(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記球形空間を形成する壁面の前記球体部との摺動領域は、前記球形空間の中心周りに、前記球形空間がトータル63度〜75度の領域に対して、38.5%以上の領域である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスタビリンク。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る実施形態のスタビリンクがサスペンションダンパとスタビライザを連結する状態を示す斜視図である。
【0036】
車両(図示せず)の走行に使用される車輪Wは、サスペンション装置3を介して車体(図示せず)に取り付けられている。サスペンション装置3は、コイルスプリング3aと、サスペンションダンパ3bとを有する。サスペンションダンパ3bは、車輪Wを回転可能に支持する。サスペンションダンパ3b、コイルスプリング3aは、車輪Wから車体に加わる衝撃を緩衝する。
サスペンションダンパ3bはコイルスプリング3aを介して車体(図示せず)に取り付けられる。そして、サスペンションダンパ3bの伸縮の際の粘性減衰力とコイルスプリング3aの弾性力によって車体に伝わる振動が、サスペンション装置3で減衰される。
【0037】
左右のサスペンション装置3の間にはスタビライザ2が連結されている。スタビライザ2は、車体のロール剛性(捩れに対する剛性)を高めて車両のローリングを抑制する。スタビライザ2は、トーションバー2aと、トーションバー2aの両端からコの字状に延びる一対のアーム部2b、2bとを有している。
【0038】
スタビライザ2は、車両の形状に合わせて適宜折り曲げられた棒状のばね部材で構成されている。スタビライザ2は、対向する2つの車輪W,Wをそれぞれ支持する2つのサスペンションダンパ3b、3bを、実施形態のスタビリンク1を、それぞれ介して連結する。
【0039】
スタビライザ2の一方のアーム部2bの一端部は、トーションバー2aの一方端部に連続される一方、一方のアーム部2bの他端部は、スタビリンク1の一方の接続部1bに接続される。スタビリンク1の他方の接続部1bは、サスペンションダンパ3bに接続される。
同様に、スタビライザ2の他方のアーム部2bの一端部は、トーションバー2aの他方端部に連続する一方、他方のアーム部2bの他端部は、スタビリンク1の一方の接続部1bに接続される。スタビリンク1の他方の接続部1bは、サスペンションダンパ3bに接続される。
【0040】
トーションバー2aは、一方のサスペンションダンパ3bから他方のサスペンションダンパ3bに向かう方向に延設される。
トーションバー2aは、車両が旋回するときなど、2つのサスペンションダンパ3b,3bの伸縮量の違いによって、スタビリンク1を介して、アーム部2bが偏移して捩れる。トーションバー2aは、その捩れを復元するように作用するねじり弾性力で車両のローリングが抑制される。
【0041】
<スタビリンク1>
図2は
図1のI部を分解した状態を示す分解斜視図である。
スタビリンク1は、棒状のサポートバー1aと接続部1bとを含んで構成される。サポートバー1aの両端に、接続部1bが2つ配設される。サポートバー1aは、例えば中実の棒鋼を素材とする棒状部材である。
【0042】
図3は、スタビリンクの接続部の縦断面図である。
接続部1bには、ボールスタッド10が揺動および回転可能に支持されている。ボールスタッド10は、接続部1bのハウジング11に収容されている。接続部1bには、ハウジング11内への異物の侵入を防止するためのダストブーツ13が備わっている。
そして、一方の接続部1bに支持されるボールスタッド10がサスペンションダンパ3bのブラケット3cに締結され固定される(
図2参照)。また、他方の接続部1bに備わるボールスタッド10がスタビライザ2のアーム部2bに締結され固定される。
【0043】
ブラケット3cは、スポット溶接等でサスペンションダンパ3bに取り付けられている。ブラケット3cは、スタビライザ2のアーム部2bの側(図示しない車両の中心側)に対向して延在する固定用の平面部を有する。ブラケット3cの平面部3c1には、取付孔3c2が開口されている。
【0044】
一方、ボールスタッド10のスタッド部10sには、周囲に広がった鍔部10aが形成されている。また、スタッド部10sの鍔部10aよりも先端側には、雄ねじ10nが形成されている。
そこで、ボールスタッド10は、周囲に広がる鍔部10aの位置までスタッド部10sが、ブラケット3cの取付孔3c2に挿通される。そして、取付孔3c2を挿通したボールスタッド10のスタッド部10sに螺刻されている雄ねじ10nにナットN1が螺合され、ボールスタッド10がサスペンションダンパ3bに固定される。
【0045】
一方、スタビリンク1のアーム部2bの先端部2b1近傍は扁平状に塑性変形され、取付孔2b2が貫設されている。例えば、
図2に示すように、スタビリンク1のアーム部2bの先端部2b1及びその近傍がサスペンションダンパ3bの側に対向して平面状に塑性変形され、先端部2b1に取付孔2b2が開口されている。
