特許第5923164号(P5923164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923164
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】レーザモジュール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20160510BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   H01S5/022
   H01S5/40
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-507897(P2014-507897)
(86)(22)【出願日】2013年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2013058714
(87)【国際公開番号】WO2013146749
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-72657(P2012-72657)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】染野 義博
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/040290(WO,A1)
【文献】 特開2012−053101(JP,A)
【文献】 特開2006−242735(JP,A)
【文献】 特開2011−227943(JP,A)
【文献】 特開平08−094889(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/032182(WO,A1)
【文献】 特開2006−072232(JP,A)
【文献】 特開2004−179273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザから放射される複数のレーザ光を光学部品により合波して外部へ照射するレーザモジュールであって、
前記複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザが配設されるベースプレートと、前記ベースプレート上に配設された前記光学部品とを備え、
前記光学部品は、複数の前記半導体レーザからのそれぞれの前記レーザ光の出射方向にそれぞれに対応して配設された複数のレンズ部と、前記複数のレンズ部を透過した前記複数のレーザ光を透過させる複数のフィルタ部とを有し、
前記レンズ部は、前記ベースプレートに対して位置調整可能な形状に形成され、
前記フィルタ部は、前記ベースプレートの平面上に配置されたリング状の位置調整部材と、下部が球面に形成され前記位置調整部材のリングの内側の辺に前記球面が接するように配置された角度調整部材と、前記角度調整部材上に配置されたフィルタと、を有し、
前記角度調整部材が前記ベースプレートに溶接で固定されており、前記角度調整部材と前記ベースプレートとの間に、前記位置調整部材が、前記角度調整部材と前記ベースプレートのいずれに対しても非溶接状態で挟まれ、前記角度調整部材と前記ベースプレートとの溶接は、熱収縮によって前記位置調整部材を前記ベースプレートに固着する方向の溶接であることを特徴とするレーザモジュール。
【請求項2】
前記溶接が一箇所のみであることを特徴とする請求項1に記載のレーザモジュール。
【請求項3】
前記位置調整部材を固着する前記方向が、前記フィルタを通る光軸と直交することを特徴とする請求項2に記載のレーザモジュール。
【請求項4】
前記レンズ部は、前記レーザ光を集光またはコリメートするレンズと、前記レンズを保持するレンズ保持部材とからなり、
前記ベースプレートは、前記レンズ保持部材の外縁と当接し前記レンズ部を摺動可能に支持する溝部を有し、
前記レンズ保持部材の前記外縁と前記ベースプレートの溝部とが溶接で固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のレーザモジュール。
【請求項5】
前記レンズ保持部材と前記ベースプレートとの溶接が、熱収縮によって前記レンズ保持部材を前記ベースプレートに固着する方向の溶接であることを特徴とする請求項4に記載のレーザモジュール。
【請求項6】
前記レンズ保持部材と前記ベースプレートとの溶接が一箇所のみであることを特徴とする請求項5に記載のレーザモジュール。
【請求項7】
前記レンズ保持部材が前記ベースプレートに固着される前記方向が、前記レンズを通る光軸と直交することを特徴とする請求項6記載のレーザモジュール。
【請求項8】
前記半導体レーザが熱伝導性を有する保持部材に固定保持され、前記保持部材と前記ベースプレートとが接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のレーザモジュール。
【請求項9】
複数の半導体レーザから放射される複数のレーザ光を光学部品により合波して外部へ照射するレーザモジュールの製造方法であって、
前記半導体レーザがベースプレートに配設される第一のマウント工程と、
前記レーザ光が入射され、前記光学部品の一つであるレンズ部のいくつかがベースプレート上に配設される第二のマウント工程と、
前記レンズ部からのレーザ光が入射され、前記光学部品の一つである複数のフィルタ部がベースプレート上に配設される第三のマウント工程と、を有し、 前記半導体レーザを発光させた後、前記レンズ部を移動して前記レーザ光のスポット形を調整するスポット調整工程と、
前記半導体レーザを発光させた後、前記複数のフィルタ部を移動して前記複数のレーザ光の光軸を調整する光軸調整工程と、
前記レンズ部と前記ベースプレートとを固定する第一の固定工程と、
前記フィルタ部と前記ベースプレートとを固定する第二の固定工程と、
を有し、
前記複数のフィルタ部は、前記ベースプレートの平面上に配置されたリング状の位置調整部材と、下部が球面に形成され前記位置調整部材のリングの内側の辺に前記球面が接するように配置された角度調整部材と、前記角度調整部材上に配置されたフィルタと、を有し、
前記第二の固定工程は、熱収縮によって前記位置調整部材を前記ベースプレートに固着する方向に前記角度調整部材と前記ベースプレートとを溶接し固定する溶接工程を有し、前記角度調整部材と前記ベースプレートとで、前記位置調整部材を、前記角度調整部材と前記ベースプレートのいずれに対しても非溶接状態で挟み込むことを特徴とするレーザモジュールの製造方法。
【請求項10】
前記溶接が一箇所のみであることを特徴とする請求項9に記載のレーザモジュールの製造方法。
【請求項11】
前記角度調整部材へと溶接される前記ベースプレートの溶接部の厚みが薄く設けられ、
記溶接工程は、前記溶接部の前記角度調整部材とは反対側から、加工レーザ光を照射してレーザ溶接を行うことを特徴とする請求項9または請求項10に記載のレーザモジュールの製造方法。
【請求項12】
前記レンズ部は、前記レーザ光を集光またはコリメートするレンズと、前記レンズを保持するレンズ保持部材とからなり、
前記ベースプレートは、前記レンズ保持部材の外縁と当接し前記レンズ部を摺動可能に支持する溝部を有し、
前記第一の固定工程は、前記レンズ保持部材の前記外縁と前記ベースプレートの溝部とを溶接で固定する他の溶接工程を有していることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のレーザモジュールの製造方法。
【請求項13】
前記他の溶接工程における溶接が、熱収縮によって前記レンズ保持部材前記ベースプレートに固着する方向の溶接であることを特徴とする請求項12に記載のレーザモジュールの製造方法。
【請求項14】
前記他の溶接工程における溶接が一箇所のみであることを特徴とする請求項13に記載のレーザモジュールの製造方法。
【請求項15】
前記半導体レーザは、保持部材に固定保持され、
前記第一のマウント工程は、前記保持部材と前記ベースプレートとを接続する接続工程を有していることを特徴とする請求項9ないし請求項14のいずれかに記載のレーザモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を被投射面に照射して画像を表示する表示装置に用いられるレーザモジュールに関し、特に、光軸調整が容易に行われたレーザモジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光をスクリーンや壁等の投射面に照射して画像を表示する表示装置、所謂レーザプロジェクタは、一般的に知られるようになってきた。このレーザプロジェクタでフルカラーを再現するには、赤色(Red)、緑色(Green)、青色(Blue)の3原色のレーザ光源を備えたレーザモジュールを準備する必要がある。この3原色のレーザモジュール(RGB光源と言う)は、半導体レーザ素子を放熱基体にマウントし、金属製のカバーで覆ったタイプ、所謂キャン(CAN)パッケージタイプのレーザ光源が一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1では、図12に示すように、キャン(CAN)パッケージタイプを用いた光源ユニット(RGB光源)800が提案されている。図12に示す光源ユニット(RGB光源)800は、キャン(CAN)パッケージタイプの赤色レーザ光源LDR、緑色レーザ光源LDG及び青色レーザ光源LDBを用い、各々のレーザ光源から放射されたレーザ光は、コリメータレンズ(CLR、CLG、CLB)でコリメートされ、プリズムユニット112により合成された後、シリンドリカルレンズ113を通して、水平走査方向偏向ポリゴンモータユニット(図示していない)に向かっている。このようにして、3つのレーザ光を合波し光軸を合わせて、光源ユニット(RGB光源)800を作製している。
