いて、化学弾等の充填物が所定の温度で液体か固体かを検査する工程、及び、融点に基づいて前記充填物を判定する工程を含み、前記温度の調節を、前記化学弾等を温浴または冷却することによって行うことを特徴とする。
【0011】
このような構成により、簡便、安全かつ低コストで化学弾等の充填物を判定することができる。
【0012】
また、前記判定方法は、さらに必要に応じて、前記温度の調節を段階的に行い、前記化学弾等の温浴または冷却とX線による検査とを繰り返すことを含む。それにより、段階的に温度調節することによってより安全に充填物を判定することが可能となると考えられる。また、温浴または冷却を繰り返し段階的に温度調整すれば、様々な種類の充填物を特定できる可能性も高まる。
【0013】
さらに、前記判定方法においては、常温で、X線を用いて化学弾等の充填物が液体か固体かを検査し、液体である場合には、前記充填物がブロモアセトン、ブロモベンジルシアニド、ホスゲン、クロロアセトフェノンとクロロピクリンとクロロホルムの混合物、四塩化チタン、三酸化硫酸とクロロスルフォン酸との混合物、マスタード(ヒールなし)、クロロピクリンと塩化スズとの混合物あるいはクロロピクリンであると判定し、固体である場合には、前記化学弾等を45〜60℃で温浴し、その後、X線を用いて化学弾等の充填物が液体か固体かを検査し、液体である場合には前記充填物が黄リン、固体である場合には前記充填物がマスタード(ヒールあり)であると判定してもよい。
【0014】
このような方法によって、充填物が黄リンまたはマスタード(ヒールあり)である場合に、より確実に充填物を判定することができる。
【0015】
さらに、前記化学弾等が第二次世界大戦中に製造された化学弾等であれば、本発明の判定方法はより確実に充填物を判定することができると考えられる。
【0016】
また、前記判定方法において、温浴する際に、前記化学弾等をアルミラミネート袋で梱包することが好ましい。それにより、温浴に用いる温水が直接化学弾等と接することがなく、また、化学剤が弾から漏れ出しても、アルミラミネート袋から漏れ出すことはないため、充填物漏洩のリスクを低減することができる。
【0017】
前記判定方法では、温浴または冷却後のX線による検査において、化学弾等を斜めに固定してX線撮影することが好ましい。それによって、充填物が液体か固体かの判断がよりしやすくなると考えられる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、簡便、安全かつ低コストで化学弾等の充填物を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る判定方法における温浴処理の一実施態様を示す断面概要図である。
【
図2】本発明に係る判定方法におけるX線検査の一実施態様を示す断面概要図である。
【
図3】本発明の判定方法の一実施態様を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る化学弾等充填物を判定する方法の実施形態について具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0021】
本実施形態に係る化学弾等充填物の判定方法は、X線を用いて、化学弾等の充填物が所定の温度で液体か固体かを検査する工程、及び、融点に基づいて前記充填物を判定する工程を含み、前記温度の調節を、前記化学弾等を温浴または冷却することによって行うことを特徴とする。
【0022】
本実施形態の被検体である化学弾等は、通常、軸方向に延びる形状を有しており、鋼製の弾殻(外殻)とこの弾殻内に収容された充填物(有害物質である化学剤)とで構成されている。
【0023】
本実施形態では、被検体である化学弾等を、例えば、水平状態、斜め固定状態、直立状態でX線撮影を行う。使用できるX線撮影装置には特に限定はなく、通常、あらゆる検査現場におけるフィルム撮影等のX線源としているものを使用できる。化学弾等充填物の判定のために最初に行う1回目のX線撮影は、水平状態、斜め固定状態、直立状態の全てにおいて行うことが好ましい。
【0024】
本実施形態の判定方法の基本的な原理は、上記X線撮影によって、化学弾等の充填物が液体であるか固定であるかを検査し、物質の融点に基づいて前記充填物が何であるかを判定するというものである。
【0025】
物質によって融点が異なるため、一度の検査で判定できない場合は、必要に応じて、化学弾等を様々な温度下に置いて、X線による検査を繰り返すことによって、複数の候補化学剤の中から充填物を特定する。
【0026】
前記温度を調節する手段としては、例えば、
