(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923218
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】エアバッグモジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/217 20110101AFI20160510BHJP
B60R 21/23 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
B60R21/217
B60R21/23
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-510683(P2015-510683)
(86)(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公表番号】特表2015-517425(P2015-517425A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2013001399
(87)【国際公開番号】WO2013167285
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】102012009401.9
(32)【優先日】2012年5月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510136301
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ライムント、ニーベル
【審査官】
平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−208404(JP,A)
【文献】
特表2000−500091(JP,A)
【文献】
特開平10−265628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ(10)と、前記エアバッグ(10)を収容して保持するための保持部材(20)と、前記エアバッグ(10)にガスを充填するためのインフレータとを有するエアバッグモジュール(5)において、
前記エアバッグ(10)および/または前記保持部材(20)が、少なくとも部分的に架橋構造を有する樹脂から構成され、
前記保持部材(20)が少なくとも2つの個別部品から構成され、前記少なくとも2つの個別部品の1つが少なくとも部分的に架橋構造を有する樹脂から構成され、他の1つの個別部品が少なくとも部分的に架橋構造を持たない樹脂から構成されることを特徴とするエアバッグモジュール(5)。
【請求項2】
前記保持部材(20)を構成する前記少なくとも2つの個別部品の各々が、全体に架橋構造を有する樹脂から構成されるか、或いは、全く架橋構造を持たない樹脂から構成されることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグモジュール。
【請求項3】
前記少なくとも2つの個別部品の少なくとも1つの個別部品が金属と樹脂の複合部品であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエアバッグモジュール。
【請求項4】
前記少なくとも2の個別部品の少なくとも1つが、部分的に架橋構造を有する樹脂と部分的に架橋構造を持たない樹脂とから構成されることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグモジュール。
【請求項5】
前記保持部材が、インフレータとして使用されるガス発生装置(40)が固定される底部(24)を有し、少なくとも前記ガス発生装置(40)が固定される前記底部(24)の領域が架橋構造を有する樹脂から構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアバッグモジュール。
【請求項6】
前記エアバッグ(10)が膨張部入口(12)の領域に少なくとも1つの補強層(14a,14b)を有し、前記補強層(14a,14b)が架橋構造を有する樹脂ラミネートから構成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアバッグモジュール。
【請求項7】
前記エアバッグモジュールの少なくとも1つの構成要素が、少なくとも部分的に放射線架橋構造を持ち得る樹脂から構成され、前記エアバッグモジュールの最終組立の前に架橋構造を達成するために、前記構成要素が電離放射線にさらされることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のエアバッグモジュール(5)を製造するための方法。
【請求項8】
