(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面は、一律の尺度で描くことを意図して描かれてはいない。これらの図面では、さまざまな図に示されている同一の構成要素またはほぼ同一の構成要素が、同様の符号によって示されている。見やすくするため、全ての図面の全ての構成要素に符号が付けられているわけではない。
【0015】
本発明の実施形態は、集束荷電粒子ビーム・システム内で使用される誘導結合プラズマ源用のコンパクトな高周波(RF)アンテナを提供する。RF電源は、RF電力を効率的に送達するため(すなわち電源へ反射されるRF電力が最小限になるように)、インピーダンス整合回路を介してRFアンテナに接続される。プラズマ室内で発生するプラズマ中への電力の結合効率を最大化するため、このRFアンテナは、プラズマ室の周囲にプラズマ室と同軸に配置されることが好ましい。本発明の実施形態は、誘導結合プラズマ荷電粒子源用のRFアンテナを提供する。いくつかの実施形態では、RFアンテナ・コイルが、プラズマを遮蔽してアンテナ上のRF電圧との容量結合を防ぐ働きをする接地されたファラデー・シールドに接触し、またはそのようなファラデー・シールドのすぐ近くにある。他の実施形態では、誘電性の冷却材に浸すことによって、本発明のコンパクトなアンテナ・コイルが冷却される。
【0016】
図1は、イオン源100内のプラズマ室の周囲にRFアンテナ112を取り付ける先行技術の第1の方法(米国特許第6,975,072B2号明細書)を示す。このプラズマ室は3つの部分、すなわち上部106(第1の永久磁石を備えることがある)および下部108(第2の永久磁石を備えることがある)、ならびにRFアンテナ112を囲う中央の石英フランジ110を含み、上部106と下部108は石英フランジ110によって離隔されている。上部106の頂部にあるガス供給管102は、フィード・ガス104(すなわちイオン化されるガス)の調整された流れがプラズマ室の内部へ流入することを可能にする。下部108の下端のフランジ122は、イオン源100を荷電粒子ビーム・システム(図示せず)に取り付けることを可能にする。RF電源(図示せず)からの電力がアンテナ112に接続されると、ISM(Industrial,Scientific and Medical)無線バンド内の一般的なN×13.56MHz(Nは整数=1、2または3である)の周波数のRF高電圧がアンテナ112の両端間に生じ、それによって時間変化する軸方向の磁場がプラズマ室内に生じる。この軸方向の磁場は、マクスウェルの方程式に従って、プラズマ室内に、プラズマ150を発生させ維持する時間変化する方位電場を生じさせる。場合によっては、アンテナ112の連続するターン間の電圧差が、アンテナ・コイル112の隣接するターン間に何らかの高電圧絶縁が必要となる400Vrfを超えることがある。フランジ122の下に位置する引出し電極(図示せず)に電圧を印加することによって、プラズマ150から荷電粒子(イオンまたは電子)120を引き出すことができる。
図7〜11に示すように、アンテナ112からプラズマ150へのRF電力の結合効率を最適にするためには、アンテナ112の直径184を最小化し、さらにアンテナ112の長さ116を最小化する必要がある。アンテナの直径184を最小化すると、プラズマ150の外側からアンテナまでの距離が可能な限り小さくなり、アンテナの長さ116を最小化するとプラズマ150の体積が最小になり、それにより、所与のRF入力電力に対してプラズマ150が吸収する電力密度(W/cm
3)が最大になる。プラズマ密度が高いほど、誘導結合プラズマ・イオン源内のイオン放出電流を高くすることができる可能性がある(
図11参照)。
【0017】
RFアンテナ112の1つのターンの詳細な断面図が
図1の右側に示されている。コイル管132の材料は一般に銅であり、この銅は、
図1の左側に示されたコイル状のアンテナ構造物112の巻付けを可能にするために焼き鈍されている。この先行技術のアンテナでは、コイル管132の外面に薄い絶縁コーティング130がコーティング工程によって塗布されている。冷却のため、コイル管132は、プラズマ・イオン源100の動作中に冷却流体がその中を流れる円形の内側管状開口134を有する。冷却流体は導電性のコイル管132の内側を流れるため、冷却流体に、誘電特性または絶縁特性に関する要件が課せられることはない。冷却流体の選択肢としては、水(脱イオン水または脱イオン化されていない水)、Fluorinert(商標)のような誘電性のフルオロカーボン流体などがある。図示のRFアンテナ112は、石英フランジ110の外径186に接触しているか、または石英フランジ110の外径186のすぐ近くにある。絶縁コーティング130は一般に、主にコーティング技術の限界のために絶縁耐力が比較的に低い(例えば15.7kV/mm)ことを特徴とし、そのため、ターン間ギャップ118を、ギャップ118にわたるターン間のRF電圧差の大部分および隣接するターンの絶縁コーティング130を半径方向に横切るターン間のRF電圧差のより小さな部分を支持する十分に大きなものにしなければ、アンテナ112の連続するターン間に生じるRF電圧差はターン間の電圧隔離能力を超えるであろう。アンテナ112のターンが石英フランジ110の外径186に接触している場合にはさらに、表面トラッキング(surface tracking)が生じないように、石英フランジ110の外径186に沿った中央のターンの接触点192からその下のターン194の接触点までの距離190によって、ターン間のRF電圧差を支持しなければならない。隣接するターン間の中心−中心間隔114は、ターン間ギャップ118に絶縁コーティング130の外径を加えたものに等しい。アンテナ112の全長116(中心−中心)は下式のとおりである。
【0018】
コイルの長さ116=(N−1)(ターン間間隔114) [式1]
上式でN=アンテナ112のターン数である。ターン数は、プラズマ室内のプラズマ150の所望の長さ、プラズマ150に結合するRF電力、ビーム120中の放出電流の目標値およびプラズマ室内のフィード・ガス104の圧力によって決定される。
【0019】
