(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プロンプトレプリカ信号に対して第1コード位相進んだ第1アーリーレプリカ信号、前記プロンプトレプリカ信号に対して前記第1コード位相遅れた第1レイトレプリカ信号、前記プロンプトレプリカ信号に対して第2コード位相進んだ第2アーリーレプリカ信号、前記プロンプトレプリカ信号に対して第2コード位相遅れた第2レイトレプリカ信号のそれぞれと、前記GNSS信号とを相関処理する相関処理工程と、
前記GNSS信号と前記第1アーリーレプリカ信号との相関結果による第1アーリー相関値から、前記GNSS信号と前記第2アーリーレプリカ信号との相関結果による第2アーリー相関値を減算してアーリー差分値を算出し、前記GNSS信号と前記第1レイトレプリカ信号との相関結果による第1レイト相関値から、前記GNSS信号と前記第2レイトレプリカ信号との相関結果による第2レイト相関値を減算してレイト差分値を算出する差分値算出工程と、
前記アーリー差分値と前記レイト差分値との符号に基づいて誤差算出方法を設定し、設定した誤差算出方法を用いて誤差検出値を算出する誤差検出値算出工程と、
前記誤差検出値に基づいて前記プロンプトレプリカ信号のコード位相を制御し、前記GNSS信号のコード位相を追尾するコード位相制御工程と、を有するGNSS信号処理方法。
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のGNSS信号処理方法で追尾しているGNSS信号と前記プロンプトレプリカ信号との相関結果から航法メッセージを取得する工程と、
前記追尾しているGNSS信号に対する前記誤差検出値から擬似距離を算出する工程と、
前記航法メッセージと前記擬似距離とを用いて測位演算を行う工程と、を有する測位方法。
プロンプトレプリカ信号に対して第1コード位相進んだ第1アーリーレプリカ信号、前記プロンプトレプリカ信号に対して前記第1コード位相遅れた第1レイトレプリカ信号、前記プロンプトレプリカ信号に対して第2コード位相進んだ第2アーリーレプリカ信号、前記プロンプトレプリカ信号に対して第2コード位相遅れた第2レイトレプリカ信号のそれぞれと、前記GNSS信号との相関処理する相関部と、
前記GNSS信号と前記第1アーリーレプリカ信号との相関結果による第1アーリー相関値から、前記GNSS信号と前記第2アーリーレプリカ信号との相関結果による第2アーリー相関値を減算してアーリー差分値を算出し、前記GNSS信号と前記第1レイトレプリカ信号との相関結果による第1レイト相関値から、前記GNSS信号と前記第2レイトレプリカ信号との相関結果による第2レイト相関値を減算してレイト差分値を算出し、前記アーリー差分値と前記レイト差分値との符号に基づいて誤差算出方法を設定し、設定した誤差算出方法を用いて前記誤差検出値を算出し、誤差検出値に基づいて前記プロンプトレプリカ信号のコード位相を制御する演算部と、
を備えたGNSS信号処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係るGNSS信号処理方法について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るGNSS信号処理方法のフローチャートである。
【0026】
本実施形態のGNSS信号処理方法では、
図1に示すフローを繰り返すことにより、目的のGNSS信号を追尾する。
【0027】
ステップS101として、GNSS信号と各レプリカ信号との相関処理を行い、各相関値を算出する。レプリカ信号とは、目的とするGNSS信号の拡散コード信号のレプリカコードを有する信号である。レプリカ信号としては、プロンプトレプリカ信号S
RP、第1アーリーレプリカ信号S
RE、第2アーリーレプリカ信号S
RVE、第1レイトレプリカ信号S
RL、第2レイトレプリカ信号S
RVLを用いる。これらのレプリカ信号のコード位相は、
図2に示すように設定されている。
図2は本発明の実施形態に係るGNSS信号処理方法における各レプリカ信号のコード位相タイミングの関係を示す図である。
【0028】
図2に示すように、プロンプトレプリカ信号S