【0004】
しかしながら、特許文献1の従来例1のように、金属製のカバーで覆ったキャン(CAN)パッケージタイプの光源ユニット(RGB光源)800を用いた場合、3原色のレーザモジュールを小型化できないと言う問題があった。更に、近年では画像の色再現性の向上のために、上述した3原色以外に黄色を加えて4色にした場合や緑色を2色にした場合等のレーザ光源の数を増やすことが求められ、益々レーザ光源、ひいてはレーザモジュール(光源ユニット)の小型化が求められてきた。
【0005】
一方、特許文献2では、図13に示すように、CDやDVD等の光ディスクの記憶情報を読み取るための光ピックアップ900が提案されており、これに用いられる半導体モジュール901は、金属製のカバーで覆ったタイプのレーザ光源では無く、半導体レーザ素子911を直接実装したタイプの光源が提案されている。特許文献2の従来例2では、光ピックアップ900用の半導体レーザ素子911を1個用いた半導体モジュール901と、図14に示すように、半導体レーザ素子911を半導体モジュール901の所定の光学位置に実装する方法とが示されている。
【0006】
図13に示す光ピックアップ900は、レーザ光を射出する半導体レーザ素子911と、グレーティング素子951と、プリズム961と、受光素子としての光電変換用IC(OEIC)971とを半導体モジュール901の筐体991内の所定の光学位置に備え、構成されている。そして、半導体モジュール901の半導体レーザ素子911の実装方法は、図14(a)に示すように、半導体レーザ素子911が固定されたスペーサ931をアーム955で保持し、図14(b)に示すように、筐体991の外側から基板941を局所加熱して、基板941上のはんだHDをすばやく溶融させ、図14(c)に示すように、所定の光学位置に半導体レーザ素子911が固定される。これにより、半導体レーザ素子911が、半導体モジュール901の筐体991に設けられたその他の光学部品によって形成される光学系に対し、レーザ光の光軸調整や光軸方向の位置調整がなされた所定の光学位置に迅速に且つ、確実に取り付けられるとしている。そこで、この従来例を複数のレーザ光源を用いたレーザモジュールに応用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−219480号公報
【特許文献2】特開2001−144364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来例2のような方法では、所定の光学位置に半導体レーザ素子911を固定したとしても、はんだ硬化時の熱収縮により、実際に作製された半導体レーザ素子911の光軸方向が微妙にずれてしまうと言った課題があった。更に、複数のレーザ光源を用いて、それぞれのレーザ光を合成し光軸を合わせるレーザモジュールに適用した場合、非常に難しい方法であった。この対策として、半導体レーザを実際に発光させて位置調整を行いながら実装する方法が考えられるが、このためには、半導体レーザの温度が上がらないように、放熱措置を充分取らなければいけなく、しかも加熱や冷却等を行う製造条件を厳しく管理しなければいけなかった。そのため、半導体レーザを発光させながら実装することは実用的には難しく、しかも複数の半導体レーザのレーザ光を合成し光軸を合わせて実装することは、益々難しいと言う課題があった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するもので、光軸調整が容易に行われたレーザモジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明の請求項1によるレーザモジュールは、複数の半導体レーザから放射される複数のレーザ光を光学部品により合波して外部へ照射するレーザモジュールであって、前記複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザが配設されるベースプレートと、前記ベースプレート上に配設される前記光学部品とを備え、前記光学部品が、複数の前記半導体レーザからのそれぞれの前記レーザ光の出射方向にそれぞれに対応して配設された複数のレンズ部と、前記複数のレンズ部を透過した前記複数のレーザ光を透過させる複数のフィルタ部と、を有し、前記レンズ部が、前記ベースプレートに対して位置調整可能な形状に形成され、前記複数のフィルタ部が、前記ベースプレートの平面上に配置されたリング状の位置調整部材と、下部が球面に形成され前記位置調整部材のリングの内側の辺に前記球面が接するように配置された角度調整部材と、前記角度調整部材上に配置されたフィルタと、を有し、前記角度調整部材が前記ベースプレートに溶接で固定されており、前記角度調整部材と前記ベースプレートとの間に、前記位置調整部材が、前記角度調整部材と前記ベースプレートのいずれに対しても非溶接状態で挟まれ、前記角度調整部材と前記ベースプレートとの溶接は、熱収縮によって前記位置調整部材を前記ベースプレートに固着する方向の溶接であることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項2によるレーザモジュールは、前記溶接が一箇所のみであることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項3によるレーザモジュールは、前記位置調整部材を固着する前記方向が、前記フィルタを通る光軸と直交することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項4によるレーザモジュールは、前記レンズ部が、前記レーザ光を集光またはコリメートするレンズと、前記レンズを保持するレンズ保持部材とからなり、前記ベースプレートは、前記レンズ保持部材の外縁と当接し前記レンズ部を摺動可能に支持する溝部を有し、前記レンズ保持部材の前記外縁と前記ベースプレートの溝部とが溶接で固定されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項5によるレーザモジュールは、前記レンズ保持部材と前記ベースプレートとの溶接が、熱収縮によって前記レンズ保持部材を前記ベースプレートに固着する方向の溶接であることを特徴としている。
また、本発明の請求項6によるレーザモジュールは、前記レンズ保持部材と前記ベースプレートとの溶接が一箇所のみであることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項7によるレーザモジュールは、前記レンズ保持部材が前記ベースプレートに固着される前記方向が、前記レンズを通る光軸と直交することを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項8によるレーザモジュールは、前記半導体レーザが熱伝導性を有する保持部材に固定保持され、前記保持部材と前記ベースプレートとが接続されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の請求項9によるレーザモジュールの製造方法は、複数の半導体レーザから放射される複数のレーザ光を光学部品により合波して外部へ照射するレーザモジュールの製造方法であって、前記半導体レーザがベースプレートに配設される第一のマウント工程と、前記レーザ光が入射され、前記光学部品の一つであるレンズ部のいくつかがベースプレート上に配設される第二のマウント工程と、前記レンズ部からのレーザ光が入射され、前記光学部品の一つである複数のフィルタ部がベースプレート上に配設される第三のマウント工程とを有し、前記半導体レーザを発光させた後、前記レンズ部を移動して前記レーザ光のスポット形を調整するスポット調整工程と、前記半導体レーザを発光させた後、前記複数のフィルタ部を移動して前記複数のレーザ光の光軸を調整する光軸調整工程と、を有し、前記レンズ部と前記ベースプレートとを固定する第一の固定工程と、前記フィルタ部と前記ベースプレートとを固定する第二の固定工程と、を有し、
前記複数のフィルタ部は、前記ベースプレートの平面上に配置されたリング状の位置調整部材と、下部が球面に形成され前記位置調整部材のリングの内側の辺に前記球面が接するように配置された角度調整部材と、前記角度調整部材上に配置されたフィルタと、を有し、
前記第二の固定工程は、熱収縮によって前記位置調整部材を前記ベースプレートに固着する方向に前記角度調整部材と前記ベースプレートとを溶接し固定する溶接工程を有し、前記角度調整部材と前記ベースプレートとで、前記位置調整部材を、前記角度調整部材と前記ベースプレートのいずれに対しても非溶接状態で挟み込むことを特徴としている。
【0019】
また、本発明の請求項10によるレーザモジュールの製造方法は、前記溶接が一箇所のみであることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の請求項11によるレーザモジュールの製造方法は、前記角度調整部材へと溶接される前記ベースプレートの溶接部の厚みが薄く設けられ、前記溶接工程は、前記溶接部の前記角度調整部材とは反対側から、加工レーザ光を照射してレーザ溶接を行うことを特徴としている。