絶縁コーティングは一般に、コーティング技術の限界のため薄くなりがちであり、同じ材料の固体材料塊よりも低い密度を有する。密度が低いほど絶縁耐力も低くなり(例えば一般的には8.6kV/mmから15.7kV/mm)、したがって高電圧隔離もより不十分になる。したがって、ターン間のRF電圧差は、アンテナ112への入力RF電力が大きくなるに連れて増大するため、ターン間の電圧隔離が限定されたものであると、プラズマ室内でのプラズマの発生に利用できる最大RF電力も限定され、したがってビーム120中の最大イオン放出電流も限定される。
【0020】
絶縁コーティング130の低い絶縁耐力は、
図1の先行技術のプラズマ・イオン源に対して別の欠点を有する。
図1に示した源構成は、アンテナ・コイル112とプラズマ150の間にかなりの量の容量結合を有する。プラズマ150は実質的にプラズマ室内の等電位体積として振舞う。したがって、RFアンテナ112の両端間の高電圧のため、プラズマ150の電圧は、プラズマ150上に誘導された容量結合された電圧を有し、この電圧が、源100が放出するイオン120のエネルギーに影響を及ぼす可能性がある。多くのプラズマ・イオン源では、RFアンテナとプラズマ室の間にファラデー・シールド(例えば
図2のファラデー・シールド298)を挿入することによって、この容量性の電圧結合が大幅に低減する。コイル112の表面のコーティング130の絶縁耐力は低いため、RFアンテナ112と石英フランジ110の間にファラデー・シールドを配置することはできない。これは、薄い絶縁コーティング130を通してコイル管132とファラデー・シールドの間に高電圧アークが発生する可能性があるためである。
【0021】
米国特許第4,725,449号明細書および第6,124,834号明細書で論じられているように、先行技術のアンテナ絶縁コーティングには、摩耗または切削に対する抵抗性の不足、割れ、老化、複雑な形状を有するアンテナを巻くのには不十分な柔軟性など、別の問題もある。
【0022】
図2は、イオン源200内のプラズマ室206の周囲にRFアンテナ212を取り付ける先行技術の第2の方法を示す。プラズマ室206は、その頂部に、フィード・ガス204(すなわちイオン化されるガス)の調整された流れがプラズマ室206の内部へ流入することを可能にするガス供給管202を有する。プラズマ室206の下端のフランジ222は、イオン源200を荷電粒子ビーム・システム(図示せず)に取り付けることを可能にする。RF電源(図示せず)からの電力がアンテナ212に接続されると、ISM(Industrial,Scientific and Medical)無線バンド内の一般的なN×13.56MHz(Nは整数=1、2または3である)の周波数のRF高電圧がアンテナ212の両端間に生じ、それによって時間変化する軸方向の磁場がプラズマ室206内に生じる。
図1と同様に、この磁場は、マクスウェルの方程式に従って、源室206内に、プラズマ250を発生させ維持する時間変化する方位電場を生じさせる。場合によっては、アンテナ212の連続するターン間の電圧差が、アンテナ・コイル212の隣接するターン間に何らかの高電圧絶縁が必要となる400Vrfを超えることがある。フランジ222の下に位置する引出し電極(図示せず)に電圧を印加することによって、プラズマ250から荷電粒子(イオンまたは電子)220を引き出すことができる。アンテナの直径284および長さ216に関する同じ考慮事項が、この先行技術の第2の誘導結合プラズマ・イオン源にも当てはまる。すなわち、効率を最適にするためには、アンテナ212とプラズマ250の間の半径方向距離を最小化する必要があり、所与のRF入力電力に対してプラズマ250が吸収する電力密度(W/cm
3)を最大にするためには、コイルの全長216を最小化すべきである。プラズマ密度が高いほど、誘導結合プラズマ・イオン源内のイオン放出電流を高くすることができる可能性がある(
図11参照)。
【0023】
図2のRFアンテナ212は、絶縁されていない中実のアンテナ線(一般に銅)のターンを使用する。アンテナ212は、アンテナ212の連続するターン間の完全な高電圧隔離を提供する誘電性の絶縁流体260に浸されている。
図1のケースとは違い、この方法では、アンテナ・コイル212の隣接するターン間の高電圧破壊またはアンテナ・コイル212のターンと(接地された)ファラデー・シールド298の間の破壊を防ぐために冷却流体260の絶縁特性が決定的に重要であることに留意されたい。アンテナ212を駆動する高周波において冷却流体260が電気的に透過性である(すなわち最小限の吸収性を有する)ことも重要である。アンテナ212の隣接するターン間の中心−中心間隔214は、ターン間ギャップ218にアンテナ線の直径を加えたものに等しい。アンテナ212の全長216(中心−中心)は下式のとおりである。
【0024】
コイルの長さ216=(N−1)(ターン間間隔214) [式2]
上式でN=アンテナ212のターン数である。
図2では、ファラデー・シールド298が、小さなギャップ262によってプラズマ室206の外径288から分離されている。ファラデー・シールド298の外径286は、小さなギャップ296によってRFアンテナ212のターンの内面から分離されている。この小さなギャップが、アンテナ212の部分とファラデー・シールド298の間の最大電圧隔離を決定することがある。ファラデー・シールド298は一般に、グランド電位にバイアスされた導体である。
【0025】
本発明の第1の実施形態
図3は、プラズマ室306の外径386からある距離308だけ離隔したターンと、