他方のボールスタッド10は鍔部10aの位置までスタッド部10sが、スタビライザ2のアーム部2bの取付孔2b2に挿通される。そして、取付孔2b2を挿通したボールスタッド10のスタッド部10sに螺刻されている雄ねじ10nにナットN2が螺合して、ボールスタッド10が、スタビライザ2のアーム部2bに固定される。
【0046】
上述の如く、スタビリンク1は、サポートバー1aの両端に備わるボールスタッド10を介してサスペンションダンパ3bと、スタビライザ2のアーム部2bとに固定される。ボールスタッド10は、揺動および回転可能にスタビリンク1の接続部1bに支持されている。そのため、スタビリンク1は、サスペンションダンパ3b及びトーションバー2aに対して可動な構成である。
このように、スタビリンク1は、スタビライザ2と、サスペンション装置3とに連結される部材である。
【0047】
上述したように、スタビリンク1は、接続部1bが、サポートバー1aの両端に配設されている。
接続部1bは、ボールスタッド10のボール部10bが収容されるカップ状のハウジング11を有する。ハウジング11は、サポートバー1aの両端に抵抗溶接等で取り付けられている。ハウジング11は機械構造用炭素鋼などの鋼材が素材として用いられ、内側に樹脂製の支持部材のボールシート12が収容されている。
【0048】
<ボールスタッド10>
図3に示すように、ボールスタッド10は、略球体状のボール部10bと、ボール部10bから一方向に延設されるスタッド部10sとを有する。ボールスタッド10は、ボール部10bが、接続部1bのボールシート12に収容される。
【0049】
ボールスタッド10のボール部10bは、真球または真球に近い形状とされている。ボール部10bの上部は、ボールスタッド10sと接続し、ボール部10bの下部は、グリース室12cの体積確保により形状的に制限を受ける。ボールスタッド10のボール部10bは、許容される範囲において真球または真球に近い形状に形成されている。
【0050】
<ボールシート12>
図4は、ボールシート12内にボールスタッド10のボール部が嵌入されている状態を示すボールシート12の縦断面図である。
ボールシート12は、樹脂を用いて射出成形で形成される。ボールシート12は、POM(Polyacetal)、PA6(Polyamide6)、PA66(Polyamide66)などの熱可塑性樹脂が素材とされる。
【0051】
ボールシート12は、成形収縮により、フランジ部12bの外径が本体部12aの外径より大きいテーパ形状に形成される。
樹脂製のボールシート12は、本体部12aとフランジ部12bとを有する。本体部12aは、ハウジング11内に収容される(
図3参照)。ボールシート12の本体部12aは、内部にボールスタッド10のボール部10bが締り嵌めされるカップ状を呈している。
【0052】
また、樹脂製のボールシート12の本体部12aは、熱カシメでハウジング11に固定される。つまり、本体部12aに固定用のボス12oが形成される。ハウジング11の底部の孔を貫通するボス12oが溶融されてボールシート12がハウジング11内に固定される。ボス12oは、加熱された状態で加圧されて溶着される。
【0053】
ボールシート12の本体部12aは、内側に球形の空間の球形空間12kが形成されている。そして、ボールスタッド10のボール部10bが球形空間12k内に摺動自在に収容される。また、ボールスタッド10は、ボール部10bと一体に形成されるスタッド部10sが、ボール部10bとともに動作する。この際、スタッド部10sには、ボール部10bの球形空間12k内の摺動に伴う摺動トルクがかかることとなる。
そのため、ボールシート12に収容されたボールスタッド10は、ボール部10bの摺動に従いスタッド部10sが揺動可能および/または回転可能になる。
換言すれば、ハウジング11は、ボールスタッド10を揺動可能および/または回転可能に支持する。このように、接続部1bには、スタッド部10sとボール部10bとを有するボールスタッド10が揺動可能、回転可能に備わり、ボールジョイント構造が構成されている。この際、スタッド部10sが揺動する際には、スタッド部10sに揺動トルクがかかり、スタッド部10sが回転する際には、スタッド部10sに回転トルクがかかる。つまり、揺動トルク、回転トルクは、摺動トルクの一態様である。
【0054】
ボール部12bは、スタッド部12sの中心軸の軸方向の端部(エッジ12n1、12n2)が、前記球形空間に入り込まないように構成される。
なお、スタビリンク1においてスタッド部10sが延出する方向は、サスペンションダンパ3b(
図2参照)とスタビライザ2のアーム部2bの位置関係に応じて適宜決定される。
【0055】
図3に示すように、ハウジング11は、フランジ部11aとカップ状の本体部11bとを有する。フランジ部11aは、ハウジング11の開口側が外方に広がって形成される。ハウジング11の本体部11bにボールシート12の本体部12aが収容された状態で、ハウジング11のフランジ部11aとボールシート12のフランジ部12bが互いに対向する。そして、互いに対向するフランジ部11a、12bでダストブーツ13の端辺が挟持される。
【0056】
<ダストブーツ13>
ダストブーツ13は、ゴムなどの弾性体からなる中空の部材である。ダストブーツ13によって、ハウジング11内やボールシート12内への異物(ゴミなど)の侵入が防止される。
