(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るシステム1000の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る、電気自動車等の車両を駆動するためのシステム1000を示す模式図である。なお、ここでは電気自動車を例示するが、本実施形態に係るシステム1000は、ハイブリッド自動車など他の車両にも広く適用することができる。
図1に示すように、システム1000は、ステレオカメラ100、ステレオカメラ用の制御装置(画像処理−ECU)200、アクセルペダル300、モータの制御装置(モータ−ECU)400、高電圧バッテリ500、昇圧コンバータ600、インバータ700、駆動モータ800を有して構成される。なお、
図1では、ステレオカメラ用の制御装置200とモータの制御装置400を別体に構成した例を示すが、両者は一体の制御装置から構成されていても良い。
【0019】
ハイブリッド自動車、電気自動車などの車両を駆動するシステムは、駆動輪を駆動するための駆動モータを備えている。
図1に示す構成において、駆動モータ800は、直流電圧を交流に変換するインバータ700の電圧が高いほど大出力を発生することができる。このため、昇圧コンバータ600により高電圧バッテリ500の電圧を昇圧してインバータ700に印加している。一方、昇圧コンバータ600では、バッテリ電圧500を昇圧すると、昇圧が大きいほど損失が発生する。昇圧コンバータ600の昇圧比が高いほど損失が大きくなるため、大出力を出そうとすると、昇圧コンバータ600における損失の増加につながる。更に、高電圧バッテリ500の電圧からインバータ700の最大電圧まで昇圧するために、目標電圧に対して実際の昇圧が行われるまでに200ms程度の遅延時間が発生する。このため、車両発進時に昇圧を行ったとしても、実際の昇圧は発進時よりも遅延するため、加速のもたつき感やドライバビリティの悪化が生じる。
【0020】
本実施形態のシステム1000では、車両発進時に、ステレオカメラ100を含む画像処理システムにより自車両の停車状態から発進の予兆を検出する。発進の予兆としては、前方の交通信号機の色が赤から青へ変わったこと、先行車のブレーキランプが点灯から消灯へ変わったこと、先行車が停車状態から発進したこと、等が挙げられる。システム1000は、画像処理システムによりこれらを認識することで、発進の予兆を検出する。そして、発進の予兆を認識すると、ドライバーによるアクセルの踏み込みよりも前に昇圧コンバータ600を駆動してインバータ700の電圧を上昇させることで,ドライバーのアクセルオンに対し即座に最大出力を出すことを可能とする。
【0021】
また、車両減速停車時には、画像処理システムにより、自車両が走行状態から停車する予兆を検出する。停車の予兆としては、前方の交通信号機の色が青から赤へ変わったこと、先行車との車間距離が小さくなったこと、等が挙げられる。システム1000は、画像処理システムによりこれらを認識することで、停車の予兆を検出する。そして、停車の予兆を認識すると、その後にドライバーから大出力を要求されることは無いため、昇圧コンバータ600を停止することで,昇圧コンバータ600による損失を抑制する。
【0022】
図1に示す構成において、ステレオカメラ100は、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子を有する左右1対のカメラ100a,100bを有して構成され、車両外の外部環境を撮像し、撮像した画像情報を制御装置200へ送る。本実施形態に係るステレオカメラ100は、色情報を取得可能なカラーカメラから構成される。ステレオカメラ100は、色情報を取得できるため、例えば、自車両の前方を走行する先行車両のブレーキランプ点灯の有無や交通信号機の信号の色、道路標識等を画像情報として認識することができる。ステレオカメラ100は、認識した画像情報を制御装置200へ出力する。
【0023】
制御装置200は、ステレオカメラ100の左右1組のカメラ100a,100bによって自車両進行方向を撮像した左右1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって対象物までの距離情報を生成して取得することができる。また、制御装置200は、三角測量の原理によって生成した距離情報に対して、周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な立体物データ等と比較することにより、立体物データや白線データ等を検出する。これにより、制御装置200は、一時停止の標識、停止線、ETCゲートなどを認識することもできる。
【0024】