RPは、前回算出された誤差検出値Δτに基づいて、受信したGNSS信号とコード位相が一致するように、レプリカコードのコード位相が設定された信号である。言い換えれば、プロンプトレプリカ信号S
RPは、GNSS信号との相関値が最大となるようにコード位相が設定された信号である。
【0029】
図2に示すように、第1アーリーレプリカ信号S
REは、プロンプトレプリカ信号S
RPに対して、コード位相差τ
1/2だけ、コード位相が進んだ信号である。第2アーリーレプリカ信号S
RVEは、プロンプトレプリカ信号S
RPに対して、コード位相差τ
2/2だけ、コード位相が進んだ信号である。コード位相差τ
2/2は、コード位相差τ
1/2よりも大きく設定されている。例えば、コード位相差τ
1/2は0.05チップであり、コード位相差τ
2/2は0.075チップである。
【0030】
図2に示すように、第1レイトレプリカ信号S
RLは、プロンプトレプリカ信号S
RPに対して、コード位相差τ
1/2だけ、コード位相が遅れた信号である。第2レイトレプリカ信号S
RVLは、プロンプトレプリカ信号S
RPに対して、コード位相差τ
2/2だけ、コード位相が遅れた信号である。
【0031】
このようなコード位相の設定をすることで、第1アーリーレプリカ信号S
REと第1レイトレプリカ信号S
RLとのコード位相差(スペーシング)は、τ
1となる。例えば、上述の例であれば、スペーシングは、0.1チップである。また、第2アーリーレプリカ信号S
RVEと第2レイトレプリカ信号S
RVLとのコード位相差(スペーシング)は、τ
2となる。例えば、上述の例であれば、スペーシングは、0.15チップである。
【0032】
GNSS信号とプロンプトレプリカ信号S
RPとを相関処理することで、プロンプト相関値CV
Pを算出する。GNSS信号と第1アーリーレプリカ信号S
REとを相関処理することで、第1アーリー相関値CV
Eを算出する。GNSS信号と第2アーリーレプリカ信号S
RVEとを相関処理することで、第2アーリー相関値CV
VEを算出する。GNSS信号と第1レイトレプリカ信号S
RLとを相関処理することで、第1レイト相関値CV
Lを算出する。GNSS信号と第2レイトレプリカ信号S
RVLとを相関処理することで、第2レイト相関値CV
VLを算出する。
【0033】
次に、アーリー差分値ΔCV
Eおよびレイト差分値ΔCV
Lを算出する(S102)。アーリー差分値ΔCV
Eは、第1アーリー相関値CV
Eを第2アーリー相関値CV
VEで減算することによって算出される。具体的には、アーリー差分値ΔCV
Eは、ΔCV
E=CV
E−CV
VEの計算式を用いて算出される。レイト差分値ΔCV
Lは、第1レイト相関値CV
Lを第2レイト相関値CV
VLで減算することによって算出される。具体的には、レイト差分値ΔCV
Lは、ΔCV
L=CV
L−CV
VLの計算式を用いて算出される。
【0034】
次に、アーリー差分値ΔCV
Eとレイト差分値ΔCV
Lとの符号を比較する。アーリー差分値ΔCV
Eの符号とレイト差分値ΔCV
Lとの符号が異なれば(S103:NO)、第1誤差検出方法によって誤差検出値Δτ(Δτ
A)を算出する。第1誤差検出方法では、第1アーリー相関値CV
Eと第1レイト相関値CV
Lとプロンプト相関値CV
Pとを、次の第1算出式に代入することで、誤差検出値Δτ(Δτ
A)を算出する。
【0036】
アーリー差分値ΔCV
Eの符号とレイト差分値ΔCV
Lとの符号が同じであれば(S103:YES)、第2誤差検出方法によって誤差検出値Δτ(Δτ
B)を算出する。第2誤差検出方法では、第1、第2アーリー相関値CV
E,CV
VE、第1、第2レイト相関値CV
L,CV
VLとプロンプト相関値CV
Pとを、次の第2算出式に代入することで、誤差検出値Δτ(Δτ
B)を算出する。
【0038】
なお、式2において、c
1,c
2,c
3は適宜設定された定数である。
【0039】
次に、算出された誤差検出値Δτ(Δτ
AもしくはΔτ
B)を用いて、レプリカ信号のコード位相制御を行う。この際、誤差検出値Δτが0になるように、プロンプトレプリカ信号S