図1の先行技術の誘導結合プラズマ・イオン源のそれよりもはるかに小さい(一般に絶縁層330の外径の半分よりも小さい)ターン間ギャップ318とを有するRFアンテナ312を使用した、本発明の第1の実施形態300の概略側断面図である。プラズマ室306の頂部にあるガス供給管302は、フィード・ガス304(すなわちイオン化されるガス)の調整された流れがプラズマ室306の内部へ流入することを可能にする。プラズマ室306の下端のフランジ322は、イオン源300を荷電粒子ビーム・システム(図示せず)に取り付けることを可能にする。RF電源(図示せず)からの電力が(通常は、図示しないインピーダンス整合回路を介して)アンテナ312に接続されると、ISM(Industrial,Scientific and Medical)無線バンド内の一般的なN×13.56MHz(Nは整数=1、2または3である)の周波数のRF高電圧がアンテナ312の両端間に生じ、このRF高電圧が、時間変化する軸方向の磁場をプラズマ室内に生み出す。この磁場は、マクスウェルの方程式に従って、源室内に、プラズマ350を発生させ維持する時間変化する方位電場を生じさせる。場合によっては、アンテナ・コイル312の連続するターン間の電圧差が、アンテナ・コイル312の隣接するターン間に何らかの高電圧絶縁が必要となる400Vrfを超えることがある。フランジ322の下に位置する引出し電極(図示せず)に電圧を印加することによって、プラズマ350から荷電粒子(イオンまたは電子)320を引き出すことができる。先行技術に対するものと同じアンテナの直径384および長さ316に関する考慮事項が、本発明のこの第1の実施形態にも当てはまる。すなわち、効率を最適にするためには、アンテナ312とプラズマ350の間の半径方向距離を最小化する必要があり、所与のRF電力に対してプラズマ350が吸収する電力密度(W/cm
3)を最大にするためには、コイルの全長316を最小化すべきであり、これにより、荷電粒子ビーム320中の放出電流をより高くすることができる可能性がある(
図11参照)。放出電流を最大にする際の他の考慮事項はプラズマ350の総体積である。一般に、イオン・ビームの生成において約2cm
3を超えるプラズマ体積はあまり効率的ではない。これは、プラズマ350の小さな部分(一般に約15μm
3)だけしかイオン・ビーム320中の電流に寄与しないためである。
【0026】
RFアンテナ312の1つのターンの詳細な断面図が
図3の右側に示されている。コイル管334の材料は一般に、無酸素高伝導率(oxygen−free high−conductivity)(OFHC)銅(直径は一般に2から10mm、好ましくは3から6mmである)であり、この銅は、
図3の左側に示されたコイル状のアンテナ構造物312の巻付けを可能にするために焼き鈍されている。コイル管334の外面は、RF周波数におけるコイルの抵抗を低減させるために付着させた導電層332(例えば銀または金)を有することができる。一例として、表皮深さ(skin depth)δを周波数の関数として表すと下式のようになる。
【0027】
δ(f)=Lf
-0.5 (δおよびLの単位はμm、fの単位はMHz) [式3]
上式で、Lは、一般的なコイル材料に対して以下の値を有する:L=80μm(Al)、65μm(Cu)、79μm(Au)および64μm(Ag)。したがって、例えば、40MHzにおいて、銀層332の表皮深さは約10.1μmであり、そのため、層332の厚さが少なくとも20から100μmである(すなわち表皮深さδの2から10倍である)場合、アンテナ・コイル312を流れるほぼ全ての電流が層332を流れ、コイル管334に電流は流れない。層332の厚さは20から100μmとすることができ、25から50μmであると好ましい。
【0028】
導電層332の外面、または導電層332を使用しない場合にはコイル管334の外面には、一般にPTFEプラスチックから製造された厚い高密度絶縁管330が熱収縮によって提供されている。この高絶縁耐力の絶縁管330の壁厚は一般に250μmから1250μmである。絶縁管330の好ましい壁厚の範囲は380μmから750μmである。絶縁管330の外径は、コイル管334の直径に、導電層332の厚さを2倍したものおよび絶縁層330の厚さを2倍したものを加えることによって決定され、したがって絶縁管330の外径は一般に2.54mm[=2mm+2(20μm)+2(250μm)]から12.7mm[=10mm+2(100μm)+2(1250μm)]の範囲であり、より好ましくは3.81mm[=3mm+2(25μm)+2(380μm)]から7.6mm[=6mm+2(50μm)+2(750μm)]の範囲である。
【0029】
冷却のため、コイル管334は、プラズマ・イオン源300の動作中に冷却流体がその中を流れる円形の内側管状開口336(直径は一般に1から6mm、好ましくは1.5から3mmである)を有する。冷却流体は導電性のコイル管334の内側を流れるため、冷却流体に、誘電特性、絶縁特性またはRF透過性に関する要件が課せられることはない。冷却流体の選択肢としては、水(脱イオン水または脱イオン化されていない水)、Fluorinert(商標)のような誘電性のフルオロカーボン流体、変圧器油などがある。図示のRFアンテナ312は、あるギャップ308を間に挟んでプラズマ室306の外径386のすぐ近くにある。絶縁管330は一般に、比較的に高い絶縁耐力を特徴とし、そのため、ターン間ギャップ318が絶縁管330の壁厚よりもはるかに小さいときでも、アンテナ312のターン間に生じるRF電圧差がターン間の電圧隔離能力を超えることはない。本明細書で使用されるとき、語句「比較的に高い絶縁耐力」は、前述の先行技術の絶縁されたコーティングの絶縁耐力のおよそ2倍の絶縁耐力を有する絶縁管を記述するために使用される。本発明に基づく比較的に高い絶縁耐力を特徴とする絶縁管は、25kV/mmよりも大きな絶縁耐力を有することが好ましく、30kV/mmよりも大きな絶縁耐力を有することがより好ましく、31.5kV/mmから55kV/mmの絶縁耐力を有することがよりいっそう好ましい。
【0030】
コイル312の隣接するターン間の中心−中心間隔314は、ターン間ギャップ318に絶縁管330の外径を加えたものに等しい。アンテナ312の全長316(中心−中心)は下式のとおりである。
【0031】
コイルの長さ316=(N−1)(ターン間間隔314) [式4]
上式でN=アンテナ312のターン数である。Nは一般に2から10とすることができ、3から5であるとより好ましい。
図3のコンパクトなアンテナ312を、
図1の先行技術のプラズマ・イオン源100と比較すると、先行技術の低絶縁耐力の絶縁コーティング130と比較したときの高絶縁耐力の絶縁管330の利点が分かる。ターン間ギャップ318を、先行技術のアンテナ112のターン間ギャップ118よりもはるかに小さくすることができるため、それに比例してコイルの全長316が大幅に短くなっている。ギャップ距離318のこの低減が可能なのは、絶縁管330の壁厚によって、アンテナ312内のターン間の電圧差の大部分に耐えることができ、電圧降下の小さな部分だけをギャップ318によって支持すればよいためである。このことは、ターン間の電圧差の大部分をギャップ118によって支えなければならない先行技術の状況とは対照的である。