また、制御装置200は、三角測量の原理によって生成した先行車との距離情報(車間距離L)を用いて、車間距離Lの変化量、先行車との相対速度Vを算出することができる。車間距離Lの変化量は、単位時間ごとに検知されるフレーム画像間の車間距離Lを積算することにより求めることができる。また、相対速度Vは、単位時間ごとに検知される車間距離を当該単位時間で割ることにより求めることができる。なお、これらの演算は制御装置200が行うこともできる。
【0025】
このように、制御装置200は、ステレオ画像認識部100から得られる車両外の画像情報を取得して分析する画像分析処理部として機能し、画像情報を分析して得られる車両外の環境情報を制御装置400へ送信する。制御装置200は、ステレオ画像認識部100から送られた画像情報を分析処理し、自車両の前方の交通信号機の色、先行車のブレーキランプの点灯状態、道路標識、停止線、または先行車との車間距離L等を車両外の環境情報として認識し、制御装置400へ送る。また、制御装置200は、車両外を監視し車両外の環境情報を取得する車両外監視部として機能する。
【0026】
アクセルペダル300は、ドライバーのアクセル操作を検出するセンサを含んでいる。ドライバーのアクセル操作は、ドライバーの要求駆動力としてモータの制御装置400に送られる。制御装置400は、制御装置200から受信した交通信号機の色、ブレーキランプの点灯状態、または車間距離等の情報とアクセルペダル300から受信したドライバーの要求駆動力とに基づいて昇圧コンバータ600の昇圧電圧を決定し、決定した昇圧電圧により昇圧指令を昇圧コンバータ600に送信する。
【0027】
昇圧コンバータ600は、高電圧バッテリ500とインバータ700との間に設けられ、高電圧バッテリ500の電圧を昇圧して、昇圧した電圧をインバータ700に加える。ここで、高電圧バッテリ500の電圧に対する昇圧した電圧の比を昇圧比と称する。
【0028】
ここで、
図2は、駆動モータ800の回転数とモータトルクとの関係が、昇圧コンバータ600における昇圧によって変化する様子を示す特性図(モータ出力マップ)である。
図2の横軸はモータ回転数を、縦軸はモータトルクを示している。縦軸のモータトルクにおいて、正の値は駆動モータ800が駆動輪を駆動する際のトルクを、負の値は回生時に駆動輪が駆動モータ800を駆動する際のトルク(駆動モータ800による制動力)を示している。
【0029】
図2に示すように、モータトルクが正の値の場合、昇圧コンバータ600による昇圧が大きいほど同じモータ回転数に対するモータトルクが増加する。従って、昇圧コンバータ600による昇圧を大きくしてインバータ700に印加する電圧を高くすることで、より大きなモータトルクで駆動モータ800を駆動することが可能となる。
【0030】
また、
図2に示すように、モータトルクが負の値の場合は、昇圧コンバータ600による昇圧が大きいほど、駆動輪が駆動モータ800を回転させる際のモータトルクが増加する。
【0031】
このように、駆動モータ800は電機子巻線に電流を流すことで駆動トルクを発生させているため、印加する電圧を大きくすることでより大きな電流を流すことが可能となり、その結果、出力を増大させることができる。
【0032】
また、
図3は、昇圧コンバータ600の変換効率を示す模式図である。
図3に示すように、高電圧バッテリ500の電圧は200[V]であり、昇圧コンバータ600は昇圧比を1〜3.250の範囲で変化させ、高電圧バッテリ500の電圧を200[V]から650[V]の範囲まで昇圧してインバータ700に印加する。また、
図3に示す一次側電力[kW]は、正の値はモータ駆動時に高電圧バッテリ500から取り出される電力を示しており、負の値は回生時に高電圧バッテリ500に充電される電力を示している。
図3では、一次側電力の各値毎に昇圧コンバータ600の変換効率(%)を示している。昇圧コンバータ600は、昇圧するためにリアクトルに通電する必要があるが、より高い昇圧電圧を得るためには、通電時間を長くして電流を多く流す必要があるため、
図3に示すように、昇圧コンバータ600の昇圧比が増加するほど、昇圧コンバータ600の変換効率は低下する。すなわち、昇圧コンバータ600の昇圧電圧が高くなるほど変換効率は低下する。従って、必要な時以外は、昇圧コンバータ600の昇圧比を低下させておくことが望ましい。なお、効率の低下分は、昇圧コンバータ600が発生する熱として発散される。
【0033】