RPのコード位相を進ませたり、遅らせたりする。そして、このようにプロンプトレプリカ信号S
RPのコード位相が設定されることで、上述のように、第1、第2アーリーレプリカ信号S
RE,S
RVE、第1、第2レイトレプリカ信号S
RL,S
RVLのコード位相も設定される。
【0040】
このような誤差検出値Δτの算出およびコード位相制御を繰り返すことで、GNSS信号のコード位相をロックし、当該GNSS信号の追尾を行う。ここで、コード位相をロックするとは、プロンプトレプリカ信号S
RPのコード位相とGNSS信号のコード位相とが継続的に略一致するようにコード位相制御を行うことを示している。
【0041】
そして、本発明では、上述のように、状況に応じて二種類の算出式を選択して、誤差検出値を算出している。次に、このような誤差検出値Δτの算出式の選択による作用効果を説明する。
【0042】
まず、第1誤差検出方法(式1)および第2誤差検出方法(式2)を用いた場合の、誤差検出値Δτのコード位相差特性について説明する。
図3は第1誤差検出方法で算出した誤差検出値Δτ
Aのコード位相差に対する特性(900NW)を示す図である。
図4は第2誤差検出方法で算出した誤差検出値Δτ
Bのコード位相差に対する特性(900ELS)を示す図である。なお、
図3、
図4は特性の違いだけが明確に分かるように、概略的に示している。
【0043】
第1誤差検出方法の第1算出式(式1)を用いた場合(
図3のような特性の場合)、コード位相差の絶対値が1.0チップ分になるまでは、コード位相差が0の場合を除き、誤差検出値Δτ(Δτ
A)は0にはならない。したがって、コード位相差の広い範囲において、0でない誤差検出値Δτを得ることができる。これにより、目的のGNSS信号とプロンプトレプリカ信号
RPとのコード位相差が比較的大きくても、これらのコード位相が一致するように、確実にプロンプトレプリカ信号S
RPのコード位相制御を行うことができる。
【0044】
このような特性から、第1誤差検出方法は、捕捉から追尾に移行する場合に、特に有効である。これは、通常、GNSS信号の捕捉処理では、所定のコード位相間隔で、複数のレプリカ信号を生成し、GNSS信号と相関処理している。そして、例えば、最も相関値が高いレプリカ信号のコード位相を、GNSS信号の追尾の初期コード位相としている。このため、捕捉時に利用するコード位相間隔や受信状況によって、追尾初期のコード位相がGNSS信号の真のコード位相から離れていることがあるからである。ただし、第1誤差検出方法のようなコード位相特性の場合、誤差検出値が0でないコード位相範囲が広いため、マルチパス信号の影響を受けやすい。
【0045】
第2誤差検出方法の第2算出式(式2)を用いた場合(
図4のような特性の場合)、コード位相差の絶対値が1.0チップ分になるまでに、コード位相差が0の場合以外に、誤差検出値Δτ(Δτ
B)が0になるコード位相範囲が存在する。この特性を、より具体的に表現すれば、
図4に示すように、コード位相差が−1.0チップよりもコード位相差が0.0側の所定チップ(負値)から+1.0チップよりもコード位相差が0.0側の所定チップ(正値)まで、コード位相差が0の場合を除き、誤差検出値Δτ(Δτ
B)は0にはならない。そして、このような誤差検出値Δτが0にならない範囲よりもコード位相差が0.0から離れる側のコード位相差において、所定のコード位相範囲に亘り、誤差検出値Δτ(Δτ
B)が0になる不感領域が設けられる。これにより、マルチパス信号を受信したとしても、マルチパス信号のコード位相が不感領域に係りやすくなる。マルチパス信号のコード位相が不感領域に入ることで、当該マルチパス信号による影響を受けず、正確なコード位相制御を行うことができる。
【0046】
このような特性から、第2誤差検出方法は、プロンプトレプリカ信号S
RPとGNSS信号とのコード位相差が小さくなって、0近傍まで追い込まれた場合に、特に有効である。この場合、プロンプトレプリカ信号S
RPとGNSS信号とのコード位相差が0になるようにコード位相を制御していて、マルチパス信号を受信したとしても、誤差検出値Δτ(Δτ
B)にマルチパス信号の影響が現れない。したがって、コード位相を正確に制御することができる。