【0032】
本発明の第2の実施形態
図4は、ファラデー・シールド470の外径488からある距離408だけ離隔したターンと、
図1の先行技術のプラズマ・イオン源100のターン間ギャップ118よりもはるかに小さくすることができるターン間ギャップ418とを有するRFアンテナ412を使用した、本発明の第2の実施形態400の概略側断面図である。プラズマ室406の頂部にあるガス供給管402は、フィード・ガス404(すなわちイオン化されるガス)の調整された流れがプラズマ室406の内部へ流入することを可能にする。プラズマ室406の下端のフランジ422は、イオン源400を荷電粒子ビーム・システム(図示せず)に取り付けることを可能にする。RF電源(図示せず)からの電力が(通常は、図示しないインピーダンス整合回路を介して)アンテナ412に接続されると、第1の実施形態と同様に、ISM(Industrial,Scientific and Medical)無線バンド内の一般的なN×13.56MHz(Nは整数=1、2または3である)の周波数のRF高電圧がアンテナ412の両端間に生じ、このRF高電圧が、時間変化する軸方向の磁場をプラズマ室内に生み出す。場合によっては、アンテナ・コイル412の連続するターン間の電圧差が、アンテナ・コイル412の隣接するターン間に何らかの高電圧絶縁が必要となる400Vrfを超えることがある。フランジ422の下に位置する引出し電極(図示せず)に電圧を印加することによって、プラズマ450から荷電粒子(イオンまたは電子)420を引き出すことができる。本発明の第1の実施形態に対するものと同じアンテナの直径484および長さ416に関する考慮事項が、この実施形態にも当てはまる。すなわち、効率を最適にするためには、アンテナ412とプラズマ450の間の半径方向距離を最小化する必要があり、所与のRF電力に対してプラズマ450が吸収する電力密度(W/cm
3)を最大にするためには、コイルの全長416を最小化すべきであり、これにより、荷電粒子ビーム420中の放出電流をより高くすることができる可能性がある(
図11参照)。第1の実施形態に対するものと同じ望ましい最大プラズマ体積に関する考慮事項がこの実施形態にも当てはまる。
【0033】
RFアンテナ412の1つのターンの断面の詳細は、
図3の右側に示された第1の実施形態のそれと同じである。第1の実施形態に対するものと同じ、冷却流体の選択、コイル管334の直径、導電層332の厚さならびに絶縁層330の厚さおよび外径に関する考慮事項がこの実施形態にも当てはまる。
【0034】
コイル412の隣接するターン間の中心−中心間隔414は、ターン間ギャップ418に絶縁管330の外径を加えたものに等しい。アンテナ412の全長416は下式のとおりである。
【0035】
コイルの長さ416=(N−1)(ターン間間隔414) [式5]
上式でN=アンテナ412のターン数である。Nは一般に2から10とすることができ、3から5であるとより好ましい。
図4の第2の実施形態と
図3の第1の実施形態の重要な違いは、プラズマ室406の外径486の近くに、またはプラズマ室406の外径486に接触してファラデー・シールド470が追加されていることである。
図2に関して論じたとおり、ファラデー・シールド470は、アンテナ412のRF電圧からプラズマ450を電気的に遮蔽し、それによってプラズマ・イオン源400によって放出されたイオン420のエネルギーにRFコイルの電圧が容量結合することを防ぐ。高絶縁耐力の絶縁管330の更なる利点は、コイル導体334および導電層332と、ファラデー・シールド470との間の電圧差を、ギャップ408によってではなく、主に絶縁管330の壁厚によって支持することができ、したがってギャップ408をより小さくしまたは完全に排除することができ、それによってアンテナ412からプラズマ450へのRF電力の結合効率を向上させることができることである。
図3のアンテナ312に対するものと同じコンパクトなアンテナ412の構造に対する利点がこの実施形態にも当てはまる。すなわち、ターン間ギャップ418を、先行技術のアンテナ112のターン間ギャップ118よりもはるかに小さくすることができるため、それに比例してコイルの全長416が大幅に短くなっている。ギャップ418のサイズのこの低減が可能なのは、絶縁管330の壁厚によって、アンテナ412内のターン間の電圧差の大部分に耐えることができ、電圧降下の小さな部分だけをギャップ418によって支持すればよいためである。このことは、ターン間の電圧差の大部分をギャップ118によって支えなければならない先行技術の状況とは対照的である。
【0036】
本発明の第3の実施形態
図5は、ファラデー・シールド570に接触したターンを有するターン間ギャップのないRFアンテナ512を使用した、本発明の第3の実施形態500の概略側断面図である。プラズマ室506の頂部にあるガス供給管502は、フィード・ガス504(すなわちイオン化されるガス)の調整された流れがプラズマ室506の内部へ流入することを可能にする。プラズマ室506の下端のフランジ522は、イオン源500を荷電粒子ビーム・システム(図示せず)に取り付けることを可能にする。RF電源(図示せず)からの電力が(通常は、図示しないインピーダンス整合回路を介して)アンテナ512に接続されると、
図3の第1の実施形態300および
図4の第2の実施形態400と同様に、ISM(Industrial、 Scientific and Medical)無線バンド内の一般的なN×13.56MHz(Nは整数=1、2または3である)の周波数のRF高電圧がアンテナ512の両端間に生じ、このRF高電圧が、時間変化する軸方向の磁場をプラズマ室内に生み出す。場合によっては、アンテナ・コイル512の連続するターン間の電圧差が、アンテナ・コイル512の隣接するターン間に何らかの高電圧絶縁が必要となる400Vrfを超えることがある。フランジ522の下に位置する引出し電極(図示せず)に電圧を印加することによって、プラズマ550から荷電粒子(イオンまたは電子)520を引き出すことができる。本発明の第1および第2の実施形態に対するものと同じアンテナの直径584および長さ516に関する考慮事項が、この実施形態にも当てはまる。すなわち、効率を最適にするためには、アンテナ512とプラズマ550の間の半径方向距離を最小化する必要があり、所与のRF電力に対してプラズマ550が吸収する電力密度(W/cm