前記構成要素全体が電離放射線にさらされることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数の前記構成要素が容器内で電離放射線にさらされることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記構成要素が個別に電離放射線にさらされることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記構成要素が選択的に放射線架橋されるように、前記構成要素が複数部分で電離放射線にのみさらされることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のエアバッグモジュールに関し、請求項8に記載のエアバッグモジュールの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設置することを意図したエアバッグモジュールで、特にフロントのエアバッグモジュールは、通常、エアバッグと、エアバッグを受け取り保持するための受取保持要素と、エアバッグを充填するためのインフレータとから構成されている。これに関連して、ガス発生装置はインフレータとして頻繁に使用され、特に、火工品チャージが点火装置に配置されている熱風発生装置が、エアバッグを充填する大量の高温ガスを生成する。
【0003】
従来、受取保持要素の大部分、すなわち、特に筐体、場合により既存の保持リングおよび場合により既存のディフューザが、金属から作られていた。一方で、費用および重量上の理由から、もともと金属から作られていた多くの部分が現在は樹脂から作られ、現行の機械的および熱的要件を満たす樹脂と形状を提供することが可能である。ただし、小型で非常に高温のガス発生装置は、特に、低重量の利点を有するように、ますます開発されている。受取保持要素の特定の構成要素が、これまでに使用されてきた熱可塑性樹脂から作られる場合、このような発生装置の使用によって到達する温度が、問題を引き起こす可能性があると、実験室試験により判明した。特にガス発生装置がフランジを用いて固定されている領域での筐体の床/底部、場合によっては既存の任意の補強リング、場合によっては既存の任意のディフューザ、場合によっては既存の任意のディフレクタ、(難燃性の壁)といった、受取保持要素の構成要素や部分が、特に影響を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
これに基づき、本発明の目的は、非常に高温のガス発生装置が使用される場合に、温度にさらされる構成要素を樹脂から作ることが可能な、エアバッグモジュールを提供することである。
この目的は、請求項1の特徴を有するエアバッグモジュールによって達成される。このようなエアバッグモジュールを製造し得る方法が、請求項8に提供されている。
【0005】
課題を解決するために、高耐熱性樹脂、特に、高耐熱性ポリアミドを使用することが基本的には可能であろう。しかし、これにより重大な欠点を伴う可能性がある。というのは、一方では、この材料が低いノッチ付衝撃強さを有し、さらに、射出成形中に高い工具温度が要求されることもあり得るからである。これにより、一方では、射出成形中のエネルギー消費が増加し、また使用される工具の耐用年数を短くすることにもなる。つまり、エアバッグモジュールにかかる費用の大幅な増加につながる可能性があるため、本発明においては前述の手法が採用されていない。その代わりに、本発明によれば、樹脂から構成されるエアバッグモジュールの少なくとも1つの構成要素が、成形後に放射線架橋される。この方法では、特に熱可塑性樹脂である樹脂が、いわゆる架橋活性剤を有することができる。特に射出成形での製造は、特別な方法を必要とはせず、特にこれまでの一般的な温度制御を備えたこれまでの一般的な工具を使用してはいけない。特に、この部分の射出成型での製造とエアバッグモジュールの最終組立との間に優先的に介在する方法工程において、構成要素が、電離放射線、すなわち、特にガンマ線またはベータ線にさらされることによって、樹脂材料が架橋される。この架橋は放射線架橋とも称される。また、この架橋(放射線架橋)によって、架橋されていない元の状態と比較して、とりわけ、樹脂の熱安定性、特に短期的な熱安定性が高まる結果となる。したがって、例えば、PA66−GF30の熱安定性が約250℃から約360℃に高まり、PA6−GF30の熱安定性が約200℃から約350℃に高まる。
【0006】
必要とされる照射は、非常に高価な方法工程ではなく、特に、大型の容器内に固定されずに配置されている照射される多数の構成要素が、大型の容器内で照射される状態で起こり得る。このような方法は、例えば、高いはんだ付け温度に耐えるためにプラグコネクタの樹脂封止が放射線架橋される場合のプラグ製造から公知である。
【0007】