【0022】
また、本発明の請求項12によるレーザモジュールの製造方法は、前記レンズ部が、前記レーザ光を集光またはコリメートするレンズと、前記レンズを保持するレンズ保持部材とからなり、前記ベースプレートは、前記レンズ保持部材の外縁と当接し前記レンズ部を摺動可能に支持する溝部を有し、前記第一の固定工程が、前記レンズ保持部材の前記外縁と前記ベースプレートの溝部とを溶接で固定する他の溶接工程を有していることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の請求項13によるレーザモジュールの製造方法は、前記他の溶接工程における溶接が、熱収縮によって前記レンズ保持部材前記ベースプレートに固着する方向の溶接であることを特徴としている。
また、本発明の請求項14によるレーザモジュールの製造方法は、前記他の溶接工程における溶接が一箇所のみであることを特徴している。
【0024】
また、本発明の請求項15によるレーザモジュールの製造方法は、前記半導体レーザが、保持部材に固定保持され、前記第一のマウント工程が、前記保持部材と前記ベースプレートとを接続する接続工程を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、本発明のレーザモジュールは、位置調整可能な形状に形成されたレンズ部と、位置調整部材及び角度調整部材を有したフィルタ部とを備えているので、レンズ部により半導体レーザから放射されるレーザ光の焦点位置を調整してフィルタ部に入射させ、フィルタ部によりフィルタを透過するレーザ光の角度調整を行うことができる。このことにより、複数のレーザ光のスポット形のそれぞれを一つに合わせることができ、簡単な構成で複数のレーザ光のスポット形及び光軸を一致させることができる。したがって、高精度な光軸調整が容易に行われたレーザモジュールを提供することができる。
【0026】
また、本発明のレーザモジュールは、角度調整部材が位置調整部材を介さずに直接ベースプレートに溶接で固定されているので、角度調整部材と位置調整部材、位置調整部材とベースプレートを順次溶接した場合と異なり、溶接後の収縮などによる角度調整部材及び位置調整部材の位置ズレが累積して大きくなることがない。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光の位置ズレが小さく、複数のレーザ光のスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0027】
また、本発明のレーザモジュールは、角度調整部材とベースプレートとの溶接が、熱収縮によって位置調整部材をベースプレートに固着する方向の溶接であるので、位置調整部材の位置決めがされるとともに、位置調整部材自体がベースプレートに溶接されなくとも固定されることとなる。このため、固定時における角度調整部材及び位置調整部材の位置ズレがより小さくなる。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光の位置ズレがより小さく、複数のレーザ光のスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0028】
請求項3の発明によれば、本発明のレーザモジュールは、位置調整部材をベースプレートに固着する方向、つまり熱収縮によって位置調整部材が僅かにずれる方向が、フィルタを通る光軸と直交するので、位置調整部材が光軸方向にずれた場合と比較して、光軸のズレに及ぼす誤差を非常に小さくすることができる。特に平面のフィルタであれば、その効果は顕著である。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光の位置ズレがより一層小さく、複数のレーザ光のスポット形及び光軸がより一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0029】
請求項4の発明によれば、本発明のレーザモジュールは、レンズ保持部材の外縁とベースプレートの溝部とが溶接で固定されているので、はんだや接着剤等で固定されている場合と比較して、固定時における溶接部の熱収縮が小さく、固定時におけるレンズ保持部材の位置ズレが小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光のスポット形やフィルタへの入光位置のズレが小さく、複数のレーザ光のスポット形が一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0030】
請求項5の発明によれば、本発明のレーザモジュールは、熱収縮によってレンズ保持部材がベースプレートに固着される方向に溶接されるので、固定時におけるレンズ保持部材の位置ズレがより小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光のスポット形やフィルタへの入光位置のズレがより小さく、複数のレーザ光のスポット形が一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0031】
請求項7の発明によれば、本発明のレーザモジュールは、レンズ保持部材がベースプレートに固着される方向、つまり熱収縮によってレンズ保持部材が僅かにずれる方向がレンズを通る光軸と直交するので、レンズ保持部材が光軸方向にずれた場合と比較して、レンズを通るレーザ光のフォーカスに及ぼす誤差を非常に小さくすることができる。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光の位置ズレがより一層小さく、複数のレーザ光のスポット形及び光軸がより一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0032】
請求項8の発明によれば、本発明のレーザモジュールは、半導体レーザが熱伝導性を有する保持部材を介してベースプレートに配設されているので、半導体レーザを発光させてレーザ光のスポット形を調整する際に、半導体レーザのレーザ光の放射による発熱を熱伝導性の良い保持部材から放熱させることができる。このことにより、発熱による半導体レーザの出力低下、スポット形や波長等の変化を抑えることができ、複数のレーザ光のスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0033】
請求項9の発明によれば、本発明のレーザモジュールの製造方法は、半導体レーザを発光させて、レーザ光のスポット形を調整するとともに、レーザ光の光軸を調整して、レンズ部及びフィルタ部とベースプレートとを固定する工程を有しているので、複数のレーザ光のそれぞれのスポット形及び光軸を所望に調整することができる。このことにより、複数のレーザ光のスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュールを作製することができる。
【0034】
また、本発明のレーザモジュールの製造方法は、第二の固定工程が角度調整部材とベースプレートとを溶接で固定する溶接工程を有しているので、はんだや接着剤等で固定する場合と比較して、容易にしかも強固に固定することができる。しかも、位置調整部材自体がベースプレートに溶接されなくとも固定されることとなる。このことにより、レーザモジュールを安価に作製することができる。更に、角度調整部材が位置調整部材を介さずに直接ベースプレートに溶接で固定されているので、角度調整部材と位置調整部材、位置調整部材とベースプレートを順次溶接した場合と異なり、溶接後の収縮などによる角度調整部材と及び位置調整部材の位置ズレが累積して大きくなることがない。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光の位置ズレが小さく、複数のレーザ光のスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0035】
また、本発明のレーザモジュールの製造方法は、溶接工程における溶接が熱収縮によって位置調整部材をベースプレートに固着する方向の溶接であるので、位置調整部材の位置決めがされるとともに、位置調整部材自体がベースプレートに溶接されなくとも固定されることとなる。このため、固定時における角度調整部材及び位置調整部材の位置ズレがより小さくなる。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光の位置ズレがより小さく、複数のレーザ光のスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0036】
請求項11の発明によれば、本発明のレーザモジュールの製造方法は、ベースプレートの溶接部の厚みが薄く設けられ、この溶接部に向けて加工レーザ光を照射してレーザ溶接を行ったので、角度調整部材とベースプレートとを容易に溶接することができる。このことにより、角度調整部材への負荷が少なく、固定時における角度調整部材の位置ズレをより小さくすることができる。
【0037】