3)を最大にするためには、コイルの全長516を最小化すべきであり、これにより、荷電粒子ビーム520中の放出電流をより高くすることができる可能性がある(
図11参照)。第1および第2の実施形態に対するものと同じ望ましい最大プラズマ体積に関する考慮事項がこの実施形態にも当てはまる。
【0037】
RFアンテナ512の1つのターンの断面の詳細は、
図3の右側に示された第1の実施形態のそれと同じである。第1および第2の実施形態に対するものと同じ、冷却流体の選択、コイル管334の直径、導電層332の厚さならびに絶縁層330の厚さおよび外径に関する考慮事項がこの実施形態にも当てはまる。
【0038】
アンテナ・コイル512の連続するターンが接触点518で接触している(すなわち連続するターン間にギャップがない)ため、コイル512の隣接するターン間の中心−中心間隔514は絶縁管330の外径に等しい。コイル512の隣接するターン間にギャップを置かないことが可能なのは、絶縁管330の絶縁耐力が高いため、絶縁管330の壁厚によって、アンテナ512内のターン間の全電圧差に耐えることができるためである。アンテナ512の全長516は下式のとおりである。
【0039】
コイルの長さ516=(N−1)(ターン間間隔514) [式6]
上式でN=アンテナ512のターン数である。Nは一般に2から10とすることができ、3から5であるとより好ましい。ファラデー・シールド570はプラズマ室506の外径586に接触している。高絶縁耐力の絶縁管330の更なる利点は、コイル導体334と(一般的には、接地された)ファラデー・シールド570との間の電圧差を絶縁管330の壁厚によって完全に支持することができ、したがって接触点508においてアンテナ512をファラデー・シールド570に接触させることができることである。
【0040】
本発明の第4の実施形態
図6は、ファラデー・シールド670に接触したターンを有し、ターン間ギャップがなく、コイル冷却流体660がアンテナ612の外部にあるRFアンテナ612を使用した、本発明の第4の実施形態600の概略側断面図である。プラズマ室606の頂部にあるガス供給管602は、フィード・ガス604(すなわちイオン化されるガス)の調整された流れがプラズマ室606の内部へ流入することを可能にする。プラズマ室606の下端のフランジ622は、イオン源600を荷電粒子ビーム・システム(図示せず)に取り付けることを可能にする。RF電源(図示せず)からの電力がアンテナ612に接続されると、
図3の第1の実施形態、
図4の第2の実施形態および
図5の第3の実施形態と同様に、ISM(Industrial,Scientific and Medical)無線バンド内の一般的なN×13.56MHz(Nは整数=1、2または3である)の周波数のRF高電圧がアンテナ612の両端間に生じ、このRF高電圧が、時間変化する軸方向の磁場をプラズマ室内に生み出す。場合によっては、アンテナ612の連続するターン間の電圧差が、アンテナ・コイル612の隣接するターン間に何らかの高電圧絶縁が必要となる400Vrfを超えることがある。フランジ622の下に位置する引出し電極(図示せず)に電圧を印加することによって、プラズマ650から荷電粒子(イオンまたは電子)620を引き出すことができる。本発明の最初の3つの実施形態に対するものと同じアンテナの直径684および長さ616に関する考慮事項が、この実施形態にも当てはまる。すなわち、効率を最適にするためには、アンテナ612とプラズマ650の間の半径方向距離を最小化する必要があり、所与のRF電力に対してプラズマ650が吸収する電力密度(W/cm
3)を最大にするためには、コイルの全長616を最小化すべきであり、これにより、荷電粒子ビーム620中の放出電流をより高くすることができる可能性がある(
図11参照)。第1、第2および第3の実施形態に対するものと同じ望ましい最大プラズマ体積に関する考慮事項がこの実施形態にも当てはまる。
【0041】
RFアンテナ612の1つのターンの詳細な断面図が
図6の右側に示されている。コイル線634の材料は一般に、無酸素高伝導率(OFHC)銅(直径は一般に2から10mm、好ましくは3から6mmである)であり、この銅は、
図6の左側に示されたコイル状のアンテナ構造物612の巻付けを可能にするために焼き鈍されている。コイル線634の外面は、RF周波数におけるコイルの抵抗を低減させるために付着させた導電層632(例えば銀または金)を有することができる。
図3の第1の実施形態に対するものと同じ表皮深さの考慮事項がこの実施形態にも当てはまる。したがって、導電層632が銀である場合、RF周波数40MHzにおいて表皮深さは約10.1μmであり、そのため、導電層632の厚さが少なくとも30から40μmである(すなわち表皮深さδ(式3参照)の数倍である)場合、アンテナ・コイル612を流れるほぼ全ての電流が導電層632を流れ、コイル線634に電流は流れない。層632の厚さは20から100μmとすることができ、25から50μmであると好ましい。
【0042】
導電層632の外面、または導電層632を使用しない場合にはコイル線634の外面には、一般にPTFEプラスチックから製造された厚い高密度絶縁管630が熱収縮によって提供されている。この高絶縁耐力の絶縁管630の壁厚は一般に250μmから1250μmである。絶縁管630の好ましい壁厚の範囲は380μmから750μmである。絶縁管630の外径は、コイル線634の直径に、導電層632の厚さを2倍したものおよび絶縁層630の厚さを2倍したものを加えることによって決定され、したがって絶縁管630の外径は一般に2.54mm[=2mm+2(20μm)+2(250μm)]から12.7mm[=10mm+2(100μm)+2(1250μm)]の範囲であり、より好ましくは3.81mm[=3mm+2(25μm)+2(380μm)]から7.6mm[=6mm+2(50μm)+2(750μm)]の範囲である。
【0043】
この実施形態では、
