(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923166
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】PZTを用いたOCTプローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20160510BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
A61B1/00 300D
G01N21/17 620
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-515775(P2014-515775)
(86)(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公表番号】特表2014-519393(P2014-519393A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】KR2012006295
(87)【国際公開番号】WO2013172509
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2013年7月31日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0052617
(32)【優先日】2012年5月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512323756
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ インダストリアル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(72)【発明者】
【氏名】チャ,ヒュン ロク
(72)【発明者】
【氏名】イム,ダエ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ジァエ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ヒョン ウック
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,タェ ウォン
【審査官】
安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−504557(JP,A)
【文献】
実開昭64−013021(JP,U)
【文献】
特開平10−104146(JP,A)
【文献】
特開平08−261915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を備えて一定長さを有する外部ケースと、
圧電素子からなる一定長さを有する中空型の本体と、AC電源電圧が供給されて前記本体が振動できるように、前記本体の外周面に周り方向に沿って配置されてケーブルが連結された複数の電極とを有する振動体と、
前記本体の一部を取り囲むように一定高さを有する支持部材を介して前記本体の外側に一定間隔離隔配置され、前記ケースの内部に固定設置されて前記振動体の一部を固定するベースと、及び
被写体に光を照射して前記被写体から反射または散乱した光を受光できるように前記本体の内部を通り抜けるように配置され、前記本体の一端部に一定深さ挿入されるフェルールによって長さの中間が固定される光ファイバーとを含み、
前記ベースは、前記支持部材の端部が前記本体の振幅が0の地点を支持し、
前記支持部材は、前記本体総長の3/20の地点を支持しており、
前記ベースの外部面には、前記電極と連結されるケーブルが挿入安着するように長さ方向に沿って一定深さ切開形成されるケーブル配置溝を備えることを特徴とするPZTを用いたOCTプローブ。
【請求項2】
前記内部空間には、前記光ファイバーの端部の前方に前記光ファイバーから照射される光を集光できるように、レンズ部がさらに備えられることを特徴とする請求項1に記載のPZTを用いたOCTプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PZTを用いたOCTプローブに関するもので、さらに詳しくは振動体を圧電素子と構成して正弦波を印加することで振動体の振動によりスキャン範囲が広くなった映像を獲得することができ、上記振動体を固定するベースの固定位置を最適化することで振動体の振動減衰を最小化することができるPZTを用いたOCTプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、コンピューター断層撮影機や自己共鳴映像撮影機より構造が簡単ながら、超音波映像撮影機より高い解像度を提供することのできる光干渉性断層撮影装置(OCT:Optical Coherence Tonograpy)の開発が進んでいる。
【0003】
上記光干渉性断層撮影装置は、自然光に近い低コーヒアランス(low coherence)光を生体のような多重散乱物質に照射し、物質から反射した光を検出して生体に対する断層画像を得る装置である。
【0004】
上記光干渉性断層撮影装置は、プローブ(Probe)を用いて生体のような多重散乱物質に光を照射することで、所望の被写体の断層を撮影することとなる。このようなプローブは、ポリゴンミラー、ガルバノミラー、MEMSミラーを用いた方法など、構造的に多様な方法が試みられている実情である。特に、被写体の断層撮影をするためにプローブに光ファイバーを適用する方式に関する研究が活発に行われている。
【0005】
しかし、従来の光ファイバーを用いたプローブは、スキャン面積に対して全体的にスキャンを行うことができず、部分的に行われていた。
【0006】