前述の分野で、すなわち、受取保持要素の構成要素にさらなる温度耐性をもたせる目的で、本発明が主に適用され得る。ただし、本発明は、エアバッグモジュールの領域にも適用され得ることが判明した。したがって、例えば、熱安定性を高めるために、エアバッグの少なくとも1つの部分、特に膨張部入口を囲む少なくとも1つの補強層を放射線架橋することが可能である。ただし、知識の現状に従うと、織物においては繊維が放射線架橋には薄すぎるため、エアバッグモジュールの要素または放射線架橋部分がラミネートから構成される場合にのみ、この放射線架橋部分またはエアバッグモジュールの要素に有効である。特に、膨張部入口の領域に少なくとも1つの放射線架橋されたラミネートを使用することは、非常に有用であり得る。というのは、この方法では、シリコン塗布の使用を不要とすることができるか、またはシリコン塗布と併せてさらに高い熱安定性をもたらす結果となり、非常に高い費用効果で難燃性が提供され得るからである。この方法により、エアバッグの織物の焼けよって生成され得る排気ガスの量を削減することができる。
【0008】
放射線架橋は、熱安定性を高めるだけでなく、制御された出口ドアを開く動作に対して有利に影響し得る脆性の増大にもつながるため、完全に別の適用が、筐体の蓋の所定の破断ラインへの選択的な放射線架橋により成立し得る。
【0009】
本発明の好ましい実施形態は、以下に示す図を参照してさらに詳細に説明される例示的な実施形態からだけでなく、従属請求項からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】完全に取り付けられているエアバッグモジュールの概略断面図である。
【
図2】
図1のエアバッグモジュールのすべての構成要素である。
【
図4】
図3の放射線架橋の製造工程の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は完全に取り付けられているエアバッグモジュールを示し、
図2は対応する個別部品を示している。このようなエアバッグモジュール自体は、公知である。本発明に関して、エアバッグモジュールは、3つの機能要素、すなわちエアバッグ10と、受取保持要素20と、インフレータとして使用されるガス発生装置40から基本的に構成されることが分かる。ナット62を伴うボルト60または適切なクリンプが、これらの機能要素を接続するために使用される。
【0012】
エアバッグ10は、エアバッグクッション11、および2つの補強層14a,14bから構成され、この補強層14a,14bはエアバッグクッション11の膨張部入口12を囲み、特に縫製、接着または溶接されて、エアバッグクッション11に接続される。このエアバッグクッション11は樹脂製の織物から構成され、この補強層14a,14bは樹脂ラミネートから構成されている。実施形態において、受取保持要素20が3つの個別要素、すなわち通常は容器として設計される少なくとも1つの筐体22と、通常は蓋として設計される蓋要素30と、保持拡散および偏向要素50とを有する。筐体は、筐体底部24および筐体の側壁29を有する。蓋要素30は、筐体の側壁29に(一般に、ここでは不図示のスナップ式接続によって)固定される。この蓋要素30は、順番に2つの部分、すなわちルーフ32および側壁38を有する。それぞれ内部の溝として形成されるヒンジライン34および所定の破断ライン36は、公知の方法でルーフ32に配置されている。ドーム状のディフューザ52、底部53、およびディフレクタ56を有する、保持拡散および偏向要素50は、筐体底部24に配置されている。この保持拡散および偏向要素50はいくつかの機能、すなわち、まずエアバッグ10を筐体底部24に固定し、本目的のために使用されるエアバッグとディフューザ52とディフレクタ56とを保護する機能を有する。
【0013】
ガス発生装置40は、ガス発生部42およびフランジ44を有する。ガス発生部42は、筐体底部24の中央開口部26を通って筐体22に突き出て、そこでディフューザ52が渡されている。ボルト60は、エアバッグ10と、筐体底部24と、保持拡散および偏向要素50と、フランジ44とを一緒に固定するために使用され、このボルト60は、対応する取付穴16,28,46および54を貫通し、ナット62にねじ込まれる。また、ボルトとナットは複合部品の一部であってもよい。例示的な実施形態において、保持拡散および偏向要素50は本目的のために検討され得る。このような複合部品で、樹脂は少なくとも1つの対応する金属部分に噴霧される。この例示的な実施形態における受取保持要素20のすべての構成要素が、少なくとも部分的に樹脂、特に熱可塑性樹脂から構成されることが重要である。この場合、構成要素は異なる特性を有するべきであるため、各構成要素が異なる樹脂から構成され得る。エアバッグ10の構成要素は、樹脂製の織物および樹脂ラミネートから構成される。
【0014】
次に、
図3を参照して、エアバッグモジュールの製造方法が説明される。この説明のため、エアバッグモジュールのすべての構成要素を3つの構成要素グループに分けて表示することは実用的である。この図式では、構成要素グループK1が、射出成形方法で製造されるすべての構成要素を含んでいる。本発明の例示的な実施形態において、このK1の構成要素グループは、受取保持要素20のすべての構成要素を含んでいる。K2の構成要素グループが、樹脂製の織物また樹脂ラミネートから構成されるすべての構成要素を含み、この場合の構成要素は、エアバッグクッション11および補強層14a,14bである。K3の構成要素グループが、他のすべての構成要素を含み、特にこれらは、全体的にまたは部分的に金属から作られている。ここでは、ガス発生装置40、ボルト60およびナット62が、K3に含まれる構成要素である。また、複合部品が使用される限りにおいて、上記の複合部品はK1の構成要素グループに属することも可能である。