【0057】
ダストブーツ13は、鍔部10aとハウジング11のフランジ部11aとの間のボールスタッド10の周囲に配設される。ダストブーツ13は、対向する位置に2つの開口部13a1、13a2を有する。一方の開口部13a1は周囲が内側に向かって折れ曲がって形成され、この部分が対向するフランジ部11a,12bで挟持される。ダストブーツ13の他方の開口部13a2は、ボールスタッド10のスタッド部10sに密着して固定されている。
【0058】
ダストブーツ13は、スタッド部10sが揺動、回転する動作を妨げない形状とされている。例えば、ダストブーツ13は、大きく外方に膨らんだ形状であることが好ましい。ダストブーツ13は、大きく外方に膨らんだ形状であることで、変形代を持ってスタッド部10sを覆う。そのため、ダストブーツ13は、揺動および/または回転するスタッド部10sの動作に応じて容易に変形する。これにより、ボールスタッド10は、ダストブーツ13に妨げられることなく、円滑な揺動動作、回転動作を行える。
【0059】
<ボールシート12とハウジング11>
図5は、ハウジング11の本体部11bの内面11b1(
図3参照)の径とボールシート12の外径の関係を示す図である。
図5の横軸は径寸法を示し、
図5の縦軸は、ハウジング11の底面11b2からの高さ寸法を示す。
図5において、実線は、ハウジング11の本体部11bの内面11b1の位置を示し、破線は従来のハウジング11の本体部11bの内面11b1とボールシート12の外面12gとの締め代が大きいボールシートの外径を示し、太実線はハウジング11の本体部11bの内面11b1とボールシート12の外面12g(
図3参照)の締め代が少ない低トルクのボールシート12の外径を示す。
【0060】
ハウジング11の本体部11bの内面11b1の径(内径)がストレート形状の場合、締め代の減少に伴い、ハウジング11の内面11b1と、ボールシートの外面の当たりが局部的になる。
また、ハウジング11の本体部11bの内面11b1とボールシート12の外面12gとの締め代を大きくすると(
図5の破線)、ハウジング11の内面11b1と、ボールシートの外面の当たりが改善されるものの、ボールシート12が内方に向けて押圧される割合が大きくなるので、ボールスタッド10の揺動に際してのトルクが大きくなる。
【0061】
一方、ハウジング11の本体部11bの内面11b1とボールシート12の外面12gとの締め代を小さくすると(
図5の太実線)、ボールシート12が内方に向けて押圧される合が小さくなるので、ボールスタッド10の揺動に際してのトルクが小さくなる。しかし、弾性リフト、つまり、ハウジング11の本体部11bの内面11b1とボールシート12の外面12gとのガタが大きくなる。
【0062】
<ボールシート12とハウジングの本体部との締め代>
図6は、ボールシート12の外面とハウジングの本体部の内面との締め代と、ボールスタッドの揺動トルクとの関係を示すグラフである。横軸に、ボールシート12の外面12gと、ハウジング11の本体部11bの内面11b1との締め代をとり、縦軸に、ボールスタッド10の揺動トルクをとっている。
ボールシート12の外面12gとハウジング11の本体部11bの内面11b1との締め代の減少に伴い、ボールスタッド10の揺動トルクは下降する。
【0063】
これは、締め代が大きい場合、ボールシート12はハウジング11の内面11b1により強く内側に押圧されるので、ボールシート12の内面12nがボールスタッド10のボール部10bを押す際の押圧力が大きくなる。一方、締め代が小さい場合、ボールシート12はハウジング11の内面11b1により内側に押圧される力が弱くなるので、ボールシート12の内面12nがボールスタッド10のボール部10bを押す際の押圧力が小さくなると考えられる。
【0064】
図7は、ボールシートの外面とハウジングの本体部の内面との締め代と、弾性リフトとの関係を示すグラフである。
ボールシート12の外面12gとハウジング11の本体部11bの内面11b1との締め代の減少に伴い、弾性リフト、つまりボールシート12のハウジング11の本体部11bの内面11b1に対する弾性リフト(ガタ)は増大する。
【0065】
これは、締め代が大きい場合、ボールシート12はハウジング11の内面11b1により強く内側に押圧されるので、ボールシート12のハウジング11の本体部11bの内面11b1に対する弾性リフトは小さくなる。一方、締め代が小さい場合、ボールシート12はハウジング11の内面11b1により内側に押圧される力が弱いので、ボールシート12のハウジング11の本体部11bの内面11b1に対する弾性リフトは大きくなる。
【0066】
図8は、耐久試験前後での弾性リフトの有無を示す図である。
図8(a)は、耐久試験前のボールシートの外面のたわみと荷重との関係を示し、
図8(b)は、耐久試験後のボールシートの外面のたわみと荷重との関係を示す。
図8の横軸はボールシート12の外面12gのたわみ量を示し、
図8の縦軸は荷重を示す。
図8の破線は、ハウジング11の本体部11bの内面11b1とボールシート12の外面12gとの締め代が通常の場合、つまりボールスタッド10の揺動トルク、回転トルクが通常の場合を示す。