図2の先行技術の場合とは違い、冷却流体660が、アンテナ・コイル612の隣接するターン間の全電圧差を隔離する必要がないことに留意されたい。これは、絶縁管630の壁厚によって、アンテナ・コイル612内のターン間の電圧差の大部分(または全て)を隔離することができるためである。このことは、アンテナ・コイル612のターンと(接地された)ファラデー・シールド670との間の電圧差についても言える。冷却流体660中へのRF電力の過度の損失を防ぐため、アンテナ612を駆動する高周波において冷却流体660が電気的に透過性である(すなわち最小限の吸収性を有する)ことも重要である。アンテナ612の隣接するターン間の中心−中心間隔614は絶縁層630の外径に等しい。すなわち連続するターン上の絶縁層が互いに接触している。アンテナ612の全長616(中心−中心)は下式のとおりである。
【0044】
コイルの長さ616=(N−1)(ターン間間隔614) [式7]
上式でN=アンテナ612のターン数である。プラズマ室606の外径686の近くに、またはプラズマ室606の外径686に接触してファラデー・シールド670が配置されている。ファラデー・シールド670は、アンテナ612のRF電圧からプラズマ650を電気的に遮蔽し、それによってプラズマ・イオン源600によって放出されたイオン620のエネルギーにコイルの電圧が容量結合することを防ぐ。
図5のアンテナ512に対するものと同じコンパクトなアンテナ612の構造に対する利点がこの実施形態にも当てはまる。すなわち、ターン間ギャップが必要ないためコイルの全長516が最小化される。
【0045】
プラズマ・イオン源の性能計算
図7は、磁場の大きさ704を、正規化されたアンテナ・コイルの長さ702の関数として示したグラフ700である。長さの正規化の単位は40mmであり、したがって正規化された長さL=0.225は実際の長さ0.225×40mm=9mmに対応する。
図8には、このグラフの部分720がより詳細に示されている。曲線706は、
図1〜6のコイル112、212、312、412、512または612の軸上の軸方向の磁場にそれぞれ対応する。曲線708は、
図1〜6のプラズマ150、250、350、450、550、650の外縁付近の軸方向の磁場に対応する。有限の長さを有するコイルでは常に言えることだが、軸から外れた位置の磁場の強さ708は軸上の磁場の強さ706よりも大きい。また、軸上と軸から外れた位置の両方で、コイルが短いほど磁場の強さは大きく、入力RF電力が一定の場合、長さがゼロのコイル(すなわち単一のターンを有するコイル)で磁場の強さは最大に達する。プラズマ中の電力密度(W/cm
3)の上記の議論を考えれば、この振舞いは理にかなっている。最も小さな体積のプラズマが、コイルの長さの長さゼロの限界である単一のターンを有するコイルによって生み出されることは明らかである。したがって、軸上のB場の強さ706の曲線は長さがゼロのときに最も高い712になる。同様に、軸から外れた位置のB場の強さ708も長さがゼロのときに最も高い710になる。アンテナの直径は、正規化された値2.00に固定されている。直径の正規化の単位は20mmであり、したがってグラフの右端(長さ=2×40mm=80mm)は、正規化された直径(直径=2×20mm=40mm)の2倍の正規化された長さを有するコイルを表している。
【0046】
図8は、
図7のグラフの部分720を大写しにした
図800であり、先行技術の一般的なアンテナのコイルの長さおよび本発明を具現する一般的なコンパクトなアンテナのコイルの長さを示している。正規化されたアンテナ・コイルの長さ802の範囲は0.2から0.8(8から32mm)である。曲線806は
図7の曲線706の一部であり、曲線808は
図7の曲線708の一部である。本発明のいくつかの実施形態の長さの領域810は、正規化されたコイルの長さ0.20〜0.23(8から9.2mm)の範囲にあり、
図3〜5の絶縁層330および
図6の絶縁層630の高い絶縁耐力のため、本発明のいくつかの実施形態ではこれらの長さが可能である。先行技術の長さの領域814は、正規化されたコイルの長さ≧0.60(24mm)の範囲にあり、絶縁コーティング(
図1のコーティング130など)の低い絶縁耐力のため、先行技術は一般にこの範囲に限定される。
【0047】
図9は、磁場の大きさ904を、正規化されたアンテナ・コイルの直径902の関数として示したグラフ900である。直径の正規化の単位は20mmであり、したがって正規化された直径Da=2.0は実際の直径2.0×20mm=40mmに対応する。
図10には、このグラフの部分920がより詳細に示されている。曲線906は、
図1〜6のコイル112、212、312、412、512または612の軸上の軸方向の磁場の計算値にそれぞれ対応し、正規化されたコイルの長さは、値L=0.34(=13.6mm。
図7および8参照)に固定されている。予想どおり、B場は、コイルの直径902の低減に伴って右から左へ単調に強くなる。ここでも、コイルの直径を小さくすることができ、それによって軸方向の磁場を増大させることができる能力に関して、高絶縁耐力の熱収縮絶縁管(
図3〜5の管330、
図6の絶縁管630など)が、先行技術の絶縁コーティング(
図1のコーティング130など)に比べて有利なことが明らかである。
【0048】
図10は、
図9のグラフの部分920を大写しにした
図1000であり、1.5から2.7(=30から54mm)の範囲の正規化されたコイルの直径1002を示している。この範囲は、先行技術の一般的なアンテナのコイルの直径および本発明の一般的な実施形態のコイルの直径を含む。曲線1006は
図9の曲線906の一部である。必要な電圧隔離を達成するためにより大きなコイル直径を維持する必要があるため、先行技術は一般に、2.65(=53mm)よりも大きな正規化されたコイルの直径1010に限定される。絶縁コーティング330(
図3〜5)または630(
図6)の高電圧隔離能力によってターン間ギャップが不要であるため、本発明の実施形態は、最低でも2.0(=40mm)までのコイル直径1008を利用する。
【0049】
