【実施例】
【0036】
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはもちろんである。
【0037】
「実験例1」
下記する「使用材料」に記載される、CaO原料と、CaSO
4原料と、さらに、Al
2O
3原料、Fe
2O
3原料およびSiO
2原料からなる群から選ばれる少なくとも1種などを混合した。得られた混合物を電気炉を用いて、大気中、1350℃で0.5時間熱処理し、得られた熱処理物をボールミルで粉砕して早期脱型材(A〜H)を調製した。また、熱処理物の粉砕品に微粒子普通ポルトランドセメントを添加した早期脱型材(I)を調製した。さらに、熱処理物や、熱処理物と微粒子生石灰と微粒子無水石膏との混合物にグリセリンを添加してボールミルで粉砕した早期脱型材(a〜t)を調製した。
また、表1に示されるように、市販品A〜Cの早期脱型材や膨張材、市販品Bに微粒子普通ポルトランドセメントを添加した早期脱型材(J)、市販品Aにグリセリンを添加したもの、グリセリンだけを添加したものを、比較例として使用した。
なお、熱処理物についての各成分の組成と含有量は、粉末X線回折及び元素分析により求めた。
【0038】
単位水量145kg/m
3、単位セメント量440kg/m
3、単位早期脱型材量30kg/m
3(市販品Aにグリセリンを添加したもの、及びグリセリンだけを添加したものは、0.9kg/m
3)、減水剤2.5kg/m
3、s/a39.4%、空気量4.5%をコンクリートの基本配合とし、20℃の環境下で表1に示すように早期脱型材の種類を変えながらコンクリートのスランプ、および凝結時間を測定した。
その後、型枠にコンクリートを充填し、20℃での前置時間40分、昇温30分、最高温度50℃で3時間、冷却30分後に脱型し、脱型直後と20℃大気中で養生後の圧縮強度を測定した。また、コンクリート表面のレイタンスの有無と長さ変化率を評価した。結果を表1に示す。
なお、早期脱型材は骨材に置換する形で配合し、早期脱型材を添加しない配合についても検討を行った。
【0039】
(使用材料)
CaO原料:炭酸カルシウム(石灰石微粉末)、100メッシュ、市販品
Al
2O
3原料:ボーキサイト、90μm篩通過率100%、市販品
Fe
2O
3原料:酸化鉄粉末、ブレーン比表面積3000cm
2/g、市販品
SiO
2原料:ケイ石粉末、ブレーン比表面積3000cm
2/g、市販品
CaSO
4原料:ニ水石膏、ブレーン比表面積5000cm
2/g、市販品
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、密度3.16g/cm
3
微粒子普通ポルトランドセメント:平均粒子径3μm、密度3.16g/cm
3
微粒子生石灰(1):CaO含有量97%、平均粒子径10μm、市販品
微粒子無水石膏(1):天然無水石膏、平均粒子径8μm、市販品
微粒子生石灰(2):CaO含有量97%、平均粒子径18μm、市販品
微粒子無水石膏(2):天然無水石膏、平均粒子径15μm、市販品
グリセリン:市販品、精製グリセリン
砂:JIS標準砂
水:水道水
細骨材:日本国新潟県姫川産、5mm下、密度2.62g/cm
3
粗骨材:日本国新潟県姫川産、25mm下、密度2.64g/cm
3
減水剤:ナフタレンスルホン酸、商品名「マイテイ150」、花王社製
【0040】
早期脱型材A:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部、密度2.90g/cm
3、ブレーン比表面積3500cm
2/g。
早期脱型材B:早期脱型材Aをブレーン比表面積6000cm
2/gに粉砕したもの。
早期脱型材C:早期脱型材Aをブレーン比表面積9000cm
2/gに粉砕したもの。
早期脱型材D:遊離石灰32部、Yeelimite21部、C
4AF5部、C
2S5部、無水石膏37部、密度2.98g/cm
3、ブレーン比表面積3500cm
2/g。
早期脱型材E:遊離石灰50部、Yeelimite10部、C
4AF5部、C
2S5部、無水石膏30部、密度3.05g/cm
3、ブレーン比表面積3500cm
2/g。
早期脱型材F:早期脱型材Aをアルミナ製るつぼに入れて電気炉内にセットし、炭酸ガスを電気炉の内容積1Lあたり0.05L(リットル)/min流しながら、加熱温度600℃、30分反応させて合成したもの。遊離石灰20部、Yeelimite32部、無水石膏47、炭酸カルシウム1部、密度2.90g/cm
3、ブレーン比表面積6000cm
2/g。
早期脱型材G:遊離石灰70部、Yeelimite20部、無水石膏10部、密度3.20g/cm
3、ブレーン比表面積3500cm
2/g。
早期脱型材H:遊離石灰10部、Yeelimite50部、無水石膏40部、密度2.85g/cm
3、ブレーン比表面積3500cm
2/g。
早期脱型材I:早期脱型材A80部に平均粒子径3μmの微粒子普通ポルトランドセメントを20部配合、密度2.95g/cm
3、ブレーン比表面積4400cm
2/g。
早期脱型材J:市販品B80部に平均粒子径3μmの微粒子普通ポルトランドセメントを20部配合、密度2.95g/cm
3、ブレーン比表面積4400cm
2/g。
【0041】
早期脱型材a:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物97部とグリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積3500cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材b:早期脱型材Aに用いた熱処理物97部とグリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積6000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材c:早期脱型材Aに用いた熱処理物97部とグリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積9000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材d:遊離石灰30部、Yeelimite20部、C
4AF5部、C
2S5部、無水石膏40部からなる熱処理物97部とグリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積3500cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材e:遊離石灰50部、Yeelimite10部、C
4AF5部、C
2S5部、無水石膏30部からなる熱処理物97部とグリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積3500cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材f:遊離石灰30部、Yeelimite10部、無水石膏60部からなる焼成物97部とグリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積4000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材g:遊離石灰70部、Yeelimite20部、無水石膏10部(ブレーン比表面積3500cm