図8の実線は、ハウジング11の本体部11bの内面11b1とボールシート12の外面12gとの締め代が小さい、つまりボールスタッド10の揺動トルク、回転トルクが低トルクの場合を示す。
【0067】
耐久試験前では、
図8(a)に示すように、通常トルク(破線)と低トルク(実線)とも、荷重を“0”とすると、たわみが “0”となり、ヒステリシスは観察されない。
前記したように、低トルクの場合は締め代が小さく、通常トルクの場合は締め代が大きい。そのため、荷重をかけた場合、低トルクの場合は締め代が小さいので、たわみ量が大きく、通常トルクの場合は締め代が大きいので、たわみ量が小さい。
【0068】
耐久試験後では、
図8(b)に示すように、通常トルク(破線)で、少しのヒステリシスが観察された。低トルク(実線)では、通常トルクよりも大きなヒステリシスが観察された。そして、荷重を“0”にしても、たわみが “0”とならず、ガタが発生した。
【0069】
図8(b)からは、低トルクとした場合、ボールシート12の外面12gのたわみ量が大きくなり、ボールシート12のたわみ量としては、好ましい特性とは言えないことが判明した。
図6〜
図8の結果から、ボールシート12の外面12gと、ハウジング11の本体部11bの内面11b1との締め代が大きいと弾性リフトは小さくなるものの、ボールスタッド10の揺動トルクは大きくなる。一方、ボールシート12の外面12gと、ハウジング11の本体部11bの内面11b1との締め代が小さいと弾性リフトは大きくなるものの、ボールスタッド10の揺動トルクは小さくなる関係にある。
【0070】
図9は、グリース溝が形成されたボールシートの内部構造を示すボールシートの縦断面図である。
ボールシート12にはグリースが滞留される8本のグリース溝12rが、ボールシート12の軸J1方向に形成されている。例えば、グリース溝12rの幅は約2mmである。
ボールシート12の内部の上方には、ボールスタッド10が揺動、回転するために開口部12iが設けられている。例えば、開口部12iはボールシート12の水平方向の中心線J2からの角度θ0が、例えば約23°から約30°の位置である。
【0071】
ボールシート12の内部の下方にグリース室12cが設けられている。例えば、グリース室12cはボールシート12の中心線J2からの角度θ1が、約40°から約45°の位置である。
図10は、ボールスタッドが平衡状態(セット状態)のスタビリンクの接続部の内部を示す断面図である。
図11は、スタビリンクの接続部において、ボールスタッドが揺動した状態の内部を示す断面図である。
図10、
図11では、ハウジング11とボールシート12とダストブーツ13の断面をとって示している。
【0072】
図11に示すように、ボールスタッド10をスタビリンク1の接続部1bにセットした状態では、ボールスタッド10はスタビリンク1の接続部1bのボールシート12に対して直立した状態にある。
【0073】
図10に示すように、ボールスタッド10のボール部10bは、接触するボールシート12の内面12nから複数の矢印で示すような面圧を受けることとなる。このボールスタッド10のボール部10bと、接触するボールシート12の内面12nとの間に働く摺動に伴う摩擦力が、ボールスタッド10がスタビリンク1に対して、
図11に示す揺動する際の摩擦力および回転する際の摩擦力となる。従って、この摩擦力が、ボールスタッド10が揺動する際の揺動トルク、回転する際の回転トルクとなる。換言すれば、摩擦力により発生する摺動トルクが揺動トルク、回転トルクとなって現れる。
【0074】
図12は、ボールシートの内面のセンターオフセットを示す概念図である。
ボールシート12の内面は開口側の上内面12nuが下側に中心O1を有し、開口の反対側に位置する下内面12nsが上側に中心O2を有している。これにより、ボールシート12の内面12nは、端部側(ボールシート12の開口側または開口の反対側)が赤道(ボールシート12の開口部12i(
図10参照)側とその反対側のグリース室12c(
図10参照)を結ぶ軸J1に対する径が最大な箇所)よりも内圧が高くなる構成である。つまり、
図12のセンターオフセットにより上下端部を最大の面圧分布をもたせるようにしている。
【0075】
赤道より上部の締め代により発生するボール部10bへの面圧は、静的な力の釣り合いから、ボールシート12の下部にも反力として発生し、ボールシート12の開口部12iのエッジ12n1(
図9参照)とグリース室際エッジ12n2(
図9参照)の上下2線を最大面圧とする面圧分布によってボール位置が決められる。
【0076】
図13は、ボールスタッドのボール部と、ボールシートの内面とが接触する百分率と、ボールスタッドが揺動する際の揺動トルクおよび弾性リフトとの関係を示すグラフである。
図13の横軸はボールスタッド10のボール部10bと、ボールシート12の内面12nとの接触率の百分率をとり、
図10の縦軸は揺動トルクおよび弾性リフトの大きさを示す。なお、横軸の百分率100%とは、
図10に示すように、ボールシート12の内面12nとボール部10bとが接触する領域において、空間領域(グリース溝12rを含む)がない場合である。
【0077】