図11は、先行技術の一般的なプラズマ・イオン源(曲線1106および1108)および本発明を具現するプラズマ源1110について、プラズマ源の放出電流(μA)1104を、入力RF電力(W)1102の関数として示したグラフ1100である。先行技術の一般的な曲線1106は、正規化されたコイルの長さ0.425(=17mm)および正規化されたコイルの直径2.65(=53mm)に対応する。このコイルは比較的に粗く巻かれたコイルである。先行技術の一般的な曲線1108はより密に巻かれたコイルに対応し、正規化されたコイルの長さは0.225(=45mm)だが、正規化されたコイルの直径は大きいまま、すなわち2.65(=53mm)である。本発明のいくつかの実施形態に対する曲線1110は、正規化されたコイルの長さ0.225(=9mm)および正規化されたコイルの直径2.0(=40mm)に対応する。このコイルはより密に巻かれたコイルであり、その外径はプラズマの外縁にはるかに近く、RF電力のより良好な結合を与える。
【0050】
先行技術の一般的な誘導結合プラズマ・イオン源のRF電力の結合効率は低いため、所与の入力RF電力に対して、本発明のプラズマ・イオン源の場合よりもはるかに小さな放出電流1104が生み出される。さらに、本発明のいくつかの実施形態は、50W以上というはるかに低い入力RF電力で動作することができるのに対して、先行技術の一般的な源は300W以上でないと機能することができない。この差が生じるのは、グラフ1100に示されているように、先行技術の一般的な源が約300WのRF入力電力を使用して生み出すのと同じイオン放出電流を、本発明のいくつかの実施形態は50WのRF入力電力で生み出すことができるためである。これが可能なのは、本発明のいくつかの実施形態の方がRF電力の結合効率が高いためである。入力電力300Wで、250Wほどはプラズマを生み出さず、それにより、先行技術の300Wでのイオン放出電流と本発明の50Wでのイオン放出電流とが等価になる。さらに、本発明のいくつかの実施形態は、先行技術の一般的な源よりも高いRF入力電力で動作することができる。これは、源構造体の加熱に向けられて有用なプラズマを生み出さない「無駄になる」RF入力電力がより少ないためである。したがって、本発明のいくつかの実施形態に800WのRF電力を入力しても、源の加熱に使われる電力は、600から700Wの間の電力で動作している先行技術の一般的なプラズマ・イオン源よりも小さい。
【0051】
本発明においてプラズマに対するRF電力の結合効率がより高いことの他の利点には、プラズマの点火がより容易なこと、困難な条件(低いフィード・ガス圧、イオン化が困難なフィード・ガスなど)の下でプラズマを維持することができること、入力RF電力の使用効率がより高いことなどがある。入力RF電力の使用効率がより高いことによって、先行技術のプラズマ・イオン源で可能な電源よりも低電力のRF電源を(より低い費用で)使用することが可能になる。本発明の高効率でコンパクトなアンテナの他の利点は、入力RF電力のより効率的な使用によって、コイルからの除熱要件の相当な低減が達成されることである。
【0052】
薄い絶縁コーティング130と比較した厚い絶縁管330の利点は、切削および摩耗に対する優れた抵抗性である。コイル絶縁が1箇所破断しただけでも、プラズマ・イオン源は高電圧破壊によって動作不能になりうるため、この利点のためにプラズマ源の寿命が延びることがある。この丈夫で非常に柔軟なアンテナ設計を用いると、より挑戦的な源性能要件に対処するために、
図3〜6に示した螺旋形の巻線よりも複雑なRFアンテナを製作することができる。絶縁コーティング130に対する厚い絶縁管330の利点である高電圧分離は、3つの因子、すなわち1)より大きな厚さ、2)より高い密度、および3)より低い空隙率に基づく。これらの3つの利点は全て、熱収縮絶縁管に本来備わっている特性であり、したがって絶縁コーティングを使用した先行技術にはない本発明の固有の利点を表す。絶縁PTFE熱収縮管の典型的な高電圧強度は1400V/ミル=55V/μmを超え、一方、PTFEの絶縁コーティングの高電圧強度は、コーティング・フィルムの低い密度のため例えば400V/ミル=15.8V/μm以下である。加えて、市販のPTFE熱収縮管の壁厚に匹敵する厚さのPTFEコーティングを付着させることは困難である。
【0053】
図3〜6に示した誘導結合プラズマ・イオン源の詳細は例示のみを目的としたものであり、本発明の範囲に含まれる他の多くの源設計が可能である。例えば、RFアンテナのターン数を3未満もしくは3以上とすることができ、またはRFアンテナを(螺旋形以外の)別の形状に巻くこともできる。ファラデー・シールドを円筒形以外の形状にすることもでき、例えば円筒形の中心部分の上端および/または下端から外側へフランジを延ばすこともできる。プラズマ室の形状を、本明細書に示した「シルクハット」形とは異なる形状とすることもできる。
【0054】
絶縁管330および630を熱収縮ポリテトラフルオロエチレン(PTFEないしTeflon(商標))に関して説明したが、絶縁管330および630に対して他の高絶縁耐力材料を使用することもできる。
【0055】
本発明の好ましい方法または装置は多くの新規の態様を有する。本発明は、異なる目的を有する異なる方法または装置として実施することができるため、全ての実施形態に全ての態様または利点が存在する必要はない。さらに、記載された実施形態の態様の多くは別々に特許を受けることができ、または別々に特許を受けていることがある。
【0056】
以上の本発明の説明は主に装置を対象としているが、本明細書に記載された新規の装置を使用する方法も本発明の範囲に含まれることを認識すべきである。さらに、本発明の実施形態は、コンピュータ・ハードウェアもしくはコンピュータ・ソフトウェア、またはコンピュータ・ハードウェアとコンピュータ・ソフトウェアの組合せによって実現することができることも認識すべきである。この実現は、標準プログラミング技法を使用し、本明細書に記載された方法および図に基づいて達成することができ、この標準プログラミング技法の使用には、コンピュータ・プログラムを含むように構成された非一時的な実在するコンピュータ可読の記憶媒体の使用が含まれ、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータを、予め定義された特定の方式で動作させる。コンピュータ・システムと通信するため、それぞれのプログラムは、高水準手続き型プログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で実現することができる。しかしながら、所望ならば、それらのプログラムを、アセンブラ言語または機械語で実現することもできる。いずれにせよ、その言語は、コンパイルまたは解釈される言語とすることができる。さらに、そのプログラムは、そのプログラムを実行するようにプログラムされた専用の集積回路上で実行することができる。