従って、スキャンしようとする領域について、より正確な情報を得ることができず、全体的にスキャンを行おうとする場合、スキャン時間が長くかかってしまうという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−272674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためのもので、正弦波の印加の際に上下左右に振動する振動体を、圧電素子を用いてプローブを構成することで、被写体に照射する光のスキャン範囲を広めることのできるPZTを用いたOCTプローブを提供することにある。
【0009】
また、本発明は、振動体が振動できるように振動体を固定するベースの固定位置を最適化することで、より広いスキャン範囲を確保することのできるPZTを用いたOCTプローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するための本発明は、内部空間を備えて一定長さを有する外部ケースと、圧電素子からなる一定長さを有する中空型の本体と、正弦波の電圧が供給されて上記本体が振動できるように上記本体の外周面に周り方向に沿って配置されてケーブルが連結された複数の電極を有する振動体と、上記本体の一部を取り囲むように一定高さを有する支持部材を介して上記本体の外側に一定間隔離隔配置され、上記ケースの内部に固定設置されて上記振動体の一部を固定するベースと、及び被写体に光を照射して上記被写体から反射または散乱した光が受光できるように上記本体の内部を通り抜けるように配置され、上記本体の一端部に一定深さ挿入されるフェルールにより長さの中間が固定される光ファイバーと、を含むPZTを用いたOCTプローブを提供する。好ましくは、上記ベースは、上記支持部材の端部が
前記本体の振幅が0の地点を支持し、前記支持部材は、前記本体総長の3/20の地点を支持
し、前記ベースの外部面には、前記電極と連結されるケーブルが挿入安着するように長さ方向に沿って一定深さ切開形成されるケーブル配置溝を備える。
【0013】
好ましくは、上記内部空間には上記光ファイバーの端部の前方に上記光ファイバーから照射される光を集光できるようにレンズ部がさらに備えられることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、正弦波の印加の際に上下左右に振動する振動体を圧電素子を用いてプローブを構成することで、2次元映像は勿論3次元映像を獲得することができるという効果がある。
【0016】
また、本発明は、振動体が振動できるように振動体を固定するベースの固定位置を最適化することで、より広いスキャン範囲を確保することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるPZTを用いたOCTプローブを示した全体斜視図である。
【
図3a】本発明によるPZTを用いたOCTプローブにおいて振動体を固定するベースの固定位置による振幅の変化を示したグラフであって、正弦波の振幅が0以前の地点を固定する場合を示したグラフである。
【
図3b】本発明によるPZTを用いたOCTプローブにおいて振動体を固定するベースの固定位置による振幅の変化を示したグラフであって、正弦波の振幅が0の地点を固定する場合を示したグラフである。
【
図3c】本発明によるPZTを用いたOCTプローブにおいて振動体を固定するベースの固定位置による振幅の変化を示したグラフであって、正弦波の振幅が0の地点を過ぎて固定する場合を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照してさらに詳しく説明する。
【0019】
以下で、発明の理解のために図面符号を与えるにおいて、同じ構成要素については異なる図面に示された場合にも同じ図面符号を使用することとする。
【0020】
本発明の好ましい実施例によるPZTを用いたOCTプローブ100は、電圧の供給の際に、上下左右に振動する振動体120を圧電素子(PZT)を用いて構成することで、簡単な構造を通じて振動体120の横軸及び縦軸の駆動だけで3次元の映像まで得られるものであって、外部ケース110、振動体120、ベース130、パーレル150及び光ファイバー140を含む。
【0021】
上記振動体120は、電圧の供給の際に上記パーレル150により長さの中間が固定された光ファイバー140を上下左右に振動させるもので、一定長さを有する中空型の本体122と、外部から電圧の供給を受けることができるようにケーブル126が連結された複数の電極124とを含む。上記本体122は、PbZrO4のような圧電素子からなっており、内部には上記光ファイバー140が配置されて通過するように中空型に備えられる。このような本体122は、一端部が上記ベース130により固定されることにより、電圧の印加の際にパーレル150が結合された他端部が所定の幅に振動できるようにする。そして、上記本体122の外周面には外部から電圧の供給を受けるように、ケーブル126が連結された複数の電極124が周り方向に沿って備えられる。
【0022】
このような複数の電極124は、本体122の周り方向に沿って互いに一定間隔離隔配置されて相互通電しないようにし、上記ケーブル126を通じて電圧が供給されると、上記本体122が縦軸及び横軸に同時に振動して円形の軌跡を成すように4極に備えられることが好ましい。
【0023】
即ち、上記4極の電極を2つずつ一対にしてX軸とY軸に分けて各軸にサイン波(Sine wave)の
AC電源
電圧を供給すると上記振動体120は振動を始める。上記振動体120が動作すると、これは振動体120に振幅が始まったということであって、パーレル150によって固定された光ファイバー140が振幅により円形に動作することとなる。
【0024】
この際、上記光ファイバー140から出力された光が正確な正円を作るためには、上記振動体120に供給される電圧と電流の周波数が同一である必要がある。供給された電圧と電流の周波数が同一で、位相が同相になると共振が生じるが、一般的に共振の際に振幅が最も大きく発生する。そしてこのような正円を作るためには、X軸とY軸の共振の位相が90度の差を有さなければならない。
【0025】