図1に示すように、化学弾等1を、温水4を入れることによって所定の温度に調整した温浴槽3に浸す方法が挙げられる。この際、安全性の観点から、温水の温度は常温(25〜35℃程度)から段階的に上げていくことが好ましい。化学弾等を温浴する時は、温浴に用いる温水が直接化学弾等と接することがないようにして、充填物漏洩のリスクを低減するために、前記化学弾等をアルミラミネート袋で梱包してから温浴することが好ましい。用いるアルミラミネート袋には特に限定はなく、通常、食品包装、レトルト包装、調味料包装等の用途に使用されているものなどを適宜使用することができる。
【0027】
一方、常温で既に液体であることが判明した場合には、化学弾等を、例えば、氷水を入れた水槽に浸すことによって所定の温度まで冷却し、固体になる時点における温度を、X線を用いて確認することにより、充填物を特定することもできると考えられる。冷却する際も、温度は段階的に下げていく方が好ましく、また氷水に浸す際には、化学弾等を上述したようなアルミラミネート袋で梱包することが好ましい。
【0028】
上述のように温浴また冷却した後のX線撮影は、
図2に示すように斜めに固定した状態で行うことが好ましい。例えば、所定温度で温浴を行うことによって、化学弾等1の充填物2が液体となった場合には、X線撮影によって充填物2の液面が確認されるため、X線を用いた検査によって、充填物2を特定することが可能となる。
【0029】
なお、化学弾等の充填物としての有害物質(化学剤)には、様々なものが知られているが、現在、日本国内において発見し得る化学弾等であって、その充填物の内容を判定する必要があるものは、主に第2次世界大戦時に日本に持ち込まれた可能性のある化学弾等である。つまり、1930年代〜1940年代頃に主に米国で製造された化学弾等を被検体とする判定方法が求められている。
【0030】
そのような時代に米国で製造された化学弾等の充填物としては、非特許文献1に開示されているような物質(ブロモアセトン、ブロモベンジルシアニド、ホスゲン、クロロアセトフェノンとクロロピクリンとクロロホルムの混合物、四塩化チタン、三酸化硫酸とクロロスルフォン酸との混合物、マスタード(ヒールなし)、マスタード(ヒールあり)、クロロピクリンと塩化スズとの混合物、クロロピクリン、黄リン等)が報告されている。
【0031】
これらの化合物は公知の化合物であるが、上述したような化学弾等は、第二次世界大戦時に製造されてから現在まで60年以上経過しており、経年変化により、充填物が変質し、その融点は変化していると考えられる。
【0032】
これに対し、一般的に、文献などで知り得る前記化学物質の融点は、製造後、間もない状態の融点である。よって、経年変化により、その充填物が変質し、充填物の融点が変化した結果、老朽化充填物の融点がどのように変化するかは、一般公開された文献等では検索出来ない。
【0033】
本発明者らは、製造から60年以上経過した国内外の様々な化学兵器を無害化処理する研究・事業に携わることによって、経年変化により変質した充填剤に関する知見を有している。
【0034】
その知見によれば、製造から60年以上経過した化学弾等の充填物である可能性のある物質の融点は表1の通りである。
【0036】
例えば、化学弾等に含まれている可能性のある充填物のひとつであるマスタード(HD)は、製造後、間もない状態では液体であり、文献からでは、その融点は14℃とされている。しかしながら、上記知見から、経年変化により、マスタードは、液体のままである場合と高分子化(Heel)し固体に変質している場合があると想定される。マスタードが高分子化し固体になる場合、融点は、製造後、間もない状態の融点(14℃)から、76℃以上まで上昇すると想定される。
【0037】
文献(TOXICOLOGICAL PROFILER FOR SULFURE MUSTARD、US Department Of Health And Human Service(2003年9月);Parameter for the Evaluation of the Fate, Transport, and Environmental Impacts of Chemical Agents in Marine Environments ,noblis発行(2007年7月))等によれば、マスタード(HD)には、ヒール(Heel)と呼ばれる残渣(例:流動しないジェル状物質)が含まれている可能性があり、その組成は、14〜53%のマスタード、42〜86%の環状硫黄イオン(S−(2−クロロエチル)−1,4−ジチアニウム クロライド)と硫化鉄のような金属であると考えられている。この組成について、Jobackによる原子団寄与式により、融点を推算することによって、マスタード(ヒールあり)の融点は、76℃程度であると仮定することができる。
【0038】
一方、マスタードが液体のままの場合、その融点は、製造後間もない状態の融点(14℃)から
、14℃以下に降下する