【0047】
このように、状況に応じて第1誤差検出方法もしくは第2誤差検出方法を用いることで、目的のGNSS信号のコード位相を確実且つ高精度にロックし、目的のGNSS信号を追尾することができる。さらに、追尾中にマルチパス信号を受信しても、当該マルチパス信号の影響を受けず、目的のGNSS信号を正確に追尾し続けることができる。
【0048】
次に、第1誤差検出方法と第2誤差検出方法とを選択するための判断方法について、説明する。
図5はプロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が進んでいる第1の状況を示す図である。
図6はプロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が進んでいる第2の状況を示す図である。
図7はプロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が進んでいる第3の状況を示す図である。ここで、第1の状況は、第2、第3の状況よりもプロンプトレプリカ信号S
RPと目的のGNSS信号とのコード位相差が大きい。第2の状況は、第3の状況よりもプロンプトレプリカ信号S
RPと目的のGNSS信号とのコード位相差が大きい。
【0049】
図8はプロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が遅れている第4の状況を示す図である。
図9はプロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が遅れている第5の状況を示す図である。ここで、第4の状況は、第5の状況よりもプロンプトレプリカ信号S
RPと目的のGNSS信号とのコード位相差が大きい。
【0050】
図5、
図6、
図7、
図8、
図9において、(A)はレプリカ信号とGNSS信号とのコード位相差に応じた相関値特性を示し、900Pは相関カーブを示す。(B)は第2誤差検出方法を用いた場合の誤差検出値のコード位相差特性を示し、900ELSは、第2誤差検出値特性カーブを示す。(C)は第1誤差検出方法を用いた場合の誤差検出値のコード位相差特性を示し、900NWは、第2誤差検出値特性カーブを示す。
【0051】
(1)プロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が進んでいる場合
図5に示すように、第1の状況として、プロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が大きく進んでいる場合、第1、第2アーリー相関値CV
E,CV
VE、第1、第2レイト相関値CV
L,CV
VLとプロンプト相関値CV
Pは、コード位相差が負値の範囲において相関カーブ900P上に並んで現れる。
【0052】
この場合、第1アーリー相関値CV
Eは、第2アーリー相関値CV
VEよりも大きくなる。プロンプト相関値CV
Pは第1アーリー相関値CV
Eよりも大きくなる。第1レイト相関値CV
Lはプロンプト相関値CV
Pよりも大きくなる。第2レイト相関値CV
VLは第1レイト相関値CV
Lよりも大きくなる。すなわち、CV
E<CV
VE<CV
P<CV
L<CV
VLとなる。
【0053】
このため、アーリー差分値ΔCV
E=CV
E−CV
VEは正値になる。レイト差分値ΔCV
L=CV
L−CV
VLは負値になる。したがって、アーリー差分値ΔCV
Eとレイト差分値ΔCV
Lの符号は異なる。
【0054】
この時、プロンプトレプリカ信号S
RPのコード位相の位置はA点となり、
図5(B)に示すように、第2誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Bは0となる。
図5(C)に示すように、第1誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Aは負値となる。したがって、第2誤差検出方法ではコード位相制御ができないが、第1誤差検出方法ではコード位相制御が可能である。
【0055】
次に、