上記ベース130は、上記パーレル150が結合された他端部が自由に振動できるように上記振動体120の一部を取り囲む固定する役割をし、パーレル150が結合された振動体120の端部が所定の幅に振動できるように、上記外部ケース110の内部面と離隔された状態を保持する空間を提供する。即ち、上記ベース130は、一定長さを備えて上記本体122の外径より大きい内径を有する円筒形に備えられ、
図2に図示されたとおり、一定高さを有する支持部材132により上記本体122と互いに連結されている。
【0026】
これによって、上記ベース130が外部ケース110により結合された状態で上記電極124に電圧を印加すると、上記振動体120は、上記支持部材132により本体122の一端部が固定されて、パーレル150が結合された他端部が自由に振動が起きることが可能となる。
【0027】
一方、上記ベース130は、外周面に周り方向に沿って長さ方向に一定深さ切開形成された複数のケーブル配置溝134が備えられる。このようなケーブル配置溝134は、上記振動体120に電圧を供給するために電極124と連結されたケーブル126を挿入配置するためのものである。これは、上記ベース130と外部ケース110の結合時に上記ベース130の外周面と外部ケース110の内部面が互いに面接することになるが、上記ケーブル126をケーブル配置溝134に挿入配置して突出しないようにすることで、ベース130と外部ケース110が面接することによってケーブル126が損傷することを防ぎ、容易に外部ケース110にベース130が結合できるようにするためである。
【0028】
この際、上記ベース130及び支持部材132は、作製の便宜のために、上記本体122と相互一体に形成されることが好ましい。しかし、これに限定するものではなく、上記ベース130及び支持部材132のみを一体に形成して上記本体122に上記支持部材132の端部を接着剤などを用いて固定する形態に備えられることも可能である。
【0029】
上記パーレル150は、上記本体122の端部に一定深さ挿入されて上記本体122の内部を通過する光ファイバー140の長さの中間を掴む役割をする。一方、本発明において光ファイバー140は、光源と連結されて被写体に光を照射して、被写体から反射または散乱した光を受光する役割をするもので、上記光源と連結されない他端部側が被服が剥がれた状態で加工される。この際、上記被服が剥がれた部分は、上記パーレル150の内部を通過するようにして被服が剥がれた部分がパーレル150により位置が固定されて外部ケース110の内部の中央に配置されるようにすることで、被服が剥がれた光ファイバー140のコア部分が振動体120の振動時に外部ケース110の内部面に接触して破損することを防ぐ。
【0030】
上記外部ケース110は、内部空間を備えて一定長さを有するように備えられるもので、上記振動体120に光ファイバー140が通過したパーレル150とベース130がそれぞれ結合された組立体を、上記内部空間に安着して外部環境から保護しながら上記ベース130を固定する役割をする。特に、被服を剥がした光ファイバー140のコア部分は壊れやすいため、これを保護し、使用者が上記組立体を容易に把持できるようにする。
【0031】
一方、上記外部ケース110の端部側には、レンズ160が備えられて上記光ファイバー140から照射された光を集光できるようにすることが好ましい。このようなレンズ160は、被服が剥がれた光ファイバー140の端部の前方側に位置する。
【0032】
このような本発明によると、正弦波の印加の際に上下左右に振動する振動体を、圧電素子を用いてプローブを構成することで、振動体120の横軸、縦軸の駆動だけでも2次元映像は勿論、3次元映像を獲得することができるという効果がある。
【0033】
一方、本発明によるPZTを用いたOCTプローブ100は、外部ケース110に結合されて振動体120の端部側を固定支持するベース130の位置−さらに詳しくは、本体122に連結される支持部材132の端部の位置が上記正弦波の振幅が0の地点に位置するようにすることが好ましい。これは、正弦波の電圧の印加時に上記振動体120が上下左右に振動しながら円形に振動することとなるが、本発明では正弦波の振幅が0の地点に振動体120を支持する構造を形成することで、振動減衰を最小化してパーレル150に固定された光ファイバー140の振動を最大化することが可能となる。好ましくは、上記ベース130は、支持部材132が上記本体122の総長の3/20の地点を固定するようにする。
【0034】
図3は、支持部材132により振動体120を固定する位置による光ファイバーの振動幅を示したグラフであって、a)は正弦波の振幅が0以前の地点を固定する場合、b)は正弦波の振幅が0の地点を固定する場合、c)は正弦波の振幅が0の地点を過ぎて固定する場合を示したグラフである。
【0035】
ここで、上記本体122は総長が20mmであり、上記正弦波の電圧の供給時に本体122の端部から3mmの地点で正弦波の振幅が0であった。
【0036】
これを参考すると、振動体120に正弦波の電圧を供給すると、正弦波の振幅が0の地点(本体の端部から3mmの地点)を上記支持部材132及びベース130によって固定支持する場合が正弦波の振幅が0となる前の地点(本体の端部から2mmの地点)を支持するか、正弦波の振幅が0を超えた地点(本体の端部から4mmの地点)を支持する場合に比べて、振動体120の他端部が最も大きい幅に振動することを確認することができる。
【0037】
このように本発明は、振動体が振動できるように振動体を固定するベースの固定位置を最適化して光ファイバーが振動する半径を広くすることで、より広いスキャン範囲を確保することができるという効果がある。
【0038】
上記で本発明の実施例と関連して詳しく説明したが、本発明をこのような特定の構造に限定するものではない。当業界において通常の知識を有する者であれば、添付の特許請求範囲に記載された技術的思想を外れることなく、容易に修正または変更することができる。しかし、このような単純な設計変形または修正を通じた等価物、変形物及び取替物はいずれも明らかに本発明の権利範囲内に属することを予め明らかにする。