図13から、ボールスタッド10のボール部10bと、ボールシート12の内面12nとが接触する割合(百分率)の増加によって、ボールスタッド10の揺動トルクが増加すると弾性リフトが減少する。一方、接触する割合の減少によって、ボールスタッド10の揺動トルクが減少すると弾性リフトが増加する関係にある。
【0078】
そこで、実線と破線で挟まれる領域の百分率にすると、ボールスタッド10の揺動トルクと弾性リフトとが、共に好ましい低い値となる。
図14は、ボールスタッドのボール部の赤道、経度、緯度を示す模式図である。
ボールスタッド10のボール部10bの赤道とは、球状のボール部10bのスタッド部10sに垂直な方向の最も半径が長い箇所を結んだ周状の箇所をいう。
【0079】
ボール部10bの経度とは、ボール部10bの赤道に垂直な周線であり、地球に対して設定される経度に相当する。
ボール部10bの緯度とは、ボール部10bの赤道に平行な周線であり、地球に対して設定される緯度に相当する。
【0080】
図15は、
図11に示すボールスタッドのボール部にボールシートが空隙なく接触する際の単位経度当たりの接触面圧を赤道からの角度で示すグラフである。
図15の横軸は、赤道を90度にとり、0度の開口部12iの中心に近づくに従って角度が減少し、48度がボールシート12への上端接触箇所を示す。そして、開口部12iの中心から離れるに従って角度が増加し、115度がボールシート12への下端接触箇所を示す。
図15の縦軸は、面圧の高低を示す。
【0081】
単位経度当たりの接触面圧は、赤道ではほぼ“0”であった。
そして、赤道からスタッド部10sに近づくに従ってほぼリニアに増加する一方、赤道からスタッド部10sより離れるに従って100度強まで増加して100度強を超えると急激に増加する結果となった。
【0082】
図16は、
図10に示すボールスタッドのボール部にボールシートが空隙なく接触する際の単位緯度当たりの接触面圧を、緯度毎に積分して(足して)示すグラフである。
図16の横軸は、赤道を90度にとり、0度の開口部12iの中心に近付くに従って角度が減少し、48度がボールシート12への上端接触箇所(
図9のエッジ12n1)を示す。そして、開口部12iの中心から離れるに従って角度が増加し、115度がボールシート12への下端接触箇所(
図9のエッジ12n2)を示す。
図16の縦軸は、面圧の高低を示す。
【0083】
単位緯度の面圧の積分値は、赤道の緯度ではほぼ“0”であった。
そして、赤道からスタッド部10sに近付くに従ってほぼ二次曲線的に増加する一方、赤道からスタッド部10sより離れるに従って100度強まで増加して100度強を超えると急激に増加する結果となった。
【0084】
ここで、 ボール部10b外面での摩擦力 = 面圧 × 摩擦係数 (1)
と表わせる。
また、
ボールスタッド10の回転トルク ∝ ボール部10b外面での軸J1周りの摩擦力 (2)
揺動トルク ∝ ボール部10b外面での軸J1の倒れ方向の摩擦力 (3)
の関係がある。
【0085】
図17は、
図14に示すボールスタッドのボール部の各緯度の回転トルク、揺動トルクを定性的に示すグラフである。
図17の横軸は、
図14のボールスタッド10のボール部10bの緯度を示し、
図17の縦軸は、トルクの高低を示す。
ボールスタッド10のスタッド部10sが揺動する際の揺動トルクは、面圧とボール部10bの半径r(
図14参照)との積で表わされる。
ボールスタッド10がスタッド部10sの軸J1(
図14参照)周りに回転する際の回転トルクは、面圧とスタッド部10sの軸J1から各緯度までの半径ri(
図14参照)との積の積分値で表わされる。
【0086】
図17に示すように、揺動トルク(実線)は、赤道での90度でほぼ“0”である。そして、揺動トルクは、赤道90度からボールスタッド10のスタッド部10sに近つくに従って増加する。一方、揺動トルクは、赤道90度から、ボールスタッド10に対して離れるに従ってほぼ102度まで増加し、ほぼ102度程度を超えてから急激に増加する。
【0087】
同様に、回転トルク(破線)は、赤道での90度でほぼ“0”である。そして、回転トルクは、赤道90度からボールスタッド10のスタッド部10sに近つくに従って増加する。一方、回転トルクは、赤道90度から、ボールスタッド10に対して離れるに従ってほぼ102度まで増加し、ほぼ102度程度を超えてから急激に増加する。
【0088】
図17の結果から、揺動トルク、回転トルクともに、赤道90度から離れるに従って増加するので、赤道90度から離れた箇所でボールシート12の肉抜きを行い、ボールスタッド10のボール部10bとの間に空間を作る場合、ボールスタッド10のトルク減少を効果的に図ることができる。
【0089】
<実施形態のボールシート12の構造>
図18は、本実施形態のボールシート12の構造を示す図である。(a)は実施形態のボールシートの内部構造を示す縦断面図であり、(b)は実施形態のボールシートの下面図である。
図19は、ボールシートの溝を示す
図18(a)のII部拡大図である。
【0090】
前記の結果より、本実施形態では、赤道90度から離れた2箇所で、ボールスタッド10のボール部10bとの接触箇所でボールシート12の肉抜きを行って空間を作る溝部12m1、12m2を形成し、ボールスタッド10のトルク減少を図る。凹んだ形状の溝部12m1、12m2は、ボールスタッド10のボール部10bの中心Cをずらしたオフセットにより形成している。