請求項12の発明によれば、本発明のレーザモジュールの製造方法は、第一の固定工程がレンズ部とベースプレートとを溶接で固定する他の溶接工程を有しているので、はんだや接着剤等で固定する場合と比較して、容易にしかも強固に固定することができる。このことにより、レーザモジュールを安価に作製することができる。更に、レンズ部とベースプレートとの固定に溶接を用いているので、固定時における溶接部の熱収縮が小さく、固定時におけるレンズ部の位置ズレが小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光のスポット形の変化が小さく、複数のレーザ光のスポット形が一致して調整されたレーザモジュールを作製することができる。
【0038】
請求項13の発明によれば、本発明のレーザモジュールの製造方法は、他の溶接工程における溶接が熱収縮によってレンズ保持部材ベースプレートに固着する方向の溶接であるので、固定時におけるレンズ保持部材の位置ズレがより小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光のスポット形やフィルタへの入光位置のズレがより小さく、複数のレーザ光のスポット形が一致して調整されたレーザモジュールを得ることができる。
【0039】
請求項15の発明によれば、本発明のレーザモジュールの製造方法は、第一のマウント工程は、半導体レーザが保持部材を介してベースプレートに接続する接続工程を有しているので、ベースプレートに半導体レーザを直接実装した場合と異なり、半導体レーザを保持部材に搭載した時点で半導体レーザの動作確認を行うことが可能となり半導体レーザの動作不良があった場合のロスが小さくなる。また、チップを直接ベースプレートに実装した場合より実装し易く、レーザモジュールを安価に作製することができる。
【0040】
したがって、本発明のレーザモジュール及びその製造方法は、光軸調整が容易に行われたレーザモジュール及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の第1実施形態のレーザモジュールを説明する全体斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態のレーザモジュールを説明する図であって、レーザモジュールの一部を省略した斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態のレーザモジュールを説明する図であって、図3(a)は、図2をY2側から見た正面図であり、図3(b)は、図2をZ1側から見た上面図である。
図4】本発明の第1実施形態のレーザモジュールを説明する図であって、図4(a)は、図2をX2側から見た側面図であり、図4(b)は、図2をY1側から見た背面図である。
図5】本発明の第1実施形態のレーザモジュールの一部を省略した図であって、半導体レーザとベースプレートを示した斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態のレーザモジュールの一部を省略した図であって、図5にレンズ部を示した斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態のレーザモジュールの一部を省略した図であって、図7(a)は、図6にフィルタ部の位置調整部材が載置された斜視図であり、図7(b)は、図6に角度調整部材が載置された斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態のレーザモジュールの製造方法を説明する図であって、図8(a)は、第一のマウント工程を説明する斜視図であり、図8(b)は、第二のマウント工程を説明する斜視図である。
図9】本発明の第1実施形態のレーザモジュールの製造方法の第三のマウント工程を説明する図であって、図9(a)は、位置調整部材を実装する状態を示した斜視図であり、図9(b)は、角度調整部材及びフィルタを実装する状態を示した斜視図である。
図10】本発明の第1実施形態のレーザモジュールの製造方法を説明する図であって、光軸調整工程を説明する斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態のレーザモジュールの製造方法の第一の固定工程及び第二の固定工程を説明する図であって、図11(a)は、図3(b)に示すX−X線における断面図であり、図11(b)は、図3(b)に示すXI−XI線における断面図である。
図12】従来例1における光源ユニットの拡大図である。
図13】従来例2における半導体モジュールを用いた光ピックアップの概略光路を表した図である。
図14】従来例2における半導体レーザ素子の取り付け方法を工程順に示した図であって、図14(a)は、半導体レーザ素子が所定の光学位置に配された状態を示し、図14(b)は、基板を局所加熱している状態を示し、図14(c)は、はんだが固化しスペーサが基板に固定保持された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のレーザモジュール501を説明する斜視図である。図1では、説明を容易にするため、カバー102を省略している。図2は、本発明の第1実施形態のレーザモジュール501を説明する図であって、レーザモジュール501の一部を省略した斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態のレーザモジュール501を説明する図であって、図3(a)は、図2をY2側から見た正面図であり、図3(b)は、図2をZ1側から見た上面図である。図4は、本発明の第1実施形態のレーザモジュール501を説明する図であって、図4(a)は、図2をX2側から見た側面図であり、図4(b)は、図2をY1側から見た背面図である。図5は、本発明の第1実施形態のレーザモジュールの一部を省略した図であって、半導体レーザSDとベースプレート1を示した斜視図である。
【0044】
本発明の第1実施形態のレーザモジュール501は、図1及び図2に示すように、保持部材7のそれぞれに固定保持された3つの半導体レーザSD(RSD、GSD、BSD)が配設されたベースプレート1と、ベースプレート1上に配設された光学部品OPとを備えて構成され、3つの半導体レーザSD(RSD、GSD、BSD)のそれぞれから放射される3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)を光学部品OPにより合波して、ケース101の放射窓101kから外部へ照射できるようになっている。
【0045】
先ず、半導体レーザSDは、赤色(Red)、緑色(Green)、青色(Blue)の3原色の半導体レーザ素子を用い、赤色の半導体レーザRSDは、例えば赤色のレーザ光RLSとして670nmの波長等の光を出射する素子が好適に用いられる。同様にして、緑色の半導体レーザGSDは、緑色のレーザ光GLSとして例えば515nmの波長等の光を出射する素子が好適に用いられ、青色の半導体レーザBSDは、例えば青色のレーザ光BLSとして445nmの波長等の光を出射する素子が好適に用いられる。
【0046】
また、図1ないし図5に示すように、3つの半導体レーザSDのそれぞれ(RSD、GSD、BSD)は、例えばステンレス等の熱伝導性を有する保持部材7のそれぞれ(R7、G7、B7)に固定保持されている。また、保持部材7のそれぞれ(R7、G7、B7)には、半導体レーザ素子に電力を供給するためのランドRDが2ヶ所(RD1、RD2)設けられ、図示はしていないが、半導体レーザSDとランドRD2とがワイヤーボンディングされているとともに、ランドRD2と供給端子STとがワイヤーボンディングされて電気的に接続している。なお、ランドRDは、熱伝導性の良い絶縁部材で保持部材7と電気的に絶縁されている。
【0047】
また、保持部材7は、熱伝導性の良い導電性部材でベースプレート1に固定され、保持部材7とベースプレート1とが電気的にも接続されている。ベースプレート1は、導電性及び熱伝導性の良い材質、例えばステンレス等を用いている。そして、図示はしていないが、ランドRD1とベースプレート1とがワイヤーボンディングされているとともに、ベースプレート1とグランド端子GTとがワイヤーボンディングされて電気的に接続している。このことにより、導電性の良いベースプレート1に半導体レーザSDが接続されているので、アースを確実に行うことができ、半導体レーザSDの発光を安定させることができる。
【0048】
更に、熱伝導性の良いベースプレート1に熱伝導性の良い保持部材7を介して半導体レーザSDが接続されているので、半導体レーザSDからの発熱を熱伝導性の良い保持部材7を介してベースプレート1から放熱させることができ、温度上昇による半導体レーザSDの出力低下、スポット形や波長等の変化を抑制することができる。
【0049】
なお、保持部材7を用いずに、半導体レーザSDを直接ベースプレート1に固定しても良い。この場合は、ベースプレート1上に絶縁層を形成し、更にその上に2箇所のランド(RD1、RD2)を形成してランドRD1とベースプレート1とが電気的に接続していれば良い。また、全ての半導体レーザSDの極性が一致している場合には、半導体レーザSDのグランド端子GTと直接ベースプレート1と接続することも可能である。
【0050】