と想定される。
【0039】
さらに、黄リン(WP)についても、通常、融点は44℃とされているが、化学剤を含む化学製品は、製造工場での生産時に、不純物が混入することにより、その融点が降下する傾向にあると考えられる。例えば、文献(Potential Military Chemical Biological Agents and Compounds(Army Filed Manual No.3−9、Navy Publication No.P−467、Air Force Mannual No.355−7、1990年12月))によれば、ブロモベンジルシアニド(C
A)の場合、製造工場生産品は、純粋品と比較して、7℃の融点降下が、マスタードの場合、約30%の硫黄不純物を含有するレビンスタインマスタード(H)と比較して、2〜5℃の融点
上昇が生じる。
【0040】
上記を踏まえれば、化学弾等に充填された黄リン(WP)も前記傾向に従い、融点が40℃程度まで降下しているとし、HD(Heel)及びH(Heel)を除くその他の充填物が充填されていた場合にも、その融点は降下していると仮定される。
【0041】
このような知見から得られた上述の表1の融点の値に基づいて、本実施形態の判定方法により、高価な装置を用いることなく安全かつ簡便に、化学弾等の充填物を判定することが可能となると考えられる。
【0042】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
沖縄県で発見された充填物不明の砲弾について、充填物の判定を行った。その判定方法の手順を表すフローチャートを
図3に示す。なお、砲弾のX線撮影は、エクスロン・インターナショナル製の「携帯式X線検査装置(形式:300HP)」を用いて行った。
【0044】
以下、
図3に沿って、本実施形態に係る砲弾充填物の判定方法を実施する例について説明する。
【0045】
図3に示すように、開始段階では、被検体である充填物の候補として、ブロモアセトン、ブロモベンジルシアニド、ホスゲン、クロロアセトフェノンとクロロピクリンとクロロホルムの混合物、四塩化チタン、三酸化硫酸とクロロスルフォン酸との混合物、マスタード(ヒールなし)、マスタード(ヒールあり)、クロロピクリンと塩化スズとの混合物、クロロピクリン、及び、黄リンという11候補化合物が挙げられている(区分0)。
【0046】
まず、X線撮影の前に、判定の対象となる砲弾に対し、常温(約30℃)にて、外観検査、寸法測定、液音確認、砲弾表面温度測定を行った。
【0047】
次に、水平状態、斜め固定状態、直立状態でX線撮影を行った。その結果、充填物の液面は確認することができなかったため、前記砲弾の充填物は常温(約30℃)にて固体であると判定した。
【0048】
上記結果により、融点が常温(約30℃)以上である候補化合物群(区分1)、すなわち、マスタード(ヒールあり)および黄リンと、融点が常温(25〜35℃)以下である候補化合物群(区分2)、すなわち、ブロモアセトン、ブロモベンジルシアニド、ホスゲン、クロロアセトフェノンとクロロピクリンとクロロホルムの混合物、四塩化チタン、三酸化硫酸とクロロスルフォン酸との混合物、マスタード(ヒールなし)、クロロピクリンと塩化スズとの混合物、及びクロロピクリンと、候補化合物を2つのグループに分けることができた。
【0049】
前記砲弾の充填物が常温にて固体であったため、次のステップとして、充填物が区分1であると判定した砲弾を温浴(35℃×30分)した。なお、温浴の際は、砲弾をアルミラミネート袋((株)ウインテックス社製)で表面を全て覆うように梱包してから温水に浸けた。
【0050】
その後、斜めに固定した状態で再度X線撮影を行ったところ、まだ充填物の液面を確認することができなかった(区分1−1)。すなわち、依然として前記砲弾の充填物が固体であることが判明した。
【0051】
そこで、温水の温度を上げて、前記砲弾を2回目の温浴(55℃×60分)を行い、再度、X線撮影を斜め固定状態で行った。
【0052】
その結果、充填物の液面が確認されたため、充填物の融点が55℃以下であることがわかった。区分1に属する化合物の融点は、マスタード(ヒールあり)が76℃程度、黄リンが40℃程度であるため、前記砲弾の充填物が黄リン(区分1−1−1)であると判定することができた。
【0053】
なお、もし固体であることが確認されていた場合には、前記砲弾の充填物はマスタード(ヒールあり)(区分1−1−2)であることが判定できたと推定される。
【0054】
以上により、本発明の判定方法によって、前記砲弾の充填物が何であるかを、高価な装置を用いることなく安全かつ簡便に判定することができた。
【符号の説明】
【0055】
1 化学弾等
2 充填物(被検体)
3 温浴槽
4 温水
5 アルミラミネート袋