ボールシート12は、射出成形により成形される。溝部12m1、12m2は射出成形時に形成される。
【0091】
つまり、溝部12m1、12m2の底部12mtは、ボールスタッド10のボール部10bと略同じ曲率を有しており、曲率中心がボール部10bの中心からずれている。そのため、ボールシート12の内面12nが変形した場合も、溝部12m1、12m2でボールスタッド10のボール部10bとの間で空間を維持することができる。
なお、溝部12m1、12m2は、ボールシート12が変形した際に空間を維持できれば、断面矩形状など以外の形状を採用してもよい。
そして、溝部12m1、12m2を除いた球形空間12kを形成する内面12nのボール部12bとの摺動領域は、球形空間12kの中心C周りに、球形空間12kがトータル63度〜75度の領域に対して、38.5%以上の領域とするとよい。ボールスタッド10のボール部10bの支持のためである。なお、当該摺動領域は、設定トルク値と弾性リフトとからの制限を受ける。
【0092】
図18(a)に示すように、ボールシート12は、カップ状の本体部12aと、本体部12aの開口周りに形成されるフランジ部12bとを有する。
本体部12aの下方には、ハウジング11に熱かしめするための3本のボス12oが延出されている。
本体部12aの内面12nには、
図15(b)に示すように、グリースが滞留される8本のグリース溝12rが、ボールシート12の軸J1方向に形成されている。例えば、グリース溝12rの幅は約2mmである。
【0093】
また、本体部12aの内面12nの赤道をはさんだ上下位置に、ボールスタッド10のトルク減少を図るための周回状の凹んだ形状の溝12m1、12m2が配置される。溝12m1、12m2は、ボールシート12の軸J1周りに周回する形状である。なお、溝12m1、12m2は断続的に設けてもよい。
【0094】
ボールシート12内に嵌入されるボールスタッド10のボール部10bは、ボールシート12の面圧Poによって支えられる。ボールシート12に溝12m1、12m2が無い場合、単位経度当たりの面圧Poiの分布は、前記の
図15の通りである。
そして、ボールシート12に溝12mが無い場合、ボールスタッド10のボール10bの緯度別の面圧分布Paiは、
Pai = Poi×2π×ri (4)
と表わせる。
【0095】
ボールシート12に溝12m1、12m2が無い場合の緯度別の面圧分布Paiは、前記の
図16に示す通りである。
図16から、回転トルクTrは各緯度別の半径ri(
図14参照)を乗じた
Tri=Pai×ri (5)
と表わされる。また、揺動トルクToは、ボール10bの半径rを乗じて
Toi=Pai×r (6)
と表わされる。
【0096】
回転トルク分布Tri、揺動トルク分布Toiは、前記の
図17に示す通りである。
ボールスタッド10を回転させる回転トルクTrは、
Tr=ΣTri (7)
と表わせ、ボールスタッド10を揺動させる揺動トルクToは、
To=ΣToi (8)
と表わせる。
【0097】
図18に示すように、ボールシート12の内面12nには8本の2mm幅のグリース溝12rが形成されている。
ボールシート12の上下端の寸法s1(
図19参照)は、射出成形上、および、上下端線接触面圧によるボールスタッド10のボール部10bを支持する観点から端部12t1、12t2を1mm程度の面を残す。ボールシート12の上下端の寸法s1は、0.5mm以上とするとよい。
【0098】
そして、最もトルク低減に効果的な端部12t1、12t2に近い領域に2つの溝部12m1、12m2を周回状に形成する。
図20は、
図18のボールスタッドのボール部の各緯度の回転トルク、揺動トルクに対して、本実施形態の溝を設けた箇所を示す図である。 例えば、開口12i側を0°とした場合、溝部12m1は56°から76°の領域であり、溝部12m2は99°から107°の領域である。なお、溝部12m1、12m2は、その底部で溝部領域を表わすものとする。
【0099】
溝部12m1、12m2の深さfは、アッセンブリ時のボールスタッド10のボール部10bのボールシート12への挿入時の内圧、成形時の雄型離脱による引張荷重、成形雄型離脱容易性から、0.1mm〜0.2mm程度と設定している。なお、溝部12m1、12m2の深さfは、0.08mm〜0.25mmとしてもよいが0.1mm〜0.2mm程度が最も望ましい。
【0100】
図19に示すように、溝部12m1、12m2の上下端部は、成形時の雄型離脱容易さ、球面部(内面12n)から溝部12m1、12m2の接触連続性から、ボールシート12の球状の内面12nの法線に対する角度θ3が、少なくとも50度以上の傾斜を有したテーパ(傾斜面)で溝12m1、12m2に連続している。
【0101】
ボールシート12の内面12nから溝部12m1、12m2へは、ボール部10bの接線の垂線に対して角度θ3が約50度以上の傾斜を有したテーパ(傾斜)面が形成されている。このテーパ(傾斜)面は、ボールシート12が射出成形で形成されることから、型をボールシート12の開口から抜くために設けられるものであり、角度θ3が50度以上が好ましい。