図6に示すように、第2の状況として、プロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が進んでいる場合(第1の状況ほど進んでいない場合)、第1の状況と同様に、第1、第2アーリー相関値CV
E,CV
VE、第1、第2レイト相関値CV
L,CV
VLとプロンプト相関値CV
Pは、コード位相差が負値の範囲において相関カーブ900P上に並んで現れる。
【0056】
このため、第1の状況と同様に、アーリー差分値ΔCV
E=CV
E−CV
VEは正値になる。レイト差分値ΔCV
L=CV
L−CV
VLは負値になる。したがって、アーリー差分値ΔCV
Eとレイト差分値ΔCV
Lの符号は異なる。
【0057】
この第2の状況では、プロンプトレプリカ信号S
RPのコード位相の位置はB点となり、
図6(B)に示すように、第2誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Bは0から負値に切り替わる境界となる。
図6(C)に示すように、第1誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Aは負値となる。したがって、プロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号とのコード位相差が、この第2の状況よりも小さければ、第2誤差検出方法でもコード位相制御ができる可能性はある。しかしながら、実質的には、観測誤差を加味した方がよく、当該観測誤差を加味すれば、第2誤差検出方法でコード位相制御を行うことが難しい。そして、第1誤差検出方法ではコード位相制御が可能である。
【0058】
次に、
図7に示すように、第3の状況として、プロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が進んでいる状態であって、コード位相差が小さい場合(第1、第2の状況ほど進んでいない場合)、第1、第2アーリー相関値CV
E,CV
VE、第1レイト相関値CV
Lとプロンプト相関値CV
Pは、コード位相差が負値の範囲において相関カーブ900P上に並んで現れる。しかし、第2レイト相関値CV
VLは、コード位相差が正値の範囲において相関カーブ900P上に現れる。そして、目的のGNSS信号と第1レイト相関値CV
Lのコード位相差が目的のGNSS信号と第2レイト相関値CV
VLのコード位相差よりも小さくなると、レイト差分値ΔCV
L=CV
L−CV
VLは正値になる。
【0059】
このため、アーリー差分値ΔCV
E、レイト差分値ΔCV
L=CV
L−CV
VLはともに正値になる。したがって、アーリー差分値ΔCV
Eとレイト差分値ΔCV
Lの符号は同じになる。
【0060】
この場合、プロンプトレプリカ信号S
RPのコード位相の位置はC点となり、
図7(B),(C)に示すように、第2誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Bおよび第1誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Aの双方が負値となる。したがって、第2誤差検出方法でも第1誤差検出方法でもコード位相制御が可能である。しかしながら、上述のように第1誤差検出方法ではマルチパス信号の影響を受けやすいので、第2誤差検出方法に切り替える。これにより、この切り替え後は、マルチパス信号の影響を受けにくく、目的のGNSS信号のコード位相をロックするように、正確にコード位相制御を行うことができる。
【0061】
(2)プロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が遅れている場合
図8に示すように、第4の状況として、プロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が大きく遅れている場合、第1、第2アーリー相関値CV
E,CV
VE、第1、第2レイト相関値CV
L,CV
VLとプロンプト相関値CV
Pは、コード位相差が正値の範囲において相関カーブ900P上に並んで現れる。
【0062】
この場合、第1アーリー相関値CV
Eは、第2アーリー相関値CV