【0057】
さらに、本明細書に記載された装置は、限定はされないが、荷電粒子ツールもしくは他の画像化デバイスとは別個の、荷電粒子ツールもしくは他の画像化デバイスと一体の、または荷電粒子ツールもしくは他の画像化デバイスと通信するパーソナル・コンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレーム、ワークステーション、ネットワーク化されたコンピューティング環境または分散コンピューティング環境、コンピュータ・プラットホームなどを含む、任意のタイプのコンピューティング・プラットホームを利用することができる。本発明の諸態様は、取外し可能であるか、またはコンピューティング・プラットホームと一体であるかを問わない、ハードディスク、光学式読取りおよび/または書込み記憶媒体、RAM、ROMなどの記憶媒体上または記憶装置上に記憶された機械可読コードであって、プログラム可能なコンピュータが、本明細書に記載された手順を実行するために、その記憶媒体または記憶装置を読んだときにそのコンピュータを構成し、動作させるために、そのコンピュータが読むことができるように記憶された機械可読コードとして実現することができる。さらに、機械可読コードまたは機械可読コードの一部を、有線または無線ネットワークを介して伝送することができる。本明細書に記載された発明は、マイクロプロセッサまたは他のデータ処理装置と連携して上述の諸ステップを実現する命令またはプログラムを含む、これらのさまざまなタイプの非一時的な実在するコンピュータ可読記憶媒体、およびその他のさまざまなタイプの非一時的な実在するコンピュータ可読記憶媒体を含む。本発明はさらに、本明細書に記載された方法および技法に従ってプログラムされたコンピュータを含む。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、集束荷電粒子ビーム・システム用の誘導結合プラズマ・イオン源は、
プラズマ室と、
プラズマ室内へフィード・ガスを導入するためのガス供給管と、
プラズマ室の周囲に配置され、
導電材料のコイル、および
導電材料のコイルの外面を取り囲み、導電材料のコイルの外面に接触しており、高い絶縁耐力を有する絶縁管
を備える高周波アンテナと、
高周波アンテナに電気的に接続され、高周波アンテナに電力を供給するように構成された高周波電源と
を備える。
【0059】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、導電材料が導電性の管である。
【0060】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、導電材料が導線である。
【0061】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態は、導電材料の外面と絶縁管の内面との間に導電層をさらに備え、この導電層の厚さが20から100μmの間である。
【0062】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、導電層の厚さが25から50μmの間である。
【0063】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、導電層が銀または金を含む。
【0064】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、絶縁管がポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0065】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、絶縁管が、導電材料のコイルの外面に熱収縮によって提供されている。
【0066】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、絶縁管の壁厚が250μmから1250μmの間である。
【0067】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、絶縁管の壁厚が380μmから750μmの間である。
【0068】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、導電材料が無酸素高伝導率銅を含む。
【0069】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、導電材料のコイルの連続するターン間の中心−中心間隔が絶縁管の外径にほぼ等しい。
【0070】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態は、プラズマ室の外面と導電材料のコイルの内径との間に配置されたファラデー・シールドをさらに備える。
【0071】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、絶縁管が、ファラデー・シールドの外面に接触している。
【0072】
この誘導結合プラズマ・イオン源のいくつかの実施形態では、高周波アンテナが誘電性の流体に浸されている。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態の他の態様によれば、集束荷電粒子ビーム・システム用の誘導結合プラズマ・イオン源は、
プラズマ室と、
プラズマ室内へフィード・ガスを導入するためのガス供給管と、
プラズマ室の周囲に配置され、
導電性の管のコイル、
導電性の管の外面の導電層、および
導電層の外面を取り囲み、導電層の外面に接触しており、高い絶縁耐力を有する絶縁管を備える高周波アンテナであって、導電性の管のコイルの連続するターン間の中心−中心間隔が絶縁管の外径にほぼ等しい、高周波アンテナと、
プラズマ室の外面と導電性の管のコイルの内径との間に配置されたファラデー・シールドと、
高周波アンテナに電気的に接続され、高周波アンテナに電力を供給するように構成された高周波電源と
を備える。
【0074】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。