【0102】
実施形態では、溝部12m1、12m2の大きさと位置を調整することで、ボールスタッド10のスタビリンク1に対する揺動トルクを0.5Nm以下に設定するとともに、回転トルクを0.5Nm以下に設定している。
【0103】
実施形態のボールシート12とすることで、回転トルク、揺動トルクに効く領域のボールシート12の肉抜きをすることで、ボールスタッドの揺動トルクおよび回転トルクを所望の値になるように調整することができる。
【0104】
<参考例のボールシート12の構造>
参考例のボールシート12は、
図21に示すように、ボールスタッド10のボール部10bの赤道部近傍に空間を形成した場合のスタビリンク1の接続部である。
図21は、参考例のボールシート12の構造を示す図である。(a)は参考例のボールシートの内部構造を示す縦断面図であり、(b)は、ボールシートの下面図である。
図22は、ボールシートの溝を示す
図21(b)のIV断面図である。
図23は、
図21のボールスタッドのボール部の各緯度の回転トルク、揺動トルクに対して、参考例の溝を設けた箇所を示す図である。
【0105】
参考例のボールシート12は、ボールシート12の球体部の内面12nの赤道(ボールシート12の開口12iとグリース室12cの各中心を結ぶ軸J1に対して最大径をなす箇所)近くに溝部12m3を周回状に形成する。具体的には、溝部12m3は開口部12i側を0°とした場合、溝部12m3は78°から103°の領域である(
図23参照)。溝部12m3は、実施形態の溝部12m1、12m2と同様にして形成される。
つまり、ボールシート12は、射出成形により成形される。溝部12m3は射出成形時に形成される。
そして、溝部12m3を除いた球形空間12kを形成する内面12nのボール部12bとの摺動領域は、球形空間12kの中心C周りに、球形空間12kがトータル63度〜75度の領域に対して、38.5%以上の領域とするとよい。なお、当該摺動領域は、設定トルク値と弾性リフトとから制限を受ける。
【0106】
溝部12m3の深さfは、アッセンブリ時のボールシート12へのボールスタッド10のボール部10bの挿入内圧、成形時の雄型離脱による引張荷重、成形雄型離脱容易性から、0.1mm〜0.2mm程度と設定している。なお、溝部12m3の深さfは、0.08mm〜0.25mmとしてもよい。0.1mm〜0.2mm程度が最も望ましい。
【0107】
図22に示すように、溝部12m3の上下端部は、成形時の雄型離脱容易さ、球面部(内面12n)から溝部12mの接触連続性から、ボールシート12の球状の内面12nの法線に対する角度θ4は、少なくとも50度以上の傾斜を有したテーパ(傾斜面)で溝12mに連続している。テーパ(傾斜)面は、ボールシート12が射出成形で形成されることから、型をボールシート12の開口から抜くために設けられるものであり、角度θ4が50度以上が好ましい。
参考例では、ボールスタッド10のスタビリンク1に対する揺動トルクを0.5Nm以下に設定するとともに、回転トルクを0.5Nm以下に設定している。
【0108】
<比較例1、2、参考例、実施形態の比較>
【表1】
【0109】
表1は、ボールシート12とボールスタッド10のボール部10bとの間に、比較例1のグリース溝12rを含む溝を設けない場合、比較例2のグリース溝12rを設ける場合、参考例のグリース溝と接触面積低減のために赤道近くに溝を設ける場合(
図21参照)、本実施形態のグリース溝と接触面積低減のために赤道の上下に2つの溝を配置する場合(
図18参照)を比較した表である。
【0110】
比較例1は、本実施形態の軸方向のグリース溝12rおよび周回状の溝12m1、12m2、12m3を設けない場合である。比較例1のボールスタッド10のボール部10bとボールシート12との接触表面積は、438.8mm
2である。比較例1のボールスタッド10の軸周りの回転トルクは623.3Nmm(=10
−3×Nm(ニュートン・メートル))であり、ボールスタッド10が揺動する揺動トルクは689.1Nmmである。
【0111】
比較例2は、幅2mmで8本のグリース溝12rを設けるとともに、本実施形態の軸方向の周回状の溝12m1、12m2、12m3を設けない場合である。比較例2のボールスタッド10のボール部10bとボールシート12との接触表面積は、288.4mm
2である。比較例2の接触表面積288.4mm
2は、比較例1の438.8mm
2に対して、接触表面積が34.3%削減される。比較例2のボールスタッド10の軸周りの回転トルクは383.9Nmmであり、ボールスタッド10が揺動する揺動トルクは423.1Nmmである。
【0112】
参考例は、幅2mmで8本のグリース溝12rを設けるとともに、ボールシート12の赤道(ボールシート12の開口部12iとグリース室12cを結ぶ軸J1の軸線周りの径が最も大きい箇所の赤道)近くに周回状の赤道溝(溝12m3)を設けた場合である。参考例の赤道溝は、軸J1の開口部12i方向を0度とし、グリース室12c方向を180度とすると、78°〜103°の領域(
図23参照)に形成される。参考例の接触表面積169.2mm
2は、比較例2の288.4mm
2に対して、接触表面積が61.4%削減される。
【0113】