VEよりも小さくなる。プロンプト相関値CV
Pは第1アーリー相関値CV
Eよりも小さくなる。第1レイト相関値CV
Lはプロンプト相関値CV
Pよりも小さくなる。第2レイト相関値CV
VLは第1レイト相関値CV
Lよりも小さくなる。すなわち、CV
VE>CV
E>CV
P>CV
L>CV
VLとなる。
【0063】
このため、アーリー差分値ΔCV
E=CV
E−CV
VEは負値になる。レイト差分値ΔCV
L=CV
L−CV
VLは正値になる。したがって、アーリー差分値ΔCV
Eとレイト差分値ΔCV
Lの符号は異なる。
【0064】
この時、プロンプトレプリカ信号S
RPのコード位相の位置はD点となり、
図8(B)に示すように、第2誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Bは0となる。
図8(C)に示すように、第1誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Aは正値となる。したがって、第2誤差検出方法ではコード位相制御ができないが、第1誤差検出方法ではコード位相制御が可能である。
【0065】
次に、
図9に示すように、第5の状況として、プロンプトレプリカ信号S
RPが目的のGNSS信号に対してコード位相が遅れている状態であって、コード位相差が小さい場合(第4の状況ほど遅れていない場合)、第1アーリー相関値CV
E、第1、第2レイト相関値CV
L,CV
VLとプロンプト相関値CV
Pは、コード位相差が正値の範囲において相関カーブ900P上に並んで現れる。しかし、第2アーリー相関値CV
VEは、コード位相差が負値の範囲において相関カーブ900P上に現れる。そして、目的のGNSS信号と第1アーリー相関値CV
Eのコード位相差が、目的のGNSS信号と第2アーリー相関値CV
VEのコード位相差よりも小さくなると、アーリー差分値ΔCV
E=CV
E−CV
VEは正値になる。
【0066】
このため、アーリー差分値ΔCV
E、レイト差分値ΔCV
L=CV
L−CV
VLはともに正値になる。したがって、アーリー差分値ΔCV
Eとレイト差分値ΔCV
Lの符号は同じになる。
【0067】
この場合、プロンプトレプリカ信号S
RPのコード位相の位置はE点となり、
図9(B),(C)に示すように、第2誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Bおよび第1誤差検出方法で得られる誤差検出値Δτ
Aの双方が正値となる。したがって、第2誤差検出方法でも第1誤差検出方法でもコード位相制御が可能である。しかしながら、上述のように第1誤差検出方法ではマルチパス信号の影響を受けやすいので、第2誤差検出方法に切り替える。これにより、この切り替え後は、マルチパス信号の影響を受けることなく、目的のGNSS信号のコード位相をロックするように、正確にコード位相制御を行うことができる。
【0068】
以上のように、本実施形態のGNSS信号処理方法を用いれば、適切なタイミングで誤差検出方法を切り替えることができる。これにより、目的のGNSS信号を確実且つ正確に追尾し、目的のGNSS信号の追尾へのマルチパス信号による影響も抑制することができる。
【0069】
なお、GNSS信号の捕捉追尾の際には、具体的に上述の処理を、次に示すような方法で利用することができる。GNSS信号の追尾を開始する時、GNSS信号とプロンプトレプリカ信号S
RPとのコード位相が近いとは限らない。したがって、GNSS信号の追尾開始の時点では、第1誤差検出方法を用いて、GNSS信号とプロンプトレプリカ信号S
RPとのコード位相を一致させるように、コード位相制御を行う。
【0070】
このコード追尾の追い込み処理中に、アーリー差分値ΔCV
Eやレイト差分値ΔCV
Lの符号を検出する。そして、符号の組合せが変化したことを検出すると、すなわち、GNSS信号とプロンプトレプリカ信号S
RPとのコード位相差が所定値よりも小さくなったと判断すると、第2誤差検出方法に切り替えて、GNSS信号の追尾を継続する。
【0071】
以降は、例えば、第2誤差検出方法にてGNSS信号を追尾中に、アーリー差分値ΔCV