2/g)からなる熱処理物97部とグリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積3500cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材h:遊離石灰10部、Yeelimite50部、無水石膏40部からなる熱処理物97部とグリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積3500cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材i:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物をブレーン比表面積3500cm
2/gに粉砕し、粉砕物97部とグリセリン3部を混合して調製したもの。
早期脱型材j:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物を70部、微粒子生石灰(1)を13.5部、微粒子無水石膏(1)を13.5部、グリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積6000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材k:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物を50部、微粒子生石灰(1)を23.5部、微粒子無水石膏(1)を23.5部、グリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積6000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材l:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物を40部、微粒子生石灰(1)を28.5部、微粒子無水石膏(1)を28.5部、グリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積6000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材m:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物を30部、微粒子生石灰(1)を33.5部、微粒子無水石膏(1)を33.5部、グリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積6000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材n:微粒子生石灰(1)を48.5部、微粒子無水石膏(1)を48.5部、グリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積5000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材o:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物を50部、微粒子生石灰(1)を47部、グリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積6000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材p:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物を50部、微粒子無水石膏(1)を47部、グリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積6000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材q:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物を50部、微粒子生石灰(2)を23.5部、微粒子無水石膏(2)を23.5部、グリセリン3部を混合粉砕し、ブレーン比表面積6000cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材r:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物99.9部とグリセリン0.1部を混合粉砕し、ブレーン比表面積3500cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材s:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物99部とグリセリン1部を混合粉砕し、ブレーン比表面積3500cm
2/gに調製したもの。
早期脱型材t:遊離石灰21部、Yeelimite32部、無水石膏47部からなる熱処理物90部とグリセリン10部を混合粉砕し、ブレーン比表面積3500cm
2/gに調製したもの。
【0042】
市販品A:生石灰50部、カルシウムシリケート20部、無水石膏30部を含有した市販の早期脱型材。ブレーン比表面積4500cm
2/g。無水石膏はクリンカに後から添加。
市販品B:エトリンガイト系膨張材、密度2.95g/cm
3、ブレーン比表面積2800cm
2/g。
市販品C:エトリンガイト・石灰複合系膨張材、密度3.08g/cm
3、ブレーン比表面積2800cm
2/g。
【0043】
(試験方法)
凝結試験:JIS A 1147に準拠して実施した。凝結の始発時間を測定し、早期脱型材無混和のプレーンコンクリートを基準として、凝結促進効果を評価した。
スランプ:JIS A 1101に準拠
圧縮強度:JIS A 1108に準拠
レイタンスの有無:圧縮強度測定用の試験体表面に生じたレイタンスの状態を目視で評価した。レイタンスが試験体表面積の30%以上見られるものを×、レイタンスが試験体表面積の10〜30%見られるものを△、レイタンスが試験体表面積の0〜10%見られるものを○とした。
長さ変化率:JIS A 1129に準拠。試験体を脱型後、20℃水中に入れて温度を安定させたのち、材齢1日で基長を測定した。さらに材齢7日まで20℃水中で養生し、その後、20℃、60%RH室内で気中乾燥養生し、コンクリートに生じる収縮ひずみを材齢56日で測定した。
【0044】
【表1】
【0045】
「実験例2」
早期脱型材A、早期脱型材B、早期脱型材a、早期脱型材b、または早期脱型材kを用い、表2に示す量の高炉スラグおよび/またはフライアッシュによって、セメントの一部を置換して使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。なお、市販品Aや市販品Aにグリセリンを混合したものも評価した。
【0046】
(使用材料)
フライアッシュ:東北フライアッシュII種、ブレーン比表面積4000cm
2/g、密度2.23g/cm
3
スラグ:高炉スラグ、住金鉱化社製、スミットメント、ブレーン比表面積4000cm
2/g、密度2.91g/cm
3【0047】
【表2】
【0048】
「実験例3」
早期脱型材A、または早期脱型材aを用い、スラグを100kg/m
3、フライアッシュを50kg/m
3セメントに置換配合し、蒸気養生条件とマチュリティを表3のように変化させたこと以外は実施例2と同様に行った。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
「実験例4」
蒸気養生条件を20℃での前置時間40分、昇温30分、最高温度50℃で3時間、冷却30分とし、セメントと早期脱型材からなるセメント組成物100部中、早期脱型材の使用量を表4のように変化させたこと以外は実験例3と同様に行った。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】