参考例のボールスタッド10の軸周りの回転トルクは331.1Nmmであり、 比較例2の回転トルク383.9Nmmに比べ、14%低減された。参考例のボールスタッド10が揺動する揺動トルクは369.6Nmmであり、比較例2の揺動トルク423.1Nmmに比べ、13%低減された。
【0114】
実施形態は、幅2mmで8本のグリース溝12rを設けるとともに、ボールシート12の赤道(ボールシート12の開口部12iとグリース室12cを結ぶ軸J1の軸線周りの径が最も大きい箇所の赤道)の上下に2本の溝12m1、12m2を設けた場合である。実施形態の溝12m1、12m2は、軸J1の開口部12i方向を緯度0度とし、グリース室12c方向を180度とすると、56°〜76°の領域と99°〜107°の領域(
図20参照)との2つの領域に形成される。
【0115】
実施形態の接触表面積169.3mm
2は、比較例2の288.4mm
2に対して、接触表面積が61.4%削減される。
実施形態のボールスタッド10の軸周りの回転トルクは214.1Nmmであり、比較例2の回転トルク383.9Nmmに比べ、44%低減され、参考例の回転トルク331.1Nmmに比べ、35%低減される。
実施形態のボールスタッド10が揺動する揺動トルクは238.3Nmmであり、比較例2の揺動トルク423.1Nmmに比べ、44%低減され、参考例の揺動トルク369.6Nmmに比べ、35%低減される。
【0116】
上記構成によれば、ボールスタッド10がスタビリンク1を揺動する揺動トルクを0.5Nm以下に設定するとともに、回転する回転トルクを0.5Nm以下に設定する。したがって、ボールスタッド10がスタビリンク1に対して、揺動する際の揺動トルクまたは回転する際の回転トルクが低トルクにされ、スタビリンク1を用いる車両の乗り心地、動特性、耐久性が向上する。
また、溝12m1、12m2や溝12m3を適宜調整することで、ボールスタッド10を支持しつつ、所望の揺動トルク、回転トルクに調整することができる。
【0117】
従って、トルク、弾性リフトを適正に調整することにより、市場使用時のスタビリンク1周りの部品相互の損耗促進等を抑えることができる。そのため、動特性が悪いスタビリンク系の市場での使用が抑えられ、動特性が良好なスタビリンクを実現することができる。
さらに、スタビリンク1周りからの異音の発生を抑制することができる。
以上のことから、ボールスタッド10のボール部10bと、ハウジング11に備わってボール部10bを摺動可能に収容するボールシート12との間のガタつきを効果的に抑制でき、ボールスタッド10の揺動動作および回転動作の際の低トルクを達成できるスタビリンク1を実現できる。
【0118】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0119】
<<その他の実施形態>>
1.実施形態、参考例で説明した溝部12m1、12m2、12m3は、凹形状であれば、その断面形状は、矩形、任意の曲率の形状等、任意の断面形状でもよい。
【0120】
2.実施形態の溝部12m1、12m2は、ボールシート12の内面12nの赤道の両側に一つづつ配置される場合を示したが、その数は2つ以上でもよい。
また、実施形態の溝部12m1、12m2は、ボールシート12の内面12nの赤道の片側に単数または複数設けてもよい。
【0121】
3.実施形態の溝部12m1、12m2と参考例の溝部12m3は、それぞれ連続して形成する場合を説明したが、間欠的に(とぎれとぎれに)設けてもよい。
【0122】
4.また、
図3に示すように、本実施形態のハウジング11にはボールシート12が収容され、ボールシート12に球形空間12kが形成されている。しかしながら、ハウジング11に球形空間121が形成され、この球形空間121にボールスタッド10のボール部10bが収容される構成であってもよい。つまり、ボールシート12が備わらない構成であってもよい。このような構成であれば、簡素な構造のハウジング11とすることができる。
【0123】
5.また、スタビリンク1(
図3参照)は、サポートバー1aの両端にボールジョイント構造の接続部1bが備わる構成に限定されない。例えば、サポートバー1aの一端のみにボールジョイント構造の接続部1bが備わる構成であってもよい。この場合、他端には別の構造(例えば、ボールブッシュ構造)の接続部が備わる構成であってもよい。
【0124】
6.実施形態、参考形態で説明した各構成を適宜組み合わせて構成してもよい。
【解決手段】本発明のスタビリンク1は、接続部10bが、第1・第2構造体2、3bに連結されるボールスタッド10を揺動可能および回転可能に支持するハウジング11を有し、ボールスタッド10は、球体部10bからスタッド部10sが延設され、ハウジング11は、球形空間10kに球体部10bを摺動可能に支持部材12を有してボールスタッド10を支持し、支持部材12は、スタッド部10s側で球形空間10kが開口される開口部12iと、開口部12iと対向する凹状の潤滑剤受け部12cとを有し、支持部材12の球形空間12kが形成され球体部10bが摺動する壁面12nには、開口部12iの側から潤滑剤受け部12cの側への球形空間12kの中心軸J1を軸とする最大内径部の両側又は片側に、凹溝12m1、12m2が形成される