【0015】
提供されるこれらすべての構成要素が、最初の製造工程ESとして簡潔に示されている。先行技術においては、組立工程MSがこの最初の製造工程の直後になる。本発明によると、中間工程ZSが構成要素の一部に対して設定され、すなわち、放射線架橋または架橋(この2つの概念は本明細書において同義的に使用される)の工程である。例示的な実施形態において、この中間工程は、筐体22と、保持拡散および偏向要素50と、補強層14a,14bとに関係し、つまり、2つの構成要素グループK1およびK2の一部でしかない。この2つの構成要素グループK1およびK2のすべての構成要素が放射線架橋に適しているわけではないということが、ここでは重要である。これは、とりわけ、放射線架橋が熱安定性を高めるだけではなく、脆性の増大にもつながるためである。しかし、蓋要素30全体およびエアバッグ10全体の脆性が増大することは望ましくなく、さらに、既に説明されている通り、樹脂製の織物の放射線架橋は不可能である。
【0016】
例えば、いわゆる架橋活性剤(マスターバッチ)が、(筐体22と保持拡散および偏向要素50の場合)射出成形前または(補強層14a,14bの場合)ラミネートの製造前に、処理される材料に追加されることにより、対応する構成要素を放射線架橋に適した樹脂から作ることを達成し得る。
【0017】
例示的な実施形態において、放射線架橋の製造工程のために、複数の照射される個別要素が容器74に集められ、そこでエックス線、ガンマ線、またはベータ線によって照射される。例えばエックス線管または電子管であり得る、放射線発生装置70が、この目的のために使用される。一般に、共通の容器74で異なる個別要素を照射することが可能であり、また、「均質」照射も当然可能である。通常、比較的広い(長い)範囲の放射線が使用されるため、照射される個別要素は容器74の中で固定されずに配置され得るにもかかわらず、均一な架橋が達成されるべきである。照射完了後、エアバッグモジュールのすべての個別構成要素の最終組立を、通常通りに実行できる。
【0018】
金属元素は大幅に照射を妨げないため、既に説明したように、樹脂および金属から構成される複合部品を、放射線架橋することもできる。このような複合部品の製造の際、いわゆる継ぎ目が、射出成形時に金属インサートを有する部品の付近に形成し得る場合において、放射線架橋の結果、さらに別の利点をもたらすことができる。続いて起こる放射線架橋によって、この継ぎ目の強度を増加することが可能であり、この方法で複合部品の完成度が改善される。知識の現状に従うと、上述の方法と上述の放射線架橋の使用は、特に追加の製造費が比較的低いという事実に基づき、本発明に可能な好ましい適用である。第2の例示的な実施形態に基づいて、第2の可能な方法がさらに説明されるが、放射線架橋の適用は異なっている。既に説明されたように、前述の効果、すなわち熱安定性が高まることに加え、放射線架橋は、架橋された樹脂が対応する架橋されていない樹脂と比較して増大した脆性を有するという、別の効果を有する。この脆性の増大は、例えば、所定の破断ライン36に沿って蓋要素30が破断することを改善するために、特定の目的で使用され得る。この適用の場合は、ただし、構成要素全体、すなわちここでは蓋要素30が増大された脆性を有することは通常望ましくないため、具体的に例示的な実施形態で示されている、すなわち所定の破断ライン36の領域での選択的な照射が必要である。このような選択的な照射を達成するために、照射される構成要素(すなわち蓋要素30)は、コンベア76に正確に配置して、置かれる。このコンベア76は、それぞれの所定の破断ライン36の領域が照射される位置に、段階的に(つまり、不連続的に)蓋要素30を運ぶ。所定の破断ライン36の周りの狭い領域のみを照射することを達成するために、コリメータの形式で遮蔽体72が設けられる。蓋要素30の他の領域を照射することは望ましくないため、また、放射線発生装置70の持続的な活性化と非活性化は通常不可能なため、メカシャッタ78がビーム経路に優先的に設けられる。
【符号の説明】
【0019】
5 エアバッグモジュール
10 エアバッグ
11 エアバッグクッション
12 膨張部入口
14a,14b 補強層
16 エアバッグの取付穴
20 受取保持要素
22 筐体(容器)
24 筐体底部
26 中央開口部
28 筐体底部の取付穴
29 筐体の側壁
30 蓋要素(蓋)
32 ルーフ
34 ヒンジライン
36 所定の破断ライン
38 蓋要素の側壁
40 ガス発生装置
42 ガス発生部
44 フランジ
46 フランジの取付穴
50 保持拡散および偏向要素
52 ディフューザ
53 底部
54 底部の取付穴
56 ディフレクタ
60 ボルト
62 ナット
70 放射線発生装置
72 遮蔽体
74 容器
76 コンベア