制御装置400は、制御装置200から得た車両前方の交通信号機の色、ブレーキランプの点灯状態、道路標識、停止線、または先行車との車間距離L等の各種情報を用いて、自車両の今後の走行状態(発進・停止・加速・減速など)を予見する。そして、制御装置400は、ドライバーが要求する要求駆動力に加えて、予見した今後の走行状態に基づいて昇圧コンバータ600の電圧や駆動を制御する。すなわち、制御装置400は、制御装置200から送られた車両外の環境情報に基づいて、車両の発進又は停止を含む運転状態を予測する運転状態予測部、及び、予測した運転状態に基づいて昇圧コンバータ600による昇圧を制御する電圧制御部、として機能する。これにより、例えば車両走行中に前方の交通信号機の色が“青”から“赤”に変わった場合など、今後車両が停止することが予見される場合は、昇圧コンバータ600の昇圧比を下げることで、昇圧コンバータ600における損失を最小限に抑えることができる。また、車両停止中に前方の交通信号機の色が“赤”から“青”へ変わったことが認識された場合には、ドライバーによりアクセルが踏み込まれる前に昇圧比を高めることができる。これにより、車両発進前に昇圧比を高めることができるため、アクセル踏込後に昇圧比を高めた場合に発生する加速のもたつきを確実に抑止できる。
【0034】
昇圧コンバータ600は、制御装置400からの昇圧指令に基づいて高電圧バッテリ500の電圧を昇圧し、昇圧した電圧をインバータ700に印加する。インバータ700は、昇圧コンバータ600によって昇圧された電圧を利用し、直流電圧を交流に変換して駆動モータ800に印加することで、駆動モータ800のモータ巻線に電流を流す。駆動モータ800は、インバータ700によってモータ巻線に流された電流が発生させる電磁力と、駆動モータ800内部に設置されたマグネットの磁力によって、車両を動かすための駆動力を発生させる。
【0035】
以上のように構成された本実施形態にシステム1000によれば、制御装置400は、制御装置200から受信した交通信号機の色、ブレーキランプの点灯状態、道路標識、停止線、または先行車との車間距離L等の各種情報と、アクセルペダル300から受信したドライバーの要求駆動力とに基づいて、昇圧コンバータ600の昇圧電圧を決定する。
【0036】
従って、車両停止中に、前方の交通信号機の色が“赤”から“青”に変わった場合、先行車のブレーキランプが点灯から消灯に変化した場合、先行車との車間距離が所定値以上離れた場合など、車両の発進が予見される場合は、車両発進前に昇圧コンバータ600の昇圧比を高めることで、発進時に加速のもたつきが生じることが無く、ドライバビリティを向上させることができる。
【0037】
また、車両走行中に、前方の交通信号機が赤信号である場合、先行車のブレーキランプが点灯している場合、先行車との車間距離が接近している場合など、今後車両が停止することが予測される場合は、昇圧コンバータ600による昇圧比を1倍とし、昇圧を行わないようにすることで、昇圧コンバータ600における損失を確実に抑えることが可能となる。
【0038】
次に、
図1のシステムで行われる処理の流れの一例について説明する。
図4は、本実施形態の処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS10では、ステレオ画像認識部100との協調制御により、自車両発進予測判定を行う。ここでは、以下のC1,C2,C3の条件が成立するか否かを判定し、C1,C2,C3のいずれかの条件が成立する場合、以下のF1を実行する。
C1)車両前方の交通信号機の色が“赤”から“青”に変わった。
C2)先行車のブレーキランプが“点灯”から消灯に変わった。
C3)先行車との車間距離が拡がった。
F1)自車両発進予測=有り
【0039】
上記C1,C2,C3のいずれかの条件が成立する場合、上記F1が実行され、自車両発進予測フラグが立てられる。上述したように、ステレオ画像認識部100は、三角測量の原理によって対象物までの距離情報を取得することができる。上記C3では、三角測量の原理によって先行車までの距離情報を取得し、先行車までの距離が所定のしきい値(例えば、10m)を超えた場合に、先行車との車間距離が拡がったと判定する。
【0040】
次のステップS12では、ステレオ画像認識部100との協調制御により、自車両停止予測判定を行う。ここでは、以下のC4,C5の条件が成立するか否かを判定し、C4,C5のいずれかの条件が成立する場合、以下のF2を実行する。
C4)前方の交通信号機の色が青→赤に変わった。
C5)先行車との車間距離が車速に対して近い。
F2)自車両停止予測=有り
【0041】
上記C4,C5のいずれかの条件が成立する場合、上記F2が実行され、自車両停止予測フラグが立てられる。上記C5では、三角測量の原理によって先行車までの距離情報を取得し、先行車に対する自車両の相対速度から先行車と自車両との距離が所定のしきい値(例えば、10m)以内になると見込まれる場合は、先行車との車間距離が車速に対して近いと判定する。
【0042】
次のステップS14では、車速が所定のしきい値THv[km/h]よりも小さいか否かを判定する。また、ステップS14では、加速度が0[m/s