次に、光学部品OPは、図1及び図2に示すように、3つの半導体レーザSD(RSD、GSD、BSD)のそれぞれに対応した3つのレンズ部3(R3、G3、B3)と、3つのレンズ部3(R3、G3、B3)を透過した3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)を透過させる3つのフィルタ部5(R5、G5、B5)とを有して構成され、3つのレンズ部3(R3、G3、B3)は、3つの半導体レーザSD(RSD、GSD、BSD)からのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)の出射方向に配設され、3つのフィルタ部5(R5、G5、B5)は、3つのレンズ部3(R3、G3、B3)を挟んで3つの半導体レーザSD(RSD、GSD、BSD)と対向する位置に配設されている。
【0051】
図6は、本発明の第1実施形態のレーザモジュールの一部を省略した図であって、図5にレンズ部3を示した斜視図である。レンズ部3は、図2ないし図4、及び図6に示すように、半導体レーザSDから出射されたレーザ光LSを集光またはコリメートするレンズ33(R33、G33、B33)と、レンズ33を保持する筒状のレンズ保持部材34(R34、G34、B34)とから構成される。そして、ベースプレート1に形成された溝部1rにレンズ部3が載置され、レンズ保持部材34の外縁と図5に示す溝部1rの両側の辺1hとが当接してレンズ部3が支持されるとともに、レンズ部3が溝部1rの方向、つまり光軸方向に沿って摺動しながら移動可能になっている。そして、図示はしていないが、レンズ保持部材34の外縁とベースプレート1の溝部1rの底面1bとが溶接で固定されている。このようにして、レンズ部3が、ベースプレート1に対して位置調整可能な形状に形成されているので、レンズ部3を可動することにより半導体レーザSDから放射されるレーザ光LSの焦点位置を調整してフィルタ部5に入射させることができる。なお、ベースプレート1には、3つのレンズ部3(R3、G3、B3)に対応して、溝部1rがそれぞれ設けられているので、3つのレンズ部3(R3、G3、B3)のそれぞれが個別に位置調整可能であることは言う迄ででもない。
【0052】
また、レンズ保持部材34の外縁とベースプレート1の溝部1rとが溶接で固定されているので、はんだや接着剤等で固定されている場合と比較して、固定時における溶接部の熱収縮が小さく、固定時におけるレンズ保持部材34の位置ズレ(Y方向の位置のずれやY方向に傾き等)が小さい。更に、レンズ保持部材34とベースプレート1との溶接が、熱収縮によってレンズ保持部材34がベースプレート1に固着される方向(図6に示すZ2方向)の溶接なので、固定時におけるレンズ保持部材34の位置ズレが更に小さくなる。このため、固定後におけるそれぞれのレーザ光LSのスポット形やフィルタ55への入光位置のズレが小さく、3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)が所望のスポット形に調整されるとともに、それぞれの光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。また、溶接で固定されているので、接着剤で固定する際に発生する揮発性溶剤による半導体レーザSDへのダメージが生じることがない。
【0053】
更に、図示はしていないが、本発明の第1実施形態においては、レンズ保持部材34とベースプレート1との溶接箇所が、1箇所である。このため、数カ所を順次溶接している場合と比較して、固定時における数カ所の溶接によるそれぞれの接続状態の違いが生じなく、しかも、高精度に位置調整された後の位置精度を保持した状態で、速やかにレンズ部3を固定することができる。このため、固定時におけるレンズ保持部材34の位置ズレがより小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LSのスポット形やフィルタ55への入光位置のズレがより小さく、3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)が所望のスポット形に調整されるとともに、それぞれの光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。また、数カ所溶接している場合と比較して、固定時における数カ所の溶接による接続状態の違いがなく、このことにより、固定時における角度調整部材66の位置ズレをより小さくすることができる。
【0054】
また、上述したレンズ保持部材34がベースプレート1に固着される方向(図6に示すZ2方向)、つまり熱収縮によってレンズ保持部材34が僅かにずれる方向がレンズ33を通る光軸と直交するので、レンズ保持部材34が光軸方向にずれた場合と比較して、レンズ33を通るレーザ光LSのフォーカスに及ぼす誤差を非常に小さくすることができる。
【0055】
図7は、本発明の第1実施形態のレーザモジュールの一部を省略した図であって、図7(a)は、図6にフィルタ部5の位置調整部材56が載置された斜視図であり、図7(b)は、図6に角度調整部材66が載置された斜視図である。フィルタ部5は、図2ないし図4、及び図7に示すように、ベースプレート1上に配置された位置調整部材56と、位置調整部材56上に配置された角度調整部材66と、角度調整部材66上に配置されたフィルタ55とを有して構成され、3つのレンズ部3(R3、G3、B3)により集光またはコリメートされた3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)が入光する位置に配設されている。
【0056】
位置調整部材56は、ステンレス製の金属材料からなり、図7(a)に示すように、リング状の形状をしている。この位置調整部材56は、ベースプレート1に載置された状態では固定されず、ベースプレート1の載置面1p上の全ての方向に移動が可能である。このため、後述する角度調整部材66及びフィルタ55が載置された後、位置調整、ひいては光軸調整を行う際に、この位置調整部材56を動かすことで、フィルタ55のXY平面における位置を調整することができる。所謂、2軸の調整が可能である。
【0057】
また、角度調整部材66は、レーザ溶接が可能なステンレス製の金属材料からなり、図2図3及び図4(a)に示すように、下部が球面に形成されており、上面側が段差部を有した平面上に形成されている{図7(b)を参照}。そして、角度調整部材66が位置調整部材56に載置された際に、角度調整部材66の球面が位置調整部材56のリング形状の内縁の一端側であって円形の図6に示す辺56hに接するようにして配設されている。このため、位置調整部材56のリング内形の円形の辺56hと角度調整部材66の球面とが摺動可能になり、角度調整部材66をいずれの角度方向に傾けることができるとともに、いずれの方向に回転させることができる。所謂、3軸の調整が可能である。これにより、後述するフィルタ55が角度調整部材66の段差部であるL字状の2面(底面及び側面)に押しあてられて固定された後、位置調整、光軸調整を行う際に、この角度調整部材66を動かすことで、角度調整部材66に固定されたフィルタ55の角度及び向きを調整することができる。
【0058】
そして、位置調整部材56の位置と角度調整部材66の角度とを動かして、後述するフィルタ55の位置及び角度を調整(所謂、5軸の調整)した後、図示はしていないが、角度調整部材66の底部とベースプレート1とを溶接(貫通溶接)で固定している。このため、貫通溶接後の冷却時における熱収縮を利用して、角度調整部材66とベースプレート1に挟まれた位置調整部材56も位置決めがされるとともに、位置調整部材56自体がベースプレート1に溶接されなくとも固定されることとなる。このため、角度調整部材66と位置調整部材56、位置調整部材56とベースプレート1を順次溶接した場合と異なり、溶接後の収縮などによる角度調整部材66及び位置調整部材56の位置ズレ(XY平面における位置のずれ及び傾きの角度のずれ)が累積して大きくなることがない。したがって、固定時における角度調整部材66の位置ズレが小さくなる。
【0059】
更に、図示はしていないが、本発明の第1実施形態においては、角度調整部材66とベースプレート1との溶接箇所が最少の1箇所であるので、数カ所を順次溶接している場合と比較して、固定時における数カ所の溶接によるそれぞれの接続状態の違いが生じなく、しかも、高精度に位置調整された後の位置精度を保持した状態で、速やかにフィルタ部5を固定することができる。このことにより、固定時における角度調整部材66の位置ズレをより小さくすることができる。
【0060】
フィルタ55は、図1ないし図4、及び図7に示すように、矩形で板状の形状をしており、レンズ部3からの集光またはコリメートされたレーザ光LSに対して、フィルタ55の主面を約45°傾斜して配置されている。そして、フィルタ55の主面の反対側主面には、Al/Si、SiO/Ta等の多層膜を用いたレーザ光LSの高反射コーティングが施されている。このため、レンズ部3からの集光またはコリメートされたレーザ光LSがフィルタ55内を透過した後、この高反射コーティングにより、レーザ光LSの光路が変えられる。
【0061】
また、位置調整部材56や角度調整部材66を動かすことで、フィルタ55の位置や角度を調整することができるので、フィルタ55を透過及び反射するレーザ光LSの位置調整や角度調整を行うことができる。このことにより、3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)の光軸を自由に調整することができ、簡単な構成で3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形及び光軸を一致させることができる。
【0062】