E、レイト差分値ΔCV
L、第1誤差検出方法の誤差検出値Δτ
Aに相当するアーリーレイト差分値ΔCV
ELを用いて、GNSS信号とプロンプトレプリカ信号S
RPとのコード位相差を監視する。そして、これらの差分値に基づいてGNSS信号とプロンプトレプリカ信号S
RPとのコード位相差が所定値よりも大きくなったと判断すると、第1誤差検出方法に切り替えてGNSS信号の追尾を継続する。
【0072】
このような本実施形態のGNSS信号処理方法は、次に示す機能部の構成によって実現することが可能である。
図10は本発明の実施形態に係る測位装置1の構成を示すブロック図である。
図11は復調部13の構成を示すブロック図である。
【0073】
測位装置1は、GNSS受信アンテナ11、RF処理部12、本発明のGNSS信号処理装置に相当する復調部13、航法メッセージ解析部14、および測位演算部15を備える。
【0074】
GNSS受信アンテナ11は、GNSS衛星(GPS衛星等)から送信されるGNSS信号を受信し、ダウンコンバータ12へ出力する。ダウンコンバータ12は、GNSS信号を所定の中間周波数信号(以下、IF信号と称する)に変換し、復調部13へ出力する。
【0075】
復調部13は、具体的な構成は
図11を用いて後述するが、上述のような誤差検出値Δτによるレプリカ信号のコード位相制御を行って、IF信号からなるGNSS信号の捕捉、追尾を行う。復調部13は、GNSS信号のコード位相をロックし、追尾に成功すると、GNSS信号とプロンプトレプリカ信号S
RPとの相関値(プロンプト相関値CV
P)を航法メッセージ解析部14へ出力する。また、復調部13は、追尾状態において、誤差検出値Δτを所定時間積算することで擬似距離を算出し、測位演算部15へ出力する。
【0076】
航法メッセージ解析部14は、復調部13からのプロンプト相関値CV
Pから航法メッセージを復調して解析し、その内容を測位演算部15に与える。測位演算部15は、航法メッセージ解析部14からの航法メッセージの内容と、復調部13からの擬似距離に基づいて測位演算を行い、測位装置1の位置を推定演算する。
【0077】
復調部13は、
図11に示すように、レプリカ信号発生部31、相関部32P,32VE,32E,32L,32VL、演算部33を備える。
【0078】
レプリカコード生成部31は、演算部33から与えられたコード位相制御信号に基づいて、上述のプロンプトレプリカ信号S
RP、第1アーリーレプリカ信号S
RE、第2アーリーレプリカ信号S
RVE、第1レイトレプリカ信号S
RL、第2レイトレプリカ信号S
RVLを生成する。レプリカコード生成部31は、プロンプトレプリカ信号S
RPを相関部32Pへ出力する。レプリカコード生成部31は、第1アーリーレプリカ信号S
REを相関部32Eへ出力する。レプリカコード生成部31は、第2アーリーレプリカ信号S
RVEを相関部32VEへ出力する。レプリカコード生成部31は、第1レイトレプリカ信号S
RLを相関部32Lへ出力する。レプリカコード生成部31は、第2レイトレプリカ信号S
RVLを相関部32VLへ出力する。
【0079】
相関部32Pは、GNSS信号とプロンプトレプリカ信号S
RPとを相関処理し、プロンプト相関値CV
Pを出力する。プロンプト相関値CV
Pは、演算部33に出力されるとともに、航法メッセージ解析部14にも出力される。相関部32Eは、GNSS信号と第1アーリーレプリカ信号S
REとを相関処理し、第1アーリー相関値CV
Eを出力する。第1アーリー相関値CV
Eは、演算部33に出力される。相関部32VEは、GNSS信号と第2アーリーレプリカ信号S
RVEとを相関処理し、第2アーリー相関値CV
VEを出力する。第2アーリー相関値CV
VEは、演算部33に出力される。相関部32Lは、GNSS信号と第1レイトレプリカ信号S
RLとを相関処理し、第1レイト相関値CV
Lを出力する。第1レイト相関値CV
Lは、演算部33に出力される。相関部32VLは、GNSS信号と第2レイトレプリカ信号S
RVLとを相関処理し、第2レイト相関値CV
VLを出力する。第2レイト相関値CV
VLは、演算部33に出力される。
【0080】