2]であるか否かを判定する。そして、ステップS14において、車速が所定のしきい値THv[km/h]よりも小さく、且つ加速度が0[m/s
2]以下の場合は、車両が停止していると判定し、ステップS16へ進む。ステップS16では、ステップS10の自車両発進予測フラグが立てられているか否かを判定し、自車両発進予測フラグが立てられている場合は、ステップS18へ進む。ステップS18では、インバータ700へ印加する電圧の目標値(昇圧コンバータ600の目標電圧)を所定値V1に設定する。次のステップS20では、昇圧コンバータ600の駆動を開始する。
【0043】
これにより、車両停止中に自車両が発進することが予測される場合は、アクセルが踏み込まれるよりも前に昇圧コンバータ600の目標電圧が所定値V1に設定されて昇圧コンバータ600の駆動が開始される。従って、車両発進前に予め昇圧コンバータ600による昇圧を行っておくことで、昇圧の際の応答遅延による加速のもたつきを抑止することができる。
【0044】
一方、ステップS16において、自車両発進予測フラグが立てられていない場合は、ステップS22へ進む。ステップS22では、自車両が発進することは予測されていないため、昇圧コンバータ600による昇圧比を1倍とし、昇圧コンバータ600の目標電圧を高電圧バッテリ500の電圧とする。そして、次のステップS24では、昇圧コンバータ600の駆動を停止する。すなわち、ステップS22〜S24へ進んだ場合は、昇圧コンバータ600による昇圧は行われず、高電圧バッテリ500の電圧がそのままインバータ700へ印加される。ステップS20,S24の後は処理を終了する。
【0045】
また、ステップS14において、車速が所定のしきい値THv[km/h]以上であり、且つ加速度が0[m/s
2]よりも大きい場合は、車両が走行中であると判定し、ステップS26へ進む。ステップS26では、ステップS12の自車両停止予測フラグが立てられているか否かを判定し、自車両停止予測フラグが立てられている場合は、ステップS28へ進む。
【0046】
ステップS28では、自車両が停止することが予測されているため、ドライバーから更なる駆動力を要求されることはないと考えられる。従って、昇圧コンバータ600による昇圧比を1倍とし、昇圧コンバータ600の目標電圧を高電圧バッテリ500の電圧とする。そして、次のステップS30では、昇圧コンバータ600の駆動を停止する。すなわち、ステップS28〜S30へ進んだ場合は、昇圧コンバータ600による昇圧は行われず、高電圧バッテリ500の電圧がそのままインバータ700へ印加される。ステップS30の後は処理を終了する。また、ステップS26で自車両停止予測フラグが立てられていない場合も処理を終了する。
【0047】
これにより、車両走行中に自車両が停止することが予測される場合は、昇圧コンバータ600による昇圧比が1倍とされ、インバータ700へ印加する電圧の目標値(昇圧コンバータ600の目標電圧)が高電圧バッテリ500の電圧とされる。これにより、昇圧コンバータ600による昇圧が行われないため、昇圧コンバータ600における損失を最小限に抑えることができる。
【0048】
図5は、要求駆動力(アクセル開度)と昇圧コンバータの応答特性を示す特性図である。
図5では、車両発進時に昇圧コンバータ600による昇圧の目標電圧を増加させ、目標電圧に従ってインバータ700に印加される実際の昇圧電圧が上昇する様子を示している。
図5の左の縦軸はアクセル開度[%]及び車速[km/h]を示しており、右の縦軸は電圧[V]を示している。また、
図5の横軸は時間を示している。
【0049】
図5に示すように、本実施形態では、自車両発進予測フラグが立っている場合は、ドライバーがアクセル操作をしてアクセル開度が0よりも大きくなる時刻t1よりも以前の時刻t0において、昇圧コンバータ600による昇圧の目標電圧が300[V]に高められる。この際、目標電圧に対する昇圧電圧の遅延を考慮して、時刻t1よりも前に時刻t0が設定される。これにより、ドライバーがアクセルを踏み込む以前に、インバータ700に印加される実際の昇圧電圧を目標電圧(300[V])に到達させることができる。従って、インバータ700に印加される実際の昇圧電圧が目標電圧に対して遅延することに起因する加速のもたつき、ドライバビリティの悪化を確実に抑止することができる。なお、車両発進後、昇圧コンバータ600の目標電圧はアクセル開度(ドライバーの要求駆動力)に応じて最適な値に制御される。
【0050】
一方、
図6は、
図5との比較のため、ドライバーがアクセルを踏み込んだ後に昇圧コンバータ600による昇圧の目標電圧を増加させる例を示す模式図である。
図6に示す例では、ドライバーがアクセル操作をしてアクセル開度が0よりも大きくなる時刻t1よりも後の時刻t2において、ドライバーの要求駆動力に応じて昇圧コンバータ600による昇圧の目標電圧を増加させている。この場合、時刻t2で目標電圧を上昇させても、実際の昇圧電圧は目標電圧に対して応答に遅延が生じるため、加速のもたつき、ドライバビリティの悪化が生じてしまう。