更に、角度調整部材66がベースプレート1に溶接で強固に固定され、しかも1箇所で固定されているので、固定後におけるそれぞれのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)の位置ズレがより小さく、3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形及び光軸がより一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。なお、フィルタ55として、誘電体に多層膜をコーティングしたタイプを用いているが、光学ガラスの組成を調整した色ガラスフィルタやガラスに金属薄膜をコーティングしたタイプ等、様々なタイプを用いることができる。
【0063】
また、位置調整部材56をベースプレート1に固着する方向、つまり熱収縮によって位置調整部材56が僅かにずれる方向が、フィルタ55を通る光軸と直交するので、位置調整部材56が光軸方向にずれた場合と比較して、光軸のズレに及ぼす誤差を非常に小さくすることができる。特に平面のフィルタ55であれば、その効果は顕著である。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)の位置ズレがより一層小さく、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形及び光軸がより一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。これにより、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)が混合された1本のビーム光を形成することが可能となり、任意の色度を設定することが可能となる。
【0064】
放射窓101kは、図1に示すように、矩形で板状の形状をしており、3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)が合波されたレーザ光LSが透過する位置に配置され、後述するケース101と接着している。また、放射窓101kのレーザ光LSが入光する側の主面には、レーザ光LSの反射を抑えるために、Al/Si、SiO/Ta等の多層膜の低反射コーティングが施されている。また、放射窓101kとケース101との接着には、KO-PbO-SiO系やBi−B系等の低融点ガラスを用いている。なお、放射窓101kは、硼珪酸系のガラスを用いているが、特に硼珪酸系のガラスに限るものではない。
【0065】
ケース101及び図示していないカバー102は、熱伝導性の良いステンレス製の金属材料からなり、ケース101は、図1に示すように、矩形で箱状の形状をしており、3つの半導体レーザSD、ベースプレート1及び光学部品OPを収納している。また、ケース101の一面側には、3つの供給端子ST及び1つのグランド端子GTが挿入される孔が設けられており、3つの供給端子ST及び1つのグランド端子GTが孔にそれぞれ挿入された後に、孔を塞ぐようにして絶縁性の低融点ガラス等で、3つの供給端子ST及び1つのグランド端子GTがケース101に固定されている。また、カバー102は、図示はしていないが、矩形で板状の形状をしており、ケース101の開口部を覆うように配置され、低融点ガラス等でケース101に固定されている。また、図示していないカバー102は、対象物に反射して戻ってくる反射戻光を防ぐために、光軸に対して数度、傾けている場合がある。
【0066】
以上により、本発明のレーザモジュール501は、位置調整可能な形状に形成されたレンズ部3と、位置調整部材56及び角度調整部材66を有したフィルタ部5とを備えているので、レンズ部3により半導体レーザSDから放射されるレーザ光LSの焦点位置を調整してフィルタ部5に入射させ、フィルタ部5によりフィルタ55を透過するレーザ光LSの角度調整を行うことができる。このことにより、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形のそれぞれを一つに合わせることができ、簡単な構成で複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形及び光軸を一致させることができる。したがって、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)が所望のスポット形に調整されるとともに、それぞれの光軸を同一光軸上に高精度に調整する光軸調整が容易に行われたレーザモジュール501を提供することができる。
【0067】
また、角度調整部材66が位置調整部材56を介さずに直接ベースプレート1に溶接で固定されているので、角度調整部材66と位置調整部材56、位置調整部材56とベースプレート1を順次溶接した場合と異なり、溶接後の収縮などによる角度調整部材66及び位置調整部材56の位置ズレ(XY平面における位置のずれ及び傾きの角度のずれ)が累積して大きくなることがない。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)の位置ズレが小さく、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。
【0068】
また、角度調整部材66とベースプレート1との溶接が、熱収縮によって位置調整部材56をベースプレート1に固着する方向の溶接であるので、位置調整部材56の位置決めがされるとともに、位置調整部材56自体がベースプレート1に溶接されなくとも固定されることとなる。このため、固定時における角度調整部材66及び位置調整部材56の位置ズレがより小さくなる。固定後におけるそれぞれのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)の位置ズレがより小さく、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形及び光軸がより一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。
【0069】
また、位置調整部材56をベースプレート1に固着する方向、つまり熱収縮によって位置調整部材56が僅かにずれる方向が、フィルタ55を通る光軸と直交するので、位置調整部材56が光軸方向にずれた場合と比較して、光軸のズレに及ぼす誤差を非常に小さくすることができる。特に平面のフィルタ55であれば、その効果は顕著である。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)の位置ズレがより一層小さく、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形及び光軸がより一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。
【0070】
また、レンズ保持部材34の外縁とベースプレート1の溝部1rとが溶接で固定されているので、はんだや接着剤等で固定されている場合と比較して、固定時における溶接部の熱収縮が小さく、固定時におけるレンズ保持部材34の位置ズレが小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形やフィルタ55への入光位置のズレが小さく、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)が所望のスポット形に調整されるとともに、それぞれの光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。
【0071】
また、熱収縮によってレンズ保持部材34がベースプレート1に固着される方向に溶接されるので、固定時におけるレンズ保持部材34の位置ズレがより小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形やフィルタ55への入光位置のズレがより小さく、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)が所望のスポット形に調整されるとともに、それぞれの光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。
【0072】
また、レンズ保持部材34がベースプレート1に固着される方向、つまり熱収縮によってレンズ保持部材34が僅かにずれる方向がレンズ33を通る光軸と直交するので、レンズ保持部材34が光軸方向にずれた場合と比較して、レンズ33を通るレーザ光LSのフォーカスに及ぼす誤差を非常に小さくすることができる。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)の位置ズレがより一層小さく、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形及び光軸がより一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。
【0073】
また、半導体レーザSDが熱伝導性を有する保持部材7を介してベースプレート1に配設されているので、半導体レーザSDを発光させてレーザ光LSのスポット形を調整する際に、半導体レーザSDのレーザ光LSの放射による発熱を熱伝導性の良い保持部材7から放熱させることができる。このことにより、発熱による半導体レーザSDの出力低下、スポット形や波長等の変化を抑えることができ、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる。