演算部33は、CPU等によって構成される。演算部33には、上述の誤差検出値算出演算およびコード位相制御を実現するプログラムが記憶されており、当該プログラムを読み出して、実行する。
【0081】
演算部33は、プロンプト相関値CV
P、第1アーリー相関値CV
E、第2アーリー相関値CV
VE、第1レイト相関値CV
L、第2レイト相関値CV
VLを用いて、上述のように誤差検出方法を選択する。演算部33は、選択した誤差検出方法によって誤差検出値Δτを算出する。演算部33は、算出した誤差検出値Δτに基づいて、プロンプトレプリカ信号とGNSS信号のコード位相差が0に近づくようにコード位相制御信号を生成する。演算部33は、コード位相制御信号をレプリカ信号生成部31に与える。
【0082】
このような構成を用いることで、上述のように、GNSS信号を確実且つ正確に追尾することができる。そして、正確な追尾が行えることで、GNSS信号のコード位相を高精度に取得でき、航法メッセージの復調および擬似距離の算出を高精度に行うことができる。これにより、高精度な測位を行うことができる。
【0083】
なお、上述の説明では、測位装置1を、各機能部に分けて測位処理を行う例を示したが、RF処理部12、復調部13、航法メッセージ解析部14、および測位演算部15を、コンピュータ等の情報処理装置で一体化してもよい。この場合、具体的には上述の各処理を含む
図12に示す測位処理のフローチャートをプログラム化して記憶しておく。そして、当該測位のプログラムを情報処理装置で読み出して実行する。
図12は、本発明の実施形態に係る測位方法のフローチャートである。
【0084】
GNSS信号を受信して、捕捉を行う(S201)。捕捉方法としては、上述のように、所定のコード位相間隔で、複数のレプリカ信号を生成する。複数のレプリカ信号のそれぞれとGNSS信号とを相関処理する。最も相関値の高いレプリカ信号のコード位相を、GNSS信号のコード位相として設定する。
【0085】
捕捉によって設定したコード位相を初期位相として、追尾を開始する(S202)。この際、アーリー差分値ΔCV
Eとレイト差分値ΔCV
Lとの符号にしたがって、誤差検出値Δτの算出方法を選択しながら、GNSS信号の追尾を行う。
【0086】
誤差検出値Δτを所定時間毎に積算して、擬似距離を算出する(S203)。プロンプト相関値CV
Pを積算することで、航法メッセージを復調して取得する(S204)。なお、擬似距離の算出処理と航法メッセージを復調、取得処理とは、特に順序をこれに限るものではなく、同時並行に行ってもよい。
【0087】
取得した擬似距離と航法メッセージとを用いて測位演算を行う(S205)。
【0088】
このような測位装置1や測位機能は、
図13に示すような移動端末100に利用される。
図13は、本発明の実施形態に係る測位装置1を備えた移動端末100の主要構成を示すブロック図である。
【0089】
図13に示すような移動端末100は、例えば携帯電話機、カーナビゲーション装置、PND、カメラ、時計等であり、GNSS受信アンテナ11、RF処理部12、復調部13、航法メッセージ解析部14、測位演算部15、アプリケーション処理部120を備える。GNSS受信アンテナ11、RF処理部12、復調部13、航法メッセージ解析部14、測位演算部15は、上述の構成のものであり、これらにより上述のように測位装置1が構成されている。
【0090】
アプリケーション処理部120は、測位装置1から出力された測位結果に基づいて、自装置位置や自装置速度を表示したり、ナビゲーション等に利用するための処理を実行する。
【0091】
このような構成において、上述の高精度な測位結果を得られることで、高精度な位置表示やナビゲーション等を実現することができる。
【0092】
なお、上述の説明では、第1誤差検出方法として、第1アーリー相関値CV
Eと第1レイト相関値CV
Lから誤差検出値Δτ
Aを算出した。第1誤差検出方法として、第2アーリー相関値CV
VEと第1レイト相関値CV
VLから誤差検出値Δτ
AAを算出してもよい。
【0095】
また、アーリー差分値ΔCV
Eやレイト差分値ΔCV
Lの算出用のスペーシングと、誤差検出値の算出用のスペーシングを異ならせてもよい。