【0051】
従って、
図5に示す本実施形態の制御によれば、車両発進予測により、アクセルが踏み込まれて車両が発進するよりも前に昇圧コンバータ600による昇圧電圧を高めておくことができ、加速のもたつき、ドライバビリティの悪化を確実に抑止することができる。
【0052】
また、
図5では、時刻t3において、走行中に先行車との車間距離が十分に拡がったことが制御装置200によって認識された場合を示している。この場合、ドライバーがアクセル開度を増加させる時刻t4よりも前に昇圧コンバータ600の目標電圧を更に高める制御を行うことができる。
図5に示す例では、時刻t3の時点で目標電圧を400[V]に高めている。これにより、ドライバーがアクセルを更に踏み込む時刻t4の時点で実際の昇圧電圧を400[V]まで昇圧しておくことができ、加速のもたつきを抑えることが可能となる。このように、発進予測のみならず、走行中の更なる加速を予知して昇圧コンバータ600を制御することも可能である。
【0053】
また、
図5では、時刻t5において、前方の交通信号機が“青”から“赤”へ変わったことが認識された場合を示している。この場合、時刻t5で昇圧コンバータ600の目標電圧をバッテリ電圧(=200[V])とすることで、昇圧コンバータ600の駆動が停止される。従って、昇圧コンバータ600における損失を回避することができる。
【0054】
図7は、2モータのハイブリッドシステムへの適用を示す模式図である。
図7に示すシステムは、車両駆動用の駆動モータ800と、発電用の発電モータ960を備えており、モータとエンジンを備えるハイブリッド車両等に用いられる。また、
図7に示す例では、
図1の2つの制御装置200,400の機能が1つのハイブリッドECU900に集約されている。ハイブリッドECU900の画像分析処理部902は
図1の制御装置200の機能に対応し、電圧決定処理部904は
図1の制御装置400の機能に対応している。
【0055】
従って、
図7に示す構成例は、
図7中に破線で囲まれたインバータ950、発電モータ960、及びエンジン970が追加されている点で、
図1の構成と実質的に相違する。発電モータ960は、エンジン970によって駆動されて電力を発生する。発電モータ960が発生させた電力は、インバータ1000によって交流から直流に変換されて昇圧コンバータ600へ送られ、高電圧バッテリ500に充電される。
【0056】
また、
図8は、
図7に示す構成のうち、一点鎖線で囲まれた高電圧バッテリ500、昇圧コンバータ600、インバータ700、駆動モータ800、インバータ950、及び発電モータ960の具体的構成を示す模式図(回路図)である。
【0057】
図7及び
図8に示すような2モータのシステムにおいても、
図1のシステムと同様に、車両の発進、停止を含む今後の運転状態を予測することで、昇圧コンバータ600の昇圧比を最適に制御することができる。従って、車両の発進が予測される場合は、ドライバーがアクセルを踏み込む以前に昇圧電圧を予め高くしておくことで、加速時のもたつきやドライバビリティの悪化を確実に抑えることができる。また、走行中に車両の停止が予測される場合は、昇圧比を低下させることで、昇圧コンバータ600における損失を最小限に抑えることが可能となる。
【0058】
以上説明したように本実施形態によれば、ステレオ画像認識部100によって認識された情報に基づいて、車両の発進、停止を含む今後の運転状態を予測し、予測に基づいて昇圧コンバータ600の昇圧比が制御される。これにより、車両の発進、停止を含む今後の運転状態に基づいて昇圧コンバータの昇圧比を最適に制御することが可能となる。従って、発進時の加速のもたつき、ドライバビリティの悪化を抑制するとともに、昇圧コンバータ600における損失を確実に低減することが可能となる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上述の実施形態では、車両外監視部としてステレオ画像認識部100や制御装置(画像処理−ECU)200の構成を説明したがそれらに限定されない。ステレオカメラではなく単眼カメラを用いて先行車のブレーキランプ点灯の有無、交通信号機の信号の色、道路標識等を認識してもよい。また、画像情報ではなくレーダー等を用いて先行車との車間距離等の情報を取得しても良い。また、カメラとレーダーを組み合わせる構成であってもよい。さらに、車車間通信やITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を通じて先行車の走行に関する情報や交通信号機等のインフラの情報を取得する構成であってもよい。