【0074】
次に、製造方法について説明する。図8は、本発明の第1実施形態のレーザモジュールの製造方法を説明する図であって、図8(a)は、第一のマウント工程MP1を説明する斜視図であり、図8(b)は、第二のマウント工程MP2を説明する斜視図である。図9は、本発明の第1実施形態のレーザモジュールの製造方法の第三のマウント工程MP3を説明する図であって、図9(a)は、位置調整部材56を実装する状態を示した斜視図であり、図9(b)は、角度調整部材66及びフィルタ55を実装する状態を示した斜視図である。図10は、本発明の第1実施形態のレーザモジュールの製造方法を説明する図であって、光軸調整工程JP5を説明する斜視図である。図11は、本発明の第1実施形態のレーザモジュールの製造方法の第一の固定工程FP6及び第二の固定工程FP7を説明する図であって、図11(a)は、図3(b)に示すX−X線における断面図であり、図11(b)は、図3(b)に示すXI−XI線における断面図である。なお、図11に示す加工レーザ光KLSは、説明を容易にするため、加工時の様子を示したものである。
【0075】
本発明の第1実施形態のレーザモジュール501の製造方法は、図8及び図9に示すように、半導体レーザSDがベースプレート1に配設される第一のマウント工程MP1と、レンズ部3がベースプレート1上に配設される第二のマウント工程MP2と、フィルタ部5がベースプレート1上に配設される第三のマウント工程MP3と、半導体レーザSDを発光させた後にレンズ部3を移動してレーザ光LSのスポット形を調整するスポット調整工程SP4と、続いてフィルタ部5を移動してレーザ光LSの光軸を調整する光軸調整工程JP5と、レンズ部3とベースプレート1とを固定する第一の固定工程FP6と、フィルタ部5とベースプレート1とを固定する第二の固定工程FP7と、を有している。
【0076】
本発明の第1実施形態のレーザモジュール501の製造方法は、先ず、第一のマウント工程MP1で、図8(a)に示すように、半導体レーザSDが固定保持された保持部材7をベースプレート1に実装する。そして、熱伝導性の良い導電性部材、例えばはんだや導電性接着剤等で、保持部材7とベースプレート1とを固定する。このようにして、保持部材7を介してベースプレート1に接続する接続工程を有しているので、半導体レーザSDのチップを直接ベースプレート1に実装するより実装し易く、レーザモジュール501を安価に作製することができる。なお、3つの半導体レーザSD(RSD、GSD、BSD)は、それぞれの保持部材7の実装を順次行うが、それぞれの保持部材7のベースプレート1への固定は、1つの工程で行っている。
【0077】
次に、第二のマウント工程MP2で、図8(b)に示すように、レンズ33を有したレンズ部3をベースプレート1に形成された溝部1rに実装する。その際には、レンズ部3のレンズ保持部材34の外縁が溝部1rの開口側の両長辺に当接するようになる。このため、レンズ部3が溝部1rの長手方向(図8(b)に示すY方向)に沿って摺動しながら移動することが可能である。
【0078】
次に、第三のマウント工程MP3で、図9に示すように、フィルタ55を有したフィルタ部5をベースプレート1上に配設する。つまり、図9(a)に示すように、リング状の位置調整部材56をベースプレート1の載置面1p上に実装した後、図9(b)に示すように、下部が球面に形成された角度調整部材66を角度調整部材66の球面が位置調整部材56のリング形状の内側の辺56hに接するようにして実装する。このため、位置調整部材56のリング形状の内側の辺56hと角度調整部材66の球面とが摺動可能になり、角度調整部材66をいずれの角度方向に傾けることが可能である。
【0079】
また、フィルタ55は、角度調整部材66の段差部であるL字状の2面(底面及び側面)に押しあてられて、低融点ガラス等により角度調整部材66に予め固定されている。これにより、角度調整部材66をベースプレート1に実装することで、フィルタ55がベースプレート1上に配設されることとなる。このことにより、角度調整部材66とフィルタ55とを別々に実装する場合と比較して、フィルタ55の実装がし易く、レーザモジュール501を安価に作製することができる。
【0080】
次に、半導体レーザSDを発光させた後、スポット調整工程SP4で、図10に示すY軸方向YD(Y1方向及びY2方向)にレンズ部3を移動してレーザ光LSのスポット形を調整する。スポット形の調整は、フィルタ55及び放射窓101kを透過して、レーザモジュール501外に放射されたレーザ光LS(図1に示す)を、ビームプロファイラの受光部で受けて、ビームプロファイラで受光したレーザ光LSのビーム径の測定を行いながら、レンズ部3をY軸方向YD(Y1方向及びY2方向)に移動して、所望のビーム径になるように調整を行う。このスポット形の調整は、3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)に対してそれぞれ行う。
【0081】
次に、半導体レーザSDを発光させた後、光軸調整工程JP5で、位置調整部材56をベースプレート1の載置面1p上の全ての方向に移動するとともに、角度調整部材66の角度をあらゆる向きにすることにより、レーザ光LSのスポット形の位置を移動させて光軸の調整を行う。この光軸の調整は、3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)に対して行い、3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形の位置が所望の範囲内に収まるように繰り返して行う。場合によっては、スポット形の調整、言い換えるとビーム径の調整も行なうことも生じる。なお、光軸の調整もスポット形の調整と同様にして、ビームプロファイラによりスポット径の位置測定を行うことにより達成される。なお、図示はしていないが、角度調整部材66には、この光軸調整工程JP5において、角度調整部材66の安定した保持を可能にするため、クランプ穴が設けられている。更に、調整時の位置確認用として、マーク(目印)が付けられている。
【0082】
このようにして、各3つのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)に対してスポット調整工程SP4及び光軸調整工程JP5を行って、スポット形及び光軸を所望の範囲に調整する。なお、3つ以上のレーザ光LSを用いた場合でも、同様なことを行い、同一軸上に調整することができる。
【0083】
最後に、スポット調整工程SP4及び光軸調整工程JP5でスポット形及び光軸を所望の範囲に調整した後、第一の固定工程FP6及び第二の固定工程FP7を行う。第一の固定工程FP6は、レンズ部3をベースプレート1に固定する工程であって、第一の溶接工程MT1で、レンズ保持部材34の外縁とベースプレート1の溝部1rの底面1bとを溶接して、レンズ部3をベースプレート1に固定している。また、第一の溶接工程MT1における溶接は、一箇所のみ行っている。
【0084】
これによれば、本発明のレーザモジュール501の製造方法は、レンズ部3とベースプレート1とを溶接で固定しているので、はんだや接着剤等で固定する場合と比較して、容易にしかも強固に固定することができる。このため、レーザモジュール501を安価に作製することができる。更に、レンズ部3とベースプレート1との固定に溶接を用いているので、固定時における溶接部の熱収縮が小さく、固定時におけるレンズ部3の位置ズレが小さくなる。また、溶接で固定されているので、接着剤で固定する際に発生する揮発性溶剤による半導体レーザSDへのダメージが生じることがない。
【0085】
また、第一の溶接工程MT1における溶接が一箇所であるので、数カ所を順次溶接している場合と比較して、製造工程が少なくなり、レーザモジュール501を安価に作製することができる。更に、レンズ部3とベースプレート1との溶接箇所が1箇所であるので、数カ所で溶接している場合と比較して、固定時における数カ所の溶接によるそれぞれの接続状態の違いが生じなく、しかも、高精度に位置調整された後の位置精度を保持した状態で、速やかにレンズ部3を固定することができる。このため、固定時におけるレンズ部3の位置ズレがより小さくなる。したがって、固定後におけるそれぞれのレーザ光LSの位置ズレがより小さく、複数のレーザ光LSが所望のスポット形に調整されるとともに、それぞれの光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を作製することができる。
【0086】
更に、第一の溶接工程MT1における溶接が熱収縮によってレンズ保持部材34がベースプレート1に固着する方向の溶接であるので、固定時におけるレンズ保持部材34の位置ズレがより小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形やフィルタ55への入光位置のズレがより小さく、複数のレーザ光LS(RLS、GLS、BLS)のスポット形が一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる
また、第一の溶接工程MT1における溶接は、図11(a)に示すように、レンズ部3のレンズ保持部材34が配設されるベースプレート1の溝部1r側とは反対側から、厚みが薄く設けられた第一の溶接部11wに向けて加工レーザ光KLSを照射して、レンズ部3とベースプレート1とを貫通溶接(レーザ溶接)することにより達成される。これにより、レンズ部3とベースプレート1とを容易に溶接することができる。このことにより、レンズ部3への負荷が少なく、固定時におけるレンズ部3の位置ズレをより小さくすることができる。なお、図11(a)には、第一の溶接部11wの一部及びレンズ保持部材34の一部が加工レーザ光KLSにより溶融され、その後固化した溶接部分Wを示している。
【0087】
第二の固定工程FP7は、フィルタ部5をベースプレート1に固定する工程であって、第二の溶接工程MT2で、角度調整部材66の球面に形成された下部とベースプレート1の載置面1pとを溶接して、フィルタ部5をベースプレート1に固定している。また、第二の溶接工程MT2における溶接は、一箇所のみ行っている。
【0088】
これによれば、本発明のレーザモジュール501の製造方法は、角度調整部材66とベースプレート1とを溶接で固定しているので、はんだや接着剤等で固定する場合と比較して、容易にしかも強固に固定することができる。しかも、位置調整部材56自体がベースプレート1に溶接されなくとも固定されることとなる。このため、レーザモジュール501を安価に作製することができる。更に、角度調整部材66が位置調整部材56を介さずに直接ベースプレート1に溶接で固定されているので、角度調整部材66と位置調整部材56、位置調整部材56とベースプレート1を順次溶接した場合と異なり、溶接後の収縮などによる角度調整部材66と及び位置調整部材56の位置ズレが累積して大きくなることがない。
【0089】
更に、第二の溶接工程MT2における溶接が熱収縮によって位置調整部材56をベースプレート1に固着する方向の溶接であるので、位置調整部材56の位置決めがされるとともに、位置調整部材56自体がベースプレート1に溶接されなくとも固定されることとなる。このため、固定時における角度調整部材66及び位置調整部材56の位置ズレがより小さくなる。また、溶接で固定されているので、接着剤で固定する際に発生する揮発性溶剤による半導体レーザSDへのダメージが生じることがない。
【0090】
また、第二の溶接工程MT2における溶接が一箇所であるので、数カ所を順次溶接している場合と比較して、製造工程が少なくなり、レーザモジュール501を安価に作製することができる。更に、角度調整部材66とベースプレート1との溶接箇所が1箇所であるので、数カ所を順次溶接している場合と比較して、固定時における数カ所の溶接によるそれぞれの接続状態の違いが生じなく、しかも、高精度に位置調整された後の位置精度を保持した状態で、速やかにフィルタ部5を固定することができる。このため、固定時における角度調整部材66の位置ズレがより小さくなる。したがって、固定後におけるそれぞれのレーザ光LSの位置ズレがより小さく、複数のレーザ光LSのスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を作製することができる。
【0091】
また、第二の溶接工程MT2における溶接は、図11(b)に示すように、位置調整部材56に囲まれたベースプレート1の載置面1p側とは反対側から、厚みが薄く設けられた第二の溶接部12wに向けて加工レーザ光KLSを照射して、角度調整部材66とベースプレート1とを貫通溶接(レーザ溶接)することにより達成される。これにより、角度調整部材66とベースプレート1とを容易に溶接することができる。このことにより、角度調整部材66への負荷が少なく、固定時における角度調整部材66の位置ズレをより小さくすることができる。なお、図11(b)には、第二の溶接部12wの一部及び角度調整部材66の一部が加工レーザ光KLSにより溶融され、その後固化した溶接部分Wを示している。
【0092】
以上により、本発明のレーザモジュール501の製造方法は、半導体レーザSDを発光させて、レーザ光LSのスポット形を調整するとともに、レーザ光LSの光軸を調整して、レンズ部3及びフィルタ部5とベースプレート1とを固定する工程を有しているので、複数のレーザ光LSのそれぞれのスポット形及び光軸を所望に調整することができる。このことにより、複数のレーザ光LSのスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を作製することができる。
【0093】
また、第一のマウント工程MP1は、半導体レーザSDが保持部材7を介してベースプレート1に接続する接続工程を有しているので、半導体レーザSDのチップを直接ベースプレート1に実装するより実装し易く、レーザモジュール501を安価に作製することができる。
【0094】
また、第一の固定工程FP6がレンズ部3とベースプレート1とを溶接で固定する第一の溶接工程MT1を有しているので、はんだや接着剤等で固定する場合と比較して、容易にしかも強固に固定することができる。このことにより、レーザモジュール501を安価に作製することができる。更に、レンズ部3とベースプレート1との固定に溶接を用いているので、固定時における溶接部の熱収縮が小さく、固定時におけるレンズ部3の位置ズレが小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LSのスポット形の変化が小さく、複数のレーザ光LSのスポット形が一致して調整されたレーザモジュール501を作製することができる。
【0095】
更に、第一の溶接工程MT1における溶接が熱収縮によってレンズ保持部材34がベースプレート1に固着する方向の溶接であるので、固定時におけるレンズ保持部材34の位置ズレがより小さい。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LSのスポット形やフィルタ55への入光位置のズレがより小さく、複数のレーザ光LSのスポット形が一致して調整されたレーザモジュール501を得ることができる
また、第二の固定工程FP7が角度調整部材66とベースプレート1とを溶接で固定する第二の溶接工程MT2を有しているので、はんだや接着剤等で固定する場合と比較して、容易にしかも強固に固定することができる。しかも、位置調整部材56自体がベースプレート1に溶接されなくとも固定されることとなる。このことにより、レーザモジュール501を安価に作製することができる。更に、角度調整部材66が位置調整部材56を介さずに直接ベースプレート1に溶接で固定されているので、角度調整部材66と位置調整部材56、位置調整部材56とベースプレート1を順次溶接した場合と異なり、溶接後の収縮などによる角度調整部材66と及び位置調整部材56の位置ズレが累積して大きくなることがない。このことにより、固定後におけるそれぞれのレーザ光LSの位置ズレが小さく、複数のレーザ光LSのスポット形及び光軸が一致して調整されたレーザモジュール501を作製することができる。
【0096】
更に、第二の溶接工程MT2における溶接が熱収縮によって位置調整部材56をベースプレート1に固着する方向の溶接であるので、位置調整部材56の位置決めがされるとともに、位置調整部材56自体がベースプレート1に溶接されなくとも固定されることとなる。このため、固定時における角度調整部材66及び位置調整部材56の位置ズレがより小さくなる。
【0097】
また、第二の溶接部12wの厚みが薄く設けられ、第二の溶接部12wに向けて加工レーザ光KLSを照射して貫通溶接(レーザ溶接)を行ったので、角度調整部材66とベースプレート1とを容易に溶接することができる。このことにより、角度調整部材66への負荷が少なく、固定時における角度調整部材66の位置ズレをより小さくすることができる。
【0098】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0099】
<変形例1>
上記第1実施形態では、半導体レーザSDとして、赤色(Red)、緑色(Green)、青色(Blue)の3原色の半導体レーザSD(RSD、GSD、BSD)を用いた構成でであったが、3原色以外に黄色を加えて4色にした場合や緑色を2色にして4色にした場合等、半導体レーザSDの数を増やした構成であっても良い。
【0100】
<変形例2>
上記第1実施形態では、レンズ部3とベースプレート1と固定や角度調整部材66とベースプレート1との固定に、好適にレーザ溶接を用いたが、レーザ溶接に限るものではなく、例えば抵抗溶接等の他の方法を用いても良い。
【0101】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 ベースプレート
1r 溝部
11w 第一の溶接部
12w 第二の溶接部
3、R3、G3、B3 レンズ部
33、R33、G33、B33 レンズ
34、R34、G34、B34 レンズ保持部材
5、R5、G5、B5 フィルタ部
55 フィルタ
56 位置調整部材
66 角度調整部材
7、R7、G7、B7 保持部材
501 レーザモジュール
MP1 第一のマウント工程
MP2 第二のマウント工程
MP3 第三のマウント工程
SP4 スポット調整工程
JP5 光軸調整工程
FP6 第一の固定工程
FP7 第一の固定工程
MT1 第一の溶接工程
MT2 第二の溶接工程
SD、RSD、GSD、BSD 半導体レーザ
LS、RLS、GLS、BLS レーザ光 KLS 加工レーザ光
